説明

ガス測定装置、及び水素化物ガスの測定方法

【課題】本発明は、取り扱いやすい標準ガスを用いて容易に校正を行なうことが可能で、かつ分析計を劣化させることなく、間接的に水素化物ガスの濃度を測定可能なガス測定装置、及び水素化物ガスの測定方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ガスを分析する分析計12と、分析計12の前段に配置されると共に、分析計12と接続され、かつ水素化物ガスと反応することで水素化物が含まれていないガスを発生させる置換剤を有する反応管25と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接的に水素化物ガスの濃度を測定するガス測定装置、及び水素化物ガスの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子産業分野において、モノシラン、アルシン、ホスフィン、アンモニア等の水素化物ガスは、汎用性の高い半導体材料ガスとして、シリコン半導体、液晶ディスプレイ、太陽電池、シリコンウェーハ等に使用されている。
上記水素化物ガスは、毒性が高いため、慎重に取り扱う必要がある。特に、モノシランやアルシン等の特殊高圧ガスに関しては、消費施設や貯蔵場所等について、厳しく法令で規制されている。
【0003】
水素化物ガスの測定には、例えば、ガスクロマトグラフ(GC)やフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、質量分析計(MS)等の分析器が使用される。
【0004】
特許文献1には、半導体用特殊材料ガスを収納したガスボンベと半導体製造部との間のガス管路途中にガス検出器を配置してインラインによりガス成分又は/及びガス濃度を測定する半導体用特殊材料ガス成分濃度測定方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ガスクロマトグラフ及び質量選択検出器を有した質量分析計、真空ポンプ、及び専用のソフトウェアを備えた電気制御システムを一体化し、1つの密閉箱内に収納した手で携帯可能なGC/MS装置が開示されている。
【0006】
特許文献3には、モノシラン、稀ガス、水素、窒素、メタンの少なくとも一つ以上の成分とホスフィンからなる混合ガス中の極低濃度のホスフィンの定量分析を、炎光光度検出器(Flame Photometric Detector,FPD)を有したガスクロマトグラフで行なうことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−145884号公報
【特許文献2】特表2003−527563号公報
【特許文献3】特公平7−37969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ガスクロマトグラフ、フーリエ変換赤外分光光度計、質量分析計等の分析器や特許文献1に記載のガス検出器を用いて水素化物ガスを測定(定量分析)する場合、ボンベに充填された同種の標準ガスを用いて分析計を校正する必要があるが、標準ガスのボンベの取り扱い、管理等に関して法令が厳しく適用されるため、使用場所も限られてしまう。
そのため、分析計の校正も様々な制限を受ける。つまり、分析する水素化物ガスと同じ種類の標準ガスを用いる場合、標準ガスの取り扱いが難しいという問題があった。
【0009】
また、ガスクロマトグラフを用いて測定する場合、ホスフィンやアンモニア等は、分離カラムに充填されている充填剤に吸着しやすいため、直接定量測定しにくいという問題があった。
【0010】
また、フーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定する場合、測定ガスの流量が数百ml/minから1L/min程度必要となるが、シラン、ホスフィン等の水素化物ガスは除害装置での有毒成分の除去が必要であり、高濃度の標準ガスによる校正は除害装置への負荷が大きくなる。
また、水素化物ガスよりなる標準ガスの保管は、法規制により管理が厳しく、水素化物ガスを取り扱うには除害装置による除害が不可欠であり、除害の観点からも水素化物ガスよりなる標準ガスの取り扱いは難しい。
【0011】
また、特許文献2記載の携帯可能なガスクロマトグラフの場合、現場で毒性の強い標準ガスを使用して校正を行なうことができないという問題があった。
【0012】
また、特許文献3に記載の炎光光度検出器を用いた場合、構造上、検出部のガス出口が大気開放されているため、高濃度の水素化物ガスを測定する場合、別途、出口部分に毒性のガスが拡散しないような対策が安全の面から必要であった。
【0013】
さらに、水素化物ガスは、金属表面への付着や腐食により、分析計の検出器を劣化させやすいという問題があった。
【0014】
そこで、本発明は、取り扱いやすい標準ガスを用いて容易に校正を行なうことが可能で、かつ分析計を劣化させることなく、間接的に水素化物ガスの濃度を測定可能なガス測定装置、及び水素化物ガスの測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、ガスを分析する分析計と、前記分析計の前段に配置されると共に、前記分析計と接続され、かつ水素化物ガスと反応することで水素化物が含まれていないガスを発生させる置換剤を有する反応管と、を備えたことを特徴とするガス測定装置が提供される。
【0016】
また、請求項2に係る発明によれば、前記置換剤は、銅、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、ニッケルのうち、少なくとも1種以上の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項1記載のガス測定装置が提供される。
【0017】
また、請求項3に係る発明によれば、前記分析計は、前記水素化物が含まれていないガスを分析することで、前記水素化物ガスの濃度を得ることを特徴とする請求項1または2記載のガス測定装置が提供される。
【0018】
また、請求項4に係る発明によれば、前記反応管は、筒状部材を有しており、前記置換剤は、少なくとも前記筒状部材の一部を充填するように配置したことを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載のガス測定装置が提供される。
【0019】
また、請求項5に係る発明によれば、前記筒状部材の材料は、ガラスまたはステンレスであることを特徴とする請求項4記載のガス測定装置が提供される。
【0020】
また、請求項6に係る発明によれば、前記筒状部材のうち、前記分析計側に位置する部分に、水分を吸着する水分吸着剤を充填したことを特徴とする請求項4または5記載のガス測定装置が提供される。
【0021】
