説明

ガス検知装置

【課題】 被検知ガスの漏洩を早期に、かつ確実に検知することができるガス検知装置を提供する。
【解決手段】 ガス検知装置は、被検知ガスを捕集するフード1と、フード1で捕集した被検知ガスを吸引口2を介して吸引するファン3と、被検知ガスを検知するセンサ4とを備えると共に、吸引口2と被検知ガスの発生源との間に位置し、フード1により囲まれた内側部分のうち少なくとも中央部を遮蔽してその周りに開口部5を形成し、フードの内側面との間で被検知ガスを吸引口2に案内する流路を形成する案内板6を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
被検知ガスを捕集するフードと、当該フードで捕集した被検知ガスを吸引口を介して吸引するファンと、前記被検知ガスを検知するセンサとを備えるガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス検知装置は、主に屋内で使用され、被検知ガスが漏洩した場合等に被検知ガスの存在、もしくは被検知ガスの濃度が一定以上であることを検知して警報を発するものである。従来、空気より比重の軽い被検知ガスが漏洩した場合に、この被検知ガスを確実に検知するため、ガス検知装置を被検知ガスが漏洩する可能性のある設備の上方の天井に取り付けて使用されていた。
【0003】
しかし、ガス検知装置を被検知ガスの発生源の真上に取り付けたとしても、被検知ガスは拡散するため、被検知ガスがガス検知装置のセンサに到達するころには被検知ガスの濃度は実際の濃度よりも低くなってしまう。また、屋内であっても、排気設備の稼働や屋外への換気等によって風が発生するため、被検知ガスが流されてしまい、ガス検知装置のセンサに到達しない場合がある。このため、被検知ガスの漏洩が早期に発見され難いという問題があった。
【0004】
上記問題に対しては、拡散した被検知ガスを捕集できるように、被検知ガスを検知するセンサの周りにフードを備えたガス検知装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このガス検知装置によれば、フードによってセンサ周辺の被検知ガスを保持し、その濃度を高めることができるため、被検知ガスをいち早く検知することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−52720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記従来のガス検知装置は、センサの周りにフードを設けたとしても、空気中の被検知ガスの濃度が低い場合には、センサが検知可能となる濃度になる被検知ガスを確保するまでにはある程度の時間を要する。このため、被検知ガスの漏洩の発見が遅れる可能性がある。また、被検知ガスが風によって流される場合には、被検知ガスを確実にフード内に保持し、検知するためには、一つの被検知ガスの発生源に対しても、多数のガス検知装置を設置する必要があった。
【0007】
一方、前記フードを有するガス検知装置を改良した装置として、空気中の被検知ガスを強制的にフード内に集めるために、フードの中心部に吸引ファンを設けることも考えられるが、この場合、被検知ガスを空気ごと吸引することになるため、吸引量に対する被検知ガスの量が少なく、センサが検知可能となる濃度を確保できなくなることが想定される。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被検知ガスの漏洩を早期に、かつ確実に検知することができるガス検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るガス検知装置の第1特徴構成は、被検知ガスを捕集するフードと、当該フードで捕集した被検知ガスを吸引口を介して吸引するファンと、前記被検知ガスを検知するセンサとを備えると共に、前記吸引口と前記被検知ガスの発生源との間に位置し、前記フードにより囲まれた内側部分のうち少なくとも中央部を遮蔽してその周りに開口部を形成し、前記フードの内側面との間で前記被検知ガスを前記吸引口に案内する流路を形成する案内板を備えた点にある。
【0010】
