説明

ガス栓

【課題】リセット手段の構成の簡素化及び部材点数の減少を図り、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を適切に行えるガス栓を提供する。
【解決手段】リセット操作は、過流出防止弁H2における被操作部H3をガス流通路1の上流側へ押圧する操作であり、過流出防止弁H2を収容する過流出防止弁収容部材Haが設けられ、被操作部H3は、過流出防止弁収容部材Haのガス流通路1のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けられ、リセット手段Rは、前記過流出防止弁収容部材Haを、スライド弁Gの移動に伴ってガス流通路1のガス流通方向に移動自在とし、その過流出防止弁収容部材Haのガス流通方向での移動により被操作部H3に当接させてリセット操作を行なう当接部材を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁と、前記ガス流通方向で前記スライド弁と前記過流出防止弁との間に配置されて、前記閉じ位置と前記開き位置との間での前記スライド弁の移動により前記過流出防止弁をリセットさせるリセット操作を行うリセット手段とが備えられているガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなガス栓としてのガスコンセントは、ガス管が接続されたガス接続具をガス栓本体に装着することで、ガス接続具に備えられた押圧部にてスライド弁を閉じ位置からガス流通路の上流側の開き位置まで押圧してガス流通路を開弁してガス接続具に接続されたガス器具へのガス供給を行う。スライド弁は、付勢部材により閉じ位置に復帰するように付勢されているので、ガス接続具をガス栓本体から取り外すことで、スライド弁に対する押圧部による押圧が解除されて、付勢部材の付勢力によりスライド弁が閉じ位置に復帰してガス器具へのガス供給が停止される。
【0003】
このようなガス栓では、ガス接続具に接続されたガス管が破れる等により一定以上の流量のガスが流れることがあるので、このような場合に、ガス供給を停止する必要がある。そこで、従来、ガス流通路のガス流量が一定以上となると、その一定以上のガス流量の流動圧により、初期位置からガス流通路を閉じる作動位置に移動する過流出防止弁が備えられている。これは、過流出防止弁が作動位置に移動することでガスの流通が阻止されるものであるが、ガス器具へのガス供給を再開させるためには、過流出防止弁を作動位置から初期位置に復帰させることが必要である。
そこで、使用者によってガス接続具をガス栓本体から取り外すという動作が行われることで、過流出防止弁における被操作部をガス流通路の上流側へ押圧するリセット操作を行うリセット手段を備えており、リセット手段によるリセット操作によって過流出防止弁を作動位置から初期位置に復帰させるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
そして、リセット手段は、ガス接続具のガス栓本体からの取り外しによりリセット操作を行うだけでなく、ガス接続具がガス栓本体に装着されている場合には、リセット操作を解除しておき、過流出防止弁の初期位置から作動位置への移動を許容しておくことが必要である。
【0004】
特許文献1に記載のガス栓では、リセット手段が、ガス流通路のガス流通方向に直交する流路径方向に沿う軸心周りに揺動自在なL字状の第1レバーと第2レバーとを備えている。第1レバーは、ガス栓本体にガス接続具が装着された場合に、スライド弁の上流側端部に備えられた押し用突部によってガス流通路の上流側に押圧されて、第2レバーの揺動を規制する規制位置からガス流通路の上流側に揺動されて第2レバーの揺動を許容している。第2レバーは、作動位置に移動することでガス流通路の下流側に突出された過流出防止弁の軸部をガス流通路の上流側へ押圧する側に揺動するように付勢手段により付勢されている。ガス栓本体にガス接続具が装着されている場合には、第1レバーによって第2レバーの揺動を規制することで、過流出防止弁の軸部がガス流通路の下流側へ突出する突出代を確保して、過流出防止弁の軸部をガス流通路の上流側に押圧するリセット操作を解除している。このようにリセット操作を解除することで、過流出防止弁が初期位置から作動位置へ移動できることになる。ガス栓本体からガス接続具が取り外された場合には、押し用突部が第1レバーを押圧してガス流通路の上流側に揺動させることで第2レバーを付勢力により揺動させ、過流出防止弁の軸部をガス流通路の上流側に押圧するリセッ
ト操作を行い、過流出防止弁を作動位置から初期位置に復帰させている。
【0005】
一方、上記のようなガス栓として、ガス栓本体へのガス接続具の装着とは関係なく、操作つまみ等の操作部に対する回転操作に伴って開閉弁である回動弁を回転させて開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える所謂回転式のガス栓(例えば、特許文献2を参照。)などが知られている。また、ガスコンロ等に内蔵されガス流入路とガス流出路との間の開閉を行ってガスの供給及び停止を切り替える開閉弁として、操作ボタン等の操作部に対する押圧操作に伴って開閉弁であるスライド弁をスライドさせて開閉を行う所謂プッシュプッシュ式の開閉弁(例えば、特許文献3を参照。)などが知られており、上記ガス栓についても、この開閉弁と同様にプッシュプッシュ式に構成することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−65071号公報
【特許文献2】特公平02−021660号公報
【特許文献3】特開平02−154918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のガス栓では、リセット手段として、押し用突部、及び、付勢手段に加えて、第1レバーと第2レバーとの2つの揺動部材を設けなければならず、構成の複雑化及び部材点数の増加を招いている。
また、第1レバーについては、押し用突部にて押圧できるとともに、第2レバーの揺動を規制できる位置に配置しなければならない。第2レバーについても、第1レバーにて揺動が規制されるとともに、過流出防止弁の軸部をガス流通路の上流側に押圧できる位置に配置しなければならない。したがって、第1レバーと第2レバーの配置位置を精度よく調整しなければならず、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を適切に行い難いものとなっていた。
【0008】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、リセット手段の構成の簡素化及び部材点数の減少を図り、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を適切に行うことができるガス栓を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のガス栓は、
