説明

ガス特定装置、ガス特定方法、ガス対処支援システムおよびガス対処支援方法

【課題】 ガスと試薬との化学反応によって変化した媒体の色に基づいて、ガスを特定することが可能なガス特定装置を提供する。
【解決手段】 検出部1bは、特定対象のガスと試薬が媒体上で化学反応した後の媒体の色を検出する。制御部1dは、検出部1bにて検出された色に最も似た色を示す色情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色情報から特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報を、特定対象のガスを示すガス識別情報として、スペクトルデータベース1cから読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス特定装置、ガス特定方法、ガス対処支援システムおよびガス対処支援方法に関し、例えば、毒ガスを特定するガス特定装置、ガス特定方法、ガス対処支援システムおよびガス対処支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、毒ガス等のガスと試薬とを化学反応させて試薬の色を変化させるガス検知装置が知られている。例えば、特許文献1(USP6228657B1号公報)には、M256キットが記載されている。
【0003】
このガス検知装置は、試薬と、試薬を内蔵するアンプルと、そのアンプルが破壊されたときにその中の試薬が流れ込む紙等の媒体とを含む。試薬は、媒体に流れ込むと、媒体に接触しているガスと化学反応する。試薬は、その化学反応により色が変わり、その試薬の色の変化に応じて、媒体の色も変わる。ユーザは、その媒体の色の変化に基づいて、ガスの強さを認識する。
【0004】
しかしながら、このガス検知装置は、以下のような欠点を有する。
【0005】
操作手順が簡単でない。このため、操作に時間がかかり、2人で操作しなければならない。また、環境(温度および紫外線等)の制御能力が乏しい。このため、化学反応の再現性および信頼性がよくない。また、ユーザが媒体(試薬)の色を判定するため、ユーザの判定は客観性に欠ける。
【0006】
特許文献1には、このガス検知装置の欠点を補う読取装置が記載されている。
【0007】
具体的には、この読取装置は、ガス検知装置の操作を自動化した。その結果、ガス検知装置の操作時間が大幅に短縮された。
【0008】
また、この読取装置は、環境を制御することによって、化学反応の再現性および信頼性を向上させた。
【0009】
また、この読取装置は、少なくとも3つの波長域の感度を有するフォトダイオードを有し、このフォトダイオードは、媒体(試薬)の色に応じた信号を出力する。このため、ユーザは、フォトダイオードの出力に基づいて、媒体(試薬)の色を客観的に判定できる。
【特許文献1】USP6228657B1号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
試薬の色は、ガスの種類に応じて、微妙に変化する場合がある。しかしながら、特許文献1に記載の読取装置は、その微妙な色の変化を認識できない。このため、ユーザは、特許文献1に記載の読取装置を用いても、ガスを特定することはできない。
【0011】
本発明の目的は、ガスとの化学反応によって変化した試薬の色に基づいて、ガスを特定することが可能なガス特定装置、ガス特定方法、ガス対処支援システムおよびガス対処支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明のガス特定装置は、試薬を特定対象のガスと化学反応させて該試薬の色を変化させるガス検知装置を用い、前記ガス検知装置で化学反応した試薬の色に基づいて前記特定対象のガスを特定するガス特定装置であって、予め、ガスを識別するためのガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色に関する色情報と、を関連づけて格納するデータベースと、前記ガス検知装置から、前記特定対象のガスと化学反応した試薬の色を検出する検出部と、前記データベースに格納されている色情報から、前記検出部にて検出された色に最も似た色を示す色情報を特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る制御部とを含む。
【0013】
また、本発明のガス特定方法は、試薬を特定対象のガスと化学反応させて該試薬の色を変化させるガス検知装置を用い、予めガスを識別するためのガス識別情報と該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色に関する色情報とを関連づけて格納するデータベースを含むガス特定装置が行うガス特定方法であって、前記ガス検知装置から、前記特定対象のガスと化学反応した試薬の色を検出する検出ステップと、前記データベースに格納されている色情報から、前記検出された色に最も似た色を示す色情報を特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る制御ステップとを含む。
【0014】
上記の発明によれば、特定対象のガスと化学反応した試薬の色に最も似た色を示す色情報が、データベースに格納されている色情報から特定され、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報がデータベースから読み取られる。
【0015】
このため、特定対象のガスに関するガス識別情報および色情報が、データベースに格納されていれば、ユーザの判断を必要とせずに、また、試薬の色の変化が微妙であっても、特定対象のガスを特定することが可能になる。したがって、ガスとの化学反応によって変化した試薬の色に基づいて、特定対象のガスを特定することが可能になる。
【0016】
また、前記ガス検知装置では、前記試薬は、前記特定対象のガスと接触している媒体に流入されると、該特定対象のガスと化学反応し、前記データベースは、前記色情報として、前記試薬が流入する前の前記媒体の色から前記試薬が流入して該試薬が化学反応した後の前記媒体の色への変化を示す色変化情報を格納し、前記試薬が流入する前の前記媒体の色と、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色とが検出され、前記媒体の色の変化が、前記検出結果に基づいて検出され、前記検出された媒体の色の変化に最も似た色の変化を示す色変化情報が、前記データベースに格納されている色変化情報から特定され、その特定された色変化情報と関連づけられているガス識別情報が前記データベースから読み取られることが望ましい。
【0017】
上記の発明によれば、特定対象のガスが、媒体の色の変化に基づいて特定される。媒体の色変化は、化学反応したガスの種類を示す。このため、特定対象のガスを高精度で特定することが可能になる。
【0018】
また、前記データベースは、前記色変化情報として、前記媒体の色の変化をスペクトルで示すスペクトル情報を格納し、前記試薬が流入する前の前記媒体の色のスペクトルと、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色のスペクトルとが検出され、前記媒体の色の変化を示すスペクトルが前記検出結果に基づいて検出され、前記検出された媒体の色の変化を示すスペクトルに最も似たスペクトルを示すスペクトル情報が、前記データベースに格納されているスペクトル情報から特定され、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報が前記データベースから読み取られることが望ましい。
【0019】
上記の発明によれば、媒体の色の変化をスペクトルにて特定する。このため、特定対象のガスを高精度で特定することが可能になる。
【0020】
また、前記検出された前記媒体の色の変化を示すスペクトルの波形に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、前記媒体の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報が、前記データベースに格納されているスペクトル情報から特定され、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報が前記データベースから読み取られることが望ましい。
【0021】
上記の発明によれば、特定対象のガスを、より高精度で特定することが可能になる。
【0022】
また、前記データベースは、前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色から得られる吸収ラインと、を関連づけて格納し、前記検出された色から吸収ラインが特定され、その特定された吸収ラインに最も近い吸収ラインが、前記データベースに格納されている吸収ラインから特定され、その特定された吸収ラインと関連づけられているガス識別情報が前記データベースから読み取られることが望ましい。
【0023】
上記の発明によれば、ガスと試薬との化学反応にて生成された物質の吸収ラインに基づいて、特定対象のガスを特定することが可能になる。
【0024】
また、前記データベースは、前記検出部が前記ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した前記試薬の色を検出した際の該検出部の検出結果に応じた色情報を格納することが望ましい。
【0025】
上記の発明によれば、データベースに格納される色情報は、検出部の特性に応じた情報となり、データベースに格納される色情報と検出部の検出結果との整合性を容易に取ることが可能となる。
【0026】
また、前記検出部は、前記媒体に光を照射する発光部と、受光部と、前記発光部から照射された後に前記媒体にて反射された光を前記受光部に導く導光部とを含むことが望ましい。
【0027】
