説明

ガス採取測定装置及びガス採取測定方法

【課題】試料に負担をかけることなく、かつ極めて簡便に、試料表面から放出されるガスを精度高く採取および測定する装置を提供する。
【解決手段】試料から放出されるガスに含まれる測定対象成分の該ガスに対する濃度を測定する測定装置であって、試料の一部を覆う容器と、既定濃度のマーカー成分を含みあるいは含まず、かつ含まれる成分の濃度が既知であるキャリアガスを容器に供給する流路と、既定の供給体積のキャリアガスを供給する手段と、容器内のキャリアガスと試料から放出されるガスとの混合ガスに対する測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度を測定する濃度測定手段と、キャリアガスの供給体積値と、キャリアガス中の測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度と、濃度測定手段により測定される容器内の測定対象成分およびマーカー成分の濃度の測定値とから測定対象成分の濃度を算出する濃度算出手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料から放出されたガスを採取し、採取したガス中に含まれる成分を測定するためのガス採取測定装置及びガス採取測定方法に関する。本発明は、特に、臨床的な応用を目的として、生体の表面から放出されるガスを採取し、採取したガス中に含まれる生体の生理状態や健康状態の指標となる成分を測定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試料から放出されたガスを採取および測定することは、試料の状態や、試料が周囲の環境に与える影響を理解するために重要である。
【0003】
試料から放出されるガスのうち、生体試料表面から放出されるガス、例えば人の皮膚表面から放出されるガス(皮膚ガス)の測定が、近年注目されている。皮膚ガスは血中成分を反映していると考えられているため、皮膚ガス中に含まれる成分を測定することで、人の生理状態や健康状態を知ることが出来る可能性が見出されている。皮膚ガスを用いて生理状態や健康状態を理解することが出来れば、人体に負担をかけることのない極めて簡便な非侵襲臨床検査を実施することが可能となる。このため、皮膚ガスは、次世代の非侵襲検査を実現させる検体として注目されている。
【0004】
皮膚ガスのような生体試料表面から放出されるガスを採取する場合において、試料全体を密閉容器の中に入れ、測定誤差の要因となる大気の混入を完全に防ぐことは困難である。したがって、試料の一部だけを採取容器の中に入れた状態で大気の混入を抑止し、簡便かつ精度良く試料表面から放出されるガスを採取及び測定するための技術が必要とされる。
【0005】
特許文献1には、試料の一部だけを採取容器に入れ、採取容器における試料の挿入口の部材を加圧して、該部材と試料の間の隙間を塞ぐことによって、大気の混入を抑止する試みがなされている。しかし、この技術では、試料への過剰な加圧を避けるために、圧力のセンシングとコントロールを必要とし、装置が煩雑になり高価になってしまうという解決すべき課題があった。
【0006】
また、採取ガスを測定装置で分析するため等で、採取容器から採取ガスを抜取る際に採取容器が陰圧となり、採取容器の中への大気の混入が生じてしまう。このため、精度の高い採取および測定ができていないという解決すべき課題があった。
【0007】
さらに、試料から放出されるガスの体積は、試料が生体である場合には特に、個体差や日内変動のために一定ではない。したがって、測定毎に試料から放出されたガスの体積を測定した上で、採取容器の中における測定対象成分の濃度を測定しなければ、試料から放出されたガス中に含まれる測定対象成分の正確な濃度を求めることはできない。しかしながら、上記特許文献1に開示されている装置は、試料から放出されたガスの体積を測定する手段を備えていないため、精度の高い測定ができない、という解決すべき課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-155385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題点を克服するものであり、試料に負担をかけることなく、簡便かつ精度高くガスを採取および測定するガス採取測定装置及びガス採取測定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するガス採取測定方法を実施するための本発明のガス採取測定装置は、試料から放出されるガスに含まれる測定対象成分の該ガスに対する濃度を測定する測定装置であって、
前記試料の一部を覆う容器と、
既定濃度のマーカー成分を含みあるいは含まず、かつ含まれる成分の濃度が既知であるキャリアガスを前記容器に供給する流路と、
既定の供給体積の前記キャリアガスを供給する手段と、
前記容器内の前記キャリアガスと前記試料から放出されるガスとの混合ガスに対する前記測定対象成分の濃度および前記マーカー成分の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記キャリアガスの供給体積値と、前記キャリアガス中の測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度と、前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分および前記マーカー成分の濃度の測定値とから前記測定対象成分の濃度を算出する濃度算出手段と
