ガス測定方法、および対応するイオン移動度分光計
【構成】ガス流(10)におけるサンプルガスをイオン化するステージ、イオン化されたガス流を細長いイオン移動度測定室(12)の所定の横断面に導くステージ、測定電極(ex、e2、e3)から所定の距離でイオン化ガス流からイオンをフィルター処理(14)して、イオンのみを選択された点で流れ横断面から流動させるステージ、および横断静電界および測定室の壁部にそって設けられた少なくとも一つの測定電極対(e1、e2、e3)を利用して、異なるイオン移動度をもつイオン(J1−n)を分離するステージからなるガス状物質の測定方法、および測定装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下のステージからなるガス測定方法に関する。
ガス流中のサンプルガスをイオン化するステージ;
イオン化されたガス流を細長いイオン移動度測定室に導き、その所定の流れ断面を通過させるステージ;および
横断電界、および上記測定室の壁に配設した少なくとも一つの測定電極対を利用して、イオン移動度の異なるイオンを分離するステージ。
また、本発明は、この方法を実施するイオン移動度分光計(IMS)にも関する。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光分析(IMS)は、空気中のガス状不純物を測定する方法である(Eiceman & Karpas、2005)。イオンの移動度は、多くの方法で測定されている。最もよく利用されている方法は、飛行時間IMS、即ちドリフトIMSである。公知のもう一つの方法は、吸引IMSである。これは、イオンとエーロゾル粒子の両者移動度を測定するために利用されている。吸引IMSは、イオンが空気流中を移動し、このさいに、よく発生することだが、電界が空気流に対して垂直になる現象に基づいている。電界を一定に維持すると、イオンがその電気移動度に基づいて異なる位置に移動し、この電気移動度は、測定位置に準じて決まる。時間に対して電界を変えることによっても測定は、実施できる。この場合は、異なる移動度を示すイオンは、異なる時間で測定されることになる。
【0003】
US2007/0023647A1(Zimmermann)には、一つのイオン移動度分光計が開示されている。この分光計の場合、サンプルガスをイオン化し、測定電極の手前に設けられた、移動ガス流の横断面の狭い点にこれを案内する。これは、いわゆる二次的な吸引IMSといえる。イオン化サンプルガスが、細い流れとして、移動ガスおよび電界の流れ横断面の中心に案内された時点で、すべてのイオンが、連続電極に対して同じ距離の移動を開始するのが理想である。分子の横断移動に影響する変数は、この場合、分子の質量および電荷である。横断面全体からの(イオン)流れと比較した場合、チャネルの分離精度が大きく向上する。ところが、移動ガスおよび被イオン化サンプルガスを制御する必要があるため、構成が複雑になる。一つの流れ成分中に最少の乱れが発生しても、比較的大きな測定誤差が出る。同様な構成は、US2006/0054804A1(Wexler)にも開示されている。
【0004】
WO2008/008826A2には、いくつかの異なるタイプのIMS装置が開示されている。公報の図5および図6には、Bradbury−Nielsen多成分ゲートを使用し、1Mhz程度の周波数を走査DC電圧と併用したIMS装置が図示されている。いくつかの相のRF源とDC走査を併用したこのような電極構成は、きわめて複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US2007/0023647A1
【特許文献2】US2006/0054804A1
【特許文献3】WO2008/008826A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原理的には、サンプルガスを中心に案内することが可能であるが、実際に実現することは難しく、この理由から、上記公報には、サンプルガスを移動ガス流れの縁部に案内するモデルが開示されている。このような案内は、移動ガス流の放物線状の速度プロファイルの点で最適なものではなく、測定精度が落ちる原因になる。
【0007】
図1に、吸引セルを実施する従来の方法を図示する。イオンJ1−nは、流れチャネルの全領域から個別の測定ストリップe1−e3に達する。流れの速度プロファイルによりイオンの多くは、中心から来るが、流れの縁部から来るイオンのために、測定精度がかなり落ちる。図2に、いわゆるSWEEPセル構成を図示する。この構成の場合、イオンJ1nは、流れチャンネルの全領域から個々の測定ストリップe1-e2に達する。この場合、イオンの分離は、測定ストリップの電界を変えることによって生じる。この方法にも、イオンの広い到着分布を原因として前記と同じ問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来と比較して構成が簡単なガスサンプル測定方法および装置、特に、いわゆる二次吸引IMSを実施する方法および装置を提供することである。本発明方法の特徴は、請求項1に、そして対応するIMS装置の特徴は、請求項6に記載した通りである。本発明のフィルター作用技術によって、エミッション流れを流れ横断面の中心に設定できるため、流れの速度プロファイル効率を最大化できる。上記のZimmermannの装置よりも構成をかなり簡単にできる。最も簡単な構成では、エミッション流れに絶対0場を設定できるが、この場合にも、より高度の実施態様では、小さな電界およびコレクター電極を利用してイオンを選択でき、エミッションチャネルを通過しているイオンのごく一部を分離することができる。
【0009】
イオン捕集流、即ち上記のシャットオフチャネルの電界は、イオンの移動度に対して静的である。本発明実施態様では、(100Hz未満の、より普通の状態では0〜50Hz)のゆっくり変化する電界、即ち絶対的な静的電界を利用できる。例えば、1秒間を例に取ると、ゆっくり変化する電界を使用して、異なる移動度のイオンの分離を最適化できる。プレフィルターの電界についてはその長さを流れ方向に十分に長く設定できるため、シャットオフチャネルがイオンを捕集でき、エミッションチャネルの作用を確保できる。プレフィルターの後に、循環路に従って、分離電極を測定室内に軸方向に設定できる。
【0010】
エミッションチャネルの静電界の場合、両側において同じ電位の電極が必要である。なお、静電界の各電極は、絶縁プレートの反対側に設置すると、同時にシャットオフチャネルの第2電極になる。
【0011】
本発明のイオンフィルター作用技術を用いると、イオンフィルター作用のない検出器と比較した場合、かなり高い測定精度を実現できる。また、本発明のフィルター作用技術を利用すると、エミッションチャネルを流れの横断面の中心に設定できるため、流れの速度プロファイル効率を最大化できる。構成は、上記のZimmermannの装置よりもかなり簡単である。
【0012】
