説明

ガス浄化装置、排煙脱硫システム、排ガス処理方法

【課題】各段の浄化槽に常時きれいな水の供給可能な前記排ガス中の微粒子、SO2等の除去効率を向上させたガス浄化部材、ガス浄化装置、排煙脱硫システムを提供する。
【解決手段】第一のガス浄化装置10Aは、排ガス11中のSO3ミストを捕集すると共に、SO2を除去する活性炭素繊維からなる浄化槽12と、浄化槽12の上方側から浄化槽12に硫酸生成用の水13を供給する散水ノズル14とを具備してなるガス浄化装置において、浄化槽12が、ガス浄化装置10Aの本体15内に縦方向に第一の浄化槽12−1、第二の浄化槽12−2、第三の浄化槽12−3を三段配設してなり、散水ノズル14が、第一の浄化槽12−1〜第三の浄化槽12−3の各段の上方側にそれぞれ設けられ、第一の浄化槽12−1〜第三の浄化槽12−3のガス導入側の下端面が、全て同一方向に傾斜してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中の煤塵、ミスト、硫黄酸化物を効率的に除去するガス浄化装置、排煙脱硫システム、排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガス中の硫黄酸化物の除去方法として、活性炭素繊維を用いたガス浄化装置が提案されている。このガス浄化装置の一例を図13に示す。図13に示すように、従来のガス浄化装置100は、硫黄酸化物を含有する排ガス101又は生成ガスが流通する浄化塔102内に設けられ、活性炭素繊維層で形成される浄化槽103と、上記浄化塔102内に設けられ、上記浄化槽103に硫酸生成用の水104を供給する水供給手段である散水ノズル105とからなるものである。図13中、符号106は水104を供給する水供給装置、107、108はポンプ、109は弁を各々図示する。
【0003】
また、従来の前記ガス浄化装置100に用いられる前記浄化槽103としては、例えば図14に示すように、前記浄化槽103を構成する活性炭素繊維層120が、平板部活性炭素繊維シート121と波板状の活性炭素繊維シート122とを接合してその断面が三角形状の通路123に構成されている。
【0004】
従来の前記ガス浄化装置100では、前記浄化槽103を複数段設置し、上部より供給された前記水104が上段側に配設された前記浄化槽103から順に下段側に配設された前記浄化槽103内を流下し、前記排ガス101中のSO3ミスト、煤塵等の微粒子、SO2が前記散水ノズル105から散水された前記水104と反応して亜硫酸となり、前記浄化槽103から離脱し、希硫酸(H2SO4)110として前記浄化塔102本体の下方側へ洗い流すようにしている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−028216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の前記ガス浄化装置100では、前記水104が上段側に配設している前記浄化槽103で前記排ガス101中の微粒子、SO2等と脱硫反応することにより生成された希硫酸(H2SO4)110が、下段側に配設した前記浄化槽103に供給されてしまうため、下段側に配設されている前記浄化槽103にはきれいな前記水104が供給されず、下段側に配設されている前記浄化槽103では本来の脱硫機能が十分に発揮できず、脱硫効率が低下する、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、各段の前記浄化槽103に常時きれいな前記水104の供給可能な前記排ガス101中の微粒子、SO2等の除去効率を向上させたガス浄化装置、排煙脱硫システム、排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排ガス中のSO3ミストを捕集すると共に、SO2を除去する活性炭素繊維からなる浄化槽と、前記浄化槽の上方側から前記浄化槽に硫酸生成用の水を供給する水供給部とを具備してなるガス浄化装置において、前記浄化槽が、ガス浄化装置の本体内に縦方向に複数段配設してなり、前記水供給部が、前記浄化槽の各段の上方側にそれぞれ設けられ、前記浄化槽の上下の端面の何れか一方又は両方が傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の浄化槽の下端面が、全て同一方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、前記複数の浄化槽のうち、少なくとも一つ以上の前記浄化槽の下端面が、他の前記浄化槽の下端面と反対方向又は異方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0011】
第4の発明は、第1の発明において、前記複数の浄化槽の下端面及び上端面が、全て同一方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0012】
