ガス流れ中のガス濃度測定方法及び分析器
【課題】広い濃度範囲にわたりガス流れにおけるCO2濃度を測定でき、かつ、校正の回数を減らし回復時間を短くできる測定方法、及び分析器を提供する。
【解決手段】ガス流れ5中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、ガス流れ5と吸収液1の流れとを中空糸膜4cを介して接触させる工程と、接触後の吸収液1の化学特性をpHガラス電極10により検出する工程と、を備える。
【解決手段】ガス流れ5中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、ガス流れ5と吸収液1の流れとを中空糸膜4cを介して接触させる工程と、接触後の吸収液1の化学特性をpHガラス電極10により検出する工程と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流れ中の所定のガス成分を連続測定するガス分析方法及び分析器に関する。本発明の目的は主として炭酸ガス又は硫化水素の濃度を測定することである。しかしながら、本発明の原理は他の複数のガスにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスのモニタリングは、様々な分野において極めて重要である。温室内では、いくつかの作物の成長速度は炭酸ガスの濃度を制御することで向上できる。炭酸ガスは、肉、チーズ、果物及び野菜の保存寿命を延長するために、食品パッケージ内に封入されて使用される。炭酸ガスの測定及び制御は、醸造及び炭酸飲料産業においても同様に重要である。さらに、炭酸ガスの測定及び制御は、ドライアイスを製造、処理、利用する領域で重要である。
【0003】
多数の炭酸ガスセンサが市販されている。赤外線技術を利用する方法は、例えば下記特許文献1に記載されているように、市販の分析器において最も広く使用されている。このような分析器では、ガス流れは赤外線ビームが透過するチャンバ内を流れる。ガス流れ中の炭酸ガスは固有波長において赤外線の一部を吸収する。この吸光度はサンプル中の炭酸ガス濃度に比例する。
【0004】
赤外線技術を利用するシステムは比較的大型で高価であり、特定の条件が炭酸ガス測定の信頼性に影響を与えるため、いくつかの制限を受ける。炭酸ガスの赤外線吸収スペクトルは酸素及び亜酸化窒素の両方の吸収スペクトルといくつかの類似性を有する。これらガスのいずれか又は両方が高濃度であると、センサ測定値に影響を及ぼすため、校正に補正係数を組み入れる必要がある。さらに、赤外線測定値の良好な精度を得るためにはサンプルガスの湿度の制御が重要になる。
【0005】
現在では、赤外線測定技術には2つの代替方法が存在する。第1は、CO2が存在すると色が変化する、炭酸ガスの定性測定であるいわゆる比色化学指示薬法である。第2はSeveringhausタイプのセンサである。このタイプのセンサは、炭酸ガスがセンサの電極内に浸透し、pHを変化させることに基づくものであり、pH値は電位差測定、伝導度測定又は他の方法によって測定可能である。
【特許文献1】特表平9−510550
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Severinghausタイプのセンサでは、測定には、薄いガラス膜と、CO2を透過するポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)又はシリコンゴム膜との間に0.1M NaHCO3溶液の壊れやすい膜を保持する必要がある。このような構成では、水蒸気による希釈及び気泡形成の問題が発生し、センサを頻繁に校正する必要性が生じることは明らかである。さらに、SeveringhausタイプのCO2センサは長い回復時間を必要とし、別の制限を生じることとなる。この問題は、内部電解質層からのCO2の拡散速度が遅いことに起因する。
【0007】
Severinghausタイプのセンサに関する制限を克服するために、滞留している電解質層を、微多孔質中空糸束内を流れる再循環脱イオン水に置き換え、空気中のCO2と流れる水との平衡を可能にすることが試みられている。[L.R Kuck,R.D.Godec,P.P.Kosenka,J.W.Birks,「High−precision conductometric detector for the measurement for the measurement of atmospheric carbon dioxide」、Anal.Chem.70(1998)4678−4682]。
【0008】
この場合、溶解したCO2は伝導度測定センサによって測定される。伝導度測定センサに基づくシステムは、低濃度CO2の測定に限定される。このような伝導度測定センサに基づく分析システムを提供するためには、イオン交換を利用して水からイオンを連続的に除去する。伝導度測定センサに関連するもう一つの欠点は、硫化物イオンを含む溶液に適さないことである。この欠点は、H2SがCO2と共存する天然ガス用途などの場合においては実際に制限となる。
【0009】
本発明の目的は、広い濃度範囲にわたりガス流れにおけるCO2又はH2Sの濃度を測定でき、かつ、校正の回数を減らし回復時間を短くできる測定方法、及び分析器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの形態は、希釈されたキャリアとしての吸収液の連続供給を必要とする分析器を提供する。この吸収液の再循環は通常試みられない。
【0011】
吸収液が供給される膜を備えた分析器は、連続インライン分析において自動ガスサンプリング手段を提供する。この構成は拡散スクラバー又は透過デニューダー(denuder)と呼ばれる。拡散スクラバーの重要な特徴は、粒子状物質間に、従来の濾過又は吸着剤サンプリングにおいて発生するような相互作用がないことである[M.Miro,W.Frenzel,「Automated membrane−based sampling and sample preparation exploiting flow−injection analysis」、Trends in Anal.Chem.23(2004)624−636]。
【0012】
拡散スクラバーに基づく所定のガス分析器の全体性能は、(i)流通する吸収液の特性、(ii)中空糸膜の特性、(iii)吸収液の性質を検出するセンサのタイプ、(iv)液流量及び膜モジュールの形状などの他の条件によって決定される。
【0013】
