説明

ガス検出器具及びガス検出方法

【課題】 特定のガスに対して感度が高く、該特定のガスを簡便な方法で検出可能なガス検出器具及びガス検出方法を提供する
【解決手段】 本発明のガス検出器具10は、支持体上にハロゲン化銀乳剤層が設けられたガス検出フィルム11が、気体出入口を有する遮光容器12に収納されたガス検出器具であり、ガス検出フィルム11は、ハロゲン化銀乳剤層はガススカベンジャーを含有しないものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルに含まれる特定のガスを検出可能なガス検出器具及びガス検出方法に関し、特に、シアン化水素ガスを検出できるガス検出器具及びガス検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる「青酸ガス」として知られるシアン化水素ガス等のシアンガスは、人体にとって極めて有毒であり、非常に微量のシアンガスであっても長期に渡って人体に接触することで深刻な影響を与えることがある。そこで、大気中或いは液体中に含まれる微量のシアンガスを簡便に検出して濃度測定することができ、しかも、シアンガスの検出を長期に渡って継続的に行うことのできるシアンガスの測定方法が望まれている。
従来のシアンガス濃度を測定する方法としては、北川式ガス検知管を用いて行う方法がよく知られている。この北川式ガス検知管は、塩化第二水銀にシアンを反応させて塩化水素を遊離させ、この遊離する塩化水素により呈色反応を起こさせて変色程度を測定するものである(例えば非特許文献1)。しかし、この検知管は通常100ppm以上のガス濃度の場合に用いられ、その検出限界は0.5ppm程度であるため、これより微量の濃度では検出が困難である。
【0003】
また、特許文献1には試料液中の総シアンを分析できる装置が提案されている。この装置を用いて総シアンの分析を行うには、試料液をpH2以下の酸性にした後、蒸留装置により蒸留し、試料液より発生した青酸ガスをpH12以上のアルカリ性吸収液に吸収して、該吸収液に酸または塩を添加してpH11.5以下とした後、吸収液を電気化学検出器付イオンクロマトグラフに注入する。この方法によれば、低濃度のシアンを検出可能であるが、イオンクロマトグラフィを使用するので装置が高額になるという問題がある。
【0004】
ところで、光に対する感度(以下、写真感度ともいう)の高いハロゲン化銀写真感光材料では、感光したときに写真感光材料に内在する化学物質からシアン化水素ガスやホルムアルデヒドが発生することがあり、このシアン化水素ガスやホルムアルデヒドによる「カブリ」が発生しやすくなる。「カブリ」とは、現像したときに未露光部分の写真濃度が高くなる現象をいう。上記のような内因性ガスによる「カブリ」を防止するために写真感光材料中にガススカベンジャーを添加する技術が知られている(例えば、特許文献2)。特許文献2では、シアン化水素ガススカベンジャーを用いた技術が開示されている。
【非特許文献1】北川式ガス検知管112SB製品情報、光明理化学工業作製、インターネット[平成16年8月6日検索](URL: http://www.komyokk.co.jp/pdata/tpdf/112SB_0.pdf)
【特許文献1】特開平6−258303号公報
【特許文献2】特開平6−332109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特定のガスに対して感度が高く、該特定のガスを簡便な方法で検出可能なガス検出器具及びガス検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記の手段により達成される。
1. 支持体上にハロゲン化銀乳剤層が設けられたガス検出フィルムが、気体出入口を有する遮光容器に収納されたガス検出器具であって、前記ハロゲン化銀乳剤層はガススカベンジャーを含有しないことを特徴とするガス検出器具。
2. 前記ガススカベンジャーがシアン化水素ガススカベンジャーであることを特徴とする上記1に記載のガス検出器具。
3. 前記ハロゲン化銀乳剤層が、ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀、及びヨウ塩臭化銀の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記1又は2に記載のガス検出器具。
4. 前記ハロゲン化銀乳剤層が、金増感剤、硫黄増感剤、セレン増感剤、及びテルル増感剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする上記1から3のいずれか1項に記載のガス検出器具。
5. 前記ガス検出フィルムと、支持体上にハロゲン化銀乳剤層が設けられた対照用フィルムとが前記遮光容器に収納され、前記対照用フィルムはガススカベンジャーを含有することを特徴とする上記1から4のいずれか1項に記載のガス検出器具。
6. 前記ガス検出フィルムが気体を内部に通さない遮光容器に収納された対照用器具を備えていることを特徴とする上記1から4のいずれか1項に記載のガス検出器具。
7. 遮光状態におかれたハロゲン化銀乳剤に被検サンプルを接触させ、接触によって生じる乳剤のカブリ濃度の変化によって被検サンプル中の特定のガスを検出するガス検出方法。
8. 前記乳剤のカブリ濃度を測定し、カブリ濃度を換算して前記特定のガスの濃度を測定する上記7に記載のガス検出方法。
9. 前記特定のガスがシアン化水素ガスである上記7又は8に記載のガス検出方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガススカベンジャーを含有しないハロゲン化銀乳剤を用いたガス検出フィルムのカブリ濃度の変化を利用することによって、有毒ガスの検出を簡便にppbオーダーで行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るガス検出器具の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態において、同一部材は同一符号を付すことにより重複する説明を省略する。