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁と、前記ガス流通方向で前記スライド弁と前記過流出防止弁との間に配置されて、前記閉じ位置と前記開き位置との間での前記スライド弁の移動により前記過流出防止弁をリセットさせるリセット操作を行うリセット手段とが備えられているガス栓であって、
前記リセット操作は、前記過流出防止弁における被操作部を前記ガス流通路の上流側へ押圧する操作であり、
前記過流出防止弁を収容する過流出防止弁収容部材が設けられ、
前記被操作部は、前記過流出防止弁収容部材の前記ガス流通路のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けられ、
前記リセット手段は、前記過流出防止弁収容部材を、前記スライド弁の移動に伴って前記ガス流通路のガス流通方向に移動自在とし、その過流出防止弁収容部材の前記ガス流通方向での移動により前記被操作部に当接させて前記リセット操作を行なう当接部材を備えている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、過流出防止弁を収容する過流出防止弁収容部材が、スライド弁の移動に伴ってガス流通路のガス流通方向に移動自在とされているので、スライド弁を移動させることで過流出防止弁収容部材が移動し、その過流出防止弁収容部材の移動によって被操作部を移動させて当接部材に当接させることでリセット操作を行なうことができる。このように、スライド弁の移動によって、当接部材への被操作部の当接を適切に行うことができるので、リセット手段によるリセット操作を容易かつ適切に行うことができる。
【0011】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記リセット手段は、前記スライド弁と前記過流出防止弁収容部材とを連結する連結部材を備えるとともに、前記開き位置から前記閉じ位置への前記スライド弁の移動に伴って前記被操作部に当接して前記リセット操作を行う操作位置に固定されて、前記閉じ位置から前記開き位置への前記スライド弁の移動に伴って前記被操作部が離間して前記リセット操作を解除する固定部材を前記当接部材として備えている点にある。
【0012】
リセット手段は、スライド弁と過流出防止弁収容部材とを連結する連結部材を備えるので、スライド弁と過流出防止弁収容部材を一体として軸方向に移動させることができる。また、リセット手段としては、連結部材にてスライド弁と過流出防止弁収容部材とを連結するとともに、当接部材としての固定部材を備えるだけでよく、リセット手段の構成の簡素化及び部材点数の減少を図ることができる。そして、過流出防止弁収容部材は、連結部材によってスライド弁に連結されているので、スライド弁の移動によって、リセット操作を行う操作位置に固定されている固定部材への被操作部の当接、及び、固定部材からの被操作部の離間を適切に行うことができるので、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を適切に行うことができる。
【0013】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記固定部材は、前記ガス流通路のガス流通方向に対して直交する流路径方向の全体に亘る板状に形成され、
前記固定部材に、ガス流通を許容する流通孔が形成されており、前記連結部材は、前記流通孔を通して前記スライド弁と前記過流出防止弁収容部材とを連結している点にある。
【0014】
本特徴構成によれば、固定部材は、前記ガス流通路のガス流通方向に対して直交する流路径方向の全体に亘る板状に形成されているので、固定部材と当接してリセット操作を行なう被操作部が、ガス流通路の流路径方向のいずれの場所に設けられていても固定部材と当接させることができ、リセット操作を確実に行なうことができる。
また、固定部材に、ガス流通を許容する流通孔が形成されており、これによって、固定部材の上流側から下流側へガスを流通させることができる。また、連結部材は、流通孔を通してスライド弁と過流出防止弁収容部材とを連結しているので、固定部材の上流側に位置する過流出防止弁収容部材と、下流側に位置するスライド弁とを連結する連結部材を流通孔に通すことで、連結部材を通すための貫通口を新たに固定部材に設ける必要がなくなり、リセット手段の構成の簡素化が可能となる。
【0015】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記過流出防止弁収容部材は、その内部にガスが流通する流路が形成された筒状に形成され、前記ガス流通路の内壁部を前記ガス栓本体の軸方向に気密状態で摺動自在に備えられており、前記過流出防止弁は、前記過流出防止弁収容部材の内部に形成された流路を開閉するように設けられている点にある。
【0016】
本特徴構成によれば、過流出防止弁収容部材はガス流通路の内壁部をガス栓本体の軸方向に気密状態で摺動自在に備えられるので、ガス流通路の内壁部と過流出防止弁収容部材との間にガスが流通することを防止しつつ、過流出防止弁収容部材のガス流通路内のガス流通方向における動きを利用して、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を行うことができる。
また、過流出防止弁は、過流出防止弁収容部材の内部に形成された流路を開閉するように設けられているので、過流出防止弁にて流路を開閉するための構成の簡素化を図りながら、過流出防止弁収容部材に過流出防止弁を収容させることができる。
【0017】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記被操作部は、前記過流出防止弁収容部材よりも前記ガス流通路の下流側に突出する状態で備えられている点にある。
【0018】
本特徴構成によれば、被操作部は、過流出防止弁収容部材よりもガス流通路の下流側に突出しているので、リセット操作の際に、被操作部が配置された過流出防止弁収容部材が下流側に移動して固定部材と当接するときにおいて、過流出防止弁収容部材よりも先に被操作部が当接されるので、確実にリセット操作を行うことができる。
【0019】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記リセット手段、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている点にある。
【0020】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する点にある。
【0021】
即ち、本発明に係るガス栓は、スライド弁が前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂ガスコンセントとして構成できる。
【0022】
本発明のガス栓の更なる特徴構成は、
前記スライド弁が、操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する点にある。
【0023】
