説明

ガス採取用プローブ装置および可搬型水素炎イオン化式ガス検知器

【課題】 高い操作性が確保されながら、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの破損が確実に防止されるガス採取用プローブ装置、および、信頼性の高いガス測定を確実に行うことができ、使用上の利便性が高い可搬型水素炎イオン化式ガス検知器の提供。
【解決手段】 ガス採取用プローブ装置は、可搬型ガス検知器に接続されて用いられるものであり、各々、大径コイル部およびこれに続く小径コイル部が単一の金属線よりなる2つのスパイラル金属線からなり、各々の大径コイル部が互いに螺合されて結合された、共通のコイル内空間を有する複合大径コイル部と、複合大径コイル部から互いに分岐して伸びる各々の小径コイル部よりなる分岐部とを有する線条保護部材が、複合大径コイル部にガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが共に挿通されると共に、各々の分岐部にガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが別個に挿通された状態で、設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象個所におけるサンプリングガスを採取するためのガス採取用プローブ装置およびこのガス採取用プローブ装置が接続されてガス測定が行われる可搬型水素炎イオン化式ガス検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば炭化水素ガスの濃度を検知する方法の一として、例えば炭化水素ガスの気体分子を水素炎中でイオン化してイオン電流を検出し、その検出結果に基づいて炭化水素ガスの濃度を検知する方式が利用されている。
このような検知方式を利用した水素炎イオン化式ガス検知器としては、種々の構成のものが提案されており(例えば特許文献1参照。)、例えば地中に埋設された導管および供給管からのガス漏洩検査などにおいては、可搬型のものが用いられている。
【0003】
一般に、水素炎イオン化式ガス検知器に限らず、可搬型ガス検知器のある種のものにおいては、サンプルガス採取用のノズル装置をガス検知器本体に接続し、例えばポンプ装置などにより測定対象空間のガスを強制的に吸引して採取する方法が利用されている。
このようなガス測定方法によれば、例えば先端ノズルを目的とする場所に向けることにより、人が入ることができない場所であっても、サンプルガスを採取することができるので、高い利便性が得られる。
【特許文献1】特開2000−227416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、サンプルガス採取用のノズル装置を利用したガス測定を行う際には、ガス検知器本体に接続されるガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルがガス測定の妨げにならないように配慮することが必要であると共にガス導入パイプおよびケーブル等が破損しないように保護することが必要とされる。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの新規な保護構造を有し、高い操作性を確保しながら、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが破損することを確実に防止することのできるガス採取用プローブ装置を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、このようなガス採取用プローブ装置が利用され、信頼性の高いガス測定を確実に行うことができると共に、使用上の利便性が高い可搬型水素炎イオン化式ガス検知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガス採取用プローブ装置は、可搬型ガス検知器に接続されて用いられるものであって、
ガス検知器本体の動作を制御するための指示計部と、この指示計部から伸びるガス吸引ノズルと、このガス吸引ノズルの指向状態を手で操作するための保持部と、一端がガス吸引ノズルに接続されると共に他端がガス検知器本体に接続されるガス導入用パイプと、一端が指示計部に接続されると共に他端がガス検知器本体に接続される信号伝達用ケーブルとを備えてなり、
保持部の内部を挿通して当該保持部の他端から互いに分岐して伸びるガス導入用パイプの他端部および信号伝達ケーブルの他端部には、線条保護部材が設けられており、
線条保護部材は、各々、大径コイル部およびこれに続く小径コイル部が単一の金属線よりなる第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線により形成されており、
第1のスパイラル金属線の大径コイル部および第2のスパイラル金属線の大径コイル部は、共通のコイル内空間を有する複合大径コイル部が形成されるよう、互いに螺合されることによって結合されていると共に、第1のスパイラル金属線の小径コイル部および第2のスパイラル金属線の小径コイル部は、配管用分岐部および配線用分岐部が形成されるよう、複合大径コイル部から互いに分岐して伸びる状態とされており、
