説明

ガス発生装置、はんだ接合装置およびはんだ接合方法

【目的】高濃度のカルボン酸含有ガスを供給できるガス発生装置を備えるはんだ接合装置を提供する。
【解決手段】ガス発生装置20が、容器21と、容器21に形成された送液管23および送気管24と、カルボン酸22およびキャリアガスを含むカルボン酸含有ガス25を容器21外へ供給するため形成されたガス取り出し部26と、カルボン酸22の温度を制御するため容器21の外側に設置された温度制御手段27と、カルボン酸22の液面22aを検知する液面検知手段28とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置、このガス発生装置を備えるはんだ接合装置、および、このはんだ接合装置を用いるはんだ接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の被接合物をはんだ接合する方法としてカルボン酸を含むガスにより被接合物表面を還元して接合する方法、および、この方法に用いるはんだ接合装置が知られている。カルボン酸を含むガスは主にカルボン酸とキャリアガスとを含んでいる。はんだ接合装置は、カルボン酸含有ガスを発生するためのガス発生装置と、ガス発生装置から供給されるカルボン酸含有ガスにより被接合物表面を還元し、次いではんだ接合するリフロー炉とを少なくとも備えている。
【0003】
このようなはんだ接合方法およびはんだ接合装置に関し、例えば、下記特許文献1には、ジケトンの蒸気と、カルボン酸の蒸気、不活性ガス、還元性ガス等を含む雰囲気下ではんだ付けを行う方法、および、ジケトンとカルボン酸との混合液を貯溜するバブリング槽を備えるはんだ付け装置が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、導電部材と半導体装置とをはんだ材を介して組み立てた半導体部品を、ギ酸蒸気を含む不活性ガス雰囲気下で還元する半導体部品の製造方法が記載されている。
【0005】
さらに、下記特許文献3には、基板上に形成されたはんだバンプを加熱溶融して基板と電子部品とを接合するリフロー装置と、このリフロー装置に還元剤を供給する還元剤供給部とを備えるリフロー装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−164141号公報(段落0028〜0044、図1)
【特許文献2】特開2010−114197号公報(段落0010〜0026、図1〜3)
【特許文献3】特開2011−60856号公報(段落0012〜0017、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、カルボン酸をバブリングしてカルボン酸含有ガスを発生する従来のガス発生装置には、カルボン酸のガス中含有量を制御し、高濃度のカルボン酸を含有するガスを発生させ、リフロー炉に短時間に供給する機能は設けられていなかった。
【0008】
例えば、カルボン酸のひとつで、はんだ接合時の還元処理に用いられている蟻酸の蒸発量は20℃で0.003g/min/cm程度と少量であるので、室温雰囲気で蟻酸をバブリングして高濃度の蟻酸含有ガスを発生させ、実用レベルの容積の大きなリフロー炉を短時間で満たすことは難しかった。また、このようなガス発生装置においてはカルボン酸の蒸発量が環境の温度とともに変動するので、カルボン酸含有ガスのカルボン酸含有量を一定に保つことが困難であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、前記の課題を解決して、カルボン酸をキャリアガスと混合してカルボン酸含有ガスを発生するガス発生装置であって、高濃度のカルボン酸を含有するガスを発生させることができるとともに、カルボン酸含有量を一定に保つことができるガス発生装置、このガス発生装置を備えるはんだ接合装置、および、このガス発生装置を用いるはんだ接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のはんだ接合装置は、上記問題を解決するために、積層体の還元処理およびはんだ接合に用いる加熱手段を備えるリフロー炉と、前記リフロー炉内にカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置と、を少なくとも備える。前記ガス発生装置は、両端面が塞がれた筒状形状の容器と、カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、キャリアガスを前記容器内に供給し、前記カルボン酸に吹き込むため前記容器に固定された送気管と、前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
