説明

ガス発生装置

【課題】安定したガスの濃度管理が可能なガス発生装置を提供する。
【解決手段】液体試料を収容可能な試料収容室14、及び試料収容室14の上方に設けられると共に、仕切り板11bによって試料収容室14と仕切られ、液体試料を加熱して気化させることが可能な熱媒を収容可能な加熱室12を備える外管10と、上端21が外管10の加熱室12より上方に位置し、下端22が外管10の試料収容室14の液体試料に浸されるように外管10内に設けられ、外管10の加熱室12に対応する位置において気化された気体試料が上昇可能な少なくとも1つの上昇管20と、上昇管20内に向けて空気を噴射することにより上昇管20内に液体試料によって膜が形成された気泡を形成可能な気泡形成機構30とを備え、気泡は、気泡の表面が上昇管の内面と接するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、動物や細胞の暴露実験などの生物化学的実験装置、各種消毒用のガス発生装置、ガス散布装置、加湿装置、及びエバポレータなどとして使用され、大容量のガスを長時間にわたって安定して供給するためのガス発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスを長時間にわたって供給するためのガス発生装置として、清浄化装置を備えたコンプレッサーと、コンプレッサーに連設されたネブライザーと、ネブライザーに2段に連設された1次及び2次の恒温槽付き熱交換器と、適宜数のチャンバへ流量計を介して接続する接続管を有するバッファータンクとからなるものが知られている(特許文献1参照)。特許文献1のガス発生装置は、コンプレッサーからの清浄空気を三方に分岐し、それぞれに流量計を介して、その一つをネブライザーの噴霧用に、他の一つをネブライザーで生成されたガスのキャリアーの補充用に、さらに他の一つを2次熱交換器内の希釈混合用に供給し、生物化学的実験に使用される希釈ガスを生成するものである。
【0003】
また、特許文献1のガス発生装置の変形例として、ネブライザーに代え、例えば図4に示すように、有底円筒状に形成され、液体試料を収容するホウ珪酸ガラス製の蒸発缶110と、コンプレッサー120に連設されると共に、蒸発缶110の液体試料内に挿入され、液体試料に空気を吹き込む多孔質ガラスのバブラー130とを備えるガス発生装置100が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−183824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のガス発生装置においては、ネブライザーから噴霧された試料がミスト状になり、飽和蒸気を生成するための1次及び2次熱交換器をそのまま素通りする傾向があるため、安定したガスの濃度管理を行なうことができないとの問題がある。
【0006】
また、図4に示すガス発生装置においては、バブラーからの発生空気量を多くするに従い、バブラーから噴射された小さな泡同士が結合して大きな泡となるため、熱交換効率が悪化し、単位体積当たりの濃度が低くなるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、安定したガスの濃度管理が可能なガス発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明に係るガス発生装置は、液体試料を収容可能な試料収容室、及び前記試料収容室の上方に設けられると共に、仕切り板によって前記試料収容室と仕切られ、液体試料を加熱して気化させることが可能な熱媒を収容可能な加熱室を備える外管と、上端が前記外管の加熱室より上方に位置し、下端が前記外管の試料収容室の液体試料に浸されるように前記外管内に設けられ、前記外管の加熱室に対応する位置において気化された気体試料が上昇可能な少なくとも1つの上昇管と、前記上昇管内に向けて空気を噴射することにより該上昇管内に液体試料によって膜が形成された気泡を形成可能な気泡形成機構とを備え、前記気泡は、前記気泡の表面が前記上昇管の内面と接するように形成されるものであることを特徴とする。
【0009】
このように、本発明に係るガス発生装置によれば、上昇管内を上昇する気泡の表面が上昇管の内面と接するため、上昇管内の気泡の上昇に伴って上昇管の内面に液体試料の薄膜が形成される。これにより、液体試料に対する境膜伝熱抵抗が小さくなるため、熱交換効率の向上を可能とし、安定したガスの濃度管理を可能とすることができる。
【0010】