キャリアとなる吸収液は、ガス流れから分析対象ガスをある程度まで捕獲できる。分析対象ガス−吸収液の相互作用は、吸収液の少なくとも1つの特性に多少の変化を生じさせるものである必要がある。本発明では、例えば、CO2の酸性が、吸収液となる液体電解質中に必要な化学変化を生じさせる。
【0014】
吸収液の流れ中に設置されるセンサは、この吸収液の変化に選択的に応答する。本発明においては、pH電極を用いて吸収液のpH変化をモニタリングする。理論的には、pH電極セルの起電力(EMF)は、以下の式によってガス流れ中のCO2%に関連付けられる。
【0015】
EMF=定数+59.2Log[CO2%]
本発明では、0.5〜100%CO2の範囲内でEMF(mV)とLog[CO2%]との間に線形応答を示した。しかしながら、さらに低濃度の範囲でも同様に達成可能である。
【0016】
多数の中空糸膜を有する中空糸膜コンタクターにおいて吸収液が流れることのできる有効な中空糸膜の数を制限するために、例えばポリオレフィン中空糸膜に基づく小型の市販中空糸膜コンタクター(Membrana、USA)を改良することが好ましい。これは、モジュールの内部容積を減らして、分析器の応答時間及び回復時間を減少させるためである。
【0017】
本発明の1つの形態においては、天然ガス産業などのいくつかの特定の用途において、分析器の選択性を向上させる例として、他の酸性ガス(H2S)の干渉を除去する手段も提供できる。
【0018】
本発明の原理により、主として、吸収液及び流れ中のセンサのタイプの適切な選択によって、他のガスの濃度も測定できる。
【0019】
本発明によれば、ガス流れ中の炭酸ガス又は硫化水素濃度を測定する低コストのガス分析器を提供できる。本発明は、部分的に改良した市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクター及び市販のpH電極を利用することができる。
【0020】
本発明に係る方法は、ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる工程と、接触後の吸収液の化学特性をセンサにより検出する工程と、を備える。
【0021】
本発明に係る分析器は、ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する分析器であって、ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる膜コンタクターと、膜コンタクターから排出された吸収液の化学特性を測定するセンサと、を備える。
【0022】
本発明によれば、吸収液を連続供給する小型中空糸膜コンタクター及び通過型検出セルを用いるので応答時間及び回復時間が短い。そのため、ガス流れ中の1種のガスの濃度をリアルタイムで連側的に測定することが可能となる。また、吸収液を連続供給する通過型検出セルを用いるので頻繁な校正も不要となる。また、吸収液及び通過型検出セルのタイプの適切な選択によって広いガス濃度にわたって測定可能であり、中空糸膜コンタクター内での分析対象ガスと吸収液との接触を良好にする構造を有するので感度も高い。
【0023】
ここで炭酸ガスを測定する場合は、センサはpH電極であることが好ましい。これにより、pHの測定ができるので好ましい。
【0024】
また、1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素であることが好ましい。
【0025】
また、吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。
【0026】
さらに、対象となる1種のガスが炭酸ガスである場合には、硫化水素を吸着するカラム(例えば、銅粉末)を通した後にガス流れを吸収液と接触させると好ましい。これにより、ガス流れ中の硫化水素がカラムに捕集され、炭酸ガス分析に与えるH2Sの影響を低減できる。
【発明の効果】
【0027】
(i)ダイナミックレンジを広くできる。例えば、CO2では、ガス流れ中の0.5〜100体積%の範囲にわたって連続CO2測定も可能となる。
(ii)低濃度範囲に対する感度の調整が可能。
(iii)分析器応答がガス流量の大きな変動に殆ど関係しない。
(iv)構造が簡単。
(v)製造及び操作コストが低い。
(vi)同一原理を多数の他の重要な分析対象ガスに対して適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1に示される分析器は、主として、蠕動ポンプ3、中空糸膜コンタクター4、流通型検出セル9、及びセンサとしてのpHガラス電極10を備える。
【0029】
蠕動ポンプ3は、タンクTに貯留されたキャリアとしての吸収液1を、連続して中空糸膜コンタクター4のチューブ側入口4aに供給する。キャリアとなる吸収液1はプラスチックチューブ2を通して中空糸膜コンタクター4に移送される。
【0030】
中空糸膜コンタクター4は、筒状のシェル4d内に、多孔質中空糸膜(hollow fiber membrane)4cが多数本配置されたものであり、チューブ入口4aから供給された吸収液1がチューブ出口4bから排出される一方、シェル入口4eから供給されたガス流れが、中空糸膜4cの外面とシェル4dとの間を通ってシェル出口4fから排出される。
【0031】
ガス流れ5は、プラスチックチューブ5a及びH2S除去カラム6を通って中空糸膜コンタクター4のシェル入口4eに入り、シェル出口4fを通って真空配管路7に排出される。
【0032】
中空糸膜コンタクター4のチューブ出口4bから排出される吸収液1は、短いチューブ8(例えばステンレス製)を通して通過型検出セル9の入口9aに移送される。
【0033】
通過型検出セル9は、例えば50μLの内容積を有し、入口9a及び出口9bを有する。通過型検出セル9には、市販の平底pHガラス電極10が配置され、キャリアとなる吸収液1のpH変化を連続的に測定する。具体的には、pHガラス電極10のセンサ部(電極チップ部)9cが通過型検出セル9内において流通する吸収液と接触する。pHガラス電極10の発生EMFは、高入力インピーダンス増幅器12によって測定される。この低電圧出力はPC(図示なし)によって作動されるADC(アナログ−デジタル変換器)カード13に供給され、その結果はPC画面(図示なし)に表示される。pH検出後の廃液は、出口9bからライン11を介して排出される。
【0034】
