説明

ガス流路切替装置

【課題】簡単な構造で以て、スイッチングガスの供給の制御に応じ3以上の方向へのガス流路の切替えを実現する。
【解決手段】ガス流路部は、試料ガスのガス入口20を一端とする主流路21と、主流路21から2つに分岐され、さらには各分岐流路23、24から2つに分岐された末端分岐流路26、27、29、30と、各末端分岐流路の途中に接続されるスイッチングガス供給流路35、36、37、38とを含み、これら流路が積層構造の中間の金属板部材に形成された構造を有する。スイッチングガス導入口39、40、41、42に所定のガス供給圧で以てスイッチングガスを導入すると、ガス圧の差に応じてスイッチングガスは分岐流路を適宜に流れ、ガス入口20から導入された試料ガスは最も低いガス供給圧でスイッチングガスが導入されたスイッチングガス供給流路が接続された末端分岐流路へと流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチディメンジョナル方式ガスクロマトグラフなどに好適なガス流路切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分離特性の相違する複数のカラムを組み合わせたマルチディメンジョナル方式のガスクロマトグラフや複数の検出器を併設したガスクロマトグラフでは、或る流路を経て送られて来た試料ガスを2つ以上の分岐流路のいずれかに選択的に送り込むような流路切替装置が必要となる。三方バルブなどの可動部分が流路中に存在する流路切替装置では、デッドボリウムが大きくなる、可動性を良好にするためのグリースなどの物質が試料成分を吸着したり逆にこうした不所望の物質が試料ガスに混入してしまったりする、といった問題がある。そこで、従来より、上記のようなガス流路切替装置として、ディーンズ(Deans)方式と呼ばれる構造の流路切替装置が利用されている(特許文献1、2、3など参照)。
【0003】
図8はディーンズ方式によるガス流路切替装置の基本構成を示す図である。この装置では、試料ガスが供給されるガス入口70を一端とする主流路71は分岐部72でガス出口Aに向かう第1分岐流路73とガス出口Bに向かう第2分岐流路74とに分岐される。第1分岐流路73の途中には第1スイッチングガス供給流路75が、第2分岐流路74の途中には第2スイッチングガス供給流路76が接続され、両スイッチングガス流路75、76の三方切替バルブ77の2つの出口端に接続され、さらに両スイッチングガス流路75、76の間には所定の流路抵抗を有する抵抗管78が接続されている。三方切替バルブ77の入口端には、途中に圧力制御バルブ80が設けられたスイッチングガス供給元流路79が接続されている。
【0004】
三方切替バルブ77は電磁バルブであり、流路75、76のいずれか一方を択一的にスイッチングガス供給元流路79に接続させる。圧力制御バルブ80は下流側のガス圧を検出する圧力センサを備え、このガス圧が設定圧力に維持されるようにバルブ開度を自動的に調節する。
【0005】
上記装置の流路切替動作を説明する。いま、圧力制御バルブ80により、その下流側のガス圧がP1に制御されている。三方切替バルブ77によりスイッチングガス供給元流路79と第2スイッチングガス供給流路76とが接続された状態では、スイッチングガスは図8(a)中に点線矢印で示すように流れる。各流路中の流量抵抗をゼロとみなし、抵抗管78を通過する際の圧力降下がΔPであるとすると、ガス出口B側のガス圧はP1、ガス出口A側のガス圧はP1−ΔPとなる。ガス入口70から主流路71に供給された試料ガスは分岐部72から低ガス圧側へと流れるから、図8(a)中に太線矢印で示すように、第1分岐流路73を経て出口Aから流出する。
【0006】
スイッチングガス供給元流路79と第1スイッチングガス供給流路75とが接続されるように三方切替バルブ77を切り替えると、図8(b)中に点線矢印で示すようにスイッチングガスが流れ、出口A側のガス圧はP1、出口B側のガス力はP1−ΔPとなる。これによって、図8(b)中に太線矢印で示すように、ガス入口70から主流路71に供給された試料ガスは第2分岐流路74を経てガス出口Bから流出する。
【0007】
このように上記ガス流路切替装置では、三方切替バルブ77でスイッチングガスの流れの方向を切り替えることにより、ガス入口70から導入された試料ガスの流出口をガス出口A又はガス出口Bのいずれかに切り替えることが可能である。
【0008】
