説明

ガス濃度測定装置および測定方法、累積ガス量測定装置および測定方法、ガス除去装置における除去剤の除去限界類推装置および類推方法

【課題】VOCガスを含有するガス含有空気のガス濃度を、濃度センサ12の濃度測定範囲を越えた高いものであっても1種類の濃度センサでもって測定できるようにする。
【解決手段】排出流路2から分岐形成の濃度測定流路10に濃度センサ12を設けるにあたり、濃度測定流路10に、該濃度センサ12よりも上流側に位置して清浄空気を供給してガス含有空気を希釈するための開閉バルブ16を設け、該開閉バルブ16を、ガス測定濃度が濃度センサの最大測定範囲以上であると判断したときには開制御して希釈し、該希釈した状態で濃度測定をしたものから希釈しない状態での濃度を演算するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれる有機溶剤が揮発したガスのガス濃度測定装置および測定方法、累積ガス量測定装置および測定方法、ガス除去装置における除去剤の除去限界類推装置および類推方法の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロメタン、クロロベンゼン、プロパノール等の揮発性が高い有機化合物は、揮発性有機化合物(VOC)と称され、そしてこのものが大気中に揮発してガス化すると、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の要因にもなり、このため人の健康に対して悪影響を与える有害物質として指定され、揮発性有機化合物(以下「VOC」という)のガス排出量の規制がなされている。
ところでこのようなVOCは、化学工場、塗装工場、印刷工場、薬品工場等の各種施設において、反応、抽出、コーティング、脱脂洗浄等の各種工程で広く溶剤として採用されている。そしてこれらVOCは、ガス化したものが施設外に排出しないよう施設の排気流路に、VOCガスを除去(回収)するためガス除去装置を設けるなどして規定の濃度以下に排出抑制すること等が強く求められており、場合によっては義務付けられている。
このようなガス除去装置を設置する場合、除去剤(ガス除去装置が吸着装置である場合には吸着剤)による除去量(吸着量)には限界があり、この限界点(破過点)を越えると除去能力が低下し、高濃度のVOCガスが大気に排出されてしまうことになる。そこで除去剤がどれだけの量のVOCガスを除去したかを累積計算をし、これに基づいて破過点に達する少し前の段階で除去剤を交換する等のメンテナンスをすることが効率のよいVOCガスの除去装置としては要求される。そしてこのような破過点の検知方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平7−325024号公報
【特許文献2】特開2005−52691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで前者のものはVOCガスを吸着した場合に吸着剤が膨張することを利用し、該吸着剤の体積膨張の程度から吸着限界を検知しようとするものであるが、吸着剤の体積膨張は定性的であるばかりでなく、体積膨張は温度等の吸着環境に大きく左右されることもあって精度が劣るという問題がある。これに対し後者のものは吸着剤層の温度を測定し、該測定した温度の二次微分処理値に基づいて吸着限界を決定しようとするものであるが、このものは吸着槽入り口でのVOCガス濃度を一定とした場合に有効であって、ガス濃度が変化するものにおいての有効性に乏しいという問題がある。
これに対し、ガス濃度センサを用いてガス濃度を経時的に測定し、この測定結果を累積演算して除去したガス量を知り、これに基づいて除去限界に達したか否かの判断をすることが提唱される。ところでガス濃度センサとして、低濃度から高濃度(例えば0〜10000ppm)にまで至る幅広い範囲のガス濃度を測定ができるようなものは測定精度が劣るだけでなく、このようなガス濃度センサを汎用的に入手することは事実上困難である。そして入手し易い汎用のガス濃度センサとしては測定できるガス濃度範囲が狭い(例えば0から1000ppmまで)ものであり、ガス濃度がこの測定限界を越えた濃いものであった場合、測定不能になって正確なガス濃度の測定ができないという問題がある。しかもこのような正確なガス濃度の測定ができなくなると、累積ガス量の算出もできなくなる許りでなく、除去剤を通過した累積ガス量に基づいて除去剤が除去限界に達したか否かの類推ができなくなるという問題があり、これらに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガス濃度を測定するためのガス濃度測定装置であって、該ガス濃度測定装置は、空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段とを備えて構成され、前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とするガス濃度測定装置である。
請求項2の発明は、制御手段による希釈制御には、ガス濃度の測定開始段階においては最大の希釈率でガス含有空気を希釈するように設定されていることを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置である。