上記の発明によれば、導光部は、発光部から照射された後に媒体にて反射された光を受光部に導く。このため、受光部は、その反射光を確実に受光することが可能になる。
【0028】
また、前記導光部は、楕円ミラーであり、前記検出部は、前記発光部から照射された光を前記媒体に導く投光用光ファイバと、前記媒体にて反射された光を前記楕円ミラーの一方の焦点位置に導く反射光用光ファイバと、をさらに含み、前記受光部は、前記楕円ミラーの他方の焦点位置に設けられていることが望ましい。
【0029】
上記の発明によれば、発光部の照射光を投光用光ファイバを介して媒体に導き、媒体の反射光を反射光用光ファイバを介して楕円ミラーに導くことが可能になる。このため、試薬を含むガス検知装置と検出部とを光ファイバを介して接続することが可能になる。したがって、ガス検知装置と検出部とを離すことが可能となる。
【0030】
また、楕円ミラーが、反射光用光ファイバにて導かれた反射光を受光部に導く。このため、反射光用光ファイバにて導かれた反射光の進行方向が、反射光用光ファイバの曲がりによって、一定しなくても、受光部は、その反射光を確実に受光することが可能になる。
【0031】
また、前記導光部は、楕円ミラーと、前記楕円ミラーの一方の焦点位置に設けられ、前記媒体にて反射された光を通すスリットとを含み、前記検出部は、前記楕円ミラーの他方の焦点位置に設けられていることが望ましい。
【0032】
上記の発明によれば、受光部は、発光部から照射された後に媒体にて反射された光を確実に受光することが可能になる。
【0033】
また、前記読み取られたガス識別情報を外部の情報センターに送信することが望ましい。
【0034】
上記の発明によれば、特定されたガスの情報を、外部の情報センターに自動的に知らせることが可能となる。
【0035】
また、前記ガス識別情報とともに現在位置を示す位置情報を外部の情報センターに送信することが望ましい。
【0036】
上記の発明によれば、特定されたガスが存在している場所を外部の情報センターに自動的に知らせることが可能となる。
【0037】
また、本発明のガス対処支援システムは、前記ガス識別情報を外部の情報センターに送信する送信部を含むガス特定装置と、前記ガス特定装置と通信する情報センターと、を含むガス対処支援システムであって、前記情報センターは、 前記送信部から送信された情報を受信する通信部と、前記通信部にて受信された情報を表示する表示部とを含む。
【0038】
また、本発明のガス対処支援方法は、前記ガス識別情報を外部の情報センターに送信するガス特定装置と、前記ガス特定装置と通信する情報センターと、を含むガス対処支援システムが行うガス対処支援方法であって、前記情報センターが前記ガス特定装置から送信された情報を受信する受信ステップと、前記情報センターが前記受信された情報を表示する表示ステップとを含む。
【0039】
上記の発明によれば、情報センターは、ガス特定装置から送信されたガス識別情報および位置情報を表示する。このため、情報センターでは、所定のガスの発生、または、所定のガスの発生とその発生場所とを、情報センターの使用者に知らせることが可能になる。
【0040】
また、前記情報センターは、前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスへの対処内容を示す対処情報と、関連づけて格納する対処情報格納部を含み、前記受信されたガス識別情報と関連づけられている対処情報を前記対処情報格納部から読み出し、その読み出された対処情報を表示することが望ましい。
【0041】
上記の発明によれば、発生したガスへの対処内容を、情報センターの使用者に知らせることが可能になる。
【0042】
また、前記情報センターは、対処センターを示す対処センター情報と、該対処センターの管轄地域と、を関連づけて格納する対処センター格納部をさらに含み、前記受信した位置情報にて示される位置が管轄地域に含まれる対処センターを、前記対処センター格納部を参照して特定し、その特定された対処センターに対して前記位置情報および前記読み出された対処情報を送信することが望ましい。
【0043】
上記の発明によれば、ガスが発生した場所を管轄する対処センターに、ガスの発生場所と、発生したガスに対する対処内容を知らせることが可能になる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、特定対象のガスと化学反応した試薬の色に最も似た色を示す色情報が、データベースに格納されている色情報から特定され、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報がデータベースから読み取られる。このため、ガスとの化学反応によって変化した試薬の色に基づいて、高い精度でガスを特定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。
【0046】
図1は、本発明の第1実施例のガス対処支援システムを示したブロック図である。
【0047】
図1において、本ガス対処支援システムは、ガス特定装置1と、情報センター2と、対処センター3とを含む。
【0048】
ガス特定装置1は、入力部1aと、検出部1bと、スペクトルデータベース1cと、制御部1dと、GPS1eと、メモリ1fと、表示部1gと、通信部1hと、枠1iとを含む。検出部1bは、発光部1b1と、フィルタ1b2と、CCD1b3と、ADC(アナログ/デジタル変換器)を含むCCD信号処理部1b4とを含む。制御部1dは、色変化検出部1d1と、ガス特定部1d2とを含む。色変化検出部1d1は、スペクトル検出部1d1aと、メモリ1d1bとを含む。
【0049】
情報センター2は、通信部2aと、対処情報格納部2bと、対処センター格納部2cと、センター制御部2dと、表示部2eとを含む。
【0050】
対処センター3は、通信部3aと、制御部3bと、表示部3cとを含む。
【0051】
ガス特定装置1は、少なくとも、ガス検知装置4の媒体43を枠1i内に収納可能である。
【0052】
図2は、ガス検知装置4の一例を示した斜視図である。
【0053】
図2において、ガス検知装置4は、試薬41と、試薬41を内蔵するアンプル42と、アンプル42が破壊されたときにその中の試薬41が流れ込む紙等の媒体43とを含む。
【0054】
ガス検知装置4は、互いに異なる試薬41を内蔵する複数のアンプル42を有する。本実施例では、ガス検知装置4は、名称が「A」の試薬41aと、名称が「B」の試薬41bと、名称が「C」の試薬41cとを有する。
【0055】
試薬41は、媒体43に流れ込むと、媒体43に接触しているガス(例えば、特定対象のガス)と化学反応する。試薬41と媒体43は、ガスとの化学反応により色が変わる。なお、ガス検知装置4は、例えば、特許文献1に記載のM256キットである。
【0056】
図1に戻って、ガス特定装置1は、ガス検知装置4で化学反応した試薬41の色に基づいて特定対象のガスを特定する。さらに言えば、ガス特定装置1は、特定対象のガスと化学反応した試薬41を含む媒体43の色に基づいて特定対象のガスを特定する。
【0057】
入力部1aは、操作スイッチであり、ユーザの入力(例えば、暗電流測定指示と、発光指示と、ビニング(binning)指示)を受け付ける。
【0058】
入力部1aは、暗電流測定指示を受け付けると、その受け付けられた暗電流測定指示を制御部1d(具体的には、スペクトル検出部1d1a)に提供し、また、発光指示を受け付けると、その受け付けられた発光指示を、検出部1b(具体的には、発光部1b1)および制御部1d(具体的には、スペクトル検出部1d1a)に提供する。
【0059】
また、入力部1aは、ビニング指示を受け付けると、その受け付けられたビニング指示を制御部1d(具体的には、スペクトル検出部1d1aとガス特定部1d2)に提供する。なお、予め定められたビニング指示が、制御部1dに設定されていてもよい。
【0060】
検出部1bは、ガス検知装置4から、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色、具体的には、特定対象のガスと化学反応した試薬41を含む媒体43の色を検出する。
【0061】
本実施例では、検出部1bは、試薬41が流入する前の媒体43の色と、試薬41が流入しその流入された試薬が化学反応した後の媒体43の色とを検出する。具体的には、検出部1bは、試薬41が流入する前の媒体43の色のスペクトルと、試薬41が流入しその流入された試薬41が化学反応した後の媒体43の色のスペクトルとを検出する。
【0062】
発光部1b1は、入力部1aから発光指示を受け付けると、媒体43に光を照射する。発光部1b1は、例えば、ハロゲンランプまたは白熱灯である。なお、発光部1b1は、ハロゲンランプまたは白熱灯に限らず適宜変更可能である。
【0063】
媒体43は、発光部1b1から照射された光を反射する。媒体43が特定対象のガスと化学反応した試薬41を含むとき、媒体43にて反射された光は、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色を示す。
【0064】
なお、枠1iは、発光部1b1から発光された照射光と異なる光がガス検知装置4に照射されることを防止する。
【0065】
フィルタ1b2は、線形可変フィルタ(Linear variable filter)である。
【0066】
図3は、フィルタ1b2の一例を示した説明図である。なお、図3において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0067】
図3において、フィルタ1b2は、ガラス基板1b2aと、ガラス基板1b2a上に設けられた多層膜1b2bとを含む。多層膜1b2bは、一端1b2b1から他端1b2b2に向けて、厚さが増している。このため、フィルタ1b2を通過する光の波長は、一端1b2b1から他端1b2b2に向けて徐々に変化する(図3参照)。
【0068】