図1に本発明に係るガス検出器具の実施形態を示す。図1に示すように、ガス検出器具10は、ハロゲン化銀乳剤層を有するガス検出フィルム11が遮光容器12に収納されたものである。遮光容器12の側面には、気体導入口16及び気体排出口17が設けられている。遮光容器12は、図2に示すように、プラスチック製の2つの半割部材からなり、その半割部材の一辺同士が薄肉部13で連結された構造を有している。半割部材の縁部分にはそれぞれ係止凹部18及び係止凸部19が設けられ、遮光容器12を開閉自在に形成されている。
【0009】
ガス検出フィルム11の詳細を図3に示す。図3に示すように、ガス検出フィルム11は、支持体14上にハロゲン化銀乳剤層15が設けられたものである。このハロゲン化銀乳剤層15は、ハロゲン化銀粒子がゼラチン等に分散したハロゲン化銀乳剤から形成されている。ハロゲン化銀乳剤としては、公知のハロゲン化銀写真感光材料(いわゆる銀塩写真用フィルム)に用いられるハロゲン化銀乳剤を用いることができるが、写真感度の高いハロゲン化銀乳剤を用いるのがよい。
ハロゲン化銀乳剤に含まれるハロゲン化銀としては、特に限定されず、塩素、臭素、ヨウ素のいずれの銀塩でもよく、ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀、もしくはヨウ塩臭化銀を含んでいてもよい。ハロゲン化銀乳剤には、ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀、及びヨウ塩臭化銀の少なくともいずれかを含有することが好ましい。ハロゲン化銀乳剤がこれらのハロゲン化銀を含有することにより、検出ガスに対して高感度なハロゲン化銀乳剤を得ることができる。より好ましいハロゲン化銀としては、約30モル%以下のヨウ化銀を含む、ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀、及びヨウ塩臭化銀の少なくとも含むものであり、さらに好ましいのは約2モル%から約10モル%までのヨウ化銀を含むヨウ臭化銀もしくはヨウ塩臭化銀である。
【0010】
ハロゲン化銀乳剤中のハロゲン化銀粒子は、立方体、八面体、十四面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、板状のような変則的な結晶形を有するもの、双晶面などの結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合形でもよい。ハロゲン化銀は、約0.2μm以下の微粒子でも投影面積直径が約10μmに至るまでの大サイズ粒子でもよい。ハロゲン化銀乳剤は、粒径が揃った単分散乳剤でもよいし、様々な粒径の微粒子を含む多分散乳剤でもよい。
また、本実施形態に係るハロゲン化銀乳剤には、感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子サイズ、粒子サイズ分布、ハロゲン組成、粒子の形状、感度の少なくとも1つの特性の異なる2種類以上の乳剤を、混合して使用することができる。
【0011】
また、ハロゲン化銀乳剤には、金増感剤、硫黄増感剤、セレン増感剤、及びテルル増感剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。これらの増感剤を含有することにより、検出ガスに対して高感度なハロゲン化銀乳剤を得ることができる。金増感剤及び硫黄増感剤の少なくともいずれかを含有することがより好ましい。
増感剤を用いる場合、その添加量としては、使用するハロゲン化銀粒子又は化学熟成条件等により適宜変更することが可能であるが、ハロゲン化銀1モル当り10-8〜10-2モル用いることが好ましく、10-7〜5×10-3モル程度を用いることがより好ましい。また、増感剤による化学増感の条件としては、特に制限はないが、pAgは6〜11であることが好ましく、7〜10がより好ましく、温度は40〜95℃であることが好ましく、45〜85℃がより好ましい。
【0012】
増感剤としては、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる公知の増感剤を用いることができる。金増感剤としては、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド等が挙げられる。また、硫黄増感剤としては、チオ硫酸塩(例えば、ハイポ)、チオ尿素類(例えば、ジフェニルチオ尿素、トリエチル尿素、アリルチオ尿素)、ローダニン類等が挙げられる。
【0013】
セレン増感剤としては、不安定型セレン化合物及び非不安定型セレン化合物が挙げられる。不安定型セレン化合物とは、乳剤中にセレン化合物を不安定な状態で存在させたものをいい、セレン化合物を高温、好ましくは40℃以上で乳剤に加え一定時間攪拌することにより得られる。
不安定型セレン化合物としては、具体的には特公昭44−15748号、特公昭43−13489号、特願平2−130976号、特願平2−229300号などに記載の化合物を用いることが好ましい。具体的な不安定セレン増感剤としては、イソセレノシアネート類(例えばアリルイソセレノシアネートの如き脂肪族イソセレノシアネート類)、セレノ尿素類、セレノケトン類、セレノアミド類、セレノカルボン酸類(例えば、2−セレノプロピオン酸、2−セレノ酪酸)、セレノエステル類、ジアシルセレニド類(例えば、ビス(3−クロロ−2,6−ジメトキシベンゾイル)セレニド)、セレノホスフェート類、ホスフィンセレニド類、コロイド状金属セレン等が挙げられる。
【0014】
非不安定型セレン化合物としては、特公昭46−4553号、特公昭52−34492号および特公昭52−34491号に記載の化合物が用いられる。非不安定型セレン化合物としては、例えば亜セレン酸、セレノシアン化カリウム、セレナゾール類、セレナゾール類の四級塩、ジアリールセレニド、ジアリールジセレニド、ジアルキルセレニド、ジアルキルジセレニド、2−セレナゾリジンジオン、2−セレノオキサゾリジンチオンおよびこれらの誘導体等が挙げられる。