つまり、この構成によれば、漏洩した被検知ガスは、直接吸引口に吸引されるのではなく、案内板の存在により、その下方に一旦集めることができるため、被検知ガスの濃度を高めてからセンサと接触させることができる。このため、濃度の低い被検知ガスをそのまま吸引する場合のように、大量の空気ごと吸引して被検知ガスの濃度を低下させることがなくなり、早期にかつ確実に被検知ガスの漏洩を検知することができる。
また、案内板の下方には被検知ガスが集まって濃度が高くなっているため、少量のガスを吸引し、センサと接触させるだけで、確実に被検知ガスを検知することができる。
【0011】
本発明に係るガス検知装置の第2特徴構成は、前記フードの下方の風速を測定する風速測定部を備える点にある。
【0012】
つまり、この構成によれば、風速測定部により、フードの下方の風速を測定することができるため、被検知ガスに対する風の影響を知ることができる。
【0013】
本発明に係るガス検知装置の第3特徴構成は、前記センサで検知した被検知ガスの濃度を、前記風速測定部により測定した風速に応じて補正する点にある。
【0014】
つまり、この構成によれば、風速によってフード内に確保できる被検知ガスの量が異なるため、風速に応じて検知した被検知ガスの濃度を補正することにより、正確な被検知ガスの濃度を検知することができる。
【0015】
本発明に係るガス検知装置の第4特徴構成は、前記ファンを、逆回転させることにより、前記開口部から前記フードの下方に気流を発生できるように構成されている点にある。
【0016】
つまり、この構成によれば、開口部からその下方に気流を発生させることにより、所謂エアカーテンを設けることができるため、被検知ガスに対する風の影響を抑えることができ、被検知ガスの捕集効率を高めて確実に被検知ガスを検知することができる。
【0017】
本発明に係るガス検知装置の第5特徴構成は、前記開口部のさらに外側から前記フードの下方に気流を発生させる送風手段を備えた点にある。
【0018】
つまり、この構成によれば、常にフードの外周部にエアカーテンを設けることができるため、被検知ガスに対する風の影響を抑えることができ、早期にかつ確実に被検知ガスの漏洩を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るガス検知装置は、被検知ガスを捕集するフードと、当該フードで捕集した被検知ガスを吸引口を介して吸引するファンと、前記被検知ガスを検知するセンサとを備えると共に、前記吸引口と前記被検知ガスの発生源との間に位置し、前記フードにより囲まれた内側部分のうち少なくとも中央部を遮蔽してその周りに開口部を形成し、前記フードの内側面との間で前記被検知ガスを前記吸引口に案内する流路を形成する案内板を備えたものである。そして、このようなガス検知装置により、空気より比重の軽い被検知ガスが漏洩した場合には、被検知ガスは、直接吸引口に吸引されるのではなく、案内板の存在により、その下方に一旦集められるため、被検知ガスの濃度を高めてから吸引し、センサと接触させることができる。このため、濃度の低い被検知ガスをそのまま吸引する場合のように、大量の空気ごと吸引して被検知ガスの濃度を低下させることがなくなり、早期にかつ確実に被検知ガスの漏洩を検知することができる。また、案内板の下方には被検知ガスが集まって濃度が高くなっているため、少量のガスを吸引し、センサと接触させるだけで、確実に被検知ガスを検知することができる。
【0020】
以下、本発明に係るガス検知装置の一実施形態として、液化天然ガス(LNG)用のバルブスタンドの設置機器からのガスの漏洩を検知するガス検知装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るガス検知装置は、図1及び図2に示すように、被検知ガスを捕集するフード1、フード1で捕集した被検知ガスを吸引口2を介して吸引するファン3、ファン3によって吸引した被検知ガスを検知するセンサ4、フード1により囲まれた内側部分のうち中央部を遮蔽してその周りに開口部5を形成する案内板6を備えて構成される。そして、このようなガス検知装置は、バルブスタンド7の上方に、開口部5を下向きにしてワイヤー等により設置され、使用される。
【0021】
フード1は、その形状・大きさは特に限定されないが、本実施形態では、透明なアクリル製で、下面を開口した直方体形状を有しており、一般的なバルブスタンド7の垂直投影面積より、一回り小さくなるように幅1300mm、奥行500mm、高さ100mmに形成されている。また、フード1の形状は、特に限定されるものではなく、円柱形状等任意の形状を適用することができる。フード1の素材は、アクリル製に限定されず、その他の樹脂や金属製であっても何ら問題はない。
