説明

ガス状構成要素を分離するための方法および装置

本発明は、液状銑鉄(24)、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガス(14)から、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための方法および装置に関し、第1ステップにおいて排ガス(14)の流れが、第1圧力で少なくとも1つの吸着分離器(16)を通り、それによってガス状構成要素が排ガス(14)から大部分分離され、第2ステップにおいてガス状構成要素は、第1圧力よりも低い第2圧力で吸着分離器(16)から大部分取り除かれる。本発明の課題は、メンテナンスフリーで、投資コストとエネルギーコストをより低くすることになり、かつ必要スペースがより小さい装置と方法とを提供することである。この課題は、第2圧力よりも高い第3圧力で推進ガス(28)の流れが供給される少なくとも1つの噴射ポンプ(7)によって、第2圧力もしくは脱着圧力が生み出される方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガスから、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための方法および装置に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガスから、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための方法に関し、第1ステップにおいて排ガスの流れが、第1圧力で少なくとも1つの吸着分離器を通り、それによって前記ガス状構成要素が排ガスから大部分分離され、第2ステップにおいて前記ガス状構成要素は、第1圧力よりも低い第2圧力で吸着分離器からほとんど取り除かれる。
【0003】
この方法を実現するための装置は、少なくとも1つの吸着分離器と、脱着圧力を生み出すための少なくとも1つの装置とを備える。
【背景技術】
【0004】
特許文献1からは、海綿鉄を生産するための設備の排ガスから二酸化炭素を分離するための装置が知られており、当該装置は、吸着分離器と、脱着圧力を生み出すための装置とを備え、脱着圧力を生み出すための当該装置は圧縮機として実施されている。
【0005】
できるだけ低い脱着圧力を生み出すためには圧縮機を用いるのは有利ではない。なぜなら、圧縮機はメンテナンスフリーではなく、高い投資コストとエネルギーコストの原因となるとともに、広いスペースを必要とし、その上大きな騒音の負担の原因となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】墺国特許出願公開第41796号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガスから、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための方法および装置であって、メンテナンスフリーであるとともに、投資コストとエネルギーコストをより低くすることになり、かつ必要スペースがより小さい装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、第2圧力よりも高い第3圧力で推進ガスの流れが供給される少なくとも1つの噴射ポンプによって、第2圧力もしくは脱着圧力が生み出される方法によって解決される。
【0009】
液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガスから、少なくとも1つのガス状構成要素、たとえば二酸化炭素(CO)および/あるいは水蒸気(HO)を分離する際、従来技術によれば、とりわけ圧力スイング吸着設備(英語では、PSA Pressure Swing Adsorption あるいはVPSA Vacuum Pressure Swing Adsorption)が使用される。排ガスは、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの任意の混合ガスからなる。ブラスト炉あるいは還元シャフトからの使用済み還元ガスが、炉頂ガスと呼ばれる。1つあるいは複数の流動床反応炉からの使用済み還元ガスが、オフガスと呼ばれる。溶融ガス化装置からの、制御に必要な制御ガスが、余剰ガスと呼ばれる。第1ステップ、すなわちいわゆる吸着段階において、排ガスが、第1圧力pすなわちいわゆる吸着圧力で少なくとも1つの吸着分離器を通り、それによって所定のガス状構成要素が排ガスからほとんど分離される。その際、第1圧力を高く調節できればできるほど、分離はより良好に機能する。吸着分離器に含まれる吸着剤の受容能力には限界があるので、ガス状構成要素を第2ステップ、すなわちいわゆる脱着段階において、第1圧力よりも低い第2圧力pすなわちいわゆる脱着圧力で吸着分離器から取り除くことが必要である。