説明

ガス源収容体及び発電装置

【課題】従来のガス源収容体に比べ、固体物質及び水の接触によって発生するガスの発生量をより正確に制御することを可能にするガス源収容体及び発電装置を提供する。
【解決手段】特定の液体物質に接触することによって溶出し、ガスを発生させる固体物質と、該固体物質を保持する保持部材とをガス源収容体に備え、前記固体物質を下方側から前記液体物質に浸漬させるように構成し、また前記保持部材を、前記固体物質の下部が前記液体物質に溶出した場合、溶出した分、前記固体物質が自重により下方側へ移動できるように、該固体物質を保持するように構成する。また、前記ガス源収容体を発電装置に備え、前記固体物質及び液体物質の接触によって発生した水素にて発電を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の液体物質に接触することによって溶出し、水素、酸素等のガスを発生させる固体物質を収容したガス源収容体、特に該ガス源収容体から送出された水素を用いて発電を行う発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境エネルギー問題の解決手段として燃料電池が注目されている。燃料電池は、無尽蔵に存在する水素をエネルギー源としており、化石燃料を燃やすことで発生する温室効果ガス、環境汚染物質等を放出しないため、地球温暖化、環境汚染、化石燃料の枯渇といった問題を解決する手段として期待されている。
【0003】
燃料電池のエネルギー源である水素の貯蔵方法としては、水素を例えば350気圧の高圧でボンベ内に貯蔵する高圧ボンベ方式、水素を−253℃以下の極低温で液化して貯蔵する液体水素方式、水素吸蔵合金に水素を吸蔵する吸蔵合金方式等が挙げられる。特に、吸蔵合金方式は、超高圧、極低温といった特殊状態で水素を貯蔵する必要がないため、取り扱いが容易で安全性が高く、しかも単位体積当たりの水素貯蔵量が高いという優れた特徴を有している。
吸蔵合金方式を採用した発電装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に係る発電装置は、粉末状の水素吸蔵合金を貯蔵した貯蔵室を備えており、貯水容器に貯えられた水を貯蔵室に注入することによって水素ガスを発生させ、発生した水素を燃料電池に供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−298670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る発電装置においては、粉末状の水素吸蔵合金を貯蔵した貯蔵室に水を注入することによって水素ガスを発生させる構成であるため、貯蔵室に注入された水が全て反応するまで水素ガスの発生は停止せず、水素ガスの発生を十分に制御できないという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、従来の発電装置に比べ、固体物質及び水の接触によって発生する水素の発生量をより正確に制御することを可能にするガス源収容体及び発電装置を提供することを目的とする。また、水素のみに限らず、所望のガス発生量を正確に制御することを可能にするガス源収容体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス源収容体は、特定の液体物質に接触することによって溶出し、ガスを発生させる固体物質と、該固体物質を保持する保持部材とを備え、前記固体物質を下方側から前記液体物質に浸漬させるようにしてあるガス源収容体であって、前記保持部材は、前記固体物質の下部が前記液体物質に溶出した場合、溶出した分、前記固体物質が下方側へ移動できるように、該固体物質を保持していることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るガス源収容体は、前記保持部材は内部に通液可能な筒部を備え、前記固体物質は、前記筒部の内径よりも小寸法であり、該筒部の内部に配されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るガス源収容体は、前記固体物質は固形物であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るガス源収容体は、前記固体物質は環状又は筒状の固形物をなし、前記保持部材は、前記固形物の内径より小さい外径を有する棒状部分を備え、該棒状部分に、前記固形物が挿嵌されていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るガス源収容体は、水素源収容体であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るガス源収容体は、前記固体物質は、マグネシウムを主成分とする複数の薄片を所定形状に圧縮形成した圧縮物と、水素ガスとを反応させてなるマグネシウム基水素化物であり、前記液体物質は水であることを特徴とする。
【0013】
本発明に係るガス源収容体は、前記固体物質を収容する固体物質収容室と、前記液体物質を収容する液体物質収容室と、該液体物質収容室に収容された液体物質を前記固体物質収容室へ供給する液体物質供給路と、前記固体物質収容室で前記固体物質及び液体物質の接触によって発生したガスを外部へ送出するガス送出路とを備え、前記保持部材は、前記固体物質を前記液体物質収容室における液面の昇降方向に配して保持しており、前記ガス送出路のガス入口は、前記液体物質供給路の液体物質出口よりも上方側に配されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る発電装置は、上述に記載のガス源収容体を備え、該ガス源収容体は、前記固体物質及び液体物質の接触によって水素を発生させるようにしてあり、前記固体物質及び液体物質の接触によって発生した水素にて発電を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、保持部材に保持された固体物質を、液体物質に接触させることによって、ガスを発生させる。特に、固体物質は、保持部材によって保持されているため、保持部材に保持された固体物質と、液体物質とを隔離させた状態においては、固体物質が液体物質に流れ出すことが無く、ガスは発生しない。液体物質の液面に、保持部材に保持された固体物質を下方側から浸漬させた場合、固体物質が溶出し、ガスが発生する。また、固体物質の下部が溶出した場合、溶出した分、固体物質が下方へ移動するため、保持部材を液体物質の液面に浸漬させる量に対して発生する水素の量の関係を一定に保ちやすくなる。なお、固体物質の下方への移動は、該固定物質の自重によるものが簡便、かつ低コストであり、好ましい。ただし、これに限定するものでは無く、固体物質を下方へ付勢する付勢手段を備え、該付勢手段の付勢力にて、固定物質を下方へ移動させるようにしても良い。
【0016】
本発明にあっては、固体物質が筒部の内径より小寸法であるため、固体物質は筒部の内面に妨げられることなく下方へ移動しやすくなる。
【0017】