請求項3の発明は、空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガス濃度を測定するためのガス濃度測定方法であって、該ガス濃度測定方法は、空気流路から分岐形成される濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をするものであり、前記濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するように構成したことを特徴とするガス濃度測定方法である。
請求項4の発明は、空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガスの累積ガス量を測定するための累積ガス量測定装置であって、該累積ガス量測定装置は、空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、該算出された実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出する累積手段とを備えて構成され、前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とする累積ガス量測定装置である。
請求項5の発明は、空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガスの累積ガス量を測定するための累積ガス量測定方法であって、該累積ガス量測定方法は、空気流路から分岐形成される濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をするものであり、濃度測定手段で測定されたガス濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出し、該算出した実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出するように構成したことを特徴とする累積ガス量測定方法である。
請求項6の発明は、有機化合物の揮発したガスを含有したガス含有空気が流れる空気流路に、前記ガスを除去するための除去剤が設けられたガス除去装置における該除去剤の除去限界を類推するための除去限界類推装置において、除去限界類推装置は、空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、該算出された実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出する累積手段と、該算出された累積ガス量が、前記除去剤が除去限界に至るまで該除去剤に供給されたものとして予め求められた基準累積ガス量に達したことで除去限界に達したと類推する類推手段とを備えて構成され、前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とするガス除去装置における除去剤の除去限界類推装置である。
請求項7の発明は、有機化合物の揮発したガスを含有したガス含有空気が流れる空気流路に、前記ガスを除去するための除去剤が設けられたガス除去装置における該除去剤の除去限界を類推するための除去限界類推方法において、空気流路から分岐形成される濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をするものであり、濃度測定手段で測定されたガス濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出し、該算出した実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出し、該算出された累積ガス量が、前記除去剤が除去限界に至るまで該除去剤に供給されたものとして予め求められた基準累積ガス量に達したことで除去限界に達したと類推するように構成したことを特徴とするガス除去装置における除去剤の除去限界類推方法である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1または3の発明とすることにより、ガス含有空気のガス濃度が濃度測定手段の測定限界を越えたものがあったとして、この場合にはこれを希釈して測定限界内にしてガス濃度を測定し、該測定したガス濃度に基づいて実際のガス濃度を算出できることになって精度よくガス濃度を求めることが簡単にできることになる。
請求項2の発明とすることにより、ガス含有空気中のガス濃度の測定が、測定開始段階から測定不能になってしまうことを回避できることになる。
請求項4または5の発明とすることにより、ガス含有空気のガス濃度が濃度測定手段の測定限界を越えたものがあったとして、この場合にはこれを希釈して測定限界内にしてガス濃度を測定し、該測定したガス濃度に基づいて算出された実際のガス濃度に基づいて精度のよい累積ガス量を求めることが簡単にできることになる。