近年、ガスクロマトグラフ分析技術の進展に伴い、例えば分析カラムからの溶出成分を3つ以上の異なる種類の検出器、例えば質量分析計、水素炎イオン化検出器(FID)、炎光光度検出器(FPD)、電子捕獲検出器(ECD)などに適宜切り替えて導入して検出するようなシステムが要望されている。こうした要望に応えるためには、試料ガスを3以上の流路に切り替えて流すガス流路切替装置が必要となる。しかしながら、上述のような従来のディーンズ方式の流路切替装置で3以上の流路切替えを実現しようとすると、部品点数が多くコストが高くなるとともに、流路も複雑であるために、故障やガス漏れ、成分の吸着などの不具合を引き起こし易いという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開平11−248694号公報
【特許文献2】特開2000−179714号公報
【特許文献3】特開2007−187663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その主な目的は、簡単な構造で3以上の流路の切り替えを可能としたガス流路切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明は、スイッチングガスの供給の制御に応じて、ガス入口から流入した対象ガスをn個(nは3以上の整数)のガス出口のいずれかから流出させるようにガス流路を切り替えるガス流路切替装置であって、
a)前記ガス入口を一端とする主流路と、該主流路の他端の分岐点で流路を2つに分岐させ、その分岐された流路の少なくとも一方の端部の分岐点でさらに流路を2つに分岐するという分岐を2以上繰り返すことで形成され、それぞれ末端に前記ガス出口が設けられたn本の分岐流路と、を含む、対象ガスが流通し得る対象ガス流路と、
b)前記n本の分岐流路の途中にそれぞれ少なくとも1本ずつ接続された、スイッチングガスを供給するためのスイッチングガス供給流路と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るガス流路切替装置では、例えば、n本の分岐流路の途中にそれぞれ1本ずつ接続されたn本のスイッチングガス供給流路にスイッチングガスを流し、そのスイッチングガスが分岐流路に入った後のその流れの方向によって、ガス入口から流入した対象ガスが流れる経路を制御し、n個のガス出口のうちの1つから対象ガスが流出するようにすることができる。
【0013】
そのために本発明の一実施態様として、前記n本の分岐流路の途中にそれぞれ1本ずつスイッチングガス供給流路が接続され、そのn本のスイッチングガス供給流路のn個のスイッチングガス供給口のうちの1個のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧を他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低くするように、前記n本のスイッチングガス供給流路にそれぞれスイッチングガスを供給するスイッチングガス供給制御手段をさらに備え、他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低いガス供給圧でスイッチングガスが供給されるスイッチングガス供給流路に接続される分岐流路の末端のガス出口から対象ガスを流出させる構成とすることができる。
【0014】
また、前記スイッチングガス供給制御手段は、スイッチングガス入口に供給されたスイッチングガスを2個のスイッチングガス出口のいずれかから択一的に流出させる、少なくともn−1個のバルブと、各バルブの2個のスイッチングガス出口の間を接続する抵抗管と、を含む構成とすることができる。
【0015】
上記抵抗管はスイッチングガスの流通により圧力降下を生じさせるためのものであり、上記バルブによる流路の切替えにより抵抗管を流れるスイッチングガスの方向が変わり(反転し)、それによって抵抗管の両端における圧力の上下関係が入れ替わる。
【0016】
従って、上記実施態様によるガス流路切替装置では、前記スイッチングガス供給制御手段は、前記少なくともn−1個のバルブにおける流路をそれぞれ切替えて、それに応じて形成されるスイッチングガス流路の中で、最も多くの抵抗管を経て前記スイッチングガス供給口に到達するスイッチングガスのガス供給圧が、他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低くなるようにすることができる。