本発明にあっては、固形物質が固形物であるため、粉体に比べて水切り性が良く、液体物質の液面から固形物を引き上げた場合、又は液体物質の液面を降下させて固体物質と、液体物質とを隔離させた場合、液体物質は、固形物の表面を伝って降下し、ガスの発生を速やかに停止させることが可能である。
【0018】
本発明にあっては、固形物が環状又は筒状であって、その内径が、保持部材の棒状部分の外径より大きいため、固体物質は棒状部分の外面に妨げられることなく下方へ移動しやすくなる。
【0019】
本発明にあっては、水素を発生させるための水素源収容体であるため、燃料供給源に用いると有用である。
【0020】
本発明にあっては、マグネシウムを主成分とする複数の薄片を所定形状に圧縮形成した圧縮物と、水素ガスとを反応させることによってマグネシウム基水素化物を形成している非粉末状であるため、水切り性が良く、従来の水素源収容体に比べ水素発生量の制御性が高い。
【0021】
本発明にあっては、本発明のガス源収容体または水素源収容体は、ガス送出路のガス入口、または水素送出路の水素入口が、前記液体物質供給路の液体物質出口よりも上方側に配置されているので、液体物質がガスまたは水素の送出路入口に浸入し難いので好ましい。
また、本発明の水素発生量の制御性が高いガス源収容体を備えた発電装置は、極めて有用である。
【発明の効果】
【0022】
本発明にあっては、従来のガス源収容体に比べ、ガスの発生量をより正確に制御することができる。
特に、燃料電池の水素を発生させる水素源収容体として発電装置に備えることで極めて有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1に係る発電装置を模式的に示す一部破断斜視図である。
【図2】発電装置を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】発電停止状態における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図4】水素化物保持部材の構成を模式的に示す斜視図である。
【図5】水素化物保持部材の構成を模式的に示す側断面図である。
【図6】発電状態における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図7】発電停止時における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。
【図8】発電装置の使用過程におけるマグネシウム基水素化物の形状変化を模式的に示した説明図である。
【図9】本発明で使用するMgインゴットの例を示す模式的斜視図である。
【図10】Mgインゴットを切削する方法を示す模式図である。
【図11】Mgインゴットの切削により作成されたMg薄片を示す模式的平面図である。
【図12】Mg薄片を圧縮・成型する方法を示す模式図である。
【図13】Mg薄片の圧縮物の例を示す模式図である。
【図14】Mgと水素ガスとを反応させる反応装置の構成例を示す模式図である。
【図15】水素ガス雰囲気中におけるMgと水素との簡略的な平衡状態図である。
【図16】MgH2 を製造するために水素ガス雰囲気の温度を調整した温度履歴の例を示す特性図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る水素源収容体の構成を模式的に示す側断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る水素源収容体の使用方法を模式的に示す側断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る水素化物保持部材の構成を模式的に示す斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る水素化物保持部材の構成を模式的に示す側断面図である。
【図21】本発明の実施の形態4に係る発電装置の発電停止状態における構成を模式的に示す側断面図である。
【図22】本発明の実施の形態4に係る発電装置の発電開始時における構成を模式的に示す側断面図である。
【図23】本発明の実施の形態5に係る発電装置の発電停止状態における構成を模式的に示す側断面図である。
【図24】本発明の実施の形態5に係る発電装置の発電開始時における構成を模式的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳述する。
(本発明の実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る発電装置を模式的に示す一部破断斜視図、図2は、発電装置を模式的に示す分解斜視図、図3は、発電停止状態における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。
本発明の実施の形態に係る発電装置は、マグネシウム基水素化物(固体物質)28及び水(液体物質)27を収容し、該マグネシウム基水素化物28の加水分解によって発生した水素を送出する水素源収容体(ガス源収容体)2と、水素源収容体2を着脱自在に装着し、水素源収容体2から送出された水素にて発電を行う発電装置本体1とを備える。
【0025】
水素源収容体2は、端部が閉塞された金属製又は樹脂製の筒状をなし、マグネシウム基水素化物28及び水27を収容する収容室20を備える。収容室20は、円筒部、該円筒部の軸長方向一端側(図3中上側)に形成された天板部、前記円筒部の軸長方向他端側(図3中下側)を縮径してなる首部20c、及び首部20cから突出し、発電装置本体1に装着される円筒状の被装着部20dから構成されている。
【0026】
また、水素源収容体2は、収容室20の前記一端側に形成された第1隔壁21と、前記他端側に形成された第2隔壁22とを備えている。第1隔壁21は、水27を収容するための水収容室(液体物質収容室)20aを収容室20の前記一端側に形成している。第1及び第2隔壁22は、マグネシウム基水素化物28を収容するための水素化物収容室(固体物質収容室)20bを収容室20の前記他端側に形成している。
【0027】
第1隔壁21の適宜箇所には、水収容室20aに収容された水27を、水素化物収容室20bへ供給するための水供給管(液体物質供給路)23が設けられている。水供給管23は、水素化物収容室20b側へ突出しており、水供給管23の水出口23aは第2隔壁22に近接している。
なお、水供給管23は、水素化物収容室20bの容器外に配置しても良い。
【0028】
第2隔壁22の適宜箇所には、水素化物収容室20bでマグネシウム基水素化物28の加水分解によって発生した水素を外部へ送出する水素送出管24が設けられている。水素送出管24は、第2隔壁22を貫通しており、水素入口24aは第1隔壁21に近接している。つまり、水素入口24aが、水出口23aよりも水収容室20a寄りに位置するように構成され、水27が水素送出管24に浸入しにくい構造としている。また、水素送出管24の水素出口24b側に、常閉型の弁装置25を備える。弁装置は、水素源収容体2が発電装置本体1から離脱した場合、閉状態になり、水素源収容体2が発電装置本体1に装着された場合、開状態になる。
なお、水素送出管24は、水素化物収容室20bの容器外に配置しても良い。