本実施例では、フィルタ1b2は、380〜720nmの波長の光を透過させる。なお、フィルタ1b2が通過させる波長域は、380〜720nmに限らず適宜変更可能である。
【0069】
図1に戻って、CCD1b3は、フィルタ1b2を通過した光を受光する。本実施例では、CCD1b3は256個の受光部λを有す。それぞれの受光部λ(λ=1、2・・・256)は、フィルタ1b2を透過した光を受光する。このため、受光部λのそれぞれは、互いに異なる波長の光を受光する。
【0070】
CCD1b3は、各受光部λが受光した光の強さに応じた出力を順番に出力する。例えば、CCD1b3は、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色のスペクトル、さらに言えば、特定対象のガスと化学反応した試薬41を含む媒体43の色のスペクトルを出力する。なお、CCD1b3とフィルタ1b2とで、受光部が構成される。
【0071】
CCD信号処理部1b4は、CCD1b3の出力をデジタル値に変換する。
【0072】
スペクトルデータベース1cは、予め、ガスを識別するためのガス識別情報と、そのガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色に関する色情報と、を関連づけて格納する。
【0073】
例えば、スペクトルデータベース1cは、色情報として、試薬41が流入する前の媒体43の色から試薬41が流入して試薬41が化学反応した後の媒体43の色への変化を示す色変化情報を格納する。本実施例では、スペクトルデータベース1cは、色変化情報として、ガス識別情報にて識別されるガスと試薬41との化学反応による媒体43の色の変化をスペクトルで示すスペクトル情報を格納する。
【0074】
なお、本実施例では、スペクトルデータベース1cは、検出部1bがガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬41(媒体43)の色を検出した際の検出部1bの検出結果に応じた色情報を格納する。
【0075】
図4は、スペクトルデータベース1cの一例を示した説明図である。
【0076】
図4において、スペクトルデータベース1cは、試薬名1c1と、ガス識別情報1c2と、色情報1c3とを互いに関連づけて格納する。
【0077】
図4に示したスペクトルデータベース1cでは、例えば、試薬「A」と、ガス識別情報「a」と、ガス識別情報「a」と化学反応した試薬「A」の色(具体的には、媒体43の色変化)のスペクトルとが関連づけられている
図1に戻って、制御部1dは、検出部1bにて検出された色に最も似た色を示す色情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色情報1c3から特定する。また、制御部1dは、その特定された色情報1c3と関連づけられているガス識別情報1c2をスペクトルデータベース1cから読み取る。制御部1dは、その読み取られたガス識別情報1c2を、特定対象のガスを示すガス識別情報として扱う。
【0078】
制御部1dは、色変化検出部1d1と、ガス特定部1d2とを含む。
【0079】
色変化検出部1d1は、試薬41が流入する前の媒体43の色から試薬41が流入して試薬41が化学反応した後の媒体43の色への変化を、検出部1bの検出結果に基づいて検出する。本実施例では、色変化検出部1d1は、媒体43の色の変化を示すスペクトルを、検出部1bの検出結果に基づいて検出する。
【0080】
色変化検出部1d1は、スペクトル検出部1d1aと、メモリ1d1bとを含む。
【0081】
スペクトル検出部1d1aは、媒体43の色の変化を示すスペクトルを、CCD信号処理部1b4の出力に基づいて検出する。
【0082】
メモリ1d1bは、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルを格納する。
【0083】
図5は、メモリ1d1bの一例を示した説明図である。
【0084】
メモリ1d1bは、CCD1b3の各受光部(λ)と、検出部1bの検出値S0、S1およびSXと、相対強度(スペクトルデータ)Sと、ビニング相対強度(スペクトルデータ)Sbと、バンド値Λとを関連づけて格納する。
【0085】
以下、図5に示したS0、S1、SX、S、SbおよびΛについて説明する。
【0086】
入力部1aは、試薬41が媒体43に流入する前に暗電流測定指示を受け付けると、その受け付けられた暗電流測定指示を、スペクトル検出部1d1aに提供する。
【0087】
スペクトル検出部1d1aは、入力部1aから暗電流測定指示を受け付けると、発光部1b1が発光していないときの、CCD1b3の各受光部λの出力S0(λ)を測定する。スペクトル検出部1d1aは、その測定されたS0(λ)を、メモリ1d1bのS0に格納する。
【0088】
続いて、入力部1aは、試薬41が媒体43に流入する前に発光指示を受け付けると、その受け付けられた発光指示を、発光部1b1およびスペクトル検出部1d1aに提供する。
【0089】
発光部1b1は、発光指示を受け付けると、媒体43に光を照射する。
【0090】
媒体43は、発光部1b1から照射された光を反射する。この反射光は、試薬41が流入する前の媒体43の色(反射強度)を示す。この反射光は、フィルタ1b2を介してCCD1b3の各受光部λにて受光される。よって、CCD1b3の出力は、その反射光のスペクトルを示す。
【0091】
スペクトル検出部1d1aは、暗電流測定指示を受け付けた後に入力部1aから発光指示を受け付けると、CCD1b3の各受光部λの出力、つまり、試薬41が流入する前の媒体43の色のスペクトルを示す出力S1(λ)を測定する。スペクトル検出部1d1aは、その測定されたS1(λ)を、メモリ1d1bのS1に格納する。
【0092】
その後、ガス検知装置4のアンプル42が割られると、アンプル42内の試薬41が媒体43に流入する。試薬41は、媒体43に流入すると、媒体43と接触している特定対象のガスと化学反応する。なお、試薬41は、特定対象のガスと化学反応しない可能性もある。
【0093】
入力部1aは、試薬41が媒体43に流入した後に、再度、発光指示を受け付けると、その受け付けられた発光指示を、発光部1b1およびスペクトル検出部1d1aに提供する。
【0094】
発光部1b1は、発光指示を受け付けると、媒体43に光を照射する。
【0095】
媒体43は、発光部1b1から照射された光を反射する。この反射光は、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色(反射強度)を示す。具体的には、この反射光は、特定対象のガスと化学反応した試薬41を含む媒体43の色(反射強度)を示す。
【0096】
この反射光は、フィルタ1b2を介してCCD1b3の各受光部λにて受光される。よって、CCD1b3の出力は、その反射光のスペクトルを示す。
【0097】
スペクトル検出部1d1aは、入力部1aから、再度、発光指示を受け付けると、CCD1b3の各受光部λの出力、つまり、特定対象のガスと化学反応した試薬41が流入した後の媒体43の色のスペクトルを示す出力SX(λ)を測定する。スペクトル検出部1d1aは、その測定されたSX(λ)を、メモリ1d1bのSxに格納する。
【0098】
スペクトル検出部1d1aは、SX(λ)をメモリ1d1bに格納すると、相対強度(S(λ))を次式に基づいて計算する。
S(λ)=(S(λ)−S0(λ))/(S1(λ)−S0(λ))
なお、媒体43の品質が安定している場合、S0(λ)とS1(λ)とは、一度だけ測定され、その測定されたS0(λ)とS1(λ)が次回以降用いられてもよい。この場合、S(λ)を計算するための処理を少なくすることが可能になる。
【0099】
スペクトル検出部1d1aは、その計算されたS(λ)を、メモリ1d1bのSに格納する。
【0100】
なお、スペクトルデータベース1cに色情報を格納するときには、媒体43をガス識別情報にて識別されるガスと接触させた状態で、この手順と同様の手順が実行される。また、その計算されたS(λ)が、そのガス識別情報と関連づけられた色情報として、スペクトルデータベース1cに格納される。
【0101】
スペクトル検出部1d1aは、S(λ)をメモリ1d1bに格納すると、入力部1aから提供されたビニング指示に基づいて、ビニング相対強度(スペクトルデータ)Sb(Λ)を算出する。
【0102】
例えば、ビニング指示が「4」を示すと、スペクトル検出部1d1aは、S(λ)を4つずつまとめてSb(Λ)を算出する。図5に示した例では、S(1)〜S(4)を加算した値がSb(Λ=1)となり、S(253)〜S(256)を加算した値がSb(Λ=64)となる。
【0103】
スペクトル検出部1d1aは、その計算されたSb(Λ)を、メモリ1d1bのSb(Λ)に格納し、その後、Sb(Λ)をガス特定部1d2に提供する。
【0104】
なお、スペクトル検出部1d1aは、入力部1aからビニング指示を受け付けると、その受け付けられたビニング指示に基づいてバンド(Λ)を算出し、その算出されたバンド(Λ)を、メモリ1d1bのΛに格納する。
【0105】
ガス特定部1d2は、色変化検出部1d1にて検出された媒体43の色の変化に最も似た色の変化を示す色変化情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色変化情報1c3から特定する。
【0106】
例えば、ガス特定部1d2は、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルに最も似たスペクトルを示すスペクトル情報を、スペクトルデータベース1cに格納されているスペクトル情報1c3から特定する。
【0107】
本実施例では、ガス特定部1d2は、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報を、スペクトルデータベースに格納されているスペクトル情報1c3から特定する。
【0108】