複合大径コイル部には、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが共に挿通されていると共に、各々の分岐部には、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの一方および他方が挿通されていることを特徴とする。
【0007】
本発明のガス採取用プローブ装置においては、線条保護部材が、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの他端から少なくとも170mm以上の領域にわたって設けられた構成とされていることが好ましい。
【0008】
また、本発明のガス採取用プローブ装置においては、線条保護部材における複合大径コイル部の長さが、線条保護部材の全長の約20%の大きさである構成とされていることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明のガス採取用プローブ装置においては、第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線は、各々、小径コイル部が、大径コイル部のコイル軸と互いに異なるコイル軸を有し、当該コイル軸が大径コイル部の外周縁領域内に存在するものにより構成されていることが好ましい。
【0010】
さらにまた、本発明のガス採取用プローブ装置においては、第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線が、互いに同一の構成を有するものにより構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器は、ガス検知器本体と、このガス検知器本体に接続される上記のガス採取用プローブ装置とを備えており、
ガス検知器本体は、薄型の箱状の外匣を備え、この外匣の一側に、サンプルガス供給管を介して水素炎イオン化式センサー部に接続されたガス導入用パイプ接続部が設けられていると共にガス検知器本体の制御部に接続された信号伝達用ケーブル接続部が設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器は、ガス検知器本体が検出者によって背負われて用いられる構成とすることできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のガス採取用プローブ装置によれば、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが2つのスパイラル金属線が結合されてなる線条保護部材によって保護された構造とされていることにより、線条保護部材それ自体が十分に高い強度および十分な可撓性が得られるものとして構成されているので、ガス採取用プローブ装置の操作性を低下させることなしに、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが折れ曲がるなどして破損することを確実に防止することができる。
【0014】
また、線条保護部材が、第1のスパイラル金属線の小径コイル部および第2のスパイラル金属線の小径コイル部が複合大径コイル部から互いに分岐して伸びる状態とされて配管用分岐部および配線用分岐部が形成された構造を有するものであり、配管用分岐部および配線用分岐部の各々に、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの一方および他方が挿通されていることにより、ガス導入用パイプにおける接続用コネクター部および信号伝達用ケーブルにおける接続用コネクター部は、一方が他方によって規制されることがないので、ガス採取用プローブ装置とガス検知器本体との接続を極めて容易に達成することができる。
【0015】
本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器によれば、上記のような特定の構造のガス採取用プローブ装置が接続されて用いられるものであることにより、ガス採取用プローブ装置が十分に高い操作性を有するものであると共に、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが十分に保護された構造のものであるので、信頼性の高いガス測定を確実に行うことができると共に、高い利便性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明について図面を参照して説明する。
【0017】
<ガス採取用プローブ装置>
図1は、本発明のガス採取用プローブ装置の一例における構成の概略を示す正面図、図2は、図1にガス採取用プローブ装置の縦断面を示す部分断面図である。
このガス採取用プローブ装置70は、ガス検知器本体10の動作を制御するための指示計部71と、この指示計部71から伸びるガス吸引ノズル76と、指示計部71の下面に設けられた、ガス吸引ノズル76の指向状態を手で操作するための保持部77と、一端がガス吸引ノズル76に接続されると共に他端がガス検知器本体10に接続されるガス導入用パイプ74と、一端が指示計部71に接続されると共に他端がガス検知器本体10に接続される信号伝達用ケーブル75とを備えている。図2における88は、携行用保持具であるストラップである。
【0018】
指示計部71は、背面における上方位置に斜め上方を向く傾斜面を有する錐台状部分72Aを備えた略箱状のケース72を備えており、ケース72の正面には、表示部78Aおよび操作部78Bが設けられている。