弁装置25は、例えば、水素送出管24の軸長方向への移動が可能な弁体と、該弁体よりも水素出口24b側に設けられており、前記弁体によって水素送出管24を開閉するための弁座と、該弁体を弁座方向へ付勢する付勢手段とを備える。装着部16は、水素送出管24に挿入され、前記弁体を、弁座から離隔する方向へ押圧するピンを備える。このように弁装置25を構成した場合、水素源収容体2が発電装置本体1に装着された場合、ピンによって弁装置25が開状態になり、水素源収容体2が発電装置本体1から離脱した場合、弁体が弁座に着座するため、弁装置25は閉状態になる。
【0029】
水収容室20aは、所定量の水27を収容している。水収容室20aの適宜箇所には、水27を通さない空気孔20eが設けられている。空気孔20eは、水27が水収容室20a及び水素化物収容室20b間を移動するために必要な細孔である。空気孔20eを構成する材料として、ガスは通すが水は遮断する膜又は多孔質体、好ましくは疎水性の分離膜又は分離多孔質体を用いると、水素源収容体2が誤って横転した際に水がこぼれ出すおそれがないので好ましい。
この空気孔20eは、使用前は蓋材、栓、キャップ等の密封部材で液密に閉鎖されており、使用時には密封部材を開封することで外部と連通するようになっている。これにより、水素源収容体2の保管時には空気孔20eは外部と連通していないため、収容された水の揮発や余計な外気の進入が遮断され内容物の長期保存性が確保される。
【0030】
水素化物収容室20bの第2隔壁22には、マグネシウム基水素化物28を、水素化物収容室20b内の水位の昇降方向に、配して保持する水素化物保持部材(保持部材)26が設けられている。
【0031】
図4は、水素化物保持部材26の構成を模式的に示す斜視図、図5は、水素化物保持部材26の構成を模式的に示す側断面図である。
水素化物保持部材26は、略十字形の保持基板26dを備え、中心交差部が第2隔壁22の中心部に略一致するよう、第2隔壁22に固定されている。保持基板26dの中心交差部には、円環部が形成され、水素送出管24が貫通している。また、保持基板26dの4つの各先端部は円板状に形成されており、該先端部には、前記昇降方向を長手方向とする保持筒(筒部)26aが立設されている。つまり、水素化物保持部材26の保持筒26aは、第2隔壁22に対して略垂直に立設されている。また、水素化物保持部材26の保持筒26aは、水素化物収容室20bの内周面から離隔している。
なお、4本の保持筒26aを立設してなる水素化物保持部材26を例示しているが、保持筒26aの本数は、4本に限定されず、1〜3本、又は5本以上でも良い。保持筒26aの本数は、一般的に水素の必要量、即ち発電容量の必要量に応じて適宜決定すれば良い。
【0032】
保持筒26aは、両端に亘って周壁に形成された長手方向の通水スリット26bを複数有している。保持筒26aの開口した先端部には、保持筒26aの開口を着脱可能に閉塞する蓋部26cが嵌合している。なお、保持筒26aの基部側は、保持基板26dによって閉鎖されている。各保持筒26aは、その長手方向に配されるように、円柱状のマグネシウム基水素化物28を収容保持している。
【0033】
各保持筒26aに収容保持されているマグネシウム基水素化物28は、図4及び図5に示すように、保持筒26aの長手方向に積み上げられた複数の固形物であるマグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…から構成されている。各マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…は、直径が保持筒26aの内径よりも小寸であり、かつ通水スリット26bの周方向幅よりも大寸の円柱状である。なお、マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…は、円板状に形成しても良い。本実施の形態に係る発電装置に好適なマグネシウム基水素化物28の製造方法については後述する。
なお、上述の構成によれば、保持筒26aに保持されたマグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…が自重で下方へ移動可能な構成であるが、更に付勢手段を備えても良い。具体的には、保持筒26aの上部と、最上部のマグネシウム基水素化物ブロック28aとの間に、各マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…を下方へ付勢する付勢手段、例えばコイルバネを備えても良い。
【0034】
一方、発電装置本体1は、略直方体形状をなす筐体10と、筐体10に収容された燃料電池11とを備える。筐体10の天面の略中央部には、水素源収容体2を着脱自在に収容するための装着部16が設けられている。
【0035】
装着部16は、平面視円形の凹部を形成しており、装着部16の底部の略中心には、一端側が燃料電池11に接続された接続管17の他端部が設けられている。装着部16に水素源収容体2が装着された場合、接続管17の他端部が水素送出管24の水素出口24bに接続されるように構成されている。なお、装着部16は、水素源収容体2を着脱自在に装着するねじ機構である。但し、水素源収容体2を着脱自在に装着できる構成であれば、ねじ機構に限定されない。また、接続管17の前記他端部には、水素出口24b及び前記一端部をシールするシール部材が設けられている。接続管17の途中には、該接続管17を開閉する開閉弁17a及び除湿機17bが設けられている。開閉弁17aは、発電装置の使用者によって手動で開閉できるように構成されている。
水素源収容体2から送出されるガスには水素のみならず水蒸気が含まれており、除湿器17bは、前記ガスを除湿し、乾燥した水素を燃料電池11へ送出するように構成されている。なお、除湿機17bは、開閉弁17aの前記他端部又は燃料電池11側に設けても良い。また、燃料電池11の動作に問題が無ければ、除湿機17bを設けなくても良い。
【0036】
また、発電装置本体1は、空気を燃料電池11へ供給するための空気供給管18、燃料電池11から排出される空気及び水蒸気を排気する排気管19、及び排気ファン15を備える。
【0037】
燃料電池11は、例えば低温で動作可能な固体高分子燃料電池(PEFC)である。燃料電池11は、水素源収容体2から供給された水素と、空気供給管18から供給された空気中の酸素とに基づいて電気エネルギーを取り出す複数の単セルを備えている。単セルの積層方向両端には、各単セルで発電した電力を集電する矩形平板状の正極集電部及び負極集電部が設けられている。
燃料電池11は、発電量が多い程、水素を消費し、水素の通流量が多くなる。従って、燃料電池11は、発電量に応じて開閉する開閉弁として機能する。言い換えると、燃料電池11は、開閉弁17aと共に、水素化物収容室20b内の水位を昇降させる水位昇降手段として機能する。
【0038】
更に、発電装置本体1は、燃料電池11から出力された直流の電圧を直流/直流変換する定電圧電源12a及び直流を交流に直流/交流変換する直流交流変換器12bと、定電圧電源12a及び直流交流変換器12bから出力された直流及び交流を出力する第1電源コネクタ13a及び第2電源コネクタ13bを備える。定電圧電源12aは、5Vの直流を第1電源コネクタ13aから出力する。第1電源コネクタ13aは、例えばUSB端子であり、筐体10の側壁に設けられている。直流交流変換器12bは、直流を100Vの交流に変換し、該交流を第2電源コネクタ13bへ出力する。第2電源コネクタ13bは、筐体10の側壁に設けられており、商用100Vコンセントと同一規格で構成されている。