作動中に、キャリブレーションのために、窒素及び様々な割合のCO2を含むガス流れをガス流量コントローラ及びガス混合器(いずれも不図示)によって正確に調製し、中空糸膜コンタクター4のシェル入口4eに供給してもよい。
【0035】
このような分析器においては、シェル側を流通するガス流れ中のCO2の一部分が、ガス透過性を有する中空糸膜4cを介してキャリアとなる吸収液1中に溶解し、そのpHをガス流れ中のCO2分圧PCO2によって決定される値に応じて低下させる。そして、この変化がpHガラス電極10によって測定される。
【0036】
CO2感度を最大にするには、全ての中空糸をガス流れと接触させればよく、また、キャリアとなる吸収液1の吸収容量も慎重に選択する必要がある。一方、応答時間及び回復時間を減少させるには、中空糸膜コンタクター4の中空糸膜4cの全チューブ内容積、及び中空糸膜コンタクターと通過型検出セル9間の接続ライン8の長さを最小に維持することが好ましい。
【0037】
本実施形態において、使用される吸収液は、CO2の検出に適するわずかにアルカリ性のpH値を有する金属重炭酸塩水溶液である。金属重炭酸塩としては、例えば、重炭酸ナトリウムが好ましい。
【0038】
図2は、キャリア吸収液の流量を1mL/分に固定した場合における、CO2濃度−起電力曲線(以下キャリブレーショングラフと称する)に与える吸収液の金属重炭酸塩の濃度の影響を示す。なお、本明細書においてCO2濃度はいずれも体積基準の濃度である。また、以下では、金属重炭酸塩として、重炭酸ナトリウムを使用した。
【0039】
図3には、1mMの吸収液を使用した場合における、キャリブレーショングラフに与える吸収液の流量の影響を示す。
【0040】
図4の(a)には、吸収液流量(4mL/分)において得られた、キャリブレーショングラフが示され、図4の(b)には対応する起電力の時間応答グラフが示されている。
【0041】
図5の(a)には、吸収液が高流量すなわち6mL/分の場合、及び、さらに吸収液にKClが加えられた場合のキャリブレーショングラフが示され、図5の(b)には対応する起電力の時間応答グラフが示されている。得られた回復時間は高流量において特に良好であるが、キャリブレーショングラフは若干の非線形性及び比較的低い勾配(約51mV/CO2濃度10%)を示した。
【0042】
図6では、中空糸の本数を最適化した特注のポリオレフィン中空糸膜コンタクターが使用されている。吸収液容量の効果は図2におけるものと類似である。図7には、キャリブレーショングラフに対する中空糸膜コンタクターに使用された中空糸の本数の影響が示されている。
【0043】
さらに、市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを、エポキシ樹脂によって中空糸の大部分の流路を閉鎖することによって改良した。これにより、ガス流れとの良好な接触を行うために、周辺部の中空糸に対する吸収液の流れを制限している。図8の(a)には、キャリブレーショングラフが示され、図8の(b)には対応する応答時間グラフが示されている。このポリオレフィン中空糸膜コンタクターにより、ほぼ理想的な勾配(約55mV/CO2濃度10%)を有するEMF(mV)とLog(CO2%)との間の優れた直線関係のグラフを得ることができた。
【実施例1】
【0044】
図9及び図10は、ポリオレフィン中空糸膜コンタクターを装備した分析器を用いて得られた結果を示す。ガス流れ中のCO2濃度は100%に固定され、ガス流量は、100mL/分から40mL/分までの4段階で低減される。図9に示されるデータは、信号がガス流量の大きい変動に対しても影響を受けないことを表す。図10には、低濃度(10%)CO2に対するさらに極端なガス流量の変動(1000→50mL/分)が示されている。吸収液流量は6mL/分である。
【実施例2】
【0045】
信号応答の再現性が検査された。図11は1〜10%の間のCO2濃度の様々なサイクルに対する時間応答を示す。得られた信号は低濃度及び高濃度の両方において優れた再現性を示す。ガス流れにおけるCO2濃度の微小な差を識別する本発明の分析器の能力は、図12及び図13におけるデータによって示されている。
【実施例3】
【0046】
図14〜図16に、回復時間を評価するための、様々な範囲における低い値へのCO2濃度のステップ変化を示す。残りの条件は実施例1と同様である。
【0047】
図14に100%から様々な低い値までCO2濃度をステップ変化させることによって得られた様々な回復時間を示す。CO2濃度のステップ変化が小さいと、回復時間が短くなる。
【0048】
図15は図14と類似の様々な回復時間を示すが、最初のCO2濃度は10%である。同様に、CO2濃度のステップ変化が小さいと、回復時間も短いという傾向が示されている。
【0049】
図16にさらに低濃度の範囲における回復時間を示す。ここでも、同一傾向が示されている。
【実施例4】
【0050】
図17は、実施例1と同一条件を使用したCO2応答に対するH2Sの影響を示す。第1及び第3ピークはガス流れの組成10%CO2−90%N2に対応する。第2及び第4ピークはガス流れの組成10%CO2−2%H2S−88%N2に対応する。H2Sにより生じたわずかな干渉が第2及び第4ピークに表われている。なお、この実験では、カラム6は使用していない。
【0051】
H2Sによる干渉は酸で洗浄した銅粉末を含むカラム6によって除去される。このカラム6は比較的高濃度のH2Sを含む用途におけるガードカラムとして作用する。銅粉末は固体硫化銅(CuS)を形成することによりH2Sを除去する。
【実施例5】
【0052】
図18の(a)及び(b)に、窒素中に様々な割合のH2Sを含有するガス流れに対する、図1において記載された分析器の応答を示す。0.0025〜5%H2Sの範囲におけるEMF(mV)とLog(H2S%)との間のキャリブレーショングラフが直線関係を有することが示されている。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されず様々な形態が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、シェル−チューブ型の中空糸膜コンタクターを用いているが、これ以外の膜コンタクターでも、吸収液の流れとガス流れとが膜を介して接触するものならば本発明の実施は可能である。
【0055】
