説明

ガス漏洩監視システム

【課題】ガス配管からのガス漏洩の度合いの変化を早い段階で的確に検知することができるガス漏洩監視システムを提供する。
【解決手段】ガス漏洩監視システムSは、締結バンド22でガス漏れ抑止の応急処置が施されたガスの配管21が存在する屋内空間10を換気する換気装置30と、屋内空間10に設置される第1ガス検知器41と、換気装置30の排気ダクト32内に配置される第2ガス検知器42と、第1及び第2ガス検知器41、42による検知データを収集する集合装置50とを含む。第2ガス検知器42は、漏洩ガスを含む応急処置部の周辺空気を排気する排気ダクト32のガス濃度を検知するので、屋内空間10が実際に危険状態に至る前段階の状態を的確に知見することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの流通配管が存在する屋内空間のガス漏洩を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
都市ガスの配管に腐食等によってガス漏洩が生じた場合、配管の漏洩箇所の周囲を金属製の締結バンドで覆ったり、テーピング被覆したりする応急処置が施され、後日に恒常的な措置として配管の交換等が行われる。このような応急処置のステップが介在するのは、ガス漏洩の通報後に直ちに現場の状況に即した交換用配管を準備することが困難なこと、ユーザの業務状況等によって配管交換のためのガス供給停止が即時に行えないこと等による。従って、一定期間は、配管の漏洩箇所に応急処置だけが施与された状態が続くこととなる。
【0003】
しかし、ガス圧力が中圧クラス以上になると、上記の応急処置だけでガス漏洩を完全に止めることは困難である。また、配管の湾曲部分に漏洩箇所が存在しているような場合は、とりわけ漏洩を抑止することが難しい。従って、応急処置期間中は、微量のガス漏洩が常時生じることを前提にした対策が求められる。
【0004】
例えば、漏洩が生じている配管が屋内空間に存在している場合は、その屋内空間を常時換気する共に、作業員が携帯型ガス検知器で屋内空間のガス濃度を定期的に計測するという手法が取られている。しかし、作業員を24時間現場に常駐させることは困難な場合が多いことから、屋内空間にガス検知センサを配置し、その検知データを通信装置で監視センターに送信させてガス漏洩の状況を遠隔監視する手法が専ら取られている。なお、屋内空間においてガス漏洩を検知する従来技術として、例えば特許文献1〜5を例示することができる。
【特許文献1】実開平59−47843号公報
【特許文献2】特開平5−52720号公報
【特許文献3】特開平10−311812号公報
【特許文献4】特開2001−153771号公報
【特許文献5】特開2006−90891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、応急処置を施しただけでは、ガス漏洩を完全に抑止することは困難であり、またガス漏洩の度合いが徐々に大きくなっていくことも想定せねばならない。しかし、このようなガス漏洩の度合いの変化を、作業員の定期的な監視や、屋内空間に設置したセンサの検知結果だけでは迅速且つ的確に検知できないことがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたものであって、ガス配管からのガス漏洩の度合いの変化を早い段階で的確に検知することができるガス漏洩監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス漏洩監視システムは、ガスの流通配管が存在する屋内空間を換気する換気手段と、前記屋内空間に設置される第1のガス検知手段と、前記換気手段による前記屋内空間の排気経路に配置される第2のガス検知手段と、前記第1及び第2のガス検知手段による検知データを収集するデータ集合装置と、を具備することを特徴とする(請求項1)。
【0008】
上記構成によれば、屋内空間に第1のガス検知手段が設置されるだけでなく、屋内空間の排気経路に第2のガス検知手段が配置されている。第2のガス検知手段は、屋内空間から強制排気される空気中のガス濃度を計測することになるので、ガス漏洩が配管から生じている場合は、第1のガス検知手段よりも濃いガス濃度を検知することになる。また、第1のガス検知手段は、換気手段による屋内空間の換気がガス漏洩に勝っている場合は、殆どガスを検知しないこととなる。一方、ガス漏洩の度合いが増すと、第2のガス検知手段は濃いガス濃度を検知するようになり、また換気手段による屋内空間の換気がガス漏洩に追いつかなくなると、第1のガス検知手段も徐々に濃いガス濃度を検知するようになる。従って、このような関係を利用することで、ガス漏洩の度合いの変化を早い段階で的確に検知することができる。
【0009】
上記構成において、前記換気手段が、ガス漏れ抑止の応急処置が施されたガスの流通配管が存在する屋内空間を換気するものであることは、本発明の好適な用途の一つである(請求項2)。この構成によれば、応急処置部分からのガス漏洩、並びにガス漏洩度合いの変化を迅速且つ的確に検知できる。