このように、容器内に供給されるカルボン酸は、送気管から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段により温度を制御され、さらに、液面検知手段によりその液面と容器に形成された開口部との間の距離が制御される。この容器内で発生したカルボン酸含有ガスがリフロー炉内に供給される。
【0012】
また、本発明のガス発生装置は、積層体のはんだ接合に用いるリフロー炉にカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置であって、両端面が塞がれた筒状形状の容器と、カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、キャリアガスを前記容器内に供給し、前記カルボン酸に吹き込むため前記容器に固定された送気管と、前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
このように、容器内に供給されるカルボン酸は、送気管から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段により温度を制御され、さらに、液面検知手段によりその液面と容器に形成された開口部との間の距離が制御される。
【0014】
さらに、本発明の積層体のはんだ接合方法は、少なくとも2つの被接合部材間にはんだ部材が挟まれた積層体をリフロー炉内に配置する配置工程と、前記リフロー炉へカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置において、カルボン酸にキャリアガスを吹き込み前記カルボン酸含有ガスを発生するガス発生工程と、前記カルボン酸含有ガスを前記リフロー炉に供給するとともに、当該リフロー炉内に配置した前記積層体を加熱して当該積層体を還元する還元工程と、前記リフロー炉内において前記積層体のはんだ接合を行う接合工程と、を備える。前記ガス発生装置が、両端面が塞がれた筒状形状の容器と、カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、キャリアガスを前記容器内に供給するため前記容器に固定された送気管と、前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、を備えることを特徴とする。
【0015】
このように、ガス発生工程において、容器内に供給されるカルボン酸は、送気管から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段により温度を制御され、さらに、液面検知手段によりその液面と容器に形成された開口部との間の距離が制御される。容器内で発生したカルボン酸含有ガスは、還元工程において、リフロー炉内に供給され、加熱された被接合部材表面を還元する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ガス発生装置が容器内に供給されるカルボン酸の温度制御手段および液面検知手段を備え、高濃度で一定の含有量に保たれたカルボン酸含有ガスを発生させ、供給することができるので、短時間で積層体をはんだ接合できるはんだ接合装置を提供することができる。
【0017】
また、本発明によれば、容器内に供給されるカルボン酸の温度制御手段および液面検知手段を備えることにより、高濃度のカルボン酸を含有するガスを発生させることができるとともに、カルボン酸含有量を一定に保ち、供給することができるガス発生装置を提供することができる。
【0018】
さらに、本発明によれば、ガス発生工程において、容器内に供給されるカルボン酸の温度制御手段および液面検知手段を備えるガス発生装置により、高濃度で一定の含有量に保たれたカルボン酸含有ガスを発生させ、リフロー炉に供給することができるので、還元工程において短時間で十分に積層体の被接合部材表面を還元することができ、短時間ではんだ接合できる接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る積層体の模式的側面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るガス発生装置の模式的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るはんだ接合装置の模式的系統図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るはんだ接合方法の工程図である。