このように本発明のガス栓は、スライド弁が操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動するようにして、所謂プッシュプッシュ式のガスコックとして構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態におけるガス接続具をガス栓本体から取り外している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図2】本実施形態におけるガス接続具をガス栓本体に装着している状態でのガス接続具とガス栓との断面図
【図3】第1実施形態におけるガス栓の動きを示す断面図
【図4】別実施形態におけるガス栓の断面図
【図5】第2実施形態のガス栓の閉栓時の状態を示す側断面図
【図6】第2実施形態のガス栓のスライド弁及び操作機構部を示す分解斜視図
【図7】第2実施形態のガス栓の閉栓時で過流出防止弁の非作動時の状態を示す側断面図
【図8】第2実施形態のガス栓の開栓動作途中の状態を示す側断面図
【図9】第2実施形態のガス栓の開栓時で過流出防止弁の作動時の状態を示す側断面図
【図10】第2実施形態における開栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【図11】第2実施形態における閉栓動作時のガイド溝におけるガイドピンの位置の遷移状態を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
本発明に係るガス栓の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係るガス栓は、図1及び図2に示すように、ガス流通路1が内部に形成された円筒状のガス栓本体2を備えており、そのガス栓本体2にガス接続具100を装着することでガス流通路1でのガス流通によりガス接続具100に接続されたガス器具へのガス供給を行い、ガス栓本体2からガス接続具100を取り外すことでガス流通路1でのガス流通を停止してガス器具へのガス供給を停止する、所謂ガスコンセントとして構成されている。図1は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示しており、図2は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着している状態を示している。
【0026】
ガス栓本体2には、ガス流通路1を開閉自在なスライド弁Gと、ガス流通路1でのガス流量が一定以上の過流量となった場合にガス流通を阻止する過流出防止弁H2と、ガス接続具100のガス栓本体2からの取り外しが行われた場合に過流出防止弁H2をリセットさせるリセット操作を行うリセット手段Rとが備えられている。ここで、リセット操作は、過流出防止弁H2における被操作部材H3(被操作部に相当する)をガス流通路1の上流側へ押圧する操作となっている。
【0027】
ガス流通路1は、その流路断面を円形状とし、ガス栓本体2の軸方向(図1及び図2中X方向)に沿う直線状に設けられており、ガス栓本体2の軸方向とガス流通路1のガス流通方向が同一方向となっている。ガス流通路1は、流路径が変更された複数の流路部位1a〜1gから構成されており、ガス流通方向の上流側(図1及び図2中X方向の右側)から順に、過流出防止弁H2を備えた過流出防止機構H、リセット手段R、スライド弁Gが備えられている。複数の流路部位として、ガス流通方向の上流側から順に、第1流路部位1a、第2流路部位1b、第3流路部位1c、第4流路部位1d、第5流路部位1e、第6流路部位1f、第7流路部位1gが備えられている。第1流路部位1aは、ガス流入口(図示省略)に連通されており、第2流路部位1bは、第1流路部位1aよりも流路径が小さく形成されており、過流出防止機構Hが配置されている。第3流路部位1cは、第2流路部位1bよりも流路径が小さく形成されており、リセット手段Rが配置されている。第4流路部位1dは、第3流路部位1cよりも流路径が小さく形成されており、第5流路部位1eは、第3流路部位1cよりも流路径が大きく形成されている。第6流路部位1fは、第5流路部位1eよりも流路径が小さく形成されており、第7流路部位1gは、上流側よりも下流側の方が流路径を小さくする傾斜状に形成されており、ガス栓本体2の先端部に形成されたガス流出口3に連通されている。
【0028】
スライド弁Gは、ガス流通路1における第6流路部位1fを閉弁自在な第1弁体G1と、ガス流通路1における第7流路部位1gを閉弁自在な第2弁体G2とを備えている。
第1弁体G1は、第6流路部位1fと第5流路部位1eとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第1弁体G1の上流側端部部位の外径が第6流路部位1fの流路径と同一となっており、第1弁体G1が着座する弁座部が第6流路部位1の内壁部にて構成されている。第1弁体G1は、第6流路部位1fに移動した場合に第6流路部位1fを閉じる閉じ位置に位置し、第5流路部位1eに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第1弁体G1は、第1付勢部材F1によって閉じ位置に復帰するように付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第6流路部位1fを閉弁している。
【0029】
第2弁体G2は、第6流路部位1fと第7流路部位1gとに亘ってガス栓本体2の軸方向に沿って移動自在に設けられている。第2弁体G2の下流側端部部位の外径が第7流路部位1gの傾斜部位の流路径と同一となっており、第2弁体G2が着座する弁座部が第7流路部位1gの傾斜部位にて構成されている。第2弁体G2は、第7流路部位1gに移動した場合に第7流路部位1gを閉じる閉じ位置に位置し、第6流路部位1fに移動した場合にガス流通を許容する開き位置に位置する。第2弁体G2は、第2付勢部材F2によって閉じ位置に復帰するように付勢されており、ガス接続具100がガス栓本体2から取り外されている場合には、閉じ位置に位置して第7流路部位1gを閉弁している。
このようにして、スライド弁Gを構成する第1弁体G1と第2弁体G2の両者は、ガス栓本体2の軸方向に沿って閉じ位置と開き位置との間で移動自在で、ガス流通路1を閉じる閉じ位置に復帰するように付勢されている。
【0030】
ガス栓本体2に対して装着及び取り外し自在なガス接続具100について説明する。このガス接続具100は、既に公知の構成であるので、詳細な説明は省略して簡単に説明する。
ガス接続具100は、第1コイルバネ101により前方側(図1及び図2中X方向の右側)に付勢される突出部材102と、ロック用ボール103と、ロック用ボール103の位置を径方向の内側から規制するとともに、ガス栓本体2の先端部に当接して押圧されて引退する内径部材104と、ガス栓本体2に装着される際にスライド弁Gを押圧する棒状の押圧部105とを備えている。
【0031】
