説明

ガス熱源機

【課題】インバータを介することなく、直流電流を供給する補助電源を直接接続して作動可能なガス熱源機を提供する。
【解決手段】交流電流を供給する外部電源8に接続される熱源機本体2と、インバータ4を介して接続線6で熱源機本体2に接続されており、直流電流で作動する、熱源機本体2に作動を指令するためのリモコン装置3と、を備えるガス熱源機1において、直流電流を供給する補助電源9を着脱自在に接続する接続端子5をリモコン装置3に備え、外部電源8から熱源機本体2及びインバータ4を経てリモコン装置3に電力が供給されて運転される第1運転状態と、接続端子5に接続された補助電源9からリモコン装置3及び熱源機本体2に電力が供給されて運転される第2運転状態と、に切換可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電源に接続される熱源機本体と、インバータを介して接続線で前記熱源機本体に接続されており、直流電流で作動する、前記熱源機本体に作動を指令するためのリモコン装置と、を備えるガス熱源機に関する。
【背景技術】
【0002】
ライフラインの安定性向上の観点から、ガス利用機器は、停電等の非常時には、乾電池や車のバッテリー等の非常電源により運転できることが望ましい。そこで、従来技術において、通常時には商用電源から、非常時には補助電源から、電力供給を受けて作動するガスコンロが発明されている(例えば特許文献1参照)。例えば特許文献1のガスコンロは、停電時には乾電池式の補助電源から電力の供給を受けて作動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−8536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように補助電源を乾電池とする構成は、消費電力が小さいコンロには適用可能であっても、消費電力が大きいガス熱源機には適用が難しい。ガス熱源機は、例えば交流100Vの安定した商用電源から電力の供給を受けて運転することを前提として設計されていることから、容量や電圧が不十分な乾電池や車のバッテリー等の直流電流を供給する補助電源で作動させるためには、補助電源とガス熱源機との間に、補助電源から与えられる直流電流を交流電流に変換するインバータを介することが必要となる。
即ち、例えば直流12Vの車のバッテリーからシガーソケットを通じて電力を得る場合において、シガーソケットをガス熱源機に直接接続することはできず、インバータを介して交流100Vの電流に変換した上で接続する必要がある。このように、補助電源である車のバッテリーとガス熱源機とを接続するためにインバータを介する必要が生じるため、従来のガス熱源機では、直流電流を供給する補助電源から電力を得るための構成が複雑となる。
このように、従来のガス熱源機では、商用電源から電力供給を受けられない場合には、インバータを介して直流電流を交流電流に変換した上で電力供給を受ける必要があるにも関わらず、その一方で、燃焼用ファンや循環ポンプに代表されるように、ガス熱源機内のアクチュエータには直流電流で作動するものが多い。
また、インバータにより直流電流を交流電流に変換した場合でも、変換された電流の波形にいわゆる尖りやノイズ等の矩形を生じることがある。そして、このような電流波形の乱れによりガス熱源機を構成する電子部品が破損され、ガス熱源機の寿命を縮める恐れがある。
【0005】
さらに、本願が対象とするガス熱源機では、ガス熱源機は、例えば各家庭の外壁に設置される熱源機本体と台所、風呂場等に設置されるリモコン装置とを備えて構成されているが、両者間を電気的に接続する接続線は壁内に収められているため、外部に露出している機器は、実質上、両機器に限られる。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部的なインバータの接続を必要とすることなく、使用者が容易に直流電流を供給する補助電源を直接接続して作動が可能なガス熱源機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係るガス熱源機は、
交流電流を供給する外部電源に接続される熱源機本体と、
インバータを介して接続線で前記熱源機本体に接続されており、直流電流で作動する、前記熱源機本体に作動を指令するためのリモコン装置と、を備えるガス熱源機であって、その第1特徴構成は、
直流電流を供給する補助電源を着脱自在に接続するための接続端子を前記リモコン装置に備え、
前記外部電源から前記熱源機本体及び前記インバータを経て前記リモコン装置に電力が供給されて運転される第1運転状態と、前記接続端子に接続された補助電源から前記リモコン装置及び前記熱源機本体に電力が供給されて運転される第2運転状態と、に切換可能に構成されている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によれば、通常時のように、商用電源や自家発電等で構成される交流電流を供給する外部電源から電力供給を受けてガス熱源機を運転させる場合は、第1運転状態として、熱源機本体に外部電源を接続し、熱源機本体を外部電源からの電流で作動させる。