具体的には、ガス特定部1d2は、以下のような処理を行う。
【0109】
ガス特定部1d2は、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルSb(Λ)を、各Λを座標とする多次元空間に仮想的に配置する。これにより、スペクトルSb(Λ)は、多次元空間でベクトルとして示される。
【0110】
また、ガス特定部1d2は、スペクトルデータベース1cに格納されている各スペクトル情報を、入力部1aから提供されたビニング指示に基づいて処理して、各スペクトル情報のバンド数を、スペクトルSb(Λ)のバンド数にそろえる。
【0111】
例えば、ビニング指示が「4」を示すと、ガス特定部1d2は、ガス識別情報1c2にて識別されるガスのスペクトル情報を4つずつまとめて、スペクトルデータベース1cに格納されている各スペクトル情報のバンド数を、スペクトルSb(Λ)のバンド数にそろえる。
【0112】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)のバンド数と同じバンド数の各スペクトル情報を、スペクトルSb(Λ)と同様に、各Λを座標とする多次元空間に仮想的に配置する。これにより、各スペクトル情報は、多次元空間でベクトルとして示される。
【0113】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と各スペクトル情報との内積を取り、その内積の値に基づいて、スペクトルSb(Λ)との角度が最も小さいスペクトル情報を選定する。なお、この処理は、スペクトルアングルマッパー(SAM)として称される公知の技術である。
【0114】
なお、スペクトルSb(Λ)とスペクトル情報との角度は、両者のスペクトル波形が一致すればするほど小さくなる。換言すると、両者の角度は、両者のスペクトル波形の一致度を示す。
【0115】
続いて、ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と、その選定されたスペクトル情報との角度が、所定の角度以下になっているか否か判断する。
【0116】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と、その選定されたスペクトル情報との角度が、所定の角度以下になっていると、その選定されたスペクトル情報を、スペクトルSb(Λ)を示すスペクトル情報として特定する。
【0117】
ガス特定部1d2は、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0118】
ガス特定部1d2は、その読み取られたガス識別情報1c2を、特定対象のガスを示すガス識別情報として、表示部1gおよび通信部1hに出力する。
【0119】
GPS1eは、位置出力部の一例である。GPS1eは、ガス特定装置1の現在位置を示す位置情報を生成し、その生成された位置情報をガス特定部1d2に出力する。
【0120】
メモリ1fは、ガス特定装置1の識別情報(ID)を格納する。このIDは、ガス特定部1d2にて読み取られる。
【0121】
本実施例では、ガス特定部1d2は、その読み取られたガス識別情報1c2とともに、GPS1eから出力された位置情報と、メモリ1fから読み取られたIDとを、表示部1gおよび通信部1hに出力する。
【0122】
表示部1gは、ガス特定部1d2からガス識別情報1c2、位置情報およびIDを受け付けると、その受け付けられたガス識別情報1c2、位置情報およびIDを表示する。
【0123】
通信部1hは、ガス特定部1d2からガス識別情報1c2、位置情報およびIDを受け付けると、その受け付けられたガス識別情報1c2、位置情報およびIDを、情報センター2に送信する。
【0124】
情報センター2は、ガス特定装置1および対処センター3と通信する。
【0125】
通信部2aは、ガス特定装置1の通信部1hおよび対処センター3の通信部3aと通信する。
【0126】
対処情報格納部2bは、ガス識別情報と、そのガス識別情報にて識別されるガスへの対処内容を示す対処情報と、を関連づけて格納する。
【0127】
図6は、対処情報格納部2bの一例を示した説明図である。
【0128】
図6において、対処情報格納部2bは、ガス識別情報2b1と、対処情報2b2とを関連づけて格納する。
【0129】
図1に戻って、対処センター格納部2cは、対処センター3を示す対処センター情報(例えば、対処センターの名称とその連絡先)と、その対処センターの管轄地域と、を関連づけて格納する。
【0130】
図7は、対処センター格納部2cの一例を示した説明図である。
【0131】
図7において、対処センター格納部2cは、対処センター情報2c1と、管轄地域2c2とを関連づけて格納する。
【0132】
図1に戻って、センター制御部2dは、情報センター2の動作を制御する。
【0133】
例えば、センター制御部2dは、通信部2aがガス識別情報、位置情報およびIDを受け付けると、その受け付けられたガス識別情報、位置情報およびIDを表示部2eに表示する。
【0134】
また、センター制御部2dは、その受け付けられたガス識別情報と関連づけられている対処情報を、対処情報格納部2bから読み出す。センター制御部2dは、その読み出された対処情報を表示部2eに表示する。
【0135】
また、センター制御部2dは、通信部2aが受信した位置情報にて示される位置が管轄地域に含まれる対処センターを、対処センター格納部2cを参照して特定する。具体的には、センター制御部2dは、その受信された位置情報にて示される位置を含む管轄地域を、対処センター格納部2cに格納された管轄地域から選定し、その選定された管轄地域と関連づけられた対処情報センター情報を特定する。
【0136】
センター制御部2dは、その特定された対処センターにその受信されたガス識別情報、位置情報およびID、ならびに、その読み出された対処情報を送信する送信処理を、通信部2aに実行させる。
【0137】
表示部2eは、センター制御部2dにて制御されて種々の情報を表示する。
【0138】
対処センター3は、例えば、警察署、消防署または医療施設である。
【0139】
通信部3aは、情報センター2の通信部2aから送信されたガス識別情報、位置情報および対処情報を受信する。
【0140】
制御部3bは、通信部3aにて受信されたガス識別情報、位置情報および対処情報を表示部3cに提供する。
【0141】
表示部3cは、制御部3bから提供されたガス識別情報、位置情報および対処情報を表示する。
【0142】
次に、動作を説明する。
【0143】
図8は、ガス対処支援システムの動作を説明するためのシーケンス図である。以下、図8を参照して、ガス対処支援システムの動作を説明する。なお、図8において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0144】
以下では、ユーザが「ビニング=4」を示すビニング指示を入力部1aに入力したときの動作を説明する。なお、ビニング指示は、「ビニング=4」に限らず適宜変更可能である。
【0145】
まず、ユーザは、試薬41が媒体43に流入する前のガス検知装置4が枠1i内に収まるように、枠1iを動かす。このとき、外光が枠1i内に入らないことが望ましい。
【0146】
続いて、ユーザは、暗電流測定指示を入力部1aに入力する。入力部1aが暗電流測定指示を受け付けると、ステップ801が実行される。
【0147】
ステップ801では、以下のような動作が実行される。
【0148】
入力部1aは、その受け付けられた暗電流測定指示を、スペクトル検出部1d1aに提供する。
【0149】
スペクトル検出部1d1aは、入力部1aから暗電流測定指示を受け付けると、発光部1b1が発光していないときの、CCD1b3の各受光部λの出力S0(λ)を測定する。
【0150】
スペクトル検出部1d1aは、その測定されたS0(λ)を、メモリ1d1bのS0に格納する。
【0151】
以上で、ステップ801が終了する。
【0152】
続いて、ユーザは、発光指示を入力部1aに入力する。入力部1aが発光指示を受け付けると、ステップ802が実行される。
【0153】
ステップ802では、以下のような動作が実行される。
【0154】
入力部1aは、その受け付けられた発光指示を、発光部1b1およびスペクトル検出部1d1aに提供する。
【0155】
発光部1b1は、発光指示を受け付けると、ガス検知装置4の媒体43に光を照射する。
【0156】
媒体43は、発光部1b1から照射された光を反射する。この反射光は、試薬41が流入する前の媒体43の色(反射強度)を示す。この反射光は、フィルタ1b2を介してCD1b3の各受光部λにて受光される。よって、CCD1b3の出力は、その反射光のスペクトルを示す。
【0157】
スペクトル検出部1d1aは、暗電流測定指示を受け付けた後に入力部1aから発光指示を受け付けると、CCD1b3の各受光部λの出力、つまり、試薬41が流入する前の媒体43の色のスペクトルを示す出力S1(λ)を測定する。スペクトル検出部1d1aは、その測定されたS1(λ)を、メモリ1d1bのS1に格納する。
【0158】
以上で、ステップ802が終了する。
【0159】
続いて、ユーザは、ガス検知装置4のアンプル42を割る。
【0160】
アンプル42が割られると、アンプル42内の試薬41が媒体43に流入する。試薬41は、媒体43に流入すると、媒体43と接触している特定対象のガスと化学反応する。なお、試薬41は、特定対象のガスと化学反応しない可能性もある。
【0161】
続いて、ユーザは、再度、発光指示を入力部1aに入力する。入力部1aが、再度、発光指示を受け付けると、ステップ803が実行される。
【0162】
ステップ803では、以下のような動作が実行される。
【0163】
入力部1aは、その受け付けられた発光指示を、発光部1b1およびスペクトル検出部1d1aに提供する。
【0164】
発光部1b1は、発光指示を受け付けると、媒体43に光を照射する。
