説明

ガス状のフッ化化合物充填脂微小球

【課題】コントラストの向上した超音波造影剤としてガス充填脂質微小球の提供
【解決手段】特定のゲル状態相にある脂質混合物から構成され、ガスが特定のパーフルオロカーボンから選ばれるガス充填脂質微小球。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体前駆体充填リポソーム(gaseous precursor−filled liposomes)を製造する新規な方法および装置に関する。この方法で製造したリポソームは、例えば超音波画像形成用途および治療薬送達系で用いるに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
動物および人における病気の検出および診断で多様な画像形成技術が用いられてきた。診断用画像形成で用いられた最初の技術の1つはX線で代表される。この技術で得られる画像は、その画像化した物体の電子密度を反映している。多様な構造間のコントラストを高めるようにX線を減衰または遮蔽する目的で、バリウムまたはヨウ素などの如きコントラスト剤が長年に渡って用いられてきた。しかしながら、X線で用いられる放射線はイオン化しそしてそのイオン化した放射線が示す種々の有害な影響が蓄積性を示すことから、X線はいくらか危険であることが知られている。
【0003】
別の重要な画像形成技術は磁気共鳴画像形成(MRI)である。しかしながら、この技術は、高価であること、そしてこれを軽便な検査として行うことができないことなどの如き種々の欠点を有する。加うるに、多くの医療センターでMRIを利用することができるわけではない。
【0004】
核医学で用いられる放射線核種がさらなる画像形成技術を与えている。この技術を用いる場合、テクネチウムで標識した化合物などの如き放射線核種を患者に注入して画像をガンマカメラで得る。しかしながら、核医学技術は、空間解像度が劣っているといった欠点を有し、そして動物または患者を有害な放射線の影響にさらすことになる。更に、放射線核種の取り扱いおよび処分は厄介である。
【0005】
超音波は、患者をイオン化放射線の有害が影響にさらさないことから核医学およびX線とは異なる別の診断用画像形成技術である。更に、磁気共鳴画像形成とは異なり、超音波は比較的安価であると共に軽便な検査として実行可能である。この超音波技術を用いる場合、変換器で音を患者または動物の中に透過させる。この音波は、体の中を伝播する時、組織および流体由来の界面に遭遇する。体内の組織および流体が示す音響特性に応じて、その超音波は部分的に或は全体的に反射するか或は吸収される。界面が音波を反射する場合、変換器内のレシーバーがこの音波を検出および処理して画像を作り出す。体内の組織および流体が示す音響特性がコントラストを決定し、このコントラストが、その結果として得られる画像の中に現れる。
【0006】
近年、超音波技術で進展があった。しかしながら、このような種々の技術的改良にも拘らず、超音波は数多くの点、特に肝臓および脾臓、腎臓、心臓、血流測定を含む血管系における病気を画像化して検出することに関してはまだ不完全な道具である。このような領域を検出および測定する能力は、組織または流体とそれを取り巻く組織または流体との間の音響特性の差に依存する。その結果、超音波画像形成および病気の検出を改良する目的で、組織または流体とそれを取り巻く組織または流体との間の音響の差を高めるコントラスト剤が探求されてきた。
【0007】
超音波における画像形成の基礎となる原理により、気体状コントラスト剤の研究に研究者を向けることになった。大きく異なる密度または音響インピーダンスを有する異なる物質の界面、特に固体、液体および気体間の界面で音響特性または音響インピーダンスの変
化が最も顕著に現れる。超音波がそのような界面に遭遇すると、音響インピーダンスが変化する結果として、音波がより強く反射してより強いシグナルが超音波画像に現れる。音の反射効率に影響を与える追加的要因は、その反射する界面の弾性である。この界面の弾性が高ければ高いほど、音の反射効率が高くなる。気泡の如き物質が高い弾性を示す界面を与える。このように、上に示した原理の結果として、研究者達は気泡または気体含有体を基とする超音波コントラスト剤の開発およびそれらの有効な製造方法を開発することに焦点を当てていた。
【0008】
Ryan他は、特許文献1の中で、化学的に改質したコレステロール被膜を有するリン脂質リポソームを開示した。そのコレステロール被膜は単層または2層であってもよい。トレーサー、治療薬または細胞毒剤が入っている水系媒体をそのリポソームの中に閉じ込めている。撹拌および超音波振動で直径が0.001ミクロンから10ミクロンのリポソームが製造されている。
【0009】
D’Arrigoは、特許文献2および特許文献3の中で、液中気体エマルジョンおよびそれらを界面活性剤混合物から製造する方法を教示している。特許文献4には、液状媒体中に界面活性剤が入っている溶液を空気中で振とうすることによってリポソームを製造することが開示されている。特許文献5は、脂質で被覆された微細気泡を製造する大規模方法に向けたものであり、その方法は、液状媒体中に界面活性剤が入っている溶液を空気または他の気体混合物中で振とうし、そしてその結果生じる溶液を濾過滅菌することを含む。
【0010】
特許文献6には、ゲル化し得る(gellable)膜の中に窒素の如き不活性ガスまたは二酸化炭素をカプセル封じした微細気泡の製造が開示されている。このリポソームは低温貯蔵可能であり、人で使用する前か或は使用中にそれを温める。特許文献7には、微細気泡前駆体およびそれらの製造方法が記述されている。固体材料を溶解させることによって微細気泡を液体の中で生じさせている。気体で満たされた空隙を生じさせているが、そこでは、その気体を、1.)固体前駆体凝集物の微細粒子の間の空隙内に存在している気体から生じさせ、2.)その前駆体の粒子表面に吸収させ、3.)その前駆体粒子の内部構造を構成する部分にし、4.)その前駆体がその液体と化学的に反応する時に生じさせ、そして5.)その液体の中に溶解させ、そしてその前駆体がその中に溶解する時に放出させることが行われている。
【0011】
加うるに、Feinsteinは、特許文献8および特許文献9の中で、超音波用途でアルブミン被覆微細気泡を用いることを教示している。
【0012】
Widderは、特許文献10および特許文献11の中で、超音波画像形成方法および微細気泡タイプの超音波画像形成剤を開示している。
【0013】
Quayは、特許文献12の中で、公知物理定数を判断基準にして特別に選択した気体が入っている微細気泡を形作る作用因子を用いることを記述しており、これには、1)気泡の大きさ、2)気体の密度、3)取り巻く媒体に対して気体が示す溶解度、および4)気体が媒体の中に拡散する率が含まれる。
【0014】
Kaufman他は、特許文献13の中で、高度にフッ素置換された有機化合物と実質的に表面活性も水溶性も示さない油と界面活性剤が入っているエマルジョンを開示している。Kaufman他はまたそのエマルジョンを医学用途で用いる方法を教示している。
【0015】
重要な研究努力が行われた別の領域は標的薬物送達(targeted drug delivery)の領域である。標的送達手段は、毒性が問題になる場合特に重要である
。特異的治療薬送達方法は、毒性のある副作用を最小限にし、必要とされる投薬量を低くし、そして患者にかかる費用を低くする働きをする可能性がある。
【0016】
例えば生きている細胞に遺伝材料を導入することに関して、従来技術の方法および材料は制限されており、有効でない。今日までに、生きている細胞に遺伝材料を送達するいろいろな機構がいくつか開発された。そのような機構には、燐酸カルシウム沈澱およびエレクトロポレーションなどの如き技術、並びにカチオンポリマー類および水充填リポソームなどの如き担体が含まれる。そのような方法は全てインビボであまり有効でなく、その使用は細胞培養移入のみに制限されていた。そのような方法はいずれも、遺伝材料を標的細胞に局所的に放出、送達および組み込むことを可能にするものでない。
【0017】
人および動物の幅広く多様な病気を治療する目的で、遺伝材料の如き治療薬を送達するにより良い手段が求められている。遺伝病を特徴づけそして蛋白質転写を理解することに関して多大な研究が成されて来たが、人および動物の病気治療で遺伝材料を細胞に送達することに関してはほとんど進展がなかった。
【0018】
主要な困難さは、遺伝材料を細胞外空間から細胞内空間に送達すること、或は更に、選択した細胞膜の表面に遺伝材料を有効に局在化させることの困難さであった。多様な技術がインビボで試されたが、あまり成功しなかった。例えば、遺伝材料を細胞に運ぶベクターとしてアデノウイルスおよびレトロウイルスなどの如きウイルスが用いられた。全ウイルスが用いられたが、ウイルス被膜内に入り得る遺伝材料の量は制限され、そして生きているウイルスによって引き起こされ得る危険な相互作用に関する懸念が存在している。ウイルス被膜の必須成分を単離し、それを用いて遺伝材料を選択した細胞の中に運ばせることができる。しかしながら、インビボにおいて、その送達用ビヒクル(vehicle)は特定の細胞を認識する必要があるばかりでなく、その細胞に送達する必要がある。ウイルスベクターに関して広範な研究が行われたにも拘らず、インビボにおける遺伝材料の送達で成功裏に標的に向かうウイルス仲介ベクターを開発するのは困難であった。
【0019】
細胞培養で遺伝材料を細胞に送達する目的で通常の液体含有リポソームが用いられたが、主としてインビボにおける遺伝材料の細胞送達では有効でなかった。例えば、カチオンリポソーム移入技術はインビボにおいて有効に働かなかった。遺伝材料の如き治療薬の細胞送達を改良するにより有効な手段が求められている。
【0020】
本発明は、上記を取り扱うことに加えて、超音波画像形成用コントラスト剤および治療薬を標的に有効に送達するビヒクルの分野における他の重要な要求に向けたものである。
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,544,545号明細書
【特許文献2】米国特許第4,684,479号明細書
【特許文献3】米国特許第5,215,680号明細書
【特許文献4】米国特許第4,684,479号明細書
【特許文献5】米国特許第5,215,680号明細書
【特許文献6】国際公開第80/02365号パンフレット
【特許文献7】国際公開第80/01642号パンフレット
【特許文献8】米国特許第4,718,433号明細書
【特許文献9】米国特許第4,774,958号明細書
【特許文献10】米国特許第4,572,203号明細書
【特許文献11】米国特許第4,844,882号明細書
【特許文献12】国際公開第93/05819号パンフレット
【特許文献13】米国特許第5,171,755号明細書
【発明の開示】
【0022】
本発明は、超音波画像形成用コントラスト剤または薬送達剤として用いるのに適切な温度で活性化される気体前駆体充填リポソームを製造する方法および装置を提供する。本発明の方法は、例えば温度で活性化される気体前駆体充填リポソームの製造を簡潔化すること、費用を節約することができることなどの利点を与える。
【0023】
この温度で活性化される気体前駆体充填リポソームの好適な製造方法は、温度で活性化される気体前駆体の存在下で脂質が入っている水溶液を該脂質がゲル状態から液晶状態に相転移する温度よりも低い温度で振とうすることを含む。
【0024】
本発明の方法に従って製造する温度で活性化される気体前駆体充填リポソームは、予想外に、驚くべきことに、非常に有利な特徴を数多く有する。例えば、気体前駆体で満たされているリポソームは生物適合性を示し、そしてこれを用い容易に、リポソームが崩壊した後に細胞膜を横切る親油性化合物を製造することができることから、このリポソームは有利である。本発明のリポソームはまた、超音波で強いエコー源性を示し、圧力に対して高い安定性を示し、そして/または乾燥させて貯蔵するか或は液状媒体内に懸濁させた時一般に長い貯蔵寿命を有する。このリポソームが示すエコー源性は、本発明に従って製造するリポソームを診断および治療で用いるにとって重要である。この気体前駆体充填リポソームはまた、例えば安定な粒子サイズを有し、毒性が低く、柔順な膜を有することなどの利点を示す。この気体前駆体充填リポソームが柔軟な膜を有することは、このリポソームを腫瘍などの組織への蓄積を促進させるか或は標的化に有用であり得ると考えている。
【0025】
このように、本発明に従って製造される温度で活性化される気体前駆体充填リポソームは、超音波コントラスト画像形成で用いるに優れた特性を有する。この気体前駆体充填リポソームを水系媒体または組織媒体の内側に入れると、これは、音の吸収が増強された界面を作り出す。従って、この気体前駆体充填リポソームは、一般的には、患者を画像化しそして/または病気になった組織が患者の中に存在しているか否かを診断するに有用であることに加えて、組織を加熱して薬物の放出または活性化を助長するに有用である。したがって、特定の態様の発明として、パーフルオロカーボンガスまたは六フッ化硫黄ガス充填脂質微小球であって、該脂質微小球がゲル状態相の脂質から構成される脂質二重層を含んでなり、該脂質がジパルミトイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびポリエチレングリコールに共有結合したジパルミトイルエタノールアミンを含有する脂質混合物であり、該パーフルオロカーボンがパーフルオロプロパン、パーフルオロブタンおよびパーフルオロシクロブタンからなる群より選ばれ、そして該脂質微小球の平均直径が1ミクロン〜25ミクロンであり、かつ、該脂質微小球がパーフルオロカーボンガスまたは六フッ化硫黄ガスの存在下で該脂質混合物を含む水溶液を該脂質のゲル状態相から液晶状態への相転移温度を下回る温度で振とうする工程を含んでなる製造方法により得られる、ことを特徴とする上記脂質微小球も提供される。
【0026】
本発明に従って製造される温度で活性化される気体前駆体充填リポソームは、超音波に加えて、例えば磁気画像形成およびMRIコントラスト剤として使用することができる。例えば、この気体前駆体充填リポソームに常磁性ガス、例えば酸素17を痕跡量で含有させた大気の空気など、常磁性イオン、例えばMn+2、Gd+2、Fe+3など、酸化鉄、または磁鉄鉱(Fe)などを入れてもよく、従ってこれを、磁気共鳴画像形成で敏感性を示すコントラスト剤として用いることができる。更に、本発明に従って製造する気体前駆体充填リポソームに、例えば放射線不透過性金属イオン、例えばヨウ素、バリウム、臭素またはタングステンなどを入れることで、これをx線コントラスト剤として用いることができる。
【0027】
この温度で活性化される気体前駆体充填リポソームはまた薬物担体として用いるに特に
有用である。内部に液体が入っている従来技術のリポソーム(これらが適切なのは水溶性薬物をカプセル封じする場合のみである)とは異なり、本発明に従って製造する気体前駆体充填リポソームは、親油性薬物をカプセル封じするに特に有用である。更に、薬物の親油性誘導体、例えば二ハロゲン化メタロセンのアルキル化誘導体などを容易に脂質層の中に組み込むことができる。Kuo他、J.Am.Chem.Soc.1991、113、9027−9045。
【0028】
<発明の詳細な記述>
本発明は、温度で活性化される気体前駆体充填リポソームを製造する方法および装置に向けたものである。内部が水溶液で満たされているリポソームを製造することに向けられた従来技術の方法とは異なり、本発明の方法は、内部に気体前駆体および/または最終的に気体が入っているリポソームを製造することに向けたものである。
【0029】
本明細書で用いる如き用語「温度で活性化される気体前駆体」は、選択した活性化または転移温度で相が液相から気相に変化する化合物を表す。活性化または転移温度、そして同様な用語は、その気体前駆体の沸点、即ちその気体前駆体が液相から気相に転移する温度を指す。有用な気体前駆体は、約−100℃から70℃の範囲に沸点を有する気体である。活性化温度は各気体前駆体に特有である。この概念を図9および10に説明する。本発明の気体前駆体では活性化温度を約37℃、即ち人の体温にするのが好適である。従って、液状の気体前駆体は37℃で活性化されて気体になる。しかしながら、この気体前駆体は、本発明の方法で用いる場合液相または気相内に存在し得る。液体が微小球の中に取り込まれるように、該気体前駆体の沸点より低い温度で本発明の方法を実施することができる。加うるに、気体が微小球の中に取り込まれるように、該気体前駆体の沸点でこの方法を実施してもよい。気体前駆体が低い沸点を有する場合、低い温度に冷却したミクロフルイダイザー(microfluidizer)装置を用いて液状前駆体を乳化してもよい。また、液状媒体の中に入れて溶媒を取り扱うことで沸点を下げることにより、前駆体を液状形態で用いることも可能である。また、焦点を当てた高エネルギー超音波を用いることで約70℃の上限を達成することも可能である。更に、気体前駆体を液体として用いて開始して気体として終了するように過程全体を通して温度を高めていく方法を実施することも可能である。
【0030】
インビボで患者または動物の中に入れた時点か、使用する前か、貯蔵中か、或は製造中に、その標的とする組織または流体内で気体がインサイチューで生じるように気体前駆体を選択することができる。この温度で活性化される気体前駆体充填微小球の製造方法は、該気体前駆体の沸点より低い温度で実施可能である。この態様では、相転移が製造中に起こらないように該気体前駆体を微小球内に捕捉させる。代わりとして、該気体前駆体の液相状態で気体前駆体充填微小球を製造する。いつでも温度をこの前駆体の沸点以上にすることで相転移の活性化を起こさせることができる。また、液状の気体前駆体で出来ている液滴の中に入っている液体の量を知ることで、気体状態に到達した時点におけるリポソームの大きさを決定することができる。
【0031】
また、この気体前駆体を用いて使用前に予め成形した安定な気体充填微小球を作り出すことができる。この態様では、懸濁用および/または安定化用媒体が入っている容器に該気体前駆体をこの個々の気体前駆体が示す液相−気相転移温度より低い温度で加える。次に、その温度を越えさせて該気体前駆体と液状溶液の間でエマルジョンを生じさせると、この気体前駆体は液体状態から気体状態への転移を受ける。この加熱および気体発生の結果としてその気体がその液状懸濁液の上に存在している頭頂空間内の空気と入れ代わり、その結果、この気体前駆体の気体または周囲の気体(例えば空気など)を捕捉しているか或は気体状態の気体前駆体と周囲空気を一緒に捕捉している気体充填脂質球が生じる。このような相転移を、コントラスト媒体の最適な混合および安定化で用いることができる。
例えば、気体前駆体であるパーフルオロブタンをリポソームの中に捕捉させることができ、そして温度を高めて3℃(パーフルオロブタンの沸点)を越えさせると、リポソームに捕捉されているフルオロブタンのガスが発生する。さらなる例として、乳化剤および安定化剤、例えばグリセロールまたはプロピレングリコールなどが入っている水懸濁液の中に気体前駆体であるフルオロブタンを懸濁させて市販ボルテクサー(vortexer)で渦流を起こさせることができる。この気体前駆体が液状であるに充分なほど低い温度で渦流を起こさせ、そして液体状態から気体状態に移行する相転移温度を過ぎるまでそのサンプルの温度を高くしながら渦流を継続する。このようにすることで、この微細乳化過程中に該前駆体は気体状態に変化する。適当な安定剤を存在させると、驚くべきことに、安定な気体充填リポソームが生じる。
【0032】
従って、気体で満たされているリポソームがインビボで生じるように本発明の気体前駆体を選択してもよいか、或は製造過程中か、貯蔵時か、或は使用前のある時点において気体で満たされるリポソームがインサイチューで生じるようにこれの設計を行うことができる。
【0033】
本発明のさらなる態様として、液体状態の気体前駆体を予め生じさせて水系エマルジョンの中に入れそして既知サイズを維持することにより、気体状態への転移が生じた時点における微細気泡の最大サイズを理想気体法則で予測することができる。気体前駆体から気体微小球を製造する意図で、瞬時に気相が生じそしてその新しく生じた微細気泡内のガスがなくなる[液体(一般的には現実に水系液体である)の中に拡散することが原因で]ことがないと仮定する。このようにして実際に、該エマルジョンに入っている液体の既知体積から気体リポソームの上限サイズを予測することが可能になる。
【0034】
本発明に従い、特定温度、即ち該気体前駆体の沸点に到達した時点で液滴が膨張して明確な大きさを有する気体リポソームが生じるように、明確な大きさを有する脂質の気体前駆体含有液滴が入っているエマルジョンを調合することができる。気体が溶液の中に拡散すること、気体が大気に失われること、圧力が高くなる影響などの如き要因が理想気体法則で説明することができなくなる要因になることから、この明確な大きさは実際の大きさの上限を表す。
【0035】
液体状態から気体状態に転移する時の気泡体積の上昇を計算する理想気体法則および方程式を以下に示す。
【0036】
理想気体法則により以下が予測される:
PV=nRT
ここで、
P=気圧で表す圧力
V=リットルで表す体積
n=気体のモル数
T=度Kで表す温度
R=理想気体定数=22.4L気圧度−1モル−1
【0037】
液体エマルジョンの中に入っている液体の体積、密度および温度を知ることで、液状前駆体の量(例えばモル数)に加えて液状前駆体の体積を演繹的に計算することができ、これが気体に変化すると膨張して既知体積のリポソームが生じる。この計算した体積は、瞬時に膨張して気体リポソームが生じると仮定しそして膨張期間に渡って気体が拡散する度合が無視できるほどであると仮定して、気体リポソームの上限サイズを反映することになる。
【0038】
従って、該前駆体が液体状態でエマルジョン内で安定化していてこの前駆体の液滴が球形であるとすると、この前駆体液滴の体積は、方程式:
体積(球)=4/3πr
[式中、r=球の半径である]
で決定され得る。
【0039】
このように、その体積を予測しそして所望温度においてその液体が示す密度を知ることで、液滴状態における液体(気体前駆体)の量を決定することができる。より記述的な意味で以下を適用することができる:
gas=4/3π(rgas
に理想気体法則
RV=nRT
を代入すると、
gas=nRT/Pgas
になる、即ち
(A)n=4/3[πrgas]P/RT
量n=4/3[πrgasP/RT]MW
これを液体の体積に戻して換算すると、
(B)Vliq=[4/3[πrgas]P/RT]MW/D]
[ここで、D=前駆体の密度]
になり、これを液滴の直径で解くと、
(C)直径/2=[3/4π[4/3[πrgas]P/RT]MW/D]1/3になり、これを換算すると、
直径=2[[rgas]P/RT[MW/D]]1/3
になる。
【0040】
