説明

ガス濃度検出装置

【課題】測温抵抗体のショートや水滴付着といった異常を検出することにより、上記異常に対処できるガス濃度検出装置を提供する。
【解決手段】 CPUが、ガス供給路に配置した測温抵抗体の抵抗値からガス濃度を求め、求めたガス濃度が急激に変化したとき、ヒータテストモードにして測温抵抗体Rsの抵抗値を測定し、ショート判定基準値よりも高いとヒータ加熱モードにして測温抵抗体に大電流を流して水滴を乾燥させ、ショート判定基準値以下であればセンサ異常モードにしてガス濃度の測定を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス濃度検出装置に係り、特に、例えば水素ガスなどの被測定ガスの濃度を検出するガス濃度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上述したガス濃度検出装置としては、発熱して温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体を用いたものが知られている。まず、この測温抵抗体を用いたガス濃度検出装置の原理について説明する。上記測温抵抗体は、被測定ガスの供給路に配置される。供給される被測定ガスの濃度が高くなるに従って被測定ガスの熱伝導率が高くなり、被測定ガスがより多くの熱量を測温抵抗体から奪う。この結果、測温抵抗体の抵抗値が下がる。即ち、測温抵抗体の抵抗値は被測定ガスの濃度に応じた値となり、この測温抵抗体の抵抗値に基づいてガス濃度を検出することができる。
【0003】
上述したガス濃度検出装置の一例として図6に示された熱伝導率計が提案されている(特許文献1)。この熱伝導率計は、H2(水素)ガスの濃度を検出するものである。同図において、1は試料ガス(例えば、測定対象ガスとしてH2ガス、共存ガスとしてN2ガスを含むガス)の給送通路に配置された測温抵抗体、R1、R2、R3は抵抗、3は比較器、4は熱伝導率算出部、5は濃度導出部、6はROMであり、測温抵抗体1、抵抗R1、R2、R3により恒温槽7内でホイートストンブリッジが組まれている。
【0004】
この熱伝導率計では、試料ガスが測温抵抗体1に給送され、その熱伝導率に比例した熱を奪う。これにより、測温抵抗体1の発熱温度TRhが変化し、その抵抗値Rhが変化する。抵抗R1と測温抵抗体1との接続点に生ずる電圧は出力電圧vとして比較器3の反転入力へ、抵抗R3と抵抗R2との接続点に生ずる電圧は比較器3の非反転入力へ与えられる。
【0005】
これにより、測温抵抗体1の温度変化が、出力電圧vの変化ΔVとして検出される。比較器3は、この検出した出力電圧vの変化ΔVに基づいて、測温抵抗体1へ流れる電流iを制御し、測温抵抗体1の抵抗値Rhを一定(Rh=(R1×R2)/R3)に保つ。これにより、出力電圧vが変化し、測温抵抗体1の発熱温度TRhが一定に保たれる。
【0006】
そして、熱伝導率算出部4が、出力電圧vから試料ガスの熱伝導率を求める。次に、濃度導出部5が、試料ガスの構成に応じ、ROM6に格納されている検量線の中からN2−H2検量線を読み出す。濃度導出部5が、読み出した検量線を参照して、熱伝導率算出部4にて算出された試料ガスの熱伝導率に基づいて、試料ガスに含まれるH2ガスの濃度を求め、この濃度を測定濃度値として出力する。
【0007】
上述した熱伝導率計では、異物の付着や故障によって測温抵抗体1がショートして抵抗値が下がると抵抗値を一定に保つため、測温抵抗体1に過大な電流iが供給される。測温抵抗体Rhに過大な電流iが供給されると、測温抵抗体Rhは異常発熱をし、センサが故障するなどの不具合が生じていた。
【0008】
また、上述した熱伝導率計では、測温抵抗体1に水滴が付着するとガス濃度に関係なく抵抗値が一時的に下がり、正確にガス濃度を検出することができない。測温抵抗体1は電流iにより発熱しているため水滴は乾燥するが、水滴が乾燥するまでの間は正確に濃度を検出することができない。
【0009】
しかしながら、上述した熱伝導率計では、測温抵抗体のショートや水滴付着といった異常を検出することができないため、上記異常に対処できない、という問題があった。
【特許文献1】特開平7−248304号公報
【特許文献2】特開2004−93203号公報