サンプル空気は、例えばα放射線またはβ放射線によってイオン化する。このイオンは、小さな断面のみから測定部に流入する。本発明では、イオンは、いわゆるシャットオフ流れから流れチャネルの縁部を介してフィルター作用を受け、そしていわゆるエミッション流れから流れチャンネルの中心部を介して移動度測定部に流入する。これらチャネルについては、シャットオフチャネルおよびエミッションチャネルと呼ぶ。これにより、流れチャネルの全領域からイオンが測定域に流入する場合(いわゆる一次吸入IMS)よりも移動度解像度が大きく向上する。エミッション流れ周囲のシャットオフ流れにより、流れの速度プロファイルを制御することができる。
【0013】
本発明の一つの実施態様では、流れチャネル内に極めて薄い金属プレート(このうちの一部において電圧が発生する)を配設することによってイオンを取り除く。イオンは、一つのギャップから測定室に流入する。この場合、エミッションギャップは、チャネルの中心部にあり、側部には全く存在しない。エミッションギャップを中心チャネルに設定するのが有利である。流れに対してイオンが相対的に分布され、チャネルの中心での単位時間当たりのイオン密度が最大になるからである。イオンを同一電位に設定することによって、最も中心にあるか(あるいはそれ以外に選択された)ギャップにイオンが流入する。これ以外の場所にあるイオンについては、適当なバリア場によって取り去る。十分に薄いプレートを使用しているため、流れが乱れることはなく、却って、流れが各ギャップを通過するようにチャネルの流れ抵抗が均等化する。本発明の好適な構成では、流れ案内プレートの寸法を相互に変えて、流れの分布を制御できるようにする。
【0014】
本発明の携帯式二次吸入IMSの特徴は、以下のようにまとめることができる。例えば、放射線源によって流れチャネル高さの全体にわたってイオンを発生することができる。流れチャネルを分割するプレート構造体によって任意の場所からくるイオンをフィルター作用によって取り去ることによって、限られた領域から、好ましくは、流れの速度分布の最大点を介してイオンが測定室に流入する。ここでは、中心部から来るイオンを移動度測定室に流入させることによって、流れチャネルの中心部における(単位時間当たりの)イオン密度がより高くなることを利用する。例えば、電界によってチャネル中心部におけるイオン密度を高くすることによって、エミッションプレート構造体の手前にある電界によってイオンを案内できる。このエミッションプレート構造体は、シェードとしても作用するため、測定室にイオン化放射線が測定室に流入することを防止できる。この構成によると、測定をコンパクトにできる。また、この構成を利用すると、DMS/FAIMS型測定を実施できる。さらに、移動度分布の目的部分を二次的に発生したイオン流から選択するときには、この構成をいわゆるSWEEP型測定と併用できる。
以下、実施例により、また添付図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の吸引セルを使用する方法を示す図である。
【図2】いわゆるSWEEPセルの構成を示す図である。
【図3a】別な二次吸引IMSセルを示す概略図である。
【図3b】図3aの実施態様の変形例を示す図である。
【図4】プレフィルターのバリアプレート構造体の一例を示す図である。
【図5】別な二次吸引IMSの構成を示す図である。
【図6】プレフィルターの横断面図である。
【図7】プレフィルターの手前にある流れチャネルの横断面図である。
【図8】多少変更を加えた従来の二次吸引IMSセルを示す概略図である。
【図9】吸引IMSセルの応用例を示す軸側横断面図である。
【図10】吸引IMSセルの第2応用例を示す軸側横断面図である。
【図11】従来の構成よりも簡単な、吸引IMSセルの第3応用例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
位置分離二次吸引IMSの動作について、図3aに概略図として図示する。イオン化ガス流10を測定チャネル12に案内し、これによって測定チャネル内に、一つの代表例としての放物線状速度プロファイルが生成する。実際の測定という点からみると、中心成分が位置分離セルであり、K1、K2、K3で示すように、異なる移動度をもつイオンが異なる位置に集められる。空気流のプロファイルも放物線状であり、中心で流れが最大になる。流れプロファイルによって、より多くのイオンが単位時間内で縁部よりも中心部に到達する。プレフィルター14によって、イオンは縁部から取り集められる。プレフィルター14は、薄い金属プレート16からなり、そしてこれらの内の最も外側の2つに集イオン電圧を設定する。電界をもつチャネルはイオンを取り去るため、ここではシャットオフチャネルと呼ぶ。シャットオフチャネルは、実際のガス流にほとんど作用しない。最も中心のプレートを接地するか、同じ相互電位に設定して、間に電界を発生することなく、イオンが通過できるようにする。このため、エミッションチャネルaが、これら中心プレート間に形成する。このように構成しているため、異なる移動度をもつイオンを異なる位置に正確に集めることができる。好適な構成では、最も中心のチャネルの横断面表面積を全横断面表面積に対して小さく設定するため、多くのエミッションチャネルが存在することになる。なお、図示を簡単にするため、図には、本発明の技術思想を説明するために必要なだけのギャップを図示してある。
【0017】
図3bでは、上記と異なり、実際に静的な小電界またはゆっくり変化する(走査)小電界がある場合には、エミッションチャネルをフィルターとして採用できる。図3bには、境界13a、13bを図示する。即ち、境界線13aは、移動度がDMSまたはDCエミッション電界によって制限され、より大きな移動度をもつイオンが通過しない線である。境界線13bは、移動度のより小さいイオンがDMSまたはDC電界から放出され、測定領域まで通過移動して、分離される線である。
【0018】
また、エミッションチャネルはフィルターとしても利用できる。この場合、二通りがある。
エミッションチャネルの場合、ここに電圧(電界)を設定することによって、移動度の大きいイオンが測定チャネルに進むことを制限できる。エミッションチャネルの電圧は、移動度を決定するもので、これ以上の移動度のイオンは、進むことができない。この電圧を段階的に設定することによって、適当なエミッションウィンドウを選択使用でき、測定精度を大幅に改善できる。
エミッションチャネルをDMSフィルターとして使用することによって、これらイオンのみを測定領域に流入させることができる。即ち、これらイオンは、DMSフィルターの補償電圧、時間、電界強度のそれぞれに対して相対的に非対称的な電界を通過できる。
【0019】
上記方法については、測定速度を改善できるように実施できる。
【0020】
図4に、プレフィルター14のバリア‐プレート構成を実現する一つの別な方法を示す。センサー本体は、参照符号20で示す。図4の方法を実施するさいには、センサー本体外でイオンをイオン化し、イオン化空気をバリアプレート直前の流れチャネルに左から送りこむ。図4のプロトタイプでは、ストリップ14.1は、電圧場に対して左側にある。大量生産する場合には、組み立て孔やそれ以外の個別接続点を介してプレートを電圧源に接続する。
【0021】