【0015】
テルル増感剤としては、例えば、米国特許第1,623,499号、同第3,320,069号、同第3,772,031号、英国特許第235,211号、同第1,121,496号、同第1,295,462号、カナダ特許第800,958号、特開平4−204640号、同4−271341号、同4−333043号、特願平4−129787号、同4−185004号、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソアイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J. Chem. Soc. Chem. Commun.) 635 (1980)、ibid 1102(1979)、ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J. Chem. Soc. Perkin Trans.) 1,2191(1980)、S.パタイ(S. Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The. Chemistry of OrganicSelenium and Tellurium compounds) ,Vol 1(1986)、同Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。
【0016】
具体的なテルル増感剤としては、例えばコロイド状テルル、テルロ尿素類(例えばアリルテルロ尿素、N,N−ジメチルテルロ尿素、テトラメチルテルロ尿素、N−カルボキシエチル−N′,N′−ジメチルテルロ尿素、N,N′−ジメチルエチレンテルロ尿素、N,N′−ジフェニルエチレンテルロ尿素)、イソテルロシアナート類(例えばアリルイソテルロシアナート)、テルロケトン類(例えばテルロアセトフェノン)、テルロアミド類(例えばテルロアセトアミド、N,N−ジメチルテルロベンズアミド)、テルロヒドラジド(例えばN,N′,N′−トリメチルテルロベンズヒドラジド)、テルロエステル(例えばt−ブチル−t−ヘキシルテルロエステル)、ホスフィンテルリド類(例えばトリブチルホスフィンテルリド、トリシクロヘキシルホスフィンテルリド、トリイソプロピルホスフィンテルリド、ブチル−ジイソプロピルホスフィンテルリド、ジブチルフェニルホスフィンテルリド)、ジアシル(ジ)テルリド類(例えばビス(ジフェニルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)ジテルリド、ビス(N−フェニル−N−メチルカルバモイル)テルリド、ジエチルカルバモイルテルリド、ビス(エトキシカルボニル)テルリド)、(ジ)テルリド類、他のテルル化合物(例えば英国特許第1,295,462号記載の負電荷のテルライドイオン含有ゼラチン、ポタシウムテルリド、ポタシウムテルロシアナート、アリルテルロシアネート)等が挙げられる。
【0017】
また、上記増感剤のほかに還元増感剤を併用することも可能である。還元増感剤としては、例えば、塩化第1スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物(例えばジメチルアミンボラン)、シラン化合物、ポリアミン化合物、等が挙げられる。
【0018】
また、ハロゲン化銀乳剤層15(図3)を形成するハロゲン化銀乳剤には、検出すべきガスのガススカベンジャーを含まない。本発明における「ガススカベンジャー」とは、ハロゲン化銀乳剤層15に侵入したガスを、銀形成に対して不活性な物質に変換可能な化合物を指し、本発明における「ガススカベンジャー」にはハロゲン化銀写真感光材料において用いられる公知の「ガススカベンジャー」が含まれる。
本実施形態に係るガス検出器具10(図1)は、ガス検出フィルム11が上記のようなガススカベンジャーを含まないハロゲン化銀乳剤層を有しているので、写真の「カブリ」という現象を利用して、低濃度のガスを安価かつ簡便に検出することができる。
【0019】
ガス検出フィルム11にハロゲン化銀乳剤層15以外の層(中間層、保護層等)を設ける場合にも、これらの層にガススカベンジャーが含まれないことが好ましく、ガス検出フィルム全体としてガススカベンジャーが含まれないことがより好ましい。
ガススカベンジャーとしては、例えば、シアン化水素ガススカベンジャーが挙げられる。すなわち、シアン化水素ガススカベンジャーを添加しないハロゲン化銀乳剤を調製してハロゲン化銀乳剤層15を形成することで、シアン化水素ガスを検出可能なガス検出器具10を得ることができる。
【0020】
シアン化水素ガススカベンジャーとしては、貴金属を含む無機化合物又は有機化合物が知られている。貴金属の無機化合物又は有機化合物としては、パラジウム(II又はIV) 、白金(II 又はIV) 、金(I又はIII)、ロジウム(III) 、イリジウム(III又はIV) 、オスミウム(II 、III 又はIV) の化合物等がある。他にも、グメリンハンドブック(Gmelin Handbook)に記述されている化合物を挙げることができる。
パラジウム化合物の代表例としては、塩化パラジウム(II) 、臭化パラジウム(II)、水酸化パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、チオシアン酸パラジウム(II)、テトラクロロパラジウム(II)酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸塩、テトラブロモパラジウム(II)酸塩、ヘキサブロモパラジウム(IV)酸塩、ビス(サリチラト) パラジウム(II)酸塩、ビス( ジチオオキサラート−S,S′)パラジウム(II)酸塩、trans −ジクロロビス(チオエーテル)パラジウム(II)、テトラアンミンパラジウム(II)塩、ジクロロジアンミンパラジウム(II)、ジブロモジアンミンパラジウム(II)、オキサラトジアンミンパラジウム(II)、ジニトロジアンミンパラジウム(II)、ビス(エチレンジアミン)パラジウム(II)塩、ジクロロエチレンジアミンパラジウム(II)、ビス(2,2′−ビピリジン)パラジウム(II)塩、ビス(1,10−フェナントロリン)パラジウム(II)塩、テトラニトロパラジウム(II)酸塩、ビス(グリシナト)パラジウム(II)、テトラキス(チオシアナト)パラジウム(II)酸塩、ジクロロビス(ホスフィン)パラジウム(II)、ジ−μ−クロロ−ビス(クロロ(ホスフィン)パラジウム(II))、ジ−μ−クロロ−ビス(クロロ(アルシン)パラジウム(II))、およびジニトロビス(アルシン)パラジウム(II)等が挙げられる。
