説明

ガス状の媒体を単段または多段式に圧縮する方法ならびに装置

【課題】ガス状の媒体を圧縮する方法ならびに装置を改良して、上述の欠点を解消する。
【解決手段】圧縮されるべき媒体を、圧縮V1,V2のまえに、少なくとも圧縮過程中に水の凝縮分離が防止されるまで加熱E1,E2し、圧縮された媒体5,8を水分離D2,D3にかける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのピストン圧縮器を用いてガス状の媒体、特に水素または天然ガスを単段または多段式に圧縮する方法ならびに装置であって、ガス状の媒体は、水による完全な飽和状態までの含水量を有することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような圧縮の方法ならびに装置は、背景技術から長い間知られている。このような方法および装置は、たとえばガス状の水素または天然ガスを圧縮する場合に用いられる。その際、従来では、圧縮されるべき水素がたとえば電気分解によるその生産方式に基づいて必然的に水を含有する、という問題が生じる。背景技術に数えられる圧縮器、特にピストン圧縮器では、水滴により圧縮器弁が破損または腐食する恐れがあるので、水は、従来では、実際の圧縮前に完全に除去する必要があった。このような理由から、従来では、水を分離するための比較的手間の掛かる装置もしくはシステムが設けられている。
【0003】
電解により水素を生産する場合、たとえば分子ふるいフィルタが用いられる。分子ふるいフィルタは、周期的に加熱する必要があるので、エネルギを必要とし、しかも有益な水素の一部を消費する。水素の一部は、分子ふるいを再生するためのパージガスとして用いられる。したがって要求される水の分離に基づいて、水素の生産が割高になる。さらにこのような装置には所定の保守が行われるので、水素の生産がさらに割高になる。
【0004】
同様の問題は、別の媒体、たとえば車両に供給するために圧縮する必要がある天然ガスを圧縮する場合にも当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、冒頭で述べた、ガス状の媒体を圧縮する方法ならびに装置を改良して、上述の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するための本発明による方法によれば、圧縮されるべき媒体を、圧縮のまえに、少なくとも、圧縮過程中に水の凝縮分離が防止されるまで加熱し、圧縮された媒体を水分離にかける。
【0007】
この課題を解決するための本発明による装置によれば、少なくとも1つのピストン圧縮器を備え、1つまたは複数の圧縮器の上流側(手前)に配置された少なくとも1つの熱交換器を備え、熱交換器は、圧縮されるべきガス状の媒体を加熱する働きをし、1つまたは複数のピストン圧縮器の下流側に配置された少なくとも1つの水分離装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、先ず水の影響を受ける媒体が従来慣用のピストン圧縮器により圧縮可能である構成が実現される。このためにピストン圧縮器もしくは多段式の圧縮システムに進入するまえに、圧縮されるべき媒体の十分な加熱が必要である。加熱により、圧縮されるべき媒体に含まれている水が圧縮過程中に凝縮分離する、ということが効果的に防止される。中間圧および/または終了圧に圧縮が行われたあとで、圧縮されるべき媒体は冷却され、圧縮されるべき媒体に含まれている水が凝縮分離する。凝縮水は、適切な水分離装置により圧縮された媒体から分離される。
【0009】
できるだけ低温の冷媒もしくはガスを1つまたは複数のピストン圧縮器の吸込側に提供するよう所望される、従来において実現されたピストン圧縮器による圧縮とは異なり、本発明では、圧縮されるべき媒体は、従来の構成とは異なり、圧縮直前に加熱される。
【0010】
圧縮されるべき媒体の、本発明により行われる加熱の大きさは、多数の要因、たとえば圧力、温度、圧縮されるべき媒体の含水量および流量により設定される。多段の圧縮では、加熱は、第1の圧縮段の上流側、各圧縮段の上流側、または第1の圧縮段および少なくとも1つの別の圧縮段の上流側で実現される。本発明による方法を用いると、実際には、第1の圧縮段においてもしくは第1の圧縮段のあとで水分離の大きさが調整され、第1の圧縮段において略完全な水分離が所望される。
【0011】
本発明によるガス状の媒体を圧縮する別の方法ならびに別の装置は、従属請求項の対象であり、
−圧縮された媒体は、各圧縮段の下流側で水分離にかけられ、
−圧縮された媒体は、圧縮のまえ、もしくは第1の圧縮段の上流側で冷却され、その際、凝縮された水が分離され、
−1つまたは複数の水分離装置の上流側に冷却装置が設けられており、かつ/または、
−ピストン圧縮器または第1のピストン圧縮器の上流側に、冷却装置と、冷却装置の下流側に配置された水分離装置とが配置されている、
ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】電解器ならびに圧縮ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図示の実施の形態に基づいて、本発明によるガス状の媒体を圧縮する方法ならびに装置を詳説する。
【0014】
図1には、電解器Eならびに圧縮ユニットを概略的に示している。圧縮ユニットは、複数の圧縮器段V1,V2,V3から成る。電解器Eにおいて生産される水素は、約8体積パーセントの水分を有している。水素流1は、熱交換器Eにおいて、適切な冷媒、たとえば冷水により冷却され、管路2を介して、第1の分離器D1に供給される。分離器D1において発生する凝縮水は、管路4(管路4には調整弁aが配置されている)を介して取り出される。
【0015】