図5に、原理的な二次構成の概略を図示する。イオンJ1−nは、流れチャネルの全領域からプレフィルターに到達し、プレフィルター14の中心のみから出ていく。図示を簡単にするため、三つの測定チャネルe1-e3、即ち測定ストリップを示すが、実際にはこれ以上の数の測定ストリップを使用する。
【0022】
プレフィルターの原理的構成を図6に示す。Eは全体として電界を示し、Eの後に続く数字は、実際の構成では、各電界が、異なる大きさをもつことができることを意味する。最適な状態では、電界強度がゼロになるように最も中心の電界(E=0)を設定するか、あるいは対象の流れチャネルに可変電界を使用する。この場合、エミッションチャネルはaで示す。他の電界を使用すると、イオンを取り去ることができ、多チャネルを使用すると、チャネル全体にわたって流れ抵抗を均一化することによって、チャネル流れを等質化できる。
【0023】
図7に、絶縁パック20´を示すとともに、プレフィルター14の前でカットされた流れチャネル12の横断面を示す。ガス流は、図の左側から流入し、チャネル内を通過し、プレフィルター14を通過して、流れチャネルの端部に設けた開口(図示省略)から流出する。閉じた構成を実現する絶縁パック20´上下の測定プレートは、図7には図示していない。図7は、系の全体構成を示す図で、絶縁プレートと電界プレートとを交互に配設して構成したものである。
【0024】
一定の電界または可変電界を利用して、一つかそれ以上の場所で、位置に関係なくイオンを測定できる。いずれも特許文献に記載されている。上記二次ガス測定は、測定位置にできるだけ近い位置にイオンを発生し、これを集める前に、電界によって、あるいは流れ制御を目的としたプレートにより機械的手段によってさらに応用展開できる。これら技術は、測定されているイオンが発生する流れ信号を最大化することを意図している。
【0025】
図8は、既述の技術に多少の変更を加えた二次技術の概略図である。この実施態様では、極性が異なるイオンを電界によってそれぞれ独立して案内する。本発明は、イオンの再結合を遅らせ、測定位置に到達するイオンの数を多くし、これを介して測定されている電流に達するイオンの数を多くすることを意図している。移動度の分離により中心部から到達するイオンが移動するため、これに応じてエミッションギャップを設定できる。
【0026】
以上は、電気機械的な二次ガス測定の概略である。流れチャネル12の高さは、例えば、5mmに設定できる。放射線源は、この場合、流れチャネルに設定できる(ステージ1:イオン化領域)。図8において、管内部の破線は、放射線源の概略を示す線である。発生直後に、電界によって異なる極性を相互分離する(ステージ2:イオンの極性による前段分離)。極性が分離すると、測定極性が中心部からわずかにずれる。これは、広い領域にわたって流れチャネルの中心部の高速を利用するためである。
【0027】
移動度の測定位置にできるだけ近い位置でイオン化を実施すると、測定されているイオンの数を最大化できる。極性を相互分離すると、再結合速度が低下し、これが恐らくイオンが目に見えて増加する効果をもつものである。イオンプレフィルターは、その主な作用に加えて、放射線源のα粒子のシェードとしても作用する(ステージ3:イオンバリア場およびエミッションチャネルa)。即ち、α粒子がイオン移動度測定室に流入することを防止できる(ステージ4:移動度の測定)。
【0028】
上記のガス測定に加えて、二次ガス測定構成は、いわゆるDMS構成としても実施できる。この場合、二次状態を作り出すことを目的としたフィルターを利用して、強度の強い、非対称的高周波数場を形成する。DMS測定原理それ自体は公知であるが、二次的な測定への応用は新規である。
【0029】
図9は、イオン移動度分光計のセンサー部材20″をより詳しく示す図である。即ち、図9は、測定チャネル12におけるセンサー部材の長手方向横断面を、そしてその上のイオン室18の水平方向断面を示す。
【0030】
この場合、底部の測定プレート21は、より大きな回路基板の一部を構成し、残りの部分は、装置の電子機器である。センサー部材は、積層構成からなり、最も下の層が支持プレート22で、この支持プレート22の上に、下部測定プレート21、チャネルプレート23、上部測定プレート24、およびより厚みのあるコネクタープレート26がある。
【0031】
サンプルガスは、入口“in”から、所定の放射線源8(図示省略)が配設されているイオン化室18内に入る。イオン化サンプルガスは、中間の接続部19を介して細長い測定室12に導かれる。なお、この測定室の動作については、後述する。測定室12から、サンプルガスは出口“out”から取り出され、周囲の空気に放出されるか、あるいは閉鎖系の場合には、開始点に戻される。
【0032】
公知の方法と同様に、測定室12には、それぞれ電極対(例えば、e1+、e1−)として動作する測定ストリップ(e1、e2、e3)を設定し、その電圧を一定に維持し、電流を測定する。
【0033】
この図において、イオンプレフィルター14は、図示は横断面図ではなく、従って残りの構成の断面からの突出部も図示は横断面図ではない。同時に、これは、測定室12の幅について何らかの考えを与えるものである。既に説明したように、プレフィルター14は、選択された電位に接続した薄い金属プレートからなる。エミッションチャネルプレート、即ち、一般的にいって最も中心のプレートは、接地する。(図示しない)他の側から電圧をこれらプレートに導く。
【0034】
次に、イオン移動度分光計の最も簡単な第2の実施態様を図10に示す。センサー部材は、図9と同様に横断面図として示す。機能が同じ部材については、同じ参照符号で示す。即ち、入口を備えたイオン室18、測定室12、イオン室18を測定室12に接続する中間接続部19、測定室端部の出口、およびプレート22、21、23、24、25、26、そしてこれらプレートに加えて使用するプレート22a、24a−24dからなるプレート積層体である。
【0035】
積層構造は上記と同じであり、プレートはいずれも厚みが等しいが、プレート厚みの部分を取り去る代わりに、より薄い別なプレート使用する。プレフィルター14については、プレート21および24の選択された点で、測定室を横切ってネック16´が存在するように形成する。これらネックには、図7および図9における各プレート16に対応するプレートの表面に導体がある。従って、電極が、各回路基板の要部になる。ネック16´(本実施態様の場合個数は3)間に分割チャネルを形成する。最も中心にあるチャネルがエミッションチャネル(a)であり、外側の2つのチャネルがシャットオフチャネルである。エミッションチャネルの静的ゼロ場を作り出す電極は、エミッションチャネルの内側か、あるいは絶縁体の外側のいずれかにある。エミッションチャネルの電極は、シャットオフチャネルの最近接電極に対して、両側において対の形で個別であるか、あるいは共通な電極である。
【0036】