また、熱源機本体に作動を指令するリモコン装置は、インバータを介して接続線で熱源機本体に接続されている。そして、第1運転状態では、外部電源から熱源機本体に供給された交流電流を、インバータにより直流電流に変換した上で、リモコン装置に供給する。リモコン装置は、このようにして供給される直流電流によって作動する。
【0009】
一方、停電等の非常時のように、商用電源等の外部電源から電力の供給を受けることができない場合は、第2運転状態として、外部に露出している機器であるリモコン装置に設けられた接続端子に直流電流を供給する補助電源を接続してガス熱源機を作動させる。
第2運転状態では、リモコン装置は、接続端子に接続された補助電源から供給される直流電流によって作動する。そして、補助電源からの直流電流は、接続線を通じて熱源機本体に供給される。燃焼用ファンや循環ポンプに代表されるように、熱源機本体内のアクチュエータは直流電流で作動するものが多いため、このようなアクチュエータに対しては、補助電源から供給される直流電流を必要に応じて昇圧或いは降圧させながら、直接駆動電流として供給する。一方、交流電流で作動するものに対しては、補助電源から供給される直流電流を、インバータにより交流電流に変換した上で、駆動電流として供給する。
即ち、第2運転状態では、補助電源からリモコン装置に供給された直流電流を、昇圧或いは降圧させて直接駆動電流として、或いは、インバータにより交流電流に変換した上で、熱源機本体内の各アクチュエータに供給する。熱源機本体は、このようにして補助電源から供給される直流電流によって作動する。
このように、本発明に係るガス熱源機は、停電等の非常時のように外部電源から交流電流の供給を受けることができない場合は、ガス熱源機の運転状態を第2運転状態に切り換えることで、補助電源から直流電流の供給を受けて、熱源機本体及びリモコン装置を作動させることができる。
【0010】
以上のように、本発明に係るガス熱源機によれば、直流電流を供給する補助電源から電力供給を受ける場合でも、必要に応じてガス熱源機に備えられたインバータにより電流を直流電流から交流電流に変換した上で熱源機本体内の各アクチュエータに供給する構成であるため、直流電流を供給する補助電源とガス熱源機とを直接接続することができる。これにより、外部的なインバータの接続を必要とすることなく、外部に露出している機器であるリモコン装置に設けられた接続端子を通じて、使用者が容易に直流電流を供給する補助電源に直接接続して作動可能なガス熱源機を提供することができる。
【0011】
本発明に係るガス熱源機の第2特徴構成は、前記第1特徴構成において、前記外部電源から電力の供給を受けることが可能な受電状態で、前記第1運転状態で運転され、前記外部電源からの電力の供給が遮断された遮断状態で、前記第2運転状態で運転される点にある。
【0012】
上記の特徴構成によれば、商用電源等の外部電源から電力の供給を受けることが可能な受電状態(通常時)では外部電源から電力の供給を受ける第1運転状態で、停電等により外部電源からの電力の供給が遮断された遮断状態(非常時)では補助電源から電力供給を受ける第2運転状態で、ガス熱源機が運転される。
これにより、受電状態(通常時)には電気容量の大きい商用電源を電源とし、商用電源から電力供給を受けることができない遮断状態(非常時)にのみ、補助電源を電源として稼動するガス熱源機を提供することができる。即ち、電力の供給状態に応じて適切な電源を選択して作動するガス熱源機を提供することができる。
【0013】
本発明に係るガス熱源機の第3特徴構成は、前記第1又は第2特徴構成において、外部からの切換指令に基づいて、前記第1運転状態と前記第2運転状態との間で運転状態を切換える切換手段を備える点にある。
【0014】
上記の特徴構成によれば、外部からの切換指令に基づいて、第1運転状態と第2運転状態との間で運転状態を切換えることができる。これにより、電力の供給状況だけでなく、管理者の意図に基づいて電源を切換えて作動させることが可能なガス熱源機を提供できる。切換指令は、例えばリモコン装置に配置される電源切換スイッチから入力される。
【0015】
本発明に係るガス熱源機の第4特徴構成は、前記第1〜第3特徴構成のいずれかにおいて、前記接続線に、前記熱源機本体内の機器の始動に伴う、前記補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段を備える点にある。
【0016】
上記の特徴構成によれば、接続線に補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段を備えるため、突入電流が大きい送風ファン等の熱源機本体内の機器の始動に伴い、変換された電流の波形にいわゆる尖りやノイズ等の矩形を生じた場合でも、突入電流に起因するブレーカの切断や電源電圧の不安定化等の悪影響を抑えることができる。このような緩和手段として、例えばバイパスコンデンサやタイムラグヒューズを採用することができる。