本発明のさらなる態様として、体積、特に半径を知ることで、適当な大きさのフィルターを用いることにより、該気体前駆体滴の大きさを適当な直径の球に合わせる。
【0041】
代表的な気体前駆体を用いて、明確なサイズを有する微小球、例えば直径が10ミクロンの微小球を生じさせることができる。この実施例では人の血流内で該微小球を生じさせる、従って、典型的な温度は37℃または310度Kになるであろう。圧力を1気圧にしそして(A)の方程式を用いると、直径が10ミクロンの微小球が有する体積を満たすに必要とされる気体前駆体は7.54x10−17モルになるであろう。
【0042】
上で計算した気体前駆体の量を用い、そして76.11の分子量および32.5℃の沸点を有しそして20℃の密度が6.7789グラム/mLである1−フルオロブタンを用いるとしてさらなる計算を行うと、10ミクロンの微小球を生じさせるに必要な前駆体量は5.74x10−15グラムであると予測される。更に補外法を用い、密度を知ることで装備すると、更に方程式(B)により、上限が10ミクロンの微小球を生じさせるに必要な液状前駆体量は8.47x10−16mLであると予測される。
【0043】
最後に、方程式(C)を用い、上限が10ミクロンの微小球を気体前駆体で満たした微小球を製造するには、半径が0.0272ミクロン、即ち相当する直径が0.0544ミクロンの脂質滴が入っているエマルジョンを生じさせる必要がある。
【0044】
このような特別な大きさを有するエマルジョンは、適当なサイズのフィルターを用いることで容易に達成可能である。加うるに、明確なサイズを有する気体前駆体滴を生じさせるに必要なフィルターのサイズが分かると、このフィルターのサイズを、存在し得る如何なる細菌混入物も除去するに充分な大きさにすることができ、従って、これを同様に滅菌
濾過として使用することが可能になる。
【0045】
本発明のこの態様は、温度で活性化される全ての気体前駆体に適用可能である。実際、溶媒系の凝固点を下げることで、0℃より低い温度で液体から気体への相転移を受け得る気体前駆体を用いることが可能になる。この気体前駆体が入っている懸濁液に適した媒体が得られるように溶媒系を選択することができる。例えば、緩衝食塩水の中に混和性を示すプロピレングリコールを20%入れると、水単独が示す凝固点よりも充分に低い凝固点降下が表れる。このプロピレングリコールまたは添加材料、例えば塩化ナトリウムなどの量を多くすることでこの凝固点を更に降下させることができる。
【0046】
物理的方法を用いることでも同様に適当な溶媒系の選択を説明することができる。物質である固体または液体(本明細書では溶質と呼ぶ)を溶媒、例えば水を基とする緩衝液などの中に溶解させると、この溶液の組成に応じた度合でその凝固点が降下する。従って、Wallが定義するように、下記:
Inx=In(1−X)=ΔHfus/R(1/T−1/T)
[ここで、
=溶媒のモル分率
=溶質のモル分率
ΔHfus=溶媒の融解熱
=溶媒の標準凝固点]
を用いて溶媒の凝固点降下を表すことができる。
【0047】
溶媒の標準凝固点がもたらされる。XがXよりも小さいとすると、上記方程式は下記の如く再記述可能である:
【0048】
【数1】

【0049】
上記方程式では、温度変化ΔTがTよりも小さいと仮定する。更に溶質の濃度(溶媒1000グラム当たりのモル数で表す)を推測することで上記方程式を簡潔にすることができ、重量モル濃度mで表すことができる。従って、
【0050】
【数2】

【0051】
[ここで、
Ma=溶媒の分子量、および
m=1000グラム当たりのモル数で表す溶質の重量モル濃度]。
【0052】
従って、分率Xに代入すると、
ΔT=[MRT/1000ΔHfus]m
または ΔT=K
[ここで、K=MRT/1000ΔHfus
になる。
【0053】
を形式上の凝固点と呼び、1気圧の水の場合、これは、形式上の濃度1単位当たり1.86度に等しい。上記方程式を用いることで、本発明の気体前駆体充填微小球が入っている溶液の形式上の凝固点を正確に決定することができる。
【0054】
従って、上記方程式を適用することで、凝固点降下を見積もって溶媒の凝固温度を適当な値にまで下げるに必要とされる液状または固体状溶質の適当な濃度を決定することができる。
【0055】
この温度で活性化される気体前駆体充填リポソームの製造方法には下記が含まれる:
本発明の気体前駆体充填リポソームが入っている水懸濁液に渦流を起こさせる方法[この方法に関する変法には、振とうする前に任意にオートクレーブにかける変法、気体前駆体と脂質が入っている水懸濁液を任意に加熱する変法、この懸濁液が入っている容器の排気を任意に行う変法、任意に振とうするか或は自然発生的にこの気体前駆体リポソームを生じさせてこの気体前駆体充填リポソームの懸濁液を冷却する変法、そして気体前駆体と脂質が入っている水懸濁液を約0.22μmのフィルターに通して任意に押出すか、別法として、結果として生じるリポソームのインビボ投与中に約0.22μmのフィルターを用いたのと同様な濾過が生じるように濾過を実施してもよい変法が含まれる];
微細乳化方法[ここでは、本発明の気体前駆体充填リポソームが入っている水懸濁液を撹拌で乳化させそして加熱することで患者に投与する前の微小球を生じさせる]、および
加熱および/または撹拌で脂質懸濁液中の気体前駆体を生じさせる方法[ここでは、容器の中に入っている他の微小球を膨張させて追い出しそしてその容器の排気を行うことで空気を放出させることにより、より低い密度を有する気体充填微小球をその溶液の上部に浮遊させる]。
【0056】
この振とうガス注入方法(shaking gas instillation method)を受けさせる前の脂質から水および有機材料を除去するには凍結乾燥が有用である。乾燥ガス注入方法(drying−gas instillation method)を用いてリポソームから水を除去することができる。温めた後の乾燥リポソームの中に気体前駆体を予め捕捉させることにより(即ち乾燥を行う前)、この気体前駆体を膨張させてそのリポソームを満たしてもよい。また、気体前駆体を用い、真空をかけた後の乾燥したリポソームにこれを満たしてもよい。この乾燥したリポソームを、それがゲル状態から液晶状態になる温度より低い温度に保持しながら、その乾燥用チャンバをゆっくりと該気体前駆体(それの気体状態)で満たしてもよく、例えばパーフルオロブタンを用い、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)で出来ている乾燥したリポソームを、3℃(パーフルオロブタンの沸点)から40℃(該脂質の相転移温度)以下の温度で満たすことができる。この場合、約4℃から約5℃の温度で上記リポソームを満たすのが最も好適であろう。
【0057】
この温度で活性化される気体前駆体充填リポソームを製造するに好適な方法は、気体前駆体の存在下で脂質が入っている水溶液を該脂質がゲル状態から液晶状態に相転移する温度よりも低い温度で振とうすることを含む。本発明はまた気体前駆体充填リポソームの製造方法も提供し、この方法は、気体前駆体の存在下で脂質が入っている水溶液を振とうしそしてその結果として生じる診断または治療用途用の気体前駆体充填リポソームを分離することを含む。この上に示した方法で製造するリポソームを本明細書では「気体前駆体をゲル状態で振とうする注入方法で製造される気体前駆体充填リポソーム類」と呼ぶ。
【0058】
通常の水系充填リポソーム類は、常規通り、その脂質の相転移温度より高い温度で作られる、と言うのは、これらは液晶状態の方が高い柔軟性を示し、従って生物学的系ではこの状態の方が有効であるからである。例えば、SzokaおよびPapahadjopoulos、Proc.Natl.Acad.Sci.1978、75、4194−4198参照。それとは対照的に、本発明の方法の好適な態様に従って製造したリポソーム類は、気体前駆体で満たされており、気体発生後の気体前駆体は水溶液よりも高い圧縮性と柔順性を示すことから、この方がずっと高い柔軟性を示す。従って、この気体前駆体充填リ
ポソーム類を該脂質の相転移温度より低い温度で生じさせると、そのゲル相はより堅いにも拘らず、生物学的系内で利用可能である。
【0059】
本発明の方法は、温度で活性化される気体前駆体の存在下で脂質が入っている水溶液を振とうすることを提供する。気体前駆体を局所的周囲環境から水溶液の中に導入するように水溶液を撹拌する動作であるとして、本明細書で用いる如き「振とう」を定義する。この振とうでは、水溶液を撹拌しそして気体前駆体の導入をもたらす如何なる種類の動作も使用可能である。この振とうは、ある期間の後に泡が形成し得るに充分な力を有する振とうでなくてはならない。この振とうは、好ましくは短期間、例えば30分以内、好適には20分以内、より好適には10分以内に泡が生じるに充分な力を有する振とうである。微細乳化、微細流動化、例えば横方向または縦方向の動きで渦を起こさせる(例えば渦流を起こさせる)ことなどによって、この振とうを行うことができる。気体前駆体を液体状態で添加する場合、上に挙げた振とう方法に加えて音波処理を用いることができる。更に、いろいろな種類の動作を組み合わせてもよい。また、脂質水溶液が入っている容器を振とうするか、或はその容器自身を振とうするのではなくこの容器内に入っている水溶液を振とうすることによって、この振とうを行ってもよい。更に、手を用いるか或は機械的にこの振とうを行ってもよい。使用できる機械的振とう機には、例えばVWR Scientific(Cerritos、CA)振とうテーブルなどの如き振とうテーブル、ミクロフルイダイザー、Wig−L−Bug(商標)(Crescent Dental Manufacturing,Inc.、Lyons,IL)および機械的塗料用ミキサーなどに加えて他の公知機械が含まれる。振とうをもたらす他の手段には、高速または高圧下で発生させる気体前駆体が示す作用が含まれる。また、水溶液の量が多くなるにつれて相当してその力の全体量を高くするのが好適であることも理解されるであろう。1分当たりの振とう動作が少なくとも約60回であるとして激しい振とうを定義し、これが好適である。激しい振とうの例である1分当たり少なくとも1000回転の渦流がより好適である。1分当たり1800回転の渦流が最も好適である。
【0060】
振とう後の気体前駆体充填リポソーム生成は、その水溶液の上部に泡が存在することで検出可能である。これは、泡が生成した時点でその水溶液の体積が小さくなることに関連する。好適には、この泡の最終体積をその脂質水溶液の初期体積の少なくとも約2倍にし、より好適には、この泡の最終体積をその水溶液の初期体積の少なくとも約3倍にし、より更に好適には、この泡の最終体積をその水溶液の初期体積の少なくとも約4倍にし、最も好適には、この脂質水溶液を全部泡に変化させる。 必要な振とう時間は、その泡の生成を検出することで決定可能である。例えば50mLの遠心分離管の中に脂質溶液を10mL入れてこれに渦流を約15−20分間起こさせるか、或は該気体前駆体充填リポソームを渦巻き撹拌してもこのリポソームが側壁に粘着しなくなるに充分なほどこのリポソームの粘度が濃密になるまで渦流を起こさせる。この時点で、この泡は、その気体前駆体充填リポソームが入っている溶液のレベルを30から35mLにまで高め得る。
【0061】
好適な泡レベルを生じさせるに必要な脂質濃度は、その使用する脂質の種類に応じて変化するが、本開示を身につけた後の当該技術分野の技術者はその濃度を容易に決定するであろう。例えば、好適な態様において、本発明の方法に従う気体前駆体充填リポソームの生成で用いる1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)の濃度は、食塩水溶液1mL当たり約20mgから約30mgである。好適な態様で用いるジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)の濃度は、食塩水溶液1mL当たり約5mgから約10mgである。
【0062】
具体的には、20mg/mLから30mg/mLの濃度でDPPCを振とうすると、懸濁液と捕捉された気体前駆体全体の体積はこの懸濁液単独の体積の4倍以上になる。10mg/mLの濃度でDSPCを振とうすると、全体積に液状懸濁液の体積は全く含まれず
、含まれるのは完全に泡である。
【0063】
本開示を身につけた後の当該技術分野の技術者は、本発明の方法を受けさせる前および後に脂質またはリポソームを操作することができることを理解するであろう。例えば、この脂質を水和させた後、凍結乾燥を行うか、凍結解凍サイクルで処理するか、或は簡単に水和させることができる。好適な態様では、気体前駆体充填リポソームを生じさせる前に、この脂質を水和させた後凍結乾燥を行うか、或は水和させた後凍結解凍サイクルで処理しそして次に凍結乾燥を行う。
【0064】
本発明の方法に従い、また、局所的周囲大気を用いて気体、例えばこれらに限定するものでないが空気などを存在させることも可能である。この局所的周囲大気は、密封された容器内に入っている大気であってもよいか、或は容器が密封されていない場合、外部の環境であってもよい。また、例えば、気体を該脂質水溶液が入っている容器にか或はその中に注入するか或はこの脂質水溶液自身の中に注入することで、空気以外の気体を供給することも可能である。空気より重くない気体の場合、これは密封容器に添加可能である一方、空気より重い気体の場合、密封容器または密封されていない容器に添加可能である。従って、本発明は、気体前駆体と一緒に空気および/または他の気体を共捕捉させることを包含する。
【0065】
使用する脂質がゲル状態から液晶状態に相転移する温度より低い温度で、本発明の好適な方法を実施する。「ゲル状態から液晶状態に相転移する温度」は、脂質の2層がゲル状態から液晶状態に変化する温度を意味する。例えば、Chapman他、J.Biol.Chem.1974、249、2512−2521参照。種々の脂質がゲル状態から液晶状態に相転移する温度は、当該技術分野の技術者に容易に明らかになり、そしてこれは例えばGregoriadis編集「Liposome Technology」、I巻、1−18(CRC Press、1984)およびDerek Marsh「CRC Handbook of Lipid Bilayers」(CRC Press、Boca Raton、FL 1990)の139頁に記述されている。また以下の表Iを参照のこと。この用いる脂質がゲル状態から液晶状態に相転移する温度が室温より高い場合、例えばこの脂質の溶液が入っている容器を冷却する冷却機構を設けることで、その容器の温度を調節することができる。
【0066】
気体前駆体(例えばパーフルオロブタンなど)が示す溶解性および分散性は他の気体、例えば空気などよりも低いことから、これらは、リポソーム内に捕捉されると、このリポソームが液晶状態の脂質で作られていたとしても、より高い安定性を示す傾向がある。液晶状態の脂質、例えば卵のホスファチジルコリンなどで構成させた小さいリポソームを用いて、ナノ液滴(nanodroplets)のパーフルオロブタンを捕捉させることができる。例えば、直径が約30nmから約50nmの脂質小胞を用いて、平均直径が約25nmであるナノ液滴のパーフルオロブタンを捕捉させることができる。この前駆体充填リポソームは、温度で活性化されて変換が生じた後、直径が約10ミクロンの微小球を生じることになる。この場合の脂質は、その小さいリポソームを通して該微小球の大きさを限定する目的を果す。この脂質はまたその結果として生じる微小球のサイズを安定化する働きもする。この場合、該前駆体を捕捉する小さいリポソームの生成では、微細乳化の如き技術を用いるのが好適である。該気体前駆体を捕捉する小さいリポソームが入っているエマルジョンの製造では、ミクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)が特に有用である。
【0067】
【表1】

【0068】
通常の水系充填リポソーム類は、常規通り、その脂質がゲルから液晶に相転移する温度より高い温度で作られる、と言うのは、これらは液晶状態の方が高い柔軟性を示し、従って生物学的系ではこの状態の方が有効であるからである。例えば、SzokaおよびPapahadjopoulos、Proc.Natl.Acad.Sci.1978、75、4194−4198参照。それとは対照的に、本発明の方法の好適な態様に従って製造したリポソーム類は、気体前駆体で満たされており、気体前駆体は水溶液よりも高い圧縮性と柔順性を示すことから、この方がずっと高い柔軟性を示す。従って、この気体前駆体充填リポソーム類を該脂質の相転移温度より低い温度で生じさせると、そのゲル相はより堅いにも拘らず、これらは生物学的系内で利用可能である。
【0069】
気体前駆体をゲル状態で振とうする注入方法を用いてこの温度で活性化される気体前駆体充填リポソーム類を製造するに好適な装置を図1に示す。気体前駆体を注入させる過程で、脂質と水系媒体の混合物をバッチ式または連続供給して激しく撹拌することにより、気体前駆体充填リポソームを製造する。図1を参照して、連続流れとしてか或は間欠的ボーラス(boluses)として乾燥脂質51を脂質供給容器50から導管59を通して混合容器66に加える。バッチ方法を用いる場合、この混合容器66を比較的小さい容器、例えばシリンジ、試験管、ボトルまたは丸底フラスコなどか或は大型容器で構成させてもよい。連続供給方法を用いる場合、この混合容器を好適には大型容器、例えばバットなどにする。
【0070】
この気体前駆体充填リポソームに治療用化合物を入れる場合、例えば上に記述した脂質の添加と同様な様式で、該気体前駆体注入過程を行う前にこの治療用化合物を添加してもよい。また、このリポソームの外側を治療用化合物で被覆する場合、該気体前駆体注入過程を行った後その治療用化合物を添加してもよい。
【0071】
この容器66には、脂質51に加えてまた水系媒体53、例えば食塩水溶液などを水系媒体供給容器52から導管61を通して加える。この脂質51と水系媒体53が一緒にな
って脂質水溶液74を生じる。また、この乾燥脂質51を混合容器66の導入するに先立ってこれを水和させることにより、脂質を水溶液の状態で導入することも可能である。このリポソーム製造方法の好適な態様では、溶液74の初期仕込みを、この溶液が混合容器66の容量の一部のみを占めるように行う。更に、連続方法では、この脂質溶液74の体積が混合容器66容量の前以て決めたパーセントを越えないように、この脂質水溶液74の添加速度および生じる気体前駆体充填リポソームを取り出す速度を調節する。
【0072】
加圧した気体前駆体の高速ジェットを脂質水溶液74の中に直接導入することによって、この振とうを達成してもよい。また、手を用いるか或は機械を用いてこの水溶液を機械的に振とうすることでも振とうを達成することができる。混合容器66を振とうするか或はこの混合容器自身を振とうしないで水溶液74を直接振とうすることによって、上記機械的振とうを行うことができる。図1に示す如き好適な態様では、混合容器66に機械的振とう装置75を連結する。この振とうは、図1に示すように、ある期間後に気体前駆体充填リポソームで構成された泡73が水溶液74の上部に生じるに充分な強度の振とうでなくてはならない。この振とう期間を調節する手段として泡73の生成検出を用いることができる、即ち前以て決めた期間振とうを行うのではなく、前以て決めた体積の泡が生じるまでこの振とうを継続してもよい。
【0073】
また、このリポソーム製造方法に適した1つの温度に装置を維持することができるように、図1の装置に温度を調節する手段を含めてもよい。例えば、好適な態様では、該気体前駆体の沸点より低い温度でこのリポソーム製造方法を実施する。この好適な態様では、液状の気体前駆体がそのリポソームの内部空間を満たすことになる。また、このリポソームの中に気体が含まれるように、該気体前駆体が液体から気体に転移する温度付近の温度にこの装置を維持してもよい。更に、該気体前駆体を液体として用いて始めるが、結果として生じるリポソームの中に気体が組み込まれるように、このリポソーム製造方法全体を通してこの装置の温度を調整してもよい。この態様では、相転移温度より低い温度でこの方法を始めそして該気体前駆体の相転移温度付近の温度に調節するように、このリポソーム製造方法中の装置温度を調整する。従って、この容器を密封しそして定期的に排気を行うか或は周囲大気に開放してもよい。
【0074】
使用する脂質がゲルから液晶に相転移する温度が室温以下である気体前駆体充填リポソームを製造する装置の好適な態様では、脂質水溶液74を冷却する手段を装備する。図1に示す態様では、混合容器66を取り巻く環状通路を形成するようにこの容器の回りに配置したジャケット64を用いて冷却を達成する。図1に示すように、それぞれジャケットの入り口および出口である60および63により上記環状通路の中に冷却用流体62を流す。冷却用流体62の温度および流量を調節することで、脂質水溶液74の温度を所望温度に維持することができる。
【0075】
図1に示すように、例えば1−フルオロブタンであってもよい気体前駆体55を水溶液74と一緒に混合容器66の中に導入する。密封されていない混合容器を用いて空気を導入することで上記水溶液を連続的に環境の空気に暴露してもよい。バッチ方法の場合、混合容器66を密封することで、局所的な周囲の空気を固定仕込み量で導入してもよい。空気より重い気体前駆体を用いる場合、この容器を密封する必要はない。しかしながら、空気より重くない気体前駆体を導入するには、例えば図1に示すように蓋65を用いて混合容器を密封する必要があるであろう。図1に示すように、例えば混合容器66を導管57で加圧ガス供給タンク54に連結することなどによって、気体前駆体55の加圧をこの混合容器の中で行ってもよい。
【0076】
振とうが終了した後、該気体前駆体で満たされたリポソームが入っている泡73を混合容器66から抽出することができる。図2に示すシリンジ100の針102を泡73の中
に挿入してプランジャー106を引くことで前以て決めた量の泡を容器104の中に吸い込むことにより、抽出を達成することができる。以下で更に考察するように、針102の末端を泡73の中に位置させる場所選択を利用することでその抽出する気体前駆体充填リポソームの大きさを調節することができる。
【0077】
また、図1に示すように、抽出用管67を混合容器66の中に挿入することでも抽出を達成することができる。この混合容器66を加圧する場合、上で考察したように、該気体前駆体55の圧力を用いてその気体前駆体充填リポソーム77を導管70により混合容器66から抽出用容器76に送り込むことができる。この混合容器66の加圧を行わない場合、図1に示すように、抽出用容器76を、この抽出用容器76の中に泡73を吸い込むに充分な負の圧力を作り出す真空ポンプなどの如き真空源58に導管78で連結してもよい。この気体前駆体充填リポソーム77は、抽出用容器76から小びん82に導入され、この中に該リポソームを入れて最終使用者に輸送することができる。この気体前駆体充填リポソームを取り出す補助として、加圧した気体前駆体56の源を抽出用容器76に連結してもよい。負の圧力をかけると該気体前駆体充填リポソームのサイズが大きくなる可能性があることから、この気体前駆体充填リポソームの取り出しでは正の圧力をかけるのが好適である。