請求項6または7の発明とすることにより、ガス含有空気のガス濃度が濃度測定手段の測定限界を越えたものがあったとして、この場合にはこれを希釈して測定限界内にしてガス濃度を測定し、該測定したガス濃度から算出された実際のガス濃度に基づいて算出される累積ガス量から除去剤が除去限界に達したか否かの精度のよい類推ができることになって除去剤の交換等のメンテナンス管理が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図面1において、1はVOCガスを発生するガス発生施設(ガス発生装置)であって、該ガス発生施設1から排出されるVOCガスを含んだ空気の排出流路(メイン流路)2には、第一メイン開閉バルブ3、第二メイン開閉バルブ4が設けられているが、該排出流路2の末端には、例えば活性炭やゼオライトを吸着剤として用いるガス吸着装置5が設けられている。そしてガス吸着装置5からの排気流路6には第三メイン開閉バルブ7、濃度センサ8が順次設けられ、末端に吸引ブロア9が設けられており、該吸引ブロア9の吸引によって、ガス発生施設1から排出されるVOCガスを含有するガス含有空気からVOCガスを吸着除去したものを大気に放出するようになっている。
【0007】
前記排出流路2には、第一メイン開閉バルブ3と第二メイン開閉バルブ4とのあいだに位置して該排出流路2と並列接続する状態で分岐されていて、排出流路2を流れるガス含有空気に含有しているVOCガスの濃度測定(濃度検出)をするための濃度測定流路10が設けられているが、排出流路2から濃度測定流路10に分流されたガス含有空気は、流路上流側(上手側)から測定用第一開閉バルブ11、濃度センサ(本発明の「濃度測定手段」に相当する)12、そして第一風量計測調節器13を経由して排出流路2に戻される(還流する)ようになっている。尚、排出流路2には、濃度測定流路10が還流後、第二メイン開閉バルブ4に至るまでのあいだに位置してメインの風量計測器2aが設けられている。この風量計測器2aは排出流路2を通過する風量が一定である場合には省略することができる。
【0008】
また、測定用第一開閉バルブ11と濃度センサ12とのあいだの濃度測定流路10には、希釈流路14が合流するように設けられているが、該希釈流路14には、流路上流側からエアフィルタ15、測定用第二開閉バルブ16そして第二風量計測調節器17を経由して清浄な大気(空気)が濃度測定流路10に供給され、これによって該濃度測定流路10に分流されたガス含有空気の希釈ができるようになっている。
【0009】
18は制御部であって、該制御部18は、前記各センサ8、12や風量計測調節器13、17およびメイン風量計測器2a等のセンサ類やスイッチ類からの信号が入力すると共に、開閉バルブ3、4、7、11、16等の各種の被制御部に対して必要な制御指令を出力し、さらには各種入力した信号に基づいて必要な演算をして得たデータに基づく制御指令を出力するように設定されているが、以下、ガス含有空気中のガスの濃度測定の手法、これに基づいて累積ガス量の測定手法、さらには該測定された累積ガス量から前記ガス吸着装置5に組込まれる吸着剤が吸着限界に達したか否かを類推する吸着剤の吸着限界類推手法について説明する。
【0010】
前記ガス含有空気からVOCガスの吸着運転をすべく制御部18に運転指令を出力すると、メイン開閉バルブ3、4、7に開指令を出力すると共に、吸引ブロア9に駆動指令を出力し、これによってガス含有空気がガス吸着装置5に供給されてガス吸着がなされることになるが、これと同時に測定用開閉バルブ11、16の開閉制御がなされ、これによってガス含有空気の一部が濃度測定流路10に分流され、濃度センサ12によってガス濃度が測定されることになるが、本実施の形態では、風量計測調節器13、17からの風量値に基づきガス含有空気の希釈倍率が算出されるようになっている。
【0011】
いまガス含有空気からガス吸着作業が実施されているときの時刻(t)のときのガス含有空気の希釈倍率をq(t)とすると、該希釈倍率q(t)は、第一風量計測調節器13の風量(流量)をQ1(t)、第二風量計測調節器17の風量をQ2(t)とした場合、
q(t)=Q1(t)/(Q1(t)−Q2(t))
として算出される。この時刻(t)のとき測定されるガス濃度をDs(t)とした場合、該時刻(t)でのガス含有空気のガス濃度Dm(t)は、
Dm(t)=Ds(t)×q(t)
=Ds(t)×Q1(t)/(Q1(t)−Q2(t))
で算出される。
ところで排出流路2を通るガス量は、希釈空気によっても希釈されるため、ガス発生施設1から投入されるガス量Qmは、ガス吸着装置5に到達した時点で希釈量Q2が加算されることになって「Qm+Q2」になるはずであるが、吸引ブロア9の吸引量は本実施の形態では一定に設定しているので、メイン風量計測器2aが検知する風量はQ2を減じた「Qm−Q2」となり、そうすると、時刻(t)のときの排出流路2の風量は「Qm(t)−Q2(t)」として算出される。この結果、図2に示されるように、時刻(t)が時刻(t)から(tN−1)まで推移した場合のVOCの累積ガス量をQm(tN−1)とした場合に、該累積ガス量Qm(tN−1)は、

として演算される。
因みに、前記算出されたガス濃度、累積ガス量は排出流路2から分流されたガス含有空気分のものであり、このためガス発生施設1から排出流路2に供給されたガス含有空気全体に含まれる実際のガス濃度、累積ガス量は、分流割合から逆算して算出(例えば1/10の量が分流されるものであれば10倍することで算出)することができる。