【0010】
上記構成において、前記換気手段は、前記排気経路としての排気ダクトを備え、前記第2のガス検知手段は、前記排気ダクト内に配置されることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、排気ダクトという閉じた空間に第2のガス検知手段が配置されるので、第2のガス検知手段の検知感度を上げることができる。
【0011】
上記構成において、前記データ集合装置が、所定のサンプリング周期で前記検知データを記憶する記憶手段を備えていることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、ガス濃度の推移等のデータを、事後的に確認することが可能となる。
【0012】
上記構成において、前記データ集合装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続された外部機器をさらに備え、前記外部機器は、前記データ集合装置が収集した検知データを取得可能とされていることが望ましい(請求項5)。この構成によれば、屋内空間から離れた遠隔地において、通信ネットワークを介した外部機器を使用してガス漏洩の遠隔監視を行うことができる。
【0013】
上記いずれかの構成において、前記データ集合装置が、前記検知データに基づいて前記屋内空間及び前記排気経路のガス濃度を求め、予め設定された判定基準と前記ガス濃度とを照合することでガス漏れ状態を判定する判定手段を含むことが望ましい(請求項6)。この場合、前記判定手段は、前記屋内空間及び/又は前記排気経路のガス濃度が所定のレベルを超過したと判定したときに、警報信号を発信することが望ましい(請求項7)。これらの構成によれば、判定手段の出力値若しくは警報信号に基づいて、ガス漏れ状態を迅速に知見することができるようになる。
【0014】
この場合、前記判定手段は、第1の危険レベルとして設定された第1のガス濃度と、前記第1の危険レベルよりも高い危険度である第2の危険レベルとして設定された第2のガス濃度とを前記判定基準として備え、前記第2のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第1のガス濃度を超過したときに第1の警報信号を発信し、前記第1のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第1のガス濃度を超過したときに第2の警報信号を発信し、前記第2のガス検知手段及び/又は前記第1のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第2のガス濃度を超過したときに第3の警報信号を発信することが望ましい(請求項8)。この構成によれば、危険レベルの段階に応じて警報信号が発信されるので、管理者等はその危険レベルに応じて的確な対応策をとることが可能となる。
【0015】
上記構成において、前記データ集合装置が、前記警報信号が発信された場合に所定の報知動作を行う報知手段を備えていることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、データ集合装置の周囲にガス漏れ状態に応じた報知を行わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス漏洩監視システムによれば、屋内空間に第1のガス検知手段を設置すると共に、屋内空間の排気経路に第2のガス検知手段を配置するようにしたので、ガス配管からのガス漏洩の度合いの変化を早い段階で的確に検知することができる。従って、危険度が低い段階において、屋内空間のガス漏洩対策を講じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るガス漏洩監視システムSのハード構成を示す概略図である。このガス漏洩監視システムSは、工場、商業施設、ビルなどの需要者へ都市ガスを供給する配管系統20におけるガス漏洩の監視のために好適なシステムである。配管系統20は、公道の地中等に埋設されている導管から都市ガスを事業者の構内へ引き込むための配管であるが、ここでは建屋の内部(屋内空間10)の部分に存在する配管系統20を示している。
【0018】
配管系統20を構成する配管21は、一般に金属材料で構成された強固な配管ではあるが、老朽化や腐食等によって劣化し、ガス漏れが生じることがある。図1では、配管21にガス漏洩が生じ、その漏洩箇所の周囲が金属製の締結バンド22で覆われている例を示している。なお、上述した通り、締結バンド22による被覆は応急処置であり、後日に漏洩が生じている配管21は新たな配管に交換される。
【0019】
本実施形態のガス漏洩監視システムSは、この応急処置後、新たな配管に交換されるまでの間において、屋内空間10におけるガス漏洩を監視するためのものである。配管21が、ガス圧力が高い配管である場合、たとえ締結バンド22で応急処置を施したとしても、完全にガス漏洩を抑止することは困難である。従って、ガス漏洩監視システムSは、ガス漏洩が生じることを前提とし、ガス漏洩の度合いの変化を把握することを目的とした監視システムである。
