説明

ガス発生器

【課題】伝火薬による火炎エネルギーの伝達が好適に制御可能であるとともに、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することができるガス発生器を提供する。
【解決手段】ガス発生器1Aは、底板部11および天板部21によって両端が閉塞された短尺円筒状のハウジングと、底板部11に取付けられた点火器30と、点火器30によって着火される伝火薬34が収容された有底筒状の単一の部材からなるエンハンサカップ40と、ガス発生剤51が収容された燃焼室50を囲うように配置されたフィルタ55とを備える。エンハンサカップ40は、薄肉の脆弱部42aと厚肉の非脆弱部42b,42cとをその側壁部42に有している。ガス噴出口23は、脆弱部42aよりも天板部21寄りの位置に配設され、脆弱部42aは、点火器30の天板部21側の端部よりも底板部11寄りの位置に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員保護装置に組み込まれるガス発生器に関し、より特定的には、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に組み込まれるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、乗員保護装置であるエアバッグ装置が普及している。エアバッグ装置は、車両等衝突時に生じる衝撃から乗員を保護する目的で装備されるものであり、車両等衝突時に瞬時にエアバッグを膨張および展開させることにより、エアバッグがクッションとなって乗員の体を受け止めるものである。
【0003】
ガス発生器は、このエアバッグ装置に組み込まれ、車両等衝突時にコントロールユニット(作動器)からの通電によって点火器(スクイブ)を発火し、点火器において生じる火炎によりガス発生剤を燃焼させて多量のガスを瞬時に発生させ、これによりエアバッグを膨張および展開させる機器である。なお、エアバッグ装置は、たとえば自動車のステアリングホイールやインストゥルメントパネル等に装備される。
【0004】
ガス発生器には、種々の構造のものが存在するが、特にステアリングホイール等に装備される運転席側エアバッグ装置に好適に利用されるガス発生器として、いわゆるディスク型ガス発生器がある。ディスク型ガス発生器は、軸方向の両端が閉塞された短尺円筒状のハウジングを有し、ハウジングの周壁にガス噴出口が設けられるとともに、ハウジングの内部に位置する点火器の周囲を囲うようにガス発生剤が、またガス発生剤の周囲をさらに囲うようにフィルタが、それぞれハウジングの内部に収容されてなるものである。
【0005】
このディスク型ガス発生器においては、点火器にて生じた火炎によって確実にガス発生剤が着火されることとなるように、ガス発生剤が収容された燃焼室と点火器との間に燃焼促進剤としての伝火薬(エンハンサ)が配置されることが一般的である。通常、伝火薬は、エンハンサカップまたはエンハンサホルダと呼ばれるカップ状部材の内部に設けられた伝火室に収容され、この伝火室が点火器の点火部(スクイブカップ)に面することとなるように、上記カップ状部材が燃焼室内に突出した状態で配置される。このような構成のガス発生器が開示された文献として、たとえば特開2002−370607号公報(特許文献1)や、特開2008−183939号公報(特許文献2)等がある。
【0006】
ここで、ガス発生器においては、エアバッグの膨張および展開に適した所望のガス出力が得られるように、ガス発生剤の燃焼が所望の燃焼特性を示すように設計されていることが重要である。そのためには、点火器にて生じた火炎エネルギーが制御性よくガス発生剤に伝達されることが重要であり、特に伝火薬による火炎エネルギーの伝達を制御することが重要である。
【0007】
このため、上述の特許文献1に開示のガス発生器においては、たとえばステンレス合金製等の機械的強度の高いエンハンサホルダを使用し、このエンハンサホルダの所定位置に所定の大きさの開口を設けることにより、伝火薬の燃焼による火炎エネルギーの伝達を制御することとしている。
【0008】
しかしながら、上述のように開口を有するエンハンサホルダを使用した場合には、振動等によって伝火薬が燃焼室に移動したりガス発生剤が伝火室に移動したりすることを防止するために、シール部材によって開口を閉塞しておくことが必要である。通常、この開口を閉塞するシール部材としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔が使用されるが、このアルミニウム箔は非常に薄くその取扱いが困難であり、製造工程が煩雑になる問題がある。
【0009】
また、近年、自動車の軽量化がますます重要な課題となっているが、上述のようにステンレス合金製等の機械的強度の高いエンハンサホルダを使用した場合には、エンハンサホルダの重量が重くなり、ガス発生器全体としての重量が増加してしまう問題も有している。
【0010】
加えて、上述した特許文献1に開示される如くのエンハンサホルダを用いた場合には、伝火薬が着火した場合にもエンハンサホルダの頂壁部の少なくとも一部が残存する構成であるため、当該部分によって火炎エネルギーの伝達が阻害されてガス発生剤の着火遅れが生じ、ガス発生器の作動時におけるガス出力の遅延が生じてしまう問題がある。
【0011】
さらには、特に、上述した特許文献1の図5に記載されている如くのエンハンサホルダのように、周方向および軸方向に沿って部分的に孔が設けられた形態を採用した場合には、伝火薬の火炎エネルギーが孔から直線的に伝わることでガス発生剤の一部分に対して火炎エネルギーが集中して伝達されることになってしまうため、火炎エネルギーを受け取るガス発生剤の状態により燃焼特性が大きく変化し、結果としてガス出力に大きなばらつきが生じてしまう問題も生じ得る。
【0012】
そのため、機械的強度が低く、伝火薬の着火に伴ってカップの全面が破裂または溶融するように構成されたエンハンサカップを利用することが検討されている。このようなエンハンサカップを利用した場合には、予めエンハンサカップに開口を設ける必要がなく上述した開口の閉塞作業が不要となり、製造工程が大幅に容易化するメリットが得られる。また、機械的強度が低いエンハンサカップを利用することが可能となれば、エンハンサカップ自体を軽量化することも可能となり、ガス発生器全体としての軽量化が図られるばかりでなく、材料の使用量の低減に伴うコスト低減や資源の保護の観点からも非常に好適なものとなる。
【0013】
しかしながら、伝火薬が着火することによって伝火室内の圧力が高められてエンハンサカップが破裂したりその熱によって溶融したりするようにエンハンサカップの全体を脆弱に構成した場合には、伝火室内に生じた火炎が急速に燃焼室に流入してガス発生剤に伝達されることとなってしまう。そのため、ガス発生剤が急速に燃焼してしまうこととなり、ガス出力を所定時間にわたって持続させる等のガス出力の調整が非常に困難となってしまう。このように、エンハンサカップの全体を脆弱にした場合には、その機械的強度の低下に伴って伝火薬による火炎エネルギーの伝達の制御が非常に困難になるという課題が存在している。
【0014】
