説明

ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置

化学ルミネセンス分析器によって酸化窒素を測定する際に発生する急冷ガスは、測定結果を誤らせる原因となる。そこで本発明の課題は、ガス混合物を分析室(14)内に制御しながら供給し、かつ分析室(14)から送り出すための装置を提供することである。この調量装置は、流量制限器(6)を有していて、該流量制限器(6)の後ろで前記調量管路(2)内に前記第1の毛管(12)が配置されており、バイパス管路(10)が設けられていて、該バイパス管路(10)内にノズル(22)が配置されていて、該ノズル(22)が前記分析室(14)の後ろで前記アウトレット管路(16)内に開口しており、前記バイパス管路(10)が、前記流量制限器(6)と前記第1の毛管(12)との間で前記調量管路(2)から分岐している。このような構成によって、急冷効果による測定結果の間違いは、反応室を通る流量を高める配置にも基づいて補償される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置であって、少なくとも1つの調量管路と、該少なくとも1つの調量管路内に配置された第1の毛管と、分析室と、アウトレット管路とを有しており、前記分析室内に前記調量管路からガス混合物が流入する形式のものに関する。
【0002】
このような形式の装置は、例えばガスクロマトグラフィー又は化学ルミネセンス分析器の分野により公知である。
【0003】
化学ルミネセンス分析器の測定原理は、窒素酸化物とオゾンとの自然反応に基づいている。窒素酸化物とオゾンは、二酸化窒素と酸素に変換され、この際に、発生された二酸化窒素分子の一部が反応後に励起状態にある。基本状態への移行時に、余剰のエネルギーが光学的に測定可能な放射線の形で放出され、該放射線の強さは、ガス混合物内に前もって存在した窒素酸化物の濃度に比例している。
【0004】
このような測定法においては、急冷効果に起因する問題がある。急冷効果は、二酸化窒素分子の一部のエネルギーがその他の分子と衝突することによって放出されて、放射線が放射されない場合に、発生する。このような効果は、混合ガス内の水又は二酸化炭素の割合が、校正用ガスと比較して変化した場合に顕著である。
【0005】
混合ガス内におけるNO割合を分析するための装置は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第2225802号明細書により公知である。この公知の装置においては、酸化窒素を含有するガス混合物が、サンプル管路内に配置された毛管を介して反応室に層状に供給される。さらに反応室に、オゾンを含有する反応混合物が第2の管路を介して供給され、それによって混合物が、反応室内で前記形式に従って反応する。この際に発生した放射線が測定され、その結果、酸化窒素の割合が感光装置によって検出される。吸込みポンプを介して、混合物が反応室から送り出される。この測定は連続的に実施することができる。内燃機関の排ガスを測定する際に、サンプル混合ガス内の二酸化炭素によって急冷効果を抑制するために、ほぼ4倍量の酸素を含有する反応混合物が反応室内のサンプルガスに供給される。このような希釈によって、急冷効果は低下される。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許第19746446号明細書によれば、前記のような希釈を実施することが公知である。この場合、希釈は、反応室内ではなく、NOxコンバータの前、つまり上流側で行われる。NOxコンバータは、NOxをNOに変換するために用いられる。希釈ガスとしてはNが用いられる。
【0007】
この公知の装置においては、測定精度の低下なしには、希釈によって急冷効果を完全に抑制することができない、という欠点がある。
【0008】
そこで本発明の課題は、希釈ガスを供給することなしに、急冷効果を低下させることができ、場合によっては急冷効果を完全に除去することができるような、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置を提供することである。
【0009】
この課題を解決した本発明によれば、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置としての調量装置が、流量制限器を有していて、該流量制限器の後ろで前記調量管路内に前記第1の毛管が配置されており、バイパス管路が設けられていて、該バイパス管路内にノズルが配置されていて、該ノズルが前記分析室の後ろで前記アウトレット管路内に開口しており、前記バイパス管路が、前記流量制限器と前記第1の毛管との間で前記調量管路から分岐している。ノズルを単数又は複数の毛管に接続したことによって、反応室である分析室を通る流れを調節して急冷効果を調整することができる。何故ならば、ノズルを通る流れはガス密度に応じて変化し、これに対して毛管を通る流れは、ガスの粘性に応じて変化するからである。従って、的確な接続回路によって、ガス混合物の組成変化によって得られる流量変化が自動的に得られる。このことはつまり、例えば化学ルミネセンス分析器の反応室である分析室内において二酸化炭素の割合又は水の割合が増大すると、サンプル流量を接続回路によって増やす必要があり、この割合が減少するとサンプル流量を減らす必要がある、ということを意味する。本発明の装置によれば、ノズルを通る流量は、密度の増大に伴って密度の平方根に比例して減少し、これに対して毛管を通る流量は、粘性の増大に比例して減少する。妨害ガスとしての二酸化炭素は、窒素と比較して高い密度、並びに低い粘性を有している。従って毛管を通る流量は増大し、これに対して、混合ガスがより多くの二酸化炭素を含有していれば、ノズルを通る流量は低下する。上流側に接続された流量制限器は、入口圧力が一定である場合に、容積流及び出口圧力をガス混合物の組成に応じて調節するために用いられる。