当然ながら、積層構成は、これ以外にも多くの方法で形成できる。積層構成の中心的な特徴は、チャネル間隙および電極である。測定室12は、プレフィルター14の後では、狭くなり、エミッションチャネルaよりもかなり狭いチャネル12´になる。チャネル12´内には、セパレーター電極(図示省略)があり、その高さは、プレフィルターの高さのほぼ20%(全体として10〜30%)であり、幅は、全体を通して同じである。この構成は、驚くほど機能的である上に安定していることがわかっている。エミッション流れは、縁部からくるシャットオフ流れの間で狭くなり、またシャットオフ流れは、合流して太くなるが、測定チャネル12´には混入しない。この場合、イオンは、測定チャネルのより小さな横断面で狭い部分に正確に案内され、距離間隔が正確に得られる。分離度は電圧が低いほどよくなる。これは、横断距離が短く(0.2〜1mm、好ましくは0.4〜0.7mm)なるからである。一般的にいって、一つか二つのシャットオフチャネルを使用すると、イオンを含むエミッション流れを、より小さな横断面の選択された点まで正確に案内できる。
【0037】
図11は、簡単な構成の別な実施態様を示す図である。厚みの等しい測定室内に、プレフィルターを配設し、シャットオフチャネルプレート16aの長さを速度プロファイルとは逆に設定する。即ち、プレートの長さは、エミッションチャネルに向かって短くなる。エミッションチャネルaのプレートは、さらに、プレート体の残りに対してわずかに突出している。これを利用すると、電界の形状および流れプロファイルを調整できる。分離は、前記と同じようにして生じる。
【0038】
上記の実施態様では、サンプルガスの流速として1〜3リットル/分、好ましくは約2リットル/分を使用する。
【符号の説明】
【0039】
10:ガス流
12:イオン移動度測定室
14:プレフィルター
16:電極
16´:ネック
18:イオン室
20:センサー
22、21、23、24、26:プレート
E:電界
J1−n:イオン
e1、e2、e3:測定電極対
〈a〉:エミッション流れ
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下のステージからなるガス測定方法に関する。
ガス流中のサンプルガスをイオン化するステージ;
イオン化されたガス流を細長いイオン移動度測定室に導き、その所定の流れ断面を通過させるステージ;および
横断電界、および上記測定室の壁に配設した少なくとも一つの測定電極対を利用して、イオン移動度の異なるイオンを分離するステージ。
また、本発明は、この方法を実施するイオン移動度分光計(IMS)にも関する。
【背景技術】
【0002】
イオン移動度分光分析(IMS)は、空気中のガス状不純物を測定する方法である(Eiceman & Karpas、2005)。イオンの移動度は、多くの方法で測定されている。最もよく利用されている方法は、飛行時間IMS、即ちドリフトIMSである。公知のもう一つの方法は、吸引IMSである。これは、イオンとエーロゾル粒子の両者移動度を測定するために利用されている。吸引IMSは、イオンが空気流中を移動し、このさいに、よく発生することだが、電界が空気流に対して垂直になる現象に基づいている。電界を一定に維持すると、イオンがその電気移動度に基づいて異なる位置に移動し、この電気移動度は、測定位置に準じて決まる。時間に対して電界を変えることによっても測定は、実施できる。この場合は、異なる移動度を示すイオンは、異なる時間で測定されることになる。
【0003】
US2007/0023647A1(Zimmermann)には、一つのイオン移動度分光計が開示されている。この分光計の場合、サンプルガスをイオン化し、測定電極の手前に設けられた、移動ガス流の横断面の狭い点にこれを案内する。これは、いわゆる二次的な吸引IMSといえる。イオン化サンプルガスが、細い流れとして、移動ガスおよび電界の流れ横断面の中心に案内された時点で、すべてのイオンが、連続電極に対して同じ距離の移動を開始するのが理想である。分子の横断移動に影響する変数は、この場合、分子の質量および電荷である。横断面全体からの(イオン)流れと比較した場合、チャネルの分離精度が大きく向上する。ところが、移動ガスおよび被イオン化サンプルガスを制御する必要があるため、構成が複雑になる。一つの流れ成分中に最少の乱れが発生しても、比較的大きな測定誤差が出る。同様な構成は、US2006/0054804A1(Wexler)にも開示されている。
【0004】
WO2008/008826A2には、いくつかの異なるタイプのIMS装置が開示されている。公報の図5および図6には、Bradbury−Nielsen多成分ゲートを使用し、1Mhz程度の周波数を走査DC電圧と併用したIMS装置が図示されている。いくつかの相のRF源とDC走査を併用したこのような電極構成は、きわめて複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US2007/0023647A1
【特許文献2】US2006/0054804A1
【特許文献3】WO2008/008826A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
原理的には、サンプルガスを中心に案内することが可能であるが、実際に実現することは難しく、この理由から、上記公報には、サンプルガスを移動ガス流れの縁部に案内するモデルが開示されている。このような案内は、移動ガス流の放物線状の速度プロファイルの点で最適なものではなく、測定精度が落ちる原因になる。
【0007】
図1に、吸引セルを実施する従来の方法を図示する。イオンJ1−nは、流れチャネルの全領域から個別の測定ストリップe1−e3に達する。流れの速度プロファイルによりイオンの多くは、中心から来るが、流れの縁部から来るイオンのために、測定精度がかなり落ちる。図2に、いわゆるSWEEPセル構成を図示する。この構成の場合、イオンJ1nは、流れチャンネルの全領域から個々の測定ストリップe1-e2に達する。この場合、イオンの分離は、測定ストリップの電界を変えることによって生じる。この方法にも、イオンの広い到着分布を原因として前記と同じ問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、従来と比較して構成が簡単なガスサンプル測定方法および装置、特に、いわゆる二次吸引IMSを実施する方法および装置を提供することである。本発明方法の特徴は、請求項1に、そして対応するIMS装置の特徴は、請求項6に記載した通りである。本発明のフィルター作用技術によって、エミッション流れを流れ横断面の中心に設定できるため、流れの速度プロファイル効率を最大化できる。上記のZimmermannの装置よりも構成をかなり簡単にできる。最も簡単な構成では、エミッション流れに絶対0場を設定できるが、この場合にも、より高度の実施態様では、小さな電界およびコレクター電極を利用してイオンを選択でき、エミッションチャネルを通過しているイオンのごく一部を分離することができる。
【0009】