また、請求項7に係る発明によれば、前記水分吸着剤は、ゼオライトまたはシリカゲルであることを特徴とする請求項6記載のガス測定装置が提供される。
【0022】
また、請求項8に係る発明によれば、前記分析計は、ガスクロマトグラフ、質量分析計、還元ガス分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、赤外分光光度計、赤外線分析計、ガスモニターのうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載のガス測定装置が提供される。
【0023】
また、請求項9に係る発明によれば、置換剤を有した反応管に、水素化物ガスを含むガスを供給して、前記水素化物ガスを含むガスと前記置換剤とを反応させることにより、前記水素化物が含まれていないガスを発生させ、分析計により前記水素化物が含まれていないガスを分析することで、間接的に前記水素化物ガスの濃度を得ることを特徴とする水素化物ガスの測定方法が提供される。
【0024】
また、請求項10に係る発明によれば、前記置換剤として、銅、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、ニッケルのうち、少なくとも1種以上の金属を含む化合物を用いることを特徴とする請求項9記載の水素化物ガスの測定方法が提供される。
【0025】
また、請求項11に係る発明によれば、前記水素化物が含まれていないガスを用いて、前記分析計を校正することを特徴とする請求項9または10記載の水素化物ガスの測定方法が提供される。
【0026】
また、請求項12に係る発明によれば、前記反応管は、前記置換剤が充填される筒状部材を備え、前記筒状部材の材料として、ガラスまたはステンレスを用いることを特徴とする請求項9ないし11のうち、いずれか1項記載の水素化物ガスの測定方法が提供される。
【0027】
また、請求項13に係る発明によれば、前記分析計として、ガスクロマトグラフ、質量分析計、還元ガス分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、赤外分光光度計、赤外線分析計、ガスモニターのうち、いずれか1つを用いることを特徴とする請求項9ないし12のうち、いずれか1項記載の水素化物ガスの測定方法が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のガス測定装置によれば、ガスを分析する分析計と、分析計の前段に配置されると共に、分析計と接続され、かつ水素化物ガスと反応することで水素化物が含まれていないガスを発生させる置換剤を有する反応管と、を備えることで、分析計により水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)の濃度をして、間接的に水素化物ガスの濃度を得ること(間接的に水素化物ガスの濃度を測定すること)が可能となる。
【0029】
これにより、分析計に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計の校正を行なうことができる。
【0030】
本発明の水素化物ガスの測定方法によれば、置換剤を有した反応管に、水素化物ガスを含むガスを供給して、水素化物ガスと置換剤とを反応させることにより、水素化物が含まれていないガスを発生させ、分析計により水素化物が含まれていないガスを分析することで、間接的に水素化物ガスの濃度を得る(間接的に水素化物ガスの濃度を測)ことにより、分析計に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計の劣化を抑制できる。
【0031】
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計の校正を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す反応管を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す反応管のA−A線方向の断面図である。
【図4】ガスクロマトグラフに適用可能な他の反応管を示す断面図である。
【図5】図2及び図4に示す反応管よりも大型化された反応管の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図9】実施例1によるガス測定装置に導入したシラン(SiH)の濃度と水素(H)の濃度との関係を示す図である。
【図10】実施例2による分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際のガス測定装置の寸法関係とは異なる場合がある。
また、本明細書中で用いる濃度(%)は、体積濃度(vol%)を表している。以下の説明では、体積濃度の単位である「vol%」を単に「%」と記載する。
【0034】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照するに、第1の実施の形態に係るガス測定装置10は、ガス供給装置11と、分析計12と、を有する。なお、図1では、分析計12の一例として、ガスクロマトグラフ(GC)を図示する。
【0035】
ガス供給装置11は、第1及び第2の切り替えバルブ14,15と、バルブ間接続管16と、キャリアガス供給管17と、パージガス供給管18と、第1のガス排出管19と、試料採取管21と、第2のガス排出管22と、試料ガス供給管23と、反応管25と、を有する。
【0036】
第1の切り替えバルブ14は、六方弁切り替えバルブであり、第1ポート14−1、第2ポート14−2、第3ポート14−3、第4ポート14−4、第5ポート14−5、及び第6ポート14−6を有する。
【0037】
なお、図1に示す第1の切り替えバルブ14では、第1ポート14−1と第6ポート14−6との間、第2ポート14−2と第3ポート14−3との間、及び第4ポート14−4と第5ポート14−5との間が接続された状態を模式的に図示している。
また、図1に示す状態から第1の切り替えバルブ14を切り替えることで、第1ポート14−1と第2ポート14−2との間、第3ポート14−3と第4ポート14−4との間、及び第5ポート14−5と第6ポート14−6との間が接続(言い換えれば、図1に示す第1の切り替えバルブ14の点線部分が接続)される。
【0038】
第2の切り替えバルブ15は、六方弁切り替えバルブであり、第1ポート15−1、第2ポート15−2、第3ポート15−3、第4ポート15−4、第5ポート15−5、及び第6ポート15−6を有する。
【0039】
なお、図1に示す第2の切り替えバルブ15では、第1ポート15−1と第2ポート15−2との間、第3ポート15−3と第4ポート15−4との間、及び第5ポート15−5と第6ポート15−6との間が接続された状態を模式的に図示している。
