説明

ガス検知器

【課題】 ガス検知素子が測定対象ガスの種類に応じて交換可能に構成されてなり、ガス検知素子を交換する度毎に設定条件を変更するなどの煩雑な操作が不要であり、高い利便性が得られるガス検知器を提供すること。
【解決手段】 ガス検知器は、ガス検知素子が、ガス検知器本体と電気的接続が達成されない状態で、測定対象ガスの種類に応じて交換可能に装着される構成のものであって、ガス検知素子には、当該ガス検知素子に固有のガス検知素子識別情報が記録されたRFIDチップが設けられており、ガス検知器本体には、ガス検知素子における情報記録手段に記録された情報を読み出すと共にガス検知結果に係る情報を書き込む機能を有する情報読み出し/書き込み手段が設けられている。タブレット型ガス検知素子を備えたものや検知テープ式のものにおいて有用である。また、ガス検知素子の使用の有無を含む測定履歴情報が記録されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば検知テープ式ガス検知器またはタブレット型ガス検知素子を備えたガス検知器などの、検知対象ガスの種類に応じて検知テープまたはタブレット型のガス検知素子を交換することにより各種ガスの測定を行うガス検知方式が利用されたガス検知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、検知対象ガスの種類に応じてガス検知素子を交換することにより各種ガスの測定を行うガス検知方式が利用されたガス検知器として、例えば検知テープ式ガス検知器またはタブレット型のガス検知素子を備えたガス検知器など種々のタイプのものが提案されている(例えば特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
例えば、ガス検知テープは検知対象ガスに接触すると呈色する発色剤が含浸された例えばセルローステープよりなり、適宜の巻き取り機構によってガス検知が行われる度毎に所定量だけ巻き取られる構成とされており、ガス検知テープに検知対象ガスが接触されたときに生ずるガス検知テープの発色の度合いを光学的に検出し、これにより、当該検知対象ガスの存在、あるいは更にその濃度を測定するものである。
また、タブレット型ガス検知素子は、全体が小型のディスク状であって、一面側中央にガス透過部が形成されたディスク状の容器内に、検知対象ガスに接触すると呈色しまたは光学濃度が変化する反応性物質が例えば適宜の担体に担持された粒子状試薬が収容されて構成されており、ガス透過部に検知対象ガスが接触されたときに当該試薬において生ずる呈色の状態または光学濃度の変化の状態を光学的に検出し、これにより、当該検知対象ガスの存在、あるいは更にその濃度を測定するものである。
【0004】
このような検知テープ式ガス検知器およびタブレット型ガス検知素子を備えたガス検知器は、検知対象ガスに応じた種類のガス検知素子をセットするのみで所期の検知対象ガスの使用に供することができるため、操作が簡便である点において有利である。
【特許文献1】特開平08−094529号公報
【特許文献2】特開2004−163371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、実際のガス検知においては、1種類のガスのみでなく、複数種類のガスを検知対象ガスとすることが要請されており、複数種類のガス検知を行う場合には、検知対象ガスの変更をする際に、その都度、ガス検知テープまたはタブレット型のガス検知素子を交換すると共に、ガス検知器本体における測定条件等の設定を当該検知テープまたはタブレット型のガス検知素子に応じた設定値に更新または再設定することが必要であり、実際上、非常に不便である。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、ガス検知素子が測定対象ガスの種類に応じて交換可能に構成されたものにおいて、ガス検知素子を交換する度毎に設定条件を変更するなどの煩雑な操作が不要であり、高い利便性が得られるガス検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガス検知器は、ガス検知素子が、ガス検知器本体に電気的接続が達成されない状態において、測定対象ガスの種類に応じて交換可能に装着される構成のものであって、ガス検知素子には、当該ガス検知素子に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられており、ガス検知器本体には、ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された情報を読み出すと共にガス検知結果に係る情報を書き込む機能を有する情報読み出し/書き込み手段が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明のガス検知器においては、ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された情報が、少なくとも測定対象ガス、測定可能濃度範囲、サンプリング時間、当該ガス検知素子を使用可能な機器の種別情報および当該ガス検知素子の使用有効期限情報を含むガス検知素子識別情報であることが好ましく、また、ガス検知素子におけるRFIDチップに書き込まれる情報が、測定年月日時および測定ガス濃度を含むものであることが好ましい。 また、本発明のガス検知器においては、ガス検知素子におけるRFIDチップには、当該ガス検知素子の使用の有無を含む測定履歴情報が記録されていることが好ましい。
【0009】
本発明のガス検知器においては、例えば、ガス接触部が形成されてなる測定ヘッドおよびガス吸引手段が接続されたサンプリングヘッドを有するガス検知器本体と、検知対象ガスが接触されたときに呈色しまたは光学濃度が変化する反応部が測定ヘッドとサンプリングヘッドとの間に介在する状態で配置されたタブレット型のガス検知素子とを備えた構成、あるいは、ガス接触部が形成されてなる測定ヘッドおよびガス吸引手段が接続されたサンプリングヘッドを有するガス検知器本体と、検知対象ガスが接触されたときに呈色しまたは光学濃度が変化するガス検知テープがケースに収容されてなるガス検知素子とを備えてなり、ガス検知テープが測定ヘッドとサンプリングヘッドとの間に介在する状態で配置された構成のものとすることができる。
さらに、検知テープ式のものにおいては、当該ガス検知素子の使用回数に係る情報が記録されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガス検知器によれば、ガス検知素子が当該ガス検知素子に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられたものであることにより、ガス検知素子を交換して測定対象ガスの種類を変更するに際して、ガス検知素子の交換に伴って設定条件が新たなガス検知素子に固有のものにいわば自動的に変更または更新されるので、ガス検知素子を交換する度毎に設定条件を変更するなどの煩雑な操作が不要であり、高い利便性が得られると共に、複数種類のガス検知に対応することができる。
【0011】
しかも、RFIDチップそれ自体の作用によって以下のような効果が得られる。
(1)記録された情報を無線通信によるデータ交信で自動認識することができるので、ガス検知素子とガス検知器本体とを電気的に接続させることが不要であり、当該電気的接続部分の汚損または腐食等に起因する接触不良が生ずることがないので、情報の読み出しおよび情報の書き込みを確実に行うことができ、しかも、交換消耗品であるガス検知素子の構造が煩雑化することを防止することができると共にコストダウンを図ることができる。(2)RFIDチップそれ自体を薄肉化、例えばカード状とすることができるので、ガス検知素子それ自体が大型化することを防止することができる。
(3)通常、ガス検知素子は反応部の外気との接触を避けるためにパッケージングされているが、非接触で情報の読み出しおよび書き込みを行うことができるので、ガス検知素子の製造時において、パッケージされた後においてもガス検知素子の種類の識別を行うことができ、従って、起票内容との確認を容易に行うことができ、製造ミスが生ずることを確実に防止することができる。
【0012】
また、本発明のガス検知器によれば、ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された使用有効期限情報および使用可能機器種別情報を、実際に使用する際にガス検知器本体によって読み取ることによって、ガス検知素子が使用有効期限が過ぎたものであることが確認された場合に、あるいは、ガス検知素子がガス検知器本体に対応するものでないことが確認された場合に、ガス検知素子の使用を制限例えばガス測定をできないよう設定することができるので、所期のガス検知を確実に行うことができる。
さらに、ガス検知素子それ自体にガス検知結果が記録されるので、ガス検知に使用されたガス検知素子と測定履歴情報(測定結果)とを一緒に管理、保存することができ、後日に、データが必要とされた場合には、速やかに対処することができる。