【0021】
白金化合物の代表例としては、塩化白金(II)、塩化白金(IV)、ヘキサフルオロ白金(IV)酸塩、テトラクロロ白金(II)酸塩、ヘキサキロロ白金(IV)酸塩、トリクロロトリフルオロ白金(IV)酸塩、テトラブロモ白金(II)酸塩、ヘキサブロモ白金(IV)酸塩、ジブロモジクロロ白金(II)酸塩、ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸塩、ビス(オキサラト)白金(II)酸塩、ジクロロビス(オキサラト)白金(IV)酸塩、ビス(チオオキサラト)白金(II)酸塩、ビス(アセチルアセトナト)白金(II)、ビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)白金(II)、テトラキス(チオシアナト)白金(II)酸塩、ヘキサキス(チオシアナト)白金(IV)酸塩、ビス{(Z)−1,2−ジシアノエチレン−1,2−ジチオラト}白金(II)酸塩、ジクロロビス(ジエチルスルフィド)白金(II)、テトラクロロビス(ジエチルスルフィド)白金(IV)、ビス(グリシナト)白金(II)、ジクロログリシナト白金(II)酸塩、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)白金(II)、クロロヒドリドビス(トリエチルホスフィン)白金(II)、テトラアンミン白金(II)塩、テトラクロロ白金(II) 酸塩、ジクロロジアンミン白金(II)、トリクロロアンミン白金(II)塩、ヘキサアンミン白金(IV)塩、クロロペンタアンミン白金(IV)塩、テトラクロロジアンミン白金(IV)、ジニトロジアンミン白金(II)、ジクロロテトラキス(メチルアミン)白金(IV)塩、ジクロロ(エチレンジアミン)白金(II)、ビス(エチレンジアミン)白金(II)塩、トリス(エチレンジアミン)白金(IV)塩、ジクロロビス(エチレンジアミン)白金(IV)塩、ジクロロジヒドロキソ(エチレンジアミン)白金(IV)、テトラキス(ピリジン)白金(II)塩、ジクロロビス(ピリジン)白金(II)、ビス(2,2′−ビピリジン)白金(II)塩、テトラニトロ白金(II)酸塩、クロロトリニトロ白金(II)酸塩、ジクロロジニトロ白金(II)酸塩、ジブロモジニトロ白金(II)酸塩、ヘキサニトロ白金(IV)酸塩、クロロペンタニトロ白金(IV)酸塩、ジクロロテトラニトロ白金(IV)酸塩、トリクロロトリニトロ白金(IV)酸塩、テトラクロロジニトロ白金(IV)酸塩、ジブロモジクロロジニトロ白金(IV)酸塩、トリクロロ(エチレン)白金(II)酸塩、ジ−μ−クロロビス{クロロ(エチレン)}白金(II)、trans −ジクロロ(エチレン)(ピリジン)白金(II)、ビス(ビス(β−メルカプトエチルアミン)ニッケル(II)−S,S′)−白金(II)塩、およびジクロロジカルボニル白金(II)等が挙げられる。
【0022】
金(I又はIII)、ロジウム(III) 、イリジウム(III又はIV) およびオスミウム(II 、III 又はIV) の化合物も同様に挙げることができる。これらの具体例としては、例えばカリウムテトラクロロオーレート(III) 、ロジウム(III) クロライド、カリウムヘキサクロロイリデート(IV)、カリウムテトラクロロイリデート(III) およびカリウムヘキサクロロオスメート(IV)等が挙げられる。
【0023】
他に、ガススカベンジャーとしては、ホルムアルデヒド、硫化水素、ガス状水銀等に対するガススカベンジャーを挙げることができる。これらのガススカベンジャーを含まないことにより、前記と同様に、ホルムアルデヒド、硫化水素、ガス状水銀等を低濃度まで検出可能なガス検出器具10(図1)を得ることができる。
ホルムアルデヒドに対するガススカベンジャーとしては、ホルムアルデヒドと反応して、固定化できる化合物が知られている。このホルムアルデヒドを固定化できる化合物としては、米国特許 4,411,987号や同第 4,435,503号に記載された化合物がある。
【0024】
また、ハロゲン化銀乳剤には、種々の添加剤を添加することができる。添加剤としては、メルカプト化合物、かぶらせ剤、現像促進剤、ハロゲン化銀溶剤、染料、カラーカプラー等を使用することができる。これらの添加剤に関して、具体的な化合物例としては以下のとおりである。
メルカプト化合物としては、米国特許第 4,740,454号明細書、同第 4,788,132号明細書、特開昭62-18539号公報、特開平1-283551号公報に記載のメルカプト化合物が挙げられる。かぶらせ剤、現像促進剤、ハロゲン化銀溶剤としては、特開平1-106052号に記載の化合物が挙げられる。染料としては、国際公開WO88/04794号パンフレット、特表平1-502912号公報に記載された方法で分散された染料またはEP 317,308A 号明細書、米国特許 4,420,555号明細書、特開平1-259358号公報に記載の染料が挙げられる。カラーカプラーとしては、リサーチ・ディスクロージャーNo.17643、VII −C〜G、および同No.307105、VII −C〜Gに記載された化合物が挙げられる。カラーカプラーを適宜添加することによって、現像処理(後述)によって赤、青、緑、黄色等を呈するガス検出フィルム11を得ることができる。
【0025】