また、図1に示す状態から第2の切り替えバルブ15を切り替えることで、第1ポート15−1と第6ポート15−6との間、第2ポート15−2と第3ポート15−3との間、及び第4ポート15−4と第5ポート15−5との間が接続(言い換えれば、図1に示す第2の切り替えバルブ15の点線部分が接続)される。
【0040】
バルブ間接続管16は、一方の端部が第1の切り替えバルブ14の第2ポート14−2と接続されると共に、他方の端部が第2の切り替えバルブ15の第5ポート15−5と接続されている。バルブ間接続管16は、第1の切り替えバルブ14を流れるキャリアガス及び試料ガスを第2の切り替えバルブ15に送るための管路である。
【0041】
キャリアガス供給管17は、一方の端部がキャリアガスを供給するキャリアガス供給源(図示せず)と接続され、他方の端部が第1ポート14−1と接続されている。キャリアガス供給管17は、キャリアガスを第1の切り替えバルブ14に供給するための管路である。
第1及び第2の切り替えバルブ14,15の実線部分が接続された状態(図1に示す状態)において、キャリアガス供給管17を流れるキャリアガスは、試料採取管21、第2の切り替えバルブ15、及び反応管25を介して、試料採取管21に吸着された試料ガスを分析計12に供給する。
キャリアガスとしては、例えば、ヘリウム(He)、水素(H)、窒素(N)、アルゴン(Ar)等を用いることができる。
【0042】
パージガス供給管18は、一方の端部がパージガスを供給するパージガス供給源(図示せず)と接続されており、他方の端部が第1ポート15−1と接続されている。パージガス供給管18は、第2の切り替えバルブ15にパージガスを供給するための管路である。
パージガス供給管18を流れるパージガスは、図1に示す状態から第2の切り替えバルブ15を切り替えた状態(図1に示す第2の切り替えバルブ15の点線部分を接続した状態)において、反応管25を経由して、第1のガス排出管19から排出される。
これにより、予め反応管25に存在する水分をガス供給装置11の外部に排出することができる。パージガスとしては、例えば、ヘリウム(He)、水素(H)、窒素(N)、アルゴン(Ar)等を用いることができる。
【0043】
第1のガス排出管19は、パージガスを排出するための排出管であり、第2ポート15−2と接続されている。試料採取管21は、一方の端部が第3ポート14−3と接続されており、他方の端部が第6ポート14−6と接続されている。
第2のガス排出管22は、試料ガスを排出するための排出管であり、第4ポート14−4と接続されている。試料ガス供給管23は、第1の切り替えバルブ14に試料ガスを供給するための管路であり、第5ポート14−5と接続されている。
【0044】
図2は、図1に示す反応管を模式的に示す図であり、図3は、図2に示す反応管のA−A線方向の断面図である。
次に、図1〜図3を参照して、反応管25について説明する。図1を参照するに、反応管25は、分析計12の前段に配置されている。反応管25は、一方の端部が第6ポート15−6と接続されており、他方の端部が第3ポート15−3と接続されている。反応管25は、ガスを供給可能な状態で、第2の切り替えバルブ15を介して、分析計12と接続されている。
【0045】
図2及び図3を参照するに、反応管25は、小型の反応管であり、筒状部材35と、置換剤36と、を有する。
筒状部材35は、置換剤36を充填するための管である。筒状部材35の材料としては、例えば、ガラスまたはステンレスを用いることができる。筒状部材35の外径Rは、例えば、6mmとすることができる。この場合、筒状部材35の長さLは、例えば、12cmとすることができる。
【0046】
置換剤36は、粒状とされており、キャリアガスが通過可能な状態で筒状部材35を充填している。置換剤36は、試料ガスである水素化物ガスと反応することで、水素化物ガスの濃度に対して一定の濃度とされた水素化物が含まれていないガス(例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)を発生させる。
置換剤36としては、例えば、銅、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、ニッケルのうち、少なくとも1種以上の金属を含む化合物(例えば、酸化物、水産物、炭酸化合物、硫化物等)を用いることができる。
【0047】
置換剤36は、使用する分析計12に応じて適宜選択するとよい。このように、置換剤36を適宜選択することにより、例えば、高濃度の水素化物ガスを含むガスを導入する場合、水素化物を含まないガスの生成量が少ないため測定しやすい。また、低濃度の水素化物ガス含むガスを導入する場合、水素化物を含まないガスの生成量が多い成分に置き換えて測定できる。よって、置換剤36を適宜選択することにより、分析計12の利用範囲を広げることができる。
【0048】
上記水素化物を含まないガスは、水素化物ガスに含まれる水素化物の種類、及び置換剤の種類に基づき決定される。水素化物を含まないガスは、キャリアガスにより、分析計12に送られ、分析計12により測定される。この測定結果に基づき、水素化物ガスの濃度を得ることができる。つまり、直接、水素化物ガスを分析計12で測定することなく、間接的に水素化物ガスの濃度を測定することが可能となる。
【0049】
このように、間接的に水素化物ガスの濃度を測定することにより、分析計12に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス(入手し易く、比較的安全なガス))を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計の校正を行なうことができる。
【0050】
また、上記置換剤36は、使用する前に、前処理を行なう必要はなく、分析計12に悪影響を及ぼさないパージガスによりパージを行なうだけでよい。上記反応管25は、常温で使用するので、加熱や冷却する必要はない。
また、上記構成とされた小型の反応管25は、1回の分析で導入する水素化物ガスの量の少ないガスクロマトグラフに適用可能な反応管である。
【0051】
図4は、ガスクロマトグラフに適用可能な他の反応管を示す断面図である。図4に示す反応管40の切断面は、図3に示す反応管25の切断面に対応している。図4において、図2に示す反応管25と同一構成部分には同一符号を付す。
【0052】
次に、図4を参照して、図1に示すガス測定装置10の反応管25の替わりに使用可能な反応管40(小型の反応管)について説明する。
図4を参照するに、反応管40は、図3に示す反応管25の構成に、さらに、水分吸着剤41を設けた以外は、反応管25と同様に構成される。
【0053】