また、ガス検知素子の使用の有無を含む測定履歴情報が記録されていることにより、一度使用されてガス検知結果などの情報が記録されたものを再使用するなどのミスを確実に防止することができると共に、一度ガス検知器にセットされた後、次の実測定までに長い時間が経過しているものであることが確認された場合には、当該ガス検知素子の使用を制限することができ、従って、所期のガス検知を確実に行うことができる。
特に、検知テープ式のガス検知器においては、ガス検知素子の使用回数に係る情報が記録されていることにより、ガス検知テープの残量を容易に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明について、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るガス検知器の一例における要部の構成の概略を示す説明用断面図、図2は、図1に示すガス検知器において用いられるガス検知素子の構成の概略を示す分解斜視図である。
図1において符号10で示されている部材は、測定ヘッドであって、底面に開口するガス導入用開口11Aを有するガス導入流路11が形成されており、このガス導入用開口11Aに対して、検知用光を照射する発光手段12と、ガス検知素子20からの反射光を受光する受光手段13とよりなる光濃度検知機構が設けられている。
【0014】
15は、サンプリングヘッドであって、上面に開口するガス排出用開口16を有するガス排出流路17が形成されており、このガス排出流路17には、サンプリングポンプ18が接続されている。このサンプリングヘッド15は、図示しない弾性部材によって測定ヘッド10に弾接されるよう付勢されている。
【0015】
ガス検知素子20は、一面側中央に貫通する開口21Cを有する凹所21Aが形成された偏平な円板状の樹脂製の容器21と、当該凹所21Aの開口21Cが塞がれるよう容器21の一面上に配置された、検知対象ガスが接触されたときに呈色しまたは光学濃度が変化する反応基材22と、この反応基材22の一面上に配置されたガス透過膜23と、容器21の一面側に設けられた、中央に貫通する開口24Aが形成された樹脂製の枠部材24とを備え、枠部材24がその他面側に形成された爪部24Bが容器21の凹所21A内に形成された窓21Bに係合されて容器21と一体的に固定されて、全体がディスク状あるいは円板状とされている。そして、このガス検知素子20においては、枠部材24の開口24Aにより、ガス透過膜23が露出された状態とされており、測定ヘッド10におけるガス導入用開口11Aがガス透過膜23によって塞がれるよう、測定ヘッド10とサンプリングヘッド15との間に配置され、これにより、反応部が構成されている。
【0016】
このガス検知素子20において、ガス透過膜23は、ガス不透過性のフィルムにガス透過孔が形成されたものである。このガス透過膜23の材質は、光の反射率が低くて透過率が高いもの、例えばポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。ガス透過膜23は、それ自体がガス透過性を有する材質のフィルムであってもよく、この場合には、ガス透過孔が形成されることは必須のことではない。
【0017】
反応基材22は、例えばシリカゲルの微粒子を含侵させて構成したセルロースなどの担体に、特定の検知対象ガスに接触したときに呈色しまたは光学濃度が変化する反応試薬が保持されて構成されている。
このような反応基材22は、検知対象ガスが例えば硫化水素である場合には、過塩素酸銀、パラトルエンスルホン酸および適宜の保湿剤を例えばメタノールなどの揮発性溶剤に溶解させて反応試薬の塗布液を調製し、当該塗布液を担体に保持させることにより得られる。
【0018】
以上のガス検知器においては、ガス検知素子20には、当該ガス検知素子20の固有の情報が予め記録されたRFIDチップ(Radio Frequency−Identification:電波自動認識)が設けられていると共に、ガス検知器本体に、当該RFIDチップに対応する情報読み出し/情報書き込み機構(リーダライタ)が設けられている。
【0019】
RFIDチップに予め記録されている情報は、少なくとも当該ガス検知素子によって検知可能な測定対象ガスの種類、測定可能濃度範囲、および測定時間(サンプリング時間)などのガス検知(測定)に係る情報、並びにガス検知素子を装着することが可能なガス検知器本体の使用可能機器種別、ガス検知素子20の使用有効期限を含むものであることが好ましい。ここに、ガス検知に係る情報は、具体的には、例えばガス濃度を検出するに際して用いられる検量線データ、当該検量線データの、温度についての出力補正等を行うために必要とされる情報を含むものである。