イオン捕集流、即ち上記のシャットオフチャネルの電界は、イオンの移動度に対して静的である。本発明実施態様では、(100Hz未満の、より普通の状態では0〜50Hz)のゆっくり変化する電界、即ち絶対的な静的電界を利用できる。例えば、1秒間を例に取ると、ゆっくり変化する電界を使用して、異なる移動度のイオンの分離を最適化できる。プレフィルターの電界についてはその長さを流れ方向に十分に長く設定できるため、シャットオフチャネルがイオンを捕集でき、エミッションチャネルの作用を確保できる。プレフィルターの後に、循環路に従って、分離電極を測定室内に軸方向に設定できる。
【0010】
エミッションチャネルの静電界の場合、両側において同じ電位の電極が必要である。なお、静電界の各電極は、絶縁プレートの反対側に設置すると、同時にシャットオフチャネルの第2電極になる。
【0011】
本発明のイオンフィルター作用技術を用いると、イオンフィルター作用のない検出器と比較した場合、かなり高い測定精度を実現できる。また、本発明のフィルター作用技術を利用すると、エミッションチャネルを流れの横断面の中心に設定できるため、流れの速度プロファイル効率を最大化できる。構成は、上記のZimmermannの装置よりもかなり簡単である。
【0012】
サンプル空気は、例えばα放射線またはβ放射線によってイオン化する。このイオンは、小さな断面のみから測定部に流入する。本発明では、イオンは、いわゆるシャットオフ流れから流れチャネルの縁部を介してフィルター作用を受け、そしていわゆるエミッション流れから流れチャンネルの中心部を介して移動度測定部に流入する。これらチャネルについては、シャットオフチャネルおよびエミッションチャネルと呼ぶ。これにより、流れチャネルの全領域からイオンが測定域に流入する場合(いわゆる一次吸入IMS)よりも移動度解像度が大きく向上する。エミッション流れ周囲のシャットオフ流れにより、流れの速度プロファイルを制御することができる。
【0013】
本発明の一つの実施態様では、流れチャネル内に極めて薄い金属プレート(このうちの一部において電圧が発生する)を配設することによってイオンを取り除く。イオンは、一つのギャップから測定室に流入する。この場合、エミッションギャップは、チャネルの中心部にあり、側部には全く存在しない。エミッションギャップを中心チャネルに設定するのが有利である。流れに対してイオンが相対的に分布され、チャネルの中心での単位時間当たりのイオン密度が最大になるからである。イオンを同一電位に設定することによって、最も中心にあるか(あるいはそれ以外に選択された)ギャップにイオンが流入する。これ以外の場所にあるイオンについては、適当なバリア場によって取り去る。十分に薄いプレートを使用しているため、流れが乱れることはなく、却って、流れが各ギャップを通過するようにチャネルの流れ抵抗が均等化する。本発明の好適な構成では、流れ案内プレートの寸法を相互に変えて、流れの分布を制御できるようにする。
【0014】
本発明の携帯式二次吸入IMSの特徴は、以下のようにまとめることができる。例えば、放射線源によって流れチャネル高さの全体にわたってイオンを発生することができる。流れチャネルを分割するプレート構造体によって任意の場所からくるイオンをフィルター作用によって取り去ることによって、限られた領域から、好ましくは、流れの速度分布の最大点を介してイオンが測定室に流入する。ここでは、中心部から来るイオンを移動度測定室に流入させることによって、流れチャネルの中心部における(単位時間当たりの)イオン密度がより高くなることを利用する。例えば、電界によってチャネル中心部におけるイオン密度を高くすることによって、エミッションプレート構造体の手前にある電界によってイオンを案内できる。このエミッションプレート構造体は、シェードとしても作用するため、測定室にイオン化放射線が測定室に流入することを防止できる。この構成によると、測定をコンパクトにできる。また、この構成を利用すると、DMS/FAIMS型測定を実施できる。さらに、移動度分布の目的部分を二次的に発生したイオン流から選択するときには、この構成をいわゆるSWEEP型測定と併用できる。
以下、実施例により、また添付図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の吸引セルを使用する方法を示す図である。
【図2】いわゆるSWEEPセルの構成を示す図である。
【図3a】別な二次吸引IMSセルを示す概略図である。
【図3b】図3aの実施態様の変形例を示す図である。
【図4】プレフィルターのバリアプレート構造体の一例を示す図である。
【図5】別な二次吸引IMSの構成を示す図である。
【図6】プレフィルターの横断面図である。
【図7】プレフィルターの手前にある流れチャネルの横断面図である。
【図8】多少変更を加えた従来の二次吸引IMSセルを示す概略図である。
【図9】吸引IMSセルの応用例を示す軸側横断面図である。
【図10】吸引IMSセルの第2応用例を示す軸側横断面図である。
【図11】従来の構成よりも簡単な、吸引IMSセルの第3応用例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
位置分離二次吸引IMSの動作について、図3aに概略図として図示する。イオン化ガス流10を測定チャネル12に案内し、これによって測定チャネル内に、一つの代表例としての放物線状速度プロファイルが生成する。実際の測定という点からみると、中心成分が位置分離セルであり、K1、K2、K3で示すように、異なる移動度をもつイオンが異なる位置に集められる。空気流のプロファイルも放物線状であり、中心で流れが最大になる。流れプロファイルによって、より多くのイオンが単位時間内で縁部よりも中心部に到達する。プレフィルター14によって、イオンは縁部から取り集められる。プレフィルター14は、薄い金属プレート16からなり、そしてこれらの内の最も外側の2つに集イオン電圧を設定する。電界をもつチャネルはイオンを取り去るため、ここではシャットオフチャネルと呼ぶ。シャットオフチャネルは、実際のガス流にほとんど作用しない。最も中心のプレートを接地するか、同じ相互電位に設定して、間に電界を発生することなく、イオンが通過できるようにする。このため、エミッションチャネルaが、これら中心プレート間に形成する。このように構成しているため、異なる移動度をもつイオンを異なる位置に正確に集めることができる。好適な構成では、最も中心のチャネルの横断面表面積を全横断面表面積に対して小さく設定するため、多くのエミッションチャネルが存在することになる。なお、図示を簡単にするため、図には、本発明の技術思想を説明するために必要なだけのギャップを図示してある。
【0017】
図3bでは、上記と異なり、実際に静的な小電界またはゆっくり変化する(走査)小電界がある場合には、エミッションチャネルをフィルターとして採用できる。図3bには、境界13a、13bを図示する。即ち、境界線13aは、移動度がDMSまたはDCエミッション電界によって制限され、より大きな移動度をもつイオンが通過しない線である。境界線13bは、移動度のより小さいイオンがDMSまたはDC電界から放出され、測定領域まで通過移動して、分離される線である。
【0018】
また、エミッションチャネルはフィルターとしても利用できる。この場合、二通りがある。