【0020】
ガス漏洩監視システムSは、屋内空間10を換気する換気装置30(換気手段)と、屋内空間10の適所に設置される第1ガス検知器41(第1のガス検知手段)と、換気装置30による屋内空間10の排気経路に配置される第2ガス検知器42(第2のガス検知手段)と、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42による検知データを収集する集合装置50(データ集合装置)と、集合装置50と通信ネットワークを介して通信可能に接続された外部機器60とを具備して構成されている。
【0021】
換気装置30は、換気扇31と排気ダクト32とを備えている。換気扇31は、吸気及び排気の機能を有し、好ましくはその吸気側が配管21の締結バンド22による応急処置部を指向するように配置される。排気ダクト32は、屋内空間10の排気経路を構成する蛇腹状の筒体である。排気ダクト32の入口側321は、換気扇31の排気側に接続され、出口側322は、屋内空間10の屋外に配置されている。従って、換気扇31で吸気された屋内空間10の空気は、排気ダクト32を介して屋外へ排気される。
【0022】
第1ガス検知器41は、屋内空間10のガス濃度を検知するもので、赤外線方式、半導体方式等、各種のセンシング方式のものが採用できる。図1では、第1ガス検知器41がカメラ用の三脚411に支持されたアームに取り付けられ、その設置位置を自在に調整できるようにしている例を示している。
【0023】
第2ガス検知器42は、排気ダクト32内を通る空気中のガス濃度を検知するもので、同様に赤外線方式、半導体方式等、各種のセンシング方式のものが採用できる。ここでは、第2ガス検知器42が排気ダクト32の中間位置付近に配置され、そのプローブ部421が排気ダクト32の筒状内部空間内に突設されている態様を例示している。なお、第2ガス検知器42の設置位置は図1の態様に限らず、換気扇31の吸気側付近、若しくは排気側付近、排気ダクト32の入口側321の付近、若しくは出口側322の付近であっても良い。
【0024】
集合装置50は、ガス漏洩に対する応急処置が施された配管21が存在する現場付近に配置され、当該現場の監視端末として機能する。集合装置50は、ガス漏洩の危険レベルが増したときに点灯される警告灯501(報知手段)が備えられている。警告灯501は、例えばLED表示灯やパトランプであり、集合装置50の周囲に対してガス漏れ状態に応じた警告表示を行う。この警告表示の際、警告音を伴うようにしても良い。
【0025】
外部機器60は、PHS端末機、携帯電話機、若しくはパーソナルコンピュータ等からなり、通信回線やインターネットを介して集合装置50に接続されている。この外部機器60は、集合装置50が収集した第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42による検知データを取得可能とされており、これにより屋内空間10から離れた遠隔地において、ガス漏洩の遠隔監視を行うことが可能とされている。
【0026】
図2は、集合装置50の電気的構成を示すブロック図である。集合装置50は、上記の警告灯501の他、インターフェイス51、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53(記憶手段)、通信部54、電源55及びCPU(Central Processing Unit)56を備えている。
【0027】
インターフェイス51は、集合装置50が第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42とのデータ通信を行うことを可能とするためのインターフェイスである。
【0028】
ROM52は、当該集合装置50の制御プログラムや各種の設定値等を記憶するものである。RAM53は、演算処理や制御処理などのデータが一時的に格納されるほか、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42による検知データが、それぞれサンプリング時刻に関連付けて格納される。このRAM53に格納された前記検知データは、外部機器60からのアクセス処理があった場合に開示される。さらに、RAM53には、屋内空間10のガス漏れ危険レベルの判定基準となるガス濃度に関する設定値が記憶されている(図3に基づき後述する)。
【0029】
通信部54は、外部機器60と通信ネットワークを介してデータの送受信を行う機能部である。外部機器60は、この通信部54を介して集合装置50にアクセスし、RAM53に格納されているガス濃度検知データの時間推移(例えば過去1〜6時間分)等の情報を取得できるようになっている。
【0030】
電源55は、集合装置50の各部に動作電力を供給するものであり、例えば防爆タイプのバッテリーが使用できる。なお、外部から電源コード等を介して集合装置50に動作電力を供給するようにしても良い。