【0017】
なお、バルブを電磁バルブとし、各電磁バルブにおける切替動作を制御する制御回路を設けることにより、電気的な制御によりガス入口に供給された対象ガスを任意の1つのガス出口に選択的に流すことができる。
【0018】
また本発明に係るガス流路切替装置では、好ましくは、前記対象ガス流路及び前記スイッチングガス供給流路は、流路に対応する欠損部が形成された板状部材を他の板状部材で挟み込んだ積層構造体である構成とするとよい。この積層構造体の材質は例えばステンレスなどの耐腐食性を有する金属とするとよい。こうした構成では、複数のT字型ジョイントなどを用いて管路を接続する従来の流路構成に比べて部品点数が少なくて済み、コストの削減が可能であるとともに、小型・軽量化にも有利である。
【0019】
また、この場合、流路の配置や形状の自由度が高いので、特に、分岐点を一端とする2本の分岐流路の成す角度を45度未満とするとよい。一般的に複数の分岐流路の成す角度は90度であるが、その場合、ガスがその分岐点で曲がりながら通過する際に滞留が生じ易く、ガスに含まれる各種成分が流路内壁面に付着し易い。これに対し、分岐流路の成す角度が45度未満であると分岐点でのガスの流れが円滑になり、流路内壁面への各種成分の付着が起こりにくい。そのため、例えば本発明に係るガス流路切替装置をマルチディメンジョナルガスクロマトグラフに利用する場合、試料ガスに含まれる試料成分が流路内壁面に吸着することを軽減して分析の精度を向上させることができる。
【0020】
なお、前記板状部材を金属製とし、且つ流路内面を不活性化処理することにより、ガス中の成分の付着をさらに一層軽減することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るガス流路切替装置によれば、従来に比べて簡単な構造及び簡単な制御で以て、対象ガスを3以上の方向のいずれかに選択的に流すような流路切替えを実現することができる。また、対象ガスに含まれる成分の吸着を抑えることで、本発明に係るガス流路切替装置を利用した分析装置での分析精度、再現性の向上などを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るガス流路切替装置の一実施例について図1〜図6を参照して説明する。図1は本実施例のガス流路切替装置の概略構成図、図2はガス流路部における流路構成を示す平面図、図3はガス流路部の外観斜視図、図4はガス流路部の分解構成図、図5及び図6は本実施例のガス流路切替装置における流路切替動作を説明するための図である。
【0023】
本実施例のガス流路切替装置は4つのガス出口を有するものであり、図1に示すように、ガス流路部1と切替制御部(本発明におけるスイッチングガス供給制御手段に相当)2とを備える。ガス流路部1は、試料ガスが導入される1個のガス入口20と、4個のガス出口31、32、33、34と、4個のスイッチングガス導入口39、40、41、42と、を有する。切替制御部2は出力選択指示信号に応じて、スイッチングガスを分配して上記4個のスイッチングガス導入口39、40、41、42に供給する。
【0024】
ガス流路部1は、図3、図4に示すように、3枚の金属板が積層された構造体である。即ち、後述するような流路が上下方向に貫通する開口部13として形成された第1板部材10を挟み、上にガス入口20、ガス出口31、32、33、34、スイッチングガス導入口39、40、41、42となるポートが形成された第2板部材11、下に単なる平板状の第3板部材12が設けられ、これら3枚の板部材10、11、12が重ね合わせて接合されることで、第2、第3板部材11、12の間に第1板部材10の開口部13の厚さ方向の高さを有する流路が形成される。
【0025】
図2に示すように、ガス流路部1の流路構成は、ガス入口(図2中のIN)20を一端とする主流路21の他端である分岐部22から第1、第2なる2本の分岐流路23、24が延伸し、第1分岐流路23の他端である分岐部25からさらに第1、第2なる2本の末端分岐流路26、27が延伸し、第2分岐流路24の他端である分岐部28からさらに第3、第4なる2本の末端分岐流路29、30が延伸し、第1、第2、第3及び第4末端分岐流路26、27、29、30の他端がガス出口31、32、33、34(図2中のa〜d)となっている。分岐部22、25、28における下流側の2本の分岐流路又は末端分岐流路が成す角度θは45度未満に設定されている。4本の末端分岐流路26、27、29、30の途中には、一端がスイッチングガス導入口39、40、41、42であるスイッチングガス供給流路35、36、37、38の他端がそれぞれ接続されている。