【0017】
本発明に係るガス熱源機の第5特徴構成は、前記第1〜第4特徴構成のいずれかにおいて、前記第2運転状態において、前記熱源機本体を、消費電力を抑えた省電力モードで作動させる点にある。
【0018】
上記の特徴構成によれば、補助電源から電力供給を受ける第2運転状態において、熱源機本体を、消費電力を抑えた省電力モードで作動させる。従って、電気容量が小さい補助電源から電力を供給する第2運転状態において、ガス熱源機をより長時間作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ガス熱源機の構成図
【図2】ガス熱源機本体の構成図
【図3】通常時(受電状態)のガス熱源機における電力供給の様子を示す図
【図4】非常時(遮断状態)のガス熱源機における電力供給の様子を示す図
【図5】燃料ガス供給量と送風ファン回転数の関係を示すグラフ図
【図6】省電力モードにおける燃料ガス供給量と送風ファン回転数の関係を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るガス熱源機の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るガス熱源機1の構成図である。
【0021】
〔ガス熱源機の構成〕
図1に示すように、ガス熱源機1は、交流電流を供給する外部電源に接続される熱源機本体2と、インバータ4を介して接続線6で熱源機本体2に接続されており、直流電流で作動する、熱源機本体2に作動を指令するためのリモコン装置3と、を備える。図1では、外部電源として、100Vの電圧で交流電流を供給する商用電源8が熱源機本体2に接続されている。
【0022】
リモコン装置3は、給湯水の目標温度を設定可能なコントローラとして作動する。ガス熱源機1は、リモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に基づいて、加熱部11を構成するガスバーナ13への燃料ガス供給量及び送風ファン14の回転数を制御する制御部10を備えている。図1に示すガス熱源機1では、リモコン装置3として、台所a、浴室b、居間cの夫々に、台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3cが設置され、接続線6(6a、6b、6c)を介して、熱源機本体2に接続されている。
なお、接続線6は、通常時に熱源機本体2からリモコン装置3への電力供給と、リモコン装置3と熱源機本体2との通信とを行っている2芯線であり、非常時には、リモコン装置3から熱源機本体2への電力供給を行うための専用線とすることができる。
【0023】
ガス熱源機1は、直流電流を供給する補助電源を着脱自在に接続するための接続端子5を、外部に露出している機器であるリモコン装置3に備えている。図1では、台所a、浴室b、居間cに設置されたリモコン装置3(台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3c)の夫々に接続端子5(5a、5b、5c)が備えられている。そして、補助電源として車のバッテリー9が、台所用リモコン3aに備えられた接続端子5aを通じて、使用者によりガス熱源機1に容易に接続可能に構成されている。
図1は、車のバッテリー9を実際に接続した状態を示しており、停電等の理由により、商用電源8から熱源機本体2への電力供給が断たれた状況では、補助電源である車のバッテリー9からの電力供給に頼ることとなる。
【0024】
また、図1において、ガス熱源機1は、熱源機本体2内の機器の始動に伴う補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段であるバイパスコンデンサ7を、接続端子5と熱源機本体2との間の接続線6に備えている。これにより、突入電流が大きい送風ファン等の熱源機本体内の機器の始動に伴い、変換された電流の波形にいわゆる尖りやノイズ等の矩形を生じた場合でも、突入電流に起因するブレーカの切断や電源電圧の不安定化等の悪影響を抑え、安定した電力を供給することができる。
【0025】
〔熱源機本体の構成〕
図2に熱源機本体2の構成を示す。図2に示す熱源機本体2は、加熱部11として、新たな湯水を供給するために、給水された水を加熱して湯水として供給する給湯系2Xの加熱部11Xと、高低温暖房及び追焚きのために、暖房タンク31や浴槽42に貯蔵された湯水を循環させ、加熱して還流させる循環系2Yの加熱部11Yとを備える、いわゆる2缶3水路方式の熱源機である。
【0026】
〔給湯系〕