反応管40では、筒状部材35のうち、第6ポート15−6と接続される側に置換剤36が充填され、分析計12側に位置する部分(言い換えれば、第3ポート15−3と接続される部分)に、水分を吸着する水分吸着剤41が充填されている。つまり、置換剤36の後段に、水分吸着剤41が配置されている。水分吸着剤41としては、例えば、ゼオライト、シリカゲル等を用いることができる。反応管40を構成する筒状部材35の長さLは、例えば、3cmとすることができる。
このように、置換剤36の後段に位置する筒状部材35を充填する水分吸着剤41を設けることにより、水素化物ガスに含まれる水素化物と置換剤36とが反応した際に発生する水分を除去することができる。
【0054】
図5は、図3及び図4に示す反応管よりも大型化された反応管の一例を示す断面図である。図5において、図3に示す反応管25と同一構成部分には、同一符号を付す。
次に、図5を参照して、図3及び図4に示す反応管25,40よりも大型化された反応管45について説明する。
図5を参照するに、反応管45は、筒状部材46と、筒状部材46を充填する置換剤36と、ガス導入部47と、ガス排出部48と、底板部49Aと、蓋部49Bと、を有する。
【0055】
筒状部材46の材料としては、例えば、ステンレスを用いることができる。筒状部材46の外径Rは、134mmとすることができる。この場合、筒状部材46の長さLは、例えば、195mmとすることができる。
【0056】
ガス導入部47は、置換剤36にガス(具体的には、パージガス、キャリアガス、試料採取管21に採取された試料ガス等)を供給可能な状態で、筒状部材46の下端に設けられている。ガス導入部47は、パージガスが供給される部分である。
ガス排出部48は、置換剤36からガス(パージガス、キャリアガス、水酸化物を含まないガス等)を排出可能な状態で、筒状部材46の上端に設けられている。
【0057】
底板部49Aは、筒状部材46の下端に固定されている。底板部49Aは、筒状部材46内を充填する置換剤36を支持する機能を有する。
蓋部49Bは、筒状部材46の上端に固定されている。筒状部材46内の空間は、底板部49A及び蓋部49Bにより気密されている。
底板部49A及び蓋部49Bの材料としては、例えば、ステンレスを用いることができる。
【0058】
上記構成とされた反応管45は、分析計12が連続して水素化物ガスを含むガスを流すことで分析を行なうFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)やガスモニター等の場合に適用するとよい。
このように、大型の反応管45をフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)やガスモニター等の分析計12を備えたガス測定装置に適用することで、水素化物ガスに含まれる水素化物を効率よく除去することができる。
【0059】
なお、図5では、筒状部材46に、ガス導入部47及びガス排出部48を設けた場合を例に挙げて説明したが、例えば、ガス導入部47を底板部49Aに設けると共に、ガス排出部48を蓋部49Bに設けてもよい。
【0060】
図1を参照するに、分析計12は、ガスクロマトグラフであり、オーブン28と、分離カラム31と、検出器32と、を有する。
オーブン28は、分離カラム31を収容している。これにより、オーブン28は、分離カラム31を所定の温度に加熱可能な構成とされている。
【0061】
分離カラム31は、その一方の端部が第4ポート15−4と接続されており、他方の端部が検出器32と接続されている。分離カラム31は、筒状部に水素化物を含まないガス(反応生成物)を分離する充填剤が充填された構成とされている。
【0062】
検出器32は、分離カラム31の他方の端部(出口側)と接続されている。検出器32は、分離カラム31を通過した成分を検出するためのものである。検出器32としては、例えば、TCD(Thermal Conductivity Detector)、FID(Flame Ionization Detector)、ECD(Electron Capture Detector)、FPD(Flame Photometric Detector)、PID(Photo Ionization Detector)、MS(Mass spectrometer)、PDD(Pulsed Discharge Detector)のうち、いずれか1つを用いることができる。検出器32は、図示していない記録計と接続されている。
【0063】
第1の実施の形態のガス測定装置によれば、ガスを分析する分析計12と、分析計12の前段に配置されると共に、分析計12と接続され、かつ水素化物ガスと反応することで水素化物が含まれていないガスを発生させる置換剤36を有する反応管25と、を備えることで、分析計12により水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)を分析して、間接的に水素化物ガスの濃度を得ることが可能となる。
【0064】
これにより、分析計12に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計12の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計12の校正を行なうことができる。
【0065】
なお、第1の実施の形態では、分析計12の一例としてガスクロマトグラフを用いた場合を例に挙げて説明したが、分析計12として質量分析計または還元ガス分析計を用いることができる。
【0066】
次いで、図1を参照して、図1に示すガス測定装置10を用いた第1の実施の形態に係る水素化物ガスの測定方法について説明する。
始めに、図1に示す第2の切り替えバルブ15を切り替えた後(言い換えれば、図1に示す第2の切り替えバルブ15の点線部分を接続した後)、反応管25の置換剤36にパージガスを流すことで、置換剤36に残存する水分を除去する。このとき、パージガス及び水分は、第1のガス排出管19を介して、ガス供給装置11の外部に排出される。置換剤36に残存する水分を除去後、第2の切り替えバルブ15を切り替えて、図1に示す実線部分を接続する。
【0067】
次いで、図1に示す第1の切り替えバルブ14を切り替えた後(言い換えれば、図1に示す第1の切り替えバルブ14の点線部分を接続した後)、試料採取管21に試料ガスである水素化物ガスを含むガスを導入する。これにより、水素化物ガスが試料採取管21に採取される。
【0068】
次いで、図1に示す第1の切り替えバルブ14の状態となるように第1の切り替えバルブ14を切り替え、キャリアガスにより、試料採取管21に採取された水素化物ガスを反応管25に送る。このとき、反応管25では、水素化物ガスと反応管25を構成する置換剤36とが反応し、水素化物の濃度に対して、一定濃度の水素化物を含まないガス(例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)が発生する。