【0078】
実質的に均一なサイズを有する気体前駆体充填リポソームを得る目的で濾過を実施してもよい。好適な特定態様では、濾過用アセンブリにフィルターを1つ以上入れ、そして好適には、図4に示すように、これらのフィルターを互いに直接的には隣接させない。濾過を行う前の気体前駆体充填リポソームの大きさは約1ミクロンから60ミクロン以上の範囲である(図5Aおよび6A)。単一のフィルターに通して濾過した後の気体前駆体充填リポソームの大きさは一般に10ミクロン以下であるが、25ミクロンの如き大きい粒子も残存する。2個のフィルター(10ミクロンのフィルターに続いて8ミクロンのフィルター)に通して濾過した後のリポソームは、ほとんど全部10ミクロン以下であり、大部分が5から7ミクロンである(図5Bおよび6B)。
【0079】
図1に示すように、前以て決めたサイズより小さい気体前駆体充填リポソームのみが混合容器66から抽出されるように、抽出用管67の末端にフィルター要素72を直接組み込むことにより、濾過を達成することができる。別法としてか或は抽出用管フィルター72に加えて、図1に示すように、該気体前駆体充填リポソーム77が抽出用容器76から小びん82に向かう導管79の中に組み込んだフィルター80を用いて、気体前駆体充填リポソームの大きさ合わせを達成することができる。図4に示す如きカスケードフィルターアセンブリ124をフィルター80に含めてもよい。図4に示すカスケードフィルターアセンブリ124は2つの連続フィルター116および120を含み、ここでは、フィルター116の上流にフィルター120を配置する。好適な態様では、上流のフィルター120を「NUCLEPORE」10μmフィルターにし、下流のフィルター116を「NUCLEPORE」8μmフィルターにする。好適には、フィルター116の両側に0.15mmの金属メッシュ盤115を2つ取り付ける。好適な態様では、テフロン(商標)Oリング118を用いてフィルター116と120を最低で150μm離して位置させる。
【0080】
濾過に加えてまた、気体前駆体充填リポソームの浮力がその大きさに依存することの利点を利用することで、大きさ合わせを達成することができる。この気体前駆体充填リポソームの密度は水よりもかなり低く、従って混合容器66の上部に浮遊し得る。最大のリポソームが最小の密度を有することから、これらが最も迅速に上部に浮遊して来る。最小のリポソームが上部に上昇して来るのは一般に最後であり、気体前駆体で満たされていない脂質部分は底に沈むことになる。この現象を有利に利用して、優先浮遊方法で気体前駆体充填リポソームを混合容器66から取り出すことにより、これらの大きさを合わせること
ができる。このように、混合容器66内における抽出用管67の鉛直位置を設定することで、その抽出すべき気体前駆体充填リポソームの大きさを調節することができ、ここでは、この管の位置を高くすればするほど、その抽出される気体前駆体充填リポソームのサイズが大きくなる。更に、混合容器66内における抽出用管67の鉛直位置を周期的または連続的に調整することにより、継続を基礎にして、その抽出すべき気体前駆体充填リポソームの大きさを調節することができる。混合容器66内における抽出用管67の鉛直位置を正確に調整することを可能にする、抽出用管67に取り付けたねじ付きスリーブ72に合致するねじ付きカラー71であってもよいデバイス68を組み込むことにより、上記抽出を容易に行うことができるようにしてもよい。
【0081】
気体前駆体をゲル状態で振とうする注入方法自身を用いることでもまたこの気体前駆体で満たされた脂質を基とする微小球の大きさ合わせを改良することができる。一般的には、振とうエネルギーを高くすればするほど、その結果として生じる気体前駆体充填リポソームのサイズが小さくなる。
【0082】
本発明はまた、最終使用者に分与すべき薬物が入っている気体前駆体充填リポソームを製造する新規な方法も包含する。気体前駆体充填リポソームをいったん生じさせると、崩壊の原因になるほどの温度に加熱することによる滅菌をこれらに受けさせるのは一般に不可能である。従って、無菌材料を用いてこの気体前駆体充填リポソームを生じさせるのが望ましく、汚染の危険性を避ける目的で、後で行う操作をできるだけ少なくするのが望ましい。本発明に従い、例えば該脂質と水溶液が入っている混合容器を振とう前に滅菌した後、この気体前駆体充填リポソーム77を、さらなる処理または取り扱いを行うことなく、即ち後で滅菌を行うことなく、混合容器66から抽出用容器76を通して図2に示す無菌シリンジ100の容器104の中に直接分与することにより、上記を達成することができる。その後、この気体前駆体充填リポソーム77を仕込んだシリンジ100を適切に包装して、最終使用者に分与してもよい。その後、この気体前駆体充填リポソームを患者に投与するには、上記シリンジをその包装から取り出してシリンジ針102から保護具(示していない)を取り外しそしてこの針を患者の体にか或はカテーテルに挿入する以外、この製品のさらなる取り扱いを行う必要はない。更に、このシリンジのプランジャー106を容器104の中に押し込む時に発生する圧力で最も大きな気体前駆体充填リポソームが崩壊することにより、濾過を行わなくてもある程度の大きさ合わせが達成される。
【0083】
例えば、この気体前駆体充填リポソームが濾過なしに抽出容器76から取り出したものであるからか或はさらなる濾過を行うことが望まれていることなどの理由で、この気体前駆体充填リポソームの濾過を使用時点で行うことが望まれる場合、図2に示すように、シリンジ100にそれ自身のフィルター108を取り付けてもよい。その結果として、この気体前駆体充填リポソームを注入する時に行うプランジャー106の動作でこれらがフィルター108を通って押出されることにより、この気体前駆体充填リポソームの大きさ合わせが生じる。このように、この気体前駆体充填リポソームの大きさ合わせと患者への注入を1段階で行うことができる。
【0084】
このシリンジのハブハウジング(hub housing)内にフィルターを1個または2個入れるには、ハブハウジングが備わっている標準的でないシリンジを用いる必要がある。図3に示すように、フィルター(類)を入れるハブは、このフィルターを入れる内側の直径が約0.8cmで、直径が約1cmから2cmで、長さが約1.0cmから約3.0cmの寸法を有する。このハブの中にフィルターを入れる部分の寸法を異常に大きくしたのは、ハブ内を通る微小球の通路に、このシリンジのプランジャーにかける必要のある圧力を下げるに充分な表面積を持たせるためである。このようにすることで、微小球の崩壊を引き起こし得る異常に大きい圧力ヘッドを該微小球が注入時に受けることはない。
【0085】
図3に示すように、カスケードフィルターのハウジング110をシリンジ112に直接取り付けることで、使用時点でカスケード濾過を行うことが可能になり得る。図4に示すように、このフィルターのハウジング110を、オスねじ山を有する下方のカラー122とメスねじ山を有するメスカラー114との間に組み込んだカスケードフィルターアセンブリ124(上で考察した)で構成させる。この下方のカラー122にLuerロックを取り付けることでシリンジ112への取り付けを容易に行うことができるようにし、そして上方のカラー114に針102を取り付ける。
【0086】
好適な態様では、該脂質溶液をフィルターに通して押出しそしてこの脂質溶液を加熱滅菌した後、振とうを行う。気体前駆体充填リポソームをいったん生じさせた後、上述した如く濾過を行うことで大きさを合わせてもよい。気体前駆体充填リポソームを生じさせる前に行う上記段階により、例えば水和していない脂質の量が低くなることで有意に高い気体前駆体充填リポソーム収率が得られることに加えて、患者に投与する準備が出来ている無菌の気体前駆体充填リポソームが得られることなどの如き利点が得られる。例えば、濾過した脂質懸濁液を小びんまたはシリンジなどの如き混合容器に充填した後、例えばオートクレーブにかけることなどにより、この溶液の滅菌をその混合容器内で行ってもよい。この脂質懸濁液に気体前駆体を注入し、その無菌容器を振とうすることで、気体前駆体充填リポソームを生じさせてもよい。好適には、この気体前駆体充填リポソームが患者に接触する前にこれがフィルターを通るようにフィルターを位置させてこれを該無菌容器に取り付ける。
【0087】
この好適な方法の第一段階である、該脂質溶液をフィルターに通して押出す段階により、その乾燥している脂質が細分されると共にそれが水和でさらされる表面積がより大きくなることで、水和していない脂質の量が少なくなる。このフィルターの孔サイズを好適には約0.1から約5μm、より好適には約0.1から約4μm、更により好適には約0.1から約2μmまで、更により好適には約1μmまでにし、最も好適には0.22μmにする。図7に示すように、脂質懸濁液を濾過すると(図7B)、前濾過を受けさせなかった脂質懸濁液(図7A)に比較して、水和されていない脂質の量が少なくなる。水和されていない脂質は、不均一な大きさを有する非晶質塊として現れ、望ましくない。
【0088】
第二段階である滅菌により、患者にすぐ投与できる組成物が得られる。好ましくは、滅菌を加熱滅菌、好適には該溶液を低くとも約100℃の温度のオートクレーブ、より好適には約100℃から約130℃、更により好適には約110℃から約130℃、更により好適には約120℃から約130℃、最も好適には約130℃のオートクレーブにかけることによって達成する。加熱を、好適には少なくとも約1分間、より好適には約1から約30分間、更により好適には約10から約20分間、最も好適には約15分間行う。
【0089】
ある温度でこの気体前駆体充填リポソームの崩壊が生じ得ることで、加熱滅菌以外の方法で滅菌を行う場合、該気体前駆体充填リポソームを生じさせた後滅菌を行ってもよく、これが好適である。例えば、気体前駆体充填リポソームを生じさせる前および/または後にガンマ放射線を用いることができる。
【0090】
水系媒体中で乳化させる前に0.22μmのフィルターまたはそれより小さいフィルターに通すことにより、この気体前駆体の滅菌を達成することができる。同様に滅菌して無菌充填した水系担体が前以て決めた量で入っている小びんの中に直接その内容物を無菌濾過して入れることにより、滅菌を容易に達成することができる。
【0091】
図8は、オートクレーブにかけた後(130℃で15分間実施)渦流を10分間起こさせることで成功裏に気体前駆体充填リポソームを生じさせることができることを示している。更に、この押出して滅菌する手順の後に行う振とう段階により、無水脂質相が全くか
或はほとんど残存していない気体前駆体充填リポソームが生じる。図8Aは、オートクレーブにかけた後であるが濾過を行う前のその生じた気体前駆体充填リポソームを示しており、このように、10μm以上の大きさを有する気体前駆体充填リポソームが多数生じていた。図8Bは、10μmの「NUCLEPORE」フィルターに通して濾過した後の気体前駆体充填リポソームを示しており、ここでは、約10μmの均一な大きさが生じていた。
【0092】
この気体前駆体で満たされた脂質微小球の製造で使用可能な材料には、リポソームの製造で適切であるとして当該技術分野の技術者に知られている材料または材料組み合わせいずれもが含まれる。本発明では、沸点で液体から気体への相転移を受ける気体前駆体を用いることができる。この使用する脂質は天然源または合成源のいずれであってもよい。所望特性が最適になる、例えば血清安定性を最大限にするための血漿長期半減期に対する血漿短期半減期が最適になるように、個々の脂質を選択する。また、特別な用途、例えば該気体前駆体充填脂質微小球の崩壊時に治療用化合物の封じ込めを解放する用途などでより高い効力を示し得るのは特定の脂質であると理解されるであろう。
【0093】
この気体前駆体充填リポソームにおける脂質は、単一の2層形態または多層状の2層形態であってもよく、好適には多層状である。
【0094】
本発明では温度で活性化可能な気体前駆体が有用であり得る。表IIに、正常体温(37℃)に近い温度で液体状態から気体状態への相転移を受ける気体前駆体の例を挙げると共に、大きさが10ミクロンの微小球を生じさせるに必要であると考えられる乳化液滴の大きさを挙げる。この表に、明確な大きさを有する、温度で活性化される気体前駆体が入っているリポソームの生成で使用可能な気体前駆体を含める。この表は、本発明の方法のための気体前駆体の可能性に関して決して制限するものとして解釈されるべきでない。
【0095】
【表2】

【0096】
気体前駆体の例を決して表IIに制限するものでない。気体前駆体の製造では、実際、種々のいろいろな用途で、適当な活性化温度を通した時点で気相への相転移を受け得る限り実質的に如何なる液体も使用可能である。用いることができる気体前駆体の例には、決して制限するものでないが下記が含まれる:ヘキサフルオロアセトン、イソプロピルアセチレン、アレン、テトラフルオロアレン、三フッ化ホウ素、1,2−ブタジエン、1,3−ブタジエン、1,2,3−トリクロロ,2−フルオロ−1,3−ブタジエン、2−メチル,1,3−ブタジエン、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエン、ブタジイン、1−フルオロ−ブタン、2−メチル−ブタン、デカフルオロブタン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、パーフルオロ−1−ブテン、パーフルオロ−2−ブテン、1,4−フェニル−3−ブテン−2−オン、2−メチル−1−ブテン−3−イン、硝酸ブチル、1−ブチン、2−ブチン、2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−ブチン、3−メチル−1−ブチン、パーフルオロ−2−ブチン、2−ブロモ−ブチラルデヒド、カルボニルスルフィド、クロトノニトリル、シクロブタン、メチルシクロブタン、オクタフルオロ−シクロブタン、パーフルオロ−シクロブテン、3−クロロ−シクロペンテン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、シクロプロパン、1,2−ジメチルシクロプロパン、1,1−ジメチル−シクロプロパン、1,2−ジメチルシクロプロパン、エチルシクロプロパン、メチルシクロプロパン、ジアセチレン、3−エチル−3−メチルジアジリジン、1,1,1−トリフルオロジアゾエタン、ジメチルアミン、ヘキサフルオロ−ジメチルアミン、ジメチルエチルアミン、−ビス−(ジメチルホスフィン)アミン、2,3−ジメチル−2−ノルボルナン、パーフルオロ−ジメチルアミン、ジメチルオキソニウムクロライド、1,3−ジオキソラン−2−オン;パーフルオロカーボン類、例えばこれらに限定するものでないが、4−メチル,1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、1,1ジクロロエタン、1,1−ジクロロ−1,2,2,2−テトラフルオロエタン、1,2−ジフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2,2,2−ペンタフルオロエタン、2−クロロ,1,1−ジフルオロエタン、1−クロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、2−クロロ,1,1−ジフルオロエタン、クロロエタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、フルオロエタン、ヘキサフルオロ−エタン、ニトロ−ペンタフルオロエタン、ニトロソ−ペンタフルオロエタン、パーフルオロエタン、パーフルオロエチルアミン、エチルビニルエーテル、1,1−ジクロロエチレン、1,1−ジクロロ−1,2−ジフルオロエチレン、1,2−ジフルオロエチレン、メタン、メタンスルホニルクロライド−トリフルオロ、メタン−スルホニルフルオライド−トリフルオロ、メタン−(ペンタフルオロチオ)トリフルオロ、メタン−ブロモジフルオロニトロソ、メタン−ブロモフルオロ、メタン−ブロモクロロ−フルオロ、メタン−ブロモ−トリフルオロ、メタン−クロロジフルオロニトロ、メタン−クロロジニトロ、メタン−クロロフルオロ、メタン−クロロトリフルオロ、メタン−クロロ−ジフルオロ、メタン−ジブロモジフルオロ、メタン−ジクロロジフルオロ、メタン−ジクロロ−フルオロ、メタン−ジフルオロ、メタン−ジフルオロ−ヨード、メタン−ジシラノ、メタン−フルオロ、メタンヨード、メタン−ヨード−トリフルオロ、メタン−ニトロ−トリフルオロ、メタン−ニトロソ−トリフルオロ、メタン−テトラフルオロ、メタン−トリクロロフルオロ、メタン−トリフルオロ、メタンスルフェニルクロライド−トリフルオロなど、2−メチルブタン、メチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、乳酸メチル、亜硝酸メチル、メチルスルフィド、メチルビニルエーテル、ネオン、ネオペンタン、窒素(N)、酸化窒素、1,2,3−ノナデカントリカルボン酸−2−ヒドロキシトリメチルエステル、1−ノネン−3−イン、酸素(O)、1,4−ペンタジエン、n−ペンタン、ペンタン−パーフルオロ、2−ペンタノン−4−アミノ−4−メチル、1−ペンテン、2−ペンテン[シス]、2−ペンテン(トランス)、1−ペンテン−3−ブロモ、1−ペンテン−パーフルオロ、フタル酸−テトラクロロ、ピペリジン−2,3,6−トリメチル、プロパン、プロパン−1,1,1,2,2,3−ヘキサフル
オロ、プロパン−1,2−エポキシ、プロパン−2,2ジフルオロ、プロパン−2−アミノ、プロパン−2−クロロ、プロパン−ヘプタフルオロ−1−ニトロ、プロパン−ヘプタフルオロ−1−ニトロソ、プロパン−パーフルオロ、プロペン、プロピル−1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−2,3ジクロロ、プロピレン−1−クロロ、プロピレン−クロロ−(トランス)、プロピレン−2−クロロ、プロピレン−3−フルオロ、プロピレン−パーフルオロ、プロピン、プロピン−3,3,3−トリフルオロ、スチレン−3−フルオロ、六フッ化硫黄、硫黄(ジ)−デカフルオロ(S2F10)、トルエン−2,4−ジアミノ、トリフルオロアセトニトリル、トリフルオロメチルパーオキサイド、トリフルオロメチルスルフィド、六フッ化タングステン、ビニルアセチレン、ビニルエーテル、キセノン、窒素、空気および他の周囲ガス。
【0097】
パーフルオロカーボン類、即ちフッ素ガス、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサンなどが本発明の好適な気体であり、更により好適にはパーフルオロエタン、パーフルオロプロパンおよびパーフルオロブタン、最も好適にはパーフルオロプロパンおよびパーフルオロブタンである、と言うのは、より不活性な完全フッ素置換されている気体の方が毒性が低いからである。
【0098】
本発明の微小球には、これらに限定するものでないが、リポソーム、脂質被膜、エマルジョンおよびポリマー類が含まれる。
【0099】
脂質の微小球を作り出す目的で使用できる脂質には、これらに限定するものでないが、脂肪酸、リゾリピド類、飽和および不飽和脂質両方のホスファチジルコリン(これらには、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリンなどが含まれる)、ホスファチジルエタノールアミン類、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトールなど、スフィンゴリピド類、例えばスフィンゴミエリンなど、糖脂質、例えばガングリオシドGM1およびGM2など、グルコリピド類、スルファチド類、グリコスフィンゴリピド類、ホスファチジン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキドン酸、オレイン酸、脂質含有ポリマー類、例えばポリエチレングリコール、キチン、ヒアルロン酸またはポリビニルピロリドンなど、脂質含有スルホン化モノ−、ジ−、オリゴ−もしくはポリサッカライド類、コレステロール、コレステロールスルフェートおよびコレステロールヘミスクシネート、トコフェロールヘミスクシネートなど、エーテルおよびエステル結合脂肪酸を有する脂質、重合した脂質、ジアセチルホスフェート、ステアリルアミン、カルジオリピン、炭素数が6−8の鎖長である短鎖脂肪酸を有するリン脂質、不斉アシル鎖を有する合成リン脂質(例えば炭素数が6のアシル鎖を1つおよび炭素数が12のアシル鎖をもう1つ有する)、6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、ジガラクトシルジグリセリド、6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド、6−(5−コレステン−3β−イルオキシ)ヘキシル−6−アミノ−6−デオキシ−1−チオ−α−D−マンノピラノシド、12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカン酸、N−[12−(((7’−ジエチルアミノクマリン−3−イル)カルボニル)メチルアミノ)−オクタデカノイル]−2−アミノパルミチン酸、コレステリル(4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノエート、N−スクシニルジオレオイルホスファチジルエタノール−アミン、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール、1,2−ジパルミトイル−sn−3−スクシニルグリセロール、1,3−ジパルミトイル−2−スクシニルグリセロール、1−ヘキサデシル−2−パルミトイルグリセロホスホエタノールアミン、およびパルミトイルホモシス
テイン、および/またはそれらの組み合わせなどの如き脂質が含まれる。このリポソーム類を単層または2層として生じさせてもよく、そしてこれらに被膜を持たせるか或は持たせなくてもよい。
【0100】
脂質を含有している親水性ポリマー類、例えばポリエチレングリコール(PEG)[これらには、これらに限定するものでないがPEG2,000MW、5,000MWおよびPEG8,000MWが含まれる]などは、この気体前駆体含有リポソームの安定性およびサイズ分布の改良で特に有用である。種々のいろいろなモル比でPEG化した脂質、例えばPEG5,000MWを含有しているジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)などもまた有用であり、DPPEを8モル%にするのが好適である。気体前駆体を封じ込めるに高い有用性を示す好適な生成物は、DPPCを83モル%、DPPE−PEG5,000MWを8モル%およびジパルミトイルホスファチジン酸を5モル%含有する。
【0101】
