説明

ガス発生器

燃焼によりガスを発生させるガス発生剤2を充填する第1カップケース3と、第1カップケース3の内側に配設され、着火薬を収納する第2カップケースEを有するスクイブ5と、第2カップケースEを覆う導火孔20を有するスクイブケース7と、スクイブケース7と第2カップケースEとをかしめて保持するホルダ6と、を備えるガス発生器1であって、ホルダ6はスクイブ5の電極ピン11,12の各電極ピン11,12がそれぞれ別個に挿通する孔13,14を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば、自動車のシートベルトプリテンショナー等に用いられるガス発生器に関し、特に高温状態におけるガス発生器のスクイブの電極ピンの飛び出しを確実に防止するガス発生器に関する。
【背景技術】
自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するための安全装置の1つとして、シートベルトプリテンショナーが知られている。このシートベルトプリテンショナーは、ガス発生器が発生する多量の高温、高圧ガスにてシリンダを作動させるものである。このガス発生器は、エアバッグではなくシリンダを作動させるため、発生ガス量が比較的少ないとともに、フィルター又はクーラントを介在させることなく、高温且つ高圧のガスをシリンダに向けて直接噴射する構造になっている。通常、このようなガス発生器は、通電により発火する着火薬を収納するスクイブと、ガス発生剤を収納する第1カップケースと、スクイブ及び第1カップケースを固定するホルダ等とで構成されている。
従来のシートベルトプリテンショナー用ガス発生器の一例を第3図に示す。第3図のガス発生器108は、着火により多量のガスを発生するガス発生剤106と、通電により発火される着火薬を収納するスクイブ104と、ガス発生剤を収納する第1カップケース102と、スクイブ104及び第1カップケース102をそれぞれ中心に固定してガス発生剤106及び第5図に記載のスクイブ104を第1カップケース102との内側に封じるホルダ101と、スクイブ104とホルダ101との隙間に配置されてスクイブ104とホルダ101との隙間より水分が浸入するのを防止するOリング105と、スクイブ104より立設された2本の電極ピン11,12をショートさせておくためのショーティングクリップ107とで構成される。また、第1カップケース102とホルダ101との隙間には、水分が浸入するのを防止するために図示しないシール剤が塗布されている。
また、スクイブ104は、第5図に示すように、着火薬Dを収納する第2カップケースEと、第2カップケースE内に挿入され嵌め込まれて着火薬Dを封じる塞栓Bと、塞栓B内を貫通する2本の金属棒材からなる電極ピン11,12を備えている。各電極ピン11,12は第2カップケースE内に突出し、その先端は電橋線Fによって電気的に接続されている。電橋線Fは着火薬Dに接する点火玉Cで覆われている。塞栓Bは、各電極ピン11,12間での電橋線部以外での絶縁を保つために樹脂で形成されている。
スクイブ104は、第3図に示すように、スクイブ104のテーパ部109が、ホルダ101のテーパ部110に接して保持されており、スクイブ104の塞栓Bの底部111は、外部に露出した状態となっている(第4図(a)参照)。ところで、樹脂で形成されている塞栓Bは、高温状態における着火時に、その熱によって軟化することがある。このため、塞栓B内に設けられている電極ピン11,12が、塞栓Bが軟化し、保持強度が低下した時に塞栓Bとともに飛び出すおそれがある。
本発明の目的は、ガス発生器のスクイブに立設する電極ピンが高温状態での着火時においても、飛び出すことのない、安全性の高いガス発生器を提供することにある。
【発明の開示】
前記課題を解決するための本発明のガス発生器は、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤を充填する第1カップケースと、前記第1カップケースの内側に配設され、着火薬を収納する第2カップケースを有するスクイブと、前記第2カップケースを覆う導火孔を有するスクイブケースと、前記スクイブケースと前記第2カップケースとをかしめて保持するホルダと、を備えるガス発生器であって、前記ホルダは前記スクイブの電極ピンの各電極ピンがそれぞれ別個に挿通する孔を有することを特徴とする。スクイブの電極ピンの各電極ピンがそれぞれ別個に挿通する孔をホルダに設けるため、スクイブを形成する樹脂製の塞栓が高温状態での着火時に軟化した場合であっても、例えば、輸送時等何らかの原因で、スクイブが着火した場合であっても、スクイブに設けられた電極ピンの飛び出しが塞栓の飛び出しとともに防止され、高温状態であっても安全性を確保できる。