【0165】
媒体43は、発光部1b1から照射された光を反射する。この反射光は、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色(反射強度)を示す。具体的には、この反射光は、特定対象のガスと化学反応した試薬41を含む媒体43の色(反射強度)を示す。
【0166】
この反射光は、フィルタ1b2を介してCCD1b3の各受光部λにて受光される。よって、CCD1b3の出力は、その反射光のスペクトルを示す。
【0167】
スペクトル検出部1d1aは、入力部1aから、再度、発光指示を受け付けると、CCD1b3の各受光部λの出力、つまり、特定対象のガスと化学反応した試薬41が流入した後の媒体43の色のスペクトルを示す出力SX(λ)を測定する。スペクトル検出部1d1aは、その測定されたSX(λ)を、メモリ1d1bのSxに格納する。
【0168】
以上で、ステップ803が終了する。
【0169】
スペクトル検出部1d1aは、SX(λ)をメモリ1d1bに格納すると、ステップ804を実行する。
【0170】
ステップ804では、スペクトル検出部1d1aは、相対強度(S(λ))を次式に基づいて計算する。S(λ)=(S(λ)−S0(λ))/(S1(λ)−S0(λ))
スペクトル検出部1d1aは、その計算されたS(λ)を、メモリ1d1bのSに格納する。スペクトル検出部1d1aは、S(λ)をメモリ1d1bに格納すると、ステップ805を実行する。
【0171】
ステップ805では、スペクトル検出部1d1aは、入力部1aから提供されたビニング指示に基づいて、ビニング相対強度(スペクトルデータ)Sb(Λ)を算出する。
【0172】
なお、ビニング指示が「4」を示しているので、スペクトル検出部1d1aは、S(λ)を4つずつまとめてSb(Λ)を算出する。
【0173】
スペクトル検出部1d1aは、その計算されたSb(Λ)を、メモリ1d1bのSb(Λ)に格納する。その後、スペクトル検出部1d1aは、Sb(Λ)をガス特定部1d2に提供する。
【0174】
ガス特定部1d2は、Sb(Λ)を受け付けると、SAMを用いて、ステップ806、807を実行する。
【0175】
ステップ806、807では、ガス特定部1d2は、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形Sb(Λ)に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報を、スペクトルデータベース1cに格納されているスペクトル情報1c3から特定する。
【0176】
具体的には、ガス特定部1d2は、以下のような処理を行う。
【0177】
ガス特定部1d2は、まず、ステップ806を実行する。
【0178】
ステップ806では、ガス特定部1d2は、スペクトル検出部1d1aにて検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルSb(Λ)を、各Λを座標とする多次元空間に仮想的に配置する。
【0179】
また、ガス特定部1d2は、スペクトルデータベース1cに格納されている各スペクトル情報を、入力部1aから提供されたビニング指示に基づいて処理して、各スペクトル情報のバンド数を、スペクトルSb(Λ)のバンド数にそろえる。
【0180】
ビニング指示が「4」を示しているので、ガス特定部1d2は、ガス識別情報1c2にて識別されるガスのスペクトル情報を4つずつまとめて、スペクトルデータベース1cに格納されている各スペクトル情報のバンド数を、スペクトルSb(Λ)のバンド数にそろえる。
【0181】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)のバンド数と同じバンド数の各スペクトル情報を、スペクトルSb(Λ)と同様に、各Λを座標とする多次元空間に仮想的に配置する。
【0182】
ガス特定部1d2は、各スペクトル情報を、各Λを座標とする多次元空間に仮想的に配置すると、ステップ807を実行する。
【0183】
ステップ807では、まず、ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と各スペクトル情報との内積を取り、その内積の値に基づいて、スペクトルSb(Λ)との角度が最も小さいスペクトル情報を選定する。
【0184】
続いて、ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と、その選定されたスペクトル情報との角度が、所定の角度以下になっているか否か判断する。
【0185】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)と、その選定されたスペクトル情報との角度が、所定の角度以下になっていると、その選定されたスペクトル情報を、スペクトルSb(Λ)を示すスペクトル情報として特定する。
【0186】
図9は、SAMを用いたスペクトル情報の特定方法の一例を示す説明図である。
【0187】
図9(a)、(b)において、DB1は、ガス識別情報aと関連づけられたスペクトル情報のスペクトル波形を示し、DB2は、ガス識別情報bと関連づけられたスペクトル情報のスペクトル波形を示し、DB3は、ガス識別情報cと関連づけられたスペクトル情報のスペクトル波形を示す。
【0188】
また、図9(a)において、Sb1は、測定されたスペクトルSb1を示し、波形および強度がDB2と似ている。また、図9(b)において、Sb2は、測定されたスペクトルSb2を示し、波形はDB2に同じだが、強度はDB2と異なる。
【0189】
スペクトル波形の一致度は、化学反応の一致度を示す。
【0190】
しかしながら、強度の一致度は、必ずしも、化学反応の一致度を示さない。その理由は、強度は、化学反応時の周囲の温度および湿度、ならびに、ガスの濃度に応じて変化するからである。
【0191】
このため、スペクトル波形が一致するか否かを判定することにより、測定されたスペクトルに対応するスペクトル情報を特定することが望ましい。
【0192】
本実施例では、SAMを用いてスペクトル情報を特定方法するため、スペクトル波形の一致度に基づいて、測定されたスペクトルに対応するスペクトル情報を特定する。
【0193】
図9(c)は、DB1、DB2、DB3、Sb1およびSb2を同一の多次元空間に配置した例を示す説明図である。
【0194】
図9(c)に示されるように、スペクトル波形が似ているSb1とDB2とは、両者の角度が小さくなり、また、スペクトル波形が似ているSb2とDB2でも、両者の角度は小さくなる。
【0195】
このため、本実施例では、図9(a)に示されるようにスペクトル波形および強度が似ている場合だけでなく、図9(b)に示されるようにスペクトル波形が似ているが強度が異なる場合でも、測定されたスペクトルに対応するスペクトル情報を特定することが可能になる。
【0196】
ガス特定部1d2は、スペクトルSb(Λ)を示すスペクトル情報を特定すると、ステップ808を実行する。
【0197】
ステップ808では、ガス特定部1d2は、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報1c2をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0198】
ガス特定部1d2は、その読み取られたガス識別情報1c2とともに、GPS1eから出力された位置情報と、メモリ1fから読み取られたIDとを、表示部1gおよび通信部1hに出力する。
【0199】
表示部1gは、ガス特定部1d2からガス識別情報1c2、位置情報およびIDを受け付けると、ステップ809を実行する。
【0200】
ステップ809では、表示部1gは、その受け付けられたガス識別情報1c2、位置情報およびIDを表示する。
【0201】
通信部1hは、ガス特定部1d2からガス識別情報1c2、位置情報およびIDを受け付けると、ステップ810を実行する。
【0202】
ステップ810では、通信部1hは、その受け付けられたガス識別情報1c2、位置情報およびIDを、情報センター2に送信する。
【0203】
情報センター2の通信部2aが、ガス識別情報、位置情報およびIDを受け付けると、ステップ811が実行される。
【0204】
ステップ811では、センター制御部2dは、その受け付けられたガス識別情報と関連づけられている対処情報を、対処情報格納部2bから読み出す。センター制御部2dは、その読み出された対処情報と、その受け付けられたガス識別情報、位置情報およびIDを表示部2eに表示する。このため、情報センター2では、避難および毒ガス中和等の被害の予防処理を指示することが可能になる。
【0205】
センター制御部2dは、ガス識別情報等を表示部2eに表示すると、ステップ812を実行する。
【0206】
ステップ812では、センター制御部2dは、その受信された位置情報にて示される位置を含む管轄地域を、対処センター格納部2cに格納された管轄地域から選定し、その選定された管轄地域と関連づけられた対処情報センター情報を特定する。
【0207】
センター制御部2dは、その特定された対処センターにその受信されたガス識別情報、位置情報およびID、ならびに、その読み出された対処情報を送信する送信処理を、通信部2aに実行させる。
【0208】
対処センター3の通信部3aが、情報センター2の通信部2aから送信されたガス識別情報、位置情報、IDおよび対処情報を受信すると、ステップ813が実行される。
【0209】
ステップ813では、制御部3bは、通信部3aにて受信されたガス識別情報、位置情報および対処情報を表示部3cに提供する。表示部3cは、制御部3bから提供されたガス識別情報、位置情報および対処情報を表示する。
【0210】
本実施例によれば、制御部1dは、特定対象のガスと化学反応した試薬41の色に最も似た色を示す色情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色情報から特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0211】