また、ガス検知素子20それ自体の使用の有無に関する情報が記録されていることが好ましく、これにより、一度使用されてガス検知結果などの情報が記録されたものを再使用するなどのミスを確実に防止することができると共に、一度ガス検知器にセットされた後、次の実測定までに長い時間が経過しているものであることが確認された場合には、当該ガス検知素子20の使用を制限することができ、所期のガス検知を確実に行うことができる。
さらに、目的に応じて適宜に、例えばガス検知素子20の製造年月日や種別ナンバーなどのガス検知素子の個別情報、特定条件下で使用される場合における使用温度範囲、あるいはロットナンバー、製作場所、製造社名などの情報を記録させておくことができる。
【0020】
RFIDチップは、情報を新たに書き込むことが可能に構成されており、所定のガス検知が行われた後においては、少なくとも測定年月日時および測定ガス濃度など検知結果に係る情報を、ガス検知器本体における読み出し/書き込み手段によって書き込んで記録しておくことができる。
また、RFIDチップに新たに書き込まれる情報としては、例えばガス検知素子20それ自体の使用の有無に関する情報、ログナンバー、測定器情報(器番、製造年月日等)、測定機種各種設定情報、経度、緯度、高度などの測定位置に関する情報、あるいは所有会社名、使用部署名、測定者名、測定器管理番号などのユーザ設定情報などが挙げられる。
【0021】
このようなガス検知器においては、ガス検知素子20をセットすることにより、ガス検知器本体における情報読み出し/書き込み手段によって当該ガス検知素子20のRFIDチップに記録された情報が読み出され、当該ガス検知素子20に応じた設定条件に自動的に設定される。
そして、設置された環境に検知対象ガスが存在する場合に、または供給された被検ガス中に検知対象ガスが含有されている場合に、検知対象ガスが枠部材24の開口24Aからガス透過膜23を透過して反応基材22に接触し、当該反応基材22が呈色することなどによって光学的濃度が変化する。従って、この現象を、発光手段12および受光手段13よりなる光濃度検知機構によって光学的に検出することにより、被検ガスを検知することができる。
所定のガス検知が行われた後においては、測定年月日時および測定ガス濃度などの検知結果に係る情報などがガス検知素子20それ自体のRFIDチップに記録される。
【0022】
而して、上記構成のガス検知器によれば、ガス検知素子20が当該ガス検知素子20に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられたものが用いられることにより、ガス検知素子20を交換して測定対象ガスの種類を変更するに際して、ガス検知素子20の交換に伴って設定条件が新たなガス検知素子20に固有のものにいわば自動的に変更(更新)されるので、ガス検知素子20を交換する度毎に設定条件を変更するなどの煩雑な操作が不要であり、高い利便性が得られる。
また、従来のもののように、新たな種類のガス検知を行う場合には、ガス検知器本体に内蔵されたガス検知動作に係る制御プログラムを更新することが必要とされるが、本発明のガス検知器によれば、ガス検知器本体に内蔵されている制御プログラムによって(ソフト上の理由によって)検知対象ガスの種類が制限されてしまうことがなく、ガス検知素子20を交換するという簡単な操作を行うだけで、複数種類のガス検知に対応することができる。
【0023】
また、ガス検知素子20におけるRFIDチップに記録された使用有効期限情報および使用可能機器種別情報を、実際に使用する際にガス検知器本体によって読み取ることによって、ガス検知素子が使用有効期限が過ぎたものであることが確認された場合に、あるいは、ガス検知素子がガス検知器本体に対応するものでないことが確認された場合に、ガス検知素子の使用を制限例えばガス測定をできないよう設定することができるので、所期のガス検知を確実に行うことができる。
さらに、ガス検知素子20それ自体にガス検知結果が記録されるので、ガス検知に使用されたガス検知素子と測定履歴情報(測定結果)とを一緒に管理、保存することができ、後日に、データが必要とされた場合には、速やかに対処することができる。
【0024】
しかも、RFIDチップそれ自体の作用によって以下のような効果が得られる。