本発明に係るガス発生装置において、前記外管は、前記加熱室の上方に設けられると共に、仕切り板によって前記加熱室と仕切られた気液分離室を更に備え、前記上昇管は、上端が前記外管の気液分離室内に位置するように設けられ、前記外管の気液分離室は、前記上昇管内を上昇して該気液分離室に到達した試料のうち、気体試料と液体試料とを分離可能なように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係るガス発生装置において、上端が前記外管の気液分離室内に位置し、下端が前記外管の試料収容室内に位置するように、前記外管内に設けられ、前記外管の気液分離室において分離された液体試料を前記外管の試料収容室に流下させるように構成された少なくとも1つの降下管を更に備えることが好ましい。このように、外管の気液分離室において分離された液体試料を外管の試料収容室に流下させるように構成された降下管を備えることにより、降下管の内面に薄膜を形成させながら液体試料を流下させ、外管の加熱室に対応する位置において気化させることができるため、より大量の気体試料(ガス)を発生させることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、安定したガスの濃度管理が可能なガス発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス発生装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本実施形態に係るガス発生装置の熱交換器の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るガス発生装置の全体構成を示す模式図である。
【図4】従来のガス発生装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係るガス発生装置について、図面に基づいて説明する。本実施形態に係るガス発生装置1は、図1に示すように、液体試料を加熱してガス(気体試料)を発生させる熱交換器2と、熱交換器2により発生されたガスを所定の温度で冷却して飽和蒸気を生成する冷却器40と、熱交換器2及び冷却器4にそれぞれ空気を供給可能な空気供給源50と、消費した液体試料を補充するための補助タンク60とを備えている。
【0015】
熱交換器2は、図1及び図2に示すように、液体試料及び液体試料を加熱して気化させるための熱媒を収容する外管10と、外管10内に設けられた複数の上昇管20及び降下管24と、上昇管20内に液体試料によって膜が形成された気泡を形成させる気泡形成機構30とを備えている。
【0016】
外管10は、例えばホウ珪酸ガラスやPTFEなどからなり、液体試料が収容された試料収容室14と、試料収容室14の上方に設けられ、液体試料を加熱して気化させることが可能な熱媒が収容された加熱室12と、加熱室12の上方に設けられた気液分離室16とを備えている。
【0017】
試料収容室14は、円筒状に形成され、所定量の液体試料が収容されている。この試料収容室14の周面には、液体試料を試料収容室14内に流入させるための液体試料流入部14cが形成され、この周面の上端及びその近傍並びに下端及びその近傍には、それぞれ周方向外側に突出する上部フランジ14a及び下部フランジ14bが周方向全域に亘って形成されている。また、試料収容室14の下端は、気泡形成機構30の後述する底板部材34によって閉塞されており、この底板部材34には、試料収容室14内の液体試料を排出可能なドレインコック(図示せず)が設けられている。なお、試料収容室14は、二重缶構造を有し、この二重缶に熱媒を流すことによって内部の液体試料を加熱するように構成されても良い。
【0018】
試料収容室14及び底板部材34は、固定部材70aにより軸方向に固定されている。この固定部材70aは、リング状に形成された上部固定具71aと、上部固定具71aと同径のリング状に形成された下部固定具72aと、これら上部固定具71a及び下部固定具72aを締結する締結部材73aと、リング状の補助リング74aとを備えている。この上部固定具71aの内周面の上端及びその近傍には、周方向内側に突出するフランジ75aが周方向全域に亘って形成されており、締結部材73aの締付けにより、上部固定具71aのフランジ75aと下部固定具72aとが補助リング74a、試料収容室14の下部フランジ14b及び底板部材34を挟持し、これにより、試料収容室14及び底板部材34が軸方向に固定されるように構成されている。また、試料収容室14の下端と底板部材34との間には、気密性を確保するためのOリング19aが設けられている。
【0019】
加熱室12は、試料収容室14と同径の円筒状に形成され、熱媒となる液体又は蒸気などが収容されている。加熱室12の周面の上方の位置には、熱媒を加熱室12外に流出させるための熱媒流出部12cが形成され、加熱室12の周面の下方の位置には、熱媒を加熱室12内に流入させるための熱媒流入部12dが形成されている。これら熱媒流出部12c及び熱媒流入部12dには、加熱室12内の熱媒を循環させる循環路18が接続されており、この循環路18には、熱媒を加熱可能な加熱体18aと、熱媒を流動させるポンプ18bとが設けられている。循環路18を流動する熱媒は、循環路18に設けられた加熱体18a及び外管10の気液分離室16の温度を検知可能な温度指示調節計18cにより、所定の温度に維持される。
【0020】
また、加熱室12の周面の上端及びその近傍並びに下端及びその近傍には、それぞれ周方向外側に突出する上部フランジ12a及び下部フランジ12bが周方向全域に亘って形成されている。
【0021】