を有することを特徴とする測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガス採取測定装置及びガス採取測定方法によれば、試料への過剰な加圧や高価な圧力制御装置を必要とせず、大気の混入を防ぎながら、試料から放出されるガスを採取することが可能である。また、試料から放出されるガスを高精度に測定することが可能であるとともに、広範囲の組成のキャリアガスを用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のガス採取測定装置およびこれを用いたガス採取および測定方法を説明する図である。
【図2】本発明の第1および第3の実施例に係るガス採取測定装置およびこれを用いたガス採取および測定方法を説明する図である。
【図3】本発明の第2および第5の実施例に係るガス採取測定装置およびこれを用いたガス採取および測定方法を説明する図である。
【図4】本発明の第4の実施例に係るガス採取測定装置およびこれを用いたガス採取および測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るガス採取測定装置について説明する。本発明の実施の形態に係るガス採取測定装置は、試料109から放出されたガスを採取し、このガスの中に含まれる少なくとも1種類のターゲット成分の濃度を測定するための装置である。このガス採取測定装置は、採取容器107と、注入手段(流量制御手段)104と、ガス混合手段108と、濃度測定手段(濃度測定装置)118と、圧力検出手段(圧力計)120とを備える。採取容器107は、少なくとも試料109の一部を覆うと共に、採取容器107の中のガスを採取する採取口を備える。流量制御手段104は、既定の供給体積のキャリアガスを採取容器107に供給する手段である。ガス混合手段108は、キャリアガスと試料109から放出されたガスとを採取容器107の中で混合する。濃度測定装置118は、採取容器107の中から採取したガスの中の成分の濃度を測定する。圧力計120は、採取容器107の中の圧力を検出する。流量制御手段104は、圧力計120により検出された圧力に基づいて、採取容器107の中の圧力が陽圧となる範囲内でキャリアガスの流量を変えることが可能である。
【0014】
キャリアガスは、キャリアガス供給源101から供給される。ここでは、キャリアガスとして、試料109に対して無害であり、試料109やガスの採取および測定において扱うガス、あるいは図1のガス採取測定装置を構成する部材と反応することのない、安定性が高いガスを用いる。このようなキャリアガスとしては、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノン等の高純度の不活性ガスが挙げられる。キャリアガス供給源101は、ガスボンベが一般的に用いられるが、化学反応や大気の精製などによってキャリアガスを作製し供給することも可能である。
【0015】
予め組成が既知であるキャリアガスを用いると、簡便にガスの採取および測定を実行することが可能である。ただし、その組成が不明である場合や、より厳密に濃度管理を行う際には、キャリアガス中に含まれる成分の濃度を測定する手段を設けても良い。例えば、図1の中に示したように、採取容器107の中から採取するガスの濃度を測定する濃度測定装置118に、切替バルブ102、流量制御手段103及び切替バルブ121を介してキャリアガス供給源101を接続すればよい。これにより、濃度測定装置118へキャリアガスを導入する構造が得られる。あるいは、キャリアガス供給源101に専用の濃度測定装置を取付けても良い。試料表面から放出されるガス中に含まれる第1成分(ターゲット成分)の分析を行う際にキャリアガスの測定を行った方が、キャリアガス作製時と比べて測定時に温度等の測定環境に変化が生じた場合であってもキャリアガス中に含まれる成分の濃度を正確に知ることができ、より精度の高い測定を行うことができるため、望ましい。
【0016】
さらに、キャリアガス中の成分の濃度が濃度測定装置の検出下限に達しない場合には、測定対象とする成分を濃縮した後に濃度測定を実施する。これにより、キャリアガス中の成分の濃度の測定が可能となる。具体的には、切替バルブ102を介して、濃縮手段105をキャリアガス供給源101に接続し、サンプリングポンプ106によって一定量が濃縮手段105を通過するようにしておく。濃縮手段105としては、たとえば、濃縮するガスを冷却剤(液体窒素などの液化ガス、ドライアイスとメタノールなど)で冷却して凝縮する手段、キャリアガス中の成分を固相に濃縮吸着させた後に溶媒により抽出する手段、固相に濃縮吸着させた後に加熱により抽出する手段、固相に濃縮吸着させた後に加熱により抽出し、さらに冷却により再凝縮する手段、などが挙げられる。
【0017】
成分を吸着させる固相は、成分の特性に応じて適切なものを選択すれば良い。例えば、2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキサイド樹脂などの多孔性樹脂、活性炭やカーボンモレキュラーシーブ等の多孔性炭素、グラファイトカーボンブラック等の非多孔性炭素、モレキュラーシーブ等のゼオライト、アルミナ、シリカゲル等が挙げられる。また、これらの固相やフューズドシリカ、ケイソウ土、ガラスビーズ、水晶粒子、フッ素樹脂、テレフタル酸等を担体として表面に液相をコーティングしたもの等が挙げられる。液相がコーティングされた担体を固相として用いる場合には、目的成分の特性に応じて適切なものを選択すれば良い。コーティングに用いられる液相としては、ジメチルポリシロキサンや、ジフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンが任意の割合で混合されたもの、シアノプロピルフェニルポリシロキサンとジメチルポリシロキサンが任意の割合で混合されたもの、ポリエチレングリコールなどのポリグリコール類、スクアランなどのパラフィン系炭化水素、フッ素系オイル、マレイン酸ジブチルなどのエステル類、ポリエステル類、ウンデカノールなどのアルコール類、ポリフェニルエーテルなどのエーテル類、アミド類、トリエタノールアミンなどのアミン酸、ニトリル類、ニトロ化合物、メチルシリコーンなどのシリコーン類、硫化メチルなどの硫黄化合物、リン酸エステルなどのようにガスクロマトグラフで用いられるカラムの液相(固定相)として用いられているものなどが挙げられる。これらの固相は単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもいずれでも構わない。