そこで、上記特許文献2に開示されるガス発生器においては、エンハンサカップを取り囲むように燃焼室に隔壁部を設けることで着火されたガス発生剤の燃え広がりが当該隔壁部によって制限されるようにすることにより、燃焼室内に収容されたガス発生剤の燃焼の進行を意図的に遅延させることとし、これによりガス発生剤の燃焼特性を調整可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2002−370607号公報
【特許文献2】特開2008−183939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記特許文献2に開示される如くのガス発生器とした場合には、ガス発生剤の燃え広がりを制限するための隔壁部を別途ガス発生器に具備させることが必要になり、当該隔壁部を設けた分だけガス発生器の重量が増加してしまう問題があった。また、燃焼室に隔壁部を設けた場合には、当該隔壁部が邪魔となり、ガス発生剤の充填工程においてガス発生剤を燃焼室に速やかに均等かつ密に充填する妨げとなってしまう問題もあった。さらには、燃焼室に隔壁を設けた場合には、ガス発生剤が燃焼することによって生じる圧力によって隔壁部に意図しない変形が生じる場合があり、その結果、ガス発生器の出力特性にばらつきが生じてしまう問題もあった。
【0017】
したがって、上記特許文献2に開示のガス発生器は、軽量化の観点や製造作業の容易化、燃焼特性の制御性の観点から、依然としてその改善の余地のあるものであった。
【0018】
また、一般に、ガス発生器においては、エアバッグが損傷しないように、燃焼室にて生成された高温のガスが十分に冷却された後にガス噴出口から噴出されることや、当該ガス噴出口から噴出されるガスにスラグ(残渣)が含まれていないことが重要である。そのため、ディスク型ガス発生器においては、上述したように、燃焼室を取り囲むようにフィルタが配置されることが一般的であり、燃焼室にて生成されたガスが当該フィルタを経由することでガスの冷却とスラグの捕集とが行なわれることになる。
【0019】
しかしながら、作動時におけるハウジング内部でのガスの流れを考慮に入れずに単にフィルタをハウジング内部に配置したのみでは、作動時において時々刻々と変化するハウジング内部での圧力状態の変化により、フィルタの所定部位にのみガスの流れが集中してしまい、結果的にガスの冷却やスラグの捕集に実質的に寄与していない部位がフィルタ中に多く存在してしまうことにもなりかねない。
【0020】
その場合には、ガスの冷却およびスラグの捕集に寄与するフィルタの実効体積が大幅に減少し、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率が低下してしまう問題が生じてしまう。そのため、ガス発生器においては、フィルタの実効体積を高く確保し、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高める何らかの対策をとることが必要不可欠である。このようにフィルタの実効体積を高く確保することができれば、その分だけフィルタを小型化することができ、ガス発生器の軽量化にもつながることになる。
【0021】
したがって、本発明は、上述した課題に着目してなされたものであり、伝火薬による火炎エネルギーの伝達が好適に制御可能であるとともに、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能で、安価にかつ容易に製造することができる軽量で出力特性にばらつきの生じないガス発生器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に基づくガス発生器は、ハウジングと、点火器と、カップ状部材と、フィルタとを備えている。上記ハウジングは、軸方向の端部を閉塞する天板部および底板部と、ガス噴出口が設けられた周壁部とによって構成された短尺筒状の部材からなり、ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に含んでいる。上記点火器は、上記底板部に取付けられ、作動時において着火する点火薬が収容された点火部を含んでいる。上記カップ状部材は、伝火薬が収容された伝火室を内部に含み、上記点火部に上記伝火室が面するように上記燃焼室内に向けて突出するように配置された有底筒状の単一の部材からなる。上記フィルタは、上記ハウジングの内部に配置され、上記燃焼室を上記ハウジングの径方向に取り囲む中空筒状の部材からなる。上記カップ状部材は、上記伝火室と上記燃焼室とを区画する側壁部に、上記点火器の作動に伴う上記伝火薬の燃焼により破裂または溶融する薄肉の脆弱部と、上記点火器の作動に伴う上記伝火薬の燃焼によっても破裂または溶融せずに残存する厚肉の非脆弱部とを有している。上記脆弱部は、上記カップ状部材の軸方向における上記側壁部の途中位置に上記カップ状部材の周方向に沿って環状に設けられ、上記非脆弱部によって上記カップ状部材の軸方向に沿って挟み込まれて位置している。上記ガス噴出口は、上記ハウジングの軸方向に沿って上記脆弱部よりも上記天板部寄りの位置に配設され、上記脆弱部の上記底板部側の軸方向端部は、上記ハウジングの軸方向に沿って上記点火部の上記天板部側の端部よりも上記底板部寄りの位置に配設されている。
【0023】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記脆弱部が、上記ハウジングの軸方向に沿って上記点火部の上記天板部側の端部よりも上記底板部寄りの位置に配設されていることが好ましい。
【0024】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記脆弱部が、上記カップ状部材の上記側壁部の外周面に設けられた溝によって構成されていることが好ましい。
【0025】
上記本発明に基づくガス発生器にあっては、上記カップ状部材が、アルミニウム製またはアルミニウム合金製のプレス成形品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、伝火薬による火炎エネルギーの伝達が好適に制御可能であるとともに、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能で、安価にかつ容易に製造することができる軽量で出力特性にばらつきの生じないガス発生器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるガス発生器の作動時におけるカップ状部材の挙動および燃焼初期段階におけるガス発生剤の燃え広がりを模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるガス発生器の燃焼中間段階におけるガス発生剤の燃え広がりおよび生成されたガスの流れを模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるガス発生器の燃焼最終段階におけるガス発生剤の燃え広がりおよび生成されたガスの流れを模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の変形例に係るガス発生器の模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態の変形例に係るガス発生器の作動時におけるカップ状部材の挙動および燃焼初期段階におけるガス発生剤の燃え広がりを模式的に示す断面図である。