【0026】
切替制御部2は、図5(a)及び図6(a)に示すように、圧力制御バルブ64と、第1、第2、第3なる3個の三方切替バルブ60、52、56と、同じ流路抵抗を有する3個の抵抗管62、53,57と、を含む。圧力制御バルブ64が途中に設けられたスイッチングガス供給元流路63の出口端が第1三方切替バルブ60の入口端に接続され、その2つの出口端にスイッチングガス分配流路58、59の一端が接続され、両流路58、59の間には第1抵抗管62が接続される。スイッチングガス分配流路58の他端は第2三方切替バルブ52の入口端に接続され、その2つの出口端にスイッチングガス分配流路50、51の一端が接続される。両流路50、51の間には第2抵抗管53が接続され、両流路50、51の他端は上記スイッチングガス導入口39、40に接続される。スイッチングガス分配流路59の他端は第3三方切替バルブ56の入口端に接続され、その2つの出口端にスイッチングガス分配流路54、55の一端が接続される。両流路54、55の間には第3抵抗管57が接続され、両流路54、55の他端は上記スイッチングガス導入口41、42に接続される。
【0027】
図示しないが、切替制御部2は、三方切替バルブ60、52、58に対しそれぞれスイッチングガスの流れの方向を切り替える切替制御信号を与える制御回路を備え、これにより、ガス流路部1においてガス入口20に供給された試料ガス(又は他の任意のガス)が4つのガス出口31、32、33、34のいずれかから択一的に流出するように流路の切り替えが行われる。
【0028】
次に、本実施例のガス流路切替装置における流路切り替え動作を説明する。ガス流路部1のガス出口〔a〕31、ガス出口〔b〕32、ガス出口〔c〕33、ガス出口〔d〕34のうちの1つから試料ガスが流出するように流路を設定したい場合には、第1乃至第3三方切替バルブ60、52、56の接続状態を次の表のように設定する。
【表1】

なお、上記表において「L」とは、図5(a)及び図6(a)において右方の出口端が閉塞され、左方の出口端が開放される(つまりガスが流通可能な状態となる)ことを意味する。「R」とは逆に左方の出口端が閉塞され、右方の出口端が開放されることを意味する。また「−」は、「L」、「R」のいずれであっても試料ガスが流出するガス出口の選択に影響を与えないことを意味する。
【0029】
一例として、ガス入口20から導入した試料ガスをガス出口〔d〕34から選択的に流出させる場合の制御と動作について図5を参照して説明する。
【0030】
このとき、第1三方切替バルブ60はスイッチングガス供給元流路63とスイッチングガス分配流路58とが接続される状態となり、圧力制御バルブ64によりその出口端のガス圧がP1に調整されたスイッチングガスが図5(a)中に点線矢印で示すようにスイッチングガス分配流路58に流れる。このスイッチングガスは第2三方切替バルブ52の入口端に流れ込むとともに、第1抵抗管62を経て第3三方切替バルブ56の入口端にも流れ込むが、第1抵抗管62を通る際に圧力がΔPだけ降下する。従って、第2三方切替バルブ52の入口端でのガス圧はP1、第3三方切替バルブ56の入口端でのガス圧はP1−ΔPと差が生じる。
【0031】
第3三方切替バルブ56ではスイッチングガス分配流路59、54が接続される状態となり、スイッチングガスが図5(a)中に点線矢印で示すようにスイッチングガス分配流路54に流れる。このスイッチングガスはスイッチングガス導入口41に流れ込むとともに、第3抵抗管57を経てスイッチングガス導入口42にも流れ込むが、第3抵抗管57を通る際に圧力がさらにΔPだけ降下する。従って、スイッチングガス導入口41でのガス圧はP1−ΔP、スイッチングガス導入口42でのガス圧はさらに低いP1−2×ΔPとなる。
【0032】
一方、図5(a)では第2三方切替バルブ52はスイッチングガス分配流路58、50が接続される状態となっており、スイッチングガス導入口39でのガス圧はP1、スイッチングガス導入口40でのガス圧はP1−ΔPとなるが、第2三方切替バルブ52での流路の接続が逆であればスイッチングガス導入口39でのガス圧がP1−ΔP、スイッチングガス導入口40でのガス圧はP1となる。これはいずれでもよい。
