説明

ガス検出装置

【課題】センサ間の熱による悪影響を防止し、各センサから安定した出力を得ることができるガス検出装置を提供する。
【解決手段】ファン16を駆動してドライバから吐き出された呼気を、ハウジング14の円柱面状の空洞と軸を同一とする円柱状の支柱18と、ハウジング14の内面との間に形成された流路20へ導入する。各種センサは、検出面を流路20に露出するように、検出面が支柱18の軸の方向(呼気の流入方向)と平行になるように設けられ、かつ加熱温度特性の異なるセンサは支柱18を挟んで対向する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス検出装置に係り、特に人の呼気に含まれるエタノール等のガスを検出するガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、管の一端を吸引ポンプに連結し、他端を車室内の運転席近傍に配置して開口し、ドライバの呼気の一部を吸引ポンプにより管内に導入し、管の途中に配置したガスセンサにより、ドライバの呼気中のアルコールを検出することが行われている。ガスセンサには、例えば酸化スズ(SnO)半導体などのセンサ素子をヒータで加熱する半導体センサが多く用いられている。
【0003】
また、吸引した空気にはドライバの呼気と車室内の空気とが混合されるため、アルコールセンサの他に硫化物センサや湿度センサなど複数のセンサをハウジングに設けて、吸引した空気にドライバの呼気が含まれているか否かを判定するアルコール検出装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、空気ポンプなどで空気を管内に圧送するなどの不正が行われることを防止すため、呼気以外の空気が含まれていることを検出する酸素(O)センサを設ける場合もある。酸素センサもセンサ素子をヒータで加熱する半導体センサで、加熱温度は酸化スズ半導体を用いたガスセンサの加熱温度よりも高い。
【0005】
このように複数のセンサを設ける場合には、各センサに均一に呼気が当たるように各センサは近接して設けられる。
【特許文献1】特開平6−197897号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載のアルコール検出装置では、各センサが近接して設けられているため、ヒータで加熱するセンサの発熱による輻射熱の影響を受けて、近接する他のセンサの出力が不安定になるなどの悪影響が生じる、という問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するために成されたものであり、センサ間の熱による悪影響を防止し、各センサから安定した出力を得ることができるガス検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のガス検出装置は、出入り口を有する空洞が内部に形成されたハウジングと、前記ハウジングの前記空洞内に前記出入り口方向に延在するように設けられて、前記ハウジングの内面との間に検出対象ガスが流通する流路を形成する流路形成手段と、前記流路内に前記検出対象ガスを導入するための導入手段と、検出部が前記流路内に露出するように前記ハウジングに取り付けられたガスセンサと、を含んで構成されている。
【0009】
本発明のガス検出装置によれば、ハウジングの空洞内に出入り口方向に延在するように設けられた流路形成手段と、ハウジングの内面との間に検出対象ガスが流通する流路が形成され、導入手段により、流路内に検出対象ガスが導入される。ガスセンサは、検出部が流路内に露出するようにハウジングに取り付けられている。
【0010】
このように、流路形成手段により形成された流路に導入手段により検出対象ガスが導入されることにより、流路内に導入された検出対象ガスは流速が均一化されるため、流路内に検出部が露出するように配置されたガスセンサに均一に検出対象ガスが導入され、安定した出力を得ることができる。
【0011】
また、前記複数のガスセンサを加熱温度特性が異なるガスセンサで構成し、該複数のガスセンサを、前記ハウジングの前記流路形成手段を挟んだ位置に取り付けることができる。このように、加熱温度特性が異なる複数のガスセンサをハウジングの流路形成手段を挟んだ位置に取り付けることにより、流路形成手段が熱絶縁体として作用し、各センサ間の熱による悪影響を防止して、安定した出力を得ることができる。
【0012】
また、前記ハウジングの内面を円柱面状に形成すると共に、側面が円柱面状の支柱で構成することができる。この場合、ハウジングの内面を構成する円柱面の軸と支柱の軸とを一致させることが好ましい。このように構成することにより、検出対象ガスが流路内をらせん状に流れ、検出対象ガスの流速をより均一にすることができる。また、前記支柱を該支柱の軸を中心に回転可能に構成することができる。これにより流路内の検出対象ガスの混合及び攪拌が促進される。
【0013】
また、本発明の前記導入手段を、前記流路の上流側に配置したファンで構成することができる。これにより、流路内に導入される検出対象ガスの混合及び攪拌が行われ、流路内の検出対象ガスの流速がより均一化され、また、ポンプを用いて呼気を吸引する場合に比べて装置を小型化することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明のガス検出装置によれば、センサ間の熱による悪影響を防止し、各センサから安定した出力を得ることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、車両に搭載されドライバの呼気からエチルアルコールを検出するアルコール検出装置に、本発明を適用した場合を例に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態に係るアルコール検出装置10は、運転席に設けられたステアリングコラム12の、ドライバの呼気が到達可能な位置に取り付けられている。
【0017】
図2及び図3に示すように、アルコール検出装置10は、外形が略直方体で、対向する2面の一方の面に入口が開口し、他方の面に出口が開口した円柱面状の空洞が内部に形成されたハウジング14、ハウジング14の入口側に設けられ、ドライバの呼気をハウジング14内の流路に導入するためのファン16、ハウジング14の円柱面状の内面と軸を同一とする円柱状または円筒状の支柱18、アルコールセンサ30、においセンサ32、酸素センサ34、及び湿度センサ36を備えている。
【0018】
支柱18の底面はファン16の中心部に固定されており、支柱18とハウジング14の内面との間に円筒状の空間が形成されており、この空間がファン16により導入されたドライバの呼気の流路20となる。