【0039】
更にまた、発電装置本体1は、定電圧電源12aから出力された直流によって発光する発光部14を備える。発光部14は、例えば発光ダイオードであり、筐体10の天面に設けられている。
【0040】
図6は、発電状態における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。図3に示した状態で、開閉弁17aが開状態になった場合、水素化物収容室20b内のガス、特に水素が水素送出管24、接続管17を介して燃料電池11へ供給される。水素化物収容室20b内の水素が送出された場合、水素化物収容室20b内の内圧が低下するため、水収容室20aに収容された水27は水供給管23を通じて自重で水素化物収容室20bへ移動する。なお、水27が全て水素化物収容室20bへ移動した際に水素送出管24内に水27が浸入しないよう、予め水27の量を調整しておくことが好ましい。あるいは、水素化物収容室20b内で、水素化マグネシウムの上端乃至水素送出管24上端の高さ位置に、前述のガスは通すが水は遮断する膜又は多孔質体を設けるか、水素送出管24の上端部にこの膜又は多孔質体を設けると良い。
【0041】
図6に示すように、水素化物収容室20bに水27が供給された場合、水素化マグネシウムと水27とが接触し、加水分解反応によって水素が発生する。水素化マグネシウムと水27との反応は、下記化学式(1)で表される。
MgH2 +2H2 O→Mg(OH)2 +2H2 …(1)
【0042】
水素化物収容室20bで発生した水素は、水素送出管24及び接続管17を通じて燃料電池11へ供給される。燃料電池11は、水素源収容体2から供給された水素と、空気とを用いて発電を行う。燃料電池11における化学反応は下記化学式(2)で表される。
2H2 +O2 →2H2 O…(2)
【0043】
図7は、発電停止時における発電装置の構成を模式的に示す側断面図である。図6に示した状態で、開閉弁17aが閉状態になった場合、燃料電池11は発電を停止する。また、開閉弁17aが閉じた状態で、水素化マグネシウムの加水分解が進行するため、水素化物収容室20bの内圧が上昇する。水素化物収容室20b内の水27は、水供給管23を通じて該内圧によって水収容室20a側へ移動する。水面が水素化マグネシウムよりも下方になった場合、加水分解反応が停止する。
【0044】
図8は、発電装置の使用過程におけるマグネシウム基水素化物28の形状変化を模式的に示した説明図である。図8(a)は発電装置の使用開始初期段階におけるマグネシウム基水素化物28の形状を模式的に示している。図8(a)に示すように、マグネシウム基水素化物28の下端側の方が他端側に比べて水に接触する時間が長いため、マグネシウム基水素化物28は、加水分解によって前記下端側から円錐状に溶解する。
更に加水分解反応進行した場合、図8(b)及び(c)に示すように、マグネシウム基水素化物28の先端部が溶解するに連れて、自重によって下方へ移動する。このため、昇降した水と接触するマグネシウム基水素化物28の形状は、略同形状に維持される。
【0045】
従って、水の供給量と、水素の発生量との関係を略一定に制御することが可能になる。また、マグネシウム基水素化物28は、水位の昇降方向を長手方向とする円柱状であり、かつその下端側は下方に尖端を有する円錐状になるため、水切り性が良く、水素の発生量の制御性を向上させることができる。
【0046】
<マグネシウム基水素化物の製造方法>
まず、単体のMgの塊であるMgインゴットを切削することにより、Mg薄片を作成する。このとき、Mg薄片の厚みは、20μm等の45μm未満の厚みとする。Mg粉末の粒径を45μm未満とすることは困難であるものの、薄片とすることで、厚みを45μm未満とすることが可能となる。次に、作成した多数のMg薄片を所定量集積し、集積したMg薄片を金型及びプレス機を用いて圧縮・成型することにより、所定の形状に成型されたMgの圧縮物を作成する。次に、Mgの圧縮物を水素ガス雰囲気中に配置し、水素ガスの温度・圧力を調整することにより、圧縮物中のMgと水素ガスとを反応させる。水素ガスの温度・圧力を調整する方法は、特許第4083786号公報に開示された方法と同様の方法を用いる。Mgと水素ガスとの間で下記化学式(3)に示す反応が発生し、マグネシウム基水素化物28であるMgH2 が製造される。
Mg + H2 → MgH2 …(3)
【0047】
図9は、本発明で使用するMgインゴットの例を示す模式的斜視図である。Mgインゴット41は、金属Mgを長尺の板状に成型したインゴットである。Mgインゴット41の幅及び厚みは、後述するMg薄片の長さ及び幅があまり大きくなり過ぎないサイズにする。例えば、Mgインゴット41の厚みは1〜3mm、Mgインゴット41の幅は25mm程度とする。
【0048】
図10は、Mgインゴット41を切削する方法を示す模式図である。Mgインゴット41を切削する切削装置は、円周面に複数の切削刃52,52,…を設けてある回転ドラム51と、回転ドラム51に対してMgインゴット41を押し付ける送り機53とを備える。回転ドラム51が回転することにより、切削刃52,52,…は円運動を行う。回転ドラム51は、内部に冷却水が通流し、冷却される構成となっている。送り機53は、Mgインゴット41を長尺方向に移動させ、回転する回転ドラム51に対してMgインゴット41の端を押し付ける。回転ドラム51の回転によって円運動を行う切削刃52,52,…は、押し付けられるMgインゴット41を端から繰り返し切削する。このとき、切削刃52はMgインゴット41の厚み方向又は幅方向に移動してMgインゴット41の端を削り取り、切削刃52,52,…が順次Mgインゴット41の端を削り取ることにより、Mgインゴット41の端が繰り返し切削される。切削刃52により削り取られたMgインゴット41の切れ端がMg薄片となる。切削装置は、回転ドラム51及び送り機53をグローブボックス内に備え、Mgインゴット41の切削をアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中で行うことができる構成となっている。爆発の防止のため、Mgインゴット41の切削は不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。
【0049】
図11は、Mgインゴット41の切削により作成されたMg薄片42を示す模式的平面図である。Mg薄片42は長尺の線状に形成される。Mg薄片42の幅はMgインゴット41の厚みに相当するサイズとなり、Mg薄片42の長さはMgインゴット41の幅に相当するサイズとなる。例えば、Mg薄片42の幅は1〜3mm、Mg薄片42の長さは25mm程度となる。Mg薄片42の厚みは、切削刃52,52,…が回転ドラム51の円周面に設けられた間隔、回転ドラム51の回転速度、及び送り機53によるMgインゴット41の送り速度によって決定される。実際には、Mgインゴット41の送り速度を制御することによってMg薄片42の厚みを調整する。このとき、Mg薄片42の厚みが20μm〜30μmになるようにMgインゴット41の送り速度を制御する。Mg薄片42は、線状に形成することにより、Mg薄片42を集積した場合には互いに絡み合って大量に集積し易く、また圧縮することによって容易に変形する。