第5の発明は、第1の発明において、前記複数の浄化槽のうち、少なくとも一つ以上の前記浄化槽の下端面及び上端面が、他の前記浄化槽の下端面及び上端面と反対方向又は異方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0013】
第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れか一つにおいて、前記本体の側壁側で、前記浄化槽の下端面の傾斜の低い方に流下してくる希硫酸を回収する硫酸受け部と、前記硫酸受け部より回収された希硫酸を前記ガス浄化装置本体の底部に送給する希硫酸送給部とを有してなることを特徴とするガス浄化装置にある。
【0014】
第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れか一つにおいて、前記ガス浄化装置の最下部にある前記浄化槽の下端面が、傾斜していないことを特徴とするガス浄化装置にある。
【0015】
第8の発明は、前記排ガスが、ボイラ、ガスタービン、エンジン又は各種焼却炉の何れかから排出されるガスであり、第1乃至第7の発明の何れか一つのガス浄化装置を用いて、前記排ガス中の煤塵を除去する煤塵除去手段を備えてなることを特徴とする排煙脱硫システムにある。
【0016】
第9の発明は、第1乃至第7の発明の何れか一つのガス浄化装置を用いて、排ガス中の煤塵、三酸化硫黄ミストを捕集すると共に、二酸化硫黄を除去することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記浄化槽の各段に常時きれいな水を供給することができるため、前記排ガス中の微粒子、SO2等の脱硫の除去効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例1に係る第一のガス浄化装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係るガス浄化装置を示す概略図である。
図1に示すように、本実施例に係る第一のガス浄化装置10Aは、排ガス11中の煤塵、SO3ミストを捕集すると共に、SO2を除去する活性炭素繊維からなる浄化槽12と、前記浄化槽12の上方側から前記浄化槽12に硫酸生成用の水13を供給する散水ノズル14とを具備してなるガス浄化装置において、前記浄化槽12が、ガス浄化装置10Aの本体15内に縦方向に最下段側から順に第一の浄化槽12−1(最下段)、第二の浄化槽12−2(中段)、第三の浄化槽12−3(最上段)を三段配設してなり、散水ノズル14−1〜14−3が、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3の各段の上方側にそれぞれ設けられ、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3のガス導入側の下端面が、全て同一方向に傾斜してなるものである。
また、図1において、前記本体15の側壁下端側のガス入口部15aから前記排ガス11を導入すると共に、前記水13は前記水タンク16からポンプ17により水供給ライン18を介して送給され、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3の各段の上方側に設けた前記散水ノズル14−1〜14−3より前記水13をシャワー状に水滴13aを散水し、各浄化槽を湿潤状態としている。
【0020】
本実施例では、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3は活性炭素繊維を用いてなり、その繊維層において、前記排ガス11中のSO3ミスト、煤塵等の微粒子、SO2は吸着され、前記水13と反応して希硫酸(H2SO4)19となり、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3から離脱することができる。
【0021】
また、本実施例では、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3のガス導入側の下端面を一定方向に傾斜させている。このため、前記第三の散水ノズル14−3より供給された前記水13は、前記第三の浄化槽12−3内を流下し、前記第三の浄化槽12−3内で前記排ガス11中のSO3ミスト、SO2と反応することにより生成された前記希硫酸(H2SO4)19を前記第三の浄化槽12−3のガス排出側の下端面の傾斜の低い方向に流すことができる。この結果、前記本体15の側壁に沿って下段側に配設してある前記第二の浄化槽12−2(中段)に滴下させることができる。
【0022】
よって、前記第二の浄化槽12−2は、前記第三の浄化槽12−3から流下してきた前記希硫酸(H2SO4)19の影響をほとんど受けることなく、前記第二の散水ノズル14−2から供給される前記水13を前記第二の浄化槽12−2に常に供給することができるため、前記第二の浄化槽12−2における脱硫効率を向上させることができる。
【0023】
また、前記第二の浄化槽12−2においても、前記第二の散水ノズル14−2より供給された前記水13は前記第二の浄化槽12−2内を流下し、生成された前記希硫酸(H2SO4)19を前記第二の浄化槽12−2の下端面の傾斜の低い方向に流すことができる。