その後、上記水素化物を含まないガスは、分析計12に送られて分析される。これにより、間接的に水素化物ガスの濃度を取得(測定)することができる。
【0069】
第1の実施の形態の水素化物ガスの測定方法によれば、置換剤36を有した反応管25に水素化物ガスを含むガスを供給して、水素化物ガスと置換剤36とを反応させることにより、水素化物が含まれていないガスを発生させ、分析計12により水素化物が含まれていないガスを分析することで、間接的に水素化物ガスの濃度を取得することが可能となる。
【0070】
これにより、分析計12に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計12の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計12の校正を行なうことができる。
【0071】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す図である。図6において、図1に示すガス測定装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
図6を参照するに、第2の実施の形態のガス測定装置50は、標準ガス供給管51と、第1の切り替えバルブ52と、試料ガス供給管53と、第2の切り替えバルブ54と、標準ガス及び試料ガス供給管56と、反応管45(図5参照)と、ガス供給管58と、可搬式の分析計59と、を有する。
【0072】
標準ガス供給管51は、図示していない標準ガス供給源と接続されている。標準ガス供給管51は、標準ガスが供給される管路である。第1の切り替えバルブ52は、自動または手動の切り替え弁であり、標準ガス供給管51に設けられている。
試料ガス供給管53は、図示していない試料ガス供給源と接続されている。試料ガス供給管53は、試料ガス(水素化物ガスを含むガス)が供給される管路である。第2の切り替えバルブ54は、自動または手動の切り替え弁であり、試料ガス供給管53に設けられている。
【0073】
標準ガス及び試料ガス供給管56は、一方の端部が標準ガス供給管51及び試料ガス供給管53と接続されており、他方の端部が反応管45(具体的には、図5に示すガス導入部47)と接続されている。標準ガス及び試料ガス供給管56には、標準ガス及び試料ガスが供給される。
反応管45は、標準ガス及び試料ガス供給管56と接続されている。反応管45は、標準ガス及び試料ガス供給管56に対して着脱可能な構成とされている。反応管45は、分析に使用する前に、予めパージにより水分を除去しておく。反応管45の構成については、先に図5で説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0074】
ガス供給管58は、一方の端部が反応管45(具体的には、図5に示すガス排出部48)と接続されており、他方の端部が分析計59と接続されている。分析計59は、ガス供給管58を介して送られる水素化物が含まれていないガスを分析することで、間接的に水素化物ガスの濃度を測定する。分析計59は、ガス供給管58に対して着脱可能な構成とされており、分析計59単体で運搬が可能である。分析計59としては、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)、赤外分光光度計、赤外線分析計、ガスモニター等を用いることができる。
【0075】
第2の実施の形態のガス測定装置及び水素化物ガスの測定方法によれば、第1の実施の形態のガス測定装置及び水素化物ガスの測定方法と同様な効果を得ることができる。
具体的には、置換剤36を有した反応管45に水素化物ガスを含むガスを供給して、水素化物ガスと置換剤36とを反応させることにより、水素化物を含まないガスを発生させ、分析計12により水素化物が含まれていないガスを分析することで、水素化物ガスの濃度を取得する(間接的に水素化物ガスの濃度を測定する)ことが可能となる。
【0076】
これにより、分析計59に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計59の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計59の校正を行なうことができる。
【0077】
(第3の実施の形態)
図7は、本発明の第3の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。図7において、図1に示す第1の実施の形態のガス測定装置10と同一構成部分には同一符号を付す。
図7を参照するに、第3の実施の形態に係るガス測定装置65は、検出器32としてPDD(Pulsed Discharge Detector)を有する。
ガス測定装置65は、第1の実施の形態のガス測定装置10を構成するガス供給装置11の替わりに、ガス供給装置66を設けた以外は、ガス測定装置10と同様な構成とされている。
【0078】
ガス供給装置66は、第1の実施の形態で説明したガス供給装置11(図1参照)に設けられた第1及び第2の切り替えバルブ14,15、及び反応管25の替わりに、第1及び第2の切り替えバルブ69,71、及び反応管25−1,25−2を設けると共に、さらに、キャリアガス供給管73、キャリアガス排出管74、及びプレカラム76を設けた以外は、ガス供給装置11と同様に構成される。
【0079】
第1の切り替えバルブ69は、十方弁切り替えバルブであり、第1ポート69−1、第2ポート69−2、第3ポート69−3、第4ポート69−4、第5ポート69−5、第6ポート69−6、第7ポート69−7、第8ポート69−8、第9ポート69−9、及び第10ポート69−10を有する。
【0080】
第1ポート69−1は、第1のキャリアガスを供給するキャリアガス供給管17と接続されている。第1のキャリアガスとしては、ヘリウム(He)を用いることができる。
第2ポート69−2は、プレカラム76の一方の端部と接続されている。第3ポート69−3は、第2のキャリアガスを排出するキャリアガス排出管74と接続されている。
【0081】
第4ポート69−4は、第2のキャリアガスを供給するキャリアガス供給管73と接続されている。第2のキャリアガスとしては、ヘリウム(He)を用いることができる。第5ポート69−5は、バルブ間接続管16の一方の端部と接続されている。第6ポート69−6は、プレカラム76の他方の端部と接続されている。
第7ポート69−7は、試料採取管21の一方の端部と接続されている。第8ポート69−8は、第2のガス排出管22と接続されている。第9ポート69−9は、試料ガス供給管23と接続されている。第10ポート69−10は、試料採取管21の他方の端部と接続されている。