加うるに、混合系の製造で用いる化合物の例には、これらに限定するものでないが、ラウリルトリメチルアンモニウムブロマイド(ドデシル−)、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(ヘキサデシル−)、ミリスチルトリメチルアンモニウムブロマイド(テトラデシル−)、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(アルキル=C12、C14、C16)、ベンジルジメチルドデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、ベンジルジメチルヘキサデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムブロマイド/クロライド、セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド/クロライドまたはセチルピリジニウムブロマイド/クロライドが含まれる。同様にペンタフルオロオクタデシルヨージド、パーフルオロオクチルブロマイド(PFOB)、パーフルオロデカリン、パーフルオロドデカリン、パーフルオロオクチルヨージド、パーフルオロトリプロピルアミンおよびパーフルオロトリブチルアミンなどの如きパーフルオロカーボン類。米国特許第4,865,836号の如き従来技術でよく知られているように、このパーフルオロカーボン類をリポソームの中に捕捉させるか或はエマルジョン中に安定化させることができる。上記脂質懸濁液の例も同様に、この懸濁液のサイズをあまり変化させることなくオートクレーブで滅菌可能である。
【0102】
望まれるならば、アニオンまたはカチオン薬物に結合させる目的でアニオンまたはカチオン脂質を用いてもよい。該気体前駆体充填微小球の中か或は表面においてDNAおよびRNA類似物に結合させる目的でカチオン脂質を用いることができる。多様な脂質、例えばDOTMA、即ちN−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、DOTAP、即ち1,2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン、およびDOTB、即ち1,2−ジオレオイル−3−(4’−トリメチル−アンモニオ)ブタノイル−sn−グリセロールを用いることができる。一般的には、このリポソームにおけるカチオン脂質と非カチオン脂質のモル比を例えば1:1000、1:100、好適には2:1から1:10、より好適には1:1から1:2.5の範囲、最も好適には1:1にしてもよい(非カチオン脂質、例えばDPPCのモル量に対するカチオン脂質のモル量の比率)。この微小球の構成でカチオン脂質を用いる場合、この非カチオン脂質には幅広く多様な脂質が含まれ得る。好適には、この非カチオン脂質をジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミンまたはジオレオイルホスファチジルエタノールアミンにする。上述した如きカチオン脂質の代わりに、脂質を含有しているカチオンポリマー類、例えばポリリジンまたはポリアルギニンなどを用いることでもまたこの微小球を構成させることができ、これらは、負に帯電した治療薬、例えば遺伝材料を該微小球の外側に結合させ得る。加うるに、負に帯電した脂質を用いてこれを例えば正に帯電した治療用化合物に結合させることができる。負に帯電した脂質であるホスファチジン酸を用いてDNAとの複合体を形成させることも可能である。このことは非常に驚くべきことである、と言うのは、遺伝材料を
リポソームに結合させるには一般に正に帯電した脂質を用いる必要があると今まで考えられていたからである。このリポソームの中にホスファチジン酸を5から10モル%入れると、該気体前駆体充填リポソームの安定性とサイズ分布が改良される。
【0103】
本発明の精神に一致した、当該技術分野の技術者に明らかな他の有用な脂質またはそれらの組み合わせもまた、本発明に包含される。例えば、米国特許第4,310,505号(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている如き炭水化物含有脂質をインビボ標的で用いることができる。
【0104】
最も好適な脂質はリン脂質であり、好適にはDPPCおよびDSPC、最も好適にはDPPCである。
【0105】
気体前駆体充填微小球の生成で使用できる飽和および不飽和脂肪酸には、好適には、これらに限定するものでないが、12個から22個の範囲の炭素原子を有する線状もしくは分枝形態の分子が含まれる。使用できる飽和脂肪酸の例には、これらに限定するものでないが、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸が含まれる。使用できる不飽和脂肪酸の例には、これらに限定するものでないが、ラウロレイン酸、フィセテリン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、ペトロセリン酸およびオレイン酸が含まれる。使用できる分枝脂肪酸の例には、これらに限定するものでないが、イソラウリン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸およびイソプレノイド類が含まれる。
【0106】
該気体前駆体を取り巻く脂質層の中にカチオンポリマーをつなぎ止める働きをする1個以上のアルキル基またはステロール基を通して、カチオンポリマー類を該脂質層に結合させることができる。この様式で使用できるカチオンポリマーには、これらに限定するものでないが、ポリリジンおよびポリアルギニン、そしてそれらの類似物、例えばポリホモアルギニンまたはポリホモリジンなどが含まれる。例えば、カチオン脂質およびカチオンポリマー類、またはカチオン基を有するパーフルオロアルキル化基が有する正に帯電した基を用いて、負に帯電した分子、例えば遺伝材料上の糖ホスフェート類などとの複合体を形成させることで、この材料を該気体前駆体充填脂質球の表面に結合させてもよい。例えば、GarelliおよびVierling、Biochim.Biophys Acta、1992、1127、41−48(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている如き両親媒性パーフルオロアルキル化ビピリジン類のカチオン類似物を用いることができる。また、例えば、エステル、アミド、エーテル、ジスルフィドまたはチオエステル結合を通して、負に帯電した分子を該脂質のヘッド基に直接結合させてもよい。
【0107】
ペプチド類または蛋白質などの如き生活性材料を該脂質層の中に組み込んでもよいが、但し該脂質層に結合させるには、このペプチド類が充分な親油性を有するか或はアルキルまたはステロール基で誘導化可能であることを条件とする。例えば上述した如きカチオン脂質またはポリマー類を用いて、負に帯電したペプチド類を付着させることができる。
【0108】
この温度で活性化される気体前駆体充填微小球の調合では、該気体前駆体と一緒に1種以上の乳化剤または安定剤を含めることができる。この乳化剤/安定剤を用いる目的は2要素部分から成る。1番目として、上記薬物は該気体前駆体充填微小球の大きさを維持するに役立つ。上述したように、この微小球の大きさは一般にその結果として生じる気体充填微小球の大きさに影響を与えることになる。2番目として、この乳化剤および安定剤を用いて、該前駆体から生じる微小球を被覆または安定化させることができる。インビボにおけるコントラスト効果を最大限にするには、コントラスト剤が入っている微小球の安定化を行うのが望ましい。この微小球の安定化を行うのが好ましいが、これは絶対的な要求
でない。この気体前駆体を用いる結果として得られる気体充填微小球は空気より安定なことから、有効なコントラスト増強を与えるようにこれらを更に設計することができ、例えばこれらは、1種以上の被覆材または乳化剤で特に安定化しなくても、末梢静脈注入後、肺循環の中を通り抜ける。しかしながら、柔軟性のある安定化用材料のような被覆材または安定剤を1種以上用いるのが好適である。多糖類、ガングリオシド類およびポリマー類で安定化された気体微小球は、アルブミンおよび他の蛋白質で安定化されたものよりも有効である。脂肪族化合物を用いて製造したリポソームが好適である、と言うのは、このような化合物で安定化された微小球の方がずっと高い柔軟性を示すと共に圧力変化に対して安定であるからである。
【0109】
例えば、幅広く多様な粘度改質剤を添加することで、脂質または気体前駆体充填リポソームが入っている溶液を安定にすることができ、粘度改質剤には、これらに限定するものでないが、炭水化物およびそれらのホスホリル化誘導体およびスルホン化誘導体、ポリエーテル類(好適には400から8000の範囲の分子量を有する)、ジ−およびトリヒドロキシアルカン類およびそれらのポリマー類(好適には800から8000の範囲の分子量を有する)などが含まれる。本発明における安定剤としてグリセロールプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールもまた有用である。この気体前駆体を安定にする中心または核の調合では、多孔質または半固体粒子、例えばヒドロキシアパタイト、金属酸化物およびゲル共沈物、例えばヒアルロン酸とカルシウムの共沈物などを用いることができる。
【0110】
脂質またはリポソームと一緒にまた乳化剤および/または可溶化剤を用いることができる。上記薬物には、これらに限定するものでないが、アラビアゴム、コレステロール、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、ラノリンアルコール類、レシチン、モノ−およびジ−グリセリド類、モノ−エタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル10オレイルエーテル、ポリオキシル20セトステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、二酢酸プロピレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミンおよび乳化用ワックスなどが含まれる。植物または動物源の脂質で見いだされる飽和もしくは不飽和炭化水素脂肪酸の代わりに、パーフルオロ脂肪酸を有する全ての脂質をこの脂質の成分として用いることができる。脂質またはリポソーム溶液と一緒に用いることができる懸濁剤および/または粘度上昇剤には、これらに限定するものでないが、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、マグマ、カルボマー934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウムおよびナトリウムおよびナトリウム12、グリセロール、カラゲナン、セルロース、デキストリン、ゼラチン、グアーゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、二酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントおよびキサンタンゴムなどが含まれる。本発明の好適な生成物では、標準食塩水:グリセロール:プロピレングリコールの比率が8:1:1または9:1:1である混合溶媒系の中に脂質を混合する。
【0111】
本発明の気体前駆体充填リポソームを好適には不透過性材料で構成させる。典型的な貯蔵条件下で該リポソームの内容物を実質的量で通過させない材料であるとして、不透過性材料を定義する。実質的量を、その内容物の約50%以上であるとして定義し、この内容物は、該気体に加えて該リポソームの内側にカプセル封じされる他の何らかの成分、例えば治療薬などである。貯蔵中および患者に投与する前に放出される気体の量を好適には約
25%のみにし、より好適にはその放出される気体の量を約10%のみにし、最も好適にはその放出される気体の量を約1%のみにする。
【0112】
この気体前駆体充填リポソーム類が示す気体不透過性は、少なくとも部分的に、ゲル状態から液晶状態に相転移する温度に関係することを見い出した。一般的には、一定温度において、ゲル状態から液晶状態に相転移する温度が高ければ高いほどそのリポソームは高い気体不透過性を示すと考えられる。飽和ジアシル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン類の主鎖溶融転移に関しては上の表IおよびDerek Marsh「CRC Hnadbook of Lipid Bilayers」(CRC Press、Boca Raton、FL 1990)の139頁を参照のこと。しかしながら、脂質で構成させた気体前駆体充填リポソームから治療用化合物を放出させる場合、一般的には、ゲル状態から液晶状態に相転移する温度が低い脂質を用いた方がその放出で使用されるエネルギーの度合が小さくなり得る点を注目すべきである。
【0113】
好適な特定の態様では、この脂質の相転移温度を、これを投与する患者の体内温度よりも高くする。例えば、人に投与する場合、約37℃以上の相転移温度を有する脂質を用いるのが好適である。一般的には、ゲルから液体に相転移する温度が約20℃以上である微小球が適当であり、約37℃以上の相転移温度を有する微小球が好適である。
【0114】
好適な態様では、本発明の方法で製造したリポソーム類は安定であり、ここでは、これを生じさせた時から超音波をかけるまで崩壊に耐えるとして安定を定義する。この微小球の構成で用いる脂質は安定性に関して選択可能である。例えば、DSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)で構成させた気体前駆体充填リポソーム類は、DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)で構成させた気体前駆体充填リポソーム類より高い安定性を示し、この後者は逆に、卵ホスファチジルコリン(EPC)で構成させた気体前駆体充填リポソームより高い安定性を示す。このリポソーム類を生じさせた時から超音波をかけるまでに崩壊するリポソームの量を好適には約50%のみにし、より好適には崩壊するリポソームの量を約25%のみにし、更により好適にはそのリポソームの量を約10%のみにし、最も好適にはそのリポソームの量を約1%のみにする。
【0115】
本主題リポソーム類は、公知手順、例えば加圧技術または他の技術で製造された他の気体充填リポソーム類よりも高い気体不透過性および貯蔵安定性を示す傾向がある。例えば、通常に製造されたリポソームは、これを生じさせた後72時間の時点でしばしば本質的に気体を含んでおらず、そのリポソームから気体が拡散しており、そして/またはそのリポソームは崩壊および/または融合しており、その結果として付随的に反射率が失われていた。比較として、水溶液の中に保持した本発明の気体前駆体充填リポソームは、一般に、約3週間以上の貯蔵寿命安定性を示し、好適には約4週間以上の貯蔵寿命安定性を示し、より好適には約5週間以上の貯蔵寿命安定性を示し、更に好適には約3カ月以上の貯蔵寿命安定性を示し、そしてしばしば更にずっと長い、例えば6カ月、12カ月または2年にさえ及ぶ貯蔵寿命安定性を示す。
【0116】
加うるに、ポリエチレングリコールのポリマー類に共有結合させた脂質(PEG化脂質と通常呼ぶ)を用いて本発明の気体前駆体充填リポソームを安定にすることができることを見出した。また、凝集で破裂する傾向を示さないリポソームを得るには、必ずしも必要ではないが、リポソーム膜いずれかの中に負に帯電した脂質を少なくとも少量組み込むのが有利であることも見出した。「少なくとも少量」は、全脂質の約1から約10モルパーセントを意味する。負に帯電した適切な脂質または正味の負電荷を有する脂質は、当該技術分野の技術者に容易に明らかになると思われ、これには、例えばホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸および脂肪酸などが含まれる。ジパルミトイルホスファチジルコリンから製造したリポソームが最も好適である、と言うのは、
これらは送達中に安定であることに加えて、共振周波数の超音波、無線周波数のエネルギー(例えばマイクロ波)および/またはエコー源性をかけると破裂し得ることでこれらを選択したからである。
【0117】
更に、本発明のリポソームを好適には血管系において再循環に耐えるに充分なほど安定にする。網内細胞系による吸収が最小限になるようにこの気体前駆体充填リポソームを被覆してもよい。有用な被覆材には、例えばガングリオシド類、グルクロニド、ガラクツロネート、グルロネート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストラン、澱粉、ホスホリル化およびスルホン化モノ、ジ、トリ、オリゴおよびポリサッカライド類およびアルブミンなどが含まれる。免疫系による認識を避けるなどの如き目的でこのリポソームを被覆してもよい。
【0118】
また、この使用する脂質を好適には柔軟にする。気体前駆体充填リポソームに関連して定義する如き柔軟は、例えばこのリポソームより小さいサイズを有する開口部を通り抜けるように構造物がその形状を変える能力を有することである。
【0119】
このリポソームの循環半減期が充分に長いことを条件として、このリポソームは一般に体の中を通りながらその標的組織を通り抜ける。従って、処置すべく選択した組織上に音波の焦点を合わせると、その標的組織内でその治療薬が局所的に放出される。標的に向かわせるさらなる補助として、このリポソームの表面に抗体、炭水化物、ペプチド類、グリコペプチド類、糖脂質、レクチン類、並びに合成および天然ポリマー類を組み込むことも可能である。標的に向かわせる他の補助にはポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールなどの如きポリマー類が含まれ、これらは、アルキル化またはアシル化によるか、或はジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)またはジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などの如きリン脂質が有するステロール基または誘導化ヘッド基を通してその表面に組み込み可能である。また、この気体前駆体脂質球の表面にペプチド類、抗体、レクチン類、糖ペプチド類、オリゴヌクレオチド類および糖接合体を組み込むことも可能である。
【0120】
好適な特定態様では、この気体前駆体注入方法の補助として、並びにこの気体前駆体充填リポソームの安定性を維持する目的で、例えば乳化剤を該脂質に添加してもよい。乳化剤の例には、これらに限定するものでないが、グリセロール、セチルアルコール、ソルビトール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、エチルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、Laureth 23、ポリソルベート類(全ユニット)、全ての飽和および不飽和脂肪酸、トリエタノールアミン、トゥイーン(Tween)20、トゥイーン40、トゥイーン60、トゥイーン80、ポリソルベート20、ポリソルビトール40、ポリソルベート60およびポリソルベート80などが含まれる。
【0121】
使用前の貯蔵では、水溶液、例えば食塩水溶液(例えば燐酸塩緩衝水溶液)または単純に水の中に本発明のリポソームを懸濁させて、好ましくは約2℃から約10℃、好適には約4℃の温度で貯蔵してもよい。好適にはこの水は無菌水である。
【0122】
典型的な貯蔵条件は、例えばNaClが0.9%入っている未脱気水溶液を用いて4℃で48時間保持する条件である。この貯蔵温度を、好適には、このリポソームを形成させる材料がゲル状態から液晶状態に相転移する温度より低くする。
【0123】
最も好適には、このリポソームを等張性食塩水溶液中に貯蔵するが、望まれるならばこの食塩水溶液は低張性であってもよい(例えば約0.3から約0.5%のNaCl)。ま
た、望まれるならば、この溶液に緩衝剤を入れてpHの範囲を約pH5から約pH7.4にしてもよい。適切な緩衝剤には、これらに限定するものでないが、酢酸塩、クエン酸塩、燐酸塩、重炭酸塩および燐酸塩緩衝食塩水、5%デキストロースおよび生理学的食塩水(標準食塩水)が含まれる。
【0124】
また、貯蔵時の細菌による劣化を防止する目的で、このリポソーム類と一緒に静菌剤を含有させてもよい。適切な静菌剤には、これらに限定するものでないが、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、安息香酸、ベンジルアルコール、ブチルパラベン、セチルピリジニウムクロライド、クロロブタノール、クロロクレゾール、メチルパラベン、フェノール、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウムおよびソルビン酸などが含まれる。
【0125】
本明細書で用いる如き「気体充填」は、気体が少なくとも約10%、好適には気体が少なくとも約25%、より好適には気体が少なくとも約50%、更により好適には気体が少なくとも約75%、最も好適には気体が少なくとも約90%である内部容積を有するリポソームを意味する。本開示を一度身に付けた当該技術分野の技術者は、気体前駆体を取り扱った後活性化させることで気体を生じさせることも可能であることを理解するであろう。
【0126】
本発明の気体充填リポソームでは生適合性を示す多様な気体を用いることができる。このような気体には、空気、窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴン、フッ素、キセノン、ネオン、ヘリウムおよびそれらの組み合わせいずれかおよび全部が含まれる。本開示を一度身に付けた当該技術分野の技術者に他の適切な気体が明らかになるであろう。本明細書に開示する気体前駆体に加えて他の気体も一緒にこの前駆体に共捕捉させることができる。例えば、周囲の気体(例えば空気)が入っている密封環境内で該気体前駆体が気体に転移している間、この2つの気体は混ざり合う可能性があり、そして撹拌を行って微小球を形成させた時点で生じる微小球の気体状内容物は、その混ざり合った気体の密度に依存して、2種以上の気体から成る混合物になる。
【0127】