【図7】比較例に係るガス発生器の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に組み込まれる、いわゆるディスク型ガス発生器に本発明を適用した場合を示すものである。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態におけるガス発生器の模式断面図である。まず、図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の構造について説明する。
【0030】
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aは、軸方向の両端が閉塞された短尺円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に各種の構成部品が収容されている。ハウジングは、それぞれが有底筒状に形成されたイニシエータシェル10およびクロージャシェル20を組み合わせることによって形成されている。より具体的には、イニシエータシェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、クロージャシェル20は、天板部21と周壁部22とを有しており、これらイニシエータシェル10およびクロージャシェル20の開口端同士が面するように組み合わされることにより、その内部に各種の構成部品が収容される空間が形成されている。
【0031】
イニシエータシェル10およびクロージャシェル20は、いずれもステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等の金属製の部材にて構成される。より具体的には、イニシエータシェル10およびクロージャシェル20は、それぞれ一枚の板状または一片のブロック状の金属部材から、各部分に相当する金型等を使用して鍛造加工、絞り加工、プレス加工等を組み合わせることによって加圧流動の繰り返しによって成形される。また、イニシエータシェル10およびクロージャシェル20の接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用される。
【0032】
イニシエータシェル10の底板部11の略中央部には、保持部13が形成されている。この保持部13は、点火器30が挿入されることで当該点火器30を保持するための部位である。具体的には、保持部13に設けられた開口に点火器30の端子ピン32が挿通するように点火器30が保持部13にイニシエータシェル10の内側から取付けられ、この状態において保持部13の先端に設けられたかしめ部14aが点火器30側に向かってかしめることにより、点火器30がイニシエータシェル10の保持部13にかしめ固定されている。なお、ハウジングの外部に露出するように配置された端子ピン32には、点火器30とコントロールユニットとを結線するためのハーネスのコネクタ(図示せず)が接続される。
【0033】
点火器30は、火炎を発生させるための点火装置であり、点火部31と上述の端子ピン32とを含んでいる。点火部31は、その内部に、作動時において着火する点火薬と、この点火薬を燃焼させるための抵抗体とを含んでいる。端子ピン32は、点火薬を着火させるために点火部31に接続されている。
【0034】
より詳細には、点火器30は、一対の端子ピン32が挿通されてこれを保持する基部と、基部上に取付けられたスクイブカップとを備えており、スクイブカップ内に挿入された端子ピン32の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に接するようにスクイブカップ内に点火薬が充填されている。抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。スクイブカップは、一般に金属製またはプラスチック製である。
【0035】
衝突を検知した際には、端子ピン32を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器30が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
【0036】
点火器30と保持部13との間には、シール部材33が介在されている。シール部材33は、点火器30と保持部13との間に生じる隙間を気密に封止することによって後述する伝火室44を密閉するためのものであり、点火器30を保持部13にかしめ固定する際に上記隙間に挿入される。シール部材33としては、十分な耐熱性および耐久性の材料からなるものを利用することが好ましく、たとえばエチレンプロピレンゴムの一種であるEPDM樹脂製のOリング等を利用することが好適である。なお、別途、シール部材33が介装される部分に液状のシール剤を塗布しておけば、さらに伝火室44の密閉性を高めることができる。
【0037】
イニシエータシェル10の保持部13には、点火器30を覆うように有底筒状のカップ状部材としてのエンハンサカップ40が固定されている。エンハンサカップ40は、頂壁部41、側壁部42およびフランジ部43を有しており、その内部に伝火薬34が収容された伝火室44を含んでいる。エンハンサカップ40は、伝火室44と後述する燃焼室50とを区画するための部材であり、一枚の板状または一片のブロック状の金属部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。
【0038】
エンハンサカップ40は、単一の部材(すなわち一部品)にて構成されており、その内部に設けられた伝火室44が点火部31に面するように保持部13に固定されている。より具体的には、保持部13に設けられたかしめ部14bによってエンハンサカップ40のフランジ部43がかしめられることにより、エンハンサカップ40が保持部13に固定されている。
【0039】
エンハンサカップ40は、頂壁部41および側壁部42のいずれにも開口を有しておらず、エンハンサカップ40がイニシエータシェル10の保持部13に固定された状態において、その内部に設けられた伝火室44を完全に密閉している。このエンハンサカップ40は、点火器30が作動することによって伝火薬34が着火された場合に伝火室44内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴ってその一部が破裂または溶融するものであり、その機械的強度は従来のステンレス合金製のエンハンサホルダに比べて低いものである。エンハンサカップ40の材質としては、好適には金属が利用され、プレス加工の際の成形性の観点や軽量化の観点から、特にアルミニウムやアルミニウム合金等が好適に利用される。
【0040】
エンハンサカップ40の側壁部42には、薄肉の脆弱部42aと、厚肉の一対の非脆弱部42b,42cとが設けられている。より具体的には、脆弱部42aは、エンハンサカップ40の側壁部42の外周面に周方向に沿って延びるように環状の溝が設けられることによって形成されたエンハンサカップ40の薄肉の部位にて構成されており、非脆弱部42b,42cは、当該環状の溝が設けられていないエンハンサカップ40の厚肉の部位にて構成されている。
【0041】
脆弱部42aは、エンハンサカップ40の軸方向における側壁部42の途中位置に設けられている。これに対し、一方の非脆弱部42bは、上記途中位置からエンハンサカップ40の側壁部42のフランジ部43側の軸方向端部にまで達するように設けられており、他方の非脆弱部42cは、上記途中位置からエンハンサカップ40の側壁部42の頂壁部41側の軸方向端部にまで達するように設けられている。以上により、薄肉の脆弱部42aは、エンハンサカップ40の軸方向に沿って厚肉の一対の非脆弱部42b,42cによって挟み込まれて位置している。なお、さらに詳細な脆弱部42aの形成位置については、後述することとする。