【0024】
よって、前記第一の浄化槽12−1は、前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3から流下してきた前記希硫酸(H2SO4)19の影響をほとんど受けることなく、前記第一の散水ノズル14−1から供給される前記水13を前記第一の浄化槽12−1に常に供給することができるため、前記第一の浄化槽12−1における脱硫効率を向上させることができる。
【0025】
また、前記第一のガス浄化装置10A内の前記排ガス11のガス流速と散水される前記水13の水ミスト径との関係について説明する。
図2は、前記排ガス11のガス流速と散水される前記水13の水ミストの限界粒子径との関係を示す。
ここで、「水ミスト」とは、散水ノズル14から散水されるミスト状の前記水13のことをいい、水ミスト径とはその粒径をいう。
前記排ガス11のガス流速が遅い場合には、前記水13の粒径は小さくてもよいが、前記排ガス11のガス流速が速い場合には前記水13の粒径は大きくする必要がある。これは、対向流の場合、前記排ガス11は前記本体15の下側から導入され、前記第一の浄化装置10Aを下から上に向かって流れる。そして、前記第一の浄化槽12−1(最下段)、前記第二の浄化槽12−2(中段)、前記第三の浄化槽12−3(最上段)内の各通路では、断面積が狭くなるので、前記排ガス11のガス流速は上昇する。
【0026】
前記ガス浄化槽12の上側から前記水13を散水する場合に、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3の通路内の前記排ガス11のガス流速に対抗して水ミストが降下しなければ、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3の通路内に前記水13が導入されず、脱硫がなされない。
【0027】
よって、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3の各通路出口部における前記排ガス11のガス流速に対し、水ミストが降下するような水ミスト径となるように、散水ノズル14から散水する前記水13の水ミスト径を調節する必要がある。
【0028】
ところで、図3に示すように、前記第一のガス浄化装置10Aの下部側から導入される第一の通路21−1内のガス流速を第一のガス流速V1とし、前記第一の浄化槽12−1の各通路内のガス流速を第一の通路内ガス流速Vc1とし、前記第一の浄化槽12−1と前記第二の浄化槽12−2との間の第二の通路21−2内のガス流速を第二のガス流速V2とし、前記第二の浄化槽12−2の各通路内のガス流速を第二の通路内ガス流速Vc2とし、前記第二の浄化槽12−2と前記第三の浄化槽12−3間の第三の通路21−3内のガス流速を第三のガス流速V3とし、前記第三の浄化槽12−3の各通路内のガス流速を第三の通路内ガス流速Vc3とし、前記第三の浄化槽12−3の上方側の第四の通路21−4内のガス流速を第四のガス流速V4とした場合、前記第一の散水ノズル14−1乃至前記第三の散水ノズル14−3から散水される前記水13の水ミスト径は、以下の点を考慮する必要がある。
【0029】
1) 前記第二の通路21−2に設置した前記第一の散水ノズル14−1から散水する前記水13の水ミスト径は、前記第一のガス流速V1と前記第一の通路内ガス流速Vc1と、前記第二のガス流速V2を考慮する必要がある。
2) 同様に、前記第三の通路21−3に設置した前記第二の散水ノズル14−2から散水する前記水13の水ミスト径は、前記第一のガス流速V1と前記第一の通路内ガス流速Vc1と、前記第二のガス流速V2と前記第二の通路内ガス流速Vc2と、前記第三のガス流速V3を考慮する必要がある。
3) 同様に、前記第四の通路21−4に設置した前記第三の散水ノズル14−3から散水する前記水13の水ミスト径は、前記第一のガス流速V1と前記第一の通路内ガス流速Vc1と、前記第二のガス流速V2と前記第二の通路内ガス流速Vc2と、前記第三のガス流速V3と前記第三の通路内ガス流速Vc3と、第四のガス流速V4を考慮する必要がある。
【0030】
但し、前記第一のガス浄化装置10A本体が同じ断面積である(前記第一の通路21−1〜前記第四の通路21−4の空間面積の大きさが一定の場合)と共に、前記第一の浄化槽12−1〜前記第三の浄化槽12−3が同じ構成の空間面積の場合において、例えば前記浄化槽12の開口率が56%の場合、前記第一のガス流速V1を例えば1m/sとした際、前記第一の通路内ガス流速Vc1が例えば1.8m/sとなる。この時、図2から約460μm以上のミスト径の前記水13を前記第一の散水ノズル14−1から散水する必要がある。
【0031】
また、前記第二の散水ノズル14−2及び前記第三の散水ノズル14−3の場合も、同様に、前記第二の通路内ガス流速Vc2及び前記第三の通路内ガス流速Vc3が1.8m/sとなり、図2から約460μm以上のミスト径の前記水13を前記第二の散水ノズル14−2及び前記第三の散水ノズル14−3から散水する必要がある。