ガス接続具100をガス栓本体2に装着する場合には、図2に示すように、ガス栓本体2の先端部が内径部材104に当接して内径部材104を第2コイルバネ106の付勢力に抗して引退させる。内径部材104の引退によりロック用ボール103が径方向の内側に移動して、ガス栓本体2に形成された嵌込溝2aにロック用ボール103が嵌り込んで、突出部材102が第1コイルバネ101の付勢力により前方側(図2中X方向の右側)に突出する。このように、ガス接続具100のロック用ボール103がガス栓本体2の嵌込溝2aに嵌り込むことで、ガス接続具100がガス栓本体2に外嵌装着される。ガス接続具100がガス栓本体2に装着される際に、ガス接続具100の押圧部105にてスライド弁Gが押圧される。この押圧部105によるスライド弁Gに対する押圧によって、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の上流側(図2中X方向の右側)に移動して、閉じ位置から開き位置に移動することになり、ガス流通路1が開弁されてガス器具へのガス供給が行われる。
【0032】
ガス接続具100をガス栓本体2から取り外す場合には、突出部材102を第1コイルバネ101の付勢力に抗して押込操作することで、嵌込溝2aへのロック用ボール103の嵌り込みが解除されるので、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すことができる。そして、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すと、スライド弁Gに対する押圧部105による押圧が解除され、第1弁体G1と第2弁体G2の両者が、付勢部材F1,F2の付勢力によって、ガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の下流側(図2中X方向の左側)に移動して、開き位置から閉じ位置に復帰されてガス流通路1が閉弁される。
【0033】
過流出防止機構Hは、過流出防止弁H2を収容する過流出防止弁収容部材Haを備えており、その過流出防止弁収容部材Haは、ガス流通路1の第2流路部位1bの内周面に気密状態で摺動自在に備えられた筒状部材H1と、筒状部材H1の内部において過流出防止弁H2及び被操作部材H3(被操作部に相当する)を支持する支持部材H4とで構成されている。過流出防止弁収容部材Haには、内部にガスを流通する流路が形成されている。
【0034】
また、過流出防止弁収容部材Haの内部において支持部材H4で支持される過流出防止弁H2は、ガス流通を許容する初期位置とガス流通を阻止する作動位置とにガス栓本体2の軸方向に移動自在に備えられる。そして、過流出防止弁収容部材Haのガス流通路1の下流側端部においては、リセット手段Rからリセット操作としての上流側への押圧操作を受ける被操作部材H3が、支持部材H4でガス栓本体2の軸方向に移動自在に支持されている。このように、被操作部材H3を過流出防止弁収容部材Haに設けることで、被操作部材H3を、過流出防止弁収容部材Haのガス流通路1のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けている。
【0035】
過流出防止弁H2は、第3付勢部材F3によって、作動位置よりも上流側の初期位置に復帰するように付勢されており、保持部材H5に当接することで初期位置に位置保持されて、過流出防止弁収容部材Haの内部に形成された流路を開弁している。そして、過流出防止弁H2は、ガス流量が一定以上の過流量となると、そのガス流量の流動圧によって初期位置から作動位置に移動自在に備えられており、作動位置に移動して過流出防止弁H2が弁座部H6に着座すると、過流出防止弁収容部材Haの内部に形成された流路を閉じた状態となり、ガスの流通が阻止される。
【0036】
支持部材H4は、その内部がガス栓本体2の軸方向に貫通する略円筒状に形成されている。支持部材H4の上流側部位は、過流出防止弁H2の軸部H2aに外嵌して、ガス栓本体2の軸方向に移動自在に過流出防止弁H2を支持している。支持部材H4の下流側部位は、被操作部材H3に外嵌して、ガス栓本体2の軸方向に移動自在に被操作部材H3を支持している。ここで、被操作部材H3は過流出防止弁収容部材Haよりもガス流通路1の下流側に突出する状態で備えられている。
【0037】
被操作部材H3の上流側部位H3aは、ガス栓本体2の軸方向に延びる棒状に形成されており、支持部材H4に内嵌されて、ガス栓本体2の軸方向に移動自在に支持されている。被操作部材H3の下流側部位は、ガス流通路1の流路径方向の中央部に下流側に突出する頭部H3bが備えられた概略円錐状に形成されている。頭部H3bの径方向の外側には、径方向の外側に延びる脚部H3cが備えており、その脚部H3cの先端部が筒状部材H1に形成された係合溝H1aに係合されている。図示は省略するが、脚部H3cは、周方向で間隔を隔てて複数備えられており、脚部H3c同士の間をガスが流通している。被操作部材H3は、第4付勢部材F4によって下流側部位の頭部H3bが筒状部材H1からガス流通路1の下流側に突出する突出位置に復帰するように付勢されており、脚部H3cが係合溝H1aの端部に当接して突出位置に位置保持されている。
【0038】
支持部材H4は、初期位置に位置する過流出防止弁H2と突出位置に位置する被操作部材H3との間に、初期位置から作動位置までの移動量に相当する間隔を隔てる状態で、過流出防止弁H2と被操作部材H3をガス栓本体2の軸方向に移動自在に支持している。これにより、過流出防止機構Hは、突出位置に位置する被操作部材H3が押圧されるリセット操作が解除されている場合に、過流出防止弁H2の初期位置から作動位置への移動を許容している。
一方、一定以上のガス流量の流動圧によって過流出防止弁H2が作動位置に移動すると、作動位置に移動した過流出防止弁H2と突出位置に位置する被操作部材H3とが当接するようになっている。突出位置に位置する被操作部材H3が押圧されるリセット操作を受けた場合には、被操作部材H3と過流出防止弁H2との当接により被操作部材H3と過流出防止弁H2が一体的にガス流通路1の上流側へ移動することになり、過流出防止弁H2の弁座部H6への着座が解除されて、上流側からのガス圧が解除され、第3付勢部材F3の付勢力によって過流出防止弁H2が初期位置に復帰される。このようにして、過流出防止機構Hは、突出位置に位置する被操作部材H3が押圧されるリセット操作を受けた場合に、過流出防止弁H2を初期位置に復帰させている。
【0039】
リセット手段Rは、ガス接続具100のガス栓本体2からの取り外しが行われた場合に、ガス栓本体2の軸方向でのスライド弁Gの開き位置から閉じ位置への移動に伴って、過流出防止弁H2を初期位置に復帰させるため(リセットさせるために)に被操作部材H3の頭部H3bを押圧するリセット操作を行うように構成されている。
【0040】
リセット手段Rは、スライド弁Gと過流出防止機構Hの過流出防止弁収容部材Haとを連結してガス栓本体2の軸方向に一体的に移動自在とする連結部材R2と、スライド弁Gが閉じ位置に位置する場合に被操作部材H3を押圧してリセット操作を行う操作位置に固定された当接部材としての固定部材R1とを備えている。
【0041】