また、フード1の直方体形状の開口面と対向する面の中央部には、ファン3によって被検知ガスを吸引するための吸引口2が設けられている。吸引口2の位置は、特に制限はなく、開口面と対向する面の任意の位置に設けることができる。
【0022】
ファン3は、フード1に設けられた吸引口2の上方に設けられており、回転することにより、被検知ガスを吸引することができる。回転速度は任意に設定可能であるが、通常、吸引速度が0.5m/秒となるように設定されている。ファン3は、従来公知のものを適用することができる。
【0023】
センサ4は、ファン3の上方に設けられており、LNGに対する選択性及び高感度検知の観点から熱線型半導体式センサが適用されている。また、ファン3とセンサ4との周りには囲いが設けられており、ファン3によって吸引した被検知ガスがロスなくセンサ4に接触できるように構成されている。そして、センサ4は警報手段(図示しない)と連結されており、被検知ガスの濃度が一定以上、例えば、500ppm以上であることを検知すると、警報手段により警報を発するように構成されている。また、センサ4には、指示計8及びデータロガー9が連結されており、センサ4で検知した被検知ガスの濃度の変化を蓄積可能としている。なお、センサ4の種類は、特に限定されるものではなく、接触燃焼式等、従来公知のセンサが使用可能である。また、センサ4は、必ずしもファン3の上方に下向きに設置する必要はなく、例えば、ファン3の上方に横向きに設置することもできる。
【0024】
案内板6は、吸引口2と被検知ガスの発生源との間であって、フード1により囲まれた内側部分の中央部に設置することにより、その周りにフード1と案内板6との幅が10mmとなる開口部5を形成し、フード1の内側面との間で被検知ガスを吸引口2に案内する流路を形成するものである。これにより、被検知ガスが漏洩した場合には、被検知ガスが周囲の空気と共に吸引口2に吸引されるのを防ぎ、案内板6の下方において、一旦被検知ガスを集めることができるため、高濃度の被検知ガスを開口部5から吸引させて、センサと接触させることができる。この際、案内板6の下方に集めた高濃度の被検知ガスのみを吸引できるように吸引流量を1m/秒程度にすることが好ましい。すなわち、吸引流量が多すぎると被検知ガス以外のガスを多く吸引してしまい、センサに接触する被検知ガスの濃度が低下してしまう。開口部5のフード1と案内板6との幅は、任意に設定可能であって特に制限はないが、例えば、10mmの場合には、上述の通りファン3の吸引速度を0.5m/秒とすることにより、吸引量を約1m/秒とすることができる。なお、案内板6は、例えば、フード1に設けられた凸部とネジによって取付け可能であり、その形状及び素材は、フード1に対応させて任意に選択することができる。
【0025】
また、本実施形態のガス検知装置には、さらに風速測定部が設けられており、プローブ10をフード1の下方に設けることにより、被検知ガスに対する風の影響を知ることができる。そして、風速測定部は、制御部(図示しない)と連結されており、制御部は、風速測定部で測定した風速に応じて、検知した被検知ガスの濃度を補正して、警報手段に送るがことできる。すなわち、風速が大きいほど、被検知ガスが風によって流される量が多くなり、フード1内に確保できる被検知ガスの量が少なくなるため、センサは実際の濃度よりも低い値を検知する。このため、検知した濃度を補正して警報手段に送ることにより、正確な被検知ガスの濃度に基づいて、警報を発するか否かを判断することができる。なお、補正係数については、予め風速に対する検知濃度の変化をデータを蓄積しておくことにより、より正確な補正を行うことができる。
また、風速測定部は、ファン3の吸引速度も測定できるようにプローブ11がファン3とセンサ4との間に設けられており、測定した風速によって、ファン3の回転速度を調整できるように構成されている。
なお、風速測定部は、必ずしも設ける必要はなく、ガス検知装置を設置する環境に応じて任意に設定することができる。
【0026】