また、前記孔の面積を前記電極ピンの断面積の2〜10倍とすることにより、ホルダに金属を使用しても各電極ピン同士のショートを防ぐことができ、かつ、スクイブを形成する樹脂製の塞栓が高温状態での着火時に軟化した場合であっても、この孔によって電極ピンのホルダ外への飛び出しが防止される。
また、スクイブは、着火薬を収納する第2カップケースと、前記第2カップケース内に挿入され嵌め込まれて前記着火薬を封じる塞栓と、前記塞栓内を貫通して突出する2本の金属棒材からなる電極ピンを備えてなり、前記各電極ピンの前記塞栓から突出する各根元部分が、前記塞栓と一体に成形された突出部で覆われており、該突出部が前記孔に挿入されていることを特徴とするものである。これによって、各電極ピンをそれぞれ別個に孔に挿通した場合に、この突出部が各孔と嵌合し、塞栓のがたつきを小さくできるとともに、各電極ピンとホルダ間との絶縁を確実にとることができる。
また、ホルダがアルミニウム、鉄、ステンレス等の金属製であるものである。ホルダが金属製であるため、樹脂などに比べ耐熱性が良く、高温状態での着火において、塞栓の飛び出しとともに電極ピンのホルダ外への飛び出しを確実に防止することができる。
また、本発明のホルダは、スクイブの塞栓を挿入してかしめるためのテーパ部と、前記スクイブの塞栓をかしめるための突起と、前記第1カップケースをかしめるための突起と、前記テーパ部の底部とを有し、該底部には前記スクイブの前記電極ピンがそれぞれ挿通する前記孔を有している、ホルダである。電極ピンがそれぞれ挿通する各孔をテーパ部の底部に有しているホルダであるために、高温状態での着火において、塞栓の飛び出しとともに電極ピンのホルダ外への飛び出しを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るガス発生器の実施形態例の一例の概略断面図である。第2図(a)は、第1図に示すガス発生器のA−A線断面を示す断面図である。第2図(b)は、第1図において使用する本発明のホルダを下部方向から見た外観図である。第2図(c)は、第2図(b)に示すホルダのB−B線断面を示す断面図である。第3図は、従来のガス発生器の概略断面図である。第4図(a)は、第3図に示すガス発生器のA−A線断面を示す断面図である。第4図(b)は、第3図において使用する従来のホルダを下部方向から見た外観図である。第5図は、ガス発生器に用いられる公知のスクイブを示す概略断面図である。第6図は、本発明に係るスクイブを示す外観図である。第7図は、実施例における加熱試験の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明のガス発生器の実施の形態の一例を図面を参照しつつ説明する。
第1図において、ガス発生器1は、燃焼によりガスを発生させるガス発生剤2を充填する第1カップケース3と、この第1カップケース3の内側に配設され、着火薬を収納する第2カップケースEを有するスクイブ5と、第2カップケースEを覆う導火孔20を有するスクイブケース7と、スクイブケース7と第2カップケースEとをかしめるための突起9でかしめて保持するホルダ6と、で構成されている。
ホルダ6は、ステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属材によって形成されることが好ましい。第1図、第2図(b)及び第2図(c)においてホルダ6は、スクイブ5の塞栓Bを挿入して嵌めるための皿状に形成されたテーパ部8と、スクイブ5の塞栓Bをかしめるための突起9と、第1カップケース3をかしめるための突起10と、テーパ部8の底部81とを有している。塞栓Bの材料は、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66等を含んでいる。