【0019】
また、各センサ30〜36は、検出面が流路20に露出するように、かつ、検出面が支柱18の軸の方向(呼気の流入方向)と平行または略平行になるように設けられている。なお、図3に示す湿度センサ36は、図2では図示を省略している。
【0020】
アルコールセンサ30は、流路20内を流れる呼気中に含まれるエタノールガスを検出するセンサである。においセンサ32は、流路20内を流れる呼気中のアルコールの臭気を検出するセンサである。酸素センサ34は、流路20内を流れる呼気中に含まれる酸素ガスを検出するセンサである。湿度センサ36は、流路20内を流れる呼気中に含まれる水蒸気を検出するセンサである。
【0021】
アルコールセンサ30及びにおいセンサ32と酸素センサ34とは、支柱18を挟んで対向する位置に配置されている。アルコールセンサ30及び酸素センサ34は、検出対象ガスに対応した温度にセンサ素子をヒータにより加熱して検出する方式のもので、例えば、アルコールセンサ30の加熱温度は約350℃、酸素センサ34の加熱温度は約800℃になる場合もある。アルコールセンサ30及び酸素センサ34の発熱により各センサ間に輻射熱の影響が及ぶと、センサの出力が不安定になるなどの現象を生じるため、このように支柱18を挟んで対向する位置に配置することにより、支柱18がアルコールセンサ30及び酸素センサ34の発熱による輻射熱を遮断し、各センサ間に生じる熱の悪影響を防止することができる。なお、支柱18を金属製とすることにより、発熱による気流が金属に伝わり熱の影響を流路20内にこもらせないようにすることができる。
【0022】
ファン16を駆動することにより、ドライバから吐き出された非定常な流速分布を示す呼気がハウジング14内の流路20へ導入される。流路20へ導入された呼気は、流路20の上流側に設けられたファン16で攪拌及び混合され、図4に示すように支柱18の周面に沿ってらせん状に流れることにより、流路20内の流速が略均一化される。
【0023】
このように、ハウジング内に円柱状または円筒状の支柱を設けてハウジング内面との間に円筒状の流路を形成することにより、流路内での呼気の流速が略均一化されるため、支柱の軸と平行または略平行に検出面を設けた各センサに呼気が均一に当たり、安定した出力が得られる。また、支柱を挟んで対向する位置に加熱温度特性が異なるセンサを配置することにより、支柱が熱絶縁体として作用するため、熱による悪影響も防止できる。また、呼気を流路内に導入する際に、流路の上流側であるハウジングの入口側に設けられたファンを用いるため、装置が小型化され、車両への搭載も容易となる。またファンでの導入により、流路内の呼気の攪拌及び混合が促進され、効率よく各センサに呼気を行き渡らせることができる。
【0024】
図5に、本実施の形態の他の実施の形態に係るアルコール検出装置210を示す。アルコール検出装置210は、ファン16の軸と同軸上に設けた小型モータ40に支柱18の底面が固定されており、ファン16と同じ回転数で支柱18も回転する。これにより、流路20内に導入された呼気の攪拌及び混合が更に促進され、効率よく各センサに呼気を行き渡らせることができ、また、流路20内の熱的不均一を効果的に解消することができる。
【0025】
なお、上記各実施の形態では、アルコールセンサ30及びにおいセンサ32と酸素センサ34とを支柱を挟んで対向する位置に配置する場合について説明したが、センサの種類は、硫化物センサや二酸化炭素センサ等その他のセンサを用いてもよいし、また、センサの数も4個以上であってもよいし2個であってもよい。ただし、加熱温度特性の近いセンサ同士は近接して配置し、加熱温度特性の異なるセンサは支柱を挟んで対向する位置に配置するのが望ましい。
【0026】
また、上記各実施の形態では、本発明を車両に搭載されるアルコール検出装置に適用した場合について説明したが、疾患によって生じる異常ガスを検出するガス検出装置など種々の用途に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係るアルコール検出装置の取り付け位置を説明するための概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るアルコール検出装置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るアルコール検出装置の外観概略を示す(A)斜視図及び(B)分解図である。
【図4】流路に導入された呼気の流れを説明するための図である。
【図5】本発明のアルコール検出装置の他の実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0028】
10、210 アルコール検出装置
14 ハウジング
16 ファン
18 支柱
20 流路
30 アルコールセンサ
32 においセンサ
34 酸素センサ
40 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入り口を有する空洞が内部に形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前記空洞内に前記出入り口方向に延在するように設けられて、前記ハウジングの内面との間に検出対象ガスが流通する流路を形成する流路形成手段と、
前記流路内に前記検出対象ガスを導入するための導入手段と、
検出部が前記流路内に露出するように前記ハウジングに取り付けられた複数のガスセンサと、
を含むガス検出装置。
【請求項2】
前記複数のガスセンサを加熱温度特性が異なるガスセンサで構成し、該複数のガスセンサを、前記ハウジングの前記流路形成手段を挟んだ位置に取り付けた請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】
前記ハウジングの内面を円柱面状に形成すると共に、前記流路形成手段を、側面が円柱面状の支柱で構成した請求項1または請求項2記載のガス検出装置。
【請求項4】
前記支柱を該支柱の軸を中心に回転可能にした請求項3記載のガス検出装置。
【請求項5】
前記導入手段を、前記流路の上流側に配置したファンで構成した請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−300119(P2009−300119A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152194(P2008−152194)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】