また、測定用第二開閉バルブ16の開度量制御をすることで、濃度測定流路10に分流されたガス含有空気の量に対する希釈空気の希釈量が判るものである場合、風量計測調節器を設けなくても希釈倍率を算出できることは言うまでもない。
【0012】
次に、前記濃度センサ12によるガス濃度の測定(検出)範囲が図3に示されるように0〜B(例えば0〜1000ppm)であった場合に、ガス含有空気中に含まれるVOCガスのガス濃度が測定可能な最大値である測定最大値(最大測定範囲の100%の値:測定限界)Bを越えるものがある場合、図4に示される実施の形態のフローチャートのような制御が実行され、この測定最大値Bを越えたガス濃度の測定ができることになるが、この測定最大値Bの境界値で測定用第二開閉バルブ16の開閉制御をした場合に、測定されるガス濃度がこの測定最大値Bを越えたり少なくなったりを繰返すようなものであった場合、測定用第二開閉バルブ16の開閉切換えが測定最大値Bを境に頻繁に繰返されることになって却って安定性を欠くことになる。そこで、測定用第二開閉バルブ16が開から閉に切り換え制御されるとき、測定用第二開閉バルブ16が閉制御されているときの測定最大値Bよりも小さい値(例えば測定最大値Bの9%)を設定値Aとして設定し、この設定値Aよりも小さくならないと測定用第二開閉バルブ16が開から閉に切り換わらない領域である不感領域Xとして、測定用第二開閉バルブ16の安定した開閉切換え制御を実施するように設定されている。以下、これらの制御手順について図4のフローチャートを用いて説明する。
因みに本実施の形態では、測定用第二開閉バルブ16は開と閉の二段の切り換え制御が実行できるものとして説明する。そして測定用第二バルブ16が開制御された場合、供給される希釈空気によって濃度測定流路10に分流されたガス含有空気はq倍(例えば10倍)希釈されるものとして説明する。
【0013】
まず、前述したようにガス含有空気から含有するVOCガスの吸着運転をすべく制御部18に運転指令が出力されると、同時にガス濃度の測定制御が開始(実行)されることになるが、該測定制御が開始されると、測定用第一、第二開閉バルブ11、16に対して開指令を出力してこれらバルブ11、16を開放制御する(S1)。これによって濃度測定流路10に流入したガス含有空気が供給される希釈空気によって希釈され、該希釈されたガス含有空気に含有するVOCガスの測定時刻(t)でのガス濃度Ds(t)が濃度センサ12によって測定されることになる(S2)。そしてこの測定されたガス濃度Ds(t)が前記式に基づいて累積演算される(S3)と共に、測定されたガス濃度Ds(t)が前記不感領域設定値A以上であるか否かが判断される(S4)。ここでガス濃度Ds(t)が不感領域設定値A以上であるとしてYESの判断がなされると、さらにガス濃度Ds(t)が測定最大値B以下であるか否かの判断がなされる(S5)。そしてガス濃度Ds(t)が測定最大値B以下であるとしてYESの判断がなされると、現在のガス濃度測定条件は適正であるから、次の時刻(t)におけるガス濃度Ds(t)を測定するようS2にリターンする。
【0014】
これに対し、前記S4の測定されたガス濃度Ds(t)が前記不感領域設定値A以上であるか否かの判断で、ガス濃度Ds(t)が不感領域設定値Aより少ない(Ds(t)<A)としてNOの判断がなされると、測定用第二開閉バルブ16が開であるか否かの判断がなされ(S6)、開であるとしてYESの判断がなされると、現在のガス濃度測定条件は希釈しすぎであるから測定用第二開閉バルブ16に対して閉指令が出力され(S7)るが、閉であるとしてNOの判断がなされると、現在のガス濃度測定条件は適正であるからガス濃度Ds(t)を測定するようS2にリターンする。
【0015】
一方、S5のガス濃度Ds(t)が測定最大値B以下であるか否かの判断において測定最大値Bよりも大きい(Ds(t)>B)としてNOの判断がなされると、測定用第二開閉バルブ16が閉であるか否かの判断がなされ(S8)、閉であるとしてYESの判断がなされると、現在のガス濃度は高すぎであるとして測定用第二開閉バルブ16に対して開指令が出力され(S9)るが、開であるとしてNOの判断がなされると、測定用第二開閉バルブ16が開であるにもかかわらずガス濃度が高すぎであるとして異常通報の指令が出力され(S10)て異常通報をし、前記同様S2にリターンする。
【0016】
上述の如く構成された本発明の実施の形態において、ガス発生施設1において発生したガス含有空気からガスをガス吸着装置5を用いて吸着除去する場合に、ガス含有空気のガス濃度を、排出流路2から分岐形成した濃度測定流路10に設けた濃度センサ12を用いて測定することになるが、ガス濃度が高く、濃度センサ12の測定最大値Bの濃度を越えていた場合、濃度測定流路10に分流したガス含有空気を希釈し、該希釈したガス含有空気中のガスのガス濃度を測定し、該測定したガス濃度から希釈率を考慮して実際のガス濃度を算出することができる。この結果、ガス濃度の測定範囲が狭い汎用の濃度センサ12を用いて、最大測定範囲を越えた高いガス濃度の測定ができることになる。
【0017】
そしてこのものでは、濃度センサ12の最大測定範囲を越えた高い濃度を含んだガス含有空気があったとしても、該高いガス濃度を精度よく測定をすることができ、そして該測定濃度に基づいて累積ガス量を算出することになるため、累積ガス量についても精度がよいものにできる。