【0018】
濃度測定装置118は、測定対象とする成分の特性に応じて分析に適したものを適宜選択すれば良い。濃度測定装置118の例としては、各種質量分析計、ガスクロマトグラフに各種検出器を組み合わせた装置、各種分光測定装置、各種電気化学測定装置、水晶振動子マイクロバランス測定装置などが挙げられる。ガスクロマトグラフと組み合わせて用いる検出器としては、質量分析計、熱伝導度検出器、水素炎イオン化検出器、ヘリウムイオン化検出器、アルゴンイオン化検出器、光イオン化検出器、原子発光検出器、電子捕獲型検出器、炎光光度検出器、遠紫外吸収検出器、窒素リン検出器、電気伝導度検出器、表面イオン化検出器、アルカリ熱イオン化検出器、フーリエ変換赤外分光器などが挙げられる。分光測定装置としては、紫外−可視分光測定装置や赤外分光測定装置などの吸収分光測定装置、蛍光分光測定装置や燐光分光測定装置などの発光分光測定装置、ラマン散乱分光測定装置などの光散乱分光測定装置、光音響分光測定装置や熱レンズ分光測定装置などの光熱分光測定装置、などが挙げられる。
【0019】
切替バルブ102を操作することによりキャリアガスの流路を切替えて、キャリアガスを採取容器107の中へ注入する。所望の流量を採取容器107の中へ注入するために、切替バルブ102と採取容器107の間に流量制御手段104が設けてある。
【0020】
採取容器107の少なくとも内壁面は、ガスの放出(アウトガス)がなく、また試料109から放出されるガスやキャリアガスが吸着しない材料で構成されていることが望ましい。このような材料としては、ステンレス、チタンやアルミなどの金属、ガラス、およびシリコン樹脂やフッ素樹脂などの樹脂が挙げられる。さらに、アウトガスの発生や内壁面へのガス成分の吸着をより抑制するために、採取容器107の内壁面に対して表面処理を施すことが望ましい。そのような表面処理としては、電解研磨、化学研磨あるいは電解複合研磨などの精密研磨処理や、アウトガスの発生やガス成分の吸着が少ない、高密度フューズドシリカやフッ素系の樹脂などの材料でのコーティングが挙げられる。
【0021】
採取容器107の本体だけでなく、ガス採取測定装置の全体において、配管や継ぎ手部分などにおいても、少なくともそれらの内壁面を、同様の材料で作製したり、それらの内壁面に対して同様な表面処理を施すことが望ましい。
【0022】
採取容器107には、試料109を差込むための挿入口110が形成される。採取容器107の中を陽圧に保ち易くするために、挿入口110は、挿入口110と試料109の間の隙間が極力狭くなるような構造にしておくことが好ましい。その様な構造を実現するには、例えば、試料109の大きさに従って開口径が異なる交換可能な部材を用意したり、小さな開口部を有し、かつ柔軟性および弾性を有する材料からなる部材を挿入口110に設ければよい。柔軟性および弾性を有する材料としては、シリコン樹脂やフッ素樹脂などをベースとしたゴムやゲルやエラストマー、ポリエチレンやウレタンなどの発泡体、などが挙げられる。
【0023】
採取容器107の中のガス組成を均一にするために、ガス混合手段108を設ける。ガス混合手段108は、採取容器107の中に設けられる。ガス混合手段108として、例えば、ガスを攪拌する手段、細孔を有する注入管を用いてキャリアガスを採取容器107の中へ導入する手段、および流入させたキャリアガスが採取容器107の中の様々な方向へ向かって噴射されるように注入口に細孔やノズルを設けるなどの手段によりガスの乱流を形成させる機構や構造を採取容器107に設けることが挙げられる。
【0024】
採取容器107の中の圧力をモニターするために、採取容器107に圧力計120を取付けても良い。
【0025】
採取容器107の中をガスで洗浄する際に、使用したガスを排出するための排出口111が、切替バルブ112を介して採取容器107に取付けられる。
【0026】
切替バルブ112には、さらに流量制御手段114を介して、濃度測定装置118が取付けられる。また、測定対象成分が濃度測定装置118の検出下限に達しない場合には、キャリアガスの濃縮と同様の濃縮手段(捕集管)115およびサンプリングポンプ116を切替バルブ113を介して、流量制御手段114の前方に取付ける。
【0027】
さらに、本発明の実施の形態に係るガス採取測定装置は、演算装置119を備えていても良い。演算装置119は、採取容器107の中に注入されるキャリアガスの体積、キャリアガスの中の測定対象成分の濃度、採取容器107の中のガスに含まれる測定対象成分の濃度を入力し、試料から放出されるガスの体積およびターゲットガスの濃度を算出する。演算装置119への各値の入力は、本装置のオペレーターが実施しても構わないし、流量制御手段104や濃度測定装置118からの出力信号を演算装置119へ直接入力するように各装置を電気的に接続しても良い。演算装置119は、専用に設計された電気回路でもよいし、パーソナルコンピューターでも構わない。
【0028】
今、用いるキャリアガス中に測定対象とするガスとマーカー成分が含まれるとする。マーカー成分のキャリアガスの中の既定の濃度を[Cmc]、試料109から放出されるガス中のマーカー成分濃度を[Cms]、所望の流量で採取容器107の中に供給されるキャリアガスの既定の供給体積をVc、このときの採取容器107の中のマーカー成分濃度を[Cm]とすると、試料109から放出されるガスの体積Vsをは式1で記述される。