固定部材R1は、ガス流通路1のガス流通方向(図中X方向)に対して直交する流路径方向の全体に亘る板状に形成されており、第3流路部位1cの内周部に固定されている。固定部材R1には、ガス流通を許容する流通孔R1aが形成されている。また、連結部材R2は、流通孔R1aを通してスライド弁Gの第1弁体G1と過流出防止弁収容部材Haとを連結している。
【0042】
連結部材R2は、ガス流通路1の軸方向(図中X方向)に延びる棒状体として形成されて、固定部材R1を摺動自在に貫通しつつ、下流側に位置する第2弁体G2と上流側に位置する過流出防止弁収容部材Haとを連結している。これにより、図3(d)に示すように、スライド弁Gの開き位置から閉じ位置への移動に伴って、連結部材R2により一体的に形成されている過流出防止弁収容部材Ha(H1及びH4)が下流側へ移動して、過流出防止弁収容部材Haに備えられる被操作部材H3の頭部H3bが固定部材R1に当接して押圧されることでリセット操作が行なわれる。一方で、スライド弁Gの閉じ位置から開き位置への移動に伴って、被操作部材H3が固定部材R1から離れることでリセット操作が解除される。
【0043】
以下、図3に基づいて、スライド弁G、過流出防止機構H、リセット手段Rの動きについて説明する。
図3(a)は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している状態を示している。図3(b)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着した状態を示している。図3(c)は、ガス接続具100をガス栓本体2に装着しているときに、過流出防止弁H2が初期位置から作動位置に移動した状態を示している。図3(d)は、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すことでリセット操作を行う状態を示している
【0044】
図3(a)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外している場合には、スライド弁Gが閉じ位置に位置しており、ガス流通路1がスライド弁Gにて閉弁されている。この状態においては、固定部材R1によって過流出防止弁収容部材Haに備えられた被操作部材H3の頭部H3bが押圧されてリセット操作が行われている。このリセット操作によって過流出防止弁H2が初期位置に復帰される。図3(a)では、過流出防止弁H2については初期位置に復帰された状態を示している。
【0045】
図3(b)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2に装着すると、ガス接続具100の押圧部105がスライド弁Gをガス流通路1の上流側に押圧して、スライド弁Gが閉じ位置から開き位置に移動してガス流通路1を開弁させる。このとき、スライド弁Gの移動に伴って被操作部材H3を備えた過流出防止弁収容部材Haが上流側へ移動して、固定部材R1によって被操作部材H3の頭部H3bを押圧するリセット操作が解除される。リセット操作が解除されると、被操作部材H3は、第4付勢部材F4の付勢力によって頭部H3bが突出位置に復帰される。このようにして、被操作部材H3が突出位置に復帰されると、被操作部材H3と過流出防止弁H2との間に、過流出防止弁H2の初期位置から作動位置への移動を許容するスペースが形成される。
【0046】
図3(c)に示すように、ガス流量が一定以上の過流量となると、そのガス流量の流動圧によって過流出防止弁H2がガス栓本体2の軸方向に沿ってガス流通路1の下流側に移動して、過流出防止弁H2が初期位置から作動位置へ移動する。これにより、過流出防止弁H2が作動位置に移動することでガス流通が阻止される。
【0047】
図3(d)に示すように、ガス接続具100をガス栓本体2から取り外すと、ガス接続具100の押圧部105によるスライド弁Gに対するガス流通路1の上流側への押圧が解除されて、第1付勢部材F1及び第2付勢部材F2の付勢力によってスライド弁Gがガス栓本体2の軸方向に沿って開き位置から閉じ位置に移動する。このとき、スライド弁Gの移動に伴って被操作部材H3を備えた過流出防止弁収容部材Haが下流側へ移動して、固定部材R1に被操作部材H3の頭部H3bが当接し、被操作部材H3が押圧されるリセット操作が行われて、図3(a)に示すように、過流出防止弁H2が初期位置に復帰される。
【0048】
<第2実施形態>
これまで説明してきた実施の形態では、本発明に係るガス栓を、ガス栓本体2に対するガス接続具100の装着及び取り外しに伴ってスライド弁Gを閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う所謂ガスコンセントとして構成したが、以下に、本発明に係るガス栓を、操作部に対する手動操作に伴ってスライド弁を閉じ位置と開き位置との間で移動させてガス器具へのガスの供給と停止との切り替えを行う、所謂ツマミ付きガス栓として構成した実施形態について、図5〜図11に基づいて説明する。尚、これまで説明してきた実施形態と同様の構成については、説明を割愛する場合がある。
【0049】
本実施形態のつまみ付きガス栓として構成されたガス栓は、図5及び図6に示すように、弁収容部5と、当該弁収容部5に対して夫々が開口するガス流入路1A及びガス流出路1Bが、内部に形成されたガス栓本体2と、弁収容部5に収容され、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの間の開閉を行う弁機構部Aと、操作部11に対する操作に伴って弁機構部Aを開閉させる操作機構部Bとを備えている。
以下、ガス栓本体2、弁機構部A、及び操作機構部Bの詳細構成について、順次説明する。
【0050】
〔ガス栓本体〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの夫々は、互いの軸線X、Yを直角に交差する状態でガス栓本体2の内部に配置された円形断面を有する流路である。具体的には、ガス流入路1Aの軸線Xを上下方向に配置すると共に、ガス流出路1Bの軸線Yを横向きに配置することで、本実施形態のガス栓は所謂L型のガス栓として構成されている。このように構成されたL型のガス栓は、下から上に向けてガス栓本体2に流入したガスgを横向きに吐出して、側方に配置されたガス機器(図示せず)等に供給する。尚、本実施形態においてガス栓を上記L型のガス栓として構成するのではなく、例えば、ガス流出路1Bを斜め下向きに設けるなど、ガス流入路1Aとガス流出路1Bとの交差角度は適宜改変可能である。
また、弁収容部5は、ガス流入路1Aの上方延長上にガス栓本体2の内部に形成された円形断面を有する空間であり、弁収容部5の下方にはガス流入路1Aが開口し、弁収容部5の側方にはガス流出路1Bが開口することになる。
【0051】
〔弁機構部〕
ガス流入路1A及びガス流出路1Bの何れか一方の特定ガス流通路をガス流入路1Aとし、同特定ガス流通路の軸線である特定軸線をガス流入路1Aの軸線Xとすると、弁機構部Aは、当該特定ガス流通路であるガス流入路1Aの弁収容部5に対する開口部1Aaに形成された弁座部6と、同特定軸線である軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して着座して当該開口部1Aaを閉塞する閉じ位置と、軸線Xに沿ってスライドして弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置との間で変位するスライド弁G'とを有して構成されている。