このため、特定対象のガスに関するガス識別情報および色情報が、スペクトルデータベース1cに格納されていれば、ユーザの判断を必要とせずに、高い精度で特定対象のガスを特定することが可能になる。したがって、ガスとの化学反応によって変化した試薬41の色に基づいて、高い精度で特定対象のガスを特定することが可能になる。
【0212】
また、本実施例では、試薬41は、特定対象のガスと接触している媒体43に流入されると、特定対象のガスと化学反応する。
【0213】
また、スペクトルデータベース1cは、色情報として、試薬41が流入する前の媒体43の色から試薬41が流入して試薬41が化学反応した後の媒体43の色への変化を示す色変化情報を格納する。
【0214】
また、検出部1bは、試薬41が流入する前の媒体43の色と、試薬41が流入しその流入された試薬が化学反応した後の媒体43の色とを検出する。
【0215】
また、色変化検出部1d1は、媒体43の色の変化を、検出部1bの検出結果に基づいて検出する。
【0216】
また、ガス特定部1d2は、その検出された媒体の色の変化に最も似た色の変化を示す色変化情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色変化情報から特定し、その特定された色変化情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0217】
この場合、特定対象のガスが、媒体の色の変化に基づいて特定される。媒体の色変化は、化学反応したガスの種類を示す。このため、特定対象のガスを高精度で特定することが可能になる。
【0218】
また、本実施例では、スペクトルデータベース1cは、色変化情報として、媒体43の色の変化をスペクトルで示すスペクトル情報を格納する。
【0219】
また、検出部1bは、試薬41が流入する前の媒体43の色のスペクトルと、試薬41が流入しその流入された試薬41が化学反応した後の媒体43の色のスペクトルとを検出する。
【0220】
また、色変化検出部1d1は、媒体43の色の変化を示すスペクトルを、検出部1bの検出結果に基づいて検出する。
【0221】
また、ガス特定部1d2は、その検出された媒体の色の変化を示すスペクトルに、最も似たスペクトルを示すスペクトル情報を、スペクトルデータベース1cに格納されているスペクトル情報から特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0222】
この場合、媒体43の色の変化をスペクトルにて特定する。このため、特定対象のガスを高精度で特定することが可能になる。
【0223】
また、本実施例では、ガス特定部1d2は、その検出された媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、媒体43の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報を、スペクトルデータベース1cに格納されているスペクトル情報から特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0224】
この場合、特定対象のガスを、より高精度で特定することが可能になる。
【0225】
また、本実施例では、スペクトルデータベース1cは、検出部1bがガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬41の色を検出した際の検出部1bの検出結果に応じた色情報を格納する。
【0226】
この場合、データベースに格納される色情報は、検出部の特性に応じた情報となり、データベースに格納される色情報と検出部の検出結果との整合性を容易に取ることが可能となる。
【0227】
また、本実施例では、通信部1hは、制御部1dにて読み取られたガス識別情報を情報センター2に送信する。
【0228】
この場合、特定されたガスの情報を情報センター2に自動的に知らせることが可能となる。
【0229】
また、本実施例では、通信部1hは、ガス識別情報とともに現在位置を示す位置情報を情報センター2に送信する。
【0230】
この場合、特定されたガスが存在している場所を情報センター2に自動的に知らせることが可能となる。
【0231】
また、本実施例では、情報センター2は、ガス特定装置1から送信されたガス識別情報および位置情報を表示する。このため、情報センター2では、所定のガスの発生、または、所定のガスの発生とその発生場所とを、情報センター2の使用者に知らせることが可能になる。
【0232】
また、本実施例では、情報センター2は、受信されたガス識別情報と関連づけられている対処情報を対処情報格納部2bから読み出し、その読み出された対処情報を表示する。
【0233】
この場合、発生したガスの対処内容を、情報センターの使用者に知らせることが可能になる。
【0234】
また、本実施例では、情報センター2は、受信した位置情報にて示される位置が管轄地域に含まれる対処センターを、対処センター格納部2cを参照して特定し、その特定された対処センターに対して位置情報および対処情報を送信する。
【0235】
この場合、ガスが発生した場所を管轄する対処センター3に、ガスの発生場所と、発生したガスに対する対処内容を知らせることが可能になる。
【0236】
なお、上記実施例においては、「暗電流測定指示」、「発光指示」、「ビニング指示」等をユーザが入力しているが、制御部1dが、これら一連の指示を自動的に順番に生成してもよい。例えば、制御部1dは、これら一連の指示を自動的に順番に生成するタイムシーケンスを示すプログラムを実行して、これら一連の指示を自動的に順番に生成する。
【0237】
次に、本発明の第2実施例を説明する。
【0238】
図10は、本発明の第2実施例のガス特定装置10を示したブロック図である。なお、図10において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0239】
図10に示したガス特定装置10は、図1に示したガス特定装置1と異なり、グラスファイバー群10aおよび10bと、楕円ミラー10cとを含む。
【0240】
グラスファイバー群10aは、投光用光ファイバの一例であり、投光部1b1から照射された光を枠1iに導く。
【0241】
グラスファイバー群10bは、反射光用光ファイバの一例であり、ガス検知装置4の媒体43にて反射された光を楕円ミラー10cの一方の焦点位置10c1に導く。
【0242】
楕円ミラー10cは、導光部の一例であり、他方の焦点位置10c2にフィルタ1b2が設けられている。
【0243】
一方の焦点位置10c1に反射光が導かれ、他方の焦点位置10c2にフィルタ1b2が設けられているので、楕円ミラー10cは、グラスファイバー群10bから受け付けた反射光を、フィルタ1b2に導く。
【0244】
図11は、グラスファイバー群10bとCCD1b3との位置関係を説明するための模式図である。なお、図11において、図10に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0245】
図11において、グラスファイバー群10bを構成するグラスファイバー10b1の並び方向は、CCD1b3の受光部の並び方向と同じである。
【0246】
本実施例によれば、楕円ミラー10cは、発光部1b1から照射された後に媒体43にて反射された光をフィルタ1b2およびCCD1b3に導く。このため、フィルタ1b2およびCCD1b3は、その反射光を確実に受光することが可能になる。
【0247】
また、本実施例では、グラスファイバー群10aは発光部1b1の照射光を媒体43に導き、グラスファイバー群10bは媒体43の反射光を楕円ミラー10cに導く。このため、試薬41を含むガス検知装置4と検出部1bとをグラスファイバー群10aおよび10bを介して接続することが可能になる。したがって、ガス検知装置4と検出部1bとを離すことが可能となる。よって、例えば、ユーザは、検出部1b等を含む構成を自己の腰に装着し、枠1i内にガス検知装置が含まれるように枠1iを操作可能になる。
【0248】
また、楕円ミラー10cが、グラスファイバー群10bにて導かれた反射光をフィルタ1b2およびCCD1b3に導く。このため、グラスファイバー群10bにて導かれた反射光の進行方向が、グラスファイバー群10bの曲がりによって、一定しなくても、フィルタ1b2およびCCD1b3は、その反射光を確実に受光することが可能になる。
【0249】
次に、本発明の第3実施例を説明する。
【0250】
図12は、本発明の第3実施例のガス特定装置11を示したブロック図である。なお、図12において、図10に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0251】
図12に示したガス特定装置11は、図10に示したガス特定装置10と異なり、グラスファイバー群10aおよび10bを含まず、スリット11aを含む。
【0252】
スリット11aは、楕円ミラー10cの一方の焦点位置10c1に設けられ、媒体43にて反射された光を通す。
【0253】
図13は、スリット11aとCCD1b3との位置関係を説明するための模式図である。なお、図13において、図12に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0254】
図13において、スリット11aの長手方向は、CCD1b3の受光部の並び方向と同じである。
【0255】
本実施例によれば、スリット11aおよび楕円ミラー10cが含まれることによって、フィルタ1b2およびCCD1b3は、発光部1b1から照射された後に媒体43にて反射された光を確実に受光することが可能になる。
【0256】
なお、上記各実施例において、スペクトルデータベース1cおよび制御部1dは、以下のように変形されてもよい。