イエローカプラーとしては、例えば米国特許第3,933,501 号、同第 4,022,620号、同第 4,326,024号、同第 4,401,752号、同第4,248,961号、特公昭 58-10739 号、英国特許第 1,425,020号、同第 1,476,760号、米国特許第 3,973,968号、同第 4,314,023号、同第4,511,649 号、欧州特許第 2 9,473A 号明細書等に記載のものを用いることができる。
マゼンタカプラーとしては5-ピラゾロン系及びピラゾロアゾール系の化合物が挙げられ、具体的には、米国特許第 4,310,619号、同第 4,351,897号、欧州特許第 73,636号、米国特許第 3,061,432号、同第 3, 725,067 号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24220(1984年6月)、特開昭60-33552号、リサーチ・ディスクロージャーNo.24230(1984年6月)、特開昭60-43659号、同61-72238号、同60-35730号、同55-118034 号、同60-185951 号、米国特許第4,500,630 号、同第4,540,654 号、同第 4,556,630号、国際公開WO88/04795号等に記載の化合物を用いることができる。
【0026】
シアンカプラーとしては、フェノール系及びナフトール系カプラーが挙げられ、米国特許第 4,052,212号、同第 4,146,396号、同第 4,228,233号、同第 4,296,200号、同第 2,369,929号、同第 2,801,171号、同第 2,772,162号、同第2,895,826 号、同第 3,772,002号、同第 3,758,308号、同第 4,334,011号、同第 4,327,173号、西独特許公開第3,329,729 号、欧州特許第 121,365A号、同第 249, 453A号、米国特許第 3,446,622号、同第 4,333,999号、同第 4,775,616号、同第 4,451,559号、同第 4,427,767号、同第 4,690,889号、同第 4,254,212号、同第 4,296,199号、特開昭 61-42658 号等に記載の化合物を用いることができる。
さらに、特開昭64-553号、同64-554号、同64-555号、同64-556に記載のピラゾロアゾール系カプラーや、米国特許第4,818,672 号に記載のイミダゾール系カプラーも使用することができる。また、使用するカプラーは、水中油滴分散法等の種々の公知分散方法により感光材料に導入できる。
【0027】
ハロゲン化銀乳剤は、公知の方法を用いて調製することができる。ハロゲン化銀乳剤の調製方法としては、例えばリサーチ・ディスクロージャー(RD)N o.17643 (1978年12月), 22〜23頁,"I. 乳剤製造(Emu lsion preparation and types)"、および同No.18716 (1979年11月), 648 頁、同No.307105(1989年11月),863〜865 頁、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」,ポールモンテル社刊(P.Glafkides, Chemie et Phisique Photographique, PaulMontel, 1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」,フォーカルプレス社刊(G.F. D uffin,Photographic Emulsion Chemistry (Focal Pres s, 1966))、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman et al.,Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press, 1964) などに記載された方法を用いることができる。
【0028】
また、ハロゲン化銀乳剤は、物理熟成、化学熟成及び分光増感の少なくともいずれかを行ったものを使用することが好ましい。これらのような処理で使用される添加剤はリサーチ・ディスクロージャーNo.17643、同No.18716および同No.307105 に記載されている。
【0029】
ハロゲン化銀乳剤層15は、1層でもよいし複数の層から構成してもよく、複数の層から構成する場合は、これらのハロゲン化銀乳剤層の層数および層順に特に制限はない。
また、ガス検出フィルム11は、ハロゲン化銀乳剤層15以外にも、下塗り層、表面保護層、バック層、中間層、ハレーション防止層、混色防止層等のハロゲン化銀を含有しない層を有していてもよい。このような層を有する場合、その層数および層順に特に制限はない。
【0030】
支持体14に用いる材料としては、特に限定されないが、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、等を用いることができる。中でも、TACを用いることが好ましい。
支持体14上にハロゲン化銀乳剤層15を形成するには、支持体14上にハロゲン化銀乳剤を塗布、乾燥することによって行うことができる。塗布方法としては、スピンコート法、ワイヤーバーコート法等を用いることができる。また、複数のハロゲン化銀乳剤層15を形成する場合やハロゲン化銀乳剤層15以外の層を形成する場合には、マルチコート法を用いることができる。
支持体の厚みとしては、50μmから500μm程度がよい。また、ハロゲン化銀乳剤の厚みとしては、10μmから100μm程度がよい。
【0031】
ガス検出フィルム11の大きさは、幅が10mm〜50mmで、長さが20mm〜100mm程度がよい。ガス検出フィルム11は、ロール形状であってもよい。
