説明

ガス濃度測定装置

【課題】ウィンドウの表面を清浄に保持することでガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができるガス濃度測定装置。
【解決手段】レーザ光を発光する光源部200と、レーザ光を受光する受光部300と、光源部と受光部との間で且つレーザ光が通過する位置に配置された光学素子6と、光源部と受光部と光学素子とを連結する連結管5a,5bと、光源部と受光部との間で且つ連結管に接続され、測定対象ガスが存在する煙道1と、連結管の内の煙道付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第1パージガス導入口7cと、連結管の内の光学素子付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第2パージガス導入口7bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザを用いて煙道排ガスの濃度を測定するガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のガス濃度測定装置の一例を示す図である。このガス濃度測定装置100は、煙道1内の排ガスにレーザ光4を透過させ、レーザ光の強度を測定することによって煙道1内の排ガスの濃度を測定する。
【0003】
光源部200は、レーザ光4を発光する光源2を有し、レーザ光4が煙道1内を通過するように煙道1の側壁部に設置されている。受光部300は、レーザ光4を受光する受光素子3を有し、光源部200に対向するように煙道1の側壁部に設置される。
【0004】
制御演算部400は、光源部200と受光部300とに電気的に接続され、光源2を制御するとともに、受光素子3で検知したレーザ光4の強度に基づいて排ガス中のガス濃度を演算する。
【0005】
光源部200と受光部300とは、円筒状の連結管5を通して煙道1の側壁面に接続されている。光源部200と受光部300とは、排ガスが侵入しないように連結管5内に設けられた赤外透過ウィンドウ6により煙道1と隔離されている。
【0006】
連結管5には、赤外透過ウィンドウ6の煙道1側の近傍にパージガス導入口7aが設けられており、このパージガス導入口7aから清浄なパージガス8aを導入することにより、煙道1内に含まれるダストが赤外透過ウィンドウ6に付着することを抑制している。なお、パージガス導入口7aは、連結管5に同心円上に複数個設けられる場合もある。
【0007】
また、この種の従来技術として、例えば、特許文献1、特許文献2に記載された技術が知られている。
【0008】
特許文献1は、セルに導入されたサンプルガスに対して吸光分光測定を実行し、光学部品光である透過性ウィンドウの重要表面を横切るように、重要表面に隣接して配置された浄化ガス取り入れパイプから重要表面への付着物の付着を防止する効果的な速度で浄化ガスの流れを導入する方法が記載されている。
【0009】
特許文献2は、排気経路中の排ガスにレーザ光を照射し、排ガスを透過したレーザ光を検出することで排ガス中の成分濃度を測定する測定部を有し、測定部は、排気経路中の排ガスが通過する排ガス通過孔が設けられ、排ガス通過孔内に向けて照射されたレーザ光を多重反射させる反射鏡が設けられる本体部と、排ガス通過孔を通過する排ガスとは別に排気経路から排ガスを分流し、分流した排ガスを反射鏡の表面に向けて吹き付けるパージ経路とを備え、フィルタ部材により排ガス中の排ガスの汚れを除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−153793号公報
【特許文献2】特開2009−175058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図2に示す従来のガス濃度測定装置では、ダストを完全に排除することができない場合があるため、ダストが赤外透過ウィンドウ6に付着してしまうことがある。このため、ガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができないという問題がある。
【0012】
また、特許文献1では、ウィンドウ径を大きしなければならず、特許文献2では、フィルタを定期的に交換しなければならない。
【0013】
本発明の課題は、ウィンドウの表面を清浄に保持することで、ガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができるガス濃度測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るガス濃度測定装置は、上記課題を解決するために、レーザ光を発光する光源部と、前記レーザ光を受光する受光部と、前記光源部と前記受光部との間で且つ前記レーザ光が通過する位置に配置された光学素子と、前記光源部と前記受光部と前記光学素子とを連結する連結管と、前記光源部と前記受光部との間で且つ前記連結管に接続され、測定対象ガスが存在する煙道と、前記連結管の内の前記煙道付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第1パージガス導入口と、前記連結管の内の前記光学素子付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第2パージガス導入口とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、連結管の内の光学素子付近に取り付けられた第2パージガス導入口は、パージガスを導入して、パージガスを光学素子に供給するので、光学素子の表面が清浄に保持されて、ガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1のガス濃度測定装置の構成図である。
【図2】従来のガス濃度測定装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のガス濃度測定装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の施例1のガス濃度測定装置の構成図である。実施例1のガス濃度測定装置は、光源2からのレーザ光4に対して略直角方向に配置された煙道1に測定対象ガスが流れる場合に測定対象ガスを通過したレーザ光4を受光素子で受光して、測定対象ガスの濃度を測定するものである。
【0019】
測定対象ガスは、NH3、NO、NO2、SO2、HCL、H2O、CO、CO2、O2、HFなどである。光源2はレーザ光を発光するDFB−LD(半導体レーザ)やDFB−QCL(量子カスケードレーザ)である。受光素子は、PD(フォトダイオード)などである。
