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ガス濃度測定装置および方法
説明

ガス濃度測定装置および方法

【課題】湿度が変化するような場合であっても、比色式の検知紙を用いた測定がより容易により正確にできるようにする。
【解決手段】反射率測定部102により、色素の反射スペクトルにおける検知紙101の反射率を測定する。次に、湿度計103により、検知紙101の雰囲気の湿度を測定する。次に、湿度計103により測定された湿度より算出した検知紙101が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙101が保持している色素の量および色素の吸光係数を乗じた色素補正値を補正値算出部104で算出する。次に、補正値算出部104が算出した色素補正値で測定された反射率を補正する。この後、濃度算出部106が、補正した反射率より、検知剤と反応した対象ガスの量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象のガスとの反応により光学特性が変化する検知剤を担持した検知紙を用いたガス濃度測定装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比色式のガス検知紙は、この検知紙に担持している検知剤がオゾンガスなどの特定ガスと反応して可視領域の反射スペクトルが変化する。従って、ガス検知紙の光学的な変化(色の変化)を目視により観察し、また、ガス検知紙の反射率の変化を測定することで、対象となるガスの測定が可能となる(特許文献1〜4参照)。例えば、測定対象ガスと反応した検知剤のスペクトル変化が最大の波長の反射率の変化により、測定対象ガスの濃度を算出することができる。
【0003】
また、スペクトル変化が最大である波長に加え他の波長を測定し、2波長のデータから対象ガスの濃度を算出する方法も報告されている(特許文献5参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−144729号公報
【特許文献2】WO2006/06623号公報
【特許文献3】特開平09−274032号公報
【特許文献4】特開2000−081426号公報
【特許文献5】特開2009−069048号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://www.airquality-j.com/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、対象ガスに触れることで色が変化する比色式のガス検知紙は、担持している検知剤が対象ガスと反応してスペクトル変化を示す以外に、検知紙の保持している水分量によっても検知紙のスペクトルが変化することが知られている。この検知紙が保持する水分量は、周囲の湿度によって変化する。このため、反応する検知剤のスペクトルの変化幅が大きい特定の一つの波長の反射率を測定するだけでは正確な対象ガス濃度が測定できなかった。また比色式のガス検知紙は化学的な反応を利用しているため、反応時の温度・湿度の影響を受け、感度が変化する。このため、反応する検知剤のスペクトルの変化幅が大きい特定の一つの波長の反射率を測定するだけでは正確なガス濃度の測定ができなかった。特許文献5のように、2波長を測定する方法も報告されているが、構造が複雑になり、ガス濃度測定装置が高価かつ大型になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、湿度が変化するような場合であっても、比色式の検知紙を用いた測定がより容易により正確にできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るガス濃度測定装置は、測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持した検知紙と、色素の反射スペクトルにおける検知紙の反射率を測定する反射率測定手段と、検知紙の雰囲気の湿度を測定する湿度計と、湿度計で測定された湿度より算出した検知紙が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙が保持している色素の量および色素の吸光係数を乗じた色素補正値を算出する補正値算出手段と、この補正値算出手段が算出した色素補正値で反射率測定手段で測定された反射率を補正する反射率補正手段と、この反射率補正手段が補正した反射率より、検知剤と反応した測定対象ガスの量を算出する濃度算出手段とを少なくとも備える。
【0009】