【数1】

【0029】
採取容器内でのガス濃度は均一なので、容器内から取り出したガスV3(あるいは容器内から漏れ出したガスV4)中におけるマーカーガス濃度は、採取容器内におけるマーカー成分濃度と等しい。
【0030】
今、キャリアガス中に含まれるマーカー成分は、試料109から放出されるガス中に含まれないあるいは極めて微量(例えばpptレベル、あるいは用いる測定装置の検出下限以下の濃度)にしか含まれない成分である場合、
【数2】

であるから、試料109から放出されるガスの体積Vsは(2)式で表わされる。
【数3】

【0031】
キャリアガス中には、試料109から放出されるガス中に含まれない、あるいは極めて微量(例えばpptレベル、あるいは用いる測定装置の検出下限以下の濃度)にしかマーカー成分が含まれていなければ、目的成分であっても試料109から放出されるガス中に含まれる成分を含んでいても良い。ただし、キャリアガス中に含まれるターゲット成分の濃度が、試料109から放出されるターゲット成分の濃度と比べ1桁以上大きい場合には、予め除去するか希釈して用いる方が望ましい。特に、試料109から放出されるターゲット成分の濃度が低い(例えばppbレベル)場合には、キャリアガス中のターゲット成分濃度は、試料109から放出されるターゲット成分の濃度と同等以下であることが望ましい。また、キャリアガス中に含まれるマーカー成分としては、試料に対して無害であり、試料や試料表面から放出される成分と反応することなく、分解反応を起こさない安定かつ測定装置で分析が可能な成分を適宜選択する必要がある。このようなマーカー成分としては、自然界に存在しない成分(各種安定同位体ガス、各種安定同位体化合物、フロン系ガスの代替トレーサーガスであるパーフルオロメチルシクロヘキサンおよびパーフルオロメチルシクロペンタンなど)を用いても良い。安定同位体ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスの同位体や、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロペン、ブタン、2-メチルプロパンなどのガスの同位体が挙げられる。また、安定同位体化合物としては、アセトアルデヒド、アセトン、エタノール、イソプロピルアルコールなどの同位体が挙げられる。キャリアガスには、予めマーカーガスが添加されているものを準備して用いても、ガス混合装置などやマニュアル操作により作製して用いても、いずれでも構わない。ただし、試料から放出されるガス中に含まれるターゲット成分の濃度レンジが試料によって変わる場合や、ターゲット成分の濃度レンジが事前にはわからない場合には、マーカー成分を任意の濃度で含むキャリアガスを作製する方が望ましい。通常、測定装置はターゲット成分の濃度レンジにおいて感度が最も良くなるように調整されるため、マーカー成分の濃度をターゲット成分と同様の濃度レンジに調整したキャリアガスを作製して用いることにより、ターゲット成分だけでなくマーカー成分をより精度高く測定することができる。
【0032】
上記の(2)式を用いて求めた、試料109から放出されたガスの体積Vsの値を、式(3)に入れることによって、試料109から放出されるガス中に含まれるターゲット成分の濃度[Cs]を求めることができる。ただし、式(3)において、キャリアガス中におけるターゲット成分の濃度を[Ctc]、採取容器内のガス中におけるターゲット成分の濃度を[Ct]とする。
【数4】

【0033】
以上、キャリアガス中に含まれるマーカー成分が、試料109から放出されるガス中に含まれないあるいは極めて微量(例えばpptレベル、あるいは用いる測定装置の検出下限以下の濃度)にしか含まれない成分である場合に限定し、本発明のガス採取測定装置について説明した。本発明のガス採取測定装置はこれに限定されず、キャリアガス中に含まれるマーカー成分は、試料109から放出されるガス中に含まれていても良い。また、ターゲット成分であっても試料109から放出されるガス中に含まれる成分をキャリアガス中に含んでいても良い。ただし、キャリアガス中に含まれるターゲット成分の濃度が、試料109から放出されるターゲット成分の濃度と比べ1桁以上大きい場合には、予め除去するか希釈して用いる方が望ましい。特に、試料109から放出されるターゲット成分の濃度が低い(例えばppbレベル)場合には、キャリアガス中のターゲット成分の濃度は、試料109から放出されるターゲット成分の濃度と同等以下であることが望ましい。
【0034】
以下に、キャリアガス中に含まれるマーカー成分が、試料109から放出されるガス中にも含まれている場合、キャリアガスの採取容器内への供給量を変化させることで求められる。その場合の試料109から放出されるガスの体積Vsは式(4)であらわされる。
【数5】

【0035】
ただし、上記数式(4)において、キャリアガスの供給量を変更したときに測定される容器内のガスに含まれるマーカー成分の濃度を[Cm2]、そのときのキャリアガスの供給量(体積)をVc2とした。試料109から放出されるガスの体積Vsは、ターゲット成分に着目して式(5)でも表わされる。
【数6】

【0036】
数式(5)において、キャリアガスの供給量を変化させたときに測定される容器内のガスに含まれるマーカー成分の濃度を[Ct2]とした。また、試料109から放出されるターゲット成分の濃度[Cs]は式(6)で表わされる。
【数7】

【0037】
また、試料109から放出されるターゲット成分の濃度[Cs]は、ターゲット成分の濃度のみに着目して数式(7)でも表わされる。
【数8】

【0038】
さらに、マーカー成分がキャリアガスに含まれない場合においても、試料109から放出されるターゲット成分の濃度を算出することが可能であり、それはすなわち上記マーカー成分がキャリアガスにも試料109から放出されるガス中にも存在している場合において、ターゲット成分のみに着目したことと同等である。したがって、この場合のターゲット成分の濃度は、式(7)で表わされる。