【0032】
このように、前記本体15内に配設した複数の前記浄化槽12は、上段側に配設した前記第三の浄化槽12−3から流下してくる希硫酸(H2SO4)19の影響をほとんど受けることなく、下段側に配設した前記第一の浄化槽12−1及び前記第二の浄化槽12−2にも、常に前記希硫酸(H2SO4)19を含まないきれいな前記水13を供給することができるため、前記第一の浄化槽12−1及び前記第二の浄化槽12−2の脱硫効率を維持することができる。
【0033】
この結果、本実施例に係る第一のガス浄化装置10Aによれば、各段の前記浄化槽12における前記排ガス11中の脱硫効率を向上させることができる。
【0034】
また、前記浄化槽12により浄化された浄化ガス20を排出するガス出口部21bが装置本体21の頂部に設けられている。
【0035】
また、前記本体15の底部で回収された前記希硫酸(H2SO4)19は、前記本体15の外に排出される。また、前記希硫酸(H2SO4)19は、図示しない前記希硫酸(H2SO4)19を循環させるための希硫酸(H2SO4)循環ラインを設け、回収された前記希硫酸(H2SO4)19を前記水供給ライン18に送給し、再利用するようにしても良い。また、図示しない前記水循環ラインには必要に応じて別途図示しない水供給装置により前記水13を添加するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施例では、三つの前記第一の浄化槽12−1、前記第二の浄化槽12−2、前記第三の浄化槽12−3のガス導入側の下端面を全て同じ方向に傾斜させ、前記各浄化槽12内を流下した前記希硫酸(H2SO4)19を同一方向に流して前記本体15の側壁に沿って流下するようにし、各浄化槽12で生成される前記希硫酸(H2SO4)19が、下段に配置されている前記浄化槽12に滴下しないようにしているが、本発明はこれに限定されるものはなく、例えば、図4に示すように前記第二の浄化槽12−2の下端面を前記第一の浄化槽12−1及び前記第三の浄化槽12−3の下端面の傾斜方向と反対方向又は異方向として、前記第二の浄化槽12−2の下端面から出てくる前記希硫酸(H2SO4)19を前記第一の浄化槽12−1及び前記第三の浄化槽12−3から出てくる前記希硫酸(H2SO4)19を流下させる前記本体15の側壁と反対側の前記本体15の側壁に沿って流下するようにしても良い。
【0037】
また、本実施例では、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3の全ての前記浄化槽12の下端面のみを傾斜させ、前記水13が前記各浄化槽12内を流下し、生成された前記希硫酸(H2SO4)19を同一方向に流して前記本体15の側壁に沿って流下するようにしているが、本発明はこれに限定されるものはなく、例えば、図5に示すように前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3のガス排出側の上端面も傾斜させ、前記希硫酸(H2SO4)19を同一方向に流して回収するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施例では、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3のガス排出側の上端面を全て同じ方向に傾斜させ、前記希硫酸(H2SO4)19を同一方向に流して前記本体15の側壁に沿って流下するようにしているが、本発明はこれに限定されるものはなく、例えば、図6に示すように前記第二の浄化槽12−2の上端面及び下端面を前記第一の浄化槽12−1と前記第三の浄化槽12−3との上端面及び下端面の傾斜方向と反対方向又は異方向としても良い。
【0039】
また、本実施例では、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3の全部の前記浄化槽12の上端面も傾斜させている場合には、前記浄化槽12の上端面の傾斜させる方向を前記浄化槽12の下端面と同じ方向としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、前記浄化槽12の上端面と下端面とを異なる向きにしてもよい。
【0040】
また、本実施例では、前記本体15内に前記浄化槽12を三段配設しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、二段又は三段以上としてもよい。
【0041】
また、本実施例では、前記第一の浄化槽12−1は最下段の浄化槽であるため前記第一の浄化槽12−1の下端面を、傾斜させないようにしてもよい。
【0042】
このように、本実施例によれば、前記本体15内に配設した全ての前記浄化槽12に常時きれいな前記水13を供給することができ、生成された前記希硫酸(H2SO4)19の影響を受けないため、全ての前記浄化槽12において前記排ガス11中の硫黄酸化物、微粒子等の脱硫の除去効率を向上させることができる。また、前記排ガス11中の硫黄酸化物、微粒子等の脱硫除去率が安定し、排煙の脱硫率が向上し、煙突出口排煙から紫煙が低減、消滅させることができる。