熱源機本体2は、給湯系2Xに、上流から供給される水を加熱部11Xで加熱し、湯水として下流の給湯水栓25に供給する給湯水管21と、給湯水管21を通流する水を加熱する熱交換器12X及びガスバーナ13Xからなる加熱部11Xと、加熱部11Xに送風する送風ファン14Xと、を備えている。図2では、給湯水栓25として、台所aの蛇口25aと浴室bのシャワー25bとを備えている。本例では、ガスバーナ13Xは、個々に燃料ガスの供給・遮断が可能な複数のバーナ部(図示省略)を備えて構成されるものであり、各バーナ部からの燃料ガスの供給状態を調整することで、燃焼段として、そのインプット量(燃料ガスの供給量)が段階的に異なる複数の燃料段(燃焼状態)が実現する。
【0027】
給湯系2Xでは、加熱部11Xをバイパスするバイパス管23が、加熱部11Xの上流でバイパス管23に通流させる水の流量を調整するミキシング弁22を介して分流するように、且つ、加熱部11Xの下流で合流するように、給湯水管21に接続されている。また、給湯水管21とバイパス管23との合流箇所の下流に、給湯量を調整する水量サーボ24を備えている。また、給湯水栓25の上流に、給湯水栓25に供給される湯水の流量を計測する流量計26a及び温度を計測する温度計26bが設けられており、流量計26a及び温度計26bで測定された温度は、制御部10に伝達される。
【0028】
〔給湯系:加熱量の調整による給湯温度の調整〕
給湯系2Xでは、リモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に基づいて、給湯水管21を通流する湯水を加熱部11Xで加熱し、給湯水栓25に給湯する。具体的には、制御部10が、リモコン装置3で設定された目標温度及び流量計26aで計測される湯水の量、温度計26bで計測される湯水の温度に基づいて、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び燃料ガス供給量に対応する燃焼用空気量(実際はファン回転数)を調整することで、加熱部11Xにおける加熱量を調整し、給湯水栓25に供給される湯水の温度を調整する。
【0029】
即ち、制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて低い場合は、給湯温度を上げるため、加熱部11Xにおける加熱量を増加させるべく、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量を増加させる。また、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量に対応するように送風ファン14Xの回転数を制御する。
一方、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された目標温度に比べて高い場合は、給湯温度を下げるため、加熱部11Xにおける加熱量を減少させるべく、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量を減少させる。また、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量の減少に対応するように送風ファン14Xの回転数を制御する。
このように、制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度と、リモコン装置3で設定された目標温度とに基づいて、ガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数を制御して、給湯水栓25に供給される湯水の給湯温度を調整する。
【0030】
このような燃料ガス供給量と送風ファン14Xの回転数の関係を、図5に示す。図5は、ガスバーナ13Xが複数(図示する場合は4)のバーナ部から構成されており、使用するバーナ部の数を変更することで、複数段のインプット調整が可能な例を示している。図5において、Aで示す1段インプットラインが単一のバーナ部を使用するラインであり、Bで示す2段インプットラインが2つのバーナ部を使用するラインである。使用するバーナ部の数が増加するに従って、燃料ガス供給量を段階的に増加させることができる。
さらに、各段内で、使用するバーナ部に供給する燃料ガス供給量も所定の範囲内で調整することができる。
【0031】
また、ガスバーナに供給する燃料ガス供給量に従って、バーナにおける燃焼を最適な状態に保つように、その供給量に対応した燃焼用空気の供給量(換言すると送風ファン14Xの回転数)が予め決定されている。
これらが、図5に各実線で示すインプットラインである。
【0032】
なお、詳細な説明は省略するが、複数の需要箇所に設置した夫々の給湯水栓25(台所aの蛇口25a、浴室bのシャワー25b、等)において、上記した給湯系2Xから供給される給湯水と、上記で説明していない別の給水系から供給される水とを、例えば給湯系2Xの下流で混合可能に構成することで、夫々の給湯水栓25毎に、同時に、且つ、異なる給湯温度及び異なる給湯水量で、湯水を使用可能に構成することができる。