また、ホルダ6には、スクイブ5から立設される電極ピン11,12が挿通する孔13,14が皿状に形成されたテーパ部8の底部81に形成されている。この孔13,14から、スクイブ5の塞栓Bに設けられた2本の電極ピン11,12が外部に延びている。電極ピン11,12の材質は、ニッケルを含む合金、鉄、ステンレスが好ましい。そして、塞栓Bの底部16には、これら電極ピン11,12の根元部分を覆うように突出部19,18が一体に成形されている。また、塞栓Bの底部16は、第2図(a)に示すように、ホルダ6のテーパ部8の底部81によって覆われている。これによって、高温状態の点火時に、塞栓Bが軟化した場合であっても、電極ピン11,12は、このホルダ6に設けられた孔13、14を有する部分(底部81)によって塞栓Bとともに外部に飛び出すことが防止される。なお、この孔13,14の面積は、この孔13,14を挿通する電極ピン11,12の断面積の1倍を超えて10倍以下の範囲が好ましく、2倍〜10倍の範囲がより好ましく、2〜7倍の範囲が特に好ましい。また、孔13,14以外にも1つ又は2つ以上の孔が存在していても良いが、孔13,14のみ存在する方がコストを安く製造できる。
また、ホルダ6には、スクイブ5の塞栓Bを保持する際、スクイブ5の塞栓Bとの間にOリング等のシール部材15が配置され、スクイブ5とホルダ6との間の防湿が図られている。シール部材15の材質としては、特に限定されるものではないが、ニトリル、シリコン、エチレンプロピレンゴム等の水分を透過しにくいものが好ましい。これらのシール部材は、ホルダとスクイブの接合部全周にわたって設けられているのが好ましい。
ガス発生剤2は、フィルター又は/及びクーラントを介することなく、第1カップケース3の内周に直接接触する状態にして充填されている。ここで、使用できるガス発生剤は、燃料成分としては、含窒素有機化合物、酸化剤成分としては、無機化合物、及び少なくとも1種以上の添加物を含有するガス発生剤が好ましい。燃料成分としては、アミノテトラゾール、硝酸グアニジン、ニトログアニジンよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。酸化剤成分としては、硝酸ストロンチウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。添加物としては、自己発火性触媒である三酸化モリブデンが挙げられる。また、他にガス発生剤に添加しうる添加物としては、バインダーなどが挙げられ、バインダーとして、グアガム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、水溶性セルロースエーテル、ポリエチレングリコールよりなる群から選ばれる少なくとも1種以上が挙げられる。好適なガス発生剤としては、燃料成分として5−アミノテトラゾールおよび硝酸グアニジン、酸化剤成分として硝酸ストロンチウム及び過塩素酸アンモニウム、自己発火性触媒として三酸化モリブデン、バインダーとしてグアガムを含有するガス発生剤である。より好適には、燃料成分として5−アミノテトラゾールを10〜30質量%、硝酸グアニジンを15〜35質量%、酸化剤成分として硝酸ストロンチウムを10〜30質量%、過塩素酸アンモニウムを15〜35質量%、自己発火性触媒として三酸化モリブデンを1〜10質量%、バインダーとしてグアガムを1〜10質量%含有するガス発生剤である。本発明で用いられるガス発生剤は、シートベルトプリテンショナー等に充填可能な形態にするため、例えば所望の形状の成形体にすることができる。この成形体の形状は特に限定されるものではなく、ガス発生剤に、(a)カチオン性バインダー0.25%〜5%、(b)アニオン性バインダー0.25%〜5%、(c)燃料、(d)酸化剤、(e)燃焼調節剤等の種類に応じて、水又は有機溶媒を添加し均一に混合した後、混練し押出成形し載断して得られる円柱状の成形体、打錠機等を用いて得られるペレット状の成形体にすることができる。
第1カップケース3は、大径の円筒部3a、2面幅部3bとを有し、底側から1段階に拡径する実質的に有底円筒形状をしている。この第1カップケース3の底には複数の線状の切欠き3cが設けられている。第1カップケース3内に収納されるガス発生剤2の燃焼時に、この切欠き3cが破断され、図示しないシートベルトプリテンショナーにガスが直接的に放出される。第1カップケース3の開口端には径方向の外方に延びるフランジ部位3dが形成されており、ホルダ6に設けられた突起10のかしめによってホルダ6に取り付けられている。第1カップケース3の材料としては、例えばステンレス、鉄、アルミニウムなどの金属材が挙げられる。