第2圧力を低く調節できればできるほど、吸着分離からのガス状構成要素の取り除きはより良好に機能する。本発明に係る方法に従えば、第2圧力は少なくとも1つの噴射ポンプによって生み出され、第2圧力よりも高い第3圧力pで推進ガスの流れが、噴射ポンプの推進ガス接続部に供給される。噴射ポンプの吸引接続部は、接続管によって、吸着分離器の脱着接続部と接続されている。脱着段階において1つ以上の吸着分離器から取り除かれるガスはテールガスと呼ばれる。当業者には、しばしばエジェクタ、インジェクタ、あるいはベンチュリノズルとも呼ばれる噴射ポンプが知られている(たとえば、http://de.wikipedia.org/wiki/Strahlpumpe 参照)。脱着圧力を生み出すために圧縮機に比べて噴射ポンプを使うことには以下の利点がある。すなわち、調達コストとエネルギーコストが低いこと、必要スペースが小さいこと、及び噴射ポンプがメンテナンス
フリーであることである。
【0010】
有利な実施形態は、噴射ポンプ用の推進ガスとして、炉頂ガスか、オフガスか、余剰ガスか、あるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスを用いる。これらガスは典型的には、0.5バールから5バールの圧力レベルを有し、従来技術ではいずれにせよこの圧力を絞らなくてはならないので、推進ガスの圧力エネルギーを脱着圧力を生み出すために用いることは有利であり、それによって、圧縮機を有する圧力スイング吸着設備と比べて、駆動コストと投資コストとが本質的に低くなる。
【0011】
実施形態においては、排ガスとして、炉頂ガスか、オフガスか、余剰ガスか、あるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスが用いられている。排ガスから、二酸化炭素(CO)および/あるいは水蒸気(HO)を分離することは有利であり、それによって排ガスの還元能力および/あるいは燃焼値が上昇する。直接還元設備においては排ガスの還元能力の上昇が重要であり、ブラスト炉においては同様に還元能力の上昇および排ガスの燃焼値の上昇が重要である。
【0012】
二酸化炭素および/あるいは水蒸気を分離するために、吸着容器の中で、ゼオライト、活性化された酸化ケイ素、シリカ・ゲル、活性化された酸化アルミニウム、活性炭あるいはこれら物質の少なくとも2つの混合物から成る吸着剤を用いることが有利である。
【0013】
推進ガスが、噴射ポンプの周囲圧を0.5バールから5バール超える圧力で供給される場合、推進ガスにある圧力エネルギーは直接、吸着分離器の脱着に用いられ得る。それによって、推進ガスの圧力レベル(p)を脱着圧力(p)に適合させる必要がない。脱着圧力の調節は、推進ガスの流量、あるいは噴射ポンプの面積比、あるいは1つ以上の(たとえば一連の)噴射ポンプの設計や配置によって行われる。
【0014】
推進ガスが、直列接続で設けられた複数の噴射ポンプに供給され、それによって、ガス状構成要素が、減少した第2圧力で吸着分離器から取り除かれる場合に、特に低い脱着圧力と、ひいては吸着分離器の特に念入りな脱着と、取り除かれるべきガス成分(たとえばCOおよび/あるいはHO)の低い残余負荷が達成され得る。
【0015】
さらなる変形態においては、推進ガスを、並列接続で設けられた複数の噴射ポンプに供給することが可能であり、それによって、ガス状構成要素が減少した第2圧力で吸着分離器から取り除かれる。噴射ポンプをこのように配置することによって、1つのより大きな噴射ポンプの代わりに、複数のより小さな噴射ポンプを用いることが可能である。
【0016】
圧力スイング吸着設備の駆動にとって有利なのは、吸着段階において、吸着分離器に第1圧力を印加し、第1移行段階において、吸着分離器内の圧力を、1つ以上の中間圧力によって第1圧力から第2圧力、あるいは第2圧力をいくらか上回る圧力に下げ、脱着段階において、吸着分離器に第2圧力を印加し、引き続いて第2移行段階において、吸着分離器内で圧力を、1つ以上の中間圧力によって第2圧力から第1圧力に上げることである。それによって、素早い圧力スイングが回避され、分離効率にポジティブに作用する。なぜなら、一酸化炭素(CO)と水素(H)とから成るガス成分があまりテールガスへと失われることなく、さらに吸着分離器の圧力負荷および分配基盤の圧力スイングの酷使と騒音の発生とが軽減されるからである。
【0017】
特に好都合なのは、吸着分離器内の脱着圧力を継続的に変えることである。選択的には、圧力を不連続にすなわち段階的に、たとえば噴射ポンプの推進ガス供給を制御することによって変えてもよい。
【0018】
第2圧力もしくは脱着圧力が測定装置によって検出され、制御器に供給されて、当該制御器が、制御原理を使いかつ設定値を考慮して調節値を算出し、制御機構に供給し、その際噴射ポンプへの推進ガスの流れは、圧力が、脱着圧力のための設定値にできる限り相当するように変更される場合に、圧力は特に正確に調節され得る。