上記ガス濃度測定装置において、水分量係数は、濃度および湿度が既知の測定対象ガスを測定することで予め求めて設定してあればよい。また、補正値算出手段は、湿度計で測定された湿度より算出した検知紙が保持している水分量による検知紙の反射率を補正する水分量補正値を算出し、反射率補正手段は、色素補正値と水分量補正値とにより反射率測定手段で測定された反射率を補正するようにしてもよい。
【0010】
また、本発明に係るガス濃度測定方法は、測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持した検知紙の色素の反射スペクトルにおける反射率を測定する第1ステップと、検知紙の雰囲気の湿度を測定する第2ステップと、測定された湿度より算出した検知紙が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙が保持している色素の量および色素の吸光係数を乗じた色素補正値を算出する第3ステップと、算出した色素補正値で測定された反射率を補正する第4ステップと、補正した反射率より、検知剤と反応した測定対象ガスの量を算出する第5ステップとを少なくとも備える。
【0011】
上記ガス濃度測定方法において、水分量係数は、濃度および湿度が既知の測定対象ガスを測定することで予め求めて設定しておけばよい。また、湿度計で測定された湿度より算出した検知紙が保持している水分量による検知紙の反射率を補正する水分量補正値を算出するステップを備え、第4ステップでは、色素補正値と水分量補正値とにより測定された反射率を補正するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、測定された湿度より算出した検知紙が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙が保持している色素の量および色素の反射散乱係数を乗じた色素補正値を算出するようにしたので、湿度が変化するような場合であっても、比色式の検知紙を用いた測定がより容易により正確にできるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス濃度測定装置の構成を示す構成図である。
【図2】分光光度計によって測定したオゾン検知紙の反射スペクトルを示す特性図である。
【図3】本発明の実施の形態において連続測定を行う場合の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の装置および方法で実際にオゾン濃度を測定し、市販のUV吸収式オゾン濃度計と比較した結果を示す特性図である。
【図5】本発明の装置および方法で実際にオゾン濃度を測定し、市販のUV吸収式オゾン濃度計と比較した結果を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるガス濃度測定装置の構成を示す構成図である。このガス濃度測定装置は、まず、測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持した検知紙101と、色素の反射スペクトルにおける検知紙101の反射率を測定する反射率測定部102と、検知紙101の雰囲気の湿度を測定する湿度計103とを備える。
【0015】
また、湿度計103で測定された湿度より算出した検知紙101が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙101が保持している色素の量および色素の反射散乱係数を乗じた色素補正値を算出する補正値算出部104と、補正値算出部104が算出した色素補正値で反射率測定部で測定された反射率を補正する反射率補正部105と、反射率補正部105が補正した反射率より、検知剤と反応した対象ガスの量(濃度値)を算出する濃度算出部106とを備える。
【0016】
また、検知紙101の雰囲気の温度を測定する温度計107と、記憶部108と、外部機器との通信を行うための通信部109とを備える。
【0017】
反射率測定部102は、発光部121,受光部122,変換増幅部123,A/D変換部124,出力検出部125を備える。また、検知紙101の反射率測定時に参照として用いる白色板110を備える。白色板110の代わりに、ミラーを用いてもよい。
【0018】
このガス濃度測定装置を用いることで、次に示すようにすれば、ガス濃度が測定できる。まず、反射率測定部102により、色素の反射スペクトルにおける検知紙101の反射率を測定する(第1ステップ)。次に、湿度計103により、検知紙101の雰囲気の湿度を測定する(第2ステップ)。次に、湿度計103により測定された湿度より算出した検知紙101が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、検知紙101が保持している色素の量および色素の反射散乱係数を乗じた色素補正値を補正値算出部104で算出する(第3ステップ)。次に、補正値算出部104が算出した色素補正値で測定された反射率を補正する(第4ステップ)。この後、濃度算出部106が、補正した反射率より、検知剤と反応した対象ガスの量を算出する(第5ステップ)。