スクイブ5は、第6図に示されるように、着火薬Dと、着火薬Dが充填される第2カップケースEと、着火薬Dを発火させるための電気を通電する目的で立設された2本の電極ピン11,12と、塞栓Bを含む。第2カップケースEは、通常熱可塑性樹脂でできている。各電極ピン11,12は第2カップケースE内に突出し、その先端は電橋線Fによって電気的に接続されている。電橋線Fは着火薬Dに接する点火玉Cで覆われている。塞栓Bは、各電極ピン11,12間での電橋線部以外での絶縁を保つために樹脂で形成されている。そして、本実施形態例に係るスクイブ5は、第6図に示すように、塞栓Bから突出する電極ピン11,12のそれぞれの根元部分を覆うように突出部19,18が一体に成形されている。突出部19,18は、孔13,14より小さい径で、かつ、塞栓Bと同じ材料で、塞栓Bと一体に成形されている。これによって、電極ピン11,12とホルダ6間の絶縁が確実にとれる。
また、スクイブ5には、第1図に示すような2本の電極ピン11,12をショートさせておくためのショーティングクリップ17が取り付けられている。このショーティングクリップ17は、静電気などによる誤作動を防止するためのものである。
スクイブケース7は、スクイブ5の第2カップケースE及びスクイブ5の塞栓Bの先端部を覆うようにカップ状に形成されている。そして、ホルダ6の突起9にかしめられるように、その開口端は塞栓Bの先端部に沿って径方向斜め外方に向かって拡がるフランジ部位7aが形成されている。そして、このフランジ部位7a上に折り曲げられるようにしてかしめられたホルダ6のかしめ突起9によって、スクイブケース7は、スクイブ5の塞栓Bとともにホルダ6に取り付けられる。また、スクイブ5の第2カップケースEは、このスクイブケース7によって表面を覆われるため、拘束力が増加し、スクイブ5内部の着火薬が発火して燃焼する時、スクイブ5内部の圧力が高まる前に第2カップケースEが破断してしまうということが無く、着火薬は高圧力下で燃焼する。その結果、燃焼速度が従来に比べ速くなり、ガス発生器1の着火遅れが少なくなる。
スクイブケース7は、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材や、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PA6(ナイロン6)、PA66(ナイロン66)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、フッ素樹脂等の樹脂等で形成されている。そして、ガス発生剤2と接する面には、スクイブケース7を貫通する導火孔20が形成されている。この導火孔20は、スクイブ5の高温のガス、粒子をガス発生剤2方向へ集中させるとともに、第2カップケースEの即座の破断防止の観点から、スクイブケース7の第2カップケースEを覆う有底円筒部の底部に設けられることが好ましい。この導火孔20は、このようにスクイブケース7の有底円筒部の底部に設けられることが好ましいが、円筒部の筒部に設けられていてもよい。なお、スクイブケース7は単一の部材で形成されている必要はなく、いくつかの部材を組合わせてスクイブケース7としてもよいが、部品点数削減の観点から単一の部材で構成されるのが好ましい。また、メッシュ状であっても良い。
また、スクイブケース7の内面形状はスクイブ5の第2カップケースEの外面形状に沿う形状として、スクイブ5の第2カップケースEとスクイブケース7との間を実質的に密着させるのがよい。第2カップケースEとスクイブケース7との隙間は、1mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましい。