ガス検出フィルム11としては、市販のハロゲン化銀写真感光材料でシアン化水素ガススカベンジャーを含まないものを用いることができる。ガス検出フィルム11として市販のものを用いる場合、黒白用、カラー用いずれでもよい。市販のハロゲン化銀写真感光材料としては、例えば、黒白ネガフィルムであるネオパン100アクロス、ネオパン200アクロス、ネオパン400アクロス(いずれも富士写真フイルム社製)等を用いることができる。
【0032】
また、図1に示す遮光容器12の材質としてはプラスチックを例示したが、遮光性を有する材質で形成されているものであれば特に限定されず、ガラス、プラスチック、鉄やアルミ等の金属等、いずれのものでもよい。遮光容器12は、例えば、茶色又は黒色に着色されたガラスやプラスチックから形成することができる。
また、本発明に用いることができる遮光容器の形状は、図1に示したものに限定されず、内部のガス検出フィルムを遮光することが可能で、かつ該フィルムに被検サンプルを接触させることができるものであれば、どのような形状のものでもよい。例えば、図4に示すガス検出器具40のように、遮光容器42として例えば茶色に着色されたポリエチレン袋を用いることができる。ポリエチレン袋により遮光容器42を形成する場合、気体導入管46及び気体排出管47を取り付けることによって、ガス検出器具40内部にサンプル気体を導入することが可能である。
【0033】
本発明のガス検出器具の被検サンプルは気体であることが好ましく、例えば、室内の空気、ドラフト内の空気等におけるガスの検出に用いることが可能である。また、本発明のガス検出器具により検出可能なガスは、ハロゲン化銀乳剤に含まれないガススカベンジャーによって不活化されるガスと対応しており、例えば、シアン化水素ガススカベンジャーを含有しないハロゲン化銀乳剤を用いる場合には、シアン化水素ガスの検出が可能となる。
【0034】
また、本発明に係るガス検出器具の別の実施形態を図5に示す。図5に示すガス検出器具50は、遮光容器12に、ガススカベンジャーを含まないハロゲン化銀乳剤層を有するガス検出フィルム11と、ガススカベンジャーを含む対照用フィルム51aを有している。このような対照用フィルム51aを備えたガス検出器具50によれば、ガス検出フィルム11の比較対照があるので、検出ガス以外の要因によるカブリの影響を排除することができ、ガス検出をより明確に行うことが可能となる。
なお、本発明に係るガス検出器具は、対照用器具として、ガス検出フィルム11が気体を内部に通さない遮光容器に収納されたものを備えていてもよい。この場合も検出ガス以外の要因によるカブリの影響を排除することができ、ガス検出をより明確に行うことが可能となる。
【0035】
対照用フィルム51aに含まれるガススカベンジャーは、ガス検出フィルム11に含まれないガススカベンジャーと同種のものである。例えば、シアン化水素ガスを検出する場合には、ガス検出フィルム11にはシアン化水素ガススカベンジャーを含まないようにし、対照用フィルム51aにシアン化水素ガススカベンジャーを含ませるようにする。
対照用フィルム51aに含まれるガススカベンジャーは、ハロゲン化銀乳剤層に含有されていてもよいし、支持体、又はバック層、表面保護層、中間層、ハレーション防止層等の層に含有されていてもよい。
【0036】
ガススカベンジャーを添加する方法としては、ハロゲン化銀写真感光材料に添加剤を加える場合に通常用いられる方法を適用できる。例えば、水溶性の化合物は適当な濃度の水溶液とし、水に不溶または難溶性の化合物は水と混和しうる適当な有機溶媒、たとえばアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類などのうちで、写真特性に悪い影響を与えない溶媒に溶解し、溶液として、添加することができる。ガススカベンジャーの好ましい添加量は0.4mg/m2〜2.5mg/m2である。
【0037】
次に、本発明のガス検出方法の一例として、図1に示すガス検出器具10を用いてガス検出を行う方法について説明する。
図1に示すガス検出器具10を用いてガスを検出するには、まずガス検出器具10のガス検出フィルム11を被検サンプルに接触させる。ガス検出フィルム11を被検サンプルに接触させるには、ガス検出を行う場所にガス検出器具10を放置するだけでよいが、気体導入口16にブロワー(図示せず)等を接続して気体排出口17より強制的に排気させることで、サンプル気体を接触させるようにしてもよい。また、気体排出口17に吸引装置(図示せず)を取り付けることにより、遮光容器12の内部にサンプル気体を導入してもよい。
サンプル気体を接触させる際の条件としては、特に限定されないが、サンプル気体の温度が10℃〜40℃の範囲であるのがよい。
【0038】
次に、遮光状態のままでガス検出フィルム11を取り出して現像処理を行い、接触によって生じるガス検出フィルム11のカブリ濃度の変化によって、サンプル気体中のガス検出を行うことができる。より具体的には、サンプル気体に接触させないガス検出器具を用意して冷蔵庫等に保存し、この保存しておいたガス検出フィルムのカブリ濃度と、サンプル気体を接触させた後のガス検出フィルムのカブリ濃度とを比較することによって、ガス検出することができる。
現像処理は、ハロゲン化銀写真感光材料に適用される公知の現像方法に従って行うことができ、例えば、前述のRD.No.17643の28〜29頁、同No.18716の 651左欄〜右欄、および同No.307105 の880 〜881 頁に記載された通常の方法によって現像処理することができる。また、発色現像後に漂白処理を行ってもよい。漂白処理は定着処理と同時に行ってもよいし(漂白定着処理)、個別に行なわれてもよい。漂白剤としては、例えば鉄(III )などの多価金属の化合物、過酸類、キノン類、ニトロ化合物等を用いることができる。ガス検出フィルム11の現像処理は、特開昭 60-191257号、同 60-191258号、同 60-191259号に記載の自動現像機を用いて行うことが可能である。
【0039】
カブリ濃度は、カラーデンシトメータ(例えば、X−rite社の310TR、マクベス社のTD504等)を用いて定量的に測定することが可能である。なお、予め、ガス濃度が既知の標準気体のカブリ濃度測定値から検量線を作成して、この検量線をもとにサンプル気体の検出ガス濃度を測定することが可能である。