【0019】
本発明の基礎となる課題を解決する、本発明に係る方法のできる限り即座の実現を可能にするために、有利なのは、脱着圧力を生み出すための装置が、吸着分離器の脱着接続部と噴射ポンプの吸引接続部との間に接続管を有する噴射ポンプとして実施されていることである。
【0020】
有利な実施形態においては、噴射ポンプの推進ガス接続部が、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続されている。
【0021】
複数の噴射ポンプが直列接続で設けられており、第1の噴射ポンプの吸引接続部が吸着分離器の脱着接続部と接続されており、前置された噴射ポンプのそれぞれ1つの圧力接続部が後置された噴射ポンプの吸引接続部と接続されており、かつ、すべての推進ガス接続部が、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続されている場合に、特に低い脱着圧力とひいては吸着分離器の特に念入りな脱着とが達成され得る。
【0022】
さらなる実施変形態においては、複数の噴射ポンプを並列接続で設け、すべての吸引接続部を吸着分離器の脱着接続部と接続し、かつ、すべての推進ガス接続部を、液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続する。
【0023】
装置が、噴射ポンプの直列接続と並列接続との組み合わせを有することも、もちろん同様に可能である。考えられ得る実施形態においては、推進ガスは、直列接続で設けられた複数の噴射ポンプに供給され、直列接続の各要素が、並列接続で設けられた複数の噴射ポンプから成っている。この場合、直列接続の要素に供給される推進ガスは、並列接続で設けられた噴射ポンプに分かれる。複数の噴射ポンプの並列接続によって全吸引性能が上昇し、それにより、噴射ポンプの大きさを必要な全吸引性能に適合させる必要なしに、より小さい噴射ポンプを用いることが可能となる(拡張性)。複数の噴射ポンプの直列接続によって、達成可能な全脱着圧力が減少される。
【0024】
移行段階において吸着分離器内の圧力を特に正確に調節できるようにするために有利なのは、装置が付加的に、脱着圧力を検出するための測定装置と、制御装置と、制御機構とを噴射ポンプの推進ガス管に備えることである。
【0025】
本願発明のさらなる利点と特徴とは、限定されない実施形態の後続の記述からもたらされ、後述は添付の図を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】COとHOとを分離するための圧力スイング吸着設備を有する、粉鉱に基づく溶融還元設備の概略図である。
【図2】COとHOとを分離するための圧力スイング吸着設備の概略図である。
【図3】COとHOとを分離するための圧力スイング吸着設備を有するブラスト炉の概略図である。
【図4】噴射ポンプの2つの概略図である。
【図5】噴射ポンプの直列接続の概略図である。
【図6】噴射ポンプの並列接続の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の図においては、流れ方向は矢印で示される。
【0028】
図1においては、粉鉱に基づく液状銑鉄を生産するための溶融還元設備が示されている。ここでは、粉鉱は、場合によっては融剤とともに、複数の前還元反応炉のカスケード3(4つの流動床反応炉が示されており、任意的には2つあるいは3つも可能である)で前還元され、続いて還元反応炉2に投入される。還元反応炉2において、さらなる還元と、投入された物質の予熱とが行われる。しかしながら、還元反応炉2でのさらなる還元を行わず、それによってガススクラバー4と炉頂ガス13用導管とをなくすることも可能である。前還元反応炉3での前還元もしくは還元反応炉2での還元は、溶融ガス化装置1で生み出される還元ガス9によって行われ、当該還元ガス9は、除塵の後還元反応炉2に送られ、次々に個々の前還元反応炉3を通じて送られる。それを超えるガス量は、ガススクラバー4bでのガス洗浄と圧縮機5bによる圧縮の後、冷却ガス18として洗浄済み排ガス15と混合されるか、あるいはガススクラバー4cでのガス洗浄の後、再度余剰ガス11として用いられる。全プロセスのエネルギー効率を高めるために、ガススクラバー4bと圧縮機5bとともに冷却ガス18用導管がなくてもよい。オフガス10は、その流れ方向において最後の前還元反応炉3から取り出され、ガススクラバー4aで洗浄される。溶融還元設備の排ガス14は、圧力制御器23の上流で分岐されるオフガス10の第1部分量と、炉頂ガス13と、余剰ガス11とから成る。圧力制御器23には、オフガス10の圧力を一定に保ち、かつ圧縮機5aのための前圧力と推進ガスとを制御するという目的がある。オフガス10の第2部分量は、推進ガス28として噴射ポンプ7に供給される。