【0033】
〔給湯系:混合割合の調整による給湯温度の調整〕
制御部10は、交流電源からの電力供給が正常に行われている第1運転状態では、カラン等の調整により決定される給湯量に従って、リモコン装置3で設定される目標温度でその給湯量の湯を得られるように、図5に示されるインプットラインを選択し、燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数を制御する。さらに、ミキシング弁22の作動も制御する。
一方、後述する交流電源からの電力供給が断たれ、リモコン装置3を介して制限された電力量の直流電力しか得られない第2運転状態では、上記のガスバーナ13Xへの燃料ガス供給量及び送風ファン14Xの回転数、及び、ミキシング弁22の作動を限定した制御状態とする。このような限定された制御状態では、先に説明した水量サーボ24の作動を制御することで、給湯温度をある程度調整できる。
【0034】
上記の第2運転状態では、制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて低い場合は、給湯温度を上昇させるべく、加熱部11Xに通流させる水量を減少させ、給湯水栓25における湯水の給湯温度を上昇させることができる。
【0035】
一方、制御部10は、温度計26bで測定される給湯温度がリモコン装置3で設定された給湯水の目標温度に比べて高い場合は、給湯温度を低下させるべく、加熱部11Xに通流させる水量を増加させ、給湯水栓25における湯水の給湯温度を低下させることができる。
【0036】
このように、上記構成によれば、制御部10は、第1運転状態及び第2運転状態の夫々に対応した運転を行うことができる。
【0037】
〔循環系〕
循環系2Yは、暖房或いは追焚に使用される熱媒を貯蔵する暖房タンク31と、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を送出する暖房循環ポンプ32と、暖房循環ポンプ32により暖房タンク31から送出された熱媒を加熱し、暖房或いは追焚のための熱量を与える加熱部11Yと、暖房タンク31と加熱部11Yとを接続する熱媒往管33と、加熱部11Yで加熱された熱媒を高温暖房設備41に供給する高温往管34と、高温暖房設備で放熱し、温度の低下した熱媒を暖房タンク31に戻す熱媒戻管35とを備える。
このような構成により、循環系2Yでは、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、加熱部11Yで加熱して高温の熱媒とし、高温暖房に利用することができる。即ち、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、熱媒往管33、加熱部11Y、高温往管34、高温暖房設備41、熱媒戻管35、暖房タンク31、と循環させて、高温暖房に利用することができる。
なお、循環系の加熱部11Yも、給湯系の加熱部11Xと同様に、熱交換器12Y、ガスバーナ13Y、送風ファン14Yとを備えて構成されている。高温暖房設備41として、例えば、浴室乾燥暖房装置やファンコンベクター等が考えられる。
【0038】
また、循環系2Yでは、低温暖房設備43に熱媒を供給すべく、暖房タンク31から送出された熱媒を低温暖房設備43に供給する低温往管36が、暖房タンク31と加熱部11Yとの間で熱媒往管33から分岐して、低温暖房設備43に連接されている。そして、低温暖房設備43で使用され、放熱により温度の低下した熱媒は、熱媒戻管35を通流して暖房タンク31に戻るように構成される。
このような構成により、循環系2Yでは、暖房タンク31に貯蔵された熱媒が持つ熱量を、低温暖房に利用することができる。即ち、暖房タンク31に貯蔵された熱媒を、熱媒往管33、低温往管36、低温暖房設備43、熱媒戻管35、暖房タンク31と循環させて、低温暖房に利用することができる。
低温暖房設備43として、例えば、床暖房装置やパネルラジエータ等が考えられる。
【0039】
さらに、循環系2Yは、高温往管34から分岐し、熱媒戻管35に連接された高温バイパス管37と、高温バイパス管37を通流する熱媒の熱量により追焚される湯水を通流させる追焚循環管38と、追焚循環管38に湯水を循環させるための追焚循環ポンプ39と、高温バイパス管37を通流する熱媒の熱量により追焚循環管38を循環する湯水を追焚するための追焚熱交換部40とを備える。
このような構成により、循環系2Yでは、加熱部11Yで加熱され、高温となった熱媒の一部を追焚に利用することができる。また、追焚に利用し温度が低下した熱媒を、熱媒戻管35を通じて暖房タンク31に戻らせ、暖房或いは追焚のために再利用することができる。
【0040】
〔電力供給の構成〕
ガス熱源機1は、外部電源から熱源機本体2及びインバータ4を経てリモコン装置3に電力が供給されて運転される第1運転状態と、接続端子5に接続された補助電源からリモコン装置3及び熱源機本体2に電力が供給されて運転される第2運転状態と、に切換可能に構成されている。