【0082】
図7に示す第1の切り替えバルブ69では、第1ポート69−1と第10ポート69−10との間、第2ポート69−2と第3ポート69−3との間、第4ポート69−4と第5ポート69−5との間、第6ポート69−6と第7ポート69−7との間、及び第8ポート69−8と第9ポート69−9との間が接続された状態を模式的に図示している。
また、図7に示す状態から第1の切り替えバルブ69を切り替えることで、第1ポート69−1と第2ポート69−2との間、第3ポート69−3と第4ポート69−4との間、第5ポート69−5と第6ポート69−6との間、第7ポート69−7と第8ポート69−8との間、及び第9ポート69−9と第10ポート69−10との間が接続(言い換えれば、図7に示す第1の切り替えバルブ69の点線部分が接続)される。
【0083】
図7に示す状態において、第1の切り替えバルブ69は、バルブ間接続管16を介して、第2のキャリアガスを第2の切り替えバルブ71に送る。
また、図7に示す状態から第1の切り替えバルブ69を切り替えることで、第1の切り替えバルブ69は、試料採取管21に試料ガスを採取させると共に、バルブ間接続管16を介して、プレカラム76を通過した第1のキャリアガスを第2の切り替えバルブ71に送る。
【0084】
第2の切り替えバルブ71は、八方弁切り替えバルブであり、第1ポート71−1、第2ポート71−2、第3ポート71−3、第4ポート71−4、第5ポート71−5、第6ポート71−6、第7ポート71−7、及び第8ポート71−8を有する。
【0085】
第1ポート71−1は、反応管25−1の一方の端部と接続されている。反応管25−1は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3に示す反応管25と同様な構成とされている。つまり、反応管25−1は、図2及び図3に示す筒状部材35及び置換剤36を有する。
第2ポート71−2は、分離カラム31の一方の端部と接続されている。第3ポート71−3は、反応管25−2の一方の端部と接続されている。反応管25−2は、第1の実施の形態で説明した図2及び図3に示す反応管25と同様な構成とされている。つまり、反応管25−1は、図2及び図3に示す筒状部材35及び置換剤36を有する。
【0086】
第4ポート71−4は、第1のガス排出管19と接続されている。第5ポート71−5は、反応管25−1の他方の端部と接続されている。
第6ポート71−6は、バルブ間接続管16の他方の端部と接続されている。第7ポート71−7は、反応管25−2の他方の端部と接続されている。第8ポート71−8は、パージガス供給管18と接続されている。
【0087】
図7に示す第2の切り替えバルブ71では、第1ポート71−1と第8ポート71−8との間、第2ポート71−2と第3ポート71−3との間、第4ポート71−4と第5ポート71−5との間、及び第6ポート71−6と第7ポート71−7との間が接続された状態を模式的に図示している。
また、図7に示す状態から第2の切り替えバルブ71を切り替えることで、第1ポート71−1と第2ポート71−2との間、第3ポート71−3と第4ポート71−4との間、第5ポート71−5と第6ポート71−6との間、及び第7ポート71−7と第8ポート71−8との間が接続(言い換えれば、図7に示す第2の切り替えバルブ71の点線部分が接続)される。
【0088】
図7に示す状態において、第2の切り替えバルブ71は、バルブ間接続管16を介して、試料採取管21に採取され、かつ第1のキャリアガスにより送られた水素化物ガス(試料ガス)を反応管25−2に送る。
反応管25−2では、水素化物ガスと置換剤36とが反応することで、水素化物を含まないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)が発生する。該水素化物を含まないガスは、第2の切り替えバルブ71及び分離カラム31を介して、検出器32により分析される。
また、図7に示す状態において、第2の切り替えバルブ71は、パージガスを流すことで、反応管25−1内に残存する水分を第2の切り替えバルブ71の外部に排出する。
【0089】
また、図7に示す第2の切り替えバルブ71を切り替えた状態(図7に示す第2の切り替えバルブ71の点線部分を接続した状態)において、第2の切り替えバルブ71は、バルブ間接続管16を介して、試料採取管21に採取され、かつ第1のキャリアガスにより送られた水素化物ガスを反応管25−1に送る。
【0090】
反応管25−1では、水素化物ガスと置換剤36とが反応することで、水素化物を含まないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等のガス)が発生する。該水素化物を含まないガスは、第2の切り替えバルブ71及び分離カラム31を介して、検出器32により分析される。
また、図7に示す第2の切り替えバルブ71を切り替えた状態において、第2の切り替えバルブ71は、パージガスを流すことで、反応管25−2内に残存する水分を第2の切り替えバルブ71の外部に排出する。
【0091】
第3の実施の形態のガス測定装置によれば、検出器32としてPDDを備えた分析計12と接続された第2の切り替えバルブ71(八方弁切り替えバルブ)に、2つの反応管25−1,25−2を設けることで、連続して水素化物ガス(試料ガス)を流して、間接的に水素化物ガスの濃度を得る(測定)することが可能となる。
【0092】
これにより、分析計12に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計12の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(具体的には、例えば、水素、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素等の取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計12の校正を行なうことができる。
【0093】
(第4の実施の形態)
図8は、本発明の第4の実施の形態に係るガス測定装置の概略構成を示す模式図である。
図8において、図6に示す第2の実施の形態のガス測定装置50と同一構成部分には同一符号を付す。
図8を参照するに、第4の実施の形態に係るガス測定装置80は、第2の実施の形態のガス測定装置50の構成に、さらに、標準ガス用マスフローコントローラー81、希釈ガス供給管82、及び希釈ガス用マスフローコントローラー83を設けた以外は、ガス測定装置50と同様な構成とされている。
【0094】
標準ガス用マスフローコントローラー81は、第1の切り替えバルブ52と標準ガス供給源(図示せず)との間に位置する標準ガス供給管51に設けられている。標準ガス用マスフローコントローラー81は、標準ガス供給管51を流れる標準ガスの質量流量を計測し流量制御を行う。