【0039】
次に、図1に示したガス採取測定装置を用いたガス採取および測定方法を以下に述べる。
【0040】
採取容器107の中に試料109を挿入した後、キャリアガス供給源101から採取容器107の中にキャリアガスを導入し、採取容器107の中のガス洗浄を実施する。このとき切替バルブ112は、採取容器107の中のガスが排出口111から採取容器107の外に排出されるように操作されている。このガス洗浄プロセスによって、採取容器107の中に残存していた大気など、ガス濃度の定量精度に影響を与える可能性の有るガスが、採取容器107の外へ排除される。
【0041】
ガス洗浄後、流量制御手段104によって、採取容器107へのキャリアガスの導入量を所望の流量に調整し、採取容器107に供給されるキャリアガスの供給体積Vcを求めておく。ただし、この流量は採取容器107の中の圧力が陽圧となる様に調整される。キャリアガスと試料109から放出されるガスが混じりにくい場合には、ガス混合手段108によって、キャリアガスと試料109から放出されたガスとが混合され、採取容器107内において均一な組成の混合ガスとなり、より精度良く濃度の定量が可能となる。
【0042】
切替バルブ112を操作し、採取容器107の中のガスが流量制御手段114を経て濃度測定装置118に導入されるようにする。濃度測定装置118に注入されたガスの中に含まれるマーカー成分の濃度[Cm]および、ターゲット成分の濃度[Ct]を測定する。マーカー成分と測定対象成分が異なる成分である場合には、ターゲット成分の濃度は必ずしもこの時に測定する必要は無く、後のプロセスにおいて測定しても良い。
【0043】
マーカー成分がキャリアガス中にのみ含まれ、試料109から放出されるガス中には含まれないもしくは極微量にしか含まれない場合では、上記測定結果を用いて、(2)式から試料109から放出されるガスの体積Vs、さらに(3)式より、試料109から放出されるガス中に含まれるターゲット成分の濃度[Cs]を算出する。
【0044】
マーカー成分がキャリアガス中だけでなく、試料109から放出されるガス中にも含まれる場合には、キャリアガスVcを採取容器107に注入し、ガス混合手段108によって採取容器107内のガスを均一にし、採取容器107内のガス中に含まれるガスの成分濃度を濃度測定装置118によって測定した後、次いで、キャリアガスの流量を採取容器107内の圧力が陽圧となる範囲内で変化させる。このときのキャリアガスの注入体積Vc2、採取容器107内のガスに含まれるマーカー成分の濃度[Cm2]を求める。もし、採取容器107に注入するキャリアガスの流量を変化させる前に、採取容器107内のガスに含まれるターゲット成分の濃度を測定していない場合には、この時点で該濃度[Ct]を測定しておく。ただし、ターゲット成分をマーカー成分として用いても良い。すなわち、ターゲット成分とマーカー成分は同じ成分であってもよい。この場合は、測定プロセスが簡略化される利点が有る。
【0045】
上記測定結果を用いて、(4)式あるいは(5)式から、試料109から放出されるガスの体積Vs、さらには、(6)式あるいは(7)より、試料109から放出されるガス中に含まれるターゲット成分の濃度[Cs]を算出する。
【0046】
上記の算出は手計算で行っても良いが、演算回路119などの濃度算出手段を用いて自動的に行っても良い。
【0047】
本発明で用いられる試料109は、ガスを放出するものであって、人、家畜またはペット等の動物や植物などの生体試料、建造物や自動車などを含む日常使用する製品あるいは日常使用する製品に使用されている木材や金属や樹脂などの資材が挙げられる。
【0048】
本発明のガス採取測定装置で測定するガスは、ガス採取測定装置を腐食する物でなければ、特に限定されないが、例えば試料が生体である場合には、生体の生理状態や健康状態を反映する成分が挙げられる。生体の生理状態や健康状態を反映する成分としては、例えば人の皮膚表面から放出される皮膚ガス中においては、糖尿病などの指標となることが示唆されているアセトンや、腎疾患や肝疾患などの指標となることが示唆されているアンモニア、低酸素症や高血圧や酸化ストレスなどの指標となることが示唆されている一酸化窒素、高脂血症などの指標となることが予想されているイソプレン、腸内状態などの指標となることが予想されている水素や短鎖アルカン(メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン)や一酸化二窒素、大腸がんや直腸がんなどの指標となることが示唆されているメタン、肺がんや酸化ストレスなどの指標となることが予想されているエタンやスチレンやオクタンやヘプタンやベンゼンやトルエン、肺がんなどの指標となることが予想されているブタン、統合失調症や脂肪過酸化などの指標となることが予想されているペンタン、大気汚染などの指標となることが予想されている二酸化窒素、飲酒などの指標となることが予想されているエタノール、飲酒や肝疾患や肺がんなどの指標となることが予想されているアセトアルデヒド、肝性脳症や口腔内の細菌の情報などの指標となることが予想されているメチルメルカプタン、肺がんや肝疾患や口腔内の細菌の情報などの指標となることが予想されている硫化水素、腎疾患などの指標となることが予想されているトリメチルアミン、酸化ストレスなどの指標となることが予想されている一酸化炭素やスーパーオキサイド、神経疾患などの指標となることが予想されているメタノールなどが挙げられる。
【0049】