ケース72の錐台状部分72Aにおける傾斜面には、ガス吸引ノズル76が、その先端開口が斜め上方向に指向する状態で、フィルター76Aを介して接続されており、これにより、例えば検出者の頭上の測定対象空間におけるガスを採取する場合であっても、表示部78Aを確認しながら、ガス測定を行うことができる。
【0019】
ケース72の内部における正面側領域には、回路基板73が上下方向に延びるよう配設されており、この回路基板73の背面側に、一端がガス吸引ノズル76に接続されたガス導入用パイプ74が下方に向かって延びるよう配設されていると共に一端が回路基板73に接続された信号伝達用ケーブル75が下方に向かって延びるよう配設されている。
ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75の他端部は、ケース72の下面中央位置より外部に導出されている。
【0020】
保持部77には、検出者が手で握って保持するため保持用グリップ部77Aが形成されており、その内部には、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が挿通された状態で配設されている。
【0021】
保持部77の下端面には、保持部77の下面から延び出るガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が共に内部に挿通されてこれを保護する、変形自在な外套ホース79が設けられている。
外套ホース79は、例えば塩化ビニル樹脂により構成されている。
【0022】
外套ホース79の他端から互いに分岐して延びるガス導入用パイプ74の他端部および信号伝達ケーブル75の他端部には、線条保護部材80が設けられている。
【0023】
この線条保護部材80は、図3に示すように、例えば互いに同一の構成を有する第1のスパイラル金属線81Aおよび第2のスパイラル金属線81Bが結合されて構成されている。
【0024】
具体的に説明すると、図4および図5に示すように、第1のスパイラル金属線81Aおよび第2のスパイラル金属線81Bは、大径コイル部82およびこれに続く小径コイル部83が単一の金属線材により形成されている。各々のスパイラル金属線81A、81Bが単一の金属線材によって形成されていることにより、部品点数を減少させることができ、有利に製造することができる。
小径コイル部83は、大径コイル部82のコイル軸82Aと互いに異なり、大径コイル部82の外周縁領域内に存在するコイル軸83Aを有する。これにより、第1のスパイラル金属線81Aおよび第2のスパイラル金属線81Bを結合したときに、得られる線条保護部材80を径方向に対してコンパクトなものとして構成することができると共にガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75を挿入しやすいものとして構成することができる。
84は、ガス検知器本体10に接続するための接続用コネクター部74A、75Aが形成される接続用コネクター部形成部であり、小径コイル部83よりコイル径が大きい状態とされている。
【0025】
そして、第1のスパイラル金属線81Aの大径コイル部82および第2のスパイラル金属線81Bの大径コイル部82が、共通のコイル内空間を有する複合大径コイル部85が形成されるよう、互いに螺合されることによって結合されており、第1のスパイラル金属線81Aの小径コイル部83および第2のスパイラル金属線81Bの小径コイル部83は、複合大径コイル部85から互いに分岐して伸びる状態とされており、これにより、ガス導入用パイプ配管用分岐部86Aおよび信号伝達用ケーブル配線用分岐部86Bが形成されている。
【0026】
線条保護部材80における複合大径コイル部85には、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が共に挿通され、複合大径コイル部85の他端から延び出るガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75の他端部は、それぞれ、ガス導入用パイプ配管用分岐部86Aおよび信号伝達用ケーブル配線用分岐部86Bに別個に挿通されている。 この実施例においては、線条保護部材80における複合大径コイル部85の外表面を被覆する被覆材87が設けられている。
【0027】
線条保護部材80は、例えばガス導入用パイプ74の他端および信号伝達用ケーブル75の他端から、少なくとも170mm以上の領域にわたって配設されていることが好ましい。これにより、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75に対する十分な保護機能を確実に得ることができる。
【0028】
線条保護部材80における複合大径コイル部85の長さは、実用上、線条保護部材80の全長の例えば約20%程度の大きさであることが好ましい。これにより、十分な可撓性が確保された状態において、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75を束ねた状態で保護することができ、使用時においてガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が妨げになることを防止することができ、高い操作性を確実に得ることができる。