【0050】
図12は、Mg薄片42を圧縮・成型する方法を示す模式図である。多数のMg薄片42が集積した集積物43を金型61に投入し、プレス機62によりMg薄片42の集積物43をプレスする。プレスによってMg薄片42の集積物43は圧縮され、Mg薄片42の集積物43を圧縮した圧縮物が作成される。図13は、Mg薄片42の圧縮物44の例を示す模式図である。Mg薄片42の圧縮物44は、Mg薄片42の集積物43が投入された金型61内の形状に応じた形状に成型される。図13には、Mg薄片42の圧縮物44が円柱形状に形成された例を示している。Mg薄片42の圧縮物44の形状及びサイズは、金型61の形状及びサイズを変更することにより調整することができる。図13にはMg薄片42の圧縮物44を円柱状に成型した例を示したが、棒状、板状又は直方体状等、その他の形状に成型することも可能である。実際には、Mg薄片42の圧縮物44の形状は、MgH2 を利用する機器に合わせた適切な形状に調整すれば良い。
【0051】
図14は、Mgと水素ガスとを反応させる反応装置の構成例を示す模式図である。反応装置は、加熱炉72内に、Mg薄片42の圧縮物44及び高圧の水素ガスを封入できる封入容器71を配置して構成されている。封入容器71は、内部の雰囲気を高温高圧に保つことができる耐圧容器であり、内部にMg薄片42の圧縮物44を配置することができる構成となっている。なお、封入容器71内には、複数の圧縮物44を配置するようにしても良い。また封入容器71には、高圧水素ボンベ及び圧力調整器等からなり、封入容器71内に高圧の水素ガスを供給する水素ガス供給部75が設けられている。更に封入容器71には、減圧器及びマイクロコントローラ等からなり、封入容器71内の水素ガス雰囲気の圧力を任意の圧力に制御することができる圧力制御部76が設けられている。
【0052】
加熱炉72は、加熱炉72内を加熱するためのヒータ73,73、封入容器71内外の温度を検出する温度センサ74,74を備えている。温度センサ74,74には例えば熱電対が用いられる。ヒータ73,73及び温度センサ74,74は、ヒータ73,73に加熱用の電流を供給する電源及びマイクロコントローラ等からなる温度制御部77に接続されている。温度制御部77は、封入容器71内の温度を任意の温度に制御することができる。なお、反応装置はより多数の温度センサ74,74を備えた形態でも良い。
【0053】
反応装置で封入容器71内の水素ガス雰囲気の圧力・温度を調整する方法は、特許文献1に開示された方法を用いる。即ち、水素ガスの温度・圧力を、Mg及びH2 が熱力学的に安定な温度・圧力に一旦維持し、次にMgH2 が熱力学的に安定な温度・圧力に維持する方法を用いる。図15は、水素ガス雰囲気中におけるMgと水素との簡略的な平衡状態図である。図中の横軸は水素ガス雰囲気中の温度を示し、縦軸は水素ガス雰囲気の圧力を示す。MgとH2 とが化合してMgH2 が生成する(3)式の反応は可逆反応であり、MgH2 がMgとH2 とに分解する逆反応が存在する。図15中の曲線は、(3)式の反応とその逆反応との平衡曲線を示す。平衡曲線の右側にある温度・圧力領域では、MgH2 がMgとH2 とに分解する反応の方が支配的となっており、この温度・圧力領域ではMgとH2 とが熱力学的に安定に共存する。平衡曲線の左側にある温度・圧力領域では、MgとH2 とが化合してMgH2 が生成する反応の方が支配的となっており、この温度・圧力領域ではMgH2 が熱力学的に安定に存在する。
【0054】
図16は、MgH2 を製造するために水素ガス雰囲気の温度を調整した温度履歴の例を示す特性図である。圧力制御部76により水素ガス雰囲気の圧力を4MPaの一定に保ちながら、温度制御部77により水素ガス雰囲気の温度を室温から550℃まで上昇させ、平衡曲線上の4MPaに対応する温度よりも高温の550℃に温度を維持させる第1の熱処理を行う。第1の熱処理中では、温度・圧力領域はMgとH2 とが安定に共存する領域であり、水素ガスによる還元反応により、Mg表面の皮膜が除去される。次に、圧力制御部76により水素ガス雰囲気の圧力を4MPaの一定に保ちながら、温度制御部77により、水素ガス雰囲気の温度を400℃まで低下させ、平衡曲線上の4MPaに対応する温度よりも低温の400℃に温度を所定期間維持させる第2の熱処理を行う。第2の熱処理中では、温度・圧力領域はMgH2 が安定な領域であり、Mg薄片42の圧縮物44に含まれるMgと水素ガスとが反応し、MgH2 が生成される。なお、ここで説明した温度及び圧力の値は一例であり、Mg及びH2 が安定な温度・圧力に一旦維持して次にMgH2 が安定な温度・圧力に維持する方法を用いるのであれば、具体的な温度及び圧力の値はどのような値を用いても良い。
【0055】
以上説明した製造方法により、MgH2 の固形物、即ちマグネシウム基水素化物ブロック28aが製造される。製造されたマグネシウム基水素化物ブロック28aは、図13に示すMg薄片42の圧縮物44とほぼ同等の形状をなし、MgがMgH2 となった分だけ体積が膨張している。Mg薄片42の圧縮物44を製造する際には、MgH2 の固形物が圧縮物44よりも膨張することを考慮に入れた上で、MgH2 の固形物のサイズがMgH2 を利用する機器に合わせた適切なサイズになるように圧縮物44のサイズを調整すれば良い。MgH2 の固形物は所定の形状に成型されているので、保管、運搬、及び水素発生装置での取り扱いが容易である。
【0056】
以上、このように構成された実施の形態に係る発電装置及び水素源収容体2にあっては、マグネシウム基水素化物28は、水素化物保持部材26によって、水位の昇降方向に配されているため、水位が降下する際、水はマグネシウム基水素化物28を伝って降下し易く、水切り性が良い。従って、従来の発電装置に比べ、マグネシウム基水素化物28及び水の接触によって発生する水素の発生量をより正確に制御し、発電量を制御することができる。
【0057】
また、マグネシウム基水素化物28は、保持筒26aの長手方向に沿って、移動可能であるため、マグネシウム基水素化物28の加水分解によって下端部が溶解しても、都度、マグネシウム基水素化物28は自重で下方へ移動する。従って、マグネシウム基水素化物28及び水の接触面積を一定に維持することができ、水素発生量の制御性を向上させることができる。
なお、ここで、マグネシウム水素化物28を上方側からさらに、ばね等の付勢手段によって、下方に移動させる力を追加させてもよい。
【0058】
更に、保持筒26aに形成された通水スリット26bは、保持筒26aの両端に亘って形成されているため、単なる孔状に比べ、通水及び排水性に優れている。従って、水素の発生量及び発電量をより正確に制御することができる。
【0059】
更にまた、マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…は、マグネシウムを主成分とする複数の薄片を所定形状に圧縮形成した圧縮物と、水素ガスとを反応させて円柱状に形成してあるため、粉末状のマグネシウム基水素化物を用いる場合に比べて、水切り性が高く、効果的に水素の発生量を制御することができる。