また、本実施形態のガス検知装置において、ファン3を逆回転させることにより、開口部5からフード1の下方に気流を発生できるように構成することもできる。すなわち、開口部5からその下方に気流を発生させることにより、エアカーテンを設けることができるため、被検知ガスが風によって流されることを抑制できる。そして、被検知ガスがある程度集まったところで、ファン3を正回転させて吸引することによって、確実に被検知ガスを検知することができる。
なお、ファン3の正回転と逆回転との切替は、特に制限はなく、任意に行うことができる。例えば、通常は正回転のみの運転を行い、プローブ10によって測定した風速が一定以上になった場合のみ、一定時間逆回転させることや、また、風速に関係なく、所定時間毎に正回転と逆回転とを切り替えることができる。
【0027】
また、本発明に係るガス検知装置には、開口部5のさらに外側からフード1の下方に気流を発生させる送風手段を設けることもできる。これにより、常にフード1の外周部にエアカーテンを設けることができるため、被検知ガスに対する風の影響を抑えることができ、早期にかつ確実に被検知ガスの漏洩を検知することができる。なお、送風手段としては、送風ファン、コンプレッサー等、従来公知の手段を適用することができる。また、フード1の外周部に設ける送風口は、連続形状や多孔状等任意の形状を適用することができる。
【0028】
なお、その他のガス検知装置の構成、機能については、従来公知のガス検知装置と同様である。
また、空気より比重の重い被検知ガスを検知する場合にも、本発明に係るガス検知装置は、その被検知ガスを検知可能なセンサ1を備え、被検知ガスの発生源の下方に、開口部5を上向きに設置することにより、同様に適用することができる。
【実施例】
【0029】
CHガスの拡散状況を調べるため、平板のフード1をCHガスの発生源の1m上方に設置し、フード1の下方、水平方向に0.5m/秒の風を発生させた。その結果、水平方向の拡散角度は、図3に示すように約30°となることが分かった。
【0030】
そして、1m×1mの平板フード1においては、図4に示すようにフード1の面積1mに対して、拡散面積Sの0.17m分のCHガスであっても十分検知可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明に係るガス検知装置は、LNGを始めとして、空気と比重の異なる様々なガスの漏洩検知に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施形態に係るガス検知装置の断面図
【図2】本実施形態に係るガス検知装置の斜視図
【図3】ガスの拡散状態を説明する図
【図4】ガスの拡散状態を説明する図
【符号の説明】
【0033】
1 フード
2 吸引口
3 ファン
4 センサ
5 開口部
6 案内板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検知ガスを捕集するフードと、当該フードで捕集した被検知ガスを吸引口を介して吸引するファンと、前記被検知ガスを検知するセンサとを備えると共に、
前記吸引口と前記被検知ガスの発生源との間に位置し、前記フードにより囲まれた内側部分のうち少なくとも中央部を遮蔽してその周りに開口部を形成し、前記フードの内側面との間で前記被検知ガスを前記吸引口に案内する流路を形成する案内板を備えたガス検知装置。
【請求項2】
前記フードの下方の風速を測定する風速測定部を備える請求項1に記載のガス検知装置。
【請求項3】
前記センサで検知した被検知ガスの濃度を、前記風速測定部により測定した風速に応じて補正する請求項2に記載のガス検知装置。
【請求項4】
前記ファンを、逆回転させることにより、前記開口部から前記フードの下方に気流を発生できるように構成されている請求項1または2に記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記開口部のさらに外側から前記フードの下方に気流を発生させる送風手段を備えた請求項1に記載のガス検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−90891(P2006−90891A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−277862(P2004−277862)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】