【0031】
CPU56は、集合装置50の各部の動作、並びに第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42の動作を司るもので、ROM52に記憶されている制御プログラムが適宜読み出されることで、機能的に、測定制御部561及び判定処理部562(判定手段)を有するように動作する。
【0032】
測定制御部561は、所定のサンプリング周期(例えば1min)で第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42に検知動作を行わせ、その検知データを集合装置50に取得させる。そして、取得された前記検知データを、サンプリング時刻情報に関連付けてRAM53に格納させる。
【0033】
判定処理部562は、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42の検知データに基づいて、屋内空間10及び排気ダクト32内のガス濃度を求める(或いは、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42からガス濃度データを取得する)。そして、得られたガス濃度と、RAM53に格納されているガス濃度に関する設定値とを照合し、屋内空間10のガス漏れ状態に関する危険レベルを判定する。
【0034】
図3は、前記危険レベルの設定例を示すグラフである。図3の縦軸において「E」で示すガス濃度の閾値は爆発限界の下限値であり、熱量が13Aの都市ガスの場合は、ガス濃度=4.3%である。ここでは、この爆発下限値Eの1/100〜1/4のガス濃度の範囲を注意報域(第1の危険レベル)とし、爆発下限値Eの1/4〜Eのガス濃度の範囲を、前記注意報域よりも高い危険度である警報域(第2の危険レベル)として設定している例を示している。なお、この危険レベルの設定は状況に応じて行えば良く、また3段階以上の多段階に設定しても良い。
【0035】
判定処理部562は、屋内空間10及び/又は排気ダクト32のガス濃度が、上記のような注意報域若しくは警報域に達したとき、警報信号を生成する。この警報信号は、通信部54を介して外部機器60へ送信される。また、この警報信号に基づいて警告灯501の駆動信号が生成され、警告灯501を動作させる。当該警報信号の生成条件は適宜設定することができるが、例えば注意報域若しくは警報域に相当する検知データが一定期間連続して検知された場合に警報信号を発生することが望ましい。例えば、注意報域に相当する検知データが5分間連続して検知された場合に注意報信号を生成し、警報域に相当する検知データが1分間連続して検知された場合に警報信号を生成するよう設定することができる。これにより、警報信号の乱発を抑止できる。
【0036】
図3には、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42による検知データD1,D2の一例も記載している。検知データD1は第1ガス検知器41の検知データであり、検知データD2は第2ガス検知器42の検知データである。かかる検知データD1,D2を用いて、判定処理部562の動作例を説明する。
【0037】
図3において、全般に検知データD1よりも検知データD2の方が高い濃度を示しているのは、ガス漏洩が応急処置部から生じている場合に、その漏洩ガスを含む応急処置部の周辺空気が屋内空間10から排気ダクト32を通して強制排気されるため、排気ダクト32のガス濃度が屋内空間10よりも高くなるからである。従って、検知データD2は、屋内空間10が実際に危険状態に至る前段階の状態を示す検知データであると言うことができる。
【0038】
時刻T1では、検知データD1,D2とも、注意報域を下回るガス濃度の値を示している。この場合、応急処置部からのガス漏洩は微量であり、換気装置30による屋内空間10の換気が十分間に合っているということができる。
【0039】
続く時刻T2では、検知データD2が注意報域のレベルのガス濃度を示している。この時点で判定処理部562は、第1の注意報信号(第1の警報信号)を発信する。但し、この時刻T2でも、検知データD1の値は注意報域を下回る低いレベルにあることから、換気装置30による換気が追いついていると評価することができる。検知データD1に関しては、時刻T3、T4でも同様である。
【0040】
一方、時刻T5では、検知データD1も注意報域のレベルのガス濃度値を示している。これは、換気装置30による換気がもはや追いつかない程、屋内空間10のガス漏れ状態が悪化していることを示す。この状態になると、判定処理部562は、第2の注意報信号(第2の警報信号)を発信する。なお、検知データD2が注意報域のレベル超過した時刻と、検知データD1が注意報域のレベル超過した時刻との時間差より、ガス漏れの勢いを評価することが可能となる。図3の例では時刻T2と時刻T5との時間差であるが、この時間差が短い程、ガス漏れが急速に増大していると評価することができる。
【0041】