【0018】
しかもこのものでは、制御部18において、前記算出された累積ガス量が、吸着剤について吸着限界に至るまで該除去剤に供給されたものとして予め求められた基準累積ガス量に達したことで除去限界に達したと類推するよう設定しておくことで、累積ガス量が吸着限界に至る少し前の段階で警告を発する等の報知させる管理ができ、吸着剤の交換等のメンテナンス管理が適正なものになる。
さらにこのものにおいては、濃度測定をしたガス含有空気を排出流路2に還流しているため、該空気に含まれるガスが大気に放出されることもない。
【0019】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないものであることは勿論であって、例えば測定用第二開閉バルブ16の流量制御を一段の開制御だけでなく、二段階以上、多段階(例えば10倍希釈、20倍希釈、30倍希釈等の多段階)の流量制御ができるようにしておけば、前記実施の形態では濃度測定できないとしたS10のような高濃度ガスを含有するガス含有空気をさらに希釈して濃度測定をすることもできる。この場合、一つのバルブの開度量制御により実施してもよいが、希釈倍率に応じた複数の開閉バルブを並列接続し、希釈倍率に対応する開閉バルブを開制御するようにしても実施することができる。そしてこのように多段階に希釈するようにした場合、前述した不感領域は各段階に遷移する場合に設定することが好ましい。
また、濃度センサのガス濃度変化に対する追従性が高い場合や、ガス発生施設におけるガス濃度変化が著しい場合等には、測定用第二開閉バルブ16の開閉遅延による測定精度の低下を抑制するため、濃度センサによってガス濃度の上昇、下降の傾向を観測し、上昇、下降の傾向が著しいほど前記不感領域Xが大きくなるよう動的に変化させる制御を実行することが好ましいといえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ガス含有空気のガス濃度測定装置のブロック回路図である。
【図2】ガス濃度と時間との関係を示すグラフ図である。
【図3】バルブ16を開閉したときのガス濃度測定範囲を示すグラフ図である。
【図4】制御手順のフローチャート図である。
【符号の説明】
【0021】
1 ガス発生施設
2 排出流路
2a メイン風量計測器
3 第一メイン開閉バルブ
4 第二メイン開閉バルブ
5 ガス吸着装置
6 排気流路
7 第三メイン開閉バルブ
8 濃度センサ
9 吸引ブロア
10 濃度測定流路
11 測定用第一開閉バルブ
12 濃度センサ
13 第一風量計測調節器
14 希釈流路
16 測定用第二開閉バルブ
17 第二風量計測調節器
18 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガス濃度を測定するためのガス濃度測定装置であって、該ガス濃度測定装置は、
空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、
該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、
濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、
該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、
濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段とを備えて構成され、
前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
制御手段による希釈制御には、ガス濃度の測定開始段階においては最大の希釈率でガス含有空気を希釈するように設定されていることを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガス濃度を測定するためのガス濃度測定方法であって、該ガス濃度測定方法は、
空気流路から分岐形成の濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、
濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、
濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度を測定をするものであり、
前記濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するように構成したことを特徴とするガス濃度測定方法。
【請求項4】
空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガスの累積ガス量を測定するための累積ガス量測定装置であって、該累積ガス量測定装置は、
空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、
該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、
濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、