【特許文献3】特開2006−337243号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、測温抵抗体のショートや水滴付着といった異常を検出することにより、上記異常に対処できるガス濃度検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、を有するガス濃度検出装置において、前記電圧検出手段で検出され電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が急激に変化したときに異常を検出する異常検出手段を有することを特徴とするガス濃度検出装置に存する。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記異常検出手段が前記異常を検出したとき前記抵抗/電圧変換手段によって前記測温抵抗体に供給される電流を前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1電流から前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2電流に切り替える電流切替手段と、前記電流切替手段によって前記第2電流に切り替えられた後に前記電圧検出手段によって検出された電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が前記測温抵抗体に前記第2電流を流したときの抵抗値に応じて予め定められた閾値よりも高いとき、前記測温抵抗体に水滴が付着していることを検出する水滴検出手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置に存する。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記水滴検出手段によって前記測温抵抗体に水滴が付着していることを検出したとき、前記第1電流よりも高い第3電流を供給して前記水滴を乾燥させる水滴乾燥手段を有することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置に存する。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記異常検出手段が前記異常を検出したとき前記抵抗/電圧変換手段によって前記測温抵抗体に供給される電流を前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1電流から前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2電流に切り替える電流切替手段と、前記電流切替手段によって前記第2電流に切り替えられた後に前記電圧検出手段によって検出された電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が前記測温抵抗体に前記第2電流を流したときの抵抗値に応じて予め定められた閾値以下であるとき、前記測温抵抗体がショートしていることを検出するショート検出手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置に存する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように請求項1記載の発明によれば、測温抵抗体がショートしたり測温抵抗体に水滴が付着すると測温抵抗体の抵抗値が急激に変化することに着目し、異常検出手段が、電圧検出手段により検出された電圧から求めた測温抵抗体の抵抗値が急激に変化したとき異常を検出する。このため、測温抵抗体のショートや水滴付着といった異常を検出でき、上記異常に対処できるようになる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、水滴検出手段によって水滴の付着を検出することができるので、水滴付着に対処できるようになる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、水滴乾燥手段が、水滴検出手段によって測温抵抗体に水滴が付着していることを検出したとき、第1電流よりも高い第3電流を供給して水滴を乾燥させるので、速やかに水滴を乾燥させ、正確なガス濃度検出を再開することができる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、ショート検出手段によって測温抵抗体のショートを検出することができるので、測温抵抗体のショートに対処できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のガス濃度検出装置の一実施形態を示す回路図である。同図に示すように、ガス濃度検出装置は、被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体Rsと、被測定ガスの供給路に配置された温度センサ10と、測温抵抗体Rsに電流を供給してその測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧Voを発生させる抵抗/電圧変換回路11(抵抗/電圧変換手段)とを有している。
【0020】