【0042】
ここで、脆弱部42aは、その厚みが非脆弱部42b,42cに比して薄く形成されることにより、点火器30の作動に伴う伝火薬34の燃焼によって破裂または溶融するように構成されている。一方、非脆弱部42b,42cは、その厚みが脆弱部42aに比して厚く形成されることにより、点火器30の作動に伴う伝火薬34の燃焼によっても破裂および溶融せずに残存するように構成されている。
【0043】
なお、上述した脆弱部42aの厚みt2および非脆弱部42b,42cの厚みt3,t4は、使用される伝火薬34の種類や充填量等に基づいて適宜調節されるものであるが、その一例を以下に示す。たとえば、上記脆弱部42aの厚みt2は、エンハンサカップ40をアルミニウム製またはアルミニウム合金製とした場合には、1.0mm以下とされ、好ましくは0.5mm以下とされ、さらに好ましくは0.3mm以下とされる。一方、上記非脆弱部42b,42cの厚みt3,t4は、エンハンサカップ40をアルミニウム製またはアルミニウム合金製とした場合には、脆弱部42aの厚みt2よりも大きいことを条件に、0.7mm以上1.5mm以下とされ、好ましくは0.7mm以上1.2mm以下とされ、さらに好ましくは0.6mm以上0.9mm以下とされる。なお、エンハンサカップ40の頂壁部41の厚みt1は、特に制限されるものではないが、プレス成形の際の成形性を考慮した場合には、非脆弱部42b,42cの厚みt3,t4と同等程度とされることが好ましい。
【0044】
伝火室44に充填された伝火薬34は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬34としては、後述するガス発生剤51を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬34は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
【0045】
イニシエータシェル10およびクロージャシェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、上述のエンハンサカップ40が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤51が収容される燃焼室50が位置している。より具体的には、上述のエンハンサカップ40は、ハウジングの内部に形成された燃焼室50内に突出して配置されており、このエンハンサカップ40の頂壁部41の外表面に面する部分および側壁部42の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室50として構成されている。ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、燃焼室50のうち、エンハンサカップ40の側壁部42の外表面に面する部分の空間にのみ、ガス発生剤51が収容されている。
【0046】
また、燃焼室50を取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ55が配置されている。フィルタ55は、筒状の形状を有しており、その中心軸はハウジングの中心軸と実質的に合致するように配置されている。
【0047】
ガス発生剤51は、点火器30によって点火された伝火薬34が燃焼することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させるものである。ガス発生剤51は、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体として形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩、過塩素酸アンモニウムや過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
【0048】
ガス発生剤51の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤51の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤51の形状の他にもガス発生剤51の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
【0049】
フィルタ55は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
【0050】
フィルタ55は、燃焼室50にて生成されたガスがこのフィルタ55中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによって当該ガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、当該ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室50内にて生成されたガスが確実にフィルタ55中を通過するようにすることが必要である。
【0051】
フィルタ55に対面する部分のクロージャシェル20の周壁部22には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、フィルタ55を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。クロージャシェル20の周壁部22のフィルタ55側に位置する主面には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシール部材24が貼付されている。このシール部材24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、燃焼室50の気密性が確保されている。
【0052】
ハウジングの内部の空間のうち、クロージャシェル20の天板部21側の端部には、フィルタ55の上端をハウジングに固定するためのクロージャシェル側保持部材52が配置されている。クロージャシェル側保持部材52は、クロージャシェル20の天板部21に当接する部位と、フィルタ55の上端部分の内周面に当接する部位とを有している。このクロージャシェル側保持部材52の内部には、燃焼室50内に収容されたガス発生剤51に接触するようにクッション材53が配置されている。このクッション材53は、成形体からなるガス発生剤51が振動等によって粉砕されることを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体や発泡シリコン等が利用される。
【0053】
一方、ハウジングの内部の空間のうち、イニシエータシェル10の底板部11側の端部には、フィルタ55の下端をハウジングに固定するためのイニシエータシェル側保持部材54が配置されている。イニシエータシェル側保持部材54は、イニシエータシェル10の底板部11の内底面に当接する部位と、フィルタ55の下端部分の内周面に当接する部位とを有している。
【0054】