【0019】
次に、反射率測定部102について簡単に説明する。所定の波長の光を発するLEDからなる発光部121からの発光光を、検知素子101に照射し、検知素子101からの反射光を受光部122で受光する。受光部122では、受光光を光電変換して信号電流を出力する。変換増幅部123では、受光部122より出力された信号電流を増幅して電流−電圧変換する。変換増幅部123で増幅された測定対象ガスの検出濃度に対応する電圧信号は、A/D変換部125でデジタル信号に変換される。
【0020】
ここで、受光部122は、例えば、フォトダイオードである。このフォトダイオードとしては、例えば、190〜1000nmの波長に感度のあるものを用いればよい。発光部121は、検知紙101における検知剤と測定対象ガスとの反応により変化する色素の反射スペクトルにおけるピーク波長のLED光源を用いればよい。例えば、後述するオゾン検知の場合では、波長620nmの橙色LEDが好適である。また、発光部121の発光面と受光部122の受光面とが、検知紙101の方向に向くように配置し、発光部121からの発光光が、検知紙101で反射した後、受光部122に受光されるように、各々の角度を調整する。
【0021】
次に、検知紙101について説明する。検知紙101は測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持している。この検知剤は、測定対象ガスとの反応により、変色(退色または発色)し、可視領域波長の光の反射(吸収)が変化する。例えば検知剤が溶解している検知溶液を、例えばセルロースろ紙などのシート状もしくはテープ状担体に担持させて全体を曝露部とすることにより検知紙101が構成される。
【0022】
検知紙101としては、たとえばオゾンガスを測定する場合、オゾンガスに曝露されると変色する、例えばインジゴ環を有する色素と、例えばクエン酸などの酸と、例えばグリセリンなどの保湿剤とが溶解した水溶液(検知溶液)に、ろ紙を浸したのち乾燥させたものを用いることができる。インジゴ環を有する色素としては、例えばインジゴ、インジゴカルミンナトリウム塩、インジゴカルミンカリウム塩、インジゴレッドなどを用いることができる。
【0023】
酸としては、クエン酸、酢酸、リン酸、酒石酸などを用いることができる。酸は検知溶液のpHを2〜4の範囲に保持するために用いられる。
【0024】
保湿剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを用いることができる。
【0025】
以下では、オゾンガスに曝露されると退色するインジゴ環としてインジゴカルミンを用いた例を示す。インジゴカルミンは青色2号と呼ばれる染料である。このため、インジゴカルミンを用いた検知溶液は、青〜青紫色を呈した水溶液となる。検知溶液の色は目視によって確認できる。また、検知溶液は、酸の添加により酸性を示している。このような検知溶液にろ紙を浸したのち乾燥させたオゾン検知紙は、例えばNTTアドバンステクノロジ社製オゾン検知紙(非特許文献1参照)が用いられる。
【0026】
上述したオゾン検知紙は、青色を示し、620nm付近の波長に反射スペクトルのピークを示す。このピークがオゾンガスの曝露により減少し、同時にオゾン検知紙の色も青色から白色へと変化する。反射率の対数を見ると620nm付近がもっとも変化幅が大きく、反射率の対数の変化幅はオゾンガスの蓄積曝露量と比例することが判明している。
【0027】
以下、上述したオゾン検知紙(検知紙101)を用いた場合を例にして、本実施の形態におけるガス濃度測定方法について説明する。図2は、分光光度計によって測定した上記オゾン検知紙の反射スペクトルであり、横軸は測定波長、縦軸は−log(反射率)を示している。
【0028】
オゾン曝露前のオゾン検知紙A、Bと、オゾンガスに十分曝露してそれ以上反射スペクトルが変化しなくなるまで白色化したオゾン検知紙C、Dとについて測定する。オゾン検知紙Aおよびオゾン検知紙Cは、乾燥窒素内で乾燥を行い、この後で測定する。一方、オゾン検知紙Bおよびオゾン検知紙Dは、温湿度条件が20℃・60%RHの空気中にしばらく静置したものについて測定したものである。
【0029】
図2からわかるように、オゾン検知紙Aとオゾン検知紙B、およびオゾン検知紙Cとオゾン検知紙Dは、異なるスペクトルを示している。これら各オゾン検知紙は、保持している色素量(検知剤)は同じであるが、保持している水分量が違うために異なるスペクトルを示すことになる。
【0030】