本発明のリポソームのサイズはその意図した使用に依存することになる。一般的には、より小さいリポソームを用いる時には、より大きなリポソームの場合よりも、超音波の共振周波数を高くする。大きさ合わせもまた、結果として生じるリポソームの生分布およびクリアランスを調整する働きをする。濾過に加えて、望まれるならば、当該技術分野の技術者に知られている手順、例えば押出し、音波処理、均質化、液体コアを不混和性液体殻内に導入する層状流れを使用することなどで、このリポソームのサイズを調整することができる。例えば米国特許第4,728,578号、英国特許出願公開第2193095号、米国特許第4,728,575号、米国特許第4,737,323号、国際出願PCT/US85/01161、Mayer他、Biochimica et Biophysica Acta 1986、858、161−168、Hope他、Biochimica et Biophysica Acta 1985、812、55−65、米国特許第4,533,254号、Mayhew他、Methods in Enzymology 1987、149、64−77、Mayhew他、Biochimica et Biophysica Acta 1984、755、169−74、Cheng他、Investigative Radiology 1987、22、47−55、PCT/US89/05040、米国特許第4,162,282号、米国特許第4,310,505号、米国特許第4,921,706号およびLiposomes Technology、Gregoriadis,G.編集、I巻、29−37、51−67および79−108頁(CRC Press Inc.Boca Raton、FL、1984)参照。上記特許、出版物および特許出願各々の開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる。明確なサイズを有する孔を通して加圧下で押出すのが、このリポソーム
のサイズを調整する好適な方法である。
【0128】
リポソームのサイズが生分布に影響を与えることから、いろいろなサイズのリポソームを種々の目的で選択することができる。例えば、脈管内用途に好適なサイズ範囲は、約30ナノメートルから約10ミクロンの範囲の平均外側直径であり、好ましい平均外側直径は約5ミクロンである。
【0129】
より具体的には、脈管内用途では、好ましくはこのリポソームのサイズを平均外側直径で約10μmまたはそれ以下にし、好適には約7μmまたはそれ以下にし、より好適には平均外側直径で約5ナノメートルほどにする。好適には、このリポソームを平均外側直径で約30ナノメートルほどにする。
【0130】
肝臓の如き器官に治療薬を送達しそして正常な細胞と腫瘍とを区別することを可能にするには、平均外側直径で約30ナノメートルから約100ナノメートルの範囲の小さいリポソームが好適である。
【0131】
腎臓または肺などの如き組織の塞栓形成では、このリポソームを好適には平均外側直径で約200ミクロン以下にする。
【0132】
鼻内、直腸内または局所投与では、この微小球を平均外側直径で好適には約100ミクロン以下にする。
【0133】
大型のリポソーム、例えば大きさが1から10ミクロンのリポソームは、一般に、血管の内側に存在している食細胞要素、例えば毛細洞様血管内に存在しているマクロファージおよびクッパー細胞などによって取り除かれるまで脈管内の空間に閉じ込められるであろう。この洞様血管を越えさせて細胞に到達させる場合、例えば平均外側直径が約1ミクロン以下の小型リポソーム、例えば大きさが約300ナノメートル以下のリポソームを用いることができる。
【0134】
このリポソームを投与するルートはその意図した使用に応じて変化することになる。当該技術分野の技術者が理解するであろうように、本発明の治療薬送達系の投与は種々の様式で実施可能であり、例えば種々の投薬形態を用いた脈管内投与、リンパ内投与、非経口投与、皮下投与、筋肉内投与、鼻内投与、直腸内投与、腹こう内投与、間隙投与、噴霧器による気道への投与、高比重投与、経口投与、局所投与または腫瘍内投与などで実施可能である。1つの好適な投与ルートは脈管内投与である。脈管内使用では、一般に、この治療薬送達系を静脈内に注入するが、同様に動脈内注入も可能である。本発明のリポソームはまた間隙に注入可能であるか或は体の空洞いずれかに注入可能である。
【0135】
超音波エネルギーの透過にとって良好な音響ウインドーを有する組織の場合、本発明のリポソームを用いた治療薬の送達は、超音波を用いると最良に達成される。体内組織の大部分、例えば筋肉、心臓、肝臓および他の大部分の生体構造物がその事例である。脳の場合、頭蓋を通して超音波エネルギーを向けるには、外科ウインドーが必要になり得る。音響ウインドーを持たない体部分、例えば骨を通過させる場合などでは、無線周波数またはマイクロ波エネルギーを用いるのが好適である。
【0136】
更に、本発明は特に治療薬を患者の肺に送達するに有用である。本発明の気体前駆体充填リポソームは、例えば通常の液体充填リポソーム(これらは一般に肺の末梢に到達するのではなく近位の中心気道内に付着する)よりも軽い。従って、本発明の気体前駆体充填リポソームを用いると治療用化合物の肺末梢(末端気道および肺胞を含む)への送達が改良され得ると考えている。肺への投与では、例えば噴霧を通してこの気体前駆体充填リポ
ソームを投与することができる。
【0137】
噴霧器の中に、空気を捕捉させたリポソーム(脂質=83%DPPC/8%DPPE−PEG5,000/5%DPPA)を2cc入れて噴霧した。噴霧後に生じるリポソームの大きさは約1から2ミクロンであり、空気中を浮遊することが分かった。薬物、ペプチド類、遺伝材料および他の治療用化合物を肺のずっと奥に到達させる(即ち末端気道および肺胞)には、このような大きさを有する粒子が理想的であると思われる。この気体充填リポソームは空気とほとんど同じほど軽いことから、通常の水充填リポソームよりもずっと軽く、これらは空気中をより長く浮遊し、このようにして、化合物を遠方の肺まで送達するにとってより良好である。DNAをこのリポソームに付加させる場合、これは容易にこのリポソームに吸着されるか或は結合する。従って、気体または気体前駆体で満たしたリポソームおよび微小球は肺用薬物の送達で幅広い可能性を有する。
【0138】
肺(脂質が内側に存在している)を標的とする如き用途では、この気体前駆体充填リポソームがその標的組織の内側に存在している脂質と一緒に凝集する時点で、その治療薬が放出され得る。更に、この気体前駆体充填リポソームは、超音波を用いなくても、投与後破裂し得る。従って、上に示した種類の投与の場合、その薬物の放出で超音波をかける必要はない。
【0139】
更に、本発明の気体前駆体充填リポソームは、水系媒体内で分解するか或は酸素および/または大気の空気にさらされた時点で分解し得る治療薬用で用いるに特に有用である。例えば、不安定な治療用化合物と一緒に用いる場合、窒素またはアルゴンなどの如き不活性ガスをこのリポソームに充填してもよい。更に、この気体前駆体充填リポソームを不活性ガスで満たし、そしてこれを用いて、治療薬が大気の空気に通常さらされる患者の領域内で用いるための不安定な治療薬をカプセル封じすることができ、例えば皮膚および眼の用途で用いることができる。
【0140】
この気体前駆体充填リポソームはまた経皮送達、例えばパッチ送達系などで用いるにも特に有用である。破裂をもたらす超音波を用いることで治療用化合物の経皮送達を高めることができる。更に、薬物送達を監視および調節する機構を用いることができる。例えば、診断用超音波を用いてこの気体前駆体充填リポソームの破裂を眼で監視して薬物送達を調節することができ、そして/または水中聴音機を用いてこの気体前駆体充填リポソームの破裂音を検出して薬物送達を調節することができる。
【0141】
好適な態様では、徐放の目的でポリマーマトリックスの中に埋め込むのとは対照的に、この気体充填リポソームを個々の粒子としてビヒクルで投与する。
【0142】
インビトロ使用、例えば細胞培養用途などでは、この気体前駆体充填リポソームを培養物内の細胞に添加した後、インキュベートしてもよい。その後、この細胞とリポソームが入っている培養媒体に音波エネルギー、マイクロ波または熱エネルギー(例えば簡単に加熱すること)をかけることができる。
【0143】
一般的には、懸濁液の形態、例えば水または食塩水溶液(例えば燐酸塩緩衝食塩水)などの中に入れて本発明の治療薬送達系を投与する。好適には、この水は無菌水である。また好適には、この食塩水溶液は等張性食塩水溶液であるが、望まれるならばこの食塩水溶液は低張性食塩水であってもよい(例えば約0.3から約0.5%のNaCl)。また、望まれるならば、この溶液に緩衝剤を加えることでpHの範囲をpH約5からpH約7.4にしてもよい。加うるに、好適にはこの媒体にデキストロースを含有させてもよい。気体前駆体充填リポソームの投与で使用できるさらなる溶液には、これらに限定するものでないが、アーモンド油、コーン油、綿実油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピ
ル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、オリーブ油、ピーナッツ油、桃仁油、ゴマ油、大豆油、スクアレン、オレイン酸ミリスチル、オレイン酸セチル、パルミチン酸ミリスチルに加えて、アルキル鎖脂肪酸(C=2−22)にエステル化した他の飽和および不飽和アルキル鎖アルコール類(C=2−22)が含まれる。
【0144】
この気体前駆体充填微小球を投与するに有効な投薬量および投与様式は、年令、体重、その処置すべき哺乳動物、および意図した個々の用途(治療/診断)に応じて変化することになる。典型的には、低いレベルで投薬を開始して所望の治療効果が達成されるまでその量を高めて行く。 超音波画像形成で用いる場合、本発明のリポソームに、好適には2dB以上、より好適には約4dBから約20dBの範囲の反射率を持たせる。このような範囲内にすると、リポソームを大きくすればするほど、リポソームの濃度を高くすればするほど、そして/または用いる超音波周波数を高くすればするほど、本発明のリポソームが示す反射率が最大になる。
【0145】
治療薬の送達では、このリポソームを治療が望まれている患者の領域に投与した後か或はこれがその領域に到達した後、この領域に特定の周波数を有する超音波をかけると、本発明の治療薬含有リポソームの破裂が驚くべきほど容易に生じる。具体的には、予想外に、この治療薬が入っている気体前駆体充填リポソームはこれが示すピーク共振周波数に相当する周波数で超音波をかけると破裂してその内容物を放出することを見い出した。
【0146】
このピーク共振周波数は、インビボまたはインビトロどちらかで測定可能であるが、好適には、通常手段を用いてインビボでリポソームを超音波に暴露し、反射する共振周波数シグナルを受信しそしてその受信したシグナルのスペクトルを解析してそのピークを決定することで測定可能である。このようにして測定したピークがピーク共振周波数(または第二高調波、時にはこの言葉が用いられる)に相当する。
【0147】
好適には、本発明のリポソームは約0.5mHzから約10mHzの範囲のピーク共振周波数を有する。勿論、本発明の気体前駆体充填リポソームのピーク共振周波数は外側直径に応じて変化し、そしてある度合で、このリポソームが示す弾性または柔軟性に応じて変化し、小型のリポソームよりも、そして低い弾性もしくは柔軟性を示すリポソームよりも、大型のリポソームそしてより高い弾性もしくは柔軟性を示すリポソームの方が低い共振周波数を有する。
【0148】
この治療薬が入っている気体前駆体充填リポソームはまた、より高い強度(ワット数)および存続期間(時間)と組み合わせてピークでない共振周波数の超音波に暴露させた時でも破裂する。しかしながら、このような高いエネルギーを用いると非常に高い加熱がもたらされ、これは望ましくない可能性がある。このエネルギーの周波数をピーク共振周波数に調整すると、その破裂および治療薬放出の効率が改良され、一般的には組織の加熱があまり起こらなくなり(しばしば温度上昇が約2℃を越えなくなる)、必要とされる全エネルギーが小さくなる。従って、必ずしも必要ではないが、ピーク共振周波数で超音波をかけるのが最も好適である。
【0149】
診断または治療用超音波に関して、本発明の実施では、多様な種類の診断用超音波画像形成装置のいずれも使用可能であり、その装置の個々の種類またはモデルは本発明の方法にとって決定的でない。また、超音波高体温を実施する目的で設計された装置、例えば米国特許第4,620,546号、4,658,828号および4,586,512号(これらの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている装置も適切である。好適には、この装置では共振周波数(resonant frequency)(RF)スペクトル分析装置を用いる。変換器の探針を外側に取り付けるか或
は移植してもよい。一般的には、超音波をより低い強度で始めて短期間行った後、このリポソームが超音波で可視化される(診断用超音波用途の場合)か或は破裂する(治療用超音波用途の場合)まで、強度、時間および/または共振周波数を高めて行く。
【0150】
本開示を一度身に付けた当該技術分野の技術者に、平均外側直径が約1.5から約10ミクロンの気体前駆体充填リポソームに関する一般的指針として種々の原理の適用が容易に明らかになったと思われるが、一般的には、この共振周波数を約1から約10メガヘルツの範囲にする。標的組織(例えば腫瘍など)の中心に来るように焦点ゾーンを調整することにより、この気体前駆体充填リポソームをその標的組織内に蓄積させながらこれらをリアルタイムの超音波下で可視化することができる。例として7.5メガヘルツのカーブドアレイ変換器(curved array transducer)を用いて、この変換器に送られて来るパワーが最大限になるように調整しそしてその標的組織内の焦点ゾーンを調整することで、空間ピーク時間平均(spatial peak temporal average)(SPTA)パワーを水中の最大値である約5.31mW/cmにする。このようなパワーを用いると、この気体前駆体充填リポソームから治療薬がいくらか放出されるが、使用するパワーが高くなればなるほど達成される放出が益々大きくなり得る。
【0151】
この変換器をドップラーモードに切り替えると、より高いパワーアウトプットを得ることができ、同じ変換器から1cm当たり2.5ワットに及ぶパワーアウトプットを得ることができる。この機械をドップラーモードで運転しながら、そのパワーを標的組織内の選択した焦点ゾーンに送って該気体前駆体充填リポソームからそこに入っている治療薬を放出させることができる。この気体前駆体充填リポソームの共振周波数に適合させるように変換器を選択すると、このような治療薬放出過程の効率が更に高まる。
【0152】
より大きな直径を有する気体前駆体充填リポソーム、例えば平均外側直径が3ミクロン以上であるリポソームの場合、変換器の周波数を低くすればするほど達成される治療薬放出の効率が高くなり得る。例えば、この気体前駆体充填リポソームの共振周波数に相当するように3.5メガヘルツの低周波数変換器(20mmのカーブドアレイモデル)を選択してもよい。この変換器を用いることで、1cm当たり101.6ミリワットをその焦点スポットに送ることができ、そしてドップラーモードに切り替えると、パワーアウトプット(SPTA)が1cm当たり1.02ワットにまで高まる。
【0153】
この気体前駆体充填リポソーム内の薬物/プロドラッグを放出および/または活性化させる空洞現象を用いると、より低い周波数のエネルギーを用いることができる、と言うのは、周波数が低ければ低いほど空洞現象がより効率良く生じるからである。より高い電圧(300ボルトの如き高い電圧)で駆動する0.757メガヘルツの変換器を用いると、約5.2気圧の閾値で気体前駆体充填リポソーム溶液の空洞現象が起こる。
【0154】
表IIIに、通常に用いられる装置、例えばレシーバーパルサー1966モデル661が備わっているPiconics Inc.(Tyngsboro、MA)製のPortascan一般目的スキャナー、80Cシステムが備わっているPicker(Cleveland、OH)製のEchoview 8Lスキャナー、またはMedisonics(Mountain View、CA)製のモデルD−9 Versatone Bidirectional Dopplerなどを用いた時に診断用超音波で組織に伝達されるエネルギーの範囲を示す。診断および気体充填リポソームの監視では、一般に、上記範囲のエネルギーをパルス繰り返しで用いることで有効であるが、この範囲は、本発明の気体充填リポソームを破裂させるには不充分である。
【0155】
【表3】

【0156】
この治療薬が入っている気体前駆体充填リポソームの活性化では、より高いエネルギーを有する超音波、例えば治療用超音波装置で通常用いられる超音波などが好適である。治療用超音波機では、一般に、超音波で加熱すべき組織の領域に応じて50%から100%の如き高い衝撃周波を用いる。筋肉マスがより多い量で含まれている領域(即ち背中、大腿部)および高度に血管化した組織、例えば心臓などの場合、より高い衝撃周波、例えば100%の衝撃周波を用いる必要がある。
【0157】
診断用超音波の場合、1パルスまたは数パルスの音を用い、そしてパルス間で機械を休止してその反射して来る音波シグナルを受信させる。診断用超音波で用いるパルス数を制限することで、その画像化する組織に送られる有効エネルギーを制限する。
【0158】
治療用超音波の場合、送り込むエネルギーレベルをより高くするように、連続波で超音波を用いる。本発明のリポソームを用いる場合、この音エネルギーをパルス化してもよいが、連続波の超音波が好適である。パルス化を用いる場合、好ましくは、一度に少なくとも約8パルス、好適には少なくとも約20パルスのエコートレイン(echo train)長で音をパルス化する。
【0159】
周波数を固定するか或は周波数を調節して超音波を用いることができる。音波の周波数が経時的に一定であるとして固定周波数を定義する。周波数を調節することは、波の周波数を経時的に例えば高から低(PRICH)または低から高(CHIRP)に変化させることである。例えば、PRICHパルスでは、パワーを1から5ワットに高めることで、最初10MHzの音波エネルギーを有する初期周波数を1MHzに進める。高エネルギーの超音波を用い、焦点を当てて周波数を調節することにより、該リポソーム内の気体膨張率を局所的に高めて破裂させることで、治療薬を局所的に送達することができる。
【0160】
使用する音の周波数を約0.025から約100メガヘルツで変化させることができる。約0.75から約3メガヘルツの周波数範囲が好適であり、約1から約2メガヘルツの範囲の周波数が最も好適である。通常に用いられる治療用周波数である約0.75から約1.5メガヘルツを用いることができる。また、通常に用いられる診断用周波数である約3から約7.5メガヘルツを用いることができる。非常に小さいリポソームの場合、例えば平均外側直径が0.5ミクロン以下のリポソームの場合、このような小さいリポソームは音の周波数が高くなればなるほど音波エネルギーを有効に吸収することから、より高い
周波数の音を用いるのが好適である。非常に高い周波数を用いると、例えば10メガヘルツ以上の周波数を用いると、その音波エネルギーが流体および組織の中に浸透する深さが一般に制限される。皮膚および他の表面組織では音波エネルギーを外部からかけるのが好適であり得るが、深い所に存在する構造物の場合、間隙探針または筋肉内超音波カテーテルを通して音波エネルギーをかけるのが好適であり得る。
【0161】
この気体前駆体充填リポソームを治療薬の送達で用いる場合、その送達すべき治療用化合物を、所望に応じて、このリポソームの壁の中に埋め込み、このリポソーム内にカプセル封じさせ、そして/またはこのリポソームに付着させてもよい。この治療用化合物の位置に関連して本明細書で用いる如き用語「に付着させる」またはそれの変形は、ある様式で、例えば共有結合またはイオン結合によるか或は他の化学的または電気化学的連結または相互作用手段によってこの微小球の内側および/または外側壁にその治療用化合物を連結させることを意味する。この治療用化合物の位置に関連して用いる如き用語「カプセル封じ」またはそれの変形は、微小球の内側空隙の中にその治療用化合物を位置させることを表す。この治療用化合物の位置に関連して用いる如き用語「中に埋め込む」またはそれの変形は、この微小球の壁内にその治療用化合物を位置させることを表す。用語「治療薬を含む」は、この微小球に関連させていろいろな形で治療薬を位置させることの全てを意味する。従って、多様な様式で治療薬を位置させることができ、例えばこの気体前駆体充填微小球の内部空隙内に捕捉させること、この気体前駆体充填微小球の内側壁と気体前駆体の間に位置させること、この気体前駆体充填微小球の外側表面に組み込むこと、そして/またはこの微小球構造物自身内に巻き込ませることなどで位置させることができる。
【0162】
多様な治療薬のいずれもこのリポソーム内にカプセル封じすることができる。本明細書で用いる如き「治療薬」は、患者に有益な効果を与える薬物を意味する。本明細書で用いる如き用語「治療薬」は、用語「コントラスト剤」および/または「薬物」と同義語である。
【0163】
気体前駆体充填リポソームを用いて送達可能な薬物の例には、薬物送達の目的で決してこれらに限定するものでないが、ホルモン製品、例えばバソプレシンおよびオキシトシンおよびそれらの誘導体、グルカゴンなど、および乾燥甲状せん製剤、例えばヨウ素製品および抗甲状せん薬など、心臓血管用製品、例えばキレート剤および水銀利尿薬および心臓グリコシド類など、呼吸用製品、例えばキサンチン誘導体(テオフィリンおよびアミノフィリン)など、抗感染薬、例えばアミノグリコシド類、抗カビ剤(アンホテリシン)、ペニシリンおよびセファロスポリンなど、抗生物質、抗ウイルス剤、例えばジドブジン、リバビリン、アマンタジン、ビダラビン、およびアシクロビルなど、駆虫薬、抗マラリア薬および抗結核薬など、生物学剤、例えば免疫血清、抗毒素および抗ヘビ毒素、狂犬病予防品、細菌ワクチン、ウイルスワクチン、トキソイドなど、抗腫瘍薬、例えばニトロスレア(nitrosureas)、ナイトロジェンマスタードなど、代謝拮抗薬(フルオロウラシル)、ホルモン類、例えばプロゲスチンおよびエストロゲンおよび抗エストロゲンなど、抗生物質、例えばダクチノマイシンなど、有糸分裂阻害剤、例えばエトポシドおよびビンカアルカロイド類、放射性薬品、例えば放射性ヨウ素およびリン製品など、並びにインターフェロン、ヒドロキシ尿素、プロカルバジン、ダカルバジン、ミトタン、アスパラギナーゼおよびシクロスポリン類などが含まれ得る。
【0164】
遺伝材料および生活性材料は、この気体前駆体注入方法中に、このリポソームの気体前駆体で満たされている内部空間内に組み込み可能であるか、或はこの粒子の脂質膜内か或はその上に組み込み可能である。この粒子の表面に組み込むのが好適である。遺伝材料および生活性製品が高いオクタノール/水分配係数を有する場合、これらは、この気体前駆体を取り巻く脂質層の中に直接組み込み可能であるが、この気体前駆体充填脂質球の表面に組み込むのがより好適である。これを達成するには、一般に、遺伝材料または生活性材
料に結合し得る基をその脂質層の中に組み込み、これを後で上記材料に結合させる。遺伝材料(DNA、RNA、1本鎖および2本鎖両方のアンチセンスおよびセンスオリゴヌクレオチド類)の場合、この組み込みは、乾燥脂質出発材料内に組み込み可能なカチオン脂質またはカチオンポリマーを用いることで容易に達成される。
【0165】