これらクロージャシェル側保持部材52およびイニシエータシェル側保持部材54は、たとえば単一の金属製板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板(SPCC)やステンレス鋼板(SUS304)等)が用いられる。クロージャシェル側保持部材52およびイニシエータシェル側保持部材54は、上述のように金属製板状部材の一部を折り曲げることによって形成されたものであるため、クロージャシェル側保持部材52およびイニシエータシェル側保持部材54はそれぞれ適度な弾性を有している。そのため、クロージャシェル側保持部材52およびイニシエータシェル側保持部材54は、それぞれフィルタ55の内周面に適度に接触することになり、これによりフィルタ55がハウジングに保持されて固定されることになる。また、クロージャシェル側保持部材52およびイニシエータシェル側保持部材54のそれぞれは、フィルタ55の上端とクロージャシェル20の天板部21との間の隙間およびフィルタ55の下端とイニシエータシェル10の底板部11との間の隙間からのガスの流出を防止する機能も果たしている。
【0055】
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述したエンハンサカップ40に設けられた脆弱部42a、点火器30の点火部31、および、ハウジングの周壁部22に設けられたガス噴出口23のそれぞれが、以下の関係を満たすようにその形成位置が調節されている。
【0056】
まず、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、エンハンサカップ40の頂壁部41の上面を基準位置とした場合に、当該基準位置から点火部31の天板部21側の端部までの距離H1よりも、当該基準位置から脆弱部42aの底板部11側の軸方向端部までの距離hが大きくなるように(すなわち、H1<hの条件が満たされるように)、脆弱部42aの形成位置が調節されている。すなわち、脆弱部42aの底板部11側の軸方向端部は、ハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部よりも底板部11寄りの位置に配設されている。
【0057】
一方、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部についても、これがハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部よりも底板部11寄りの位置に配設されるように、脆弱部42aのハウジングの軸方向に沿った大きさwが調節されている。すなわち、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、エンハンサカップ40の頂壁部41の上面を基準位置とした場合に、当該基準位置から点火部31の天板部21側の端部までの距離H1よりも、当該基準位置から脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部までの距離(h−w)が大きくなるように(すなわち、H1<(h−w)の条件が満たされるように)、脆弱部42aの形成位置が調節されている。これにより、脆弱部42aの全体が、ハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部寄りも底板部11寄りの位置に配設されることになる。
【0058】
また、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、エンハンサカップ40の頂壁部41の上面を基準位置とした場合に、当該基準位置から点火部31の天板部21側の端部までの距離H1よりも、当該基準位置からガス噴出口23の底板部11側の軸方向端部までの距離H2が大きくなるように(すなわち、H2<H1の条件が満たされるように)、ガス噴出口23の形成位置が調節されている。すなわち、ガス噴出口23は、ハウジングの軸方向に沿って点火部31よりも天板部21寄りの位置に配設されている。これにより、ガス噴出口23は、ハウジングの軸方向に沿って脆弱部42aよりも天板部21寄りの位置に配設されることになる。
【0059】
加えて、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、エンハンサカップ40の頂壁部41の上面と、天板部21に密着して配置されたクロージャシェル側保持部材52の下面とが、非接触となるように構成されている。したがって、これら部位間の距離Dは、少なくともD≧0.4mmの条件を満たしていることになる。
【0060】
次に、図1を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの組立作業の要領について説明する。
【0061】
まず、イニシエータシェル10の保持部13にシール部材33を添接して点火器30をかしめ固定する。そして、内部に伝火薬34が収容されたエンハンサカップ40をイニシエータシェル10の保持部13にかしめ固定する。次いで、イニシエータシェル側保持部材54およびフィルタ55をイニシエータシェル10の内底面に向けて挿入配置する。
【0062】
そして、フィルタ55の内側にガス発生剤51を充填し、クッション材53を介装したクロージャシェル側保持部材52をフィルタ55の上端部分に内挿する。その後、ガス噴出口23がシール部材24によって閉塞されたクロージャシェル20をイニシエータシェル10に対して被せ、イニシエータシェル10とクロージャシェル20とを溶接する。以上により、図1に示す構造のガス発生器1Aの組み立てが完了する。
【0063】
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、エンハンサカップ40に開口が設けられていないため、エンハンサカップ40の内部に設けられた伝火室44に伝火薬34を充填する工程が非常に容易に行なえる。これは、ガス発生器1Aの作動時において、エンハンサカップ40の一部が破裂または溶融するようにエンハンサカップ40自体が機械的強度が低い脆弱な部材にて構成されているためである。すなわち、上述した特許文献1に開示されるような開口を有するエンハンサホルダを用いた場合に必要であった、伝火薬を充填するためにエンハンサホルダに設けられた開口を閉塞する作業が不要になるため、製造工程を大幅に簡素化することができる。
【0064】
図2ないし図4は、本実施の形態におけるガス発生器の作動時におけるカップ状部材の挙動、ガス発生剤の燃え広がり、および、生成されたガスの流れを模式的に示す断面図である。次に、これら図2ないし図4を参照して、本実施の形態におけるガス発生器の作動時における動作について説明する。
【0065】
本実施の形態におけるガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて点火器30が作動する。伝火室44に収容された伝火薬34は、点火器30が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。
【0066】