また、本発明によって測定されるガスはCO2やH2Sに限定されず、吸収液に溶けて酸性又はアルカリ性を示し、その際のpH変化の検出が可能であるならば、どのようなガスでもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、吸収液の電解質として、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)を採用しているが、分析対象ガスとの相互作用又は反応によって溶液の化学特性が変わる電解質であればいずれでも良い。
【0057】
また、pHガラス電極以外の例えば、水素電極等の他のpH電極を用いても実施可能である。また、pH電極により吸収液のpHを測定するのでなく、吸収液の他の化学特性、例えば、分析対象ガスに由来するイオンをセンサにより検出しても実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ガス分析器の構成要素を示す。
【図2】シリコンゴム中空糸に基づく市販の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液流量1mL/分における、様々な吸収液濃度についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図3】図2と同一の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液濃度(1mM)における、様々な吸収液流量についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図4】図3と同一の中空糸膜コンタクター及び吸収液濃度を使用した、高流量(4mL/分)の吸収液における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図5】図4と同一の中空糸膜コンタクターと2つの吸収液を使用した、吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図6】ポリオレフィン中空糸を用いた特注の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液流量2.5mL/分における、様々な吸収液濃度についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図7】異なる数の中空糸を含む特注の中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定の吸収液流量2.5mL/分における、Log[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図8】特定の改良を加えた市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定の吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図9】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なガス流量における所定のCO2%についてのEMF(mV)応答のグラフを示す。
【図10】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なガス流量における所定のCO2%についてのEMF(mV)応答のグラフを示す。
【図11】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、10%CO2濃度に対するEMF(mV)応答の再現性を示すグラフである。
【図12】微小なCO2濃度変動に対するEMF(mV)応答の再現性、安定性及び感度を示すグラフである。
【図13】微小なCO2濃度変動に対するEMF(mV)応答の再現性、安定性及び感度を示すグラフである。
【図14】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図15】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図16】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図17】CO2応答に関するH2Sの影響を示すグラフである。
【図18】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[H2S%]グラフを示す。
【符号の説明】
【0059】
1…吸収液、2…プラスチックチューブ、3…蠕動ポンプ、4…中空糸膜コンタクター、4a…チューブ入口、4b…チューブ出口、4c…中空糸膜、4d…シェル、4e…シェル入口、4f…シェル出口、5…ガス流れ、5a…プラスチックチューブ、6…カラム、7…真空配管路、8…チューブ、9…通過型検出セル、9a…セル入口、9b…セル出口、9c…センサチップ、10…pHガラス電極、12…増幅器、13…アナログ−デジタル変換カード。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流れ中の所定のガス成分を連続測定するガス分析方法及び分析器に関する。本発明の目的は主として炭酸ガス又は硫化水素の濃度を測定することである。しかしながら、本発明の原理は他の複数のガスにも適用可能である。
【背景技術】
【0002】
炭酸ガスのモニタリングは、様々な分野において極めて重要である。温室内では、いくつかの作物の成長速度は炭酸ガスの濃度を制御することで向上できる。炭酸ガスは、肉、チーズ、果物及び野菜の保存寿命を延長するために、食品パッケージ内に封入されて使用される。炭酸ガスの測定及び制御は、醸造及び炭酸飲料産業においても同様に重要である。さらに、炭酸ガスの測定及び制御は、ドライアイスを製造、処理、利用する領域で重要である。
【0003】
多数の炭酸ガスセンサが市販されている。赤外線技術を利用する方法は、例えば下記特許文献1に記載されているように、市販の分析器において最も広く使用されている。このような分析器では、ガス流れは赤外線ビームが透過するチャンバ内を流れる。ガス流れ中の炭酸ガスは固有波長において赤外線の一部を吸収する。この吸光度はサンプル中の炭酸ガス濃度に比例する。
【0004】
赤外線技術を利用するシステムは比較的大型で高価であり、特定の条件が炭酸ガス測定の信頼性に影響を与えるため、いくつかの制限を受ける。炭酸ガスの赤外線吸収スペクトルは酸素及び亜酸化窒素の両方の吸収スペクトルといくつかの類似性を有する。これらガスのいずれか又は両方が高濃度であると、センサ測定値に影響を及ぼすため、校正に補正係数を組み入れる必要がある。さらに、赤外線測定値の良好な精度を得るためにはサンプルガスの湿度の制御が重要になる。