【0020】
なお、図1では、連結管500を含む光源部200側のみが図示されるが、連結管500を含む受光部300側についても煙道1を中心として光源部200側と対称の構造をなしている。ここでは、光源部200側のみを説明するものとし、受光部300側については説明を省略する。
【0021】
以下、図1における構成について、従来の図2に示す構成とは異なる部分について説明する。
【0022】
光源部200と受光部300とは、連結管500で接続されており、連結管500の内の、赤外透過ウィンドウ6(光学素子)と煙道1との間で且つ煙道1付近には、パージガス8cを導入するためのパージガス導入口7c(第1パージガス導入口)が設けられている。
【0023】
また、連結管500の内の、赤外透過ウィンドウ6とパージガス導入口7cとの間で且つ赤外透過ウィンドウ6付近には、スリット12が形成されている。このスリット12は、連結管5aと連結管5bとの隙間により連結管5a,5bの全周に形成されている。スリット12は、パージガス8bを赤外透過ウィンドウ6の全外周から吹き付けるものである。
【0024】
また、連結管5a,5bの外側には、スリット12を覆うように前室9が形成されている。この前室9は、スリット12の隙間により連結管5aと連結管5bとが分離しないように、連結管5aと連結管5bとを連結している。
【0025】
また、前室9にはパージガス8bを前室9内に導入するためのパージガス導入口(第2パージガス導入口)が取り付けられており、前室9内で且つスリット12と対向する位置に、調整機構10が全周に亙って形成されている。また、調整機構10は、図示しないが、前室9を2つに分割するように連結管5aの全周に亙って形成されてもよい。
【0026】
この調整機構10は、パージガス導入口7bから前室9に導入されたパージガス8bの流速を調整し、調整されたパージガス8bをスリット12を通して赤外透過ウィンドウ6に供給する。
【0027】
調整機構10は、パージガス8bの流速のムラを少なくし、赤外透過ウィンドウ6のレーザ光透過部に吹き付けるパージガス8bの流速が、ダストが除去できる速度以上となるように調整する。調整機構10は、例えば、整流板、メッシュ、ハニカム、多孔板などが用いられる。
【0028】
なお、パージガス8b,8cにはダストを含まないガスが用いられる。パージガス8b,8cのガス種は、測定対象ガスが赤外透過ウィンドウ6に吸着することによってレーザ光4の強度が低下し、測定精度の安定性が低下することを防止するため、測定対象ガスが含まれないガスが用いられる。パージガス8b,8cの総流量は、測定精度に影響しない流量とする。
【0029】
このように構成された実施例1のガス濃度測定装置によれば、連結管5bの内の赤外透過ウィンドウ6付近に取り付けられたパージガス導入口7bは、パージガス8bを導入して、パージガス8bを赤外透過ウィンドウ6に供給するので、赤外透過ウィンドウ6の表面が清浄に保持されて、ガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができる。
【0030】
また、ガス濃度測定装置のメンテナンス作業を軽減することができ、赤外透過ウィンドウ6の径を大きくすることなく、フィルタを定期的に交換する必要もなくなる。
【0031】
また、パージガス導入口7bから前室9に導入されたパージガス8bは、調整機構10により連結管5bの全周に亙ってダストを除去できる流速となり、流速が調整されたパージガス8bは、スリット12を通して赤外透過ウィンドウ6の全外周から吹き付けられる。このため、さらに、赤外透過ウィンドウ6の表面が清浄に保持されて、ガス濃度の測定精度を長期的に安定して得ることができる。
【0032】
なお、本発明は、実施例のガス濃度測定装置に限定されるものではない。パージガス導入口7b,7cのそれぞれは、複数個設けても良い。この場合には、上記効果はさらに大となる。
【0033】
また、赤外透過ウィンドウ6のレーザ光透過部に吹き付けるパージガス8bの流速が、全周に亙ってダストを除去できる速度以上になっている場合には、調整機構10を設けなくても良い。
【0034】
また、実施例では、光源部側及び受光部側のそれぞれに、パージガス導入口8b、前室9、調整機構10、及びスリット12を設けたが、例えば、光源部側及び受光部側の一方のみに、パージガス導入口8b、前室9、調整機構10、及びスリット12を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係るガス濃度測定装置は、ガス分析装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1‥煙道、2‥光源、3‥受光素子、4‥レーザ光、5,5a,5b‥連結管、6‥赤外透過ウィンドウ、7a,7b,7c‥パージガス導入口、8a,8b,8c‥パージガス、9‥前室、10‥調整機構、12‥スリット、100‥ガス濃度測定装置、200‥光源部、300‥受光部、400‥制御演算部、500‥連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を発光する光源部と、
前記レーザ光を受光する受光部と、
前記光源部と前記受光部との間で且つ前記レーザ光が通過する位置に配置された光学素子と、
前記光源部と前記受光部と前記光学素子とを連結する連結管と、
前記光源部と前記受光部との間で且つ前記連結管に接続され、測定対象ガスが存在する煙道と、
前記連結管の内の前記煙道付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第1パージガス導入口と、
前記連結管の内の前記光学素子付近に取り付けられ、パージガスを導入するための第2パージガス導入口と、
を有することを特徴とするガス濃度測定装置。
【請求項2】
前記光学素子付近の前記連結管には、該連結管の全周に亙ってスリットが形成されていることを特徴とする請求項1記載のガス濃度測定装置。
【請求項3】
前記第2パージガス導入口から導入されたパージガスの流速を調整し、調整されたパージガスを前記スリットを介して前記光学素子に供給する調整機構を備えることを特徴とする請求項2記載のガス濃度測定装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−101067(P2013−101067A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245444(P2011−245444)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】