また、前記方法で製造したマグネシウム基水素化物28を用いた場合、原理は定かではないが水27を接触させるだけで、効果的に加水分解反応を誘発させ、水素を発生させ、発電を行うことができる。言い換えると、水素化マグネシウム及び水27を加熱するヒータ等の加熱手段を備えることなく、発電装置を構成することができる。また、加熱手段を必要としないため、エネルギー源の一部を加熱手段に供給する必要がなく、効率的に発電を行うことができる。
【0060】
更にまた、保持筒26aが複数立設されているため、1本の保持筒26aを備える場合比べて、マグネシウム基水素化物28及び水の接触面積が大きく、より効果的に水素を発生させることができる。
【0061】
更にまた、水素化物保持部材26の保持筒26aは、水素化物収容室20bの内周面から離隔しているため、水素源収容体2が転倒し、水収容室20aの水が水素化物収容室20bに侵入して、その内周面に溜まっても、該水は、マグネシウム基水素化物28に接触しない。従って、水素の不測の発生を防止することができる。
【0062】
更にまた、水素化マグネシウムが水素の放出を終えた際、水素源収容体2を発電装置1から一旦取り外して取り回しよく簡易に水素化マグネシウム及び水27を交換し、再び接続後発電を行うことができる。
【0063】
更にまた、発電装置本体1側の開閉弁17aを開閉させるだけで、水素源収容体2における加水分解反応を制御することができ、簡単な構成で発電装置を構成することができる。
【0064】
更にまた、水収容室20a及び水素化物収容室20bを収容室20の軸長方向上下に夫々形成してあるため、発電の際、水収容室20aに収容された略全量の水が水素化物収容室20bへ移動する。従って、水収容室20a及び水素化物収容室20bを水平方向に並設する場合に比べて、水収容室20aの容積を小さくすることができ、全体として、水素源収容体2を小型化することができる。水収容室20a及び水素化物収容室20bを水平方向に並設した場合、略半分量の水が水収容室20aに残ってしまうが、本実施の形態に係る発電装置にあっては、略全量の水27が水素化物収容室20bへ移動する。
【0065】
更にまた、燃料電池の発電中に発光する発光部を備えることにより、発電装置の動作状態を使用者に知らせることができる。
【0066】
なお、実施の形態1では、マグネシウムを主成分とする複数の薄片を所定形状に圧縮形成した圧縮物と、水素ガスとを反応させて円柱状に形成したマグネシウム基水素化物を説明したが、前記マグネシウム基水素化物の製造方法は特にこれに限定されない。
また、例えば、粒子状のマグネシウム基水素化物を、網状体から形成した有底筒状体の中に長手方向に集積・配列させてもよいし、あるいは、粉体状のマグネシウム基水素化物を、粉体物は通さず溶解物は通す、目の細かいフィルター(例えば濾紙やセラミック)などで形成した有底筒状体の中に長手方向に集積・配列させてもよい。
更に、マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…を積み上げている実施の形態を説明したが、マグネシウム基水素化物ブロック28a,28a,…を一体で構成しても良い。
【0067】
更に、保持筒の形状として円筒状を説明したが、昇降方向に長手方向を有する形状であれば、特に円筒状に限定されない。また、通水孔である通水スリットの形状もスリット状に限定されない。例えば、通水スリットに代えて、略円形の小孔、多孔質材を採用しても良い。
【0068】
更にまた、水素化物収容室内のマグネシウム基水素化物に超音波を与える超音波発生部を備えても良い。超音波発生部は、例えば水素化物収容室内の第2隔壁に設けられており、燃料電池から給電されるように構成される。超音波発生部は、例えば、マイクロコンピュータの制御部によって制御され、少なくとも約20kHz〜100kHz、特に28kHz又は100kHzの周波数を有する超音波を発することができる。マグネシウム基水素化物は超音波によって振動し、マグネシウム基水素化物に付着した水素ガスが早期に離脱するため、マグネシウム基水素化物と、水との加水分解反応が活性化し、水素の発生量及び発電量が上昇する。
【0069】
更にまた、水素源収容体の収容室の円筒部に水を加熱するヒータを設けても良い。ヒータと、燃料電池とは給電線にて接続され、燃料電池から該給電線を通じてヒータへ給電されるように構成されている。給電線は、ヒータから収容室の首部及び被装着部に亘って配線された水素源収容体側給電線と、燃料電池から発電装置本体側の装着部に配線された発電装置本体側給電線と、水素源収容体及び燃料電池本体に着脱によって、水素源収容体側給電線及び発電装置本体側給電線を接離させる給電線接続部とから構成されている。また、発電装置本体側給電線の途中には、開閉スイッチが設けられ、開閉弁の開閉動作に機械的に連動して、開閉するように構成されている。つまり、開閉弁が開状態になった場合、開閉スイッチが閉状態になり、閉状態になった場合、開閉スイッチが開状態になる。なお、言うまでもなく、マイクロコンピュータの制御部を設け、該制御部が、開閉弁の開閉動作及び開閉スイッチの入切動作を制御するように構成しても良い。なお、ヒータを円筒部に設ける例を説明したが、収容室内の水を加熱することが可能であれば、他の適宜箇所にヒータを設けても良い。
以上のように、収容室内の水を加熱するヒータを設けた場合、マグネシウム基水素化物の加水分解反応が促進されるため、効果的に水素を発生させ、発電を行うことができる。
【0070】
更にまた、水又はマグネシウム基水素化物に、クエン酸等の酸性物質、又はアルカリ物質を添加しても良い。
酸性物質又はアルカリ物質を添加することによって、マグネシウム基水素化物の加水分解反応を促進することができ、効果的に水素を発生させ、発電を行うことができる。
【0071】
更にまた、水素源収容体の一例として円筒形状の実施形態を説明したが、水収容室及び水素化マグネシウムを夫々上下に備える構成であれば、その形状は特に限定されない。
【0072】
更にまた、発電装置本体の構成も一例にすぎず、水素化マグネシウムを着脱自在に装着する装着部、及び水素源収容体から送出された水素によって発電を行う燃料電池を備える構成であれば、筐体の形状、装着部の位置等、特に限定されない。
【0073】
更にまた、5V直流及び100V交流を出力するように構成してあるが、必要な電力の態様に応じて、5V及び100V以外の直流及び交流を出力するように構成しても良い。
【0074】
更にまた、固定物質及び液体物質の一例として、マグネシウム基水素化物及び水を説明したが、接触によってガスを発生させることができる構成であれば、他の物質を利用しても良い。例えば、固体物質として、酸素発生剤、液体物質として水を利用しても良い(例えば、特開平2−296702号公報,特公昭60−44242号公報)。酸素発生剤は、炭酸ソーダと、過酸化水素等の中和剤と、二酸化マンガン等の触媒との混合物などで構成される。
【0075】
更にまた、実施の形態1では、非粉末状のマグネシウム基水素化物を説明したが、粉末状のマグネシウム基水素化物を用い、例えば、濾紙等のフィルターを底部付きの保持筒に形成してその中に粉体を集積させるように構成しても良い。