エミッションチャネルの場合、ここに電圧(電界)を設定することによって、移動度の大きいイオンが測定チャネルに進むことを制限できる。エミッションチャネルの電圧は、移動度を決定するもので、これ以上の移動度のイオンは、進むことができない。この電圧を段階的に設定することによって、適当なエミッションウィンドウを選択使用でき、測定精度を大幅に改善できる。
エミッションチャネルをDMSフィルターとして使用することによって、これらイオンのみを測定領域に流入させることができる。即ち、これらイオンは、DMSフィルターの補償電圧、時間、電界強度のそれぞれに対して相対的に非対称的な電界を通過できる。
【0019】
上記方法については、測定速度を改善できるように実施できる。
【0020】
図4に、プレフィルター14のバリア‐プレート構成を実現する一つの別な方法を示す。センサー本体は、参照符号20で示す。図4の方法を実施するさいには、センサー本体外でイオンをイオン化し、イオン化空気をバリアプレート直前の流れチャネルに左から送りこむ。図4のプロトタイプでは、ストリップ14.1は、電圧場に対して左側にある。大量生産する場合には、組み立て孔やそれ以外の個別接続点を介してプレートを電圧源に接続する。
【0021】
図5に、原理的な二次構成の概略を図示する。イオンJ1−nは、流れチャネルの全領域からプレフィルターに到達し、プレフィルター14の中心のみから出ていく。図示を簡単にするため、三つの測定チャネルe1-e3、即ち測定ストリップを示すが、実際にはこれ以上の数の測定ストリップを使用する。
【0022】
プレフィルターの原理的構成を図6に示す。Eは全体として電界を示し、Eの後に続く数字は、実際の構成では、各電界が、異なる大きさをもつことができることを意味する。最適な状態では、電界強度がゼロになるように最も中心の電界(E=0)を設定するか、あるいは対象の流れチャネルに可変電界を使用する。この場合、エミッションチャネルはaで示す。他の電界を使用すると、イオンを取り去ることができ、多チャネルを使用すると、チャネル全体にわたって流れ抵抗を均一化することによって、チャネル流れを等質化できる。
【0023】
図7に、絶縁パック20´を示すとともに、プレフィルター14の前でカットされた流れチャネル12の横断面を示す。ガス流は、図の左側から流入し、チャネル内を通過し、プレフィルター14を通過して、流れチャネルの端部に設けた開口(図示省略)から流出する。閉じた構成を実現する絶縁パック20´上下の測定プレートは、図7には図示していない。図7は、系の全体構成を示す図で、絶縁プレートと電界プレートとを交互に配設して構成したものである。
【0024】
一定の電界または可変電界を利用して、一つかそれ以上の場所で、位置に関係なくイオンを測定できる。いずれも特許文献に記載されている。上記二次ガス測定は、測定位置にできるだけ近い位置にイオンを発生し、これを集める前に、電界によって、あるいは流れ制御を目的としたプレートにより機械的手段によってさらに応用展開できる。これら技術は、測定されているイオンが発生する流れ信号を最大化することを意図している。
【0025】
図8は、既述の技術に多少の変更を加えた二次技術の概略図である。この実施態様では、極性が異なるイオンを電界によってそれぞれ独立して案内する。本発明は、イオンの再結合を遅らせ、測定位置に到達するイオンの数を多くし、これを介して測定されている電流に達するイオンの数を多くすることを意図している。移動度の分離により中心部から到達するイオンが移動するため、これに応じてエミッションギャップを設定できる。
【0026】
以上は、電気機械的な二次ガス測定の概略である。流れチャネル12の高さは、例えば、5mmに設定できる。放射線源は、この場合、流れチャネルに設定できる(ステージ1:イオン化領域)。図8において、管内部の破線は、放射線源の概略を示す線である。発生直後に、電界によって異なる極性を相互分離する(ステージ2:イオンの極性による前段分離)。極性が分離すると、測定極性が中心部からわずかにずれる。これは、広い領域にわたって流れチャネルの中心部の高速を利用するためである。
【0027】
移動度の測定位置にできるだけ近い位置でイオン化を実施すると、測定されているイオンの数を最大化できる。極性を相互分離すると、再結合速度が低下し、これが恐らくイオンが目に見えて増加する効果をもつものである。イオンプレフィルターは、その主な作用に加えて、放射線源のα粒子のシェードとしても作用する(ステージ3:イオンバリア場およびエミッションチャネルa)。即ち、α粒子がイオン移動度測定室に流入することを防止できる(ステージ4:移動度の測定)。
【0028】
上記のガス測定に加えて、二次ガス測定構成は、いわゆるDMS構成としても実施できる。この場合、二次状態を作り出すことを目的としたフィルターを利用して、強度の強い、非対称的高周波数場を形成する。DMS測定原理それ自体は公知であるが、二次的な測定への応用は新規である。
【0029】
図9は、イオン移動度分光計のセンサー部材20″をより詳しく示す図である。即ち、図9は、測定チャネル12におけるセンサー部材の長手方向横断面を、そしてその上のイオン室18の水平方向断面を示す。
【0030】
この場合、底部の測定プレート21は、より大きな回路基板の一部を構成し、残りの部分は、装置の電子機器である。センサー部材は、積層構成からなり、最も下の層が支持プレート22で、この支持プレート22の上に、下部測定プレート21、チャネルプレート23、上部測定プレート24、およびより厚みのあるコネクタープレート26がある。
【0031】
サンプルガスは、入口“in”から、所定の放射線源8(図示省略)が配設されているイオン化室18内に入る。イオン化サンプルガスは、中間の接続部19を介して細長い測定室12に導かれる。なお、この測定室の動作については、後述する。測定室12から、サンプルガスは出口“out”から取り出され、周囲の空気に放出されるか、あるいは閉鎖系の場合には、開始点に戻される。
【0032】
公知の方法と同様に、測定室12には、それぞれ電極対(例えば、e1+、e1−)として動作する測定ストリップ(e1、e2、e3)を設定し、その電圧を一定に維持し、電流を測定する。
【0033】
この図において、イオンプレフィルター14は、図示は横断面図ではなく、従って残りの構成の断面からの突出部も図示は横断面図ではない。同時に、これは、測定室12の幅について何らかの考えを与えるものである。既に説明したように、プレフィルター14は、選択された電位に接続した薄い金属プレートからなる。エミッションチャネルプレート、即ち、一般的にいって最も中心のプレートは、接地する。(図示しない)他の側から電圧をこれらプレートに導く。
【0034】
次に、イオン移動度分光計の最も簡単な第2の実施態様を図10に示す。センサー部材は、図9と同様に横断面図として示す。機能が同じ部材については、同じ参照符号で示す。即ち、入口を備えたイオン室18、測定室12、イオン室18を測定室12に接続する中間接続部19、測定室端部の出口、およびプレート22、21、23、24、25、26、そしてこれらプレートに加えて使用するプレート22a、24a−24dからなるプレート積層体である。
【0035】