【0010】
本発明の有利な実施態様によれば、流量制限器が第2の毛管である。これによって簡単な形式で、出口圧力を設定することができる。
【0011】
ノズルが臨界状態で作動されるようになっていれば、有利である。この場合、出口圧力の変化によって流量が影響を受けることはない。何故ならば、流量は入口圧力だけに基づいているからである。
【0012】
分析室は、化学ルミネセンス反応器の反応室であるので、該化学ルミネセンス反応器の測定値は、毛管とノズルの配置によって、分析室を通る流量の増大に基づく水蒸気又は二酸化炭素の発生によって粘性が変化すると、ほぼ一定に維持される。何故ならば、酸化窒素の低い活性度は、増大された流量によって補償されるからである。
【0013】
本発明による装置は、有利な形式で、ポンプを有しており、該ポンプが前記分析室の後ろでアウトレット管路内に配置されていて、それによって混合ガスの送り出しが確実に行われる。
【0014】
本発明の別の実施態様によれば、第1の毛管の下流で、希釈ガスを前記調量管路内に導入するための希釈通路が開口している。このような配置構成によって、急冷効果を完全に補償することができるので、高い測定精度が得られる。
【0015】
本発明によれば、水蒸気又は二酸化炭素の割合が高められることによって、発生した急冷効果を著しく低下させることができ、場合によっては完全に除去することができる、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置が提供された。
【0016】
ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための、本発明による装置の1実施例が図面に概略的に示されていて、以下に詳しく説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の1実施例による調量装置の概略図である。
【0018】
図面は、調量装置を示しており、該調量装置は調量管路2を有していて、該調量管路2内に、インレット4を介してガス混合物が流入する。調量管路2内には、送り出し流量及び出口圧力を、一定のインレット圧力及びガス混合物の組成に応じて所定に調節するための流量制限器6が配置されている。
【0019】
流量制限器6の下流には分岐部8が配置されていて、該分岐部8において調量管路2からバイパス管路10が分岐しており、ガス混合物流が、その粘性、密度、及び管路2,10の提供された横断面に応じて2つの流れに分割される。
【0020】
分岐部8の下流側で、調量管路2内に第1の毛管12が配置されており、該第1の毛管12を介して、ガス混合物の部分流が、調量管路2から分析室14内に流入する。この分析室14は、図示の実施例では、化学ルミネセンス分析器の反応室として構成されている。
【0021】
この反応室から部分流がアウトレット管路16内に流入する。このアウトレット管路16内に、アウトレット管路16のアウトレット18とインレット4との間において十分な圧力低下を得るための、送り出し用ポンプ(図示せず)が配置されている。場合によっては、ポンプ無しで送り出しを行うことも可能である。
【0022】
アウトレット管路16内にはバイパス管路10も開口しており、このバイパス管路10内の分岐部8と開口箇所20との間にノズル22が配置されている。
【0023】
この調量装置の機能形式について以下に説明する。流量制限器6は、0.3mmの内径及び134mmの長さを有する第2の毛管として構成されており、第1の毛管12は、やはり0.3mmの内径を有しているが、長さは88mmである。ノズル22は、299hpa圧力において毎分30mlのNの容積流を有する臨界ノズル(kritische Duese)として構成されている。
【0024】
80℃の運転温度において、調量管路2を介して純粋な窒素を供給する際に、及び第2の毛管6の手前の入口圧力p1が600hPaである場合に、毛管を通る毎分60mlの容積流が得られる。ノズル22の手前若しくは第1の毛管12の手前の圧力p2は、299.2hPaに調節される。その結果、第1の毛管12及びノズル22を通る約30ml/分の容積流が得られる。この実施例では、反応室である分析室14の後ろの圧力は約30hPaであって、これは、ポンプの特性曲線によって規定されるが、直前の運転状態に影響することはない。この瞬間に急冷効果は存在しない。何故ならば急冷ガスは存在しないからである。
【0025】