希釈ガス供給管82は、一方の端部が希釈ガス(例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等)を供給する希釈ガス供給源(図示せず)と接続されており、他方の端部が第1の切り替えバルブ52と標準ガス用マスフローコントローラー81との間に位置する標準ガス供給管51と接続されている。上記希釈ガスを反応管45に流すことで、反応管45を構成する置換剤36に存在する水分を除去することができる。
【0095】
希釈ガス用マスフローコントローラー83は、希釈ガス供給管82に設けられている。希釈ガス用マスフローコントローラー83は、希釈ガス供給管82を流れる希釈ガスの質量流量を計測し流量制御を行う。
【0096】
第4の実施の形態のガス測定装置80を用いて、分析計59の校正を行なう場合、希釈ガス用マスフローコントローラー83により一定量の希釈ガスを反応管45の置換剤36に流すことで、置換剤36の水分を除去し、その後、標準ガス用マスフローコントローラー81及び希釈ガス用マスフローコントローラー83を用いて、希釈ガスにより標準ガス(例えば、二酸化炭素及び水の標準ガス)が所定の濃度となるように希釈し、該希釈した標準ガスを分析計59に送ることで行なう。
【0097】
なお、第4の実施の形態のガス測定装置80を用いて、間接的に水素化物ガスを測定方法した場合も、分析計59に水素化物ガスが流れることがなくなるため、水素化物ガスに起因する分析計59の劣化を抑制できる。
また、校正する際に使用する標準ガスとして、水素化物が含まれていないガス(取り扱いやすいガス)を使用することが可能となるので、安全かつ容易に分析計59の校正を行なうことができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0099】
以下、実施例について説明する。
(実施例1)
第1の実施の形態で説明した図1に示すガス測定装置10を用いて、水酸化物ガスであるシラン(SiH)の測定を行なった。分析計12には、検出器32として熱伝導度型検出器(Thermal Conductivity Detector:TCD)を備えたガスクロマトグラフを用いた。
【0100】
このときの分析条件として、以下の条件を用いた。分離カラム31として、Porapak-Q(60/80#,3mmΦ×3m)を用い、分離カラム31の温度を50℃とした。また、インジェクション温度を80℃、検出器32の温度を100℃、検出器32に流す電流を90mA、キャリアガスとして30ml/minの窒素(N)、試料採取管21の容量を0.3mlとした。また、反応管25を構成する置換剤36(図2または図3参照)として、塩基性炭酸銅(CuCOCu(OH))を用いた。
【0101】
また、試料ガスとして、シラン(SiH)/窒素(N)の標準ガスを、窒素(N)で希釈し、シラン(SiH)濃度として0.2%、1%、2%に調整したものを用いた。
下記式(1)に示すシラン(SiH)と置換剤36の推定反応式に示される水素(H)の濃度を測定し、ガス測定装置10に導入したシラン(SiH)の濃度と水素(H)の濃度との関係を図9に示す。
SiH+2/3CuCOCu(OH)→SiHO+2/3CuO+4/3H+1/3HO + 2/3CO・・・(1)
【0102】
図9は、実施例1によるガス測定装置に導入したシラン(SiH)の濃度と水素(H)の濃度との関係を示す図である。
図9を参照するに、ガス測定装置10に導入したシラン濃度と置換剤36で発生した水素濃度とは比例しており、該水素濃度にファクター(この場合、図9の検量線の傾き0.75)を掛ける事により、試料ガス中のシラン濃度を計算できることが確認できた。
また、上記ファクター(0.75)は、上記反応でのシランと水素とのモル比とも一致していた(1モルの水素は0.75モルのシランより発生する)。
【0103】
(実施例2)
第3の実施の形態で説明した図7に示すガス測定装置65を用いて、本発明による水酸化物ガスの測定方法及びプレカット法により、窒素(N)中に含まれるジボラン(B)の分析を行った。
このとき、反応管25−1,25−2を構成する置換剤36(図2及び図3参照)として、酸化第二銅(CuO)を用いた。また、分析計12として、ガスクロマトグラフを用いた。
なお、反応管25−1,25−2のうち、一方の反応管を使用し、他方の反応筒をパージガスでパージしておくことで、いつでも反応管の切換えを行なえるようにした。下記式(2)に、実施例2の推定反応式を示す。
+ 3CuO→B+ 3Cu+3H・・・(2)
【0104】
分析計12には、検出器32としてパルス放電型検出器(Pulsed Discharge Detector:PDD)を備えたガスクロマトグラフを用いた。
このときの分析条件として、以下の条件を用いた。プレカラム76として、3mmΦ×1mのステンレス管内にポーラスポリマービーズを充填しものを用いた。また、分離カラム31として、3mmΦ×2mのステンレス管内にポーラスポリマービーズを充填しものを用いた。
【0105】
また、オーブン28の温度を50℃とし、検出器32の温度を100℃、第1及び第2のキャリアガスとして22ml/minのヘリウム(He)、試料採取管21の容量を0.5mlとした。また、パージガスとして、30ml/minのヘリウム(He)を用いた。
【0106】
実施例2では、始めに、図7に示す第1の切り替えバルブ69の点線部分を接続して、試料ガスを試料採取管21に流した。このとき、プレカラム76及び反応筒25−2を介して、分析計に、第1のキャリアガスを流した。
次いで、図7に示す第1の切り替えバルブ69の実線部分を接続した状態において、第1のキャリアガスにより、試料採取管21に採取された試料ガスをプレカラム76に送った。
【0107】
次いで、プレカラム76において、試料ガスに含まれる窒素(N)を先に溶出させ、窒素(N)を排気させた。その後、第1の切り替えバルブ69を切り替えることで、図7に示す第1の切り替えバルブ69の点線部分を接続した。
【0108】
次いで、第1のキャリアガスにより、プレカラム76に残存するジボラン(B)を反応筒25−2に送った。次いで、反応筒25−2を構成する置換剤36(図2及び図3参照)とジボラン(B)とを反応させて水素(H)を発生させた。その後、分離カラム31を介して、該水素(H)を検出器32に送り、検出器32で検出した。この分析結果を図10に示す。
図10は、実施例2による分析結果を示す図である。図10を参照するに、検出器32により、水素(H)が検出されたことを確認できた。
【0109】
(実施例3)