【図5】本発明の実施例に係る蟻酸の温度と蒸発量の関係を示す表である。
【図6】本発明の実施例に係る蟻酸の温度とバッファタンク内の蟻酸濃度の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる半導体装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。
(積層体)
図1は、本発明の実施の形態に係る積層体の模式的側面図である。
【0021】
積層体1は、金属ベース2と、絶縁基板3および絶縁基板の両面に接合された回路パターン4、5を有する導電パターン付き絶縁基板6と、回路パターン4上の電子部品7、8とを備えている。金属ベース2と導電パターン付き絶縁基板6の間にはんだ部材9が、導電パターン付き絶縁基板6と電子部品7、8の間にはんだ部材10が、それぞれ挟まれている。
【0022】
金属ベース2は、例えば銅、銅合金、アルミニウムあるいはアルミニウム合金からなる。導電パターン付き絶縁基板6は、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムあるいは窒化珪素等のセラミックスからなる絶縁基板3と、銅もしくは銅合金からなる回路パターン4、5とを接合したものである。回路パターン4、5の表面にはNiめっき等が施されていてもよい。電子部品7、8は、例えばシリコン基板を用いて製造されたMOSFET、IGBT(Insulated Gate-Bipolar Transistor)やFWD(Free Wheeling Diode)等の半導体素子である。炭化珪素(シリコンカーバイド)を基板に用いた半導体素子でもよい。はんだ部材9、10は、公知のSn−Ag系はんだ、Sn−Sb系はんだやSn−Pbはんだであり、その形態ははんだ板もしくはペーストはんだである。はんだ部材9とはんだ部材10は同じ材料であっても異なっていてもよい。
(ガス発生装置)
図2は、本発明の実施の形態に係るガス発生装置の模式的断面図である。
【0023】
ガス発生装置20は、カルボン酸22を貯留し、カルボン酸含有ガス25を発生してリフロー炉に供給するために使用される。ガス発生装置20は、容器21と、容器21に形成された送液管23および送気管24と、カルボン酸22およびキャリアガス(図示せず)を含むカルボン酸含有ガス25を容器21外へ供給するため形成されたガス取り出し部26と、カルボン酸22の温度を制御するため容器21の外側に設置された温度制御手段27と、カルボン酸22の液面22aを検知する液面検知手段28と、を備えている。
【0024】
容器21は、送液管23により外部から供給されるカルボン酸22を貯留し、カルボン酸22を加熱し、カルボン酸22の蒸気とキャリアガスを混合してカルボン酸含有ガス25を発生する空間を提供するものである。容器21には、耐酸性、耐熱性および耐圧性を備える公知のものを用いることができる。例えば、耐酸性に優れたステンレス性容器や、ステンレス本体の内面にフッ素樹脂コーティングを施した容器を用いることができる。容器21の形状は、任意のものでよいが、内側の断面積が底部から上部まで略一定のものが、カルボン酸22の蒸発量を制御する点で好ましい。例えば、円筒形状が好ましい。
【0025】
カルボン酸22として、例えば蟻酸(沸点101℃)、酢酸(沸点119℃)等を用いることができ、蟻酸は還元性示し、不燃性であり、フラックスを用いない洗浄不要のはんだ接合を可能にすることから好ましい。特に、濃度90〜98wt%程度の蟻酸の水溶液が入手の容易性から好ましく用いられる。キャリアガスとしては、例えば窒素、水素やアルゴン等の希ガスが用いられ、特に窒素ガスが好ましく用いられる。
【0026】
送液管23は、カルボン酸22を外部タンクから容器21内に供給するため、容器21を貫通して設けられている。送液管23の開口部23aは、容器21内に供給されるカルボン酸22に常に浸漬するよう、容器21の底部に配置される。開口部23aの形状は任意であるが、カルボン酸22の対流を生じさせるようにカルボン酸22を供給できるものが好ましい。
【0027】
送気管24は、キャリアガスを外部ボンベから容器21内に供給するため、容器21を貫通して設けられている。送気管24の開口部24aは、容器21内に供給されるカルボン酸22に浸漬するよう、容器21の底部に配置されている。開口部24aからカルボン酸22内に噴き出されたキャリアガスは、カルボン酸22を撹拌し、泡立たせて(バブリングして)カルボン酸22の蒸発を促進し、カルボン酸22と混合してカルボン酸含有ガス25となる。開口部24aはキャリアガスがシャワー状に噴き出すよう、容器21の底部に沿って複数形成されているとよい。