上述した抵抗/電圧変換回路11は、ブリッジ回路11Aと、DAコンバータ11Bと、アンプ11Cと、計装アンプ11Dとを有している。ブリッジ回路11Aは、測温抵抗体Rsと共にホイートストンブリッジを組む固定抵抗R1、R2、R3から構成されている。測温抵抗体Rs及び固定抵抗R2は直列接続され、固定抵抗R1及び固定抵抗R3は直列接続されている。そして、測温抵抗体Rs及び固定抵抗R2から成る直列回路と、固定抵抗R1及び固定抵抗R3から成る直接回路とが、並列に接続されている。
【0021】
アンプ11Cは、DAコンバータ11Bから出力されるアナログ電圧を増幅し、その電圧V1をブリッジ回路11Aに供給している。ブリッジ回路11Aに電圧V1を供給すると、固定抵抗R2と測温抵抗体Rsとの接続点には、下記の式(1)に示す電圧V2が現れる。
V2=Rs/(Rs+R2)×V1 …(1)
【0022】
一方、固定抵抗R1と固定抵抗R3との接続点には、下記の式(2)に示す電圧V3が現れる。
V3=R3/(R1+R3)×V1 …(2)
【0023】
上記電圧V2は計装アンプ11Dの非反転入力に供給され、上記電圧V3は計装アンプ11Dの反転入力に供給される。そして、計装アンプ11Dからは下記の式(3)に示すように測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧Voが出力される。なお、計装アンプ11DのゲインはAvとする。
Vo=(V2−V3)×Av
={Rs/(Rs+R2)−R3/(R3+R1)}×V1×Av …(3)
【0024】
計装アンプ11Dから出力される電圧VoはADコンバータ12に供給される。また、温度センサ10からの出力もADコンバータ12に供給される。ADコンバータ12は、アナログの電圧Vo及び温度センサ10の出力をデジタル値に変換してマイコン13に対して供給する。
【0025】
マイコン13は、処理プログラムに従って各種の処理を行う演算処理装置(以下CPU)13Aと、CPU13Aが行う処理のプログラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM13Bと、CPU13Aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM13Cとを備えている。また、上記マイコン13は、DAコンバータ11Bの出力電圧も制御している。
【0026】
次に、上述した構成のガス濃度検出装置の動作について図2を参照して説明する。図2は、図1に示すガス濃度検出装置を構成するCPU13Aの処理手順を示すフローチャートである。まず、CPU13Aは、通常検出モードとなり、ガス濃度の検出を行う(ステップS1)。この通常検出モードにおいてCPU13Aは、測温抵抗体Rsに第1電流I1を供給して測温抵抗体Rsを最適に自己発熱させるようなデジタル値D1をDAコンバータ11Bに供給する。DAコンバータ11Bは、CPU13Aからのデジタル値D1をD/A変換してアナログ電圧を出力する。DAコンバータ11Bから出力されたアナログ電圧は、アンプ11Cによって増幅される。アンプ11Cによって増幅された電圧V1は、ブリッジ回路11Aに供給される。
【0027】
ブリッジ回路11Aにデジタル値D1に応じた電圧V1が供給されると、測温抵抗体Rsに自己発熱するような第1電流I1が供給され、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。CPU13Aが出力するデジタル値D1は、第1電流I1の供給によって測温抵抗体Rsに発生するジュール熱によって測温抵抗体Rsの温度を周囲温度よりも高くなるように設定されている。即ち、デジタル値D1は、測温抵抗体Rsが自己発熱するように設定されている。より詳しく説明すると、デジタル値D1に応じた第1電流I1を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より多いと測温抵抗体Rsの温度が周囲温度よりも高くなる。
【0028】
上述したように測温抵抗体Rsが自己発熱しているとき測温抵抗体Rsに被測定ガスを供給すると、被測定ガスはその濃度に応じた熱量を測温抵抗体Rsから奪う。従って、測温抵抗体Rsの温度は被測定ガスのガス濃度に応じた値となり、ADコンバータ12からは、測温抵抗体Rsの抵抗値、即ち測温抵抗体Rsの温度、ガス濃度に応じた電圧Voが出力される。
【0029】