【0041】
ガス熱源機1は、外部電源からの電力供給の有無に基づいて第1運転状態と第2運転状態とを切換える。具体的には、ガス熱源機1は、外部電源から電力の供給を受けることが可能な受電状態では第1運転状態で運転され、外部電源からの電力の供給が遮断された遮断状態では第2運転状態で運転される。即ち、ガス熱源機1は、受電状態(通常時)では商用電源8から、遮断状態(非常時)では補助電源であるバッテリー9から、電力の供給を受けて給湯作動する。このような構成により、ガス熱源機1は、状況に応じた好適な電源から電力供給を受けて運転される。
【0042】
なお、詳細な説明は省略するが、このような第1運転状態と第2運転状態との切換制御は、例えば、外部電源或いは補助電源からの電力供給の有無を計測する計測機器と、当該計測機器による計測結果を受信して、当該計測結果に応じて回路接続の切換制御を行う制御部で構成することができる。以下では、ガス熱源機1が、このような構成で制御されるものとして説明する。
【0043】
〔第1運転状態における電力供給の構成〕
図3に、交流電源である商用電源8から電力供給を受けて作動する第1運転状態(受電状態)における電力供給の構成を示す。
制御部10は、計測機器(図示省略)の計測結果から、ガス熱源機1への電力の供給状態が商用電源8(外部電源の一例)から電力の供給を受けることが可能な受電状態であることを検知すると、ガス熱源機1の運転状態を第1運転状態とし、商用電源8を熱源機本体2に接続する。これにより、熱源機本体2内の送風ファン等の機器は、交流電源である商用電源8から電力供給を受けて作動する。
【0044】
一方、第1運転状態において、リモコン装置3は、接続線6を通じて、熱源機本体2を介して商用電源8から電力供給を受ける。リモコン装置3は直流電流で作動するため、この場合、リモコン装置3は、インバータ4を介して接続線6により熱源機本体2に接続される。このような構成により、ガス熱源機1は、商用電源8から供給された交流電流を、インバータ4により直流電流に変換した上で、リモコン装置3に供給することができる。これにより、ガス熱源機1は、交流電源である商用電源8からの電力供給を受けて、熱源機本体2及びリモコン装置3を作動させることができる。
【0045】
〔第2運転状態における電力供給の構成〕
図4に、直流電源であるバッテリー9から電力供給を受けて作動する第2運転状態(遮断状態)における電力供給の構成を示す。
制御部10は、計測機器(図示省略)の計測結果から、ガス熱源機1への電力の供給状態が商用電源8(外部電源の一例)からの電力の供給が遮断された遮断状態であることを検知すると、ガス熱源機1の運転状態を第2運転状態とし、バッテリー9を、リモコン装置3が備える接続端子5に接続する。これにより、直流電流で作動するリモコン装置3は、直流電源であるバッテリー9から電力供給を受けて作動する。
【0046】
一方、第2運転状態において、熱源機本体2は、接続線6を通じて、リモコン装置3を介してバッテリー9から電力供給を受ける。ここで、熱源機本体2は、熱源機本体2内の機器の始動に伴う補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段であるバイパスコンデンサ7を、接続端子5と熱源機本体2との間の接続線6に備えている。
このような構成により、ガス熱源機1は、バッテリー9から供給された直流電流について、送風ファン14等の突入電流が大きい熱源機本体2内のアクチュエータによる影響をバイパスコンデンサ7で緩和して安定させた状態で、熱源機本体2に電力を供給することができる。これにより、ガス熱源機1は、直流電源であるバッテリー9からの電力供給を受けて、熱源機本体2及びリモコン装置3を作動させることができる。
【0047】
〔第2運転状態における省電力モード〕
第2運転状態は外部電源から電力の供給が遮断された停電時等の遮断状態における運転状態であり、いわゆる非常時の運転状態である。このような第2運転状態では、ガス熱源機1は、消費電力を抑えた省電力モードで作動するように構成されている。
具体的には、ガス熱源機1は、補助電源から電力供給を受ける停電時には、省電力モードとして、制御部10が、燃料ガス供給量を、送風ファン回転数が最小値となる供給量に制御するように構成されている。
【0048】
先に説明したように、図5は、商用電源から電力供給を受ける通常時における燃料ガス供給量Gと送風ファン回転数Nとの関係を表す、各燃焼段におけるインプットラインを示している。
通常時である第1運転状態では、充分な電力供給を受けることが可能であるため、各インプットライン上の任意の点で運転することが可能である。即ち、求められる給湯量の湯を、設定された目標温度で、給湯することができる。