図4に示すガス検出器具40を用いた場合も、上記と同様にガス検出を行うことができる。また、図5に示すガス検出器具50を用いる場合、ガス検出フィルム11と対照用フィルム51aとのカブリ濃度の差を算出することによって、ガス検出及びガス濃度測定を行うことができる。
【0040】
なお、本発明のガス検出方法は、上記の方法に限定されず、例えば、ハロゲン化銀写真感光材料を収納するのに用いられるパトローネ(図6)や、ピーケース(ハロゲン化銀写真感光材料の保存容器として一般的に用いられる、白色半透明の円筒状の容器)にガス検出フィルムを収納したものを用いて行うことも可能である。
【実施例】
【0041】
実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1)支持体を下記の方法により作製した。
・PEN:市販のポリエチレン−2,6−ナフタレートポリマー100重量部と紫外線吸収剤としてTinuvinP.326( ガイギー社製) を2重量部と常法により乾燥した後、300℃にて溶融後、T型ダイから押し出し140℃で3.3倍の縦延伸を行い、続いて130℃で3.3倍の横延伸を行い、さらに250℃で6秒間熱固定した。
・PET:市販のポリエチレンテレフタレートポリマーを通法に従い2軸延伸、熱固定を行い、厚み85μmのフィルムを得た。
・TAC:トリアセチルセルロースを通常の溶液流延法により、メチレンクロライド/メタノール=82/8wt比、TAC濃度13%、可塑剤TPP/BDP=2/1(ここでTPP;トリフェニルフォスフェート、BDP;ビフェニルジフェニルフォスフェート)の15wt%のバンド法にて作製した。
【0042】
2)上記各支持体の両面にコロナ放電処理をした後、下記組成の下塗液を塗布して下塗層を延伸時高温面側に設けた。コロナ放電処理はピラー社製ソリッドステートコロナ処理機6KVAモデルを用い、30cm幅支持体を20m/分で処理する。このとき、電流・電圧の読み取り値より被処理物は、0.375KV・A・分/m2の処理がなされた。処理時の放電周波数は、9.6KHz、電極と誘導体ロールのギャップクリアランスは、1.6mmであった。
・下塗液の組成
ゼラチン 3g,蒸留水 250cc,ソジウムα−スルホジ−2−エチルヘキシルサクシネート 0.05g,ホルムアルデヒド 0.02g
【0043】
3)下塗りを施した支持体上に、下記に示す組成のハロゲン化銀乳剤層(1)〜(3)をそれぞれ塗布し、図3に示すガス検出フィルム11の試料(1)〜(3)を作製した。作製したフィルムの構成を表1に示す。
各ハロゲン化銀乳剤層に使用する化合物の略称は以下の通りである。
ExC:シアンカプラー,UV:紫外線吸収剤,ExM:マゼンタカプラー,HBS:高沸点有機溶剤,ExY:イエローカプラー,H :ゼラチン硬化剤,ExS:増感色素
また、各成分に対応する数字は、g/m2単位で表した塗布量を示し、ハロゲン化銀については、銀換算の塗布量を示す。ただし増感色素については、同一層のハロゲン化銀1モルに対する塗布量をモル単位で示す。
【0044】
・ハロゲン化銀乳剤(1)
乳剤(a) 銀 1.62,ExS−1 2.0×10-4 ,ExS−2 1.0×10-5 ,ExS−3 3.0×10-4 ,ExC−1 0.125 ,ExC−3 0.040 ,ExC−6 0.010 ,ExC−8 0.014 ,Cpd−2 0.050 ,HBS−1(トリクレジルホスフェート) 0.22 ,HBS−2(ジ−n−ブチルフタレート) 0.10 ,ゼラチン 1.60
・ハロゲン化銀乳剤(2)
乳剤(a) 銀 1.29 ExS−4 3.7×10-5 ExS−5 8.1×10-5 ExS−6 3.2×10-4 ExC−1 0.011 ExM−1 0.016 ExM−4 0.046 ExM−5 0.023 Cpd−3 0.050 HBS−1 0.20 HBS−2 0.08 ポリエチルアクリレートラテックス 0.26 ゼラチン 1.57
・ハロゲン化銀乳剤(3)
乳剤(b) 銀 1.30 ExS−7 3.0×10-4 ExY−2 0.15 ExY−3 0.06 HBS−1 0.070 ゼラチン 1.13
【0045】
【化1】

【0046】
【化2】

【0047】

【化3】

【0048】
【化4】

【0049】
【化5】

【0050】
また、上記乳剤(a)及び(b)は、特開平2-191938号公報の実施例に従って作製し、二酸化チオ尿素とチオスルフォン酸を用いて粒子調製時に還元増感し、更に、特開平3-237450号公報の実施例に従い、各感光層に記載の分光増感色素とチオシアン酸ナトリウムの存在下に金増感、硫黄増感、及びセレン増感を施した。
【0051】
【表1】

【0052】
上記試料(1)〜(3)を図1に示す遮光容器12に収納して、シアン化水素ガス測定用のガス検出器具10を作製した。シアン化水素ガス濃度が10ppb、50ppb、100ppb、150ppbである空気を入れた保存容器にガス検出器具10を入れ、一晩放置した。その後、ガス検出フィルムを取り出し、下記に示す処理液により、発色現像(処理温度38℃,処理時間3分)、停止(38℃,1分)、水洗(38℃,1分)、漂白定着(38℃,2分)、水洗(38℃,1分)、安定浴(38℃,1分)の順に現像処理を行った。
各処理液は次の組成を有するものを使用した。
(発色現像液)
苛性ソーダ 2g,亜硫酸ソーダ 2g,臭化カリウム 0.4g,塩化ナトリウム 1g,ホー砂 4g,ヒドロキシルアミン硫酸塩 2g,エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム2水塩 2g,4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β− ヒドロキシエチル)アニリン・モノサルフェート 4g,水を加えて全量を1リットルとした。
(漂白定着液)