積層構造は上記と同じであり、プレートはいずれも厚みが等しいが、プレート厚みの部分を取り去る代わりに、より薄い別なプレート使用する。プレフィルター14については、プレート21および24の選択された点で、測定室を横切ってネック16´が存在するように形成する。これらネックには、図7および図9における各プレート16に対応するプレートの表面に導体がある。従って、電極が、各回路基板の要部になる。ネック16´(本実施態様の場合個数は3)間に分割チャネルを形成する。最も中心にあるチャネルがエミッションチャネル(a)であり、外側の2つのチャネルがシャットオフチャネルである。エミッションチャネルの静的ゼロ場を作り出す電極は、エミッションチャネルの内側か、あるいは絶縁体の外側のいずれかにある。エミッションチャネルの電極は、シャットオフチャネルの最近接電極に対して、両側において対の形で個別であるか、あるいは共通な電極である。
【0036】
当然ながら、積層構成は、これ以外にも多くの方法で形成できる。積層構成の中心的な特徴は、チャネル間隙および電極である。測定室12は、プレフィルター14の後では、狭くなり、エミッションチャネルaよりもかなり狭いチャネル12´になる。チャネル12´内には、セパレーター電極(図示省略)があり、その高さは、プレフィルターの高さのほぼ20%(全体として10〜30%)であり、幅は、全体を通して同じである。この構成は、驚くほど機能的である上に安定していることがわかっている。エミッション流れは、縁部からくるシャットオフ流れの間で狭くなり、またシャットオフ流れは、合流して太くなるが、測定チャネル12´には混入しない。この場合、イオンは、測定チャネルのより小さな横断面で狭い部分に正確に案内され、距離間隔が正確に得られる。分離度は電圧が低いほどよくなる。これは、横断距離が短く(0.2〜1mm、好ましくは0.4〜0.7mm)なるからである。一般的にいって、一つか二つのシャットオフチャネルを使用すると、イオンを含むエミッション流れを、より小さな横断面の選択された点まで正確に案内できる。
【0037】
図11は、簡単な構成の別な実施態様を示す図である。厚みの等しい測定室内に、プレフィルターを配設し、シャットオフチャネルプレート16aの長さを速度プロファイルとは逆に設定する。即ち、プレートの長さは、エミッションチャネルに向かって短くなる。エミッションチャネルaのプレートは、さらに、プレート体の残りに対してわずかに突出している。これを利用すると、電界の形状および流れプロファイルを調整できる。分離は、前記と同じようにして生じる。
【0038】
上記の実施態様では、サンプルガスの流速として1〜3リットル/分、好ましくは約2リットル/分を使用する。
【符号の説明】
【0039】
10:ガス流
12:イオン移動度測定室
14:プレフィルター
16:電極
16´:ネック
18:イオン室
20:センサー
22、21、23、24、26:プレート
E:電界
J1−n:イオン
e1、e2、e3:測定電極対
〈a〉:エミッション流れ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流(10)におけるサンプルガスをイオン化するステージ、
イオン化されたガス流を細長いイオン移動度測定室(12)に導くステージ、および
横断電界および上記測定室の壁部に配設した少なくとも一つの測定電極対(e1、e2、e3)を利用して、測定室(12)内の、移動度の異なるイオン(J1−n)を分離するステージからなるガス状物質の測定方法において、
測定電極(e1、e2、e3)手前の流れ方向における所定の選択された距離において、上記ガス流を少なくとも2つの部分からなる流れに分割してイオンをプレフィルター処理(14)し、このプレフィルター処理において上記の選択された点における分割流れのうち一方をエミッション流れ(a)とし、そして他方をシャットオフ流れとし、そしてイオン(J1−n)の移動度に対する静電界を利用して、各シャットオフ流れからの上記イオン化ガス流れからイオン(J1−n)をフィルター処理するさいに、エミッション流れ(a)に設定された0場を利用して、エミッション流れ(a)の少なくとも選択されたイオンをプレフィルター(14)の後ろに設けた分離室に流入させることを特徴とするガス状物質の測定方法。
【請求項2】
少なくとも3つの部分からなる分割流れを作り、ガス流の速度分布の実質的に最大の点にエミッション流れ(a)を設定する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
長さが縁部から上記エミッション流れに向かって短くなる分割チャネルによって上記分割流れを作り出す請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プレフィルター処理後、ガス流をより小さな横断面に導き、イオンを含むエミッション流れ(a)を、少なくとも一つの非イオン化シャットオフ流れによって、上記のより小さな横断面の正確な設定点に案内する請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
プレフィルター処理前に、極性の違いに基づいてイオンを相互分離する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
測定室(12)、
ガス流を作り出しこれを測定室(12)に案内する手段、
測定室(12)手前のガス流をイオン化する手段(18)、
測定室(12)の選択された長さ、および測定室(12)の壁部の少なくとも一つの測定電極対(e1、e2、e3)にわたって横断測定電界を発生する手段、および
各測定電極対(e1、e2、e3)からのイオン流を測定する手段を有する、ガス状物質を測定するイオン移動度分光計において、
上記測定室が、測定電極対(e1、e2、e3)手前の流れ方向に設けられ、横断面における上記測定室を少なくとも2つの平行分割チャネルに分割し、分割流を作り出すプレフィルター(一方の分割チャネルをエミッションチャネル(a)とし、他方の分割チャネルシャットオフチャネルとする)、
イオン移動度に関する静電界(E0-E6)を発生する手段、
各シャットオフチャネルに設けられ、これら分割チャネルの分割流を集める集イオン電極(16)、および
横断面における選択された点で上記エミッションチャネル(a)を形成し、出来るだけ妨害なくイオンを移動させる、一つの電気的に受動態の分割チャネルを有することを特徴とするイオン移動度分光計。
【請求項7】
選択された分割チャネル数が少なくとも3で、シャットオフチャネル間に上記エミッションチャネルを配設した請求項6に記載のイオン移動度分光計。
【請求項8】
上記測定室を選択された長さにわたって狭い部分に分割する複数の薄い金属プレート(16)を利用して、分割チャネルを形成した請求項6または7に記載のイオン移動度分光計。
【請求項9】
プレフィルター(14)を3〜11の、好ましくは5〜9の分割チャネルから構成した請求項6または7に記載のイオン移動度分光計。
【請求項10】