図2に示すように、この伝火薬34の燃焼により、エンハンサカップ40内の圧力が高まるとエンハンサカップ40の脆弱部42aがその圧力または熱によって破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室50に流れ込む。このとき、エンハンサカップ40の非脆弱部42b,42cは、破裂および溶融することなく残存することになり、このうちの非脆弱部42cを含むエンハンサカップ40の頂壁部41側の端部は、伝火室44の内圧上昇に伴ってクロージャシェル20側に向けて吹き付けられることになる。
【0067】
図2ないし図4に示すように、流れ込んだ熱粒子により、燃焼室50に収容されたガス発生剤51が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室50にて発生したガスは、フィルタ55中を通過し、その際フィルタ55によって熱が奪われて冷却されるとともに、当該ガス中に含まれる残渣がフィルタ55によって除去される。フィルタ55を通過した後のガスは、ハウジングの外周縁部に流れ込み、その後、クロージャシェル20の周壁部22に設けられたガス噴出口23からハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
【0068】
以下においては、図1ないし図4を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aとした場合に、伝火薬による火炎エネルギーの伝達が好適に制御可能になるとともに、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率が高く維持できる理由について説明する。
【0069】
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにおいては、エンハンサカップ40の軸方向における側壁部42の途中位置の厚みt2を他の部位に比較して薄肉とすることによって脆弱部42aを構成し、エンハンサカップ40の側壁部42の残る部分の厚みt3,t4を上記脆弱部42aの厚みt2よりも厚肉とすることによって非脆弱部42b,42cを構成している。
【0070】
このように構成することにより、図2に示すように、点火器30の作動によって伝火薬34が燃焼した状態において、エンハンサカップ40の脆弱部42aのみが破裂または溶融し、非脆弱部42b,42cが破裂および溶融せずに残存することになり、このうちの非脆弱部42cを含むエンハンサカップ40の頂壁部41側の端部が、伝火室44の内圧上昇に伴ってクロージャシェル20側に向けて吹き付けられて移動することになる。
【0071】
その結果、燃焼室50内に流入する火炎が、非脆弱部42bと移動後の非脆弱部42cとの間に生じる隙間によって絞られることになり、エンハンサカップ40に隣接するガス発生剤51のすべてが一度に同時に着火されることがなくなり、図2に示す燃焼初期段階において、ガス発生剤51の燃え広がりが当該隙間を中心として放射状に進行することになる。なお、このガス発生剤51の燃え広がりを図2中において破線矢印にて模式的に表わしている。
【0072】
その際、非脆弱部42bと移動後の非脆弱部42cとの間に生じる隙間の軸方向の大きさd(図2参照)は、非作動時におけるエンハンサカップ40の頂壁部41の上面とクロージャシェル側保持部材52の下面との間の距離D(図1参照)と、脆弱部42aの軸方向の大きさw(図1参照)とによって決まることになる。
【0073】
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述したように、脆弱部42aがハウジングの軸方向に沿って点火部31よりも底板部11寄りの位置に配設されているため、上記隙間は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11寄りの位置に形成されることになる。したがって、図2に示す燃焼初期段階においては、燃焼室50の底板部11寄りの部分に充填されたガス発生剤51が主として燃焼することになる。
【0074】
そのため、図3に示す燃焼中間段階においては、燃焼室50の底板部11寄りの部分にて生成されたガスが、未燃焼のガス発生剤51が流動抵抗となってしまうことから、当該部分から、燃焼室50の内圧よりも低圧であるフィルタ55の外側の空間に向けてハウジングの径方向に沿ってフィルタ55に流入することになり、フィルタ55の底板部11寄りの部分が主として利用されてガスの冷却およびスラグの捕集が行なわれることになる。
【0075】
また、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述したように、ガス噴出口23がハウジングの軸方向に沿って脆弱部42aよりも天板部21寄りの位置に配設されているため、当該フィルタ55の外側の空間に達したガスは、その後向きを変えてガス噴出口23から外部へと噴出されることになる。なお、このガスの流れを図3中において矢印にて模式的に表わしている。
【0076】
これと並行して、燃焼室50内におけるガス発生剤51の燃え広がりも進行することになり、図3に示す燃焼中間段階においては、未燃焼のガス発生剤51が残存する、燃焼室50の天板部21寄りの部分へとガス発生剤51の燃焼が進行することになる。したがって、図3に示す燃焼中間段階においては、燃焼室50の天板部21寄りの部分に充填されたガス発生剤51が主として燃焼することになる。
【0077】
そのため、図4に示す燃焼最終段階においては、燃焼室50の天板部21寄りの部分にて生成されたガスが、当該部分から、燃焼室50の内圧よりも低圧であるフィルタ55の外側の空間に向けてハウジングの径方向に沿ってフィルタ55に流入することになり、フィルタ55の天板部21寄りの部分が主として利用されてガスの冷却およびスラグの捕集が行なわれることになる。そして、当該フィルタ55の外側の空間に達したガスは、その後ガス噴出口23から外部へと噴出されることになる。なお、このガスの流れを図4中において矢印にて模式的に表わしている。
【0078】
このように、本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、ガス発生剤51の燃え広がりの進行に応じてフィルタ55の軸方向に沿ったほぼすべての部分をガスの冷却およびスラグの捕集に寄与させることができるため、フィルタの実効体積を大きく確保することが可能になり、そのため、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能になる。
【0079】
また、本実施の形態におけるガス発生器1Aの如く、エンハンサカップ40に脆弱部42aと非脆弱部42b,42cとを設け、これら脆弱部42aおよび非脆弱部42b,42cが設けられる位置および大きさならびにエンハンサカップ40の頂壁部41とクロージャシェル20の内面との間の距離等を予め適宜調節することにより、ガス出力を所定時間にわたって持続させる等のガス出力の調整を仕様に応じて最適化することが非常に容易に行なえることになる。
【0080】
また、エンハンサカップ40の側壁部42をすべて薄肉に構成した場合には、伝火薬34の燃焼によってエンハンサカップ40が破裂または溶融した際の衝撃がフィルタ55に加わってフィルタ55が損傷してしまうおそれがあるが、本実施の形態におけるガス発生器1Aの如くエンハンサカップ40の側壁部42に非脆弱部42b,42cを設けることにより、このようなフィルタ55に加わる衝撃が緩和されてその損傷が未然に防止される効果も得られる。
【0081】