このような構造により、ガス発生剤2に浸入する水分は防止される。また、スクイブケース7はスクイブ5の第2カップケースEを覆う形で配置され、且つ、ガス発生剤2方向に導火孔20が加工されているため、スクイブ5のエネルギーはガス発生剤2方向に集中される。また、スクイブ5の第2カップケースEはスクイブケース7で覆われているため拘束力が増加する。従って、スクイブ5内部の着火薬Dが発火して燃焼する時、スクイブ5内部の圧力が高まる前に第2カップケースEが破断してしまうということが無く、着火薬は高圧力下で燃焼する。その結果、燃焼速度が従来に比べ速くなり、ガス発生器1の着火遅れが少なくなる。一方で、第2カップケースEの強度が高まるために、高温状態での着火時に、塞栓Bが軟化した際に、電極ピン11,12は、塞栓Bとともに外部に飛び出すような力が作用する。ところが、ホルダ6に塞栓Bの底部16が覆われ、従来のスクイブの構造(第3図及び第4図(a)、(b)参照)よりも塞栓Bの底部16に面する孔の面積が小さくなり、樹脂のせん断面積が小さくなるため、塞栓Bとともに電極ピン11,12の飛び出しが予防される。なお、本実施形態例では電極ピン11,12は塞栓Bの内部で折り曲げられているものを示しているが、本発明に係るガス発生器のスクイブに用いられる電極ピンには、電極ピンの材質、ピンの径等によっては真っ直ぐなものを使用できる場合もある。この場合であっても、前述したように、塞栓Bの底部16において塞栓Bの底部16に面する孔の面積が小さくなり、樹脂のせん断面積が小さくなるため、電極ピン11,12の飛び出しが予防されると考えられる。
このように構成されるガス発生器1は、次のような手順にて製造することができる。まず、ホルダ6の孔13,14にスクイブ5の電極ピン11,12を挿通し、スクイブ5をシール部材15を介してホルダ6のテーパ部8にはめ込むようにして装着する。次いで、スクイブ5の表面を覆うようにして、導火孔20が形成されたスクイブケース7を装着し、かしめ突起9をかしめることによって、スクイブ5とスクイブケース7をホルダ6に一体に装着する。次に、スクイブ5及びスクイブケース7が装着されたホルダ6に、ガス発生剤2が充填されている第1カップケース3を嵌合し、かしめ突起10によってかしめ固定する。
次に、ガス発生器1の作動について説明する。図示しない衝突センサーが自動車の衝突を感知すると、第6図に示されたスクイブ5に立設された電極ピン11,12が通電される。そして、スクイブ5内の電橋線Fが発熱し、点火玉Cが発火する。続いて、点火玉Cの発火により、着火薬Dが発火し、燃焼する。着火薬Dの燃焼に伴ってスクイブ5の内部は高温且つ、高圧になっていく。ところが、スクイブ5の第2カップケースEは、第1図に示すようにスクイブケース7によって覆われて補強されているため、着火薬Dが十分に燃焼する前にスクイブ5が膨張して破断することを防止する。また、この際、ホルダ6によって、これら電極ピン11,12の高温時における外部への飛び出しも防止される。
着火薬Dに用いられる火薬類等は圧力が高くなれば高くなるほどその燃焼速度が速くなるので、結果的にスクイブケース7に覆われていない場合に比して速くスクイブ5の破断が生じる。より燃焼が進んで高温、且つ、高圧となったガスや粒子がスクイブケース7に向かって放出される。つまり、燃焼によりスクイブケース7内部は、より高温、且つ、高圧となる。この時、スクイブケース7の導火孔20を通じて一気に第1カップケース3内のガス発生剤2に高温、且つ、高圧のガスが噴出される。そして、ガス発生剤2が点火される。なお、スクイブケース7はホルダ6にかしめ固定されているため、ガス発生剤2側に吹き飛ばされることはない。
続いて、ガス発生剤2の燃焼により第1カップケース3内に発生した多量のガスは、第1カップケース3の内圧を急速に高め、やがて第1カップケース3の底に設けられている切欠き3cを破断して、図示しないシートベルトプリテンショナーへ導入され、シートベルトプリテンショナーが動作する。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
【実施例】
