説明

ガス濃度調整装置

【課題】標準ガスライン3における標準ガスの滞留を防止して、標準ガスの吸着や変性等による標準ガスの濃度低下を防止する。
【解決手段】希釈ガス流量調整機構23が設けられた希釈ガスライン2と、標準ガス流量調整機構33が設けられた標準ガスライン3と、希釈ガスライン2及び標準ガスライン3を合流して所定濃度の標準ガスを出力する出力ガスライン4と、標準ガスライン3において標準ガス流量調整機構33の上流側に接続されており、開閉弁及び流量調整部が設けられた排ガスライン5と、標準ガスライン3を流れる標準ガス流量又は前記標準ガスの種類に応じて、開閉弁の開閉を切り換える制御部6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス分析装置等のガス分析装置を校正する際に用いる校正用標準ガスを生成するものであって、希釈ガス等の第1ガスと標準ガス等の第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するガス濃度調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排ガス分析装置等のガス分析装置を校正するためには、所定濃度の標準ガスをガス分析装置に供給する必要がある。そして、この所定濃度の標準ガスを生成するものとして、特許文献1等に示すように、希釈ガスが供給される希釈ガスラインと、高濃度の標準ガスが供給される標準ガスラインと、それらが合流して所定濃度の希釈された標準ガスをガス分析装置に出力する出力ガスラインとを有する標準ガス濃度調整装置がある。この標準ガス濃度調整装置において前記希釈ガスラインには、希釈ガスの流量を調整するための質量流量調整器が設けられており、前記標準ガスラインには、標準ガスの流量を調整するための質量流量調整器が設けられている。
【0003】
しかしながら、上記構成の標準ガス濃度調整装置を用いて低濃度の標準ガスを生成する場合には、標準ガスラインに設けられた質量流量調整器によって標準ガスラインを流れる標準ガスの流量を低流量にする必要がある。そうすると、標準ガスラインにおける質量流量調整器の上流側において標準ガスが滞留してしまう。ここで、標準ガスが吸着性を有するものであると、標準ガスラインを構成する配管の内面に吸着してしまうという問題がある。このように配管の内面に標準ガスが吸着すると、出力ガスラインに供給される標準ガスの濃度が低下してしまい、結果として生成される標準ガスの濃度も所定濃度よりも小さいものとなってしまう。さらに、その標準ガスを用いて構成されたガス分析装置の校正も不正確になってしまうという問題がある。
【0004】
また、標準ガスラインを構成する配管が、例えばテフロンチューブ等のガス透過性を有するものである場合には、外気中のガス成分(例えば酸素)が標準ガスライン内に浸透してしまう。ここで、標準ガスがNOガス等のように、浸透ガス成分(例えば酸素)と反応性を有するものである場合には、酸素と反応してしまい標準ガスの濃度が低下してしまうという問題がある。そうすると、出力ガスラインに供給される標準ガスの濃度が低下して、生成される標準ガスの濃度も所定濃度よりも小さいものとなってしまう。これにより、ガス分析装置の校正も不正確になってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−104130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ガスラインにおけるガスの滞留を防止して、ガスの吸着や変性等によるガス濃度の低下を防止することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るガス濃度調整装置は、第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するガス濃度調整装置であって、第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインと、前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換える制御部とを具備することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、第2ガスラインの流量調整機構の上流側に排ガスラインを設けて、当該排ガスラインに設けられた開閉弁をガス流量及びガス種に応じて開閉するようにしているので、第2ガスラインにおける第2ガスの滞留を防止することができる。したがって、第2ガスの吸着や変性等の滞留により生じる問題を低減することができ、生成される混合ガスの濃度を所望の濃度に調整することができる。これにより、ガス分析装置の校正を正確に行うことができるようになる。また、排ガスラインに流れる第2ガス流量を流量調整部により一定としていることから、第2ガスラインから排ガスラインに流れる第2ガス流量を制限して、第2ガスラインの流量調整機構に流れる第2ガスを確保しながら、流量調整機構上流側における第2ガスの滞留を解消することができる。
【0009】
本発明の効果を一層顕著にするためには、前記第1ガスが希釈ガスであり、前記第2ガスが標準ガスであることが望ましい。
【0010】