【0028】
ガス取り出し部26は、容器21内で発生するカルボン酸含有ガス25を容器21外へ供給するため容器21を貫通して設けられており、その開口部26aが容器21内へ開口している。
【0029】
温度制御手段27は、容器21内に供給されるカルボン酸22の温度を制御するため容器21本体に設置されている。温度制御手段27は、例えば電気ヒーターや恒温槽等の公知の加熱手段27aと、熱電対等の公知の温度計測手段27bとを備え、外部の制御装置によりカルボン酸22の温度を調整する。温度調整の範囲は、カルボン酸22の融点もしくは室温から沸点の間の範囲である。加熱手段27aは、容器21本体のほか、ガス発生装置20に接続される配管にも設置されてもよい。
【0030】
液面検知手段28は、容器21内に供給されるカルボン酸22の液面22aを検知して、液面22aと開口部26aの間の距離dを制御するため容器21本体に設置されている。液面検知手段28は、公知の手段により構成することができ、液面センサー28aと液面モニター用配管28bにより構成され、外部の制御装置と連動して送液管23から供給されるカルボン酸の量を調整し、液面22aと開口部26aの間の距離dを制御する。液面センサー28aとしては、カルボン酸22とカルボン酸含有ガス25の境界を検知できる公知の各種レベルセンサーを用いることができ、例えばレーザー式センサーが用いられる。また、液面モニター用配管28bは例えば透明フッ素樹脂からなり、容器21の上部と下部に連通するよう取り付けられている。
【0031】
さらに、液面検知手段28は、カルボン酸22の液面22aと開口部26aの間の距離dを、容器の深さDの3分の1以上、3分の2以下の範囲に保つように設置されていることが好ましい。さらに、例えば容器21が円筒形の場合、距離dが容器21内面の直径の4分の1以上であると好ましい。液面22aと開口部26aが近すぎると、液面22aの有効な面積が減り、高濃度のカルボン酸含有ガス25を発生することができない。カルボン酸22の上方に十分な空間を設けることにより、その蒸気が均一に分散してキャリアガスと混合し、高濃度のカルボン酸含有ガス25を発生させることができる。また、距離dを、容器の深さDの3分の2以上になると、送液管23の開口部23aや送気間24の開口部24aがカルボン酸22に浸かっていない状態となり好ましくない。
【0032】
なお、容器21内の圧力は、大気圧に対して陽圧、例えば1.0×10Pa〜1.1×10Paの範囲の一定圧力に保たれる。圧力の制御はブルドン管等の圧力計29と制御装置よって実施される。
【0033】
図5は、ガス発生装置20の一実施例により蟻酸を蒸発させたときの蒸発量の測定結果をまとめたものである。容器21には内径200mm(φ200mm)で開口(液面)面積が314.2cmの円筒形のものを用いた。測定時の圧力は大気圧である。この結果から、ガス発生装置20を用いて蟻酸を直接加熱し、温度制御することにより、蟻酸の蒸発量を制御できることが分かる。
【0034】
以上に説明したガス発生装置20は、従来公知の方法により製造することができる。
このように、ガス発生装置20では、容器21内に供給されるカルボン酸22が、送気管24から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段27a、27bにより温度を制御され、さらに、液面検知手段28a、28bによりその液面と容器21に形成された開口部26aとの間の距離dが制御される。この結果、カルボン酸22とキャリアガスが均一に混合する空間が容器21内に確保されるので、高濃度のカルボン酸を含有するガスを発生させることができるとともに、カルボン酸含有量を一定に保ち、供給することができるガス発生装置20を提供することができる。
【0035】
さらに、液面検知手段28a、28bが、カルボン酸22の液面22aと開口部26aの間の距離dを、容器21の深さDの3分の1以上、3分の2以下に保つように設置されているので、高濃度のカルボン酸含有ガスを安定に供給することができるガス発生装置20を提供することができる。
(はんだ接合装置)
図3は、本発明の実施の形態に係るはんだ接合装置の模式的系統図である。
【0036】
はんだ接合装置50は、カルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置20と、積層体1が配置される加熱手段を備えるリフロー炉30とを少なくとも備え、積層体1の還元処理およびはんだ接合に用いられる。はんだ接合装置50は、さらにバッファタンク40と、キャリアガスボンベ41、42と、カルボン酸貯留タンク43とを備える。