ここで、分光光度計では、反射スペクトルが測定できるが高価なため、前述したように、簡易な装置では反射率の変化の大きい特定の一波長の反射率を用いてガス濃度を算出すればよい。上述したオゾン検知紙の場合は、波長620nmおける−log(反射率)の値の減少からオゾン濃度を測定することができる。しかし、一波長の反射率測定のみでは、反射率が色素量と水分量の両方に依存するために正確なオゾン濃度を測定できないという問題がある。
【0031】
例えば、オゾンガス曝露によるオゾン検知紙が保持する色素量減少によって、オゾン検知紙の−log(反射率)の値が減少した後に、雰囲気の湿度が高くなると、オゾン検知紙の水分量増加によって−log(反射率)の値が増加する。このため、オゾンとの反応による−log(反射率)の値の減少幅が、オゾン検知紙が保持する水分量の増加により相殺され、オゾンガス濃度が、実際の値より低く算出される。
【0032】
また、逆に、オゾンガス曝露によるオゾン検知紙が保持する色素量減少によって、オゾン検知紙の−log(反射率)の値が減少した後に、雰囲気の湿度が減少すると、検知紙の水分量減少によって−log(反射率)の値が減少する。このため、オゾンとの反応による−log(反射率)の値の減少幅が、オゾン検知紙が保持する水分量の減少により、より大きくなり、オゾンガス濃度が実際の値より高く算出される。
【0033】
オゾンガス検知紙に限らず、比色式の検知紙101の保持している水分量は、周囲の湿度と平衡関係にあると考えられるため、周囲の湿度を測定し、検知紙101の水分量を推定(算出)し、ガス濃度算出時の−log(反射率)値に与える水分量の影響を補正する必要がある。
【0034】
図2では、オゾン暴露により白色化したオゾン検知紙Cおよびオゾン検知紙Dは、乾燥時と湿潤時で400〜800nmの波長全域においてほぼ一定の反射率変化(約0.038)を示している。これに対し、オゾン暴露前のオゾン検知紙Aおよびオゾン検知紙Bに注目すると、400nm付近では乾燥時と湿潤時では白色化したものとほぼ同じ反射率変化を示しているのにかかわらず、620nm付近では乾燥時と湿潤時での反射率の差が0.073と大きくなっている。
【0035】
純粋な水分による反射率の変化は、白色化したオゾン検知紙の測定より上記の約0.038であるから、残りの約0.035に関してはインジゴカルミンの反射散乱係数に、湿度(検知紙の水分)が影響したためと考えられる。この湿度による影響(湿度依存性)は、検知紙の保持している水分量と比例関係にあると考えられる。
【0036】
従って、ある波長における検知紙の−log(反射率)の値は、検知剤と測定対象ガスとの反応により変化する色素の量と、水分量と、これら以外(ろ紙や他の薬品)による数値によって決定されるものと考えられる。色素の反射散乱係数に検知紙の水分保持量(=周囲の湿度と平衡)依存性があることを考慮に入れると、波長λnm(上記オゾン検知紙の場合620nm)での検知紙の反射率の対数は以下の式(1)ように表すことができる。なお、ろ紙(検知紙)の水分保持量は直接測定が難しいため、20℃、60%RHの時と平衡な検知紙の水分保持量を100として規格化し、これ適合するように係数αλとβを決定することとした。
【0037】
(Rλ)=(1+αλy )ελx+βy+baseλ・・・(1)
【0038】
上記式(1)において、Rλ:波長λ(nm)の−log(反射率)、x:(色素の保持量:ランベルト・ベールの法則におけるL(光路長)とC(濃度)の積に相当)、ελ: (波長λnmにおけるガス検知色素による反射散乱係数:乾燥時)、αλ:(波長λnmにおける水分によって反射散乱係数が変化する時の係数)、y:(水分量:ろ紙に保持されている水分は測定が困難なので20℃60%RHの雰囲気と平衡時の水分量を100として規格化)、β:(水分によって反射率の対数が変化する時の係数、可視領域ではほぼ一定)、baseλ:(波長λnmにおける色素と水分以外の要素で決定する定数、ここではオゾンでそれ以上変化がなくなったときの波長λnmにおける反射率の対数)である。
【0039】
ここで、水分量yは湿度の関数であり、前述のオゾン検知紙の場合は湿度をz(%RH)とすると、予備実験により検量線から「y=(0.0000134z2+0.00021z)/0.00061・・・(2)」と算出できる。したがって、予備実験により、あらかじめαλ、ελ、β、baseλを算出しておくことで、反射率および湿度の値の測定で、色素の保持量xが決定でき、水分量に影響をうけることなく、色素量の減少(変化)からオゾン濃度を算出できる。前述のオゾン検知紙以外の他の検知紙の場合、保湿剤や薬品の使用量や親水性などによって式(2)の検量線は変化する。なお、反射率測定時の参照として、検知紙と同様のろ紙を用いる場合、βyおよびbaseλは、用いる必要はない。
【0040】