【0005】
現在では、赤外線測定技術には2つの代替方法が存在する。第1は、CO2が存在すると色が変化する、炭酸ガスの定性測定であるいわゆる比色化学指示薬法である。第2はSeveringhausタイプのセンサである。このタイプのセンサは、炭酸ガスがセンサの電極内に浸透し、pHを変化させることに基づくものであり、pH値は電位差測定、伝導度測定又は他の方法によって測定可能である。
【特許文献1】特表平9−510550
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Severinghausタイプのセンサでは、測定には、薄いガラス膜と、CO2を透過するポリテトラフルオロエチレン(登録商標:テフロン)又はシリコンゴム膜との間に0.1M NaHCO3溶液の壊れやすい膜を保持する必要がある。このような構成では、水蒸気による希釈及び気泡形成の問題が発生し、センサを頻繁に校正する必要性が生じることは明らかである。さらに、SeveringhausタイプのCO2センサは長い回復時間を必要とし、別の制限を生じることとなる。この問題は、内部電解質層からのCO2の拡散速度が遅いことに起因する。
【0007】
Severinghausタイプのセンサに関する制限を克服するために、滞留している電解質層を、微多孔質中空糸束内を流れる再循環脱イオン水に置き換え、空気中のCO2と流れる水との平衡を可能にすることが試みられている。[L.R Kuck,R.D.Godec,P.P.Kosenka,J.W.Birks,「High−precision conductometric detector for the measurement for the measurement of atmospheric carbon dioxide」、Anal.Chem.70(1998)4678−4682]。
【0008】
この場合、溶解したCO2は伝導度測定センサによって測定される。伝導度測定センサに基づくシステムは、低濃度CO2の測定に限定される。このような伝導度測定センサに基づく分析システムを提供するためには、イオン交換を利用して水からイオンを連続的に除去する。伝導度測定センサに関連するもう一つの欠点は、硫化物イオンを含む溶液に適さないことである。この欠点は、H2SがCO2と共存する天然ガス用途などの場合においては実際に制限となる。
【0009】
本発明の目的は、広い濃度範囲にわたりガス流れにおけるCO2又はH2Sの濃度を測定でき、かつ、校正の回数を減らし回復時間を短くできる測定方法、及び分析器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの形態は、希釈されたキャリアとしての吸収液の連続供給を必要とする分析器を提供する。この吸収液の再循環は通常試みられない。
【0011】
吸収液が供給される膜を備えた分析器は、連続インライン分析において自動ガスサンプリング手段を提供する。この構成は拡散スクラバー又は透過デニューダー(denuder)と呼ばれる。拡散スクラバーの重要な特徴は、粒子状物質間に、従来の濾過又は吸着剤サンプリングにおいて発生するような相互作用がないことである[M.Miro,W.Frenzel,「Automated membrane−based sampling and sample preparation exploiting flow−injection analysis」、Trends in Anal.Chem.23(2004)624−636]。
【0012】
拡散スクラバーに基づく所定のガス分析器の全体性能は、(i)流通する吸収液の特性、(ii)中空糸膜の特性、(iii)吸収液の性質を検出するセンサのタイプ、(iv)液流量及び膜モジュールの形状などの他の条件によって決定される。
【0013】
キャリアとなる吸収液は、ガス流れから分析対象ガスをある程度まで捕獲できる。分析対象ガス−吸収液の相互作用は、吸収液の少なくとも1つの特性に多少の変化を生じさせるものである必要がある。本発明では、例えば、CO2の酸性が、吸収液となる液体電解質中に必要な化学変化を生じさせる。
【0014】
吸収液の流れ中に設置されるセンサは、この吸収液の変化に選択的に応答する。本発明においては、pH電極を用いて吸収液のpH変化をモニタリングする。理論的には、pH電極セルの起電力(EMF)は、以下の式によってガス流れ中のCO2%に関連付けられる。
【0015】
EMF=定数+59.2Log[CO2%]
本発明では、0.5〜100%CO2の範囲内でEMF(mV)とLog[CO2%]との間に線形応答を示した。しかしながら、さらに低濃度の範囲でも同様に達成可能である。
【0016】
多数の中空糸膜を有する中空糸膜コンタクターにおいて吸収液が流れることのできる有効な中空糸膜の数を制限するために、例えばポリオレフィン中空糸膜に基づく小型の市販中空糸膜コンタクター(Membrana、USA)を改良することが好ましい。これは、モジュールの内部容積を減らして、分析器の応答時間及び回復時間を減少させるためである。
【0017】
本発明の1つの形態においては、天然ガス産業などのいくつかの特定の用途において、分析器の選択性を向上させる例として、他の酸性ガス(H2S)の干渉を除去する手段も提供できる。
【0018】
本発明の原理により、主として、吸収液及び流れ中のセンサのタイプの適切な選択によって、他のガスの濃度も測定できる。
【0019】
本発明によれば、ガス流れ中の炭酸ガス又は硫化水素濃度を測定する低コストのガス分析器を提供できる。本発明は、部分的に改良した市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクター及び市販のpH電極を利用することができる。
【0020】
本発明に係る方法は、ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる工程と、接触後の吸収液の化学特性をセンサにより検出する工程と、を備える。
【0021】
本発明に係る分析器は、ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する分析器であって、ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる膜コンタクターと、膜コンタクターから排出された吸収液の化学特性を測定するセンサと、を備える。
【0022】