排ガス14は、圧縮機5aによって圧縮され、ガス冷却器26によって冷却され、かつ、二酸化炭素(CO)および/あるいは水蒸気(HO)を分離するための圧力スイング吸着設備6の少なくとも1つの吸着分離器に、第1圧力pで供給される。COおよび/あるいはHOの分離によって洗浄された排ガス15は、続いて還元ガス9と混合され、さらにプロセスにおいて用いられる。その際、洗浄済み排ガス15が、熱ガスサイクロンの前に加えられるか後に加えられるかは重要ではない。示されていない実施形態においては、洗浄済み排ガス15もしくはその部分量は、加熱装置によって加熱され得る。第3圧力pで噴射ポンプ7を通る推進ガスの流れによって、第2圧力pもしくは脱着圧力が作り出され(p<p、p<p)、当該圧力は、分離された二酸化炭素および/あるいは水蒸気を、圧力スイング吸着設備6の吸着分離器から取り除くために用いられる。このために、吸着分離器の脱着接続部は、テールガス用接続管8を介して噴射ポンプの吸引接続部と接続されている。示されていない実施形態においては、接続管8と送出ガス用導管との間に遮断機構を有する導管が、噴射ポンプ7の下流の領域に備わっており、当該噴射ポンプ7は、たとえば溶融還元設備の運転開始時に遮断され、それによって運転開始時に送出ガス12のより低い圧力がもたらされる。しかしながら通常運転時には、この導管は遮断されている。推進ガスが噴射ポンプ7を貫流することで脱着圧力を生み出すことには以下の利点がある。すなわち、噴射ポンプがメンテナンスフリーであり、特に可動部がないこと、必要スペースがより小さいこと、及び圧縮機と比べて調達コストがより低く、しかもエネルギーコストがかからないことである。さらなる利点は、オフガスもしくは炉頂ガスもしくは余剰ガスが、従来技術の設備ではいずれにせよ周囲圧に絞られなくてはならないことにある。本発明に係る方法では、排ガスの圧力エネルギーは、脱着圧力を生み出すために用いられ、送出ガス12として使用可能である。
【0029】
図2は、2つの吸着分離器16aと16bとを有する圧力スイング吸着設備6の実施形態を示している。圧力スイング吸着設備6に供給される排ガス14は、図1にあるように、オフガス10の部分量と、余剰ガス11と、炉頂ガス13とから構成される。示されているように、弁17aと17bとは開かれており、弁17fは閉じられている。すなわち吸着分離器16aは吸着段階にあり、COおよび/あるいはHOを圧縮された排ガス14から分離する。そのように洗浄された排ガス15は、図1に示されているように、還元ガスと混合され、もしくは還元ガスとして場合によっては加熱後に用いられ得る。弁17cと17dとは閉じられており、弁17eは開かれている。すなわち、吸着分離器16bは脱着段階にある。脱着圧力の生成は、推進ガス28(オフガス10の部分流)が貫流する噴射ポンプ7によって行われる。噴射ポンプ7を貫流した後、オフガス10と、接続管8を通って得られたテールガスとは、送出ガスとして利用可能である。吸着分離器16aの吸着剤の受容能力が大幅に衰えた場合、および/あるいは吸着分離器16bが大幅に脱着された場合、弁17a、17b、17eは閉じられ、弁17c、17d、17fが開かれる。弁の開閉は、素早くもしくは不連続に、あるいはまたゆっくりともしくは継続的にも行われてよい。弁の切り換えによって、吸着分離器16aを脱着段階に、吸着分離器16bを吸着段階にする。図においては、別の設備部分への接点が、一点鎖線によって表されている。
【0030】
図3は、圧力スイング吸着設備6を有する、銑鉄を生産するためのブラスト炉24の図を示している。銑鉄は、ブラスト炉24において、酸素含有ガス(好ましくは>80%のO)を加えられ、かつコークスと鉱石とを導入されて、生産される。ブラスト炉24の排ガス10の部分量、いわゆる炉頂ガス13は、圧力制御器23の上流で分岐され、圧縮機5によって圧力が上げられかつガス冷却器26内で冷却された後に、圧力スイング吸着設備6に第1圧力pで供給される。炉頂ガス13の部分量は、圧力スイング吸着設備6の吸着分離器からCOおよび/あるいはHOを取り除くための第2圧力pもしくは脱着圧力を生み出す噴射ポンプ7の推進ガス28として、第3圧力pで供給される。この場合再び、p<pとp<pが当てはまる。圧力スイング吸着設備6は排ガスからCOおよび/あるいはHOを分離し、その結果洗浄済みの排ガス15は、より高い還元能力とより高い燃焼値とを有する。このガスは、任意の予熱の後、還元ガス炉25とブラスト炉24に、たとえば羽口もしくは酸素ノズルを介して供給され、あるいは融着帯上方のブラスト炉のシャフト内に供給される。推進ガス28と、接続管8内のテールガスと、残余排ガスとから成る送出ガス12は、ガス貯蔵器27に中間貯蔵され、そこから熱的利用に供給される。圧力スイング吸着設備6の詳細に関しては、図2を指摘する。推進ガス28が噴射ポンプ7を貫流することで脱着圧力を生み出すことには、再度以下の利点がある。すなわち、噴射ポンプがメンテナンスフリーであり、特に可動部がないこと、必要スペースがより小さいこと、及び圧縮機と比べて調達コストがより低く、しかもエネルギーコストがかからないことである。