以下、比較をすることで、より詳細に説明する。まず、−log(反射率)値の変化のみからオゾン濃度を算出する。例えば、前述のオゾン検知紙の例では20℃、60%RHの環境では、未使用(未反応)の状態から、蓄積曝露量640ppb×hour(ガス濃度:ppb×暴露時間:h)で波長620nmの−log(反射率)値が約0.76変化する。よって、オゾンガスによって−log(反射率)値が0.76の半分の0.38変化したとすると、「640×(0.38/0.76)=320ppb×hour」の蓄積曝露量と算出される。
【0041】
曝露時間が2時間ならこの間の平均オゾンガス濃度は、「320/2=160ppb」と算出され、曝露時間が4時間ならこの間の平均オゾンガス濃度は「320/4=80 ppb」と算出される。しかしながら、これらの算出結果では、雰囲気の湿度変化などによる検知紙の水分量変化が−log(反射率)に与える影響は除去されていない。
【0042】
次に、前述した本実施の形態におけるガス濃度測定方法を用いた場合の例を示す。予備実験より、各係数はα620nm=0.0011、ε620nm=4000、β=0.00061、base620nm=2.0603と計算される。
【0043】
仮に、検知紙の−log(反射率)値が、上述と同じように0.38変化した場合(例えば2.89から2.51へと変化した場合)、曝露時間中は20℃60%RHの状態であれば、水分量の増減は無く、−log(反射率)の変化に水分量は影響を与えないため、同じように蓄積曝露量は320ppb×hourと算出される。これに対し、例えば曝露時間中に湿度が60%RHから30%RHと変化し、−log(反射率)値が同じように0.38変化した場合は、水分量の減少によって−log(反射率)の値が低下した影響が加わっているため、色素量の減少は湿度が一定の場合より小さいことになる。
【0044】
実際に式(1)、(2)に−log(反射率)および湿度の値を代入すると、色素量と水分量の値が算出できる。このオゾン検知紙の場合、640ppb×hourのオゾン蓄積曝露量で検知紙の色素が初期値からほぼゼロまで減少するため、オゾン蓄積曝露量は次のように算出される。
【0045】
オゾン蓄積曝露量=640×(初期色素量−曝露後色素量)÷(初期色素量)・・・(3)
【0046】
色素量の変化は、湿度が60%で一定の場合には、色素量は初期値の半分の量で、検知紙が被爆したオゾンは320ppb×hourの蓄積曝露量と算出される。これに対し、湿度が60%RHから30%RHと変化した場合は、色素量が初期値の4割減の量で、オゾンの蓄積曝露量は256ppb×hourと算出される。このように、湿度の変化を考慮しない場合では、常に320ppb×hourと算出されるような場面でも、本実施の形態によれば、検知紙の反射率に与える色素量の影響と水分量の影響を分離でき、オゾン曝露量を正確に測定できる。
【0047】
また、検知紙をさまざまな湿度条件で測定対象ガスに暴露させると、相対感度が変化する。上述のオゾン検知紙では予備実験で得られたデータから以下の式(4)のように表せることが分かっている。
【0048】
3corrected=O3meas/(0.0153×R.H.+0.0833)・・・(4)
【0049】
式(4)において、R.H.:相対湿度(%RH)、O3meas:補正前のオゾンガス蓄積濃度(ppb×hour)、O3corrected:補正後のオゾンガス蓄積濃度(ppb×hour)、T:温度(℃)である。
【0050】
また、検知紙をさまざまな温度条件で対象ガスに暴露させると、相対感度が変化する。上述のオゾン検知紙では予備実験で得られたデータから以下の式(5)のように表せることが分かっている。
【0051】
3corrected =O3 meas/(0.0136×T+0.730)・・・(5)
【0052】
式(5)において、T:温度(℃)、O3meas:補正前のオゾンガス蓄積濃度(ppb×hour)、O3corrected:補正後のオゾンガス蓄積濃度(ppb×hour)である。
【0053】
したがって、温度、湿度がともに変化する場合の感度は、次の式(6)のように表される。
【0054】
3corrected=O3meas/{(0.0153×R.H.+0.0833)×(0.0136×T+0.730)}・・・(6)
【0055】
式(4),式(5),式(6)のように、前もって相対感度と温湿度条件の関係を明らかにしておき、オゾンガス測定時に温湿度を測定することにより、相対感度の変化を補正して、より正確なオゾンガス濃度が算出できる。
【0056】