相互積層したプレート(22、21、22、23、23、24、26)で構成し、プレート開口を相互形成して、測定室(12)および他のチャネル空間を作り出すプレート積層体で構成した請求項6または7のイオン移動度分光計において、選択されたプレートに、測定室(12)に突出するネック(16´)によってプレフィルター(14)の分割チャネルを形成し、間のプレートの対応する位置に開口を形成したことを特徴とするイオン移動度分光計。
【請求項11】
さらに、電圧源をもつ複数の電極をプレフィルター手前に設け、電界によって極性の異なるイオンを相互分離する請求項6〜9のいずれか1項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項12】
プレフィルターの集イオン電極(16)をそれぞれを回路基板部分で構成し、これから上記プレート(22、21、22、23、23、24、26)を構成した請求項11に記載のイオン移動度分光計。
【請求項1】
ガス流(10)におけるサンプルガスをイオン化するステージ、
イオン化されたガス流を細長いイオン移動度測定室(12)に導くステージ、および
横断電界および上記測定室の壁部に配設した少なくとも一つの測定電極対(e1、e2、e3)を利用して、測定室(12)内の、移動度の異なるイオン(J1−n)を分離するステージからなるガス状物質の測定方法において、
測定電極(e1、e2、e3)手前の流れ方向における所定の選択された距離において、上記ガス流を少なくとも2つの部分からなる流れに分割してイオンをプレフィルター処理(14)し、このプレフィルター処理において上記の選択された点における分割流れのうち一方をエミッション流れ(a)とし、そして他方をシャットオフ流れとし、そしてイオン(J1−n)の移動度に対する静電界を利用して、各シャットオフ流れからの上記イオン化ガス流れからイオン(J1−n)をフィルター処理するさいに、エミッション流れ(a)に設定された0場を利用して、エミッション流れ(a)の少なくとも選択されたイオンをプレフィルター(14)の後ろに設けた分離室に流入させることを特徴とするガス状物質の測定方法。
【請求項2】
少なくとも3つの部分からなる分割流れを作り、ガス流の速度分布の実質的に最大の点にエミッション流れ(a)を設定する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
長さが縁部から上記エミッション流れに向かって短くなる分割チャネルによって上記分割流れを作り出す請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
プレフィルター処理後、ガス流をより小さな横断面に導き、イオンを含むエミッション流れ(a)を、少なくとも一つの非イオン化シャットオフ流れによって、上記のより小さな横断面の正確な設定点に案内する請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
プレフィルター処理前に、極性の違いに基づいてイオンを相互分離する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
測定室(12)、
ガス流を作り出しこれを測定室(12)に案内する手段、
測定室(12)手前のガス流をイオン化する手段(18)、
測定室(12)の選択された長さ、および測定室(12)の壁部の少なくとも一つの測定電極対(e1、e2、e3)にわたって横断測定電界を発生する手段、および
各測定電極対(e1、e2、e3)からのイオン流を測定する手段を有する、ガス状物質を測定するイオン移動度分光計において、
上記測定室が、測定電極対(e1、e2、e3)手前の流れ方向に設けられ、横断面における上記測定室を少なくとも2つの平行分割チャネルに分割し、分割流を作り出すプレフィルター(一方の分割チャネルをエミッションチャネル(a)とし、他方の分割チャネルシャットオフチャネルとする)、
イオン移動度に関する静電界(E0-E6)を発生する手段、
各シャットオフチャネルに設けられ、これら分割チャネルの分割流を集める集イオン電極(16)、および
横断面における選択された点で上記エミッションチャネル(a)を形成し、出来るだけ妨害なくイオンを移動させる、一つの電気的に受動態の分割チャネルを有することを特徴とするイオン移動度分光計。
【請求項7】
選択された分割チャネル数が少なくとも3で、シャットオフチャネル間に上記エミッションチャネルを配設した請求項6に記載のイオン移動度分光計。
【請求項8】
上記測定室を選択された長さにわたって狭い部分に分割する複数の薄い金属プレート(16)を利用して、分割チャネルを形成した請求項6または7に記載のイオン移動度分光計。
【請求項9】
プレフィルター(14)を3〜11の、好ましくは5〜9の分割チャネルから構成した請求項6または7に記載のイオン移動度分光計。
【請求項10】
相互積層したプレート(22、21、22、23、23、24、26)で構成し、プレート開口を相互形成して、測定室(12)および他のチャネル空間を作り出すプレート積層体で構成した請求項6または7のイオン移動度分光計において、選択されたプレートに、測定室(12)に突出するネック(16´)によってプレフィルター(14)の分割チャネルを形成し、間のプレートの対応する位置に開口を形成したことを特徴とするイオン移動度分光計。
【請求項11】
さらに、電圧源をもつ複数の電極をプレフィルター手前に設け、電界によって極性の異なるイオンを相互分離する請求項6〜9のいずれか1項に記載のイオン移動度分光計。
【請求項12】
プレフィルターの集イオン電極(16)をそれぞれを回路基板部分で構成し、これから上記プレート(22、21、22、23、23、24、26)を構成した請求項11に記載のイオン移動度分光計。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−517025(P2011−517025A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502406(P2011−502406)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050249
【国際公開番号】WO2009/122017
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510255451)
【氏名又は名称原語表記】ENVIRONICS OY
【住所又は居所原語表記】Graanintie 5,FI−50190 Mikkeli Finland
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/FI2009/050249
【国際公開番号】WO2009/122017
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510255451)
【氏名又は名称原語表記】ENVIRONICS OY
【住所又は居所原語表記】Graanintie 5,FI−50190 Mikkeli Finland
【Fターム(参考)】
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