【0076】
(本発明の実施の形態2)
実施の形態2に係る水素源収容体2及び発電装置は、水素源収容体2の長期保存を可能にする構成を備えている点が異なるため、以下では、主に上記相異点について説明する。
【0077】
図17は、本発明の実施の形態2に係る水素源収容体2の構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態2に係る水素源収容体2は、使用開始前の保管時において、水収容室20aに収容された水又は水蒸気が水素化物収容室20bへ流入しないよう、水供給管23を封ずるバリア膜29bを、水供給管23と、水収容室20aとの連通部分に備える。
収容室20の天板部(図17中、底側の板部)には、孔部が設けられており、該孔部には、バリア膜29bを破膜するための破膜ピン29aが上下方向、即ち、収容室20の中心線方向に沿って移動可能に挿通している。破膜ピン29aは、水収容室20aの上下方向の寸法よりも長い棒状であり、バリア膜29b側に、バリア膜29bを破膜する尖部を有し、反対側に破膜ピン29aをバリア膜29b側へ移動させるための押圧部を有する。また、破膜ピン29aは、収容室20からの脱落を防止するための係止凸部(不図示)を途中に有する。
また、収容室20の天板部(図17中、底側の板部)には、水素源収容体2を倒立させ、天板部を下にして水素源収容体2を保管する際、破膜ピン29aが押圧されないように、凸部20fが設けられている。凸部20fは、例えば、天板部の外周にわたって環状に形成しても良いし、天板の外周に沿って、間欠的に複数設けても良い。
【0078】
図18は、本実施の形態2に係る水素源収容体2の使用方法を模式的に示す側断面図である。まず、図18(a)に示すように、水素源収容体2の使用を開始する際、破膜ピン29aの押圧部を押圧して破膜ピン29aを押し込み、バリア膜29bを破る。
【0079】
次いで、図18(b)に示すように、水素化物収容体を、発電装置本体1に取り付け、破膜ピン29aを引き出すことによって、水収容室20a内の水が、水素化物収容室20bへ流入可能になり、水素を発生させることが可能な状態になる。以後の使用方法は、上述の実施の形態1と同様である。
【0080】
実施の形態2に係る水素源収容体2にあっては、バリア膜29bによって、水収容室20aの水又は水蒸気が水素化物収容室20bに流入しないように構成されているため、水素源収容体2を長期保管することが可能になる。
また、破膜ピン29aを押し込むという簡単な操作で、水素源収容体2の使用を開始することができる。
【0081】
(本発明の実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る発電装置は、水素化物保持部材126の構成が実施の形態1に係る発電装置と異なるため、以下では主に上記相異点を説明する。
図19は、本発明の実施の形態3に係る水素化物保持部材126の構成を模式的に示す斜視図、図20は、本実施の形態3に係る水素化物保持部材126の構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態3に係る水素化物保持部材126は、実施の形態と同様の保持基板126dを備える。保持基板126dの4つの各先端部には、昇降方向を長手方向とする棒状部分126aが立設されている。つまり、水素化物保持部材126の棒状部分126aは、第2隔壁22に対して略垂直に立設されている。
【0082】
棒状部分126aの尖端部には、マグネシウム基水素化物128の抜け落ちを防止する円板状の抜け落ち防止部材126cが着脱可能に嵌合している。各棒状部分126aは、その長手方向に配されるように、円筒状のマグネシウム基水素化物128を保持している。
【0083】
各棒状部分126aに収容保持されているマグネシウム基水素化物128は、図19及び図20に示すように、棒状部材の長手方向に積み上げられた複数のマグネシウム基水素化物ブロック128a、128a、…から構成されている。各マグネシウム基水素化物ブロック128a、128a、…は、棒状部分126aの直径よりも長寸の内径を有する筒状をなし、棒状部分126aに、長手方向へ移動可能に挿嵌されている。マグネシウム基水素化物128の製造方法については上述の実施の形態1と同様である。
なお、4本の棒状部分126aを立設してなる水素化物保持部材126を例示しているが、棒状部分126aの本数は、4本に限定されず、一般的に水素の必要量、即ち発電容量の必要量に応じて適宜決定すれば良い。
【0084】
実施の形態3にあっては、水素化物保持部材126の構成をより簡素化し、実施の形態に係る発電装置と同様の効果を奏する。
【0085】
また、マグネシウム基水素化物ブロック128a、128a、…は、棒状部分126aに挿嵌しているため、水位が降下した際に、マグネシウム基水素化物ブロック128a、128a、…の周面と水素化物保持部材126との間に残留する水が無い。従って、上述の実施の形態に比べて高応答で水素の発生量及び発電量を制御することができる。
【0086】
(本発明の実施の形態4)
本発明の実施の形態4に係る発電装置は、マグネシウム基水素化物228を、水没させる方向へ進退させることによって、水素の発生量を制御するように構成した点が上述の実施の形態1とは異なるため、以下では主に上記相異点を説明する。
図21は、本発明の実施の形態4に係る発電装置の発電停止状態における構成を模式的に示す側断面図、図22は、本実施の形態4に係る発電装置の発電開始時における構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態4に係る発電装置は、マグネシウム基水素化物228と、所定量の水とを収容する収容室220を備える。収容室220は、例えば中空円柱状をなし、円板状の底板と、該底板に周設された周壁と、該周壁の上端に設けられた天板とを有する。天板の略中心部には孔部が形成されている。該孔部には、駆動軸(進退手段)226eが、収容室220の中心線方向に進退可能に貫通し、天板及び駆動軸226e間は、図示しないOリング等のシール部材によってシールされている。駆動軸226eは、駆動部(進退手段)229によって駆動する。駆動部229は、例えばリニアモータである。収容室220内に突出している駆動軸226eの先端部には、マグネシウム基水素化物228を保持する水素化物保持部材226が設けられており、駆動軸226eの進退によって、マグネシウム基水素化物228は水没する方向へ進退する。
【0087】
水素化物保持部材226の構成は、実施の形態における水素化物保持部材と同様であり、保持基板226dと、進退方向にマグネシウム基水素化物228が配されるように該マグネシウム基水素化物228を保持する保持筒226aと、蓋部226cとを備える。保持筒226aは、両端に亘って周壁に形成された長手方向の通水スリット226bを複数有している。保持筒226aに収容保持されているマグネシウム基水素化物228は、保持筒226aの長手方向に積み上げられた複数のマグネシウム基水素化物ブロックから構成されている。
