説明

ガス測定装置

【課題】サンプリングガス搬送流路中での結露による水分の影響を可及的に抑えて環境中のガス濃度を高い精度で測定すること。
【解決手段】被測定ガスと接触して化学反応により光学濃度が変化するガス検知材3を使用したガス測定装置1において、測定ガスのサンプリング流路11の一部を、水分を選択的に透過させる材料からなる第1のチューブ12により構成するとともに、第1のチューブ12の外周に乾燥エアを供給する第2のチューブ13を同軸状に配置するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中に存在するガスを呈色反応を利用して検出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境中に存在する極めて低い濃度のガスを測定する場合には、特許文献1に見られるように被測定現場から採取した被測定ガスと化学反応して光学濃度が変化する検知材を使用した測定装置が用いられている。
この方法によれば、サンプリング時間を延長することにより検出可能な最小濃度を下げることが可能で、特に濃度が低くても影響が問題となる環境中のガス測定に多様されている。
一方、環境中のガスを測定する場合には、設置環境の時間的変動を抑えるために測定装置をエアコンディショニングされた部屋に収容して使用することが行われている。これによれば測定装置をほぼ一定の温度に維持できるものの、サンプリングガスと測定装置が設置されている場所との温度差により、特に高温多湿時には測定装置側で結露による水滴の発生により、検知材に供給されるサンプリングガスの湿度が飽和状態まで上昇する場合がある。
もとより、このような測定装置は試薬を担持させた検知材の試薬と被測定ガスとの化学反応に依存するため、反応速度が湿度に大きく左右されて、測定誤差が生じるという問題がある。
【特許文献1】特開2000-180367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところはサンプリングガス搬送流路中での結露による水分の影響を可及的に抑えて環境中のガス濃度を高い精度で測定することができるガス測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を達成するために請求項1の発明は、被測定ガスと接触して化学反応により光学濃度が変化するガス検知材を使用したガス測定装置において、前記測定ガスのサンプリング流路の一部を、水分を選択的に透過させる材料からなる第1のチューブにより構成するとともに、前記第1のチューブの外周に乾燥エアを供給する第2のチューブを同軸状に配置するようにした。
【0005】
請求項2の発明は、前記第1のチューブを流れる被測定ガスの流れ方向に対向するように前記乾燥エアが前記第2のチューブに供給されている。
【0006】
請求項3の発明は、前記乾燥エアが、前記ガス測定装置が設置されているエアコンディショニングされた部屋の空気である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、測定装置のサンプリング流路に結露による水が停滞しても除湿手段により適正湿度のサンプリングガスをガス検知材に供給でき、測定精度を維持できる。
【0008】
請求項2の発明によれば、チューブの全長にわたって湿度差をほぼ一定として効率良く除湿することができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、特別な乾燥エアを容易することなく、ランニングコストを下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図中符号1は、被測定現場から採取した被測定ガスを光学濃度の変化として検出する測定装置で、リール2に収容されたガス検知テープ3をリール4により測定ヘッド5に一定周期で供給し、サンプリングポンプ6により測定ヘッド5に被測定ガスを吸引して検知テープ3に接触させ、サンプリング終了後に測定ヘッド5に収容されている発光素子と受光素子とからなる光学濃度測定手段により検知テープ3の光学濃度の変化を検出するように構成されている。なお、図中符号7は流量検知手段を、また8、9はフィルタをそれぞれ示す。
【0011】
符号10は、サンプリング流路11の途中に接続された本発明が特徴とする除湿手段で、図2に示したように、水素イオン(プロトン)伝導性が高く、水分を選択的に透過させるフッ素樹脂系イオン交換膜材料(たとえば米国デュポン社のナフィヨン(登録商標)、旭化成社のアシプレックス(登録商標)、旭硝子社のフレミオン(登録商標))の第1のチューブ12と、第1のチューブ12の外周に同軸上に配置された気密性物質からなる第2のチューブ13とから構成され、第1のチューブ12がサンプリング流路に接続され、また第2のチューブ13が好ましくはサンプリング流路11の下流側を上流側とするようにポンプ14に接続されて、測定装置が設置されている環境のエアが、第1のチューブ12を流れるガスの流れ(図中、符号A)に対向する向き(図中符号B)に流れるように構成されている。
【0012】
この実施例において、サンプリングポンプ6、及びポンプ14を作動させると、測定環境から吸引された被測定ガスがサンプリング流路11、及び除湿手段10の第1のチューブ12を移動して測定ヘッド5に供給され、ここに位置する検知テープ3に接触する。
【0013】
一方、サンプリング流路11を流れる被測定ガスは、これに含まれる水分と第1のチューブ12の壁面の外周を流れるエアの水分との濃度の差に依存して第1のチューブ12を通過する。すなわち、被測定ガスの水分の濃度が第1のチューブの外周のエアの水分よりも高い場合には、エアに流れ出して除湿され、また低い場合にはエアの水分が流れ込んで加湿される。
【0014】
また、被測定ガスとエアとの流れが対向しているため、除湿手段10の全長にわたって湿度差をほぼ一定に維持できて、同方向に流す場合に比較して被測定ガスの水分濃度をエアの水分濃度に効率的に調整することができる。
【0015】
一方、測定装置が設置されている環境は、空調により湿度が比較的安定した状態であるため、サンプリング流路11に結露などによる水が残留しているとしても、除湿手段11により除去されてから測定ヘッド5に流れ込むため、結露による測定誤差を可及的に抑えることができる。
【0016】
(比較例)
標準エアを35℃の水でバブリングして相対湿度98%とした試験ガスを一定時間、測定装置に流入させて、検知テープの光学濃度を測定したところ、ガス濃度換算で200ppbを示した。
【0017】
一方、上記試験ガスを本発明の除湿手段を備えた測定装置に一定時間供給して検知テープの光学濃度を測定したところ、ガス濃度換算で60ppbを示した。なお、除湿手段10の第2のチューブ13には、空調された部屋の空気を供給した。
【0018】
これらのことから、測定装置のサンプリング流路に結露が生じても除湿手段により測定精度を維持できることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】同上装置の除湿手段の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 測定装置 3 ガス検知テープ 5 測定ヘッド 6 サンプリングポンプ 10 除湿手段 11 サンプリング流路 12 第1のチューブ 13 第2のチューブ 14 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスと接触して化学反応により光学濃度が変化するガス検知材を使用したガス測定装置において、
前記測定ガスのサンプリング流路の一部を、水分を選択的に透過させる材料からなる第1のチューブにより構成するとともに、前記第1のチューブの外周に乾燥エアを供給する第2のチューブを同軸状に配置したガス測定装置。
【請求項2】
前記第1のチューブを流れる被測定ガスの流れ方向に対向するように前記乾燥エアが前記第2のチューブに供給される請求項1に記載のガス測定装置。
【請求項3】
前記乾燥エアが、前記ガス測定装置が設置されているエアコンディショニングされた部屋の空気である請求項1または請求項2に記載のガス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−38753(P2006−38753A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221848(P2004−221848)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】