(1)記録された情報を無線通信によるデータ交信で自動認識することができるので、ガス検知素子20とガス検知器本体とを電気的に接続させることが不要であり、当該電気的接続部分の汚損または腐食等に起因する接触不良が生ずることがないので、情報の読み出しおよび情報の書き込みを確実に行うことができ、しかも、交換消耗品であるガス検知素子20の構造が煩雑化することを防止することができると共にコストダウンを図ることができる。
(2)RFIDチップそれ自体を薄肉化、例えばカード状とすることができるので、ガス検知素子それ自体が大型化することを防止することができる。
(3)通常、ガス検知素子は反応部の外気との接触を避けるためにパッケージングされてなるものであるが、非接触で情報の読み出しおよび書き込みを行うことができるので、ガス検知素子の製造時において、パッケージされた後においてもガス検知素子の種類の識別を行うことができ、従って、起票内容との確認を容易に行うことができ、製造ミスが生ずることを確実に防止することができる。
【0025】
<第2実施形態>
上記第1実施形態は、本発明がいわゆるタブレット型ガス検知素子を備えたガス検知器に適用されたものであるが、以下に示すような検知テープ式のガス検知器に適用されてもよい。
図3は、本発明の第2実施形態に係るガス検知器の一例における要部の構成の概略を示す説明図である。
図中符号30で示されている部材は、測定ヘッドであって、底面に開口するガス導入用開口31Aを有するガス導入流路31が形成されており、このガス導入用開口31Aがカセットケース50に収容されているガス検知テープ51の搬送路に対向するよう配置されている。測定ヘッド30には、ガス導入用開口31Aに対して、検知用光を照射する発光手段32と、ガス検知テープ51からの反射光を受光する受光手段33とよりなる光濃度検知機構が設けられている。
35は、サンプリングヘッドであって、上面における測定ヘッド30のガス導入用開口31Aと対向する位置に開口するガス排出用開口36Aを有するガス排出流路36が形成されており、ガス検知テープ51の搬送路に対向してガイド38により上下動可能に支持された状態で、常時、測定ヘッド30に弾接するよう適宜の弾性部材39によって付勢されて配置されている。ガス排出流路36には、サンプリングポンプ(図示せず)が接続されている。
【0026】
カセットケース50の内部には、ガス検知テープ51とこのガス検知テープ51を搬送する搬送手段とが設けられている。搬送手段は、検知テープが巻きつけられた回転自在な元巻き軸52Aを有するテープ収容リール52と、駆動源によって時計方向(図において矢印で示す。)に回転される巻き取り軸53Aを有する巻き取りリール53とにより構成されており、ガス検知テープ51が測定ヘッド30とサンプリングヘッド35との間に介在するよう着脱自在に配置されている。
【0027】
ガス検知テープ51は、検知対象ガスに接触すると呈色する発色剤が含浸された例えばセルローステープよりなり、発色剤としては、従来より好適に用いられているものを例示することができる。
【0028】
以上のガス検知器においては、ガス検知素子を構成するカセットケース50に、ガス検知テープ51に固有の情報が予め記録されたRFIDチップが設けられていると共に、ガス検知器本体に、当該RFIDチップに対応する情報読み出し/情報書き込み機構(リーダライタ)が設けられている。
カセットケース50におけるRFIDチップに予め記録されている情報および所定のガス検知が行われた後に新たに書き込まれる情報は、上記第1実施形態において例示したものと同様のものである。
【0029】
このようなガス検知器においては、ガス検知テープ51がカセットケース50に収容されてなるガス検知素子をセットすることにより、ガス検知器本体における情報読み出し/書き込み手段によって当該ガス検知素子のRFIDチップに記録された情報が読み出され、当該ガス検知素子におけるガス検知テープ51に応じた設定条件に自動的に設定される。
そして、設置された環境に検知対象ガスが存在する場合に、または供給された被検ガス中に検知対象ガスが含有されている場合に、検知対象ガスがガス検知テープ51に接触し、当該ガス検知テープ51が呈色することなどによって光学的濃度が変化する。従って、この現象を、発光手段32および受光手段33よりなる光濃度検知機構によって光学的に検出することにより、被検ガスを検知することができ、測定年月日時および測定ガス濃度など検知結果に係る情報などがガス検知素子それ自体のRFIDチップに記録される。