また、収容室220の周壁であって、水面よりも上側の適宜箇所には、一端側が燃料電池11に接続された接続管17の他端部が接続され、燃料電池11に連通している。接続管17には、実施の形態と同様の除湿機17b及び開閉弁17aが設けられている。更に、燃料電池11には、空気供給管18、排気管19及び排気ファン15、並びに定電圧電源12a、直流交流変換器12b、第1電源コネクタ13a及び第2電源コネクタ13bが設けられている。
【0088】
本実施の形態4に係る発電装置にあっては、本発明の実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
また、マグネシウム基水素化物228を進退させることによって、マグネシウム基水素化物228及び水を接触させる構成であるため、水を昇降させる構成に比べて、高応答で水素の発生量及び発電量を制御することができる。
【0089】
なお、水素化物保持部材226をモータ駆動する例を説明したが、手動で水素化物保持部材226を駆動し、マグネシウム基水素化物228を進退させるように構成しても良い。
【0090】
(本発明の実施の形態5)
本発明の実施の形態5に係る発電装置は、水素化物保持部材326の構成と、マグネシウム基水素化物328を、水没させる方向へ進退させることによって、水素の発生量を制御するように構成した点が上述の実施の形態とは異なるため、以下では主に上記相異点を説明する。
図23は、本発明の実施の形態5に係る発電装置の発電停止状態における構成を模式的に示す側断面図、図24は、本実施の形態5に係る発電装置の発電開始時における構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態5に係る発電装置は、本発明の実施の形態4と同様、マグネシウム基水素化物328と、所定量の水とを収容する収容室320と、駆動軸326eと、駆動部329と、水素化物保持部材326とを備える。
【0091】
水素化物保持部材326の構成は、本発明の実施の形態3における水素化物保持部材126と同様であり、保持基板326dを備える。保持基板326dの4つの各先端部には、進退方向を長手方向とする棒状部分326aが立設されている。棒状部分326aの尖端部には、マグネシウム基水素化物328の抜け落ちを防止する円板状の抜け落ち防止部材326cが着脱可能に嵌合している。各棒状部分326aは、その長手方向に配されるように、円筒状のマグネシウム基水素化物328を保持している。各棒状部分326aに収容保持されているマグネシウム基水素化物328の構成も本発明の実施の形態3と同様である。
【0092】
本実施の形態に係る発電装置にあっては、本発明の実施の形態1と同様の作用効果を奏する。
【0093】
前述した本発明の実施の形態1乃至5は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。
本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
例えば、ガスとして水素に限らず、救命器具、美容器具として酸素を発生させるためのガス源収容体とし、過炭酸ソーダまたは過ホウ酸ソーダあるいは過酸化カルシウムに、必要に応じて触媒を水溶性物にて固めたもの(例えば二酸化マンガン等の金属塩を、ポリビニルアルコールやアラビア糊などの水溶性物にて固めたもの)を固体物質とし、水を加える構成としてもよい。その他にも、様々なガスの供給源に活用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、上述のように、発電装置、救命機具、美容機具、その他、機器の使用に際して特定のガスの発生制御を要するあらゆる機械器具に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 発電装置本体
2 水素源収容体
11 燃料電池
16 装着部
17 接続管
17a 開閉弁
18 空気供給管
19 排気路
20 収容管
20a 水収容室
20b 水素化物収容室
23 水供給管(液体物質供給路)
23a 水出口
24 水素送出管
24a 水素入口
25 弁装置
26 水素化物保持部材
26a 保持筒(筒部)
26b 通水スリット
26c 蓋部
26d 保持基板
27 水
28 マグネシウム基水素化物
28a マグネシウム基水素化物ブロック
226e 駆動軸(進退手段)
229 駆動部(進退手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の液体物質に接触することによって溶出し、ガスを発生させる固体物質と、該固体物質を保持する保持部材とを備え、前記固体物質を下方側から前記液体物質に浸漬させるようにしてあるガス源収容体であって、
前記保持部材は、
前記固体物質の下部が前記液体物質に溶出した場合、溶出した分、前記固体物質が下方側へ移動できるように、該固体物質を保持していることを特徴とするガス源収容体。
【請求項2】
前記保持部材は内部に通液可能な筒部を備え、
前記固体物質は、前記筒部の内径よりも小寸法であり、該筒部の内部に配されていることを特徴とする請求項1に記載のガス源収容体。
【請求項3】
前記固体物質は固形物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス源収容体。
【請求項4】
前記固体物質は環状又は筒状の固形物をなし、
前記保持部材は、
前記固形物の内径より小さい外径を有する棒状部分を備え、該棒状部分に、前記固形物が挿嵌されている
ことを特徴とする請求項1に記載のガス源収容体。
【請求項5】
水素源収容体であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載のガス源収容体。
【請求項6】
前記固体物質は、
マグネシウムを主成分とする複数の薄片を所定形状に圧縮形成した圧縮物と、水素ガスとを反応させてなるマグネシウム基水素化物であり、
前記液体物質は水である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載のガス源収容体。
【請求項7】
前記固体物質を収容する固体物質収容室と、
前記液体物質を収容する液体物質収容室と、
該液体物質収容室に収容された液体物質を前記固体物質収容室へ供給する液体物質供給路と、
前記固体物質収容室で前記固体物質及び液体物質の接触によって発生したガスを外部へ送出するガス送出路と
を備え、
前記保持部材は、
前記固体物質を前記液体物質収容室における液面の昇降方向に配して保持しており、前記ガス送出路のガス入口は、
前記液体物質供給路の液体物質出口よりも上方側に配されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載のガス源収容体。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載のガス源収容体を備え、
該ガス源収容体は、前記固体物質及び液体物質の接触によって水素を発生させるようにしてあり、
前記固体物質及び液体物質の接触によって発生した水素にて発電を行うことを特徴とする発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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