【0037】
ガス発生装置20は、上記で説明した装置である。ガス発生装置20の送液管23にはカルボン酸貯留タンク43が配管およびマスフローコントローラー43aを介して接続されている。また、送気管24にはキャリアガスボンベ41が配管およびマスフローコントローラー41aを介して接続されている。ガス発生装置20のガス取り出し部26は配管およびマスフローコントローラー20aを介してバッファタンク40に接続されている。
【0038】
リフロー炉30は、例えば炉本体とこれにパッキンを介して被せられ、炉内部を気密状態に保つ蓋体を備える。リフロー炉30は、炉内にカルボン酸含有ガスを供給するための配管およびマスフローコントローラー40aを介してバッファタンク40に接続されている。リフロー炉30には積層体1を加熱するためのヒータを備えた熱板31が配置されている。この他、リフロー炉30には炉内の圧力を制御するためのポンプ32と、炉内に窒素ガス等を供給するための配管(図示せず)と、排気口(図示せず)が設けられている。また、リフロー炉30内にはんだ接合後の積層体1を冷却するための冷却板を設けてもよい。
【0039】
バッファタンク40には、タンク内の圧力を調整するポンプ45と、配管およびマスフローコントローラー42aを介してキャリアガスボンベ42とがそれぞれ接続されている。バッファタンク40は、ガス発生装置20から供給されるカルボン酸含有ガス25とキャリアガスボンベ42から供給されるキャリアガスを所定の濃度となるよう混合して、貯留し、リフロー炉30内へ供給する。
【0040】
なお、上記の各マスフローコントローラーは制御装置によりカルボン酸、キャリアガスおよびカルボン酸含有ガスの流量を制御する。マスフローコントローラーに代えて、弁と流量計を用いてもよい。
【0041】
上記において一実施例として説明したガス発生装置20を容量が50リットルのバッファタンク40に接続し、蟻酸の温度を80℃として蟻酸含有ガスを発生し、総流量が200リットル/minとなるよう窒素と混合したところ、濃度1.81vol%の蟻酸含有ガスをバッファタンク40に15秒で充填できた。また、総流量を100リットル/minとしたところ、濃度3.53vol%の蟻酸含有ガスを30秒で充填できた。ガス発生装置20に吹き込む窒素の流量をいずれも15リットル/minとした。
【0042】
図6は、この実施例において、総流量を165リットル/minとしたときの、蟻酸の温度と、ガス発生装置20の出口およびバッファタンク40での蟻酸濃度との関係を示す表である。蟻酸の温度を80℃としたときのバッファタンク40での蟻酸濃度は2.18vol%である。ガス発生装置20に吹き込む窒素の流量を15リットル/min、バッファタンク40にキャリアガスボンベ42から供給する窒素の流量を150リットル/minとした。
【0043】
以上に説明したはんだ接合装置50は、従来公知の方法により製造することができる。
このように、はんだ接合装置50では、ガス発生装置20の容器21内に供給されるカルボン酸22が、送気管24から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段27a、27bにより温度を制御され、さらに、液面検知手段28a、28bによりその液面22aと容器21に形成された開口部26aとの間の距離dが制御される。この結果、カルボン酸22とキャリアガスが均一に混合する空間が容器21内に確保され、高濃度で一定の含有量に保たれたカルボン酸含有ガス25をリフロー炉30に供給することができるので、短時間で積層体1をはんだ接合できるはんだ接合装置50を提供することができる。
【0044】
さらに、ガス発生装置20の液面検知手段28a、28bが、カルボン酸22の液面22aと開口部26aの間の距離dを、容器21の深さDの3分の1以上、3分の2以下に保つように設置されているので、高濃度のカルボン酸含有ガスを安定にリフロー炉30に供給することができるはんだ接合装置50を提供することができる。
(はんだ接合方法)
図4は、本発明の実施の形態に係るはんだ接合方法の工程図である。このはんだ接合方法は、上記のはんだ接合装置50により実施することができる。
【0045】