そして、CPU13Aは、電圧検出手段、濃度検出手段として働きADコンバータ12が変換した電圧Voのデジタル値を取り込み、被測定ガスのガス濃度を演算する。このとき、CPU13Aは、温度センサ10の出力のデジタル値を取り込み、この温度センサ10のデジタル値に基づいて被測定ガスのガス濃度を温度補正する。その後、CPU13Aは、異常検出手段として働き、ステップS1で演算したガス濃度が急激に変動したか否かを判断し、ガス濃度に急激な変動がなければ(ステップS2でN)、正常と判断してステップS1に戻る。一方、CPU13Aは、ガス濃度が急激に変動していれば(ステップS2でY)異常を検出して、次のステップS3に進む。なお、CPU13Aは、ステップS2で演算されたガス濃度の単位時間当たりの変動量が所定値を超えているとき、ガス濃度に急激な変動があると判断する。所定値は、ガス濃度検出装置の設置環境などにより定められる。
【0030】
ステップS3において、CPU13Aは、電流切替手段として働き、ヒータテストモードとなり、測温抵抗体Rsが自己発熱しないようなデジタル値D2をDAコンバータ11Bに供給する。これにより、ブリッジ回路11Aにデジタル値D2に応じた電圧V1が供給され、測温抵抗体Rsに自己発熱しないような第2電流I2が供給され、測温抵抗体Rsにジュール熱が発生する。
【0031】
CPU13Aが出力するデジタル値D2は、第2電流I2の供給によって測温抵抗体Rsにジュール熱が発生しても測温抵抗体Rsの温度が周囲温度より高くならず、周囲温度と等しくなるように設定される。即ち、デジタル値D2は、測温抵抗体Rsが自己発熱しないように設定されている。より詳しく説明すると、デジタル値D2に応じた第2電流I2を流すことにより測温抵抗体Rsに発生する熱量が周囲に放熱される熱量より小さいと測温抵抗体Rsの温度は周囲温度と等しいままである。
【0032】
上述したように測温抵抗体Rsが自己発熱せずにその温度が周囲温度、即ちガス温度と等しいときは、被測定ガスによって奪われる熱量がない。このため、測温抵抗体Rsの抵抗値は被測定ガスのガス濃度に対してまったく不感となる。故に、計装アンプ11Dからの電圧Voは、ガス濃度に対してまったく不感となり測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた値となる。
【0033】
次に、CPU13Aは、ADコンバータ12によりデジタル値に変換された電圧Voを取り込み、電圧Voから測温抵抗体Rsの抵抗値を演算する(ステップS4)。なお、このとき、CPU13Aは、温度センサ10の出力に基づいて測温抵抗体Rsの抵抗値を温度補正する。その後、CPU13Aは、ステップS4で演算した測温抵抗体Rsの抵抗値がショート判別基準値を超えたか否かを判断する(ステップS5)。
【0034】
ショート判別基準値は、正常時の測温抵抗体Rsに第2電流I2を流したときの抵抗値を予め測定し、この測定した抵抗値よりも小さい値に設定されている。測温抵抗体Rsの抵抗値がショート判別基準値を超えていれば(ステップS5でY)、CPU13Aは、水滴検出手段として働き測温抵抗体Rsに水滴が付着していることを検出し、水滴乾燥手段として働きヒータ加熱モードとなる(ステップS6)。ヒータ加熱モードにおいてCPU13Aは、測温抵抗体Rsに第3電流I3を流すようなデジタル値D3をDAコンバータ11Bに出力する。
【0035】
なお、第3電流I3は、第2電流I2よりも高い値に設定されている。これにより、測温抵抗体Rsが発熱し水滴を速やかに乾燥させることができる。CPU13Aは、一定時間経過後(ステップS7でY)、デジタル値D3の出力を停止して測温抵抗体Rsの加熱を停止してから(ステップS8)、ステップS1に戻る。
【0036】
これに対して、測温抵抗体Rsの抵抗値がショート判別基準値以下であれば(ステップS5でN)、CPU13Aは、ショート検出手段として働き測温抵抗体Rsに異物が付着してショートが生じていると判断し、停止手段として働きセンサ異常モードを出力し(ステップS9)、ガス濃度の検出を終了する。
【0037】
次に、上述したガス濃度検出装置の動作の詳細について図3及び図4を参照して説明する。図3は、図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体Rsに水滴が付着したときの測温抵抗体Rsへの印加電圧、測温抵抗体Rsの温度、測温抵抗体Rsの抵抗値、演算されたガス濃度のタイムチャートを示す。図4は、図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体Rsがショートしたときの測温抵抗体Rsへの印加電圧、測温抵抗体Rsの温度、測温抵抗体Rsの抵抗値、演算されたガス濃度のタイムチャートを示す。
【0038】
図3に示すように、測温抵抗体Rsに水滴が付着すると、測温抵抗体Rsの温度が急激に下がる(図3(B)参照)。これに応じて測温抵抗体Rsの抵抗値が急激に下がり(図3(C)参照)、演算されるガス濃度が急激に上がる(図3(D)参照)。演算されるガス濃度が急激に上がると、CPU13Aが異常を検出してヒータテストモードにして測温抵抗体Rsに印加される電圧を下げる。これにより測温抵抗体Rsが自己発熱しなくなり、ガス濃度の影響を受けることなく測温抵抗体Rsの抵抗値を測定することができる。