【0029】
第1のスパイラル金属線81Aおよび第2のスパイラル金属線81Bを構成する金属線材の材質としては、例えばステンレス鋼線等を例示することができる。
【0030】
以上において、ガス採取用プローブ装置70の一数値例を示すと、例えばガス導入用パイプ74は、外径が4mm、内径が2mm、長さが2mであるものであり、信号伝達用ケーブル75は、型式「S−MVUS」(AISAN社製)が用いられており、直径がφ5mm、長さが2mであるものである。
第1のスパイラル金属線81Aおよび第2のスパイラル金属線81Bは、金属線材の素線径が、例えば2mm、大径コイル部82のコイルピッチが、例えば4mm、小径コイル部83のコイルピッチが、例えば3mmであるものである。
線条保護部材80の全長(自然の状態)が例えば170mmであり、複合大径コイル部85は、コイル径がφ20mm、コイルピッチが4mm、コイル長が35mm(線条保護部材80の全長の約20%の大きさ)であり、ガス導入用パイプ配管用分岐部86Aは、コイル径が6mm、コイルピッチが3mm、コイル長が100mmであり、信号伝達用ケーブル配線用分岐部86Bは、コイル径がφ6mm、コイルピッチが3mm、コイル長が100mmであり、各々のスパイラル金属線81A、81Bにおける大径コイル部82のコイル軸82Aに対する小径コイル部83のコイル軸83Aの偏位量Lが4mmであるものとされている。
このような構成であることにより、得られる線条保護部材80に十分な強度が得られると共に十分な可撓性が得られる。
【0031】
<可搬型水素炎イオン化式ガス検知器>
本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器は、ガス検知器本体10と、このガス検知器本体10に接続される、上記ガス採取用プローブ装置70とを備えている。
図6は、本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器の一構成例における、ガス検知器本体の外観を示す正面図、図7は、図6に示すガス検知器本体の上面図、図8は、図6に示すガス検知器本体の右側面図、図9は、図6に示すガス検知器本体の内部の構成を概略的に示す説明図である。以下、本明細書において定義する方向は、立っている人が当該ガス検知器本体10を背負ったときの状態に基づくものである。
【0032】
このガス検知器本体10は、人が背負って携行することのできる、薄型の箱状の外匣11を備えており、この外匣11の両側面には、各々、板状ゴムの内部に金属板が埋設された板状弾性カバーよりなる側壁13A、13Bが設けられている。
外匣11の正面における上方部には、表示部18および操作部19が設けられている。
【0033】
各側壁13A、13Bには、上端部に外匣11の上面板の側縁部に臨む横方向内方に突出する舌片部14が形成されており、この舌片部14が外匣11の上面板における側縁部の上面に係止されることにより、外匣11に装着されている。
各側壁13A、13Bは、外匣11の下面板より下方に突出する底面脚部15を有し、この底面脚部15の下端面が対床面対接面15Aとされる。
【0034】
外匣11の内部における上方部には、2本の棒状の可充電型電池20が各々上下方向に延びるよう並んで配置されてなる電池室12が形成されていると共に、電池室12の一側(図9において右側)に、信号処理回路基板および電源供給回路基板を備えた制御部55、並びに水素炎イオン化式センサー部(以下、「センサー部」という。)50が配置され、電池室12の他側(図9において左側)に、燃焼ガスである水素ガスをセンサー部50に供給するための水素ガスボンベが装填されるガスボンベ装填室17が形成されている。
【0035】
また、外匣11の内部における下方部には、水素ガスの供給量を調整する流量調整バルブ30およびサンプルガス吸引ポンプ32が配置されている。
流量調整バルブ30は、水素ガスボンベにおけるガスボンベ本体42と並行に上下方向に延びる水素ガス供給管31Aを介してガスボンベ本体42に接続されると共に、外匣11の側壁に向かって横方向外方に延び、センサー部50の下方位置より上方に向かって延びる水素ガス供給管31Bを介してセンサー部50に接続されている。
サンプルガス吸引ポンプ32は、ガス検知器本体10の一側に設けられたガス導入用パイプ接続部34に接続されると共にサンプルガス供給管33を介してセンサー部50に接続されている。
このガス検知器本体10においては、燃焼ガスである水素ガスとサンプルガス(測定ガス)とが分離された状態でセンサー部50に供給される構造とされている。
そして、ガス検知器本体10の一側には、ガス導入用パイプ接続部34と並んだ位置に、ガス検知器本体10の制御用回路基板(図示せず)に接続された信号伝達用ケーブル接続部37が設けられている。
【0036】
可充電型電池20としては、例えば、電池電圧がDC3.6Vである、型式「VP110」(BLACK&DECKER社製)が用いられており、下端面の中央位置に内方にくぼんだ形態の給電端子21を有する。
【0037】
各可充電型電池20は、外匣11の上面から屈曲して裏面側に連続する電池室カバー蓋12Aを回動することによって電池室12の上部を開放した状態において、上方から挿入されることにより装着される。