試料が日常に使用する製品に使用されている木材や金属や樹脂などの資材である場合には、資材から放出されるガス中に含まれる成分が、使用環境下において使用する人や環境に与える影響を確認するために濃度測定が行われる。このような成分としては、例えば試料が建造物や自動車に用いられる資材である場合には、資材に用いられた接着剤や塗料や防腐剤などから発生する、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、クロルピリホス、テトラデカン、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、ダイアジノン、フェノブカルブなどの揮発性有機化合物が挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳述する。
(実施例1)
試料表面から放出されるガスとして手209の皮膚から放出されるガス中に含まれるアセトンを、本発明のガス採取測定装置により分析する場合の装置構成例について図2に示し、このガス採取測定装置を用いたガス採取測定方法の一例を説明する。
【0051】
高純度ヘリウムガスにマーカー成分として安定同位体ガスであるエタン−d6を任意の濃度添加したものをキャリアガス201として用いる。エタン−d6は生体内で生成されず、自然界での存在量は無視できる程度であるため、手209の皮膚からは放出されない(
【数9】

。また、キャリアガスには高純度ヘリウムガスにエタン−d6を添加したものを用いているため、キャリアガスの中に含まれるアセトン濃度[Ctc]は無視できる程度である。
【0052】
キャリアガス201内に含まれるエタン−d6の濃度を測定するために、流路切り替えバルブ202によりマスフローコントローラー203を介して濃度測定装置であるガスクロマトグラフ−質量分析計(GC-MS)218へとキャリアガスを導入する。キャリアガスは、マスフローコントローラー203によって、所望の量がGC-MS218へ導入され、キャリアガスの中に含まれるエタン−d6の濃度[Cmc]を測定する。
【0053】
切替バルブ202により流路を切替え、キャリアガスを採取容器207の中へ導入する。採取容器207には、内壁に電解複合研磨処理を施したステンレス製のものを用いる。試料挿入口210にはアウトガスが極めて少ないパーフロロエラストマーを用い、手首のサイズによって可変する構造とする。
【0054】
マスフローコントローラー204で採取容器207の中への導入量を規定する。採取容器207の中へ導入されたキャリアガスは、ガス攪拌用のファン208により、手209から放出されるガスと均一に混合される。キャリアガスを採取容器207に通気しながら、溢れたガスを排出口211から排出し、採取容器207の中のガスの置換を行う。
【0055】
ガス置換完了後、マスフローコントローラー204で所定量V1のキャリアガスを採取容器207の中へ導入する。ただし、キャリアガスの流量は、採取容器207の中の圧力が陽圧となる様に調整される。このとき、切替バルブ212により、流路をマスフローコントローラー214へとつながるラインへ切替える。採取容器207の中のガスは、マスフローコントローラー214によって所定量がGC-MS218へと導入され、採取容器207の中のアセトンの濃度[Ct]とエタン−d6の濃度[Cm]とが測定される。
【0056】
以上の様にして求めた値を(2)式に代入して、手209から放出されるガスの体積Vsを算出する。さらに、算出された体積Vsと上記の様にして求めた値を(3)式に代入し、手209から放出されるガスに含まれるアセトンの濃度[Cs]を算出する。
【0057】
(実施例2)
試料表面から放出されるガスとして手309の皮膚から放出されるガス中に含まれるイソプレンを、本発明のガス採取測定装置により分析する場合の装置構成例について図3に示し、このガス採取測定装置を用いたガス採取測定方法の一例を説明する。
【0058】
実施例1と同様に、高純度ヘリウムガスにマーカー成分として安定同位体ガスであるエタン−d6を任意の濃度添加したものをキャリアガス301として用いる。図3のガス採取測定装置は、GC-MS318が採取容器307等に直接接続されず、捕集管305および315で捕集されたガスをGC-MS318に導入する機構とする点を除き、実施例1と同様な構成を備える。
【0059】
キャリアガスには高純度ヘリウムガスにエタン−d6を添加したものを用いているため、キャリアガスの中に含まれるイソプレンは微量(例えばサブppbオーダー)である。しかし、手309から放出されるガスの中に含まれるイソプレンも同様に微量であることから、高精度で定量を行うためには、キャリアガス中のイソプレンの濃度を無視することはできない。そこで、下記の様にキャリアガスの中に含まれるイソプレンを濃縮することで、その濃度を定量する。
【0060】
キャリアガスの中に含まれるイソプレンの濃度を測定するために、まず、サンプリングポンプ306でキャリアガスを吸引することにより、切替バルブ302を介して、任意量のキャリアガスを捕集管305に導入する。そして、キャリアガスの中のイソプレンを捕集管305に濃縮吸着させる。捕集管305には、2,6-ジフェニル-p-フェニレンオキサイド樹脂とグラファイトカーボンブラックを2層にして充填したガラスチューブを用いる。イソプレンを吸着させた捕集管305は取り外し、加熱脱離装置317を接続したGC-MS 318に捕集管305をセットして分析する。
【0061】
その後、実施例1に記載した手順と同様に、ガス洗浄(採取容器307の中のガスの置換)および採取容器307中への所定量V1のキャリアガスの導入を実施する。採取容器307の中にあるガスの中に含まれるイソプレン濃度[Ct]の測定も、捕集管315で濃縮した後に行う。採取容器307の中の所定量のガスを、GC-MS 318へ直接導入せず、サンプリングポンプ316でガスを捕集管315に導入しイソプレンを濃縮する。捕集管315は、キャリアガスの中に含まれるイソプレン濃度の測定に用いたのと同様の物を用いる。イソプレンを吸着させた捕集管315は取り外し、加熱脱離装置317を接続したGC-MS 318に捕集管315をセットして分析する。採取容器307の中にあるガスの中に含まれるエタン−d6の濃度[Cm]は、実施例1に記載したのと同様にして、マスフローコントローラー314によって所定量をGC-MS318へ直接導入し、測定する。