【0031】
図4は、噴射ポンプの2つの概略図を示している。左の図は、推進ガス接続部21と圧力接続部19とが1つの軸線にある噴射ポンプ7を示している。吸引接続部20は、推進ガス接続部と圧力接続部との軸線に対して直角に設けられている。右の図では、吸引接続部20と圧力接続部19とが1つの軸線上にあり、推進ガス接続部21が、この軸線に対して直角に設けられている。2つの図に当てはまるのは、吸引接続部20が、噴射ポンプの最も狭い流れ断面の領域と接続されており、かつ推進ガス接続部21は圧力pで推進ガスを印加され、それによって吸引接続部20において、p<pが当てはまる圧力pが生じるということである。
【0032】
図5は、2つの噴射ポンプ7aと7bの直列接続の概略図を示している。テールガス用の接続管8は、噴射ポンプ7aの吸引接続部20を吸着分離器16の脱着接続部22と接続している。吸引ポンプ7aの圧力接続部は、吸引ポンプ7bの吸引接続部と接続されており、それによって特に低い脱着圧力が達成され得る。両噴射ポンプ7aと7bは、推進ガス接続部21によって、推進ガスを供給される。
【0033】
図6は、2つの噴射ポンプ7の並列接続の概略図を示している。テールガス用の2つの接続管8は、両噴射ポンプ7のそれぞれ1つの吸引接続部20を吸着分離器16の脱着接続部22と接続している。両噴射ポンプ7は、その推進ガス接続部21によって、推進ガスを供給され、それによって推進ガス28は2つのより小さな吸引ポンプに分けられる。さらに、脱着圧力のより簡単な調節(開ループ制御あるいは閉ループ制御)が、推進ガス量の変更によって可能である。
【0034】
本発明に係る方法もしくは本発明に係る装置の使用は、決してFINEX(R)設備(図1)あるいはブラスト炉(図3)に限定されるものではない。むしろ、(たとえばHYL(R)あるいはFINMET(R)タイプの)天然ガス直接還元設備、COREX(R)設備での、また直接還元複合設備での適用も有利である。
【符号の説明】
【0035】
1 溶融ガス化装置
2 還元反応炉
3 前還元反応炉のカスケード
4 ガススクラバー
5 圧縮機
6 圧力スイング吸着設備
7 噴射ポンプ
8 接続管
9 還元ガス
10 オフガス
11 余剰ガス
12 送出ガス
13 炉頂ガス
14 排ガス
15 洗浄済み排ガス
16 吸着分離器
17 弁
18 冷却ガス
19 圧力接続部
20 吸引接続部
21 推進ガス接続部
22 脱着接続部
23 圧力制御器
24 ブラスト炉
25 還元ガス炉
26 ガス冷却器
27 ガス貯蔵器
28 推進ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状銑鉄、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガスから、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための方法であって、第1ステップにおいて排ガスの流れが、第1圧力で少なくとも1つの吸着分離器を通り、それによってガス状構成要素が排ガスから大部分分離され、第2ステップにおいてガス状構成要素は、前記第1圧力よりも低い第2圧力で前記吸着分離器から大部分取り除かれる方法において、
前記第2圧力よりも高い第3圧力で推進ガスの流れが供給される少なくとも1つの噴射ポンプによって、前記第2圧力が生み出されることを特徴とする方法。
【請求項2】
推進ガスとして、炉頂ガス、オフガス、余剰ガス、またはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスが用いられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
排ガスとして、炉頂ガス、オフガス、余剰ガス、またはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスが用いられることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の方法。
【請求項4】
排ガスから、二酸化炭素(CO)および/あるいは水蒸気(HO)が分離されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着分離器において、ゼオライト、活性化された酸化ケイ素、シリカ・ゲル、活性化された酸化アルミニウム、活性炭あるいはこれら物質の少なくとも2つの混合物から成る吸着剤が用いられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