同じ−log(反射率)値の変化であっても、20℃、60%RH以外の条件では、20℃、60%RHと感度が異なるため、式(5)で補正してオゾン蓄積濃度を算出する。例えば、上記と同様の−log(反射率)値の変化(例えば2.89から2.51へと変化した場合)でも、20℃、60%RHではオゾン蓄積暴露量は、320ppb×hourと算出される。これに対し、30℃、70%では250ppb×hour、15℃、30%RHでは、補正すると680ppb×hourと算出される。また、曝露(測定)中に温湿度が変化した場合は、前回の−log反射率測定時からの平均湿度や平均温度を用いるとよい。このように、温湿度とそれに依存して変化する感度を補正する式を前もって作成しておくことで、温湿度データを測定するとより精度よくオゾンガス濃度を算出することが可能となる。
【0057】
上述した例は、オゾン検知紙の例を示したが、比色反応を利用する検知紙は化学反応を利用しているので、いずれも温度や湿度(=ろ紙の水分保持量)の変化に影響を受けると考えられる。このため、比色反応を利用する他の検知紙においても同様に、上述の補正方法で湿度(=ろ紙の水分保持量)の変化による特定波長の反射率変化、温度、湿度(=ろ紙の水分保持量)の変化による感度変化が、補正可能であることは容易に類推できる。
【0058】
また、比色反応を利用する検知紙は、蓄積濃度を測定できるので一定時間毎に差分をとっていくことで連続測定も可能である。図3に、連続測定を行う場合のフローチャートを示す。図3は、湿度および温度を測定し、色素量と水分量を分離した後、感度の温湿度補正を行ってオゾン濃度を算出する場合のフローチャートである。温度を測定しない場合は式(4)を、温度を測定する場合は式(6)を使用する。なおiはカウンターであり、一定時間毎に測定を行うたびに数値が1ずつ増加することを示す。
【0059】
まず、ステップS301で、反射率測定部102によって検知紙101の特定波長の光の反射率R(i)を測定し、同時に、湿度計103、温度計107で湿度H(i)、温度T(i)を測定し、これらの測定データを、記憶部108に記憶する。次に、ステップS302で、記憶部108に記憶されたデータのうち反射率R(i)、湿度H(i)を前述の式(1)、(2)に代入して色素量D(i)と水分量W(i)を算出し、色素量D(i)の値を用いて前述の式(3)のガス蓄積曝露量C(i)を計算する。次に、ステップS303で、色素量D(i)と水分量W(i)、ガス蓄積曝露量C(i)を記憶部108に記憶する。
【0060】
次にステップS304で、これらの前に測定したガス蓄積曝露量C(i−1)が記憶部108に存在するか否かを調べ、ガス蓄積曝露量C(i−1)が存在する場合は、ステップS305で、「ΔC(i)={C(i)−C(i−1)}÷経過時間(測定iとi−1の間の時間)・・・(7)」により経過時間中の平均濃度ΔC(i)を算出する。また、単位時間中の平均湿度(H(i−1)+H(i))÷2および平均温度(T(i−1)+T(i))÷2の値を利用し、式(6)により温湿度の感度補正を行い補正平均濃度ΔCcorrected(i)を算出する。温度を測定していない場合は式(4)を使用して補正平均濃度ΔCcorrected(i)を算出する。
【0061】
次に、ステップS306で、ΔCcorrected(i)の値を記憶部108に保存し、ステップS307で、カウンターをステップ106でi=i+1とする。この後、一定時間経過後に再びステップS301戻り、ガスの測定を行う。
【0062】
図4および図5に、上述した本発明の装置および方法で実際にオゾン濃度を測定し、市販のUV吸収式オゾン濃度計と比較した結果を示す特性図である。図4上段は本発明の装置を使用したが色素量と水分量を分離する算出方法や検知紙感度の温湿度依存性を補正する方法を使用せず、−log(反射率)の変化のみからオゾン濃度を算出している。図5は、本発明の色素量と水分量を分離する算出方法や検知紙感度の温湿度依存性を補正する方法を使用したものである。また、図4,図5において、(a)は、測定日時と測定結果を示しており、「◇」が本発明の装置および方法の場合であり、「□」が市販のUV吸収式オゾン濃度計の場合である。また、図4,図5において、(b)は、本発明の装置および方法と市販のUV吸収式オゾン濃度計との相関を示すものである。
【0063】
市販のUV吸収式オゾン濃度計と比較した寄与率(相関係数の2乗)は前者が0.6774、後者が0.9502を示しており、本発明を利用することにより、大幅に測定精度が向上していることがわかる。本発明の装置は市販のUV吸収式オゾン測定器より安価に作製できる構成であり、ほぼ同等の測定精度を有していることから、本発明の装置および方法は非常に有効である。
【0064】
なお本、発明は上記した実施の形態になんら限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。例えば、上記した実施の形態においては、オゾンに反応する色素としてインジゴ環を有する色素を用いたが、これに限らず、トリフェニルメタン色素やアゾ色素、アントラキノン色素などを用いてもよい。