【0062】
上記の様にして得られた値から、実施例1と同様に手309から放出されるガスの体積Vsと、イソプレンの濃度[Cs]を算出する。
【0063】
(実施例3)
実施例1で用いたガス採取測定装置と同様の構成の装置を用い、手209の皮膚から放出されるガスの中に含まれるアセトンを分析する場合のガス採取測定方法の別の一例を図2を用いて説明する。キャリアガス201として圧縮空気にマーカー成分としてメタンを含むガスを用いる。本実施例におけるガス採取測定方法は、手209の皮膚から放出されるガスの中にも含まれるメタンをマーカー成分として用いる点、およびターゲット成分であるアセトンがキャリアガス中にも含まれる点が実施例1とは異なる。
【0064】
キャリアガス201内に含まれるアセトンおよびメタンの濃度を測定するために、流路切り替えバルブ202によりマスフローコントローラー203を介して濃度測定装置であるガスクロマトグラフ−質量分析計(GC-MS)218へとキャリアガスを導入する。キャリアガスは、マスフローコントローラー203によって所望の量がGC-MS218へ導入され、キャリアガスの中に含まれるアセトン濃度[Ctc]およびメタン濃度[Cmc]を測定する。
【0065】
実施例1に記載した手順と同様に、測定ガス洗浄(採取容器307の中のガスの置換)、採取容器307中への所定量Vcのキャリアガスの導入、および採取容器207中のアセトンの濃度[Ct]およびメタン濃度[Cm]の測定を実施する。
【0066】
キャリアガスの導入量をVcからVc2と変え、上記と同様に、採取容器207の中のガスに含まれるメタンの濃度[Cm2]が測定される。このときアセトンの濃度[Ct2]を測定しても良い。
【0067】
以上の様にして求めた値を(4)式に代入して、手209から放出されるガスの体積Vsを算出する。さらに、上記の様にして求めた値を(6)式もしくは(7)式に代入し、手209から放出されるガスに含まれるアセトンの濃度[Cs]を算出する。
【0068】
(実施例4)
試料から放出されるガスとして手409の皮膚から放出されるガスの中に含まれるアセトンを、本発明のガス採取測定装置により分析する場合の装置構成例を図4に示し、このガス採取測定装置を用いたガス採取測定方法の一例を説明する。キャリアガスとして高純度ヘリウムガスを用い、マーカー成分をターゲット成分と同じアセトンとする。したがって、キャリアガスの中に含まれるターゲット成分(マーカー成分)の濃度は無視できる程度である。
【0069】
本実施例において用いるガス採取測定装置は、次の点を除き、図2のガス採取測定装置と同じ構成を備える。すなわち、図4のガス採取測定装置は、GC-MS418へキャリアガスを直接送る機構を有しない。
【0070】
まず、実施例1と同様に、キャリアガスである高純度ヘリウムガスで採取容器407の中の洗浄を行った後、実施例3と同様にして採取容器407へのキャリアガスの導入量を変化させた際の採取容器407におけるアセトン濃度[Ct]および[Ct2]を求める。キャリアガスの体積VcおよびVc2、さらに測定したアセトン濃度[Ct]および[Ct2]をパーソナルコンピューター419へ入力する。そして、(5)式および(7)式に従って演算を実行し、手409から放出されるガスの体積Vsおよびこれに含まれるアセトンの濃度[Cs]を算出する。
【0071】
(実施例5)
実施例2で用いたガス採取測定装置と同様の構成の装置を用い、手309の皮膚から放出されるガスの中に含まれるアセトンを分析する場合のガス採取測定方法の別の一例を図3を用いて説明する。キャリアガスとして実施例4と同様に高純度ヘリウムガスを用い、マーカー成分をターゲット成分と同じイソプレンとする点が実施例2と本実施例とで異なる点である。
【0072】
実施例2と同様にしてキャリアガスの中に含まれるイソプレンの濃度[Ctc]の測定を捕集管315で濃縮した後に行う。その後、実施例1に記載した手順と同様に、ガス洗浄(採取容器307の中のガスの置換)および採取容器307中への所定量Vcのキャリアガスの導入を実施する。実施例2と同様にして採取容器307の中にあるガスの中に含まれるイソプレン濃度[Ct]の測定を、捕集管315で濃縮した後に行う。キャリアガスの導入量をVcからVc2と変え、上記と同様に、採取容器307の中にあるガスの中に含まれるイソプレン濃度[Ct2]の測定を行う。
【0073】
上記の様にして得られた値から、実施例4と同様にして手309から放出されるガスの体積Vsと、イソプレンの濃度[Cs]を算出する。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、臨床的な応用を目的として、生体の表面から放出されるガスを採取し、採取したガス中に含まれる生体の生理状態や健康状態の指標となる成分を測定する装置や方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0075】
101. キャリアガス供給源
102. 切替バルブ
103. 流量制御手段
104. 流量制御手段
105. 捕集管
106. サンプリングポンプ
107. 採取容器
108. ガス混合手段
109. 試料
110. 試料挿入口
111. 排出口
112. 切替バルブ
113. 切替バルブ
114. 流量制御手段
115. 捕集管
116. サンプリングポンプ
117. 加熱脱離装置
118. 濃度測定装置
119. 演算装置
120. 圧力計