加熱室12は、試料収容室14及び加熱室12の中心軸が同軸となるように、試料収容室14の上端及び加熱室12の下端を閉塞する仕切り板11aを介して試料収容室14の上方に載置され、料収容室14及び底板部材34の固定に用いられた固定部材70aと同様の構成からなる固定部材70bにより、試料収容室14に固定されている。この固定部材70bの下部固定具72bの内周面の下端及びその近傍には、固定部材70aの下部固定具72aと異なり、周方向内側に突出するフランジ76bが周方向全域に亘って形成されており、締結部材73bの締付けにより、上部固定具71bのフランジ75bと下部固定具72bのフランジ76bとが補助リング74b、試料収容室14の上部フランジ14a、加熱室12の下部フランジ12b及び補助リング74bを挟持し、これにより、試料収容室14及び加熱室12が軸方向に固定されるように構成されている。また、試料収容室14の上端と仕切り板11aとの間、及び仕切り板11aと加熱室12の下端との間には、気密性を確保するためのOリング19b、19cがそれぞれ設けられている。
【0022】
気液分離室16は、加熱室12及び試料収容室14と同径かつ上端が閉塞された円筒状に形成されている。気液分離室16の周面の上端近傍には、軸方向と直行する方向に突出する円筒状の流出部16bが形成され、この流出部16bは、上昇管20内を上昇して気液分離室16内に流入したガスを冷却器40へと流出可能に構成されている。この流出部16bの突出した先端及びその近傍には、周方向外側に突出するフランジ17が周方向全域に亘って形成されている。気液分離室16の周面の下端及びその近傍には、周方向外側に突出する下部フランジ16cが周方向全域に亘って形成されている。
【0023】
気液分離室16には、ガスと共に上昇管20内を上昇して気液分離室16内に流入したミスト状の液体試料を凝縮させて液化させるように構成された還元部16aが設けられている。還元部16aは、上端が閉塞された円筒状に形成されると共に、その周面の上端近傍に、周方向に等間隔をおいて4つの開口が形成されている。この還元部16aは、下端が周方向外側に広がって気液分離室16の内面と接合されており、還元部16aの下端側(図2中、下側)から還元部16a内に流入したガス及びミスト状の液体試料のうち、液体試料を上端の閉塞部分において付着させて捕捉し、ガスを4つの開口から排出するように構成されている。
【0024】
気液分離室16は、加熱室12及び気液分離室16の中心軸が同軸となるように、加熱室12の上端及び気液分離室16の下端を閉塞する仕切り板11bを介して加熱室12の上方に載置され、試料収容室14及び加熱室12の固定に用いられた固定部材70bと同様の構成及び形状からなる固定部材70cにより、加熱室12に固定されている。すなわち、締結部材73cの締付けにより、上部固定具71cのフランジ75cと下部固定具72cのフランジ76cとが補助リング74c、加熱室12の上部フランジ12a、気液分離室16の下部フランジ16c及び補助リング74cを挟持し、これにより、加熱室12及び気液分離室16が軸方向に固定されるように構成されている。また、加熱室12の上端と仕切り板11bとの間、及び仕切り板11bと気液分離室16の下端との間には、気密性を確保するためのOリング19d、19eがそれぞれ設けられている。
【0025】
上昇管20は、例えばホウ珪酸ガラスやPTFEなどからなり、外管10と比較して径の小さい円筒状に形成されている。この上昇管20は、上端21が外管10の気液分離室16内の還元部16aの下方に位置し、下端22が外管10の試料収容室14の液体試料に浸されるように、かつ、上昇管20内において発生したガスが上昇管20内を上昇して上端21より排出されるように、第1及び第2仕切板11a、11bを貫通して外管10内に複数配置されている。
【0026】
降下管24は、例えばホウ珪酸ガラスやPTFEなどからなり、外管10と比較して径の小さい円筒状に形成されている。この降下管24は、上端25が外管10の気液分離室16内の還元部16aの下方に位置し、下端26が外管10の試料収容室14内に位置するように、かつ、外管10の気液分離室16によって液化した液体試料を外管10の試料収容室14に向けて流下させると共に、降下管24内において発生したガスが降下管24内を上昇して上端25より排出されるように、第1及び第2仕切板11a、11bを貫通して外管10内に複数配置されている。
【0027】
気泡形成機構30は、各上昇管20、20内に空気を噴射するノズル32、32と、ノズル32、32を保持する底板部材34とを備えている。
【0028】
ノズル32は、円筒状に形成され、その径は、ノズル32の上端及びその近傍が上昇管20内に挿入可能で、かつノズル32の上端及びその近傍が上昇管20内に挿入された際に、ノズル32の外周面と上昇管20の内面との間に液体試料が通過可能な隙間が形成されるような大きさを有する。このノズル32は、下端側が底板部材34に保持されると共に、上端が上昇管20内の液体試料に浸っている領域に位置し、かつノズル32の上端と上昇管20内の液体試料の水面との間に所定の間隔が形成されるように各上昇管20内に挿入されている。
【0029】