第2ガスラインの具体的な実施の態様とともに、当該態様における第2ガスの滞留を好適に防止するためには、前記第2ガスラインが、それぞれに第2ガス流量調整機構が設けられた複数の分岐ラインと、それら分岐ラインのうち第2ガスが流れる分岐ラインを選択するライン切替機構とを有し、前記各分岐ラインに設けられた第2ガス流量調整機構における流量制御範囲が、互いに異なるように構成されており、前記排ガスラインが、前記複数の分岐ラインのうち低流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインに接続されていることが望ましい。各分岐ラインに設けられた第2ガス流量調整機構のうち、高流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインにおいては、第2ガスの滞留が生じにくいので、排ガスラインを設けることは必ずしも必要ではない。一方で、低流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインにおいては、滞留が生じやすくなり、上記構成により滞留を解消することができる。
【0011】
制御部が、開閉弁の切り替えを行う方法としては、第2ガス流量調整機構に入力される目標流量値が所定値以下である場合等が考えられる。ここで、制御部による開閉弁の制御を簡単にするためには、前記制御部が、前記複数の分岐ラインのうち低流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインが選択された場合に、前記排ガスラインに設けられた開閉弁を開放することが望ましい。
【0012】
また本発明に係るガス濃度調整プログラムは、第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するものであり、第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインとを具備するガス濃度調整装置に用いられるプログラムであって、前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換える制御部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする。
さらに本発明に係るガス濃度調整方法は、第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するものであり、第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインとを具備するガス濃度調整装置を用いたガス濃度調整方法であって、前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように構成した本発明によれば、標準ガスラインにおける標準ガスの滞留を防止して、標準ガスの吸着や変性等による標準ガス濃度の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る標準ガス濃度調整装置の模式的構成図である。
【図2】排ガスラインより排気した場合とそうでない場合における標準ガス濃度の誤差を示す実験結果である。
【図3】排ガスラインよる排気流量による標準ガス濃度の誤差を示す実験結果である。
【図4】測定制御範囲の違いによる標準ガス濃度の誤差を示す実験結果である。
【図5】変形実施形態に係る標準ガス濃度調整装置の模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る標準ガス濃度調整装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0016】
<装置構成>
本実施形態に係る標準ガス濃度調整装置100は、例えば自動車のエンジン排ガス中のNOx等の成分濃度等を分析する排ガス分析装置を校正するための校正用標準ガスを生成するものであり、第1ガスである希釈ガスと第2ガスである標準ガスとを所定比率で混合して所定濃度の標準ガス(混合ガス)を生成する。例えば標準ガス濃度調整装置100は、希釈率(分割率=「標準ガス流量」/「希釈ガス流量」)として、0%〜100%まで適宜設定できるように構成されている。
【0017】
具体的にこのものは、図1に示すように、希釈ガスの流量を制御するための希釈ガス流量調整機構23が設けられた希釈ガスライン2と、標準ガスの流量を制御するための標準ガス流量調整機構33が設けられた標準ガスライン3と、希釈ガスライン2及び標準ガスライン3を合流して所定濃度の標準ガスを出力する出力ガスライン4と、標準ガスライン3から所定流量の排ガスを排出する排ガスライン5と、希釈ガス流量調整機構23及び標準ガス流量調整機構33等を制御する制御部6とを備えている。なお、出力ガスライン4の出口は、ガス分析装置に接続されている。
【0018】
希釈ガスライン2は、上流側に希釈ガス源(不図示)が接続されており、防塵フィルタ21を介して、上流側開閉弁22、希釈ガス流量調整機構23及び下流側開閉弁24がこの順で設けられている。希釈ガス流量調整機構23は、熱式又は差圧式の希釈ガス流量測定部及び当該希釈ガス流量測定部の流量測定信号に基づいて制御部6により制御される希釈ガス流量調整弁を有するマスフローコントローラ(MFC1)である。
【0019】