具体的には、各可充電型電池20は電池挿入用ガイド板22の電池挿入ガイド孔22A内に挿通されて下端が弾性案内部材としての機能を有するマイナス側接片端子23に案内され、このマイナス側接片端子23によって側方に押圧された状態において、電池室12の下端面に突出して設けられたプラス側突出端子24が可充電型電池20の下端面の給電端子21に嵌合されて装着される。
【0038】
水素ガスボンベは、ガスボンベ本体42と、このガスボンベ本体42における水素ガス噴出部を保護するキャップ45とにより構成されている。
ガスボンベ本体42は、頚部41Aを形成する筒状部分と、この頚部41Aに連続する当該頚部41Aより大径の胴部41Bを形成する有底筒状部分とにより構成された耐圧容器41を備え、耐圧容器41の頚部41Aに、水素ガス供給用ガス流路を開閉して水素ガスの供給をON−OFFする水素ガス供給用バルブ機構を備えた水素ガス噴出部が、頚部41Aの内周面に形成された例えばネジ溝に螺合されることにより一体的に装着されて、構成されている。
耐圧容器41内には、水素ガス供給源である例えば粉末状(粒状)の水素吸蔵合金(図示せず)が充填されており、ガスボンベ本体42内の水素ガス圧は、通常の条件すなわち常温常圧環境下において、例えば1MPa程度とされている。
この水素ガスボンベは、水素ガス供給用ガス流路を開閉する機能部が耐圧容器41の頚部41A内に収容された状態とされており、これにより、水素ガス供給用バルブ機構が十分に保護されて高い防爆性が得られるので、引火や爆発等が生ずる危険性が低く、高い安全性が得られる。
【0039】
このガスボンベ本体42における耐圧容器41の頚部41Aには、非装着時において水素ガス噴出部を保護するキャップ45が、変形自在な連結材44によって連結されており、キャップ45が外匣11の内部に設けられた、図示しないキャップ保持部によって保持されている。
【0040】
このガス検知器本体10においては、ガスボンベ本体42から噴出された1MPa程度の高圧状態の水素ガスを適正な大きさのガス圧、例えば0.05〜0.3MPaに減圧した状態で供給するための圧力調整器35が配置されている。
圧力調整器35の出口部分には、二次圧力計36が接続されており、水素ガスのセンサー部50に対するガス供給圧力の監視が行われ、その監視結果に基づいて流量調整バルブ30の開閉状態の制御が行われる。
【0041】
図7および図9において、48は、ガスボンベ本体42に一体的に装着された水素ガス供給用バルブ機構を開閉する水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブであって、この水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ48が検出者によって押しまわされることにより水素ガス供給用バルブ機構が開状態とされて水素ガスがガスボンベ本体42より噴出される。
【0042】
上記構成の水素炎イオン化式ガス検知器は、ガス採取用プローブ装置70をガス検知器本体10に接続した後、検出者がガス検知器本体10を背負い、ガス採取用プローブ装置70を手に持った状態で、測定個所において検出者によって携行されて使用される。
ガス採取用プローブ装置70のガス検知器本体10に対する接続は、ガス導入用パイプ74に係る接続用コネクター部74Aがガス検知器本体10のガス導入用パイプ接続部34に接続されると共に信号伝達用ケーブル75に係る接続用コネクター部75Aが信号伝達用ケーブル接続部37に接続されることにより、達成される。
【0043】
ガス測定を開始するに際しては、先ず、検出者によって、水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ48が押し回されることにより、水素ガス供給用バルブ機構が開状態とされて水素ガスが水素ガス供給管31A、31Bを介して所定の供給量でセンサー部50に供給されると共に、ガス検知器本体10の電源スイッチがONとされガス吸引ポンプ32が作動されることにより、サンプルガスがガス採取用プローブ装置70のガス吸引ノズル76を介して採取されてセンサー部50に所定の供給量で供給される。ここに、水素ガスの供給量は、例えば約20ミリリットル/min、サンプルガスの供給量は、例えば0.5リットル/minである。
【0044】
センサー部50においては、ガスボンベ本体42から供給された水素ガスが点火されて水素炎が発生された状態において、水素ガスと分離された状態で供給されたサンプルガスが水素炎に接触されることによって当該サンプルガス中に含まれる炭化水素が熱分解され、これにより発生する陽イオンの量が電流値として検出され、その検出結果に基づいてサンプルガス中に含まれる炭化水素ガス濃度が検知され、その結果がガス検知器本体10における表示部18およびガス採取用プローブ装置70における表示部78Aに表示される。
【0045】
而して、上記構成のガス採取用プローブ装置70によれば、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が2つのスパイラル金属線81A、81Bが結合されてなる線条保護部材80によって保護された構造とされていることにより、線条保護部材80それ自体が十分に高い強度および十分な可撓性が得られるものとして構成されているので、ガス採取用プローブ装置70の操作性を低下させることなしに、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が折れ曲がるなどして破損することを確実に防止することができる。