【0033】
図5(b)に示すように、ガス入口20にはガス圧がP1よりも十分に高い状態で試料ガスが供給される。一方、ガス出口31、32、33、34のガス圧はゼロである(但し、これらガス出口には抵抗管や陰圧の検出器などが接続される場合もあるので、ガス出口のガス圧は様々な値をとり得るが、P1−2×ΔPよりも低い圧力となるようにしておけばよい)。また、4個のスイッチングガス導入口39、40、41、42にはそれぞれ、上記切替制御部2により、ガス圧P1、P1−ΔP、P1−ΔP、P1−2×ΔPで以てスイッチングガスが供給される。このように異なるガス供給圧で以て導入されるスイッチングガスは分岐流路23、24、末端分岐流路26、27、29、30中を図5(b)中の点線矢印に示すように流れる。一方、主流路21を経た試料ガスは最も低いガス供給圧でスイッチングガスが供給されるスイッチングガス供給流路38が接続される末端分岐流路30に向かって流れるから、図5(b)中に実線矢印で示すように、分岐流路24→末端分岐流路30へと流れ、ガス出口34から流出する。なお、他のガス出口31、32、33からはスイッチングガスのみが流出する。
【0034】
次に、一例として、ガス入口20から導入した試料ガスをガス出口33から選択的に流出させる場合の制御と動作について図6を参照して説明する。
【0035】
このとき、第1三方切替バルブ60の接続状態は上記図5の場合と同じで、第3三方切替バルブ56の接続状態を上記図5の場合とは切り替える。この接続状態では、第3抵抗管57を通過するスイッチングガスの流れ方向が図5(a)の場合とは反転するため、スイッチングガス導入口41、42に供給されるガス圧はそれぞれP1−2×ΔP、P1ーΔPと入れ替わる。その結果、このように異なるガス供給圧で以て導入されるスイッチングガスは分岐流路23、24、末端分岐流路26、27、29、30中を図6(b)中の点線矢印に示すように流れる。一方、主流路21を経た試料ガスは最も低いガス供給圧でスイッチングガスが供給されるスイッチングガス供給流路37が接続される末端分岐流路39に向かって流れるから、図6(b)中に実線矢印で示すように、分岐流路24→末端分岐流路29へと流れ、ガス出口33から流出する。なお、他のガス出口31、32、34からはスイッチングガスのみが流出する。
【0036】
また、ガス出口31、32から試料ガスを選択的に流出させる場合の動作も同様である。このようにして、3個の三方切替バルブ60、52、56の接続状態を上記表に記載のように切り替えることで、4個のガス出口31、32、33、34のうちの任意のガス出口から試料ガスを取り出すことができる。
【0037】
図7はガス流路部1の流路構成の変形例を示す平面図である。上記実施例の構成においても、分岐部22、25、28における試料ガスの下流側の2本の分岐流路又は末端分析流路の成す角度が45度未満であるために、試料ガスの流れは円滑であるが、この変形例の構成では、分岐部22、25、28において試料ガスの流れの方向に流路が緩やかに湾曲した形状に形成されているため、試料ガスの流れがより一層円滑になる。それによって、試料ガスに含まれる各種成分が流路内壁面に吸着されにくく、各種成分の濃度が変化せずにガス出口に到達し得る。
【0038】
さらに流路内壁面に例えば高温シリカ処理等による不活性処理を施すことが望ましい。これにより、流路内壁面への試料成分の吸着を一層確実に防止することができる。
【0039】
なお、上記実施例は本発明の一例であって、本発明の趣旨の範囲で適宜変更や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは当然である。例えば、上記実施例はガス出口が4個の場合の例であるが、本発明は3以上の任意の数のガス出口を設ける構成に変形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例によるガス流路切替装置の概略構成図。
【図2】本実施例のガス流路切替装置のガス流路部における流路構成を示す平面図。
【図3】本実施例のガス流路切替装置のガス流路部の外観斜視図。
【図4】本実施例のガス流路切替装置のガス流路部の分解構成図。
【図5】本実施例のガス流路切替装置における流路切替動作を説明するための図。
【図6】本実施例のガス流路切替装置における流路切替動作を説明するための図。
【図7】他の実施例のガス流路部における流路構成を示す平面図。