【0257】
スペクトルデータベース1cは、ガス識別情報と、そのガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬41の色のスペクトルから得られる吸収ラインとを関連づけて格納する。
【0258】
制御部1dは、検出部1bにて検出された色から、特定対象のガスと試薬41との化学反応によって生成された物質の吸収ラインを特定する。制御部1dは、その特定された吸収ラインに最も近い吸収ラインを、スペクトルデータベース1cに格納されている吸収ラインから特定する。制御部1dは、その特定された吸収ラインと関連づけられているガス識別情報を、特定対象のガスを示すガス識別情報として、スペクトルデータベース1cから読み取る。
【0259】
この場合、ガスと試薬との化学反応にて生成された物質の吸収ラインに基づいて、特定対象のガスを特定することが可能になる。
【0260】
なお、図2に示すように、互いに異なる試薬41が流入する媒体43が複数ある場合、本ガス特定装置を複数用いて複数の媒体43の色の変化を同時に検出してもよいし、また、本ガス特定装置を1台用いて複数の媒体43の色の変化を順番に1つずつ検出してもよい。
【0261】
また、ガス特定部1d2は、特定対象のガスを特定できない場合、次のアンプルを割る旨の指示を表示部1gに表示させてもよい。
【0262】
また、以下のように、色情報がスペクトルデータベース1cに格納されてもよい。
【0263】
ユーザは、所定のガスと接触している媒体43に複数種類の試薬を所定の順番で流入させていき、そのときの媒体43の色の変化を検出部1bで順次検出する。スペクトルデータベース1cは、検出部1bで順次検出される検出結果を、所定のガス(所定のガスの識別情報)に対応する色情報として格納する。
【0264】
この場合、制御部1dは、以下のようにして特定対象のガスを特定する。
【0265】
ユーザは、特定対象のガスと接触している媒体43に複数種類の試薬を上記所定の順番で流入させていき、そのときの媒体43の色の変化を検出部1bで順次検出する。
【0266】
検出部1bが媒体43の色の変化を検出するたびに、制御部1dは、その検出結果とスペクトルデータベース1cに格納されている色情報とを比較して、検出部1bにて検出された色に最も似た色を示す色情報を、スペクトルデータベース1cに格納されている色情報から特定する。制御部1dは、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報をスペクトルデータベース1cから読み取る。
【0267】
また、上記各実施例においては、検出部1bは、以下のように変形されてもよい。
【0268】
フィルタ1b2とCCD1b3とを含む受光部が、発光部1b1から照射された後に媒体43にて反射された光を受光するのではなく、発光部1b1から照射された後に媒体43を透過した光を受光する。
【0269】
図14は、検出部1bの変形例、具体的には、フィルタ1b2とCCD1b3とが、発光部1b1から照射された後に媒体43を透過した光を受光する例を示した模式部である。なお、図14において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0270】
図14において、発光部1b1は、媒体43に光を照射する。発光部1b1から照射された光は、媒体43を透過する。媒体43を透過した光は、媒体43の色を示し、フィルタ1b2を介してCCD1b3にて受光される。
【0271】
また、本ガス特定装置を特許文献1に記載の読取装置に組み込んでもよい。
【0272】
以上説明した各実施例において、図示した構成は単なる一例であって、本発明はその構成に限定されるものではない。
【0273】
例えば、情報センター2のセンター制御部2dは、ガス識別情報を送信したガス特定装置1に、そのガス識別情報に対応する対処情報を送信する送信処理を、通信部2aに実行させてもよい。
【0274】
この場合、ガス特定装置1のユーザは、ガス特定装置1にて特定されたガスに対して、適切な対処をとることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0275】
【図1】第1実施例のガス対処支援システムを示したブロック図である。
【図2】ガス検知装置4の一例を示した斜視図である。
【図3】フィルタ1b2の一例を示した説明図である。
【図4】スペクトルデータベース1cの一例を示した説明図である。
【図5】メモリ1d1bの一例を示した説明図である。
【図6】対処情報格納部2bの一例を示した説明図である。
【図7】対処センター格納部2cの一例を示した説明図である。
【図8】ガス対処支援システムの動作を説明するためのシーケンス図である。
【図9】SAMを用いたスペクトル情報の特定方法の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第2実施例のガス特定装置10を示したブロック図である。
【図11】グラスファイバー群10bとCCD1b3との位置関係を説明するための模式図である。
【図12】本発明の第3実施例のガス特定装置11を示したブロック図である。
【図13】スリット11aとCCD1b3との位置関係を説明するための模式図である。
【図14】検出部1bの変形例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0276】
1 ガス特定装置
1a 入力部
1b 検出部
1b1 発光部
1b2 フィルタ
1b2a ガラス基板
1b2b 多層膜
1b3 CCD
1b4 CCD信号処理部
1c スペクトルデータベース
1d 制御部
1d1 色変化検出部
1d1a スペクトル検出部
1d1b メモリ
1d2 ガス特定部
1e GPS
1f メモリ
1g 表示部
1h 通信部
1i 枠
2 情報センター
2a 通信部
2b 対処情報格納部
2c 対処センター格納部
2d センター制御部
2e 表示部
3 対処センター
3a 通信部
3b 制御部
3c 表示部
4 ガス検知装置
41 試薬
42 アンプル
43 媒体
10 ガス特定装置
10a グラスファイバー群
10b グラスファイバー群
10c 楕円ミラー(導光部)
11 ガス特定装置
11a スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を特定対象のガスと化学反応させて該試薬の色を変化させるガス検知装置を用い、前記ガス検知装置で化学反応した試薬の色に基づいて前記特定対象のガスを特定するガス特定装置であって、
予め、ガスを識別するためのガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色に関する色情報と、を関連づけて格納するデータベースと、
前記ガス検知装置から、前記特定対象のガスと化学反応した試薬の色を検出する検出部と、
前記データベースに格納されている色情報から、前記検出部にて検出された色に最も似た色を示す色情報を特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る制御部と、を含むガス特定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス特定装置において、
前記ガス検知装置では、前記試薬が前記特定対象のガスと接触する媒体に流入されると、該試薬が該特定対象のガスと化学反応し、
前記データベースは、前記色情報として、前記試薬が流入する前の前記媒体の色から前記試薬が流入して該試薬が化学反応した後の前記媒体の色への変化を示す色変化情報を格納し、
前記検出部は、前記試薬が流入する前の前記媒体の色と、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色と、を検出し、
前記制御部は、
前記媒体の色の変化を、前記検出部の検出結果に基づいて検出する色変化検出部と、
前記データベースに格納されている色変化情報から、前記色変化検出部にて検出された媒体の色の変化に最も似た色の変化を示す色変化情報を特定し、その特定された色変化情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取るガス特定部と、を含む、ガス特定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のガス特定装置において、
前記データベースは、前記色変化情報として、前記媒体の色の変化をスペクトルで示すスペクトル情報を格納し、
前記検出部は、前記試薬が流入する前の前記媒体の色のスペクトルと、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色のスペクトルと、を検出し、
前記色変化検出部は、前記媒体の色の変化を示すスペクトルを、前記検出部の検出結果に基づいて検出し、
前記ガス特定部は、前記データベースに格納されているスペクトル情報から、前記色変化検出部にて検出された媒体の色の変化を示すスペクトルに最も似たスペクトルを示すスペクトル情報を特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定装置。
【請求項4】
請求項3に記載のガス特定装置において、
前記ガス特定部は、前記データベースに格納されているスペクトル情報から、前記色変化検出部にて検出された媒体の色の変化を示すスペクトルの波形に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、前記媒体の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報を特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定装置。
【請求項5】
請求項1に記載のガス特定装置において、