すなわち、上記ガス採取用プローブ装置70のようなガス採取用装置を接続してガス測定を行う構成の可搬型ガス検知器においては、概して、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75におけるガス検知器本体10との接続部近傍部分に負荷がかかりやすく、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75を単に外套ホース79のみにより保護した構造のものであれば、ガス検知器本体10との接続部近傍部分においてガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が折れ曲がり破損するおそれがあるが、本発明に係るガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75の保護構造によれば、このような問題が生ずることを確実に防止することができ、信頼性の高いガス測定を確実に行うことができる。
【0046】
また、線条保護部材80が、第1のスパイラル金属線81Aの小径コイル部83および第2のスパイラル金属線81Bの小径コイル部83が複合大径コイル部85から互いに分岐して伸びる状態とされて、それぞれ、ガス導入用パイプ配管用分岐部86Aおよび信号伝達用ケーブル配線用分岐部86Bが形成された構造を有するものであり、第1のスパイラル金属線81Aの小径コイル部83および第2のスパイラル金属線81Bの小径コイル部83に、ガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75の一方および他方が挿通されていることにより、ガス導入用パイプ74における接続用コネクター部74Aおよび信号伝達用ケーブル75における接続用コネクター部75Aは、一方が他方によって規制されることがないので、ガス採取用プローブ装置70とガス検知器本体10との接続を極めて容易に達成することができる。
【0047】
そして、このようなサンプルガス採取用プローブ装置70が接続されてサンプルガスが採取される可搬型の水素炎イオン化式ガス検知器によれば、ガス採取用プローブ装置70が十分に高い操作性を有するものであると共にガス導入用パイプ74および信号伝達用ケーブル75が十分に保護された構造のものであるので、信頼性の高いガス測定を確実に行うことができると共に、使用上、高い利便性を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、本発明のガス採取用プローブ装置においては、線条保護部材を構成する2つのスパイラル金属線は、互いに同一の構成、すなわち各コイル部のコイル径、コイルピッチ、巻き数、巻回方向が同一のものであっても、螺合されて連結可能な状態であれば、互いに異なる構成のものであってもよい。
【0049】
また、本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器においては、測定中において水素炎が消炎したこと、あるいは、測定個所における雰囲気が危険な状態にあることなどを報知するための警報報知機構が設けられた構成とすることができる。
さらに、本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器は、水素ガスとサンプルガスとが分離された状態でガス供給部に供給される構成のものであっても、水素ガスとサンプルガスとが混合された状態でガス供給部に供給される構成のものであっても、いずれの構成のものであってもよい。
さらにまた、上記実施形態においては、ガス検知器本体が検出者によって背負われて使用される場合について説明したが、適宜の装着具によってガス検知器本体を肩に吊り下げた状態で使用しても、あるいは、例えばガス検知器本体載置用の手押し車を用い、地上を走行させて使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のガス採取用プローブ装置の一例における構成の概略を示す正面図である。
【図2】図1に示すガス採取用プローブ装置の縦断面を示す部分断面図である。
【図3】線条保護部材の一構成例を概略的に示す平面図である。
【図4】線条保護部材を構成するスパイラル金属線の一構成例を概略的に示す平面図である。
【図5】スパイラル金属線をコイル軸方向から見た場合における平面図である。
【図6】本発明の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器の一構成例における、ガス検知器本体の外観を示す正面図である。
【図7】図6に示すガス検知器本体の上面図である。
【図8】図6に示すガス検知器本体の右側面図である。
【図9】図6に示すガス検知器本体の内部の構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 ガス検知器本体
11 外匣
12 電池室
12A 電池室カバー蓋
13A、13B 側壁
14 舌片部
15 底面脚部
15A 対床面対接面
17 ガスボンベ装填室
18 表示部
19 操作部
20 可充電型電池
21 給電端子
22 電池挿入用ガイド板
22A 電池挿入ガイド孔
23 マイナス側接片端子
24 プラス側突出端子
30 流量調整バルブ
31A、31B 水素ガス供給管
32 サンプルガス吸引ポンプ