即ち、スライド弁G'は、上下方向に配置されたガス流入路1Aの軸線Xに沿って、上下方向にスライドする。そして、そのスライド範囲の上端位置が、スライド弁G'が弁座部6に着座して開口部1Aaを閉塞する閉じ位置であり、同範囲の下端位置が、スライド弁G'が弁座部6に対して離間して当該開口部1Aaを開放する開き位置となる。よって、本実施形態において、閉じ位置側とは上方側を示し、開き位置側とは下方側を示すことになる。
ここで、図8及び図9にはスライド弁G'が開き位置にある状態が示されており、図5及び図7にはスライド弁G'が閉じ位置にある状態が示されている。
【0052】
〔操作機構部〕
操作機構部Bは、操作者による操作部11に対する下向きの押圧操作をスライド弁G'に伝達させて当該スライド弁G'と共にスライド可能なスライド部Cと、スライド部Cを軸線Xに沿って開き位置側から閉じ位置側に向かう上向きに付勢する軸線付勢手段Dと、スライド部Cのスライドをガイドするガイド部20とからなる。
操作部11は、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されガス栓本体2の上部を覆う逆カップ状の操作ボタン10の上底部の上面として設けられている。
また、操作ボタン10は、軸線Xに沿って上下方向にスライド可能に設けられており、更に操作ボタン10の上底部の下面とガス栓本体2の上面との間には、ガス栓本体2に対し操作ボタン10を上向きに付勢するコイルバネ13が介挿されている。
尚、このコイルバネ13は、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネが利用されており、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
【0053】
スライド部Cは、軸線X周りに回転自在に設けられたガイドピン18と、当該ガイドピン18を軸線X周りの方向に付勢する回転付勢手段Eとを有して構成されている。
ガイドピン18は、軸線Xと同軸上に配置され当該軸線Xに沿ってスライド可能な円柱状の軸部材17の外表面において、軸部材17の円形断面の径外方向に向けて突出形成されている。
一方、回転付勢手段Eは、操作ボタン10における上底部の下面に一端部が固定され、上記軸部材17の上面に他端部が固定されて、ガス流入路1Aの軸線Xと同軸上に配置されたねじりコイルバネ15で構成されている。
尚、このねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着しているコイルバネであり、ある回転方向にねじりモーメントを受けることで当該回転方向とは逆の回転方向(図5における右方向)に反発力を発生する。更に、かかるねじりコイルバネ15は、巻線部分が隣接間において互いに密着していることで、一端側から受けた操作部11の軸線Xに沿った下方向の押圧力を、他端側の軸部材17に伝達することができる。
ねじりコイルバネ15の両端部には、突起部16が設けられており、突起部16を含む巻線部分が、操作ボタン10における上底部の下面に形成された溝部12、及び軸部材17の上面に形成された溝部19に嵌め込まれることで、ねじりコイルバネ15の両端が操作ボタン10及び軸部材17に固定されている。
【0054】
軸線付勢手段Dは、巻線部分が隣接間において互いに離間している通常のコイルバネ24からなり、軸線Xに沿って圧縮力を受けることで同軸線Xに沿って膨張力を発生する。
このコイルバネ24は、スライド弁G'の下面と、弁収容部5の下方に設けられた筒状部材H1の上面との間に軸線Xに沿って圧縮状態で介挿されており、筒状部材H1の上面に対してスライド弁G'を上向きに付勢する形態で、スライド弁G'とスライド部Cとを軸線Xに沿って開き位置側から閉じ位置側に向かう上向きに付勢する。
【0055】
ガイド部20は、ガイドピン18が挿入されて当該ガイドピン18の軸線X上のスライド及び軸線X周りの回転を誘導するガイド溝22を外表面に形成した筒状部材21で構成されている。
更に、このガイド溝22には、操作部11に押圧力を付加してスライド弁G'を開き位置から閉じ位置まで変位させるときにガイドピン18をねじりコイルバネ15の付勢力に抗して回転させる回転誘導部22a、22bと、続いて当該押圧力を抜いたときにスライド弁G'を閉じ位置に維持する状態でコイルバネ24及びねじりコイルバネ15により付勢されるガイドピン18が係止する係止部22cとが形成されている。
そして、このような構成により、本第2実施形態のガス栓は、詳細については後述するが、操作部11に対する一の押圧操作により開栓動作が行われ、それに続く操作部11に対する一の押圧操作により閉栓動作が行われる所謂プッシュプッシュ式の開閉動作を実現している。
【0056】
図10(a)に示すように、このガイド溝22において、回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部が、ねじりコイルバネ15の軸線X周りの付勢力に抗する回転方向において係止部22cより回転奥側(例えば図10(a)において左側)に位置する。回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部から係止部22cにかけて、ガイド溝22がコイルバネ24の軸線Xに沿った付勢方向側(即ち上方側)に膨出してなる膨出部22dが形成されている。
よって、ガイドピン18が、その膨出部22dを介して、回転誘導部22a、22bの開き位置側の端部から係止部22cに向けてガイド溝22の上辺に沿って直接的に移動可能となり、係止部22cに適切に係止されるようになる。尚、この膨出部22dの形状等は適宜変更可能であり、また、膨出部22dを省略して、開き位置側回転誘導部22bの途中に上方に切れ込む係止部22cを形成し、開き位置側の端部にガイドピン18がある状態で操作部11に付加する押圧力f11を取り除いたときに、ガイドピン18が開き位置側回転誘導部22bを若干逆行しその途中にある係止部22cに係止されるように構成しても構わない。
【0057】
この回転誘導部22a、22bは、軸線X周りの方向において係止部22cよりも開き位置側に配置された開き位置側回転誘導部22bと係止部22cよりも閉じ位置側に配置された閉じ位置側回転誘導部22aとからなる。
更に、ガス流入路1Aの軸線Xの直交面をSとすると、開き位置側回転誘導部22bにおける直交面Sに対するガイド溝22のリード角αbが、閉じ位置側回転誘導部22aの同リード角αaよりも小さく設定されている。
即ち、開栓動作において、操作部11に押圧力が付加され回転誘導部22a、22bに沿って誘導されるガイドピン18は、閉じ位置側から係止部22cが形成された位置までの間は閉じ位置側回転誘導部22aに沿って変位し、その係止部22cが形成された位置からそれよりも回転奥側に形成された開き位置側の端部までの間は開き位置側回転誘導部22bに沿って変位することになる。