本実施形態では、希釈ガスとして、窒素ガス及び空気を切り換えて供給可能に構成されている。具体的には、希釈ガス流量調整機構23の上流側において、窒素ガス供給ライン2aと空気供給ライン2bとが設けられており、各供給ライン2a、2bには、防塵フィルタ21及び上流側開閉弁22が設けられている。そして、各供給ライン2a、2bに設けられた上流側開閉弁22の開閉を制御部6が切り換えることで、希釈ガス流量調整機構23に供給される希釈ガスの種類を切り換えるように構成されている。なお、窒素ガス供給ライン2a及び空気供給ライン2bは、接続ライン7により標準ガスライン3に接続されており、当該標準ガスライン3をパージ可能に構成されている。なお、接続ライン7には開閉弁71が設けられている。
【0020】
標準ガスライン3は、上流側に標準ガス源(不図示)が接続されており、防塵フィルタ31を介して、上流側開閉弁32、標準ガス流量調整機構33及び下流側開閉弁34がこの順で設けられている。本実施形態では、標準ガスとしてはNOガスを用いた場合を示している。このNOガスは、ライン配管の内面に吸着し易く、また、その他のガス成分(例えば酸素)と反応して変性し易いという性質を有する。なおその他、ガス分析装置の測定対象成分に応じて、適宜標準ガスは選択可能である。
【0021】
具体的に標準ガスライン3は、標準ガスの流量制御範囲が異なる複数の分岐ライン3a、3b、3cと、それら分岐ライン3a、3b、3cのうち標準ガスが流れる分岐ラインを選択するライン切替機構35とを有する。分岐ライン3a、3b、3cは、上流側開閉弁32の下流側において複数(本実施形態では、3本)に分岐しており、各分岐ライン3a、3b、3cに標準ガス流量調整機構33が設けられている。なお、標準ガスライン3において、標準ガス源との接続にはテフロンチューブ(不図示)が用いられている。このテフロンチューブは、高圧化で用いられると、外気の酸素が浸透する。これにより、テフロンチューブ内の標準ガス(NOガス)は、浸透した酸素と反応して、NOを生成してしまう。
【0022】
本実施形態の標準ガス流量調整機構33は、熱式又は差圧式の標準ガス流量測定部及び当該標準ガス流量測定部の流量測定信号に基づいて制御部6により制御される標準ガス流量調整弁を有するマスフローコントローラ(MFC)である。各分岐ライン3a、3b、3cに設けられた標準ガス流量調整機構33は、その流量制御範囲(流量調整レンジ)が互いに異なるように構成されている。具体的には、第1の分岐ライン3aに設けられた流量調整機構33(MFC2)の流量制御範囲は、フルスケールの2%〜100%(例えばフルスケール5LM(N換算流量))であり、第2の分岐ライン3bに設けられた流量調整機構33(MFC3)の流量制御範囲は、フルスケールの2%〜100%(例えばフルスケール500cc(N換算流量))であり、第3の分岐ライン3cに設けられた流量調整機構33(MFC4)の流量制御範囲は、フルスケールの2%〜100%(例えばフルスケール50cc(N換算流量))である。つまり、各分岐ライン3a、3b、3cに設けられた流量調整機構33(MFC2〜MFC4)のフルスケールが互いに異なるように構成されている。
【0023】
ライン切替機構35は、各分岐ライン3a、3b、3cの流量調整機構33の下流側に設けられた下流側開閉弁34により構成されている。この開閉弁34の開閉制御信号は制御部6により入力される。
【0024】
排ガスライン5は、標準ガスライン3における標準ガス流量調整機構33の上流側に接続されており、開閉弁51及び一定流量の標準ガスを流す流量調整部52が設けられている。具体的には、排ガスライン5は、各分岐ライン3a、3b、3cにおける標準ガス流量調整機構33の上流側にそれぞれ接続されている。また、流量調整部52は、キャピラリーチューブ、オリフィス、ベンチュリ管等の絞り機構を用いて構成している。本実施形態では、一次側圧力が一定(例えば100kPa)の場合に流量が一定(例えば300ccm)となるキャピラリーチューブを用いて構成している。その他、流量調整部52としてマスフローコントローラを用いても良い。
【0025】
制御部6は、上記各ライン2、3、5に設けられた上流側開閉弁21、31、下流側開閉弁24、34、希釈ガス流量調整機構23、標準ガス流量調整機構33及び開閉弁51等を制御して、希釈ガスライン2を流れる希釈ガスの流量及び標準ガスライン3を流れる標準ガスの流量を設定して、出力ガスライン4から出る校正用標準ガスの濃度を設定するものである。この制御部6は、CPUや内部メモリ等を搭載した回路部(図示せず)を内蔵し、その内部メモリに記憶されたプログラムにしたがって、前記CPUや周辺機器を作動する。なお、各ライン2、3、5に設けられた開閉弁は、電磁弁である。
【0026】
しかして制御部6は、標準ガスライン3を流れる標準ガス流量に応じて、排ガスライン5に設けられた開閉弁51の開閉を切り換える。具体的に制御部6は、標準ガスライン3に流れる標準ガス流量が所定値以下の場合、つまり、標準ガスライン3に設けられた標準ガス流量調整機構33(流量調整弁)に入力される目標流量値が所定値以下の場合に、排ガスライン5に設けられた開閉弁51に開放制御信号を出力して、排ガスライン5に標準ガスの一部が流れるようにする。
【0027】