分離器D1の上部で、管路3を介して取り出された水素は、熱交換器1において、適切な熱媒により加熱され、それも、少なくとも、依然として水素に含まれている水の凝縮分離がピストン圧縮システムの第1の段V1における後続の圧縮中に確実に防止されるように、加熱される。水がピストン圧縮器を破損することになるので、あらゆる場合においてピストン圧縮器における流入過程および圧縮過程の間に水が凝縮分離するようにしてはならない。
【0016】
所望の中間圧に圧縮が行われたあとで、圧縮された水素は、熱交換器E2において、適切な冷媒により冷却され、管路5を介して第2の分離器D2に供給される。第2の分離器D2の水溜めに発生する水は、管路7(管路7には調整弁bが配置されている)を介して排出される。
【0017】
管路6を介して、第2の分離器D2から取り出された水素部分は、別の熱交換器E3に供給され、この熱交換器E3において、適切な熱媒により、ピストン圧縮システムの第2の段V2における後続の圧縮中に依然として水素に含まれている水の凝縮分離が確実に防止されるように、新たに加熱される。第2の圧縮器段V2において、前圧縮された水素が、所望の最終圧に圧縮される。ここで言及しておくと、本発明による方法は、圧縮器段の所望の数とは無関係に実現可能である。
【0018】
次いで圧縮された水素は、熱交換器E4において、適切な冷媒により冷却され、管路8を介して、第3の分離器D3に供給される。さらに分離器D3の水溜めに発生する水は、管路10(管路10に調整弁cが配置されている)を介して取り出され、集合管路11を介して、場合によっては設けられる中間貯蔵容器Sに供給される。集合管路11には、追加的に水分4,7がはじめの両方の分離器D1,D2から供給される。中間貯蔵容器Sは、水流を均等化するように働き、水流は、管路12を介して、新たに電解器Eに供給される。この水は脱塩化されているので、直接に電解器Eに戻すことができ、したがって電解器Eの水準備処理に関して節約された構成が得られる。
【0019】
第3の分離器D3の上部で、管路9を介して、圧縮された水素流が取り出され、別の利用箇所に供給される。水素流9の残留水分は、要求された制限値を下回る。水素流9の水濃度は、1つまたは複数の冷媒の温度および/または実現された圧縮器段の圧力段比に関して調節可能である。
【0020】
熱交換器E1,E3において圧縮されるべき媒体を加熱するために必要なエネルギは、好適には、圧縮器段V1,V2の下流側に配置された熱交換器E2,E4に導出された圧縮エネルギにより提供される。補足的または選択的に、別の構成のエネルギ提供もしくは熱提供も実現可能である。
【0021】
本発明によるガス状の媒体を圧縮する方法ならびに装置では、水で「汚染された」媒体に関する従来慣用の圧縮器技術が利用可能である。本発明により行われる圧縮(直)前の媒体の加熱もしくは過熱、これに関連する搬送能力の悪化およびこれに付随する効率の悪化よりも、本発明の結果として得られる利点、たとえば標準圧縮器構成要素の利用、電解の供給システムの簡素化等が上回る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのピストン圧縮器を用いてガス状の媒体、特に水素または天然ガスを単段または多段式に圧縮する方法であって、ガス状の媒体は、水による完全な飽和状態までの含水量を有することができる方法において、圧縮されるべき媒体(1,2)を、圧縮(V1,V2)のまえに、少なくとも圧縮過程中に水の凝縮分離が防止されるまで加熱(E1,E2)し、圧縮された媒体(5,8)を水分離(D2,D3)にかけることを特徴とする、ガス状の媒体を単段または多段式に圧縮する方法。
【請求項2】
圧縮された媒体(5,8)を、各圧縮段(V1,V2)の下流側で水分離(D2,D3)にかける、請求項1記載の方法。
【請求項3】
圧縮された媒体(1)を、圧縮のまえ、もしくは第1の圧縮段(V1)の上流側で冷却(E)し、その際に、凝縮分離された水を分離(D1)する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
ガス状の媒体、特に水素または天然ガスを圧縮する装置であって、ガス状の媒体は、水による完全な飽和状態までの含水量を有することができ、ガス状の媒体は、少なくとも1つのピストン圧縮器により単段または多段式に圧縮され、少なくとも1つのピストン圧縮器(V1,V2)を備え、1つまたは複数の前記圧縮器(V1,V2)の上流側に配置された少なくとも1つの熱交換器(E1,E3)を備え、該熱交換器(E1,E3)は、圧縮されるべきガス状の媒体を加熱する働きをし、1つまたは複数の前記ピストン圧縮器(V1,V2)の下流側に配置された少なくとも1つの水分離装置(D2,D3)を備えることを特徴とする、ガス状の媒体を圧縮する装置。
【請求項5】
1つまたは複数の前記水分離装置(D2,D3,…)の上流側に冷却装置(E2,E4)が設けられている、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記ピストン圧縮器または前記第1のピストン圧縮器(V1)の上流側に、冷却装置(E)と、該冷却装置(E)の下流側に配置された水分離装置(D1)とが配置されている、請求項4または5記載の装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−241719(P2012−241719A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115835(P2012−115835)
【出願日】平成24年5月21日(2012.5.21)
【出願人】(391009659)リンデ アクチエンゲゼルシャフト (106)
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Klosterhofstrasse 1, D−80331 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】