【図8】従来のディーンズ方式によるガス流路切替装置の基本構成を示す図。
【符号の説明】
【0041】
1…ガス流路部
2…切替制御部
10…第1板部材
11…第2板部材
12…第3板部材
13…開口部
20…ガス入口
21…主流路
22、25、28…分岐部
23、24…分岐流路
26、27、29、30…末端分岐流路
31、32、33、34…ガス出口
39、40、41、42…スイッチングガス導入口
50、51、54、55、58、59…スイッチングガス分配流路
52、56、60…三方切替バルブ
53、57、62…抵抗管
63…スイッチングガス供給元流路
64…圧力制御バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングガスの供給の制御に応じて、ガス入口から流入した対象ガスをn個(nは3以上の整数)のガス出口のいずれかから流出させるようにガス流路を切り替えるガス流路切替装置であって、
a)前記ガス入口を一端とする主流路と、該主流路の他端の分岐点で流路を2つに分岐させ、その分岐された流路の少なくとも一方の端部の分岐点でさらに流路を2つに分岐するという分岐を2以上繰り返すことで形成され、それぞれ末端に前記ガス出口が設けられたn本の分岐流路と、を含む、対象ガスが流通し得る対象ガス流路と、
b)前記n本の分岐流路の途中にそれぞれ少なくとも1本ずつ接続された、スイッチングガスを供給するためのスイッチングガス供給流路と、
を備えることを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス流路切替装置であって、前記対象ガス流路及び前記スイッチングガス供給流路は、流路に対応する欠損部が形成された板状部材を他の板状部材で挟み込んだ積層構造体であることを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス流路切替装置であって、分岐点を一端とする2本の分岐流路の成す角度は45度未満であることを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のガス流路切替装置であって、前記板状部材は金属製であり、且つ流路内面が不活性化処理されて成ることを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項5】
請求項1に記載のガス流路切替装置であって、前記n本の分岐流路の途中にそれぞれ1本ずつスイッチングガス供給流路が接続され、そのn本のスイッチングガス供給流路のn個のスイッチングガス供給口のうちの1個のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧を他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低くするように、前記n本のスイッチングガス供給流路にそれぞれスイッチングガスを供給するスイッチングガス供給制御手段をさらに備え、
他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低いガス供給圧でスイッチングガスが供給されるスイッチングガス供給流路に接続される分岐流路の末端のガス出口から対象ガスを流出させることを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項6】
請求項5に記載のガス流路切替装置であって、前記スイッチングガス供給制御手段は、スイッチングガス入口に供給されたスイッチングガスを2個のスイッチングガス出口のいずれかから択一的に流出させる、少なくともn−1個のバルブと、各バルブの2個のスイッチングガス出口の間を接続する抵抗管と、を含むことを特徴とするガス流路切替装置。
【請求項7】
請求項6に記載のガス流路切替装置であって、前記スイッチングガス供給制御手段は、前記少なくともn−1個のバルブにおける流路をそれぞれ切替えて、それに応じて形成されるスイッチングガス流路の中で、最も多くの抵抗管を経て前記スイッチングガス供給口に到達するスイッチングガスのガス供給圧が、他のスイッチングガス供給口におけるガス供給圧よりも低くなるようにすることを特徴とするガス流路切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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