より詳細に制御部6は、複数の分岐ライン3a、3b、3cのうち低流量範囲の標準ガス流量調整機構33が設けられた分岐ライン(例えば第2の分岐ライン3b及び第3の分岐ライン3c)が選択された場合に、排ガスライン5に設けられた開閉弁51を開放する。つまり、制御部6は、ライン切替機構35を構成する下流側開閉弁34に開閉制御信号を出力して、第2の分岐ライン3b又は第3の分岐ライン3cが選択された場合に、排ガスライン5の開閉弁51に開放制御信号を出力する。これにより、標準ガスライン3を流れる標準ガス流量が低流量範囲の場合であっても、標準ガスは排ガスライン5に流れることになり、標準ガスライン3における流量調整機構33上流側において標準ガスが常に動的な状態(滞留しにくい状態)とすることができ、標準ガスの吸着や変性等の問題を低減することができる。なお、低流量範囲とは、標準ガスライン3を流れる標準ガス流量が、出力ガスライン4を流れる希釈された標準ガス流量の10%以下の範囲である。ここで出力ガスライン4を流れる希釈された標準ガス流量は実ガス流量に換算した値であっても良い。
【0028】
次に、排ガスライン5を用いて標準ガスの一部を排気した場合と、排気しない場合とにおける標準ガス濃度の理論値に対する実測値の誤差を図2に示す。なお、この実験においては排ガスライン5に流れる標準ガス流量を300ccmとした。横軸は希釈後の標準ガス濃度[ppm]であり、縦軸は濃度誤差[%]である。この図2から分かるように、標準ガス濃度が小さくなるほど、排気しない場合に比べて排気した場合の方が濃度誤差が小さくなっている。この結果から、排ガスライン5により排ガスの一部を排出することによって、標準ガスライン3における流量調整機構33上流側での標準ガスの滞留が緩和されていることが分かる。
【0029】
次に、排ガスライン5よる排気流量による標準ガス濃度の誤差を図3に示す。なお、この実験においては、希釈率を0.2%とした。横軸は排気流量[ccm]であり、縦軸は希釈率0.2%時の濃度誤差[%]である。この図3から分かるように、排ガスライン5による排気流量が200ccmの場合は、排気流量が300ccm以上の場合に比べて濃度誤差が大きい。この結果から、排気流量は300ccm以上とすることで、標準ガスライン3における流量調整機構33上流側での標準ガスの滞留が緩和されていることが分かる。なお、標準ガスのランニングコストを考慮すると、排気流量は300ccmとすることが好ましい。
【0030】
次に、測定制御範囲の違いによる標準ガス濃度の誤差を図4に示す。この図4は、第2の分岐ライン3bに標準ガスを流す場合及び第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合の両方において排ガスライン5により排気した場合と、第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合にのみ排ガスライン5により排気した場合との標準ガス濃度の誤差を示す。横軸は希釈後の標準ガス濃度[ppm]であり、縦軸は濃度誤差[%]である。この図4から分かるように、第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合のみ排気を行うと、第2の分岐ライン3bから第3の分岐ライン3cに切り替える際に、排気開始前での濃度誤差が大きくなってしまうことが分かる。なお、図4において、「MFC3、MFC4両方OPEN」が示す3点が、第2の分岐ライン3bに標準ガスを流す場合及び第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合の両方で排気を行った場合の濃度誤差を示す。また、「MFC4のみOPEN」が示す3点が、第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合のみ排気を行った場合の濃度誤差を示す。この結果から、第2の分岐ライン3bに標準ガスを流す場合及び第3の分岐ライン3cに標準ガスを流す場合の両方で排気を行うことが好ましいことが分かる。
【0031】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の標準ガス濃度調整装置100によれば、標準ガスライン3の流量調整機構33の上流側に排ガスライン5を設けて、当該排ガスライン5に設けられた開閉弁51をガス流量に応じて開閉するようにしているので、標準ガスライン3における標準ガスの滞留を防止することができる。したがって、標準ガスの吸着や変性等の滞留により生じる問題を低減することができ、生成される標準ガスの濃度を所望の濃度に調整することができる。これにより、ガス分析装置の校正を正確に行うことができるようになる。
【0032】
また、排ガスライン5に流れる標準ガス流量を流量調整部52により一定としていることから、標準ガスライン3から排ガスライン5に流れる標準ガス流量を制限して、標準ガスライン3の流量調整機構33に流れる標準ガスを確保しながら、流量調整機構33上流側における標準ガスの滞留を解消することができる。
【0033】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0034】
例えば、前記実施形態では、排ガスライン5が全ての分岐ラインに接続されるように構成されているが、図5に示すように、複数の分岐ラインのうち低流量範囲の標準ガス流量調整機構33が設けられた分岐ライン(例えば第2の分岐ライン及び第3の分岐ライン)にのみ接続されているように構成しても良い。