第4の実施の形態で説明した図8に示すガス測定装置80を用いて、水酸化物ガスであるシラン(SiH)の測定を行なった。分析計59として、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた。また、反応筒45は、内径が134mm、長さLが195mmのものを用いた(図5参照。)反応管45を構成する置換剤36(図5参照)として、塩基性炭酸銅(CuCOCu(OH))を用いた。
【0110】
実施例3では、希釈ガス用マスフローコントローラー83により一定量の希釈ガスである窒素を反応管45の置換剤36に流すことで、置換剤36の水分を除去した。
次いで、標準ガス用マスフローコントローラー81及び希釈ガス用マスフローコントローラー83を用いて、希釈ガスにより標準ガスである二酸化炭素(CO)及び水(HO)が所定の濃度となるように希釈し、該希釈した標準ガスを分析計59に送り、分析計59の校正を行なった。
【0111】
その後、第2の切り替えバルブ54により、試料ガスを導入させた。次いで、反応管45で発生した二酸化炭素(CO)及び水(HO)を分析計59であるフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)で測定した。
このとき、シラン(SiH)の流量を500ml/min、濃度を100〜2000ppmとして、30時間測定を行なったが、反応管45を構成する置換剤36の破過はみられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、間接的に水素化物ガスの濃度測定の可能なガス測定装置、及び水素化物ガスの測定方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0113】
10,50,65,80…ガス測定装置、11,66…ガス供給装置、12,59…分析計、14,52,69…第1の切り替えバルブ、14−1,15−1,69−1,71−1…第1ポート、14−2,15−2,69−2,71−2…第2ポート、14−3,15−3,69−3,71−3…第3ポート、14−4,15−4,69−4,71−4…第4ポート、14−5,15−5,69−5,71−5…第5ポート、14−6,15−6,69−6,71−6…第6ポート、15,54,71…第2の切り替えバルブ、16…バルブ間接続管、17,73…キャリアガス供給管、18…パージガス供給管、19…第1のガス排出管、21…試料採取管、22…第2のガス排出管、23…試料ガス供給管、25,25−1,25−2,40,45…反応管、28…オーブン、31…分離カラム、32…検出器、35,46…筒状部材、36…置換剤、41…水分吸着剤、47…ガス導入部、48…ガス排出部、49A…底板部、49B…蓋部、51…標準ガス供給管、53…試料ガス供給管、56…標準ガス及び試料ガス供給管、58…ガス供給管、69−7,71−7…第7ポート、69−8,71−8…第8ポート、69−9…第9ポート、69−10…第10ポート、74…キャリアガス排出管、76…プレカラム、81…標準ガス用マスフローコントローラー、82…希釈ガス供給管、83…希釈ガス用マスフローコントローラー、R,R…外径、L,L,L…長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを分析する分析計と、
前記分析計の前段に配置されると共に、前記分析計と接続され、かつ水素化物ガスを含むガスと反応することで水素化物が含まれていないガスを発生させる置換剤を有する反応管と、
を備えたことを特徴とするガス測定装置。
【請求項2】
前記置換剤は、銅、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、ニッケルのうち、少なくとも1種以上の金属を含む化合物であることを特徴とする請求項1記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記分析計は、前記水素化物が含まれていないガスを分析することで、前記水素化物ガスの濃度を得ることを特徴とする請求項1または2記載のガス測定装置。
【請求項4】
前記反応管は、筒状部材を有しており、
前記置換剤は、少なくとも前記筒状部材の一部を充填するように配置したことを特徴とする請求項1ないし3のうち、いずれか1項記載のガス測定装置。
【請求項5】
前記筒状部材の材料は、ガラスまたはステンレスであることを特徴とする請求項4記載のガス測定装置。
【請求項6】
前記筒状部材のうち、前記分析計側に位置する部分に、水分を吸着する水分吸着剤を充填したことを特徴とする請求項4または5記載のガス測定装置。
【請求項7】
前記水分吸着剤は、ゼオライトまたはシリカゲルであることを特徴とする請求項6記載のガス測定装置。
【請求項8】
前記分析計は、ガスクロマトグラフ、質量分析計、還元ガス分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、赤外分光光度計、赤外線分析計、ガスモニターのうち、いずれか1つであることを特徴とする請求項1ないし7のうち、いずれか1項記載のガス測定装置。
【請求項9】
置換剤を有した反応管に、水素化物ガスを含むガスを供給して、前記水素化物ガスと前記置換剤とを反応させることにより、前記水素化物が含まれていないガスを発生させ、分析計により前記水素化物が含まれていないガスを分析することで、間接的に前記水素化物ガスの濃度を得ることを特徴とする水素化物ガスの測定方法。
【請求項10】
前記置換剤として、銅、亜鉛、鉄、マンガン、アルミニウム、ニッケルのうち、少なくとも1種以上の金属を含む化合物を用いることを特徴とする請求項9記載の水素化物ガスの測定方法。
【請求項11】
前記水素化物が含まれていないガスを用いて、前記分析計を校正することを特徴とする請求項9または10記載の水素化物ガスの測定方法。
【請求項12】
前記反応管は、前記置換剤が充填される筒状部材を備え、
前記筒状部材の材料として、ガラスまたはステンレスを用いることを特徴とする請求項9ないし11のうち、いずれか1項記載の水素化物ガスの測定方法。
【請求項13】
前記分析計として、ガスクロマトグラフ、質量分析計、還元ガス分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、赤外分光光度計、赤外線分析計、ガスモニターのうち、いずれか1つを用いることを特徴とする請求項9ないし12のうち、いずれか1項記載の水素化物ガスの測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−163540(P2012−163540A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26313(P2011−26313)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】