検知データD2についてみると、時刻T4で警報域のレベルのガス濃度の値を示している。この場合、ガス漏洩による屋内空間10の危険度が増している状態と評価されるので、判定処理部562は警報信号(第3の警報信号)を発信する。なお、この警報信号の発信は、検知データD1が警報域のレベルのガス濃度値となったとき、若しくは検知データD1、D2の双方が警報域のレベルのガス濃度値となったときに発信されるようにしても良い。
【0042】
上記のような構成によれば、危険レベルの段階に応じて注意報信号及び警報信号が発信されるので、外部機器60を保有する管理者等は、その危険レベルに応じて的確な対応策をとることが可能となる。なお、検知データD1が爆発下限値Eを超過するレベルのガス濃度値を示した場合、屋内空間10への立ち入りができない状態となる。この場合、判定処理部562は、立ち入り禁止の報知信号を発信する。
【0043】
上記構成において、外部機器60により換気装置30の換気扇31を遠隔制御可能とし、検知データD1又はD2が注意報域、若しくは警報域のレベルのガス濃度値であるときに、換気扇31の回転数を上げて換気容量を増加させるようにしても良い。
【0044】
以上説明した本実施形態に係るガス漏洩監視システムSの動作(特に危険レベルの判定処理)を、図4に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、ここでは図3に示した危険レベルの設定例を援用してフローを説明する。また、危険度合いに応じて、危険レベルが0〜4の段階で設定されるものとしている。
【0045】
システムの動作が開始されると、集合装置50の判定処理部562は、デフォルト値として危険レベル=0に設定する(ステップS1)。この状態で、測定制御部561は、サンプリング周期が到来したか否かを確認し(ステップS2)、サンプリング周期が到来すると(ステップS2でYES)、測定制御部561は、第1ガス検知器41及び第2ガス検知器42から検知データD1及び検知データD2(瞬時値)をそれぞれ取得すると共に、これら検知データD1、D2をサンプリング時刻情報に関連付けてRAM53に記憶させる(ステップS3)。
【0046】
次に、判定処理部562により、検知データD2の値が注意報域のガス濃度レベルの値であるか否かが判定される(ステップS4)。注意報域のレベルに至っていない場合(ステップS4でNO)、ステップS2に戻って処理が繰り返される。一方、注意報域のレベルに至っている場合(ステップS4でYES)、続いて判定処理部562は、検知データD1が注意報域のガス濃度レベルであるか否かを判定する(ステップS5)。
【0047】
検知データD1が注意報域のレベルに至っていない場合(ステップS5でNO)、判定処理部562は、排気ダクト32内のみが注意報域のガス濃度レベルに達したと判定し、危険レベル=1に設定し(ステップS6)、第1の注意報信号を発信する(ステップS7)。その後、ステップS1に戻り、危険レベルは「0」にリセットされる。
【0048】
これに対し、検知データD1が注意報域のレベルに至っている場合(ステップS5でYES)、引き続き判定処理部562は、検知データD2又は検知データD1の値が警報域のガス濃度レベルの値であるか否かを判定する(ステップS8)。検知データD1、D2のいずれもが警報域のレベルに至っていない場合(ステップS8でNO)、判定処理部562は、排気ダクト32内と屋内空間10とが注意報域のガス濃度レベルに達したと判定し、危険レベル=2に設定し(ステップS9)、第2の注意報信号を発信する(ステップS10)。その後、ステップS1に戻り、危険レベルは「0」にリセットされる。
【0049】
検知データD2又は検知データD1が警報域のレベルに至っている場合(ステップS8でYES)、さらに判定処理部562は、検知データD1の値が警報域のガス濃度レベルの値を超過しているか否かを判定する(ステップS11)。検知データD1の値が警報域を超過していない場合(ステップS11でNO)、判定処理部562は、排気ダクト32内又は屋内空間10が警報域のガス濃度レベルに達したと判定し、危険レベル=3に設定し(ステップS12)、警報信号を発信する(ステップS13)。その後、ステップS1に戻り、危険レベルは「0」にリセットされる。
【0050】
一方、検知データD1の値が警報域を超過している場合(ステップS11でYES)、判定処理部562は、屋内空間10が立ち入りできない状態になったと判定し、危険レベル=4に設定すると共に(ステップS14)、立ち入り禁止信号を発信する(ステップS15)。その後、ステップS1に戻り、危険レベルは「0」にリセットされる。
【0051】
以上説明した本実施形態に係るガス漏洩監視システムSによれば、屋内空間10に第1ガス検知器41を設置すると共に、屋内空間10の排気経路に第2ガス検知器42を配置するようにしたので、配管21からのガス漏洩の度合いの変化を早い段階で的確に検知することができる。従って、危険度が低い段階において、屋内空間10のガス漏洩対策を講じることができる。
【0052】