33 サンプルガス供給管
34 ガス導入用パイプ接続部
35 圧力調整器
36 二次圧力計
37 信号伝達用ケーブル接続部
41 耐圧容器
41A 頚部
41B 胴部
42 ガスボンベ本体
44 連結材
45 キャップ
48 水素ガス供給用バルブ機構開閉用ノブ
55 制御部
50 水素炎イオン化式センサー部(センサー部)
70 ガス採取用プローブ装置
71 指示計部
72 ケース
72A 錐台状部分
73 回路基板
74 ガス導入用パイプ
74A 接続用コネクター部
75 信号伝達ケーブル
75A 接続用コネクター部
76 ガス吸引ノズル
76A フィルター
77 保持部
77A 保持用グリップ部
78A 表示部
78B 操作部
79 外套ホース
80 線条保護部材
81A 第1のスパイラル金属線
81B 第2のスパイラル金属線
82 大径コイル部
82A コイル軸
83 小径コイル部
83A コイル軸
84 接続用コネクター部形成部
85 複合大径コイル部
86A ガス導入用パイプ配管用分岐部
86B 信号伝達用ケーブル配線用分岐部
87 被覆材
88 ストラップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可搬型ガス検知器に接続されて用いられるガス採取用プローブ装置であって、
ガス検知器本体の動作を制御するための指示計部と、この指示計部から伸びるガス吸引ノズルと、このガス吸引ノズルの指向状態を手で操作するための保持部と、一端がガス吸引ノズルに接続されると共に他端がガス検知器本体に接続されるガス導入用パイプと、一端が指示計部に接続されると共に他端がガス検知器本体に接続される信号伝達用ケーブルとを備えてなり、
保持部の内部を挿通して当該保持部の他端から互いに分岐して伸びるガス導入用パイプの他端部および信号伝達ケーブルの他端部には、線条保護部材が設けられており、
線条保護部材は、各々、大径コイル部およびこれに続く小径コイル部が単一の金属線よりなる第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線により形成されており、
第1のスパイラル金属線の大径コイル部および第2のスパイラル金属線の大径コイル部は、共通のコイル内空間を有する複合大径コイル部が形成されるよう、互いに螺合されることによって結合されていると共に、第1のスパイラル金属線の小径コイル部および第2のスパイラル金属線の小径コイル部は、配管用分岐部および配線用分岐部が形成されるよう、複合大径コイル部から互いに分岐して伸びる状態とされており、
複合大径コイル部には、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルが共に挿通されていると共に、各々の分岐部には、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの一方および他方が挿通されていることを特徴とするガス採取用プローブ装置。
【請求項2】
線条保護部材は、ガス導入用パイプおよび信号伝達用ケーブルの他端から少なくとも170mm以上の領域にわたって設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガス採取用プローブ装置。
【請求項3】
線条保護部材における複合大径コイル部の長さが、線条保護部材の全長の約20%の大きさであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス採取用プローブ装置。
【請求項4】
第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線は、各々、小径コイル部が、大径コイル部のコイル軸と互いに異なるコイル軸を有し、当該コイル軸が大径コイル部の外周縁領域内に存在するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス採取用プローブ装置。
【請求項5】
第1のスパイラル金属線および第2のスパイラル金属線は、互いに同一の構成を有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のガス採取用プローブ装置。
【請求項6】
ガス検知器本体と、このガス検知器本体に接続される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のガス採取用プローブ装置とを備えており、
ガス検知器本体は、薄型の箱状の外匣を備え、この外匣の一側に、サンプルガス供給管を介して水素炎イオン化式センサー部に接続されたガス導入用パイプ接続部が設けられていると共にガス検知器本体の制御部に接続された信号伝達用ケーブル接続部が設けられていることを特徴とする可搬型水素炎イオン化式ガス検知器。
【請求項7】
ガス検知器本体が検出者によって背負われて用いられることを特徴とする請求項6に記載の可搬型水素炎イオン化式ガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−250764(P2006−250764A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68568(P2005−68568)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】