【0065】
また、上記した実施の形態は、オゾン濃度測定器に適用した例について説明したが、これになんら限定されるものではなく、可視領域の反射スペクトルの変化する化学反応を用い、特定ガスを検知する比色式のガス検知素子全般に利用可能である。例えば、測定対象の特定ガスを二酸化窒素ガスとした場合、二酸化窒素に反応して可視領域の反射スペクトル変化を示す検知剤としてジアゾ化試薬およびカップリング試薬の混合物などを多孔体に含浸させたガス検知素子を用いた場合には、二酸化窒素ガスの濃度測定にも適用することが可能である。この場合、反射率ではなく、透過率を用いればよい。
【0066】
また測定対象の特定ガスを二酸化硫黄とした場合、二酸化硫黄に反応して可視領域の反射スペクトル変化を示す検知剤としてニトロプルシドナトリウム二水和物を多孔体に含浸させたガス検知素子を用いた場合には、二酸化硫黄ガスの濃度測定にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
101…検知紙、102…反射率測定部、103…湿度計、104…補正値算出部、105…反射率補正部、106…濃度算出部、107…温度計、108…記憶部、109…通信部、110…白色板、121…発光部、122…受光部、123…変換増幅部、124…A/D変換部、125…出力検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持した検知紙と、
前記色素の反射スペクトルにおける前記検知紙の反射率を測定する反射率測定手段と、
前記検知紙の雰囲気の湿度を測定する湿度計と、
前記湿度計で測定された湿度より算出した前記検知紙が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、前記検知紙が保持している前記色素の量および前記色素の反射散乱係数を乗じた色素補正値を算出する補正値算出手段と、
この補正値算出手段が算出した色素補正値で前記反射率測定手段で測定された反射率を補正する反射率補正手段と、
この反射率補正手段が補正した反射率より、前記検知剤と反応した前記測定対象ガスの量を算出する濃度算出手段と
を少なくとも備えることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
請求項1記載のガス濃度測定装置において、
前記水分量係数は、濃度および湿度が既知の前記測定対象ガスを測定することで予め求めて設定してあることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のガス濃度測定装置において、
前記補正値算出手段は、前記湿度計で測定された湿度より算出した前記検知紙が保持している水分量による前記検知紙の反射率を補正する水分量補正値を算出し、
前記反射率補正手段は、前記色素補正値と前記水分量補正値とにより前記反射率測定手段で測定された反射率を補正する
ことを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項4】
測定対象ガスとの反応により色素の量が変化する検知剤を担持した検知紙の前記色素の反射スペクトルにおける反射率を測定する第1ステップと、
前記検知紙の雰囲気の湿度を測定する第2ステップと、
測定された湿度より算出した前記検知紙が保持している水分量に水分量係数を乗じた値に、前記検知紙が保持している前記色素の量および前記色素の反射散乱係数を乗じた色素補正値を算出する第3ステップと、
算出した色素補正値で測定された前記反射率を補正する第4ステップと、
補正した反射率より、前記検知剤と反応した前記測定対象ガスの量を算出する第5ステップと
を少なくとも備えることを特徴とする濃度測定方法。
【請求項5】
請求項4記載のガス濃度測定方法において、
前記水分量係数は、濃度および湿度が既知の前記測定対象ガスを測定することで予め求めて設定しておくことを特徴とするガス濃度測定方法。
【請求項6】
請求項4または5記載のガス濃度測定方法において、
前記湿度計で測定された湿度より算出した前記検知紙が保持している水分量による前記検知紙の反射率を補正する水分量補正値を算出するステップを備え、
前記第4ステップでは、前記色素補正値と前記水分量補正値とにより測定された前記反射率を補正する
ことを特徴とするガス濃度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−276356(P2010−276356A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126325(P2009−126325)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】