そして、開き位置側回転誘導部22bのリード角αbが、閉じ位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さいので、ねじりコイルバネ15の付勢力に抗してガイドピン18を開き位置側回転誘導部22bに沿って変位させるために必要な操作部11に対する押圧力は、閉じ位置側回転誘導部22aに沿って変位させるときよりも大きくなる。
以下、ガイド溝22の詳細構成について、本実施形態のガス栓の開閉動作時におけるガイド溝22におけるガイドピン18の遷移状態とあわせて、図10及び図11等に基づいて説明する。尚、図10及び図11において、ガイド溝22は、筒状部材21の外周面を平面に展開したときの状態で示されている。
【0058】
〔開栓動作時〕
先ず、本実施形態のガス栓の開栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図10等に基づいて説明する。
スライド弁G'が閉じ位置にあって閉栓しているとき(図5参照)には、ガイドピン18は、図10(a)に示すように、ガイド溝22において回転誘導部22aの閉じ位置側の端部(図10(a)において右上端部)に位置している。
次に、操作部11に押圧力f11を付加し、その押圧力f11がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図10(b)に示すように、ガイド溝22において閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとの境界部に移動する。
この移動の際に、ガイドピン18は、コイルバネ24による軸線Xに沿った開き位置側から閉じ位置側へ向かう上向きの付勢力fdに抗して閉じ位置側から開き位置側へ向かう下向きに変位すると共に、ねじりコイルバネ15による軸線X周りの方向への付勢力feに抗して回転することになる。
即ち、閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとの境界部に位置するガイドピン18には、図10(b)において、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
【0059】
更に、操作部11に比較的大きい押圧力f11を付加すると、ガイドピン18は、図10(c)に示すように、ガイド溝22において開き位置側回転誘導部22bの回転奥側(図10(c)の左側)の端部に移動し、それに伴ってスライド弁G'は開き位置(図8参照)に変位する。
この移動の際においても、ガイドピン18は、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feに抗して左下方向に移動することになり、移動後のガイドピン18には、上向きの付勢力fdと右向きの付勢力feとが付加された状態となっている。
尚、これら付勢力fd、feは、ガイドピン18の左下方向への変位量が増加するに伴って増加するが、説明を簡単にするためにそれらの符号は同じものを使用する。
【0060】
次に、上記のように操作部11に対して付加していた押圧力f11を取り除くと、図10(d)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、膨出部22dに沿って右上方向にある係止部22cに当接する位置まで移動する。
そして、係止部22cのガイドピン18が当接する壁面の角度が、付勢力fd、feの合力が付加されているガイドピン18が回転誘導部22a、22b側に変位することを防止する角度に設定されているので、当該ガイドピン18の位置は係止部22cに係止された状態で保たれることになり、結果、図9に示すように、スライド弁G'が開き位置で維持されて、開栓動作が完了する。
【0061】
〔閉栓動作時〕
次に、本実施形態のガス栓の閉栓動作時のガイド溝22におけるガイドピン18の位置の遷移状態について、図11等に基づいて説明する。
スライド弁G'が開き位置にあって開栓しているとき(図9参照)には、ガイドピン18は、図11(a)に示すように、係止部22cに係止される位置にある。
次に、操作部11に比較的小さな押圧力f11'を付加し、その押圧力f11'がスライド部Cに伝達されると、スライド部Cに設けられたガイドピン18は、図11(b)に示すように、付勢力fd、feに抗して左下向きに若干変位することで、係止部22cにおける係止が解除された位置に変位する。
この際に、操作部11に付加される押圧力f11'は、上述した開栓動作時に付加した押圧力f11よりも小さなものとなっているため、ガイドピン18は、例えば開き位置側回転誘導部22bに沿って開き位置側に変位することはない。
更に、開き位置側回転誘導部22bのリード角αbが閉じ位置側回転誘導部22aのリード角αaよりも小さく、ねじりコイルバネ15の付勢力feに抗してガイドピン18を開き位置側回転誘導部22bに沿って開き位置側へ変位させるためには比較的大きな押圧力が必要となるので、その押圧力よりも小さな押圧力f11'で操作部11を押圧した場合には、ガイドピン18が開き位置側回転誘導部22bに沿って回転奥側に変位することはない。
【0062】
次に、上記のように操作部11に対し付加されていた押圧力f11'を取り除くと、図11(c)に示すように、コイルバネ24による上向きの付勢力fdとねじりコイルバネ15による右向きの付勢力feによって、ガイドピン18は、閉じ位置側回転誘導部22aに沿って右上方向に移動し、結果、図5に示すように、それに伴ってスライド弁G'が開き位置から閉じ位置まで変位して、閉栓動作が完了する。
尚、本実施形態では、ガイド溝22の回転誘導部を閉じ位置側回転誘導部22aと開き位置側回転誘導部22bとで構成したが、当該回転誘導部を一様のもので構成しても構わない。また、回転誘導部22a、22bのリード角αa、αbについては、一様のものとせずに、例えば閉じ位置側から開き位置側にかけて徐々に減少させるなど、適宜改変可能である。
【0063】
〔リセット手段〕
本実施形態のガス栓は、一定以上の流量のガスgが流れると当該ガス供給を遮断するために、図5に示すように、特定ガス流通路としてのガス流入路1Aに過流出防止機構Hが設けられると共に、当該過流出防止機構Hが作動状態となった場合にそれをリセットするリセット手段Rが設けられている。
ここで、リセット手段Rの構成は、第1実施形態と実質的に同じであるので、詳細な説明は割愛するが、その動作について、図5〜9に基づいて説明する。
リセット手段Rは、図5に示すように、スライド弁G’と過流出防止機構Hの過流出防止弁収容部材Haとを連結してガス流入路1Aの軸方向(図5で直線Xに沿う方向)に一体的に移動自在な連結部材R2と、スライド弁G’が閉じ位置に位置する場合(図5に示す状態)に、被操作部材H3を押圧してリセット操作を行う操作位置に固定された固定部材R1とを備えている。
図9に示すように、操作機構部Bの操作部11が押圧操作され、スライド弁G’が開き位置に位置し、過流出防止弁収容部材Haが上流側に位置し、被操作部材H3が固定部材R1から離間している状態で、一定以上の流量のガスgが流れると、過流出防止弁H2が作動して、過流出を防止する。