気体充填リポソームおよび気体前駆体充填リポソームを、ホスファチジン酸、例えばジパルミトイルホスファチジン酸を5モル%のモル過剰量、好適には約10モル%のモル過剰量で用いて製造すると、これらが遺伝材料の非常に有効な結合剤として機能することを見出したことが、本発明の驚くべき発見である。このようなリポソームは非常に良好にDNAと結合する。このことは驚くべきことである、と言うのは、正に帯電したリポソームがDNAに結合させるに最も有効であると今まで認識されていたからである。DPPAを5モル%から10モル%用いたリポソームは、非常に有効に気体および気体前駆体を保持する構造物として機能する。ホスファチジン酸を組み込んだ組成物は、診断用超音波で高い強健度を示し、DNAに加えて他の薬物を運ばせるに有用である。
【0166】
虚血性組織および病気になった組織に蓄積させる場合、特定前駆体のナノ粒子、ミクロ粒子およびエマルジョンが特に有効であると考えられる。このような前駆体を用いると、虚血性組織および病気になった組織を超音波で検出することができると共にまた上記組織に薬物を送達させることができる。次に、気体前駆体を含むエマルジョンまたはナノ粒子を用いて薬物を共捕捉させることにより、上記薬物をその病気になった組織に送達させることができる。例えば、六フッ化硫黄、ヘキサフルオロプロピレン、ブロモクロロフルオロメタン、オクタフルオロプロパン、1,1ジクロロ,フルオロエタン、ヘキサフルオロエタン、ヘキサフルオロ−2−ブチン、パーフルオロペンタン、パーフルオロブタン、オクタフルオロ−2−ブテンまたはヘキサフルオロブタ−1,3−ジエンまたはオクタフルオロシクロペンテンが入っているエマルジョン(27℃)を用いて、心臓グリコシド類、脈管形成因子および血管作動性化合物などの如き薬物を心筋層の虚血性領域に送達させることができる。同様に、上記前駆体が入っているエマルジョンを用いることでまた、アンチセンスDNAまたは化学治療薬を腫瘍に送達させることができる。温度、pHおよび酸素張力が僅かに変化することが病気組織または虚血性組織が優先的に特定の前駆体を蓄積する一因であると考えられている。このような前駆体が送達用ビヒクルとしてか或は超音波薬物送達で使用可能である。
【0167】
適切な治療薬には、これらに限定するものでないが、常磁性ガス、例えば酸素17を痕跡量で含有させた大気の空気、常磁性イオン、例えばMn+2、Gd+2、Fe3など、酸化鉄または磁鉄鉱(Fe)など[これらは従って、磁気共鳴画像形成(MRI)で敏感性を示すコントラスト剤として使用可能である]、放射線不透過性金属イオン、例えばヨウ素、バリウム、臭素またはタングステンなど[x線用コントラスト剤として用いられる]、四極子核由来の気体[これらは磁気共鳴用コントラスト剤として用いられる可能性が有る]、抗腫瘍薬、例えば白金化合物(例えばスピロプラチン、シスプラチンおよびカルボプラチン)、メトトレキセート、フルオロウラシル、アドリアマイシン、タキソール、マイトマイシン、アンサマイトシン、ブレオマイシン、シトシンアラビノシド、アラビノシルアデニン、メルカプトポリリジン、ビンクリスチン、ブスルファン、クロラムブシル、メルファラン(例えばPAM、L−PAMまたはフェニルアラニンマスタード)、メルカプトプリン、ミトーテン、塩酸プロカルバジン、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、マイトマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、アミノグルテチミド、燐酸エストラムスチンナトリウム、フルタミド、酢酸ロイプロリド、酢酸メゲストール、クエン酸タモキシフェン、テストロラクトン、トリロスタン、アムサクリン(m−AMSA)、アスパラギナーゼ(L−アスパラギナーゼ)、Erwinaアスパラギナーゼ、エトポシド(VP−16)、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、テニポシド(VM−26)、硫酸ビンブラス
チン(VLB)、硫酸ビンクリスチン、ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、メトトレキセート、アドリアマイシンおよびアラビノシル、ヒドロキシ尿素、プロカルバジンおよびダカルバジンなど、有糸分裂阻害剤、例えばエトポシドおよびビンカアルカロイド類、放射性薬品、例えば放射線ヨウ素およびリン製品など、ホルモン類、例えばプロゲスチン類、エストロゲンおよびアンチエストロゲン類、駆虫薬、抗マラリア薬および抗結核薬、生物学剤、例えば免疫血清、抗毒素および抗ヘビ毒素、狂犬病予防品、細菌ワクチン、ウイルスワクチン、アミノグリコシド類、呼吸用製品、例えばキサンチン誘導体テオフィリンおよびアミノフィリンなど、乾燥甲状せん製剤、例えばヨウ素製品および抗甲状せん薬など、心臓血管用製品(キレート剤および水銀利尿薬および心臓グリコシド類を含む)、グルカゴン、血液製品、例えば非経口鉄、ヘミン、ヘマトポルフィリン類およびそれらの誘導体、生物学的応答修飾因子、例えばムラミルジペプチド、ムラミルトリペプチド、微生物細胞壁成分、リンフォカイン類(例えば細菌のエンドトキシン、例えばリポポリサッカライド、マクロファージ活性化因子など)、細菌のサブユニット(例えばミコバクテリア、コリネバクテリアなど)、合成ジペプチドであるN−アセチル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン、抗カビ剤、例えばケトコナゾール、ニスタチン、グリセオフルビン、フルシトシン(5−FC)、ミコナゾール、アンホテリシンB、リシン、シクロスポリン類およびβ−ラクタム抗生物質(例えばスルファゼシン)など、ホルモン類、例えば成長ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン、エストラジオール、二プロピオン酸ベクロメタゾン、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾンおよび燐酸ベタメタゾンナトリウム、燐酸ベタメタゾン二ナトリウム、燐酸ベタメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、燐酸デキサメタゾンナトリウム、フルンソリド、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、シクロペンタンプロピオン酸ヒドロコルチゾン、燐酸ヒドロコルチゾンナトリウム、こはく酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、こはく酸メチルプレドニゾロンナトリウム、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、燐酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾロンテルブテート(terbutate)、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンヘキサアセトニドおよび酢酸フルドロコルチゾン、オキシトシン、バソプレシンおよびそれらの誘導体など、ビタミン類、例えばシアノコバラミンネイノイックアシッド(neinoic acid)、レチノイド類および誘導体、例えばパルミチン酸レチノールおよびα−トコフェロールなど、ペプチド類、例えばマンガンスーパーオキシドジムターゼなど、酵素類、例えばアルカリ性ホスファターゼなど、抗アレルギー薬、例えばアメレキサノックスなど、抗凝血薬、例えばフェンプロクモンおよびヘパリンなど、循環薬、例えばプロプラノロールなど、代謝増強薬、例えばグルタチオンなど、抗結核薬、例えばパラアミノサリチル酸、イソニアジド、硫酸カプレオマイシンシクロセリン、塩酸エタムブトールエチオナミド、ピラジナミド、リファムピンおよび硫酸ストレプトマイシンなど、抗ウイルス薬、例えばアシクロビル(acyclovir)、アマンタジンアジドチミジン(AZTまたはジドブジン)、リバビリンおよびビダラビン一水化物(アデニンアラビノシド、アラ−A)など、抗狭心薬、例えばジルチアゼム、ニフェジピン、ベラパミル、四硝酸エリトリチル、二硝酸イソソルビド、ニトログリセリン(三硝酸グリセリル)および四硝酸ペンタエリスリトールなど、抗凝血薬、例えばフェンプロクモンおよびヘパリンなど、抗生物質、例えばダプソン、クロラムフェニコール、ネオマイシン、セファクロール、セファドロキシル、セファレキシン、セフラジン、エリスロマイシン、クリンダマイシン、リンコマイシン、アモキシシリン、アンピシリン、バカムピシリン、カルベニシリン、ジクロキサシリン、シクラシリン、ピクロキサシリン、ヘタシリン、メチシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリン(ペニシリンG、ペニシリンV、チカルシリンリファムピンおよびテトラシクリンを含む)など、抗炎症薬、例えばジフニサール、イブプロフェン、インドメタシン、メクロフェナメート、メフェナム酸、ナプロキセン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、ピロキシカム、スリンダック、トルメチン、アスピリンおよびサリチレート類など、抗原虫薬、例えばクロロキン、ヒドロキシクロロキン、メトロニダゾール、キニ
ンおよびアンチモン酸メグルミンなど、抗リューマチ薬、例えばペニシルアミンなど、麻酔薬、例えばアヘン安息香チンキなど、アヘン剤、例えばコデイン、ヘロイン、メタドン、モルフィネおよびアヘンなど、心臓グリコシド類、例えばデスラノシド、ジギトキシン、ジゴキシン、ジギタリンおよびジギタリスなど、神経筋遮断薬、例えばアトラクリウムベシレート、ガラミントリエチオジド、臭化ヘキサフルオレニウム、メトクリンヨージド、パンクロニウムブロマイド、スクシニルコリンクロライド(スキサメトニウムクロライド)、ツボクラリンクロライドおよびベクロニウムブロマイドなど、鎮静薬(催眠薬)、例えばアモバルビタール、アモバルビタールナトリウム、アプロバルビタール、ブタバルビタールナトリウム、クロラール水化物、エトクロルビノール、エチナメート、塩酸フルラゼパム、グルテチミド、塩酸メトトリメプラジン、メチプリロン、塩酸ミダゾラム、パラアルデヒド、ペントバルビタール、ペントバルビタールナトリウム、フェノバルビタールナトリウム、セコバルビタールナトリウム、タルブタール、テマゼパムおよびトリアゾラムなど、局所麻酔薬、例えば塩酸ブピバカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸エチドカイン、塩酸リドカイン、塩酸メピバカイン、塩酸プロカインおよび塩酸テトラカインなど、一般麻酔薬、例えばドロペリドール、エトミデート、ドロペリドールと組み合わせたクエン酸フェンタニール、塩酸ケタミン、メトヘキシタールナトリウムおよびチオペンタールナトリウムなど、および放射性粒子またはイオン、例えばストロンチウム、ヨウ化物、レニウムおよびイットリウムなどが含まれる。
【0168】
好適な特定態様において、この治療薬はモノクローナル抗体、例えば黒色腫抗原に結合し得るモノクローナル抗体などである。
【0169】
他の好適な治療薬には、天然または合成いずれかを源とする核酸、RNAおよびDNAなどの遺伝材料が含まれ、これには、組換え型RNAおよびDNA、並びにアンチセンスRNAおよびDNAが含まれる。使用できる種類の遺伝材料には、例えば発現ベクターに担持させる遺伝子、例えばプラスミド、ファージミド、コスミド、人工の酵母菌染色体(YAC)および欠損または「ヘルパー]ウイルス、抗原核酸、1本鎖および2本鎖両方のRNAおよびDNA、並びにそれらの類似物、例えばホスホロチオエート、ホスホロアミデートおよびホスホロジチオエートオリゴデオキシヌクレオチド類などが含まれる。更に、この遺伝材料を例えば蛋白質または他のポリマー類と化合させてもよい。
【0170】
本発明のリポソームを用いて投与可能な遺伝治療薬の例には、HLA遺伝子の少なくとも一部をコード化するDNA、ジストロフィンの少なくとも一部をコード化するDNA、CFTRの少なくとも一部をコード化するDNA、IL−2の少なくとも一部をコード化するDNA、TNFの少なくとも一部をコード化するDNA、Rasの少なくとも一部をコード化するDNAに結合し得るアンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれる。
【0171】
数多くのいろいろな種類の病気治療で特定の蛋白質をコード化するDNAが用いられ得る。例えば、ADA欠乏の治療でアデノシンデアミナーゼを投与することができ、進行癌の治療で腫瘍壊死因子および/またはインターロイキン−2を投与することができ、肝臓病の治療でHDLレセプタを投与することができ、卵巣癌、脳腫瘍またはHIV感染の治療でチミジンキナーゼを投与することができ、悪性黒色腫の治療でHLA−B7を投与することができ、神経芽腫、悪性黒色腫または腎臓癌の治療でインターロイキン−2を投与することができ、癌の治療でインターロイキン−4を投与することができ、HIV感染の治療でHIV envを投与することができ、肺癌の治療でアンチセンスras/p53を投与することができ、そして血友病Bの治療で第VIII因子を投与することができる。例えばThompson,L.、Science、1992、258、744−746参照。
【0172】
望まれるならば、このリポソームを用いて2種以上の治療薬を投与することができる。
例えば、単一のリポソームに2種以上の治療薬を含めてもよいか、或は異なる治療薬を含むリポソームを共投与してもよい。例として、黒色腫抗原に結合し得るモノクローナル抗体とIL−2の少なくとも一部をコード化するオリゴヌクレオチドを同時投与してもよい。本明細書で用いる如き用語「の少なくとも一部」は、その代表する遺伝子部分が有効に遺伝子発現をブロックする限り、このオリゴヌクレオチドが必ずしも全遺伝子に相当する必要はないことを意味する。
【0173】
同様に、プロドラッグもこのリポソーム内にカプセル封じ可能であり、これらも、本明細書で用いる如き用語「治療薬」の範囲内に包含される。プロドラッグは本技術分野でよく知られており、これらには、高温、代謝作用を示す酵素、空洞現象および/または圧力にさらされるか或は酸素の存在下か、或はそうでない場合このリポソームから放出された時点で、活性のある薬物を生じるところの、不活性な薬物前駆体が含まれる。このようなプロドラッグは、本発明の方法において、このプロドラッグを含むリポソームに超音波または無線周波数のマイクロ波エネルギーをかけた後、その結果として生じる空洞現象、加熱、圧力および/またはリポソームからの放出で、活性化されるか或は気体充填脂質球から放出され得る。適切なプロドラッグは当該技術分野の技術者に明らかであると思われ、これらは例えばSinkula他、J.Pharm.Sci.1975、64、181−210(これの開示は引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)などの中に記述されている。
【0174】
プロドラッグには、例えば、これを不活性にする化学基がこのプロドラッグ上に存在しておりそして/またはこの化学基がこの薬物に溶解性または他の何らかの特性を与えているところの、活性のある薬物の不活性形態が含まれる。このような形態の場合、このプロドラッグは一般に不活性であるが、加熱、空洞現象、圧力および/または周囲環境に存在する酵素またはその他でその化学基がそのプロドラッグからいったん開裂すると、活性のある薬物が生じる。このようなプロドラッグは本技術分野で充分に記述されており、これらには、短鎖、中鎖または長鎖脂肪族カーボネート類に対するエステル結合、有機ホスフェートの半エステル、ピロホスフェート、スルフェート、アミド類、アミノ酸、アゾ結合、カルバメート、ホスファミド、グルコシジュロネート(glucosiduronate)、N−アセチルグルコサミンおよびβ−グルコシドなどの如き結合を通して化学基に結合する幅広く多様な薬物が含まれる。 親分子と可逆的修飾または結合を用いた薬物の例は下記の通りである。ケタールを用いたコンバラトキシン、アルキルエステルを用いたヒダントイン、グリシンまたはアラニンのエステルを用いたクロルフェネシン、カフェイン錯体を用いたアセタミノフェン、THAM塩を用いたアセチルサリチル酸、アセトアミドフェニルエステルを用いたアセチルサリチル酸、スルフェートエステルを用いたナロキソン、メチルエステルを用いた15−メチルプロスタグランジンFα、ポリエチレングリコールを用いたプロカイン、アルキルエステルを用いたエリスロマイシン、アルキルエステルまたはホスフェートエステルを用いたクリンダマイシン、ベタイン塩を用いたテトラシクリン、環置換アシルオキシベンジルエステルを用いた7−アシルアミノセファロスポリン類、フェニルプロピオン酸デカン酸エステルを用いたナンドロロン、エノールエーテルアセタールを用いたエストラジール、酢酸エステルを用いたメチルプレドニソロン、n−アセチルグルコサミニドグルコシジュロネート(トリメチルシリル)エーテルを用いたテストステロン、21−ホスフェートエステルを用いたコルチゾールまたはプレドニソロンまたはデキサメタゾンなど。
【0175】
プロドラッグはまた可逆的薬物誘導体として設計可能であり、これらを修飾剤として用いることで部位特異的組織への薬物輸送を向上させることができる。部位特異的組織への輸送に影響を与えそして治療効果を高める可逆的修飾または結合を用いた親分子の例には、ハロアルキルニトロスレアを用いたイソシアネート、プロピオン酸エステルを用いたテストステロン、ジアルキルエステルを用いたメトトレキセート(3−5’−ジクロロメト
トレキセート)、5’−アシレートを用いたシトシンアラビノシド、ナイトロジェンマスタード(2,2’−ジクロロ−N−メチルジエチルアミン)、アミノメチルテトラシクリンを用いたナイトロジェンマスタード、コレステロールまたはエストラジオールまたはデヒドロエピアンドロステロンエステルを用いたナイトロジェンマスタードおよびアゾベンゼンを用いたナイトロジェンマスタードなどが含まれる。
【0176】
当該技術分野の技術者が理解する如く、このリポソームの膜または内側空間どちらかへの薬物分配に影響を与えるように、与えられた薬物を修飾する個々の化学基を選択することができる。この化学基をその薬物に連結させる目的で選択する結合は、この気体前駆体充填リポソームから放出された後の代謝が望ましい速度で生じるように、例えばエステル結合の場合、血清エステラーゼの存在下で生じる加水分解が望ましい速度で起こるように選択可能である。更に、本発明の薬物を運ぶ気体前駆体充填リポソームで用いる薬物の生分布に影響を与えるように個々の化学基を選択することができ、例えば卵巣腺癌の場合、環状ホスホルアミドと一緒にN,N−ビス(2−クロロエチル)−ホスホロジアミジックアシッドを用いる。
【0177】
更に、活動期間を修飾して作用効果を与えるか、長引かせるか或は貯える修飾剤として利用される可逆的誘導体を含有するように、この気体前駆体充填リポソーム内で用いるプロドラッグを設計してもよい。例えば、ニコチン酸をデキストランおよびカルボキシメチルデキストランエステルで修飾してもよく、ストレプトマイシンをアルギン酸塩で修飾してもよく、ジヒドロストレプトマイシンをパモエート塩で修飾してもよく、シタラビン(アラ−C)を5’−アダマントエートエステルで修飾してもよく、アラ−アデノシン(アラ−A)を5−パルミチン酸エステルおよび5’−安息香酸エステルで修飾してもよく、アンフォテリシンBをメチルエステルで修飾してもよく、テストステロンを17−β−アルキルエステルで修飾してもよく、エストラジオールを蟻酸エステルで修飾してもよく、プロスタグランジンを2−(4−イミダゾリル)エチルアミン塩で修飾してもよく、ドーパミンをアミノ酸アミドで修飾してもよく、クロラムフェニコールをモノ−およびビス(トリメチルシリル)エーテルで修飾してもよく、そしてシクログアニルをパモエート塩で修飾してもよい。このような形態にすると、プロドラッグを含有する気体前駆体充填リポソームから、保管または貯蔵されていた長期作用を示す薬物がインビボで放出され得る。
【0178】
加うるに、一般的には熱的に不安定な化合物を利用して毒性を示すフリーラジカル化合物を作り出すことができる。高温で分解するアゾ結合、パーオキサイドおよびジスルフィド結合を有する化合物が好適である。この形態のプロドラッグを用いる場合、この気体前駆体充填リポソームと高エネルギー音波との相互作用で引き起こされる空洞現象および/または上昇した加熱でアゾ、パーオキサイドまたはジスルフィド結合を有する化合物が活性化されて、その中に捕捉されている上記プロドラッグからフリーラジカルのカスケードが作り出される。幅広く多様な薬物または化学品を用いてこのようなプロドラッグ、例えばアゾ化合物などを構成させることができ、上記化合物の一般的構造はR−N=N−R[ここで、Rは炭化水素鎖である]であり、ここでは、この2個の窒素原子間に存在する二重結合がインビボで反応してフリーラジカル生成物を作り出し得る。
【0179】
フリーラジカル生成物を作り出す目的で使用可能な例となる薬物または化合物には、アゾ含有化合物、例えばアゾベンゼン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカーボンアミド、アゾリトミン、アゾマイシン、アゾセミド、アゾスルファミド、アゾキシベンゼン、アズトレオナム、スダンIII、スルファクリソイジン、スルファミドクリソイジンおよびスルファサラジンなど、ジスルフィド結合含有化合物、例えばスルベンチン、チアミンジスルフィド、チオルチン、チラムなど、パーオキサイド含有化合物、例えば過酸化水素およびベンゾイルパーオキサイドなど、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、二塩酸2,2’−アゾビス(2−アミドプロパン)および2,2’−アゾビス(2,
4−ジメチルバレロニトリル)などが含まれる。
【0180】
酸素ガスで満たした気体前駆体充填リポソームは空洞現象で広範にフリーラジカルを作り出すにちがいない。また、遷移系列由来の金属イオン、特にマンガン、鉄および銅は、酸素から反応性酸素中間体が生じる速度を高め得る。このリポソーム内に金属イオンをカプセル封じさせることにより、インビボにおけるフリーラジカル生成を高めることができる。このような金属イオンは、遊離塩としてか、或は例えばEDTA、DTPA、DOTAまたはデスフェリオキサミンなどとの錯体としてか、或は金属イオンの酸化物として、このリポソームの中に組み込み可能である。更に、例えばこの金属イオンの誘導化錯体を脂質ヘッド基に結合させてもよいか、或はこのイオンの親油性錯体を脂質二重層の中に組み込んでもよい。このような金属イオンは、熱刺激、例えば空洞現象などに暴露されると、これらは、反応性を示す酸素中間体の生成率を高める。更に、メトロニダゾールおよびミソニダゾールなどの如き放射線増感剤をこの気体前駆体充填リポソームの中に組み込むと、熱刺激でフリーラジカルが生じ得る。