121. 切替バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料から放出されるガスに含まれる測定対象成分の該ガスに対する濃度を測定する測定装置であって、
前記試料の一部を覆う容器と、
既定濃度のマーカー成分を含みあるいは含まず、かつ含まれる成分の濃度が既知であるキャリアガスを前記容器に供給する流路と、
既定の供給体積の前記キャリアガスを供給する手段と、
前記容器内の前記キャリアガスと前記試料から放出されるガスとの混合ガスに対する前記測定対象成分の濃度および前記マーカー成分の濃度を測定する濃度測定手段と、
前記キャリアガスの供給体積値と、前記キャリアガス中の測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度と、前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分および前記マーカー成分の濃度の測定値とから前記測定対象成分の濃度を算出する濃度算出手段と
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記容器が、前記キャリアガスと前記試料から放出されるガスとを混合するガス混合手段を有することを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
キャリアガス中に含まれるマーカー成分が、試料から放出されるガスに含まれないあるいは極めて微量にしか含まれておらず、前記キャリアガス中の測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度と、前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分および前記マーカー成分の濃度の測定値とから、前記濃度算出手段が前記測定対象成分の濃度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
キャリアガス中の測定対象成分の濃度を[Ctc]、
キャリアガス中のマーカー成分の濃度を[Cmc]、
容器内の測定対象成分の濃度を[Ct]、
容器内のマーカー成分の濃度を[Cm]とするとき、
前記濃度算出手段が試料から放出されるガスに対する測定対象成分の濃度[Cs]を式(1)で算出することを特徴とする請求項3に記載の測定装置。
【数1】

【請求項5】
キャリアガス中に含まれるマーカー成分は、試料から放出されるガスにも含まれており、
キャリアガスの容器内への供給量が既定の供給体積であるときの
前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分および前記マーカー成分の濃度の測定値と、
キャリアガスの容器内への既定の供給体積値と、
キャリアガスの容器内への供給量を前記既定の供給体積から変更したときの
前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分および前記マーカー成分の濃度の測定値と、
キャリアガスの容器内への変更した供給体積値と、
前記キャリアガス中の測定対象成分の濃度およびマーカー成分の濃度とから、
前記濃度算出手段が前記測定対象成分の濃度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項6】
容器内へのキャリアガスの供給体積をVc
キャリアガスの供給体積がVcであるときの
容器内の測定対象成分の濃度を[Ct]、
容器内のマーカー成分の濃度を[Cm]
容器内へのキャリアガスの供給体積を変更したときの供給体積をVc2
キャリアガスの供給体積がVc2であるときの
容器内の測定対象成分の濃度を[Ct2]、
容器内のマーカー成分の濃度を[Cm2]
キャリアガス中の測定対象成分の濃度を[Ctc]、
キャリアガス中のマーカー成分の濃度を[Cmc]とするとき、
前記濃度算出手段が試料から放出されるガスに対する測定対象成分の濃度[Cs]を式(2)で算出することを特徴とする請求項5に記載の測定装置。
【数2】

【請求項7】
キャリアガス中に測定対象成分を含むが、マーカー成分は含まず、
キャリアガスの容器内への供給量が既定の供給体積であるときの
前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分の濃度の測定値と
キャリアガスの容器内への既定の供給体積値と、
キャリアガスの容器内への供給量を前記既定の供給体積から変更したときの
前記濃度測定手段により測定される前記容器内の前記測定対象成分の濃度の測定値と、
キャリアガスの容器内への変更した供給体積値と、
前記キャリアガス中の測定対象成分の濃度とから、
前記濃度算出手段が前記測定対象成分の濃度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項8】
容器内へのキャリアガスの供給体積をVc
キャリアガスの供給体積がVcであるときの容器内の測定対象成分の濃度を[Ct]、
容器内へのキャリアガスの供給体積を変更したときの供給体積をVc2
キャリアガスの供給体積がVc2であるときの容器内の測定対象成分の濃度を[Ct2]、
キャリアガス中の測定対象成分の濃度を[Ctc]とするとき、
前記濃度算出手段が試料から放出されるガスに対する測定対象成分の濃度[Cs]を式(3)で算出することを特徴とする請求項7に記載の測定装置。
【数3】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−194088(P2012−194088A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58815(P2011−58815)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】