はんだ接合方法は、上記の積層体1をリフロー炉30内に配置する配置工程(S1)と、ガス発生装置20において、カルボン酸22をキャリアガスでバブリングしカルボン酸含有ガス25を発生するガス発生工程(S2)と、カルボン酸含有ガス25をリフロー炉30に供給するとともに、リフロー炉30内に配置した積層体1を加熱して還元処理する還元工程(S3)と、リフロー炉30内において積層体1のはんだ接合を行う接合工程(S4)とを少なくとも備え、さらに、積層体1を冷却する冷却工程(S5)と、積層体1をはんだ接合装置50から取り出す工程(S6)とを備える。
【0046】
配置工程(S1)では、上記の積層体1をリフロー炉30内の熱板31に配置する。
ガス発生工程(S2)では、ガス発生装置20から供給されるカルボン酸含有ガス25を、必要に応じてバッファタンク40内でキャリアガスと混合、希釈してリフロー炉30に供給する。カルボン酸として蟻酸を用い、IGBT等の半導体素子を含む積層体1を還元処理するときは、蟻酸の濃度を3〜5vol%とすることが望ましい。
【0047】
還元工程(S3)では、例えばリフロー炉40内の圧力を0.8×10Paに調整しながらカルボン酸含有ガスを供給し、積層体1を200℃程度に加熱して、積層体1の表面を還元処理する。還元処理の所要時間は、濃度3〜5vol%の蟻酸を用いた場合、60〜240秒である。
【0048】
続く接合工程(S4)では、積層体1を250〜290℃程度に加熱し、はんだ部材を溶融する。加熱温度と時間ははんだ部材の種類、積層体の構成により適宜選択される。また、接合工程中のリフロー炉30内の雰囲気は、例えば圧力を0.8×10Paに調整されたカルボン酸含有ガス、窒素あるいは水素である。
【0049】
冷却工程(S5)では、例えば窒素雰囲気において、積層体1を冷却板等に移動し冷却する。冷却の速度は例えば300℃/minであり、積層体1の温度がたとえば50〜60℃になったら、リフロー炉30の排気が開始され、積層体1が取り出される(S6)。
【0050】
以上のはんだ接合方法においては、ガス発生工程(S2)において、ガス発生装置20を用い高濃度のカルボン酸含有ガス25を発生させることを除いて、公知の工程を用いることができる。
【0051】
上記において一実施例として説明したガス発生装置20を用いた場合、所定の高濃度の蟻酸含有ガスをリフロー炉30に短時間で、安定して、供給することができた。
このように、本発明の実施の形態に係るはんだ接合方法では、ガス発生工程(S2)において、容器21内に供給されるカルボン酸22が、送気管24から供給されるキャリアガスによりバブリングされ、温度制御手段27a、27bにより温度を制御され、さらに、液面検知手段28a、28bによりその液面22aと容器21に形成された開口部26aとの間の距離dが制御される。容器21内で発生したカルボン酸含有ガス25は、還元工程(S3)において、リフロー炉30内に供給され、加熱された被接合部材表面を還元する。ガス発生工程(S2)において、高濃度で一定の含有量に保たれたカルボン酸含有ガス25を発生させ、リフロー炉30に供給することができるので、還元工程(S3)において短時間で十分に積層体1の被接合部材表面を還元することができ、短時間ではんだ接合できる接合方法を提供することができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態は、本発明を具体化した例を示すものであり、したがって本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0053】
1 積層体
2 金属ベース
3 絶縁基板
4、5 回路パターン
6 導電パターン付き絶縁基板
7、8 電子部品
9、10 はんだ部材
20 ガス発生装置
21 容器
22 カルボン酸
22a 液面
23 送液管
24 送気管
25 カルボン酸含有ガス
26 ガス取り出し部
26a 開口部
27 温度制御手段
28 液面検知手段
30 リフロー炉
31 熱板
40 バッファタンク
41、42 キャリアガスタンク
43 カルボン酸貯留タンク
50 はんだ接合装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の還元処理およびはんだ接合に用いる加熱手段を備えるリフロー炉と、
前記リフロー炉内にカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置と、を少なくとも備え、
前記ガス発生装置は、
両端面が塞がれた筒状形状の容器と、
カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、
キャリアガスを前記容器内に供給し、前記カルボン酸に吹き込むため前記容器に固定された送気管と、
前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、