【実施例2】
【0043】
本発明による実施例に係るガス浄化装置について、図7を参照して説明する。
図7は、実施例2に係るガス浄化装置を示す概念図である。本実施例に係るガス浄化装置には、実施例1に係る第一のガス浄化装置10A〜10Dの構成と同様であるため、同一部材には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
図7に示すように、本実施例に係る第二のガス浄化装置30Aは、図4に示す実施例1に係る第一のガス浄化装置10Aの前記本体15の側壁側で、前記第二の浄化槽12−2(中段)及び前記第三の浄化槽12−3(最上段)の下端面の傾斜の低い方に流下してくる前記希硫酸(H2SO4)19を回収する第一の硫酸受け部31−1及び第二の硫酸受け部31−2と、前記第一の硫酸受け部31−1及び第二の硫酸受け部31−2より回収された前記希硫酸(H2SO4)19を前記本体15の底部に送給する硫酸送給部32とを有してなるものである。
【0044】
前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3のガス導入側の下端面を一定方向に傾斜させ、前記散水ノズル14より供給された前記水13が各段の前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3内をそれぞれ流下し、生成された前記希硫酸(H2SO4)19を前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3の下端面の傾斜の低い方向に移動させることにより、前記第一の硫酸受け部31−1及び前記第二の硫酸受け部31−2とで前記希硫酸(H2SO4)19を回収することができる。
【0045】
また、前記第一の硫酸受け部31−1及び前記第二の硫酸受け部31−2とで前記回収された希硫酸(H2SO4)19は、硫酸送給部32を介して前記本体15の底部に回収される。
【0046】
よって、前記本体15内に配設した前記第二の浄化槽12−2は、上段側に配設した前記第三の浄化槽12−3から流下してくる希硫酸(H2SO4)19の影響を受けることなく、下段側に配設した前記第二の浄化槽12−2にも、常にきれいな前記水13を供給することができるため、前記第二の浄化槽12−2の脱硫効率を向上させることができる。
【0047】
また、前記本体15内に配設した前記第一の浄化槽12−1は、上段側に配設した前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3から流下してくる前記希硫酸(H2SO4)19の影響を受けることなく、下段側に配設した前記第一の浄化槽12−1にも、常にきれいな前記水13を供給することができるため、前記第一の浄化槽12−1の脱硫効率を向上させることができる。
【0048】
このように、本実施例に係る第二のガス浄化装置30Aによれば、上段側に配設した前記第二の浄化槽12−2又は前記第三の浄化槽12−3から流下してくる前記希硫酸(H2SO4)19の影響を受けることなく、下段側に配設した前記第一の浄化槽12−1及び前記第二の浄化槽12−2にも、常にきれいな前記水13を供給することができるため、前記第一の浄化槽及び前記第二の浄化槽12−2の前記排ガス11中の脱硫効率を向上させることができる。
【0049】
また、本実施例では、それぞれの前記フィルタの下端面の傾斜方向に応じて、前記フィルタの下端面に沿って流れてくる前記希硫酸(H2SO4)19を回収するように硫酸受け部31を設けるようにすればよい。例えば、図8に示すように前記第二の浄化槽12−2下端面を前記第一の浄化槽12−1、前記第三の浄化槽12−3の下端面の傾斜方向と反対方向とした場合には、前記第二の硫酸受け部31−2を前記第一の浄化槽12−1の下端面に設ける硫酸受け部31とは反対方向の前記本体15の側壁側に設けるようにすれば良い。
【0050】
また、前記第一の硫酸受け部31−1で回収された前記希硫酸(H2SO4)19及び前記第二の硫酸受け部31−2で回収された前記希硫酸(H2SO4)19は、それぞれ前記第一の硫酸送給部32−1及び前記第二の硫酸送給部32−2とを介して前記浄化塔45底部に回収される。
【0051】
また、図9、10に示すように前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3のガス排出側の上端面を傾斜させ、前記各浄化槽12内を流下する前記希硫酸(H2SO4)19を回収する場合でも、前記第二の浄化槽12−2及び前記第三の浄化槽12−3の下端面に沿って前記希硫酸(H2SO4)19が流れてくる前記本体15の側壁側に硫酸受け部31を設けるようにすればよい。
【0052】