推進ガスが、前記噴射ポンプの周囲圧を0.5バールから5バール超える圧力で供給されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
推進ガスが、直列接続で設けられた複数の噴射ポンプに供給され、それによって、ガス状構成要素が、減少した第2圧力で前記吸着分離器から取り除かれることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
推進ガスが、並列接続で設けられた複数の噴射ポンプに供給され、それによって、ガス状構成要素が、減少した第2圧力で前記吸着分離器から取り除かれることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
吸着段階において、前記吸着分離器が前記第1圧力を印加され、前記吸着分離器内の圧力が1つ以上の中間圧力によって前記第1圧力から前記第2圧力、あるいは該第2圧力をいくらか上回る圧力に下げられ、脱着段階において、前記吸着分離器が前記第2圧力を印加され、引き続いて前記吸着分離器内の圧力が1つ以上の中間圧力によって前記第2圧力から前記第1圧力に上げられることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記吸着分離器内の圧力が継続的にあるいは不連続に変えられることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2圧力が測定装置によって検出され、制御器に供給されて、該制御器が、制御原理を使いかつ設定値を考慮して調節値を算出し、制御機構に供給し、その際前記噴射ポンプへの推進ガスの流れは、圧力が前記設定値にできる限り相当するように変更されることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
液状銑鉄(24)、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の排ガス(14)から、少なくとも1つのガス状構成要素を分離するための装置であって、少なくとも1つの吸着分離器(16)と、脱着圧力を生み出すための少なくとも1つの装置とを備える装置において、
前記脱着圧力を生み出すための装置が、前記吸着分離器(16)の脱着接続部(22)と噴射ポンプ(7)の吸引接続部(20)との間に接続管(8)を有する噴射ポンプ(7)として実施されていることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記噴射ポンプ(7)の推進ガス接続部(21)が、液状銑鉄(24)、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
複数の噴射ポンプ(7)が直列接続で設けられており、前置された噴射ポンプ(7)のそれぞれ1つの圧力接続部(19)が後置された噴射ポンプ(7)の吸引接続部(20)と接続されており、かつ、すべての推進ガス接続部(21)が、液状銑鉄(24)、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続されていることを特徴とする請求項12あるいは13に記載の装置。
【請求項15】
複数の噴射ポンプ(7)が並列接続で設けられており、すべての吸引接続部(20)が前記吸着分離器(16)の前記脱着接続部(22)と接続されており、かつ、すべての推進ガス接続部(21)が、液状銑鉄(24)、液状鋼半製品あるいは海綿鉄を生産するための設備の、炉頂ガス、オフガス、余剰ガスあるいはこれらガスの少なくとも2つから成る混合ガスのための導管と接続されていることを特徴とする請求項12あるいは13に記載の装置。
【請求項16】
装置が、噴射ポンプの直列接続と並列接続との組み合わせを有することを特徴とする請求項14あるいは15に記載の装置。
【請求項17】
装置が付加的に、脱着圧力を検出するための測定装置と、制御装置(23)と、制御機構(17)とを前記噴射ポンプ(7)の推進ガス管に備えていることを特徴とする請求項12から16のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−518523(P2012−518523A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550493(P2011−550493)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050511
【国際公開番号】WO2010/094527
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(301041586)シーメンス・ファオアーイー・メタルズ・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー (41)
【Fターム(参考)】