【0039】
水滴が付着しているときは測温抵抗体Rsの抵抗値はショート判別基準値を上回るためCPU13Aは水滴付着を検出してヒータ加熱モードにする。これにより、水滴が乾燥して速やかに通常測定モードに戻ることができる。
【0040】
一方、図4に示すように、測温抵抗体Rsがショートすると、測温抵抗体Rsの抵抗値が急激に下がる(図4(C)参照)。これにより測温抵抗体Rsに供給される電流が増加し、測温抵抗体Rsの温度が上がり(図4(B)参照)、演算されるガス濃度が急激に上がる(図4(D))。演算されるガス濃度が急激に上がると、CPU13Aは、異常を検出して、ヒータテストモードにして測温抵抗体Rsに印加される電圧を下げる。これにより測温抵抗体Rsが自己発熱しなくなり、ガス濃度の影響をうけることなく測温抵抗体Rsの抵抗値を測定することができる。
【0041】
測温抵抗体Rsにショートが発生しているときは測温抵抗体Rsの抵抗値はほぼ0となりショート判別基準値以下となるためCPU13Aはショートを検出してセンサ異常モードにする。これにより、測温抵抗体Rsに供給される電流が遮断されるため、ショートが生じることによる不都合を防止することができる。
【0042】
上述したガス濃度検出装置によれば、測温抵抗体Rsがショートしたり測温抵抗体Rsに水滴が付着すると測温抵抗体Rsの抵抗値が急激に変化することに着目し、CPU13Aが、通常検出モードで演算したガス濃度が急激に変化したとき、電圧Voから求められる測温抵抗体Rsの抵抗値が急激に変化したと判断して異常を検出する。このため、測温抵抗体Rsのショートや水滴付着といった異常を検出でき、上記異常に対処できるようになる。
【0043】
また、上述したガス濃度検出装置によれば、ヒータテストモードにより第2電流I2に切り替えられた後に電圧Voから求めた測温抵抗体Rsの抵抗値がショート判別基準値よりも高いとき、測温抵抗体Rsに水滴が付着していることを検出するので、水滴付着に対処できるようになる。
【0044】
また、上述したガス濃度検出装置によれば、CPU13Aが、測温抵抗体Rsに水滴が付着していることを検出したとき、ヒータ加熱モードになり、第1電流I1よりも高い第3電流I3を供給して水滴を乾燥させるので、速やかに水滴を乾燥させ、正確なガス濃度検出を再開することができる。
【0045】
また、上述したガス濃度検出装置によれば、ヒータテストモードにより第2電流I2に切り替えられた後に電圧Voから求めた測温抵抗体Rsの抵抗値がショート判別基準値以下のとき、測温抵抗体Rsのショートを検出するので、測温抵抗体Rsのショートに対処できるようになる。
【0046】
また、上述したガス濃度検出装置によれば、CPU13Aが、測温抵抗体Rsのショートを検出したとき、センサ異常モードとなり被測定ガスの濃度検出を停止するので、測温抵抗体Rsに供給される電流が遮断され、センサが故障するなどの不具合を防止することができる。
【0047】
なお、上述した実施形態では、演算したガス濃度が急激に変化したとき異常を検出していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、電圧Voが急激に変化したときであってもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、CPU13AはDAコンバータ11Bに出力するデジタル値を切り替えることにより、ブリッジ回路11Aに流れる電流を切り替えていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図5に示すように、DAコンバータ11Bの代わりに、基準電圧14と、互いに直列接続された分圧抵抗R5〜R7と、マルチプレクサ15とを備えたものでもよい。
【0049】
上記マルチプレクサ15は、基準電圧Vref、電圧V4、電圧V5の何れか1つを選択してアンプ11Cに供給するものである。上記電圧V4は、基準電圧Vrefを分圧抵抗R5と分圧抵抗R6及びR7の直列抵抗とで分圧した電圧である。電圧V5は、基準電圧Vrefを分圧抵抗R5及びR6の直列抵抗と分圧抵抗R7とで分圧した電圧である。CPU13Aは、マルチプレクサ15の切替を制御することにより、ブリッジ回路11Aに流れる電流を切り替えることができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、抵抗/電圧変換手段としてブリッジ回路11Aを用いて測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を発生させていたが、本発明はこれに限ったものではない。抵抗/電圧変換手段としては、測温抵抗体Rsの抵抗値に応じた電圧を出力するものであればよい。