このように、本実施例によれば、上段側に配設した前記浄化槽12から流下してくる希硫酸(H2SO4)19が硫酸受け部31において回収され、前記本体15内に配設した前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3に常時きれいな前記水13を供給することができる。
【0053】
このため、前記第一の浄化槽12−1乃至前記第三の浄化槽12−3において前記排ガス11中の前記浄化槽12の硫黄酸化物、微粒子等の脱硫の除去効率を向上させることができる。また、前記排ガス11中の硫黄酸化物、微粒子等の脱硫除去率が安定し、排煙の脱硫率向上し、煙突出口排煙から紫煙が低減、消滅させることができる。
【実施例3】
【0054】
本発明によるガス浄化装置を用いた排ガスを処理する排煙脱硫システムの一実施例について、図11を参照して説明する。
図11に示すように、本実施例にかかる排煙脱硫システム40Aは、蒸気タービンを駆動する蒸気を発生させるボイラ41と、該ボイラ41からの排ガス11中の煤塵を除去する集塵機42と、除塵された排ガス11を第一のガス浄化装置10A内に供給する押込みファン43と、第一のガス浄化装置10Aに供給する前に排ガス11を冷却すると共に増湿を行う増湿冷却装置44と、第一の浄化槽12−1、前記第二の浄化槽12−2を二段内部に配設し、浄化塔45本体の塔下部側壁の導入口45aから排ガス11を供給すると共に、上方から水13を供給して、排ガス11中のSOXを希硫酸(H2SO4)19へ脱硫反応させると共にSO3ミストを捕集する第一のガス浄化装置10Aと、頂部の排出口45bから脱硫された浄化ガス20を外部へ排出する煙突46と、第一のガス浄化装置10Aからポンプ50を介して希硫酸(H2SO4)19を貯蔵すると共に石灰スラリー51を供給して石膏を析出させる石膏反応槽52と、石膏を沈降させる沈降槽(シックナー)53と、石膏スラリー54から水分を排水(濾液)55として除去して石膏56を得る脱水器57とを備えてなる。なお、第一のガス浄化装置10Aから排出される浄化された浄化ガス20を排出するラインには必要に応じてミストエリミネータ47を介装し、ガス中の水分を分離するようにしてもよい。
【0055】
ここで、上記ボイラ41では、例えば、火力発電設備の図示しない蒸気タービンを駆動するための蒸気を発生させるために、石炭や重油等の燃料fが炉で燃焼されるようになっている。前記ボイラ41の排ガス11には硫黄酸化物(SOX)が含有され、前記排ガス11は図示しない脱硝装置で脱硝されてガスヒータで冷却された後に前記集塵機42で除塵されている。
そして、第一のガス浄化装置10Aにおいて所定量の水13を供給しつつ排ガス11中の脱硫を効率良く行うことができる。
【0056】
この排煙脱硫システム40Aでは、第一のガス浄化装置10Aで得られた希硫酸(H2SO4)19に石灰スラリー51を供給して石膏スラリー54を得た後、脱水して石膏56として利用するものであるが、脱硫して得られた希硫酸(H2SO4)19をそのまま硫酸(H2SO4)として使用するようにしてもよい。その場合には、希硫酸(H2SO4)19を濃縮する濃縮槽を設けるようにしてもよい。
【0057】
また、本実施例では、第一のガス浄化装置10A内部に第一の浄化槽12−1と第二の浄化槽12−2とを二段配設しているが、本発明はこれに限定されることなく、前記浄化槽12を三段以上の複数配設するようにしてもよい。
【0058】
また、図12に示すように、前記浄化塔45の側壁側で第二の浄化槽12−2の下端面の傾斜の低い方に流下してくる前記希硫酸(H2SO4)19を回収する硫酸受け部31を設け、第二の浄化槽12−2において生成される前記希硫酸(H2SO4)19を回収し、前記浄化塔45底部に送給し、第一の浄化槽12−1に滴下しないようにすると共に、第二の水供給部14−2より水13を第一の浄化槽12−1に供給するようにしてもよい。これにより、第一のガス浄化装置30Aでは第一の浄化槽12−1でも紫煙の原因となるSO3ミスト等の除去効率を向上させることができる。
【0059】
また、本実施例では、ボイラ41からの排ガス11中の硫黄酸化物等を除去する排煙脱硫システムについて例示したが、本発明の浄化対象となる排ガスはこれに限定されるものではなく、例えばガスタービン、エンジン、ガス化炉及び各種焼却炉の何れかから排出される排ガスに用いてもよい。
【0060】
このように、本実施例によれば、排ガス11中のSO3ミスト、SO2の除去性能を向上させることができると共に、排ガス11中の微粒子(煤塵、SO3ミスト)の除去率が安定し、排煙の脱硫率向上し、煙突出口排煙から紫煙が低減、消滅させることができる。
【0061】
本発明に係るガス浄化装置は、例えば石炭等の硫黄分を含む排ガスのみならず、その他の有害煤塵や有害ミストを含む排ガスを浄化することができる。
また、フィルタとして活性炭素繊維を用いることにより、その化学的な触媒酸化作用により、排ガス中の重金属(水銀、砒素等)等の有害成分の吸着除去を効率良く行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上のように、本発明に係るガス浄化装置、排煙脱硫システム、排ガス処理方法は、前記浄化槽の各段に常時きれいな水を供給することができるため、前記排ガス中の微粒子等の脱硫の除去効率が向上するので、前記排ガス中の微粒子等の脱硫の効率的な除去処理に用いて適している。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1に係る第一のガス浄化装置を示す概略図である。