このようにして1サンプリング分の測定が終了した時点で、巻き取りリール53が回転駆動されて所定量例えば2cm程度のガス検知テープ51が巻取られ、測定ヘッド30におけるガス接触部にガス検知テープ51の未使用部分が位置された状態とされる。
【0030】
而して、上記構成のガス検知器によれば、上記第1実施形態に係るガス検知器と同様の効果が得られる。すなわち、ガス検知テープ51がカセットケース50に収容されてなるガス検知素子が当該ガス検知素子に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられたものであることにより、ガス検知素子を交換して測定対象ガスの種類を変更するに際して、ガス検知素子の交換に伴って設定条件が新たなガス検知素子におけるガス検知テープ51に固有のものにいわば自動的に変更または更新されるので、ガス検知素子を交換する度毎に設定条件を変更するなどの煩雑な操作が不要であり、高い利便性が得られると共に、複数種類のガス検知に対応することができる。
また、ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された使用有効期限情報および使用可能機器種別情報を、実際に使用する際にガス検知器本体によって読み取ることによって、ガス検知素子が使用有効期限が過ぎたものであることが確認された場合に、あるいは、ガス検知素子がガス検知器本体に対応するものでないことが確認された場合に、ガス検知素子の使用を制限例えばガス測定をできないよう設定することができるので、所期のガス検知を確実に行うことができる。
さらに、ガス検知素子それ自体にガス検知結果が記録されるので、ガス検知に使用されたガス検知素子と測定履歴情報(測定結果)とを一緒に管理、保存することができ、後日に、データが必要とされた場合には、速やかに対処することができる。
【0031】
しかも、RFIDチップそれ自体の作用によって以下のような効果が得られる。
(1)記録された情報を無線通信によるデータ交信で自動認識することができるので、ガス検知素子とガス検知器本体とを電気的に接続させることが不要であり、当該電気的接続部分の汚損または腐食等に起因する接触不良が生ずることがないので、情報の読み出しおよび情報の書き込みを確実に行うことができ、しかも、交換消耗品であるガス検知素子の構造が煩雑化することを防止することができると共にコストダウンを図ることができる。(2)RFIDチップそれ自体を薄肉化、例えばカード状とすることができるので、ガス検知素子それ自体が大型化することを防止することができる。
(3)通常、ガス検知素子は反応部の外気との接触を避けるためにパッケージングされてなるものであるが、非接触で情報の読み出しおよび書き込みを行うことができるので、ガス検知素子の製造時において、パッケージされた後においてもガス検知素子の種類の識別を行うことができ、従って、起票内容との確認を容易に行うことができ、製造ミスが生ずることを確実に防止することができる。
【0032】
また、ガス検知素子の使用の有無を含む測定履歴情報が記録されていることにより、一度使用されてガス検知結果などの情報が記録されたものを再使用するなどのミスを確実に防止することができると共に、一度ガス検知器にセットされた後、次の実測定までに長い時間が経過しているものであることが確認された場合には、当該ガス検知素子の使用を制限することができ、所期のガス検知を確実に行うことができる。
ガス検知素子の使用回数に係る情報が記録されていることにより、ガス検知テープの残量を容易に把握することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、ガス検知器は、ガス検知素子がガス検知器本体に電気的接続が達成されない状態で装着される構成のものであれば特に限定されず、種々のガス検知方式のものに適用することができる。
【0034】
また、例えば複数のガス検知素子を同時に用いることにより、複数の検知対象ガスについて所期のガス検知を行うことが可能とされた構成のものに適用することもできる。
具体的に説明すると、例えば図4に示すように、このガス検知器60は、複数のガス接触部が形成されてなるヘッド部61を有するガス検知器本体65と、上記のタブレット型のガス検知素子20を保持する複数の素子保持部が設けられた素子ホルダー70と、この素子ホルダー70を着脱自在に支持する素子ホルダー支持部66が形成された装着機構とを備えてなり、素子ホルダー70を支持した装着機構がガス検知器本体65のヘッド部61に保持されることにより、当該素子ホルダー70の素子保持部に保持された複数のタブレット型のガス検知素子20が、ヘッド部61におけるガス接触部に押圧されて、一斉にセットされた状態とされる構成のものである。図4において、62はガス吸引ポンプ、63は駆動用電池である。