【0051】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のガス濃度検出装置の一実施形態を示す回路図である。
【図2】図1に示すガス濃度検出装置を構成するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体に水滴が付着したときの測温抵抗体への印加電圧、測温抵抗体の温度、測温抵抗体の抵抗値、ガス濃度のタイムチャートを示す。
【図4】図1に示すガス濃度検出装置を構成する測温抵抗体がショートしたときの測温抵抗体への印加電圧、測温抵抗体の温度、測温抵抗体の抵抗値、ガス濃度のタイムチャートを示す。
【図5】他の実施形態におけるガス濃度検出装置を示す回路図である。
【図6】従来のガス濃度検出装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0053】
Rs 測温抵抗体
11 抵抗/電圧変換回路(抵抗/電圧変換手段)
13A CPU(電圧検出手段、濃度検出手段、異常検出手段、電流切替手段、水滴検出手段、水滴乾燥手段、電流切替手段、ショート検出手段、停止手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスの供給路に配置されて温度に依存して抵抗値が変化する測温抵抗体と、該測温抵抗体に電流を供給して当該測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を発生させる抵抗/電圧変換手段と、該抵抗/電圧変換手段が発生した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧を検出する電圧検出手段と、該電圧検出手段が検出した前記測温抵抗体の抵抗値に応じた電圧に基づいて前記被測定ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、を有するガス濃度検出装置において、
前記電圧検出手段で検出され電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が急激に変化したときに異常を検出する異常検出手段を有することを特徴とするガス濃度検出装置。
【請求項2】
前記異常検出手段が前記異常を検出したとき前記抵抗/電圧変換手段によって前記測温抵抗体に供給される電流を前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1電流から前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2電流に切り替える電流切替手段と、
前記電流切替手段によって前記第2電流に切り替えられた後に前記電圧検出手段によって検出された電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が前記測温抵抗体に前記第2電流を流したときの抵抗値に応じて予め定められた閾値よりも高いとき、前記測温抵抗体に水滴が付着していることを検出する水滴検出手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。
【請求項3】
前記水滴検出手段によって前記測温抵抗体に水滴が付着していることを検出したとき、前記第1電流よりも高い第3電流を供給して前記水滴を乾燥させる水滴乾燥手段を有することを特徴とする請求項2に記載のガス濃度検出装置。
【請求項4】
前記異常検出手段が前記異常を検出したとき前記抵抗/電圧変換手段によって前記測温抵抗体に供給される電流を前記測温抵抗体の温度が周囲温度よりも高くなるような大きさの第1電流から前記測温抵抗体の温度が周囲温度と等しくなるような大きさの第2電流に切り替える電流切替手段と、
前記電流切替手段によって前記第2電流に切り替えられた後に前記電圧検出手段によって検出された電圧から求めた前記測温抵抗体の抵抗値が前記測温抵抗体に前記第2電流を流したときの抵抗値に応じて予め定められた閾値以下であるとき、前記測温抵抗体がショートしていることを検出するショート検出手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のガス濃度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−185424(P2008−185424A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18480(P2007−18480)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】