本発明によれば、吸収液を連続供給する小型中空糸膜コンタクター及び通過型検出セルを用いるので応答時間及び回復時間が短い。そのため、ガス流れ中の1種のガスの濃度をリアルタイムで連側的に測定することが可能となる。また、吸収液を連続供給する通過型検出セルを用いるので頻繁な校正も不要となる。また、吸収液及び通過型検出セルのタイプの適切な選択によって広いガス濃度にわたって測定可能であり、中空糸膜コンタクター内での分析対象ガスと吸収液との接触を良好にする構造を有するので感度も高い。
【0023】
ここで炭酸ガスを測定する場合は、センサはpH電極であることが好ましい。これにより、pHの測定ができるので好ましい。
【0024】
また、1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素であることが好ましい。
【0025】
また、吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液であることが好ましい。
【0026】
さらに、対象となる1種のガスが炭酸ガスである場合には、硫化水素を吸着するカラム(例えば、銅粉末)を通した後にガス流れを吸収液と接触させると好ましい。これにより、ガス流れ中の硫化水素がカラムに捕集され、炭酸ガス分析に与えるH2Sの影響を低減できる。
【発明の効果】
【0027】
(i)ダイナミックレンジを広くできる。例えば、CO2では、ガス流れ中の0.5〜100体積%の範囲にわたって連続CO2測定も可能となる。
(ii)低濃度範囲に対する感度の調整が可能。
(iii)分析器応答がガス流量の大きな変動に殆ど関係しない。
(iv)構造が簡単。
(v)製造及び操作コストが低い。
(vi)同一原理を多数の他の重要な分析対象ガスに対して適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1に示される分析器は、主として、蠕動ポンプ3、中空糸膜コンタクター4、流通型検出セル9、及びセンサとしてのpHガラス電極10を備える。
【0029】
蠕動ポンプ3は、タンクTに貯留されたキャリアとしての吸収液1を、連続して中空糸膜コンタクター4のチューブ側入口4aに供給する。キャリアとなる吸収液1はプラスチックチューブ2を通して中空糸膜コンタクター4に移送される。
【0030】
中空糸膜コンタクター4は、筒状のシェル4d内に、多孔質中空糸膜(hollow fiber membrane)4cが多数本配置されたものであり、チューブ入口4aから供給された吸収液1がチューブ出口4bから排出される一方、シェル入口4eから供給されたガス流れが、中空糸膜4cの外面とシェル4dとの間を通ってシェル出口4fから排出される。
【0031】
ガス流れ5は、プラスチックチューブ5a及びH2S除去カラム6を通って中空糸膜コンタクター4のシェル入口4eに入り、シェル出口4fを通って真空配管路7に排出される。
【0032】
中空糸膜コンタクター4のチューブ出口4bから排出される吸収液1は、短いチューブ8(例えばステンレス製)を通して通過型検出セル9の入口9aに移送される。
【0033】
通過型検出セル9は、例えば50μLの内容積を有し、入口9a及び出口9bを有する。通過型検出セル9には、市販の平底pHガラス電極10が配置され、キャリアとなる吸収液1のpH変化を連続的に測定する。具体的には、pHガラス電極10のセンサ部(電極チップ部)9cが通過型検出セル9内において流通する吸収液と接触する。pHガラス電極10の発生EMFは、高入力インピーダンス増幅器12によって測定される。この低電圧出力はPC(図示なし)によって作動されるADC(アナログ−デジタル変換器)カード13に供給され、その結果はPC画面(図示なし)に表示される。pH検出後の廃液は、出口9bからライン11を介して排出される。
【0034】
作動中に、キャリブレーションのために、窒素及び様々な割合のCO2を含むガス流れをガス流量コントローラ及びガス混合器(いずれも不図示)によって正確に調製し、中空糸膜コンタクター4のシェル入口4eに供給してもよい。
【0035】
このような分析器においては、シェル側を流通するガス流れ中のCO2の一部分が、ガス透過性を有する中空糸膜4cを介してキャリアとなる吸収液1中に溶解し、そのpHをガス流れ中のCO2分圧PCO2によって決定される値に応じて低下させる。そして、この変化がpHガラス電極10によって測定される。
【0036】
CO2感度を最大にするには、全ての中空糸をガス流れと接触させればよく、また、キャリアとなる吸収液1の吸収容量も慎重に選択する必要がある。一方、応答時間及び回復時間を減少させるには、中空糸膜コンタクター4の中空糸膜4cの全チューブ内容積、及び中空糸膜コンタクターと通過型検出セル9間の接続ライン8の長さを最小に維持することが好ましい。
【0037】
本実施形態において、使用される吸収液は、CO2の検出に適するわずかにアルカリ性のpH値を有する金属重炭酸塩水溶液である。金属重炭酸塩としては、例えば、重炭酸ナトリウムが好ましい。
【0038】
図2は、キャリア吸収液の流量を1mL/分に固定した場合における、CO2濃度−起電力曲線(以下キャリブレーショングラフと称する)に与える吸収液の金属重炭酸塩の濃度の影響を示す。なお、本明細書においてCO2濃度はいずれも体積基準の濃度である。また、以下では、金属重炭酸塩として、重炭酸ナトリウムを使用した。
【0039】
図3には、1mMの吸収液を使用した場合における、キャリブレーショングラフに与える吸収液の流量の影響を示す。
【0040】
図4の(a)には、吸収液流量(4mL/分)において得られた、キャリブレーショングラフが示され、図4の(b)には対応する起電力の時間応答グラフが示されている。
【0041】
図5の(a)には、吸収液が高流量すなわち6mL/分の場合、及び、さらに吸収液にKClが加えられた場合のキャリブレーショングラフが示され、図5の(b)には対応する起電力の時間応答グラフが示されている。得られた回復時間は高流量において特に良好であるが、キャリブレーショングラフは若干の非線形性及び比較的低い勾配(約51mV/CO2濃度10%)を示した。
【0042】
図6では、中空糸の本数を最適化した特注のポリオレフィン中空糸膜コンタクターが使用されている。吸収液容量の効果は図2におけるものと類似である。図7には、キャリブレーショングラフに対する中空糸膜コンタクターに使用された中空糸の本数の影響が示されている。
【0043】