装着機構を構成する蓋体67は、支軸69の周りに、図で上下方向に回動自在に設けられており、蓋体67が開状態とされた状態において、素子ホルダー70が、その指掛かり部72(図5参照)を介して人手により、その先端縁(図5で上端縁)が先頭となる状態で挿入され、これにより、着脱自在に支持される。蓋体67は、その先端フック67Aが適宜のスプリング(図示せず)によって抑制された係止爪68に係止されることにより閉状態が維持される。
【0035】
素子ホルダー70は、図5に示すように、全体が平面長方形の偏平な樹脂よりなる一体の枠状成形体であって、3つの素子保持部Hがその長さ方向(図5の左右方向)に並んだ状態に設けられており、両端の手前側個所には、外方に突出する指掛かり部72が形成されている。
各素子保持部Hは、ガス検知素子20を受容する受容凹所により形成されており、当該受容凹所は、当該素子ホルダー70の手前側から矢印方向にガス検知素子20が挿入される形態を有すると共に、ガス検知素子20の外径よりも小径の略円形の貫通孔71の外周縁に沿って伸びる、挿入されたガス検知素子20の前端側部分が略半周にわたって位置される、内方に突出するフランジ73が形成された弧状支持部74と、当該ガス検知素子20の後端部に係合して、弧状支持部74と共にガス検知素子20を保持する保持爪75とが設けられている。
【0036】
このような構成のガス検知器60においては、通常、各素子保持部Hに装着されるべきガス検知素子は特定のものに設定されている、換言すれば、装着可能なガス検知素子が制限されており、他のガス検知素子を使用する場合には、当該ガス検知素子に応じた設定条件に変更または更新することが必要とされる。
然るに、本発明によれば、ガス検知素子20が当該ガス検知素子20に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられたものであることにより、当該ガス検知素子20の情報を読み取ることによって、ガス検知素子20の種類(検知対象ガスの種類)が自動的に識別され、当該ガス検知素子20に応じた設定条件に変更または更新されるので、作業者がガス検知器本体65の設定を変更することなしに、各々のガス検知素子20に係る複数のガスの濃度を並行して測定し、その結果を表示することができ、しかも、ガス検知素子20を素子ホルダー70に装着するに際しては、ガス検知素子20を装着すべき素子保持部Hの位置が制限されず、いずれの素子保持部Hに対してもガス検知素子20を装着することができるので、ガス検知素子20の誤装着によって所期のガス検知(測定)を行うことができなくなるなどの問題が生ずることを防止することができる。
ここに、ガス検知素子の組み合わせは特に制限されず、検知対象ガスが互いに異なるものであっても、同一であるものであってもよい。
【0037】
以上においては、複数のタブレット型のガス検知素子が用いられる構成のものについて説明したが、例えば複数のガス検知テープが用いられるガス検知器に適用することができ、このような場合においても、同様の効果が得られる。
【0038】
また、ガス検知素子それ自体におけるRFIDチップに予め記録させておく情報およびガス検知が行われた後に新たに書き込まれる情報は、上記において例示したすべてのものである必要はなく、目的に応じて適宜に選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明のガス検知器は、ガス検知器本体ではなくガス検知素子それ自体に情報記録機能を持たせたものであるので、将来的には、例えばGPS(Global Positioning System)機能を備えた携帯型ガス検知器が開発された場合に、当該ガス検知器に本発明を適用することによって、測定個所に係る情報例えば緯度、経度、高度などの情報をガス検知結果と共にガス検知素子それ自体に記録し、例えばPC等の電子地図上に測定個所に係る情報と測定結果を表示するシステムなどを構築する際に、有用であるものと想定される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス検知器の一例における要部の構成の概略を示す説明用断面図である。
【図2】図1に示すガス検知器において用いられるガス検知素子の構成の概略を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るガス検知器の一例における要部の構成の概略を示す説明図である。