【0181】
プロドラッグの使用例として、血清内の酵素作用で容易にインビボで開裂し得るエステル結合を通してアシル化された化学基を薬物に結合させることができる。このアシル化されたプロドラッグを本発明の気体前駆体充填リポソームに組み込む。この誘導体に、炭化水素および置換炭化水素アルキル基に加えてまた、ハロ置換されている基およびパーハロ置換されている基をパーフルオロアルキル基として含めてもよい。パーフルオロアルキル基はエマルジョンを安定化する能力を示すにちがいない。超音波由来の音波パルスでこの気体前駆体充填リポソームを破裂させると、このリポソームにカプセル封じされていたプロドラッグが血清にさらされる。その後、その血清内に存在しているエステラーゼがそのエステル結合を開裂させることで、その薬物が生じる。
【0182】
同様に、この気体前駆体充填リポソームを破裂させるばかりでなく、化学的開裂の速度および該プロドラッグからの活性薬物の放出速度を高め得る熱効果を引き起こす目的で、超音波を利用することができる。
【0183】
また、このリポソームの内側および外側両方に薬物が対称的または非対称的に分布するようにこのリポソームを設計することができる。
【0184】
治療薬が、このリポソームの気体前駆体で満たされている内部空間内にカプセル封じされるか、このリポソームに付着するか、或はこのリポソーム内に巻き込まれるなどの如き所望の溶解性を達成するように、この治療薬の個々の化学的構造を選択または修飾してもよい。気泡が破裂するか、加熱されるか或は空洞現象で破裂した時点で、アシル化した治療薬がその表面から離れそして/またはその治療薬がアシル鎖化学基から開裂し得るように、その表面に結合させる治療薬にアシル鎖を1個以上持たせてもよい。同様に、構造が芳香族またはステロールである疎水基を持たせた他の治療薬を調合して、これをこのリポソームの表面に組み込んでもよい。
【0185】
この気体前駆体充填リポソームの製造および試験を説明する以下の実施例の中で本発明のさらなる説明を行う。実施例1−5および22−24は実際の実施例であり、そして実施例6−21は予言的実施例である。以下記実施例を含む具体例は添付請求の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【0186】
<例1> パーフルオロブタンを用いた気体充填脂質球の製造
パーフルオロブタン(Pfaltz and Bauer、Waterbury、CT)を用いた気体前駆体含有リポソームの製造を下記の如く行った:ゴムストッパーが付いているガラス製ボトル(ボトルの容積=15.8mL)の中に、8:1:1の標準食塩水
:グリセロール:プロピレングリコール中に脂質が1mL当たり5mgの量で入っている溶液[脂質=87モル%のDPPC、8モル%のDPPE−PEG5,000、5モル%のジパルミトイルホスファチジン酸(全ての脂質をAvanti Polar Lipids、Alabaster、ALから入手)]を5mL入れた。Model Welch
2−Stage DirecTorr Pump(VWR Scientific、Cerritos、CA)真空ポンプを用い、上記ゴムストッパーに穴を開けて通した18ゲージの針で上記ボトルにホースを連結することにより、このボトルから空気を排除した。この気体を真空で除去した後、パーフルオロブタンが入っている缶に取り付けた配管に別の18ゲージ針を連結することによって、このストッパー付きボトルの中にパーフルオロブタンを入れた。このストッパー付きボトルから如何なる痕跡量の空気も除去されそして脂質溶液の上部空間がパーフルオロブタンで完全に満たされるように、上記過程を5回繰り返した。この18ゲージの針を1瞬または2瞬排気することで、上記ガラス製ボトルの内圧を周囲圧力と平衡状態にした後、この18ゲージの針を上記ストッパーから引き抜いた。このボトルをパーフルオロブタンで満たした後、ゴムバンドを用いてこのボトルをWig−L−Bug(商標)(Crescent Dental Mfg.Co.、Lyons、IL)のアームにしっかりと取り付けることで、このボトルを固定した。次に、このWig−L−Bug(商標)を用いて上記ボトルを60秒間振とうした。泡だった懸濁液が生じ、そしてこの泡層がその底に在る透明な溶液からいくらか分離するに数分間かかることが認められた。振とう後、この材料の体積は5ccから約12ccに上昇し、このことは、このリポソームがパーフルオロカーボン気体前駆体を約7cc捕捉したことを示唆していた。Accusizer(Model 770、Particle Sizing System、Santa Barbara、CA)を用いてこの材料の大きさを合わせ、そしてまた偏光顕微鏡(Nikon TMS、Nikon)を用い、150x倍率で検査した。このリポソームは、平均直径が約20から50ミクロンであるいくらか大きい球形構造物として現れた。次に、このリポソームの一部を、シリンジにより、孔サイズが8ミクロンのCostarフィルター(Syrfil 800938、Costar、Pleasanton、CA)に通して注入した。光顕微鏡およびAccusizer
Systemを用いて再びこのリポソームを検査した。このリポソームの平均サイズは約3ミクロンであり、そして体積重量平均(volume weighted mean)は約7ミクロンであった。このリポソームの99.9%以上が11ミクロン以下のサイズであった。上記実験は、気体前駆体ガスであるパーフルオロブタンを用いて振とうおよび濾過方法により非常に望ましい大きさを有するリポソームを製造することができることを示している。
【0187】
室温で上記ボトルにパーフルオロブタンを充填した後このボトルを冷凍庫に移してこの材料に−20℃の温度を受けさせる以外は実質的に上記を繰り返した。この温度でパーフルオロブタンは液体になった。グリセロールとプロピレングリコールが入っていることから、脂質溶液は凝固しなかった。このボトルを迅速に上記Wig−L−Bug(商標)に移し、そしてこれに上述した如き振とうを室温で3サイクル(各々1分間)受けさせた。この間に、このボトルの内容物は室温と平衡状態になり、そしてこのWig−L−Bug(商標)による振とうによって与えられるエネルギーに二次的に触れることで若干温められることが認められた。この渦流を起こさせた最後に、上に記述したのと同様に泡が多量に生成したことが再び認められた。その結果として得られるリポソームを光顕微鏡およびAccusizerで再び試験した。次に、上に記述した如き8ミクロンのフィルターに通して濾過を行う大きさ合わせをその一部に受けさせた後、顕微鏡およびAccusizerで再び検査した。この大きさ合わせで得られる結果は、上述した如き気体前駆体の場合と実質的に同じであった。
【0188】
体重が約3.5kgのニュージーランド白色ラビットを用いて画像形成を実施した。この動物をラビットミックス(キシレンが10mg/mLで、ケタミンが100mg/mL
で、アセプロマジンが20mg/mL)で鎮静化した後、Acoustic Imaging、モデルNo.7200臨床用超音波機を用いて走査し、7.5MHzの変換器を用い、カラードップラーでその腎臓を検査した。腎臓を検査すると同時にまた、2番目のAcoustic Imaging超音波機モデル番号5200を用いてこのラビットの心臓を走査し、7.5MHzの変換器を用い、その心臓の画像形成をグレースケールで行った。8ミクロンのフィルター(上を参照)を取り付けたシリンジを用いて、パーフルオロブタンで満たしたリポソームを耳の静脈を通して注入することでこれを投与した。この気体前駆体であるパーフルオロブタンが入っているリポソームを0.5cc(1kg当たり0.15cc)注入した後、腎臓の劇的および持続的増強を30分に渡って観察した。これは腎実質内の明るい色として表れ、これは、腎弓状動脈および微小循環内のシグナルが高まることを反映している。同時に行った心臓の画像形成は、心臓の可視化を妨害する影が最初の数分間表れることを示していた、即ち反射があまりにも強すぎる結果として、超音波ビームが完全に反射して吸収された。しかしながら、数分後、心室および血液プールに明るい持続した増強が観察され、これはまた50分以上持続した。また、グレースケール超音波機を用いて肝臓の画像も得た。これは心臓および血液プールが増強されるのと同時に実質および血液も増強されることを示していた。
【0189】
要約として、この実験は、どのようにリポソームを用いて気体前駆体を捕捉させそして明確な理想的大きさを有する非常に安定なリポソームを作り出すことができるかを示している。本発明は超音波コントラスト剤としておよび薬物送達で幅広い可能性を有する。このリポソームは非常に安定であることから、これらは循環を通して標的組織(例えば腫瘍)を通り抜ける。次に、超音波、マイクロ波無線周波または磁場を用いてその標的組織にエネルギーの焦点を当てることにより、このリポソームを破裂させて局所的薬物送達を成し遂げることができる。
【0190】
<例2> 微細流動化による気体前駆体の製造
気体前駆体を添加した後その内容物をMicrofluidicsミクロフルイダイザー(Microfluidics Inc.、Newton、MA)に6回通すことでこれに微細流動化を受けさせる以外は実施例1と同様にして気体前駆体充填脂質二重層を製造した。ストローク圧を10,000から20,000psiの範囲にした。実施例1に従う製造を継続することで、気体前駆体がカプセル封じされた気体充填脂質二重層が生じた。
【0191】
<例3> ホスファチジン酸およびジパルミトイルホスファチジルコリンを用いた気体充填脂質二重層の生成
DPPCを5モル%量のホスファチジン酸(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL)と組み合わせて用いること以外は実施例1に挙げたのと同様にして気体充填脂質二重層を製造した。気体充填脂質二重層が生じる結果として、下方の水系ビヒクル層の中に存在する脂質粒子の量が少なくなることで例示されるように、溶解度上昇が生じた。結果として起こる大きさ合わせにより、明らかに、DPPC単独に比較して全平均サイズが40um以下にまで低下した。
【0192】
<例4> ホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン−PEG5,000およびジパルミトイルホスファチジルコリンを用いた気体充填脂質二重層の生成
8:1:1(体積:体積:体積)の標準食塩水:プロピレングリコール:グリセロールから成るビヒクルの中にジパルミトイルホスファチジルコリンが82モル%、ジパルミトイルホスファチジン酸が10モル%およびジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン−PEG5,000(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL)が8モル%入っている脂質調合物を用いる以外は実施例3で考察したのと同様に
してパーフルオロブタンがカプセル封じされた脂質二重層を形成させ、その結果として、泡と、主に如何なる粒子も含まれていない下方のビヒクル層が生じた。このビヒクルを変化させると、下方のビヒクル層の透明度が変化した。実施例3と同様にして調合物を製造することでパーフルオロブタンが入っている気体充填脂質二重層を生じさせた。濾過を行う前に、Particle Sizing SYstems Model 770オプティカルサイザー(optical sizer)(Particle Sizing Systems、Santa Barbara、CA)を用いて気体充填微小球の大きさを測定した。大きさ測定の結果、全粒子の99%が34μm以内であった。次に、その結果として得られる生成物を8μmのフィルターに通して濾過することで均一なサイズを有する微小球が得られた。この続いて行った微小球の大きさ測定の結果、全粒子の99.5%が10μm以内であった。この生成物を実施例1のインビボ実験で用いた。
【0193】
他の粘度改良剤および可溶化剤をいろいろな比率で用いて上記ビヒクルを変えると透明度および粒子サイズが高くなったり低くなったりすることが認められた。その結果として、組み合わせて用いた多様な脂質および脂質類似物の中で、DPPE−PEG脂質を導入すると、気体充填脂質二重層のサイズ分布および見掛け安定性が有意に改良されることを見出した。
【0194】
<例4A> 気体充填脂質二重層とDNAの結合
ホスファチジン酸と気体前駆体を含有するリポソームおよび気体含有リポソームとDNAの結合。ジステアロイル−sn−グリセロホスフェート(DSPA)(Avanti Polar Lipids、Alabaster、AL)の7mM溶液を標準食塩水の中に懸濁させて50℃で渦流を起こさせた。この材料を室温に冷却した。この脂質溶液にpBR322プラスミドDNA(International Biotechnologies,Inc.、New Haven、CT)を40ミクログラム加えて穏やかに振とうした。Beckman TJ−6遠心分離器(Beckman、Fullerton、CA)を用いて上記溶液を10分間遠心分離にかけた。Hoefer TKO−100 DNA Fluorometer(Hoefer、San Francisco、CA)を用いてその上澄み液と沈澱物をDNA含有量に関して評価した。この方法では挿入用染料であるHoechst 33258(これはDNAに特異的である)を用いたことから、これで検出されるのは2本鎖DNAのみである。ホスファチジン酸を用いて製造した、負に帯電したリポソームまたは正味の負電荷を有する脂質が驚くべきことにDNAと結合することを見出した。DPPCで構成させた中性リポソームを対照として用いて上記実験を繰り返した。このDPPCリポソームを用いた場合、DNAは評価されるほどの量で検出されなかった。微小球中の脂質がDPPC:DEPPE−PEG500:DPPAが87:8:5モル%である混合物を用いて製造した気体充填リポソームを用いて上記実験を繰り返した。再び、このジパルミトイルホスファチジン酸を含む気体充填リポソームにDNAが結合した。
【0195】
<例5> 前駆体の微細乳化
ミクロフルイダイザー(Microfluidics、Newton、MA)を−20℃の冷室に入れた。この冷室に、脂質溶液が25cc入っておりそしてヘッドスペースにパーフルオロブタンが35cc含まれているストッパー付きガラス製フラスコを入れた。この脂質溶液は、8:1:1の燐酸塩緩衝食塩水(pH7.4):グリセロール:プロピレングリコールの中にDPPC:DPPE+PEG5,000:DPPAが83:8:5のモル比で入っている溶液であった。この溶液は上記冷室内で凝固しなかったが、パーフルオロブタンは液体になった。
【0196】
次に、この脂質と液状の気体前駆体が入っている懸濁液をミクロフルイダイザーのチャンバの中に入れて、16,000psiで20パス受けさせた。その結果として、大きさ
が約30nmから約50nmである限定されたサイズを有する小胞が生じた。室温に温めると、約10ミクロンの安定化微小球が生じた。
【0197】
<例6> 気体前駆体充填リポソームの製造
遠心分離管の中に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MW:734.05、粉末、ロット番号160pc−183)(Avanti−Polar Lipids、Alabaster、AL)を重量測定して50mg入れ、そして5.0mLの食塩水溶液(0.9%のNaCl)または燐酸塩緩衝食塩水(塩化ナトリウムを0.8%、塩化カリウムを0.02%、二塩基性燐酸ナトリウムを0.115%および一塩基性燐酸カリウムを0.02%入れて、pHを7.4に調整)を用いて水和させる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。次に、この水和させた懸濁液を、渦流機(Scientific Industries、Bohemia、NY)を用い装置設定を6.5にして10分間振とうする。全体積が12mLになることを確認する。この食塩水溶液は5.0mLから約4mLにまで低下すると予測される。
【0198】
その後、この新規な方法で製造した気体前駆体充填リポソームの大きさを光学顕微鏡で測定する。このリポソームの最大サイズが約50から約60μmの範囲に入りそして検出される最小サイズが約8μmであることを確認する。その平均サイズは約15から約20μmの範囲である。
【0199】
次に、Swin−Lok Filter Holder(Nuclepore Filtration Products、Costar Corp.、Cambridge、MA)および20ccのシリンジ(Becton Dickinsion & Co.、Rutherford、NJ)を用いて、上記気体前駆体充填リポソームを10または12μmの「NUCLEPORE」膜に通して濾過する。この膜は10または12μmの「NUCLEPORE」膜(Nuclepore Filtration Products、Costar Corp.、Cambridge、MA)である。この10.0μmのフィルターを上記Swin−Lok Filter Holderの中に入れてしっかりと蓋をする。このリポソーム溶液を振とうした後、18ゲージの針を通して20ccのシリンジに移す。このシリンジの中にリポソーム溶液を約12mL入れ、そしてこのシリンジを上記Swin−Lok Filter Holderの上にねじ止めする。この気体前駆体充填リポソームの大きい小胞が上部に上昇し得るように、このシリンジとフィルターホルダーのアセンブリを逆さにする。次に、このシリンジをゆっくりと押し上げ、このようにして、この気体前駆体充填リポソームの濾過を行う。
【0200】
この気体前駆体充填リポソームを10.0μmのフィルターに通して押出した後の残存率(この押出し過程後に保持される気体前駆体充填リポソームの量)は約83−92%である。押出す前の泡体積は約12mLであり、水溶液の体積は約4mLである。押出し後の泡体積は約10−11mLであり、水溶液の体積は約4mLである。
【0201】
再び光学顕微鏡を用いて、その押出し後の気体前駆体充填リポソームのサイズ分布を測定する。このリポソームの最大サイズが約25から約30μmの範囲に入りそして検出される最小サイズが約5μmであることを確認する。その平均サイズ範囲は約8から約15μmである。
【0202】
濾過後の気体前駆体充填リポソームの90%以上が15μmより小さいことを確認する。
【0203】
<例7> 凍結乾燥を組み込んだ気体前駆体充填リポソームの製造
遠心分離管の中に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MW
:734.05、粉末)(Avanti−Polar
Lipids、Alabaster、AL)を重量測定して50mg入れる。次に、この脂質を5.0mLの食塩水溶液(0.9%のNaCl)で水和させる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。次に、装置設定を6.5にして上記脂質に10分間渦流を起こさせる。渦流を起こさせた後、この溶液全体を液体窒素内で凝固させる。次に、このサンプルを凍結乾燥機上に置いて凍結乾燥させる。このサンプルをこの凍結乾燥機上に18時間置く。この乾燥させた脂質を上記凍結乾燥機から取り出し、5mLの食塩水溶液の中で再び水和させた後、6.5に設定して渦流を10分間起こさせる。ピペットを用いてこの溶液の少量サンプルをスライドに乗せてこの溶液を顕微鏡下で見る。次に、この気体前駆体充填リポソームの大きさを測定する。このリポソームの最大サイズが約60μmでありそして検出される最小サイズが約20μmであることを確認する。その平均サイズ範囲は約30から約40μmである。
【0204】
<例8> 脂質の相転移温度以上で製造する気体前駆体充填リポソームの例
遠心分離管の中に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MW:734.05、粉末)(Avanti−Polar Lipids、Alabaster、AL)を重量測定して50mg入れる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。円錐形遠心分離管の回りに約2フィートのラテックス製配管(内径0.25インチ)をコイル様式で巻く。次に、このラテックス製配管を電気用テープで上記遠心分離管にしっかりと固定する。次に、このラテックス製配管を一定温度の循環浴(VWR Scientific Model 1131)に連結する。この浴の温度を60℃に設定し、そしてこの水の循環を高速に設定して上記配管の中を循環させる。上記脂質溶液の中に温度計を入れて42℃から50℃の範囲であることを確認する。
【0205】
渦流装置設定を6.5にして上記脂質溶液に10分間渦流を起こさせる。この脂質(相転移温度=41℃)はほとんど発泡せずそしてこの懸濁液があまり気体前駆体充填リポソームを形成しないことを確認する。光学顕微鏡で上記溶液内に大きな脂質粒子が存在していることを確認した。この温度で生じる気体前駆体充填リポソームの数は、相転移温度より低い温度で生じさせた時の数の3%以下である。この溶液の温度が室温(25℃)と平衡状態になるまで、この溶液を15分間放置する。次に、この溶液に渦流を10分間起こさせる。10分後、気体前駆体充填リポソームが生じることを確認する。
【0206】
<例9> 凍結解凍手順を組み込んだ気体前駆体充填リポソームの製造
遠心分離管の中に1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(MW:734.05、粉末)(Avanti−Polar Lipids、Alabaster、AL)を重量測定して50mg入れる。次に、この脂質に5.0mLの0.9%NaClを加えることでこれを水和させる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。装置設定を6.5にして上記脂質水溶液に10分間渦流を起こさせる。渦流を起こさせた後、この溶液全体を液体窒素内で凝固させる。次に、この溶液全体を室温(25℃)の水浴の中に入れて解凍を起こさせる。次に、この凍結解凍手順を8回繰り返す。次に、装置を6.5に設定して上記水和懸濁液に渦流を10分間起こさせる。次に、例6に記述したのと同様に気体前駆体充填リポソームの検出を行う。
【0207】
<例10> 乳化剤(ラウリル硫酸ナトリウム)を用いた気体前駆体充填リポソームの製造
各々にDPPCが50mg入っている2個の遠心分離管を調製する。この遠心分離管の1つにラウリル硫酸ナトリウムを1モル%(Duponol Cロット番号2832を〜0.2mg)加え、そしてもう1つの管に10モル%(Duponol Cロット番号2832を2.0mg)入れる。両方の遠心分離管に0.9%NaClを5mL加える。両方の管に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。この管の両方を液体窒素