前記データベースは、前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色から得られる吸収ラインと、を関連づけて格納し、
前記制御部は、前記検出部にて検出された色から吸収ラインを特定し、その特定された吸収ラインに最も近い吸収ラインを、前記データベースに格納されている吸収ラインから特定し、その特定された吸収ラインと関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のガス特定装置において、
前記データベースは、前記検出部が前記ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した前記試薬の色を検出した際の該検出部の検出結果に応じた色情報を格納する、ガス特定装置。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載のガス特定装置において、
前記検出部は、
前記媒体に光を照射する発光部と、
受光部と、
前記発光部から照射された後に前記媒体にて反射された光を前記受光部に導く導光部と、を含む、ガス特定装置。
【請求項8】
請求項7に記載のガス特定装置において、
前記導光部は、楕円ミラーであり、
前記検出部は、
前記発光部から照射された光を前記媒体に導く投光用光ファイバと、
前記媒体にて反射された光を前記楕円ミラーの一方の焦点位置に導く反射光用光ファイバと、をさらに含み、
前記受光部は、前記楕円ミラーの他方の焦点位置に設けられている、ガス特定装置。
【請求項9】
請求項7に記載のガス特定装置において、
前記導光部は、
楕円ミラーと、
前記楕円ミラーの一方の焦点位置に設けられ、前記媒体にて反射された光を通すスリットと、を含み、
前記受光部は、前記楕円ミラーの他方の焦点位置に設けられている、ガス特定装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のガス特定装置において、
前記制御部にて読み取られたガス識別情報を、外部の情報センターに送信する送信部を、さらに含む、ガス特定装置。
【請求項11】
請求項10に記載のガス特定装置において、
現在位置を示す位置情報を出力する位置出力部を、さらに含み、
前記送信部は、前記ガス識別情報とともに、前記位置出力部から出力された位置情報を、外部の情報センターに送信する、ガス特定装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載のガス特定装置と、前記ガス特定装置と通信する情報センターと、を含むガス対処支援システムであって、
前記情報センターは、
前記送信部から送信された情報を受信する通信部と、
前記通信部にて受信された情報を表示する表示部と、を含む、ガス対処支援システム。
【請求項13】
請求項12に記載のガス対処支援システムであって、
前記情報センターは、
前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスへの対処内容を示す対処情報と、を関連づけて格納する対処情報格納部と、
前記通信部にて受信されたガス識別情報と関連づけられている対処情報を前記対処情報格納部から読み出し、その読み出された対処情報を前記表示部に表示する、センター制御部と、をさらに含む、ガス対処支援システム。
【請求項14】
請求項13に記載のガス対処支援システムであって、
前記情報センターは、
対処センターを示す対処センター情報と、該対処センターの管轄地域と、を関連づけて格納する対処センター格納部をさらに含み、
前記センター制御部は、前記通信部が受信した位置情報にて示される位置が管轄地域に含まれる対処センターを、前記対処センター格納部を参照して特定し、前記通信部に、その特定された対処センターに対して前記位置情報および前記読み出された対処情報を送信させる、ガス対処支援システム。
【請求項15】
試薬を特定対象のガスと化学反応させて該試薬の色を変化させるガス検知装置を用い、予めガスを識別するためのガス識別情報と該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色に関する色情報とを関連づけて格納するデータベースを含むガス特定装置が行うガス特定方法であって、
前記ガス検知装置から、前記特定対象のガスと化学反応した試薬の色を検出する検出ステップと、
前記データベースに格納されている色情報から、前記検出された色に最も似た色を示す色情報を特定し、その特定された色情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る制御ステップと、を含むガス特定方法。
【請求項16】
請求項15に記載のガス特定方法において、
前記ガス検知装置では、前記試薬が前記特定対象のガスと接触する媒体に流入されると、該試薬が該特定対象のガスと化学反応し、
前記データベースは、前記色情報として、前記試薬が流入する前の前記媒体の色から前記試薬が流入して該試薬が化学反応した後の前記媒体の色への変化を示す色変化情報を格納し、
前記検出ステップでは、前記試薬が流入する前の前記媒体の色と、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色と、を検出し、
前記制御ステップは、
前記媒体の色の変化を、前記検出部の検出結果に基づいて検出する色変化検出ステップと、
前記データベースに格納されている色変化情報から、前記検出された媒体の色の変化に最も似た色の変化を示す色変化情報を特定し、その特定された色変化情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取るガス特定ステップと、を含む、ガス特定方法。
【請求項17】
請求項16に記載のガス特定方法において、
前記データベースは、前記色変化情報として、前記媒体の色の変化をスペクトルで示すスペクトル情報を格納し、
前記検出ステップでは、前記試薬が流入する前の前記媒体の色のスペクトルと、前記試薬が流入しその流入された試薬が化学反応した後の前記媒体の色のスペクトルと、を検出し、
前記色変化検出ステップでは、前記媒体の色の変化を示すスペクトルを、前記検出ステップでの検出結果に基づいて検出し、
前記ガス特定ステップでは、前記データベースに格納されているスペクトル情報から、前記検出された媒体の色の変化を示すスペクトルに最も似たスペクトルを示すスペクトル情報を特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定方法。
【請求項18】
請求項17に記載のガス特定方法において、
前記ガス特定ステップでは、前記データベースに格納されているスペクトル情報から、前記検出された媒体の色の変化を示すスペクトルの波形に最も似たスペクトル波形を示し、かつ、前記媒体の色の変化を示すスペクトルの波形との一致度が所定値以上となるスペクトル波形を示すスペクトル情報を特定し、その特定されたスペクトル情報と関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定方法。
【請求項19】
請求項15に記載のガス特定方法において、
前記データベースは、前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスと化学反応した試薬の色から得られる吸収ラインと、を関連づけて格納し、
前記制御ステップでは、前検出された色から吸収ラインを特定し、その特定された吸収ラインに最も近い吸収ラインを、前記データベースに格納されている吸収ラインから特定し、その特定された吸収ラインと関連づけられているガス識別情報を前記データベースから読み取る、ガス特定方法。
【請求項20】
請求項15ないし19のいずれか1項に記載のガス特定方法において、
前記制御部にて読み取られたガス識別情報を、外部の情報センターに送信する送信ステップを、さらに含む、ガス特定方法。
【請求項21】
請求項20に記載のガス特定方法において、
現在位置を示す位置情報を出力する位置出力ステップを、さらに含み、
前記送信ステップでは、前記ガス識別情報とともに前記位置情報を、外部の情報センターに送信する、ガス特定方法。
【請求項22】
請求項10または11に記載のガス特定装置と、前記ガス特定装置と通信する情報センターと、を含むガス対処支援システムが行うガス対処支援方法であって、
前記情報センターが前記ガス特定装置から送信された情報を受信する受信ステップと、
前記情報センターが前記受信された情報を表示する表示ステップと、を含むガス対処支援方法。
【請求項23】
請求項22に記載のガス対処支援方法であって、
前記情報センターは、前記ガス識別情報と、該ガス識別情報にて識別されるガスへの対処内容を示す対処情報と、を関連づけて格納する対処情報格納部を含み、
前記情報センターが前記受信されたガス識別情報と関連づけられている対処情報を前記対処情報格納部から読み出し、その読み出された対処情報を表示する対処情報表示ステップと、をさらに含む、ガス対処支援方法。
【請求項24】
請求項23に記載のガス対処支援方法であって、
前記情報センターは、対処センターを示す対処センター情報と、該対処センターの管轄地域と、を関連づけて格納する対処センター格納部をさらに含み、
前記情報センターが、前記受信した位置情報にて示される位置が管轄地域に含まれる対処センターを、前記対処センター格納部を参照して特定し、その特定された対処センターに対して前記位置情報および前記読み出された対処情報を送信する送信ステップをさらに含む、ガス対処支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−47305(P2006−47305A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2005−200346(P2005−200346)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】