エチレンジアミン4酢酸鉄(3価)ナトリウム・2水塩 100g,臭化カリウム 50g,硝酸アンモニウム 50g,ホウ酸 5g,チオ硫酸ソーダ 150g,亜硫酸ソーダ 15g,ホウ砂 12g,氷酢酸 15ミリリットル,カリ明ばん 20g,アンモニア水を加えてpHを6.5に調節し,水を加えて全量を1リットルとした。
(安定浴)
ホウ酸 5g,クエン酸ソーダ 5g,メタホー酸ソーダ(4水塩) 3g,カリ明ばん 15g,水を加えて全量を1リットルとした。
【0053】
気体に接触させずに冷蔵庫で保存したガス検出フィルム(試料(1)〜(3)と同様の組成)に対しても上記と同様の現像処理を行った。試料(1)〜(3)及びこの冷蔵庫保存のガス検出フィルムのカブリ濃度を濃度計エックスライト(X-rite社)にて測定し、試料(1)〜(3)と冷蔵庫保存のガス検出フィルムとのカブリ濃度差ΔDを算出した。その結果、シアン化水素ガス濃度とΔDとの関係から図7のグラフに示す検量線を得た。この結果から、本発明のガス検出器具を用いてシアン化水素ガスを検出し、その濃度を測定できることがわかる。
【0054】
[実施例2]
上記の試料(1)において、ハロゲン化銀乳剤層(1)と支持体との間に中間層を備えた対照用フィルム(1)を作製した。なお、中間層を、下記組成にシアン化水素ガススカベンジャーとしてテトラクロロパラジウム(II)酸塩(カリウム塩)が2mg/m2の割合で添加して形成した。
(中間層)
Cpd−1 0.07 HBS−1 0.04 ポリエチルアクリレートラテックス 0.19 ゼラチン 1.30
【0055】
上記で作製した対照用フィルム(1)を試料(1)とともに遮光容器12に入れて、図5に示すガス検出器具50を作製した。このガス検出器具を用いて実施例1と同様にシアン化水素ガスを所定濃度で含有する空気を接触させ、現像処理を行って、対照用フィルム(1)と試料(1)とのカブリ濃度差ΔD’を算出した。その結果、実施例1と同様にシアン化水素ガス濃度とΔD’との関係から検量線が得られた。従って、図2に示す本発明のガス検出器具も、シアン化水素ガスを検出でき、その濃度を測定できることがわかる。
【0056】
[実施例3]
図6に示すパトローネに収納した状態のハロゲン化銀写真感光材料(ネオパン100アクロス、富士写真フイルム社製)を実施例1で用いたシアン化水素ガスを所定濃度で含有する保存容器に入れ、一晩置いた後、実施例1と同様に現像処理を行った。一方、シアン化水素ガスを含有する空気に接触させずに冷蔵庫で保存したネオパン100アクロスに対しても同様の現像処理を行った。
実施例1と同様にしてカブリ濃度差ΔD”を算出した結果、シアン化水素ガス濃度とΔD”との関係から検量線が得られた。従って、市販のハロゲン化銀写真感光材料を用いて本発明のガス検出方法を行った場合でもシアン化水素ガスを検出でき、その濃度を測定できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係るガス検出器具の一実施形態を示す模式図である。
【図2】本発明に係るガス検出器具の一実施形態を示す模式図である。
【図3】本実施形態に係るガス検出フィルムを示す模式図である。
【図4】本発明に係るガス検出器具の一実施形態を示す模式図である。
【図5】本発明に係るガス検出器具の一実施形態を示す模式図である。
【図6】ハロゲン化銀写真感光材料の収納容器として用いられるパトローネの形態を示す図である。
【図7】シアン化水素濃度に対するカブリ濃度の測定値から得られた検量線を示すグラフである。
【符号の説明】
【0058】
10,40,50 ガス検出器具
11 ガス検出フィルム
12 遮光容器
14 支持体
15 ハロゲン化銀乳剤層
51a 対照用フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にハロゲン化銀乳剤層が設けられたガス検出フィルムが、気体出入口を有する遮光容器に収納されたガス検出器具であって、前記ハロゲン化銀乳剤層はガススカベンジャーを含有しないことを特徴とするガス検出器具。
【請求項2】
前記ガススカベンジャーがシアン化水素ガススカベンジャーであることを特徴とする請求項1に記載のガス検出器具。
【請求項3】
前記ハロゲン化銀乳剤層が、ヨウ臭化銀、ヨウ塩化銀、及びヨウ塩臭化銀の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス検出器具。
【請求項4】
前記ハロゲン化銀乳剤層が、金増感剤、硫黄増感剤、セレン増感剤、及びテルル増感剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス検出器具。
【請求項5】
前記ガス検出フィルムと、支持体上にハロゲン化銀乳剤層が設けられた対照用フィルムとが前記遮光容器に収納され、前記対照用フィルムはガススカベンジャーを含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガス検出器具。
【請求項6】
前記ガス検出フィルムが気体を内部に通さない遮光容器に収納された対照用器具を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガス検出器具。
【請求項7】
遮光状態におかれたハロゲン化銀乳剤に被検サンプルを接触させ、接触によって生じる乳剤のカブリ濃度の変化によって被検サンプル中の特定のガスを検出するガス検出方法。
【請求項8】
前記乳剤のカブリ濃度を測定し、カブリ濃度を換算して前記特定のガスの濃度を測定する請求項7に記載のガス検出方法。
【請求項9】
前記特定のガスがシアン化水素ガスである請求項7又は8に記載のガス検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−84344(P2006−84344A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270124(P2004−270124)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】