さらに、市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを、エポキシ樹脂によって中空糸の大部分の流路を閉鎖することによって改良した。これにより、ガス流れとの良好な接触を行うために、周辺部の中空糸に対する吸収液の流れを制限している。図8の(a)には、キャリブレーショングラフが示され、図8の(b)には対応する応答時間グラフが示されている。このポリオレフィン中空糸膜コンタクターにより、ほぼ理想的な勾配(約55mV/CO2濃度10%)を有するEMF(mV)とLog(CO2%)との間の優れた直線関係のグラフを得ることができた。
【実施例1】
【0044】
図9及び図10は、ポリオレフィン中空糸膜コンタクターを装備した分析器を用いて得られた結果を示す。ガス流れ中のCO2濃度は100%に固定され、ガス流量は、100mL/分から40mL/分までの4段階で低減される。図9に示されるデータは、信号がガス流量の大きい変動に対しても影響を受けないことを表す。図10には、低濃度(10%)CO2に対するさらに極端なガス流量の変動(1000→50mL/分)が示されている。吸収液流量は6mL/分である。
【実施例2】
【0045】
信号応答の再現性が検査された。図11は1〜10%の間のCO2濃度の様々なサイクルに対する時間応答を示す。得られた信号は低濃度及び高濃度の両方において優れた再現性を示す。ガス流れにおけるCO2濃度の微小な差を識別する本発明の分析器の能力は、図12及び図13におけるデータによって示されている。
【実施例3】
【0046】
図14〜図16に、回復時間を評価するための、様々な範囲における低い値へのCO2濃度のステップ変化を示す。残りの条件は実施例1と同様である。
【0047】
図14に100%から様々な低い値までCO2濃度をステップ変化させることによって得られた様々な回復時間を示す。CO2濃度のステップ変化が小さいと、回復時間が短くなる。
【0048】
図15は図14と類似の様々な回復時間を示すが、最初のCO2濃度は10%である。同様に、CO2濃度のステップ変化が小さいと、回復時間も短いという傾向が示されている。
【0049】
図16にさらに低濃度の範囲における回復時間を示す。ここでも、同一傾向が示されている。
【実施例4】
【0050】
図17は、実施例1と同一条件を使用したCO2応答に対するH2Sの影響を示す。第1及び第3ピークはガス流れの組成10%CO2−90%N2に対応する。第2及び第4ピークはガス流れの組成10%CO2−2%H2S−88%N2に対応する。H2Sにより生じたわずかな干渉が第2及び第4ピークに表われている。なお、この実験では、カラム6は使用していない。
【0051】
H2Sによる干渉は酸で洗浄した銅粉末を含むカラム6によって除去される。このカラム6は比較的高濃度のH2Sを含む用途におけるガードカラムとして作用する。銅粉末は固体硫化銅(CuS)を形成することによりH2Sを除去する。
【実施例5】
【0052】
図18の(a)及び(b)に、窒素中に様々な割合のH2Sを含有するガス流れに対する、図1において記載された分析器の応答を示す。0.0025〜5%H2Sの範囲におけるEMF(mV)とLog(H2S%)との間のキャリブレーショングラフが直線関係を有することが示されている。
【0053】
本発明は上記実施形態に限定されず様々な形態が可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、シェル−チューブ型の中空糸膜コンタクターを用いているが、これ以外の膜コンタクターでも、吸収液の流れとガス流れとが膜を介して接触するものならば本発明の実施は可能である。
【0055】
また、本発明によって測定されるガスはCO2やH2Sに限定されず、吸収液に溶けて酸性又はアルカリ性を示し、その際のpH変化の検出が可能であるならば、どのようなガスでもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、吸収液の電解質として、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)を採用しているが、分析対象ガスとの相互作用又は反応によって溶液の化学特性が変わる電解質であればいずれでも良い。
【0057】
また、pHガラス電極以外の例えば、水素電極等の他のpH電極を用いても実施可能である。また、pH電極により吸収液のpHを測定するのでなく、吸収液の他の化学特性、例えば、分析対象ガスに由来するイオンをセンサにより検出しても実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】ガス分析器の構成要素を示す。
【図2】シリコンゴム中空糸に基づく市販の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液流量1mL/分における、様々な吸収液濃度についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図3】図2と同一の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液濃度(1mM)における、様々な吸収液流量についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図4】図3と同一の中空糸膜コンタクター及び吸収液濃度を使用した、高流量(4mL/分)の吸収液における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図5】図4と同一の中空糸膜コンタクターと2つの吸収液を使用した、吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図6】ポリオレフィン中空糸を用いた特注の中空糸膜コンタクターを使用した、一定の吸収液流量2.5mL/分における、様々な吸収液濃度についてのLog[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図7】異なる数の中空糸を含む特注の中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定の吸収液流量2.5mL/分における、Log[CO2%]に対するEMF(mV)のグラフを示す。
【図8】特定の改良を加えた市販のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定の吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[CO2%]グラフを示す。