また、上記構成を採用することにより、脆弱部42aが伝火薬34の着火時において破裂または溶融することで非脆弱部42cを含むエンハンサカップ40の頂壁部41寄りの端部が、非脆弱部42bから脱離してハウジングの天板部21側に向けて移動することになるため、上述した特許文献1に開示される如くのエンハンサホルダを用いた場合に生じるガス出力の遅延が生じることもない。
【0082】
さらに、図1に示すように、エンハンサカップ40の側壁部42に環状に脆弱部42aを設けることにより、伝火薬34の着火時においてエンハンサカップ40の側壁部42に周方向に沿って連続して上記隙間が形成されることになるため、伝火薬34の火炎エネルギーが当該環状の隙間を介してガス発生剤51に伝達されることになる。そのため、火炎エネルギーの伝達面積を十分に広く確保することが可能となり、ガス出力にばらつきが生じることを効果的に抑制することができる。加えて、点火器30の径方向外側に点火部31に近接して脆弱部42aが設けられているため、ガス発生剤51の着火遅れを効果的に防止することができる。
【0083】
また、上記構成を採用することにより、上述した特許文献2に開示される如くの隔壁部を燃焼室に設ける必要もないため、ガス発生器全体としての重量が増加することもなければ、出力特性にばらつきが生じることもない。
【0084】
以上において説明したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、伝火薬による火炎エネルギーの伝達が好適に制御可能であるとともに、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能で、かつ安価にかつ容易に製造することができる軽量で出力特性にばらつきの生じないガス発生器とすることができる。
【0085】
以上において説明した本実施の形態においては、脆弱部42aの全体がハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部寄りも底板部11寄りの位置に配設されるように構成した場合を例示した。しかしながら、上述したように、当該脆弱部42aが設けられる位置や当該脆弱部42aの軸方向の大きさを適宜調節することにより、ガス発生剤51の燃焼の進行を意図的に遅延させてこれを適宜調節しつつ、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率が高く維持することが可能である。
【0086】
以下においては、当該脆弱部が設けられる位置を上述した位置と異なる位置にするとともに、当該脆弱部の軸方向の大きさを異なる大きさにした場合を、本実施の形態の変形例として例示する。図5は、本実施の形態の変形例に係るガス発生器を示す模式断面図であり、図6、本実施の形態の変形例に係るガス発生器の作動時におけるカップ状部材の挙動およびガス発生剤の燃え広がりを模式的に示す断面図である。
【0087】
図5に示すように、本変形例に係るガス発生器1Bにあっては、脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部が、ハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部よりも天板部21寄りの位置に配設されるように、脆弱部42aのハウジングの軸方向に沿った大きさwが調節されている。すなわち、本変形例に係るガス発生器1Bにあっては、エンハンサカップ40の頂壁部41の上面を基準位置とした場合に、当該基準位置から点火部31の天板部21側の端部までの距離H1よりも、当該基準位置から脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部までの距離(h−w)が小さくなるように(すなわち、H1>(h−w)の条件が満たされるように)、脆弱部42aの形成位置が調節されている。これにより、脆弱部42aの一部が、ハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部寄りも底板部11寄りの位置に配設されることになるとともに、脆弱部42aの残る一部が、ハウジングの軸方向に沿って点火部31の天板部21側の端部よりも天板部21寄りの位置に配置されることになる。
【0088】
このように構成した場合には、図6に示すように、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aとした場合に比べ、非脆弱部42bと移動後の非脆弱部42cとの間に生じる隙間が形成される位置が天板部21寄りの位置となるとともに、当該隙間の大きさがより大きくなり、ガス発生剤51の燃え広がりが大きくなる。そのため、本変形例に係るガス発生器1Bとすることにより、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aに比べて異なるガスの出力特性を示すことになる。なお、燃焼初期段階におけるガス発生剤51の燃え広がりを図6中において破線矢印にて模式的に表わしている。
【0089】
このように構成した場合にも、非脆弱部42b,42cが破裂および溶融せずに残存することにより、エンハンサカップ40に隣接するガス発生剤51のすべてが一度に同時に着火されることがなくなり、ガス発生剤51が急速に燃焼することを防止してその燃焼の進行を意図的に遅延させることができるとともに、フィルタ55の軸方向に沿った概ねすべての部分をガスの冷却およびスラグの捕集に寄与させることができるため、フィルタの実効体積を大きく確保することが可能になり、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能になる。
【0090】
なお、脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部が、エンハンサカップ40の頂壁部41に極端に近接して配設された場合には、エンハンサカップ40の側壁部42のほぼすべての部位が脆弱部42aとなってしまうことになるため、上述した効果が十分に得られないこととなってしまう。そのため、脆弱部42aの天板部21側の軸方向端部は、好適には、エンハンサカップ40の頂壁部41の下面と点火部31の天板部21側の端部との間の距離の半分以下、さらに好ましくは、1/4以下程度とされることが好ましい。
【0091】
以上において説明したように、本発明によれば、エンハンサカップに設けられる脆弱部の位置や軸方向の大きさ等を適宜変更することで伝火薬によるエネルギーの伝達を制御することが可能となり、また当該脆弱部とガス噴出口の形成位置を適宜調節することにより、ガスの冷却機能およびスラグの捕集機能を高く維持することが可能になり、全体として所望のガス出力が得られるガス発生器とすることができる。
【0092】
(検証試験)
以下においては、本発明によって得られる効果を確認するために行なった検証試験の結果について説明する。図7は、比較例に係るガス発生器の構造を示す模式断面図である。
【0093】
検証試験においては、本発明に基づいた実施例に係るガス発生器と、本発明に基づかない比較例に係るガス発生器とをそれぞれ試作し、これらを所定容量の気密に封止されたタンク内に設置して実際に作動させた後に、タンク内に放出されたスラグの量を確認することでスラグ捕集機能の差を確認し、また作動後のフィルタの外観を目視によって確認することでフィルタの実効体積の差について検証を行なった。なお、実施例および比較例においては、同種の点火薬、伝火薬およびガス発生剤を同量使用し、エンハンサカップの形状以外の構造(すなわち、ハウジングやフィルタ等の構造)はすべて共通の構造とし、ガス発生器を作動させる際の雰囲気温度としては、室温環境下よりもより多くのスラグが生成される条件である高温環境下(約90℃)とした。