を備えるはんだ接合装置。
【請求項2】
前記液面検知手段は、前記カルボン酸の液面と前記開口部の間の距離を、前記容器の深さの3分の1以上、3分の2以下に保つように設置されている請求項1記載のはんだ接合装置。
【請求項3】
前記温度制御手段は、前記容器内に供給される前記カルボン酸を、1.0×10Pa〜1.1×10Paの圧力下において、該カルボン酸の融点以上、沸点以下の温度に保つ請求項1または2記載のはんだ接合装置。
【請求項4】
前記送液管の開口部が、前記容器内に供給される前記カルボン酸に浸漬するよう、前記容器の底部に配置され、
前記送気管の開口部が、前記容器内に供給される前記カルボン酸に浸漬するよう、前記容器の底部に配置されるとともに、前記容器の底部に沿って複数個所で開口している請求項1〜3のいずれか一項に記載のはんだ接合装置。
【請求項5】
前記ガス発生装置は、前記ガス取り出し部に接続されたバッファタンクを介して、前記リフロー炉に接続されており、前記バッファタンクにおいて前記カルボン酸含有ガスが希釈され前記リフロー炉に供給される請求項1〜4のいずれか一項に記載のはんだ接合装置。
【請求項6】
積層体のはんだ接合に用いるリフロー炉にカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置であって、
両端面が塞がれた筒状形状の容器と、
カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、
キャリアガスを前記容器内に供給し、前記カルボン酸に吹き込むため前記容器に固定された送気管と、
前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、
を備えるガス発生装置。
【請求項7】
前記液面検知手段は、前記カルボン酸の液面と前記開口部の間の距離を、前記容器の深さの3分の1以上、3分の2以下に保つように設置されている請求項6記載のガス発生装置。
【請求項8】
前記温度制御手段は、前記容器内に供給される前記カルボン酸を、1.0×10Pa〜1.1×10Paの圧力下において、該カルボン酸の融点以上、沸点以下の温度に保つ請求項6または7記載のガス発生装置。
【請求項9】
前記送液管の開口部が、前記容器内に供給される前記カルボン酸に浸漬するよう、前記容器の底部に配置され、
前記送気管の開口部が、前記容器内に供給される前記カルボン酸に浸漬するよう、前記容器の底部に配置されるとともに、前記容器の底部に沿って複数個所で開口している
請求項6〜8のいずれか一項に記載のガス発生装置。
【請求項10】
少なくとも2つの被接合部材間にはんだ部材が挟まれた積層体をリフロー炉内に配置する配置工程と、
前記リフロー炉へカルボン酸含有ガスを供給するためのガス発生装置において、カルボン酸にキャリアガスを吹き込み前記カルボン酸含有ガスを発生するガス発生工程と、
前記カルボン酸含有ガスを前記リフロー炉に供給するとともに、当該リフロー炉内に配置した前記積層体を加熱して当該積層体を還元する還元工程と、
前記リフロー炉内において前記積層体のはんだ接合を行う接合工程と、を備え、
前記ガス発生装置が、
両端面が塞がれた筒状形状の容器と、
カルボン酸を前記容器内に供給するため前記容器に固定された送液管と、
キャリアガスを前記容器内に供給するため前記容器に固定された送気管と、
前記カルボン酸および前記キャリアガスを含み前記容器内で発生する前記カルボン酸含有ガスを前記容器外へ供給するため前記容器内に開口している開口部を備えるガス取り出し部と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の温度を制御するため前記容器に設置された温度制御手段と、
前記容器内に供給される前記カルボン酸の液面を検知して、当該液面と前記開口部の間の距離を制御するため、前記容器に設置された液面検知手段と、
を備える積層体のはんだ接合方法。
【請求項11】
前記ガス発生工程に続いて、前記カルボン酸含有ガスをバッファタンクにおいて希釈する希釈工程を備え、希釈された前記カルボン酸含有ガスを前記リフロー炉に供給する請求項10記載のはんだ接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111646(P2013−111646A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263319(P2011−263319)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】