【図9】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なガス流量における所定のCO2%についてのEMF(mV)応答のグラフを示す。
【図10】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なガス流量における所定のCO2%についてのEMF(mV)応答のグラフを示す。
【図11】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、10%CO2濃度に対するEMF(mV)応答の再現性を示すグラフである。
【図12】微小なCO2濃度変動に対するEMF(mV)応答の再現性、安定性及び感度を示すグラフである。
【図13】微小なCO2濃度変動に対するEMF(mV)応答の再現性、安定性及び感度を示すグラフである。
【図14】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図15】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図16】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用した、様々なCO2濃度範囲における信号応答の回復時間を示すグラフである。
【図17】CO2応答に関するH2Sの影響を示すグラフである。
【図18】図8と同一のポリオレフィン中空糸膜コンタクターを使用して得た、一定吸収液流量(6mL/分)における時間応答曲線及び対応するEMF(mV)−Log[H2S%]グラフを示す。
【符号の説明】
【0059】
1…吸収液、2…プラスチックチューブ、3…蠕動ポンプ、4…中空糸膜コンタクター、4a…チューブ入口、4b…チューブ出口、4c…中空糸膜、4d…シェル、4e…シェル入口、4f…シェル出口、5…ガス流れ、5a…プラスチックチューブ、6…カラム、7…真空配管路、8…チューブ、9…通過型検出セル、9a…セル入口、9b…セル出口、9c…センサチップ、10…pHガラス電極、12…増幅器、13…アナログ−デジタル変換カード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、
前記ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる工程と、
前記接触後の前記吸収液の化学特性をセンサにより検出する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記センサがpH電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1種のガスが炭酸ガスであり、前記ガス流れを、硫化水素を吸着するカラムを通した後に前記吸収液の流れと接触させる請求項1、2、又は4に記載の方法。
【請求項6】
ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する分析器であって、
前記ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる膜コンタクターと、
前記膜コンタクターから排出された前記吸収液の化学特性を測定するセンサと、
を備える、分析器。
【請求項7】
前記センサがpH電極である、請求項6に記載の分析器。
【請求項8】
前記1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素である請求項6又は7に記載の分析器。
【請求項9】
前記吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項10】
前記1種のガスが炭酸ガスであり、前記膜コンタクターよりも上流側に硫化水素を吸着するカラムがさらに接続された6、7、又は9に記載の分析器。
【請求項1】
ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する方法であって、
前記ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる工程と、
前記接触後の前記吸収液の化学特性をセンサにより検出する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記センサがpH電極である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1種のガスが炭酸ガスであり、前記ガス流れを、硫化水素を吸着するカラムを通した後に前記吸収液の流れと接触させる請求項1、2、又は4に記載の方法。
【請求項6】
ガス流れ中の1種のガスの濃度を測定する分析器であって、
前記ガス流れと吸収液の流れとを膜を介して接触させる膜コンタクターと、
前記膜コンタクターから排出された前記吸収液の化学特性を測定するセンサと、
を備える、分析器。
【請求項7】
前記センサがpH電極である、請求項6に記載の分析器。
【請求項8】
前記1種のガスが炭酸ガス又は硫化水素である請求項6又は7に記載の分析器。
【請求項9】
前記吸収液が重炭酸ナトリウム水溶液である、請求項6〜8のいずれか一項に記載の分析器。
【請求項10】
前記1種のガスが炭酸ガスであり、前記膜コンタクターよりも上流側に硫化水素を吸着するカラムがさらに接続された6、7、又は9に記載の分析器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−128017(P2009−128017A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299773(P2007−299773)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(301041531)財団法人 国際石油交流センター (12)
【出願人】(507382821)アラブ首長国連邦大学 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(301041531)財団法人 国際石油交流センター (12)
【出願人】(507382821)アラブ首長国連邦大学 (2)
【Fターム(参考)】
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