ここで、再度、操作機構部Bの操作部11が押圧操作されると、スライド弁G’が開き位置から閉じ位置へと移動(図9から図5への移動)すると共に、スライド弁G’と連結部材R2にて連結された過流出防止弁収容部材Haが下流側に移動して、被操作部材H3が操作位置に固定されている固定部材R1に当接し、リセット操作が行われる。
【0064】
<別実施形態>
(1)第1、第2実施形態においては、連結部材R2が、流通孔R1aを通してスライド弁Gの第1弁体G1と過流出防止弁収容部材Haとを連結しているが、固定部材R1に、流通孔R1aとは別に、連結部材R2を貫通させる貫通孔を設けてもよい。
【0065】
(2)第1実施形態では、複数の流路部位における中心軸を同一として、ガス流通路1を一直線状に設けているが、例えば、図4に示すように、ガス流通路1の上流側部位(第1〜第3流路部位1c〜1c)における中心軸とガス流通路1の下流側部位(第4〜第7流路部位1g〜1g)における中心軸とを流路径方向にずらした直線状のガス流通路1を形成することもできる。このように、ガス流通路1をガス栓本体2の軸方向に沿う直線状に設けるとは、第1実施形態の如く、一直線とするものに限らず、図4に示すように、流路径方向にずらしたものも含まれるものとする。
そして、図4に示すものでも、第1実施形態と同様に、ガス栓本体2自体は直線状に設けることができ、ガス栓本体2をコンパクトに構成することができる。
【0066】
(3)第1、第2実施形態では、被操作部に相当する被操作部材H3を、過流出防止弁収容部材Haに設けることで、被操作部材H3を、過流出防止弁収容部材Haのガス流通路1のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けているが、例えば、被操作部材H3と過流出防止弁収容部材Haとを別の部材として設けるとともに、被操作部材H3と過流出防止弁収容部材Haとを連結する連結部を設けることで、被操作部材H3を、過流出防止弁収容部材Haのガス流通路1のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けることもできる。
【0067】
(4)これまで説明した実施形態では、スライド弁Gの外面がガス流通路1の内面に着座してガス流通路1を閉止する例を示したが、例えば、ガス流通路1の内面にシール部材を儲け、当該シール部材にスライド弁Gが着座する形態で、ガス流通路1を閉止するようにしても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上説明したように、リセット手段の構成の簡素化及び部材点数の減少を図り、リセット手段によるリセット操作及びリセット操作の解除を適切に行うことができるガス栓を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ガス流通路
2 ガス栓本体
G スライド弁
H2 過流出防止弁
H3 被操作部材(被操作部)
Ha 過流出防止弁収容部材
R リセット手段
R1 固定部材
R1a 流通孔
R2 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流通路が内部に形成された筒状のガス栓本体に、閉じ位置と開き位置との間で前記ガス栓本体の軸方向に移動自在なスライド弁と、前記ガス流通路のガス流通方向で前記スライド弁よりも上流側に配置された過流出防止弁と、前記ガス流通方向で前記スライド弁と前記過流出防止弁との間に配置されて、前記閉じ位置と前記開き位置との間での前記スライド弁の移動により前記過流出防止弁をリセットさせるリセット操作を行うリセット手段とが備えられているガス栓であって、
前記リセット操作は、前記過流出防止弁における被操作部を前記ガス流通路の上流側へ押圧する操作であり、
前記過流出防止弁を収容する過流出防止弁収容部材が設けられ、
前記被操作部は、前記過流出防止弁収容部材の前記ガス流通路のガス流通方向での移動に伴って移動自在に設けられ、
前記リセット手段は、前記過流出防止弁収容部材を、前記スライド弁の移動に伴って前記ガス流通路のガス流通方向に移動自在とし、その過流出防止弁収容部材の前記ガス流通方向での移動により前記被操作部に当接させて前記リセット操作を行なう当接部材を備えているガス栓。
【請求項2】
前記リセット手段は、前記スライド弁と前記過流出防止弁収容部材とを連結する連結部材を備えるとともに、前記開き位置から前記閉じ位置への前記スライド弁の移動に伴って前記被操作部に当接して前記リセット操作を行う操作位置に固定されて、前記閉じ位置から前記開き位置への前記スライド弁の移動に伴って前記被操作部が離間して前記リセット操作を解除する固定部材を前記当接部材として備えている請求項1に記載のガス栓。
【請求項3】
前記固定部材は、前記ガス流通路のガス流通方向に対して直交する流路径方向の全体に亘る板状に形成され、
前記固定部材に、ガス流通を許容する流通孔が形成されており、前記連結部材は、前記流通孔を通して前記スライド弁と前記過流出防止弁収容部材とを連結している請求項2に記載のガス栓。
【請求項4】
前記過流出防止弁収容部材は、その内部にガスが流通する流路が形成された筒状に形成され、前記ガス流通路の内壁部を前記ガス栓本体の軸方向に気密状態で摺動自在に備えられており、前記過流出防止弁は、前記過流出防止弁収容部材の内部に形成された流路を開閉するように設けられている請求項1〜3の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項5】
前記被操作部は、前記過流出防止弁収容部材よりも前記ガス流通路の下流側に突出する状態で備えられている請求項1〜4の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項6】
前記ガス流通路は、上流側から順に、前記過流出防止弁、前記リセット手段、前記スライド弁を備えて、前記ガス栓本体の軸方向に沿う直線状に設けられている請求項1〜5の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項7】
前記スライド弁が、前記ガス栓本体に対するガス接続具の装着及び取り外しに伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜6の何れか1項に記載のガス栓。
【請求項8】
前記スライド弁が、操作部に対する押圧操作に伴って前記閉じ位置と前記開き位置との間で移動する請求項1〜6の何れか1項に記載のガス栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−207785(P2012−207785A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−60454(P2012−60454)
【出願日】平成24年3月16日(2012.3.16)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】