以上、本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係るガス漏洩監視システムSのハード構成を示す概略図である。
【図2】集合装置50の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】危険レベルの設定例を示すグラフである。
【図4】ガス漏洩監視システムSの動作(特に危険レベルの判定処理)示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
S ガス漏洩監視システム
10 屋内空間
20 配管系統
21 配管(ガスの流通配管)
22 締結バンド(応急処置部)
30 換気装置(換気手段)
31 換気扇
32 排気ダクト(排気経路)
41 第1ガス検知器(第1のガス検知手段)
42 第2ガス検知器(第2のガス検知手段)
50 集合装置(データ集合装置)
501 警告灯(報知手段)
51 インターフェイス
52 ROM
53 RAM(記憶手段)
54 通信部
55 電源
56 CPU
561 測定制御部
562 判定処理部(判定手段)
60 外部機器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流通配管が存在する屋内空間を換気する換気手段と、
前記屋内空間に設置される第1のガス検知手段と、
前記換気手段による前記屋内空間の排気経路に配置される第2のガス検知手段と、
前記第1及び第2のガス検知手段による検知データを収集するデータ集合装置と、
を具備することを特徴とするガス漏洩監視システム。
【請求項2】
前記換気手段は、ガス漏れ抑止の応急処置が施されたガスの流通配管が存在する屋内空間を換気するものであることを特徴とする請求項1に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項3】
前記換気手段は、前記排気経路としての排気ダクトを備え、
前記第2のガス検知手段は、前記排気ダクト内に配置されることを特徴とする請求項1に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項4】
前記データ集合装置が、所定のサンプリング周期で前記検知データを記憶する記憶手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項5】
前記データ集合装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続された外部機器をさらに備え、
前記外部機器は、前記データ集合装置が収集した検知データを取得可能とされていることを特徴とする請求項1又は4に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項6】
前記データ集合装置が、
前記検知データに基づいて前記屋内空間及び前記排気経路のガス濃度を求め、予め設定された判定基準と前記ガス濃度とを照合することでガス漏れ状態を判定する判定手段を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガス漏洩監視システム。
【請求項7】
前記判定手段は、前記屋内空間及び/又は前記排気経路のガス濃度が所定のレベルを超過したと判定したときに、警報信号を発信することを特徴とする請求項6に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項8】
前記判定手段は、第1の危険レベルとして設定された第1のガス濃度と、前記第1の危険レベルよりも高い危険度である第2の危険レベルとして設定された第2のガス濃度とを前記判定基準として備え、
前記第2のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第1のガス濃度を超過したときに第1の警報信号を発信し、
前記第1のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第1のガス濃度を超過したときに第2の警報信号を発信し、
前記第2のガス検知手段及び/又は前記第1のガス検知手段の検知データに基づくガス濃度が、前記第2のガス濃度を超過したときに第3の警報信号を発信する、
ことを特徴とする請求項7に記載のガス漏洩監視システム。
【請求項9】
前記データ集合装置が、前記警報信号が発信された場合に所定の報知動作を行う報知手段を備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載のガス漏洩監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−63313(P2009−63313A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229017(P2007−229017)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】