該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、
濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、
該算出された実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出する累積手段とを備えて構成され、
前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とする累積ガス量測定装置。
【請求項5】
空気流路を流れる有機化合物の揮発ガスを含有したガス含有空気中のガスの累積ガス量を測定するための累積ガス量測定方法であって、該累積ガス量測定方法は、
空気流路から分岐形成される濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、
濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、
濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度を測定をするものであり、
濃度測定手段で測定されたガス濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出し、該算出した実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出するように構成したことを特徴とする累積ガス量測定方法。
【請求項6】
有機化合物の揮発したガスを含有したガス含有空気が流れる空気流路に、前記ガスを除去するための除去剤が設けられたガス除去装置における該除去剤の除去限界を類推するための除去限界類推装置において、
除去限界類推装置は、
空気流路から分岐形成される濃度測定流路と、
該濃度測定流路に設けられる濃度測定手段と、
濃度測定流路の濃度測定手段よりも上流側に位置して清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段と、
該希釈手段の清浄空気供給量を制御する制御手段と、
濃度測定手段で測定されたガス測定濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出するガス濃度算出手段と、
該算出された実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出する累積手段と、
該算出された累積ガス量が、前記除去剤が除去限界に至るまで該除去剤に供給されたものとして予め求められた基準累積ガス量に達したことで除去限界に達したと類推する類推手段とを備えて構成され、
前記制御手段による希釈制御は、濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断したときには希釈手段に対して希釈開始指令または希釈増加指令を出力し、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときには希釈手段に対して希釈停止指令または希釈低減指令を出力するように設定されていることを特徴とするガス除去装置における除去剤の除去限界類推装置。
【請求項7】
有機化合物の揮発したガスを含有したガス含有空気が流れる空気流路に、前記ガスを除去するための除去剤が設けられたガス除去装置における該除去剤の除去限界を類推するための除去限界類推方法において、
空気流路から分岐形成される濃度測定流路に設けられていてガス濃度の測定をする濃度測定手段と、
濃度測定手段よりも上流側で清浄空気を濃度測定流路に供給して濃度測定流路に流入したガス含有空気を希釈可能な希釈手段とが設けられており、
濃度測定手段は、該濃度測定手段で測定されたガス測定濃度が濃度測定手段の最大測定範囲以上であると判断されたときに希釈手段に対して出力される希釈開始指令または希釈増加指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をし、濃度測定手段の最小測定範囲以下であると判断したときに希釈手段に対して出力される希釈停止指令または希釈低減指令に基づいたガス含有空気のガス濃度の測定をするものであり、
濃度測定手段で測定されたガス濃度からガス含有空気の希釈率に基づいて実際のガス濃度を算出し、該算出した実際のガス濃度を時系列に累積して累積ガス量を算出し、
該算出された累積ガス量が、前記除去剤が除去限界に至るまで該除去剤に供給されたものとして予め求められた基準累積ガス量に達したことで除去限界に達したと類推するように構成したことを特徴とするガス除去装置における除去剤の除去限界類推方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−210455(P2009−210455A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54596(P2008−54596)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(506209422)地方独立行政法人 東京都立産業技術研究センター (134)
【出願人】(399031883)株式会社モリカワ (19)
【Fターム(参考)】