内で凝固させた後、凍結乾燥を約16時間行う。両方のサンプルを凍結乾燥機から取り出して両方の管に食塩水を5mL加える。6.5の位置にして両方の管に渦流を10分間起こさせる。
【0208】
ラウリル硫酸ナトリウムを1モル%用いた気体前駆体充填リポソームの場合の最大サイズは約75μmでありそして検出される最小サイズが約6μmであることを確認する。その平均サイズ範囲は約15から約40μmである。ラウリル硫酸ナトリウムを10モル%用いた気体前駆体充填リポソームの場合の最大サイズは約90μmでありそして検出される最小サイズが約6μmであることを確認する。その平均サイズ範囲は約15から約35μmである。
【0209】
ラウリル硫酸ナトリウムを1モル%用いた場合、気体前駆体充填リポソームが入っている泡の体積は約15mLであり、水溶液の体積は約3−4mLである。ラウリル硫酸ナトリウムを10モル%用いた場合もまた気体前駆体充填リポソームが入っている泡の体積は約15mLであり、水溶液の体積は約3−4mLである。
【0210】
<例11> 気体前駆体充填リポソームを音波処理で生じさせることができるか否かの決定
脂質である1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti−Polar Lipids、Alabaster、AL)を50mg重量測定して、5mLの0.9%NaClで水和させる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。渦流を起こさせる代わりに、Heat Systems Sonicator Ultrasonic Processor XL(Heat Systems,Inc.、Farmingdale、NY)Model XL 2020を用いて、この水溶液を音波処理する。周波数が20KHzである上記音波処理器のノブを位置4にして、この音波処理器を連続波に設定する。マイクロチップを用いて音波処理を4℃の温度で10分間行う。音波処理後、温度が40℃にまで上昇し、そしてその溶液を光学顕微鏡下で見る。気体前駆体充填リポソームが生じたことの証拠を確認する。
【0211】
次に、音波処理を50℃の温度で行って上記を繰り返した後、2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。この音波処理器のマイクロチップを取り出して、この音波処理器と一緒に供給を受けたエンドキャップに置き換える。別の溶液(食塩水5mL当たり50mgの脂質)を調製し、このチップを用いて音波処理する。10分後、その溶液を光学顕微鏡下で見る。この気体の転移温度より高い温度で音波処理して気体充填リポソームを製造すると、その結果として、気体で満たされた脂質球の収率が低下した。
【0212】
<例12> 気体前駆体充填リポソーム製造に対する濃度影響の決定
この実施例では、脂質濃度が下限濃度より低くなると気体前駆体充填リポソームの生成が休止するか否かを確認する。10mgの1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti−Polar Lipids、Alabaster、AL)を10mLの食塩水に加える。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。6.5の位置にして上記脂質/食塩水/気体前駆体溶液に渦流を10分間起こさせる。この溶液を光学顕微鏡下で見てサイズを測定する。このリポソームの最大サイズが約30μmから約45μmの範囲でありそして検出される最小サイズが約7μmであることを確認する。その平均サイズ範囲は約30から約45μmである。
【0213】
この気体前駆体充填リポソームは明らかにこの上に示したリポソームよりも急速に破裂することから、これらの方がずっと脆いと思われる。従って、気体前駆体充填リポソームの生成および安定性にとって脂質の濃度が1つの要因であると思われる。
【0214】
<例13> カスケード濾過
濾過していない気体前駆体充填リポソームを50mLのシリンジの中に吸い込ませ、最短で150μm離れて位置している「NUCLEPORE」10μmフィルターと8μmフィルターから成るカスケードに通す(図3および4)。また、例えば、互いに直接的に隣接している10μmフィルターと8μmフィルターの積み重ねに通してこのサンプルを濾過してもよい。流量が2.0mL分−1になるように、気体前駆体充填リポソームを加圧下で上記フィルターに通す。次に、その結果として濾過された気体前駆体充填リポソームを気体前駆体充填脂質リポソームの収率に関して測定し、その結果、その収率は未濾過体積の80−90%から成る体積である。
【0215】
その結果として得られる気体前駆体充填リポソームのサイズ測定を4つの異なる方法で行うことにより、その大きさと分布を測定する。Particle Sizing Systems Model 770 Optical Sizing装置、Universal Imagingが製造している画像処理用ソフトウエアに連動させたZeiss Axioplan光学顕微鏡、およびCoulter Counter(Coulter
Electronics Limited、Luton、Beds.、英国)を用いて、サイズ測定を実施する。図5および6で分かるように、この気体前駆体充填リポソームのサイズは、濾過前の気体前駆体充填リポソームのサイズに比較して、より均一に8−10μm付近に分布している。このように、濾過した後の気体前駆体充填リポソームの方がずっと均一なサイズを有することが分かるであろう。
【0216】
<例14> 濾過したDPPC懸濁液の製造
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、NJ)の中にDPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)を250mgおよび0.9%NaClを10mL入れて周囲温度(約20℃)に維持する。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。次に、この懸濁液を1μmのNuclepore(Costar、Pleasanton、CA)ポリカーボネート膜に通して窒素圧下で押出す。その結果として得られる懸濁物の大きさを、Particle Sizing Systems(Santa Barbara、CA)Model 370レーザー光散乱サイザーを用いて測定する。全ての脂質粒子が平均外側直径で1μmまたはそれ以下である。
【0217】
加うるに、同じ量のDPPC/気体前駆体懸濁液をMicrofluidics(商標)(Microfluidics Corporation、Newton、MA)ミクロフルイダイザーに18,000p.s.i.で5回通す。このあまり曇らなかった懸濁物の大きさを、Particle Sizing Systems(Santa Barbara、CA)Sub Micron Particle Sizer Model 370レーザー光散乱サイザーを用いて測定し、ここでのサイズは均一に1μm以下であることを確認する。このミクロフルイダイザーにかけた懸濁液の粒子サイズは6カ月に及んで安定なままであることを確認する。
【0218】
<例15> 濾過したDSPC懸濁液の製造
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、NJ)にDSPC(ジステアロイルホスファチジルコリン)を100mgおよび0.9%NaClを10mL入れる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。次に、この懸濁液を1μmの「NUCLEPORE」(Costar、Pleasanton、CA)ポリカーボネート膜に通して300−800p.s.i.の窒素圧下で押出す。その結果として得られる懸濁物の大きさを、Particle Sizing Systems(Santa Barbara、CA)Sub Micron Particle Sizer Model 370レーザー光散乱サイザ
ーを用いて測定する。全ての粒子が1μmまたはそれ以下のサイズであることを確認する。
【0219】
加うるに、同じ量のDSPC/気体前駆体懸濁液をMicrofluidics(商標)(Microfluidics Corporation、Newton、MA)ミクロフルイダイザーに18,000p.s.i.で5回通す。その結果として生じるあまり曇らなかった懸濁物の大きさを、Sub Micron Particle Sizer
Systems Model 370レーザー光散乱サイザーを用いて測定し、サイズが均一に1μm以下であることを確認する。
【0220】
<例16> オートクレーブにかけることによる濾過脂質懸濁液の滅菌 上の実施例9および10で大きさを測定したDPPC/気体前駆体およびDSPC/気体前駆体が入っている懸濁液を、Barnstead Model C57835オートクレーブ(Barnstead/Thermolyne、Dubuque、IA)に入れて20分間オートクレーブにかけた後、振とうを受けさせる。インラインフィルターに通して使用する直前に濾過段階を実施することができる。また、大きさ合わせおよび振とうを行う前に気体前駆体をオートクレーブにかけてもよい。
【0221】
室温(約20℃)と平衡状態にした後、この無菌懸濁液を気体前駆体注入に用いる。
【0222】
<例17> 渦流による、濾過してオートクレーブにかけた脂質の気体前駆体注入
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、ニュージャージー州)に、前以て1μmのフィルターに通して押出してオートクレーブに20分間かけた1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリンが0.9%NaCl中に25mg/mLの量で入っている溶液を10mL入れる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。この脂質懸濁液を室温(約20℃)と平衡状態にした後、VWR Genie−2(120ボルト、0.5アンペア、60ヘルツ)(Scientific Industries,Inc.、Bohemia、NY)を用いて、10分間か或は気体前駆体充填リポソームの全体積が元の脂質水溶液体積の少なくとも2倍または3倍になるまで、上記脂質に渦流を起こさせる。この管の底に存在する溶液に無水の粒子状脂質はほとんど全く含まれておらず、気体前駆体充填リポソームが入っている泡が多量に生じる。従って、前以てオートクレーブにかけても、この脂質懸濁液が気体前駆体充填リポソームを生じる能力は影響を受けない。オートクレーブにかけてもリポソームのサイズは変化せず、そしてこの脂質懸濁液が気体前駆体充填リポソームを形成する能力は低下しない。
【0223】
<例18> 振とうテーブルを用いた振とうによる、濾過してオートクレーブにかけた脂質の気体前駆体注入
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、NJ)に、前以て1μmのフィルターに通して押出してオートクレーブに20分間かけた1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリンが0.9%NaCl中に25mg/mLの量で入っている溶液を10mL入れる。この懸濁液にパーフルオロペンタン(PCR Research Chemicals、Gainesville、FL)を165μLmL−1加える。この脂質懸濁液を室温(約20℃)と平衡状態にした後、VWR Scientific Orbital振とう機(VWR Scientific、Cerritos、CA)の上に上記管を直立に位置させ、そして300r.p.m.で30分間振とうする。結果として起こる振とうテーブル上の撹拌により、気体前駆体充填リポソームが生じる。
【0224】
<施例18A>
パーフルオロペンタンを六フッ化硫黄、ヘキサフルオロプロピレン、ブロモクロロフルオロメタン、オクタフルオロプロパン、1,1ジクロロ,フルオロエタン、ヘキサフルオロエタン、ヘキサフルオロ−2−ブチン、パーフルオロペンタン、パーフルオロブタン、オクタフルオロ−2−ブテンまたはヘキサフルオロブタ−1,3−ジエンまたはオクタフルオロシクロペンテンで置き換えて上記実験を実施すると、これらは全部、気体前駆体充填リポソームを生じ得る。
【0225】
<例19> 塗料用ミキサーを用いた振とうによる、濾過してオートクレーブにかけた脂質の気体前駆体注入
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、NJ)に、前以て1μmのフィルターに通して押出してオートクレーブに20分間かけた1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリンが0.9%NaCl中に25mg/mLの量で入っている溶液を10mL入れる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。この脂質懸濁液を室温(約20℃)と平衡状態にした後、この管を、空の家庭用1ガロン塗料用容器の内側に固定した後、渦巻き運動を利用した塗料用機械ミキサーの中に15分間入れる。渦巻き混合した後、上記遠心分離管を取り出し、そして気体前駆体充填リポソームが生じたことを確認する。
【0226】
<例20> 手を用いた振とうによる、濾過してオートクレーブにかけた脂質の気体前駆体注入
50mLのFalcon遠心分離管(Becton−Dickinson、Lincoln Park、NJ)に、前以て1μmのnucleporeフィルターに通して押出してオートクレーブに20分間かけた1,2−ジパルミトイルホスファチジルコリンが0.9%NaCl中に25mg/mLの量で入っている溶液を10mL入れる。この懸濁液に2−メチル−2−ブテンを165μLmL−1加える。この脂質懸濁液を室温(約20℃)と平衡状態にした後、この管を手で力強く10分間振とうする。撹拌を停止した後、気体前駆体充填リポソームが生じる。
【0227】
<例21> カスケードまたは積み重ねたフィルターによる、オートクレーブにかけた気体前駆体充填リポソームの大きさ合わせ濾過
例17に記述したのと同様にしてDPPCから気体前駆体充填リポソームを製造する。その結果として生じる未濾過リポソームを50mLのシリンジの中に吸い込ませ、最短で150μm離れて位置している「NUCLEPORE」(Costar、Pleasanton、CA)10μmフィルターに続く8μmから成るカスケードフィルターシステムに通す。加うるに、別のサンプルでは、2つのフィルターを互いに隣接させて重ねた10μmフィルターと8μmフィルターの濾過アセンブリを用いる。2.0mL/分の流量で濾過されるように、気体前駆体充填リポソームを加圧下で上記フィルターに通す。その濾過された気体前駆体充填リポソームの収率は未濾過体積の80−90%から成る体積である。 その結果として得られる気体前駆体充填リポソームのサイズ測定を4つの異なる方法で行うことにより、そのサイズ分布を測定する。Particle Sizing Systems(Santa Barbara、CA)Model 770 Optical Sizing装置、画像処理用ソフトウエア(Universal Imaging、West Chester、PA)に連動させたZeiss(Oberkochen、ドイツ)Axioplan光学顕微鏡、およびCoulter Counter(Coulter Electronics Limited、Luton、Beds.、英国)を用いて、サイズ測定を実施する。図8に示すように、この気体前駆体充填リポソームのサイズは、濾過前の気体前駆体充填リポソームのサイズに比較して、より均一に8−10μm付近に分布する。
【0228】
<例22> 特別な効率を示す気体前駆体充填脂質球の製造
用いる振とう機をCrescent「Wig−L−Bug」(商標)(Crescent Manufacturing Dental Co.、Lyons、IL)にする以外は実施例6と同じ手順を実施する。次に、上に記述した通常5分間から10分間の代わりに、60秒間、この調合物の撹拌を行う。気体で満たされた脂質球が生じる。
【0229】
<例23>
5mg/mLの脂質懸濁液にパーフルオロペンタン(沸点29.5℃、PCR Research Chemicals、Gainesville、FL)を100μL加え、そしてGenie IIミキサー(Scientific Industries,Inc.、Bohemia、NY)を用い、パワーを6.5に設定して渦流を室温で起こさせた。次に、Richmar(Richmar Industries、Inola、OK)1MHz治療用超音波装置を用いて高体温を実施し、温度計を用いて測定して温度が約42℃以上に上昇した。相転移温度に到達した時点で、気体微小球を確認した。診断用超音波(Acoustic Imaging、Phoenix、AZ)を用いて同時に走査を実施した。また、臨床用の診断超音波を用いることでも、この気体微小球由来の音響シグナルを可視化することができた。
【0230】
オクタフルオロシクロペンテン(沸点27℃、PCR Research Chemicals、Gainesville、FL)を用いて同じ実験を実施した。
【0231】
<例24>
例23と同じ実験を実施したが、ここでは、該懸濁液に渦流を起こさせ、そして予め左大腿部領域にC5A腫瘍細胞系を生じさせたHarlan−Sprague Dawleyラット(300グラム)に注入した。次に、この腫瘍領域の上にRichmar 1MHz治療用超音波装置を置き、そしてアドリアマイシンを埋め込んだ脂質懸濁液を静脈注射した。次に、この治療用超音波を連続波(100%衝撃周波)に設定してその腫瘍を加熱する。左大腿部領域にC5A腫瘍細胞系を生じさせた2番目のラットにアドリアマイシンのエマルジョンを同じ量で与えたが、しかしながら、この動物では超音波を用いなかった。この超音波を用いなかった対照に比較して、腫瘍が3週間以内に顕著に小さくなることを確認した。
【0232】
上に示した記述から当該技術分野の技術者に本明細書に示して記述した発明に加えてそれの種々の修飾形が明らかになるであろう。そのような修飾形も添付請求の範囲に入れることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】本発明の気体前駆体充填リポソーム微小球(マイクロスフェア)の製造で用いるに好適な本発明に従う装置の部分的に図式的な図である。
【図2】本発明の気体前駆体充填リポソーム微小球が入っている治療薬の濾過および/または分与で用いるに好適な装置を示している。
【図3】本発明の気体前駆体充填リポソーム微小球が入っている治療薬の濾過および/または分与で用いるに好適な装置を示している。
【図4】図3の装置の一部の分解図である。
【図5A】濾過を行う前の本発明の気体前駆体充填リポソームの大きさを示す顕微鏡写真である。
【図5B】濾過を行った後の本発明の気体前駆体充填リポソームの大きさを示す顕微鏡写真である。
【図6A】濾過を行う前の本発明の気体前駆体充填リポソームのサイズ分布をグラフで示している。
【図6B】濾過を行った後の本発明の気体前駆体充填リポソームのサイズ分布をグラフで示している。
【図7A】フィルターに通して押出す前の脂質懸濁液の顕微鏡写真である。
【図7B】フィルターに通して押出した後の脂質懸濁液の顕微鏡写真である。
【図8A】脂質懸濁液を濾過してオートクレーブにかけた後に生じる気体前駆体充填リポソームの顕微鏡写真であり、これらは、気体前駆体充填リポソームを濾過して大きさを合わせる前に撮った顕微鏡写真である。
【図8B】脂質懸濁液を濾過してオートクレーブにかけた後に生じる気体前駆体充填リポソームの顕微鏡写真であり、これらは、気体前駆体充填リポソームを濾過して大きさを合わせた後に撮った顕微鏡写真である。
【図9】温度活性化前の、温度で活性化される気体前駆体充填リポソームの図式的説明である。このリポソームは多層膜を有する。
【図10】液体が温度で活性化されて気体状態になる結果として膜が単層になってリポソームの直径が大きくなった後の、温度で活性化される気体前駆体充填リポソームの図式的説明である。
【符号の説明】
【0234】
50 脂質供給容器
52 水系媒体供給容器
55 気体前駆体
66 混合容器
72 フィルター要素
73 泡
75 機械振とう装置
76 抽出用容器
77 リポソーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーフルオロカーボンガスまたは六フッ化硫黄ガス充填脂質微小球であって、
該脂質微小球がゲル状態相の脂質から構成される脂質二重層を含んでなり、
該脂質がジパルミトイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびポリエチレングリコールに共有結合したジパルミトイルエタノールアミンを含有する脂質混合物であり、
該パーフルオロカーボンがパーフルオロプロパン、パーフルオロブタンおよびパーフルオロシクロブタンからなる群より選ばれ、そして
該脂質微小球の平均直径が1ミクロン〜25ミクロンであり、かつ、
該脂質微小球がパーフルオロカーボンガスまたは六フッ化硫黄ガスの存在下で該脂質混合物を含む水溶液を該脂質のゲル状態相から液晶状態への相転移温度を下回る温度で振とうする工程を含んでなる製造方法により得られる、
ことを特徴とする上記脂質微小球。
【請求項2】
ガスがパーフルオロプロパンであり、平均直径が1ミクロン〜8ミクロンである、請求項1記載の脂質微小球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6A】
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【図6B】
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【図9】
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【図10】
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【図5A】
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【図5B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2007−314559(P2007−314559A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190697(P2007−190697)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願平7−501839の分割
【原出願日】平成6年5月20日(1994.5.20)
【出願人】(597097962)イマアーレクス・フアーマシユーチカル・コーポレーシヨン (3)
【Fターム(参考)】