これに対して、非常時である第2運転状態では、制限された電力供給しか受けることができないため、夫々のインプットライン上において、電力消費量が小さい特定の範囲又は点での運転に制限する。これにより、得ることが可能な電力量の範囲で実現可能な給湯を行う。
【0049】
図5に基づいて説明する。通常時である第1運転状態では、使用者がリモコン装置3により目標温度をTAに設定すると、制御部10は、給湯量、給湯温度及び内部的に保持する対応表(図示省略)に基づいて、燃料ガス供給量をGA、送風ファン回転数をNAに決定する。
【0050】
図5において、一の燃料ガス供給量Gに対して2つの送風ファン回転数Nを示すインプットラインが存在する範囲では、直近に採用していたインプットラインに基づいて、送風ファン回転数Nを決定する。
例えば、一の燃料ガス供給量Gに対して2つの送風ファン回転数Nを示すインプットラインが存在する範囲(ii)について、低温から高温への変更により範囲(ii)に属することとなった場合は、範囲(i)において採用していたインプットラインAに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。そして、範囲(iii)の温度となった場合に、インプットラインBに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。
また、高温から低温への変更により範囲(ii)に属することとなった場合は、範囲(iii)において採用していたインプットラインBに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。そして、範囲(i)の温度となった場合に、インプットラインAに基づいて送風ファン回転数Nを決定する。
【0051】
一方、停電時等のいわゆる非常時である第2運転状態では、ガス熱源機1は消費電力を抑える省電力モードで作動し、送風ファン回転数Nを抑えるように制御される。即ち、バッテリー9等の補助電源から電力の供給を受ける第2運転状態では、例えば制御部10が、燃料ガス供給量Gを、送風ファン回転数Nを極小値Nminとする供給量Gminに設定すると伴に、ミキシング弁22及び水量サーボ24の作動を制御して、給湯温度及び給湯水量を制御する。この場合、給湯温度を給湯水量に優先する。
なお、ミキシング弁22及び水量サーボ24の作動の制御による給湯温度の調整方法は先述の通りである。また、先は給湯系2Xについて説明したが、循環系2Yも同様に構成することができる。
【0052】
制御部10は、以上のように、燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nを制御すると伴に、温度計26bで測定される給湯温度とリモコン装置3で設定された目標温度とに基づいてミキシング弁22の作動を制御することで、高温の湯水と低温の水の混合比率を調整し、給湯温度を目標温度に調整する。また、水量サーボ24の作動を制御して、給湯水量を制御する。
ガス熱源機1は、このようにして、省電力モードにおいて、送風ファン回転数Nを最小限に抑え、消費電力を最小限に抑えながら、使用者の所望する目標温度の湯水を、使用者の所望する給湯水量で供給する。
【0053】
〔第2運転状態における容量切れの報知〕
第2運転状態において、補助電源であるバッテリー9からの供給電圧が所定値以下に低下した場合は、制御部10は、リモコン装置3に警告表示を行ない、ガスバーナを停止し、水量サーボ24により給湯水量を制限するように作動を制御する。このように、ガス熱源機1は、リモコン装置3への警告表示と水量サーボ24による給湯量制限により、使用者にバッテリー9の容量切れを報知する。
【0054】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、台所用リモコン3a、浴室用リモコン3b、床暖房用リモコン3cとして、台所a、浴室b、居間cの夫々にリモコン装置3が設置され、複数のリモコン装置3が熱源機本体2に接続される構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、例えば、リモコン装置は1つだけでもよく、台所a、浴室b、居間cのいずれかにのみ設置される構成としてもよい。また、リモコン装置は、台所a、浴室b、居間c以外の場所に設置されていてもよく、4台以上のリモコン装置が熱源機本体に接続される構成としてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では、燃料ガス供給量Gを、使用者が設定した目標温度と、制御部が内部的に保持される対応表とに基づいて決定する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、目標温度と所定の数式とに基づいて決定する構成としてもよい。或いは、制御部が、使用者が設定した目標温度と、給湯水栓の上流に設けられた温度計で計測される給湯温度とを比較して、燃料ガス供給量Gを増減させる構成としてもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では、計測機器の計測結果(外部電源からの電力供給の有無)に基づいて、制御部が第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、制御部による切換制御によることなく、或いは、制御部による切換制御と並行して、外部からの切換指令に基づいて第1運転状態と第2運転状態との間で運転状態を切換える切換手段を備える構成としてもよい。