【図4】本発明のガス検知器の他の例における構成を示す説明用断面図である。
【図5】図4に示すガス検知器における素子ホルダーの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
10 測定ヘッド
11 ガス導入流路
11A ガス導入用開口
12 発光手段
13 受光手段
15 サンプリングヘッド
16 ガス排出用開口
17 ガス排出流路
18 サンプリングポンプ
20 ガス検知素子
21 容器
21A 凹所
21B 窓
21C 開口
22 反応基材
23 ガス透過膜
24 枠部材
24A 開口
24B 爪部
30 測定ヘッド
31 ガス導入流路
31A ガス導入用開口
32 発光手段
33 受光手段
35 サンプリングヘッド
36 ガス排出流路
36A ガス排出用開口
38 ガイド
39 弾性部材
50 カセットケース
51 ガス検知テープ
52 テープ収容リール
52A 元巻き軸
53 巻き取りリール
53A 巻き取り軸
60 ガス検知器
61 ヘッド部
62 ガス吸引ポンプ
63 駆動用電池
65 ガス検知器本体
66 素子ホルダー支持部
67 蓋体
67A 先端フック
68 係止爪
69 支軸
70 素子ホルダー
71 貫通孔
72 指掛かり部
73 フランジ
74 弧状支持部
75 保持爪
H 素子保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス検知素子が、ガス検知器本体に電気的接続が達成されない状態において、測定対象ガスの種類に応じて交換可能に装着されるガス検知器であって、
ガス検知素子には、当該ガス検知素子に固有の情報が記録されたRFIDチップが設けられており、
ガス検知器本体には、ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された情報を読み出すと共にガス検知結果に係る情報を書き込む機能を有する情報読み出し/書き込み手段が設けられていることを特徴とするガス検知器。
【請求項2】
ガス検知素子におけるRFIDチップに記録された情報が、少なくとも測定対象ガス、測定可能濃度範囲、サンプリング時間、当該ガス検知素子を使用可能な機器の種別情報および当該ガス検知素子の使用有効期限情報を含むガス検知素子識別情報であることを特徴とする請求項1に記載のガス検知器。
【請求項3】
ガス検知素子におけるRFIDチップに書き込まれる情報が、測定年月日時および測定ガス濃度を含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検知器。
【請求項4】
ガス検知素子におけるRFIDチップには、当該ガス検知素子の使用の有無を含む測定履歴情報が記録されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガス検知器。
【請求項5】
ガス接触部が形成されてなる測定ヘッドおよびガス吸引手段が接続されたサンプリングヘッドを有するガス検知器本体と、検知対象ガスが接触されたときに呈色しまたは光学濃度が変化する反応部が測定ヘッドとサンプリングヘッドとの間に介在する状態で配置されたタブレット型のガス検知素子とを備えてなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のガス検知器。
【請求項6】
ガス接触部が形成されてなる測定ヘッドおよびガス吸引手段が接続されたサンプリングヘッドを有するガス検知器本体と、検知対象ガスが接触されたときに呈色しまたは光学濃度が変化するガス検知テープがケースに収容されてなるガス検知素子とを備えてなり、ガス検知テープが測定ヘッドとサンプリングヘッドとの間に介在する状態で配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のガス検知器。
【請求項7】
ガス検知素子におけるRFIDチップには、当該ガス検知素子の使用回数に係る情報が記録されていることを特徴とする請求項6に記載のガス検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−46930(P2006−46930A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224017(P2004−224017)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】