第1図に示す構造のガス発生器を火炎バーナーによって加熱した加熱試験を行った。即ち、ガス発生器をアルミニウム製のホルダにOリングを介してスクイブを固定し、さらにガス発生剤を封入したアルミニウム製のカップケースをホルダの凹部に位置決めし接合させてかしめる。この加熱試験にはプロパンバーナー及びスクイブが治具上部に挿入され内容積が約3.5ccである、底部に直径1mmのガス放出穴を設けた円筒状の治具を用いて行う。加熱試験は治具を台の上方にガス放出穴が下になるようにセットする。またその直下にプロパンバーナーをセットする。ここで、プロパンバーナー火炎口の先端から治具の底部までの距離を400mmとし、またブロパンバーナーによる火炎の高さは目視により600mmに設定した。また加熱試験はプロパンバーナーにより加熱を行い、ガス発生剤に着火してガスが発生した状態まで行う。この際ほとんどの場合で爆発音がするので、着火を確認することができる。以下に本加熱試験に用いたスクイブの仕様とその結果を示す。ホルダ対策品とは、ホルダに直径1mmである電極ピンが通るための直径2.3mmの穴をそれぞれのピンにつき1ヶずつ設けたものである。なお、サンプルは各仕様につき3ヶ用意し試験を行った。
(比較例)
比較のために、電極ピンがホルダ部分から直接突出している従来から用いられているガス発生器を使用した。
第7図に加熱試験の結果をまとめた表を示す。
第7図に示すように、従来品である比較例のものは無煙火薬量950mgの時に電極ピンの飛散が発生したが、実施例に係るものは無煙火薬量が1700mgまで電極ピンを含む飛散物が発生しなかった。このことから本実施例に係るガス発生器は従来品であるガス発生器に対し、加熱試験によるスクイブの塞栓部分の樹脂軟化に伴う飛散物の発生防止対策として有効であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
本発明のガス発生器は、ホルダにスクイブに設けられた電極ピンの挿通する孔が形成され、スクイブの樹脂製の塞栓の底部を覆っている。このため、スクイブが高温状態で点火された場合であっても、塞栓とともに電極ピンの外部への飛び出しが防止され、高温状態であっても、安全性を確保することができる。
【図1】



【図3】


【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼によりガスを発生させるガス発生剤2を充填する第1カップケース3と、前記第1カップケース3の内側に配設され、着火薬Dを収納する第2カップケースEを有するスクイブ5と、前記第2カップケースEを覆う導火孔20を有するスクイブケース7と、前記スクイブケース7と前記第2カップケースEとをかしめて保持するホルダ6と、を備えるガス発生器1であって、
前記ホルダ6は前記スクイブ5の電極ピン11,12の各電極ピン11,12がそれぞれ別個に挿通する孔13,14を有することを特徴とするガス発生器。
【請求項2】
前記孔13,14の面積が前記電極ピン11,12の断面積の2〜10倍である請求の範囲第1項に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記スクイブ5は、着火薬Dを収納する第2カップケースEと、前記第2カップケースE内に挿入され嵌め込まれて前記着火薬Dを封じる塞栓Bと、前記塞栓B内を貫通して突出する2本の金属棒材からなる電極ピン11,12を備えてなり、
前記各電極ピン11,12の前記塞栓Bから突出する各根元部分が、前記塞栓Bと一体に成形された突出部19,18で覆われており、該突出部19,18が前記孔13,14に挿入されていることを特徴とする請求の範囲第1項に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記ホルダが金属製である請求の範囲第1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
スクイブ5の塞栓Bを挿入してかしめるためのテーパ部8と、スクイブ5の塞栓Bをかしめるための突起9と、第1カップケース3をかしめるための突起10と、テーパ部8の底部81とを有し、該底部81にはスクイブ5の電極ピン11,12がそれぞれ挿通する孔13,14を有している、ホルダ。

【国際公開番号】WO2004/012965
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【発行日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525786(P2004−525786)
【国際出願番号】PCT/JP2003/009143
【国際出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】