切換手段は、例えばリモコン装置に電源切換スイッチを備え、当該電源切換スイッチの切換えに基づいて、第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成としてもよい。或いは、リモコン装置とは別に、電源を切換える電源切換スイッチをガス熱源機に備え、当該電源切換スイッチの切換えにより、第1運転状態と第2運転状態とを切換える構成としてもよい。
このような構成により、外部電源からの電力供給状態に依ることなく、或いは、外部電源からの電力供給状態に基づく電源の切換制御と並行して、使用者が切換手段から切換を指令することで、運転状態(電源)を柔軟に切換えることが可能なガス熱源機を提供することができる。
【0057】
(4)上記実施形態では、省電力モードにおいて、図5に基づいて、燃料ガス供給量Gを、送風ファン回転数Nを極小値Nminに抑える供給量Gminに制御する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、図6に示すように、省電力モードにおいて、採用できるインプットライン上の範囲を電力消費が小さいg1、g2、g3、g4の範囲(ファン回転数をNe以下に抑える範囲)として、燃料ガス供給量G及び送風ファン回転数Nをその範囲内に抑え、できる限りの範囲で湯温を目標温度に近づけるように制御する構成としてもよい。なお、送風ファン回転数Nの上限Neは、例えば、第2運転状態において得ることが可能な電力量(例えば補助電源から供給される電力量)に基づいて設定される構成とすることができる。
また、省電力モードにおいて、リモコン装置の表示を限定したり、或いは、リモコン装置の輝度を落とすことで消費電力を抑える構成としてもよく、更には、これらを組合せる構成としてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態では、第2運転状態において、補助電源であるバッテリーからの供給電圧が所定値以下に低下した場合には、リモコン装置への警告表示と水量サーボによる給湯水量制限により、使用者にバッテリーの容量切れを報知する構成を例示したが、当該構成は例示に過ぎない。別実施形態として、リモコン装置への警告表示、水量サーボによる給湯水量制限、の何れか一方により使用者に報知する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 ガス熱源機
2 熱源機本体
3、3a、3b コントローラ(リモコン装置)
4 インバータ
5 接続端子
6 接続線
7 緩和手段(バイパスコンデンサ)
8 外部電源(商用電源)
9 補助電源(バッテリー)
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電流を供給する外部電源に接続される熱源機本体と、
インバータを介して接続線で前記熱源機本体に接続されており、直流電流で作動する、前記熱源機本体に作動を指令するためのリモコン装置と、を備えるガス熱源機において、
直流電流を供給する補助電源を着脱自在に接続するための接続端子を前記リモコン装置に備え、
前記外部電源から前記熱源機本体及び前記インバータを経て前記リモコン装置に電力が供給されて運転される第1運転状態と、前記接続端子に接続された補助電源から前記リモコン装置及び前記熱源機本体に電力が供給されて運転される第2運転状態と、に切換可能に構成されているガス熱源機。
【請求項2】
前記外部電源から電力の供給を受けることが可能な受電状態で、前記第1運転状態で運転され、前記外部電源からの電力の供給が遮断された遮断状態で、前記第2運転状態で運転される請求項1記載のガス熱源機。
【請求項3】
外部からの切換指令に基づいて、前記第1運転状態と前記第2運転状態との間で運転状態を切換える切換手段を備える請求項1又は2記載のガス熱源機。
【請求項4】
前記熱源機本体内の機器の始動に伴う前記補助電源からの突入電流を緩和する緩和手段を前記接続線に備える請求項1〜3の何れか一項記載のガス熱源機。
【請求項5】
前記第2運転状態において、前記熱源機本体を、消費電力を抑えた省電力モードで作動させる請求項1〜4の何れか一項記載のガス熱源機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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