【0094】
比較例に係るガス発生器としては、図7に示す構造のガス発生器1Xを使用した。すなわち、比較例に係るガス発生器1Xにおいては、エンハンサカップ40として側壁部42がすべて脆弱な部位となるように構成されたもの(すなわち、伝火薬34の燃焼によっても破裂または溶融しない非脆弱部を有さないもの)を使用した。当該比較例に係るガス発生器1Xにおいては、側壁部42のすべての部位が脆弱に構成されているため、ガス発生剤51の燃え広がりが伝火室44の上端部、略中央部および下端部のすべてを中心として放射状に進行することになる。なお、このガス発生剤51の燃え広がりを図7中において破線矢印にて模式的に表わしている。
【0095】
このように構成された比較例に係るガス発生器1Xにあっては、燃焼室50に収容されたガス発生剤51のうち、エンハンサカップ40に隣接する部分に配置されたガス発生剤51が、全体に一度に着火されてハウジングの径方向外側に向かって燃え広がることになるため、燃焼室50にて生成されたガスは、もっぱらフィルタ55のガス噴出口23が形成された位置に対向する部分に集中して外部に噴出されることになる。そのため、フィルタ55の実効体積は、大幅に小さいものとなってしまう。
【0096】
実施例に係るガス発生器としては、上述した図1に示す構造のガス発生器1Aを使用した。当該実施例に係るガス発生器1Aにおいては、アルミニウム製のエンハンサカップ40を使用し、脆弱部42aの厚みt2を0.3mmとし、非脆弱部42b,42cの厚みt3,t4をいずれも1.0mmとした。脆弱部42aが設けられる位置については、図1に示す高さ(h−w/2)が16.0mmとなる位置とし、脆弱部42aの軸方向の大きさについては、図1に示す大きさwが1.9mmとなる大きさとした。なお、エンハンサカップ40の軸方向に沿った全長は24.2mmとし、その内径は14.0mmとした。また、頂壁部41の厚みt1は、1.2mmとし、フランジ部43の厚みは、1.0mmとした。
【0097】
比較例に係るガス発生器1Xにおいては、アルミニウム製のエンハンサカップ40を使用し、側壁部42の厚みt5を0.18mmとした。なお、エンハンサカップ40の軸方向に沿った全長は23.0mmとし、その内径は14.0mmとした。また、頂壁部41の厚みt1は、0.18mmとし、フランジ部43の厚みは、0.19mmとした。
【0098】
上述した条件の下、実施例に係るガス発生器1Aおよび比較例に係るガス発生器をそれぞれ複数作動させ、タンク内に放出されたスラグの量を確認した結果、実施例に係るガス発生器1Aにおけるスラグの放出量の平均値は、比較例に係るガス発生器1Xにおけるスラグの放出量の平均値の約77%にまで低減されていることが確認された。
【0099】
また、作動後においてハウジングを分解してフィルタを目視にて確認したところ、実施例に係るガス発生器1Aにおいては、いずれもフィルタの外周面のほぼ全域が黒色変化しているのに対し、比較例に係るガス発生器1Xにおいては、いずれもフィルタの外周面の天板部寄りの部分のみが黒色変化しており、フィルタの外周面の底板部寄りの部分は、ほとんど黒色変化しておらず、概ね当初の金属色に近い色のままであることが確認された。
【0100】
以上の検証試験の結果から、本発明を適用することにより、フィルタのほぼすべての部分をガスの冷却およびスラグの捕集に寄与させることが可能となってフィルタの実効体積を大きく確保することができ、そのため、ガスの冷却効率およびスラグの捕集効率を高く維持することが可能になることが裏付けられた。
【0101】
なお、以上において説明した本発明の実施の形態およびその変形例においては、本発明をいわゆるディスク型ガス発生器に適用した場合を例示して説明を行なったが、本発明の適用対象はこれに限られるものではない。
【0102】
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0103】
1A,1B ガス発生器、10 イニシエータシェル、11 底板部、12 周壁部、13 保持部、14a,14b かしめ部、20 クロージャシェル、21 天板部、22 周壁部、23 ガス噴出口、24 シール部材、30 点火器、31 点火部、32 端子ピン、33 シール部材、34 伝火薬、40 エンハンサカップ、41 頂壁部、42 側壁部、42a 脆弱部、42b,42c 非脆弱部、43 フランジ部、44 伝火室、50 燃焼室、51 ガス発生剤、52 クロージャシェル側保持部材、53 クッション材、54 イニシエータシェル側保持部材、55 フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の端部を閉塞する天板部および底板部と、ガス噴出口が設けられた周壁部とによって構成され、ガス発生剤が収容された燃焼室を内部に含む短尺筒状のハウジングと、
前記底板部に取付けられ、作動時において着火する点火薬が収容された点火部を含む点火器と、
伝火薬が収容された伝火室を内部に含み、前記点火部に前記伝火室が面するように前記燃焼室内に向けて突出するように配置された有底筒状の単一の部材からなるカップ状部材と、
前記ハウジングの内部に配置され、前記燃焼室を前記ハウジングの径方向に取り囲む中空筒状のフィルタとを備え、
前記カップ状部材は、前記伝火室と前記燃焼室とを区画する側壁部に、前記点火器の作動に伴う前記伝火薬の燃焼により破裂または溶融する薄肉の脆弱部と、前記点火器の作動に伴う前記伝火薬の燃焼によっても破裂または溶融せずに残存する厚肉の非脆弱部とを有し、
前記脆弱部は、前記カップ状部材の軸方向における前記側壁部の途中位置に前記カップ状部材の周方向に沿って環状に設けられ、前記非脆弱部によって前記カップ状部材の軸方向に沿って挟み込まれて位置し、
前記ガス噴出口が、前記ハウジングの軸方向に沿って前記脆弱部よりも前記天板部寄りの位置に配設され、
前記脆弱部の前記底板部側の軸方向端部が、前記ハウジングの軸方向に沿って前記点火部の前記天板部側の端部よりも前記底板部寄りの位置に配設されている、ガス発生器。
【請求項2】
前記脆弱部が、前記ハウジングの軸方向に沿って前記点火部の前記天板部側の端部よりも前記底板部寄りの位置に配設されている、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記脆弱部が、前記カップ状部材の前記側壁部の外周面に設けられた溝によって構成されている、請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記カップ状部材は、アルミニウム製またはアルミニウム合金製のプレス成形品である、請求項1から3のいずれかに記載のガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245873(P2012−245873A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118920(P2011−118920)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】