【図2】ガス流速と水ミストの限界粒子径との関係を図である。
【図3】実施例1に係る第一のガス浄化装置を示す概略図である。
【図4】実施例1に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図5】実施例1に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図6】実施例1に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図7】実施例2に係るガス浄化装置を示す概略図である。
【図8】実施例2に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図9】実施例2に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図10】実施例2に係る他のガス浄化装置を示す概略図である。
【図11】実施例3の排煙脱硫システムの概略図である。
【図12】実施例3の他の排煙脱硫システムの概略図である。
【図13】従来のガス浄化装置の概略図である。
【図14】従来のフィルタの概略図である。
【符号の説明】
【0064】
10A〜10D 第一のガス浄化装置
11 排ガス
12−1 第一の浄化槽
12−2 第二の浄化槽
12−3 第三の浄化槽
13 水
14−1 第一の散水ノズル
14−2 第二の散水ノズル
14−3 第三の散水ノズル
15 本体
16 水タンク
17 ポンプ
18 水供給ライン
19 希硫酸(H2SO4
20 浄化ガス
30A〜30D 第二のガス浄化装置
31 硫酸受け部
31−1 第一の硫酸受け部
31−2 第二の硫酸受け部
32 硫酸送給部
32−1 第一の硫酸送給部
32−2 第二の硫酸送給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のSO3ミストを捕集すると共に、SO2を除去する活性炭素繊維からなる浄化槽と、
前記浄化槽の上方側から前記浄化槽に硫酸生成用の水を供給する水供給部とを具備してなるガス浄化装置において、
前記浄化槽が、ガス浄化装置の本体内に縦方向に複数段配設してなり、
前記水供給部が、前記浄化槽の各段の上方側にそれぞれ設けられ、
前記浄化槽の上下の端面の何れか一方又は両方が傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の浄化槽の下端面が、全て同一方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記複数の浄化槽のうち、少なくとも一つ以上の前記浄化槽の下端面が、他の前記浄化槽の下端面と反対方向又は異方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数の浄化槽の下端面及び上端面が、全て同一方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記複数の浄化槽のうち、少なくとも一つ以上の前記浄化槽の下端面及び上端面が、他の前記浄化槽の下端面及び上端面と反対方向又は異方向に傾斜してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記本体の側壁側で、前記浄化槽の下端面の傾斜の低い方に流下してくる希硫酸を回収する硫酸受け部と、
前記硫酸受け部より回収された希硫酸を前記ガス浄化装置本体の底部に送給する希硫酸送給部とを有してなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つにおいて、
前記ガス浄化装置の最下部にある前記浄化槽の下端面が、傾斜していないことを特徴とするガス浄化装置。
【請求項8】
前記排ガスが、ボイラ、ガスタービン、エンジン又は各種焼却炉の何れかから排出されるガスであり、
請求項1乃至7の何れか一つのガス浄化装置を用いて、前記排ガス中の煤塵を除去する煤塵除去手段を備えてなることを特徴とする排煙脱硫システム。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一つのガス浄化装置を用いて、排ガス中の煤塵、三酸化硫黄ミストを捕集すると共に、二酸化硫黄を除去することを特徴とする排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−62205(P2008−62205A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244661(P2006−244661)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】