【0035】
また、前記実施形態では、ライン切替機構により第2の分岐ライン又は第3の分岐ラインが選択された場合に自動的に、制御部6が、排ガスライン5に設けられた開閉弁に開放制御信号を出力するように構成しているがこれに限られない。つまり、制御部6は、いずれの分岐ラインが選択されたかに依らず、分岐ラインに設けられた流量調整機構の目標流量値に基づいて、開閉弁の開閉を制御するようにしても良い。
【0036】
さらに、前記実施形態では、標準ガスライン3に流れる標準ガス流量に応じて、排ガスライン5に設けられた開閉弁51の開閉を制御するように構成されているが、流量に依らず吸着や変性し易い標準ガスを用いる場合には、制御部は、標準ガス流量に依らず、使用する標準ガスに応じて排ガスライン5の開閉弁51の開閉を制御するようにしても良い。例えば、開閉弁51を開放するタイミングは前記実施形態と同様である。
【0037】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
100 ・・・標準ガス濃度調整装置
2 ・・・希釈ガスライン
23 ・・・希釈ガス流量調整機構
3 ・・・標準ガスライン
3a〜3c・・・分岐ライン
33 ・・・標準ガス流量調整機構
34 ・・・ライン切替機構
4 ・・・出力ガスライン
5 ・・・排ガスライン
51 ・・・開閉弁
52 ・・・流量調整部
6 ・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するガス濃度調整装置であって、
第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、
第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、
前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、
前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインと、
前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換える制御部とを具備するガス濃度調整装置。
【請求項2】
前記第1ガスが希釈ガスであり、前記第2ガスが標準ガスである請求項1記載のガス濃度調整装置。
【請求項3】
前記第2ガスラインが、それぞれに第2ガス流量調整機構が設けられた複数の分岐ラインと、それら分岐ラインのうち第2ガスが流れる分岐ラインを選択するライン切替機構とを有し、
前記各分岐ラインに設けられた第2ガス流量調整機構における流量制御範囲が、互いに異なるように構成されており、
前記排ガスラインが、前記複数の分岐ラインのうち低流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインに接続されている請求項1又は2記載のガス濃度調整装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記複数の分岐ラインのうち低流量範囲の第2ガス流量調整機構が設けられた分岐ラインが選択された場合に、前記排ガスラインに設けられた開閉弁を開放する請求項3記載のガス濃度調整装置。
【請求項5】
第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するものであり、第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインとを具備するガス濃度調整装置に用いられるプログラムであって、
前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換える制御部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とするガス濃度調整プログラム。
【請求項6】
第1ガスと第2ガスとを所定比率で混合して所定濃度の混合ガスを生成するものであり、第1ガスの流量を制御するための第1ガス流量調整機構が設けられた第1ガスラインと、第2ガスの流量を制御するための第2ガス流量調整機構が設けられた第2ガスラインと、前記第1ガスライン及び前記第2ガスラインを合流して所定濃度の混合ガスを出力する出力ガスラインと、前記第2ガスラインにおいて前記第2ガス流量調整機構の上流側に接続されており、開閉弁及び一定流量の第2ガスを流す流量調整部が設けられた排ガスラインとを具備するガス濃度調整装置を用いたガス濃度調整方法であって、
前記第2ガスラインを流れる第2ガス流量又は前記第2ガスの種類に応じて、前記排ガスラインに設けられた開閉弁の開閉を切り換えることを特徴とするガス濃度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−141292(P2012−141292A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266384(P2011−266384)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000127961)株式会社堀場エステック (88)
【Fターム(参考)】