ガス流の組成が変化して、ガス流内に例えば10%の水及び10%の二酸化炭素が含まれると、本発明による装置によって圧力及びガス流は、第1の毛管12を通る流量が毎分32.3ml、第2の毛管を通る流量が毎分62.55mlに上昇し、ノズルを通る流量が毎分30.25mlに上昇するように、変化する。それと同時に、第2の毛管の後ろの圧力p2は302.9hPaに上昇し、これに対して入口圧力p1は一定に保たれる。第2の毛管6の後ろで、ガス流の粘性変化及び密度変化の前記影響によって、圧力p2は302.9hPaに上昇する。このことはつまり、反応室である分析室を通る流量が7.67%上昇せしめられる、ということである。この上昇は、公知の純粋な毛管装置によって得られる上昇よりも著しく大きい。
【0026】
特に、急冷ガスつまり水蒸気と二酸化炭素との間の比例関係において、流量の上昇は、化学ルミネセンスによる酸化窒素の測定時の急冷効果とほぼ比例するので、この急冷効果は、本発明による装置によって補償される。
【0027】
混合ガス内に存在する二酸化炭素によって、密度は高くなり、これに対して密度は水蒸気によって低下する。混合ガスの粘性は、存在する2種類の妨害ガス(Stoergas)によって低下する。これによって毛管12内において、低下する粘性によって流量が上昇し、これに対してノズル22において流量はやや上昇する。何故ならば、流量は密度の平方根に比例して変化するだけであり、存在する混合ガスの密度が僅かに低下するだけだからである。この場合、ノズル22における流量の上昇は、並列接続された毛管12におけるよりも、著しく僅かである。それによって分析室14を通る容積流が上昇することによって、化学ルミネセンスによる酸化窒素の測定時に発生する急冷効果が調整される。これは、純粋な毛管装置においては得られない。
【0028】
本発明による装置は、図示の実施例のみに限定されるものではない。本発明による装置は、例えばその他の流量制限器に使用することができるか、或いは化学ルミネセンス分析器の反応室とは別の分析室に使用することができる。送り出しは、環境条件に応じて、ポンプによって又はポンプ無しで行うことができる。補助的に混合ガスを薄めることによっても、急冷効果をさらに低下させることができる。
【符号の説明】
【0029】
2 調量管路、 4 インレット、 6 流量制限器、 8 分岐部、 10 バイパス管路、 12 毛管、 14 分析室、 16 アウトレット管路、 18 アウトレット、 20 開口箇所、 22 ノズル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置であって、少なくとも1つの調量管路と、少なくとも1つの前記調量管路内に配置された第1の毛管と、分析室と、アウトレット管路とを有しており、前記分析室内に前記調量管路からガス混合物が流入する形式のものにおいて、
前記装置が流量制限器(6)を有していて、該流量制限器(6)の後ろで前記調量管路(2)内に前記第1の毛管(12)が配置されており、バイパス管路(10)が設けられていて、該バイパス管路(10)内にノズル(22)が配置されていて、該ノズル(22)が前記分析室(14)の後ろで前記アウトレット管路(16)内に開口しており、前記バイパス管路(10)が、前記流量制限器(6)と前記第1の毛管(12)との間で前記調量管路(2)から分岐していることを特徴とする、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。
【請求項2】
前記流量制限器(6)が第2の毛管である、請求項1記載の、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。
【請求項3】
前記ノズル(22)が臨界ノズルである、請求項1又は2記載の、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。
【請求項4】
前記分析室(14)が化学ルミネセンス反応器の反応室である、請求項1から3までのいずれか1項記載の、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。
【請求項5】
ポンプを有しており、該ポンプが前記分析室(14)の後ろでアウトレット管路(16)内に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。
【請求項6】
前記第1の毛管(12)の下流で、希釈ガスを前記調量管路(2)内に導入するための希釈通路が開口している、請求項1から5までのいずれか1項記載の、ガス混合物を分析室内に制御しながら供給し、かつ送り出すための装置。

【公表番号】特表2012−528307(P2012−528307A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512285(P2012−512285)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055667
【国際公開番号】WO2010/136288
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511236970)エイヴィエル エミッション テスト システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】AVL Emission Test Systems GmbH
【住所又は居所原語表記】Graf−Landsberg−Strasse 1 c, D−41460 Neuss, Germany
【Fターム(参考)】