底板部材34は、外管10の試料収容室14の下端を閉塞可能な板状に形成されている。この底板部材34には、各ノズル32、32にそれぞれ連通された流路34aと、流路34aに空気を流入可能な流入部34bとが形成されている。この流入部34bは、電磁弁51a、51c及びこれら電磁弁51a、51cの間に設けられた流量調節計51bを介して空気供給源50と接続されており、電磁弁51a、51c及び流量調節計51bによって流量が調整された空気が、空気供給源50から供給されるように構成されている。
【0030】
また、底板部材34は、ノズル32、32を選択的に開放及び閉塞可能なバルブ状の閉塞部(図示せず)を備えており、この閉塞部を操作することにより、空気供給源50から供給された空気を噴射させるノズル32の本数を制御できるように構成されている。
【0031】
熱交換器2は、気泡形成機構30のノズル32から上昇管20内に噴射された空気によって、上昇管20内に液体試料によって膜が形成された気泡を形成するように構成されている。この気泡は、液体試料の粘度に応じて、上昇管20の径、上昇管20の液体試料に浸っている部分の長さ、ノズル32の上端と上昇管20内の液体試料の水面との間の間隔、及び気泡形成機構30によって供給される空気量などを適宜調整することによって、気泡の表面が上昇管20の内面と接するように形成することができる。また、熱交換器2は、気泡形成機構30が連続的に又は所定の間隔をおいて上昇管20内に空気を噴射するように構成されることにより、上昇管20内に気泡が連続的に形成されるように構成されている。
【0032】
冷却器40は、熱交換器2により生成されたガスを冷却して飽和蒸気を生成する冷却室41と、冷却室41の下方に設けられ、飽和蒸気及び空気を混合させて任意の濃度の希釈ガスを生成する希釈ガス生成室46とを備えている。
【0033】
冷却室41は、上端が閉塞された円筒状に形成され、この冷却室41の周面の上端近傍には、軸方向と直行する方向に突出する流入部41aが形成されている。この流入部41aは、熱交換器2の外管10の気液分離室16の流出部16bと同径の円筒状に形成されており、熱交換器2の外管10の気液分離室16の流出部16bから流出されたガスを冷却室41内に流入可能に構成されている。流入部41aの突出した先端及びその近傍には、周方向外側に突出するフランジ43が周方向全域に亘って形成されている。また、冷却室41の周面の下端及びその近傍には、周方向外側に突出する下部フランジ41bが周方向全域に亘って形成されている。
【0034】
この冷却室41の流入部41aは、冷却室41の流入部41a及び熱交換器2の気液分離室16の流出部16bの中心軸が同軸となるように、試料収容室14及び加熱室12の固定に用いられた固定部材70bと同様の構成及び形状からなる固定部材70eにより、気液分離室16の流出部16bに固定されている。すなわち、締結部材73eの締付けにより、上部固定具71eのフランジ75eと下部固定具72eのフランジ76eとが補助リング74e、流出部16bのフランジ17、流入部41aのフランジ43及び補助リング74eを挟持し、これにより、冷却室41及び気液分離室16が軸方向に固定されるように構成されている。
【0035】
冷却室41は、冷媒が流動する冷却部42aと、冷媒の温度が所定の温度となるように制御する恒温槽42bと、冷却器40内の冷却温度を検知可能な温度指示調節計42cとを備えている。
【0036】
冷却部42aは、冷却室41内に設けられた蛇管45と、蛇管45の外側を覆う冷却層47とを備えている。
【0037】
蛇管45は、軸方向に伸びる螺旋状に形成された三重管構造を有している。この蛇管45の下端には、恒温槽42bと連通された冷媒流出部45aが形成されており、蛇管45の上端から下端に向かって流動した冷媒が冷媒流出部45aから恒温槽42bに流出されるように構成されている。
【0038】
冷却部42aの冷却層47は、冷却部42aが設けられた領域の冷却室41を二重壁構造に形成すると共に、この二重壁の外壁及び内壁の間に冷媒を充填させることにより形成されている。冷却層47の周面の下方の位置には、恒温槽42bにより温度調節された冷媒を冷却層47内に流入させる冷媒流入部47aが形成されている。この冷却層47は、その上方の位置において蛇管45の上端と連通しており、冷却層47内の冷媒が蛇管45内に流動されるように構成されている。
【0039】
希釈ガス生成室46は、冷却室41と同径かつ下端が閉塞された円筒状に形成され、この希釈ガス生成室46の下部には、所定量の液体試料が溜められることにより、下部液溜部44が形成されている。この希釈ガス生成室46の周面には、希釈ガス生成室46内に空気を流入させる気体流入部46aと、希釈ガス生成室46内において生成された希釈ガスを希釈ガス生成室46内から流出させる気体流出部46bと、後述する補助タンク60の配管60aと接続し、補助タンク60から供給される液体試料を下部液溜部44に流入させる液体流入部46dとが形成されている。これら気体流入部46a及び気体流出部46bは、希釈ガス生成室46の下部液溜部44よりも上方に形成され、液体流入部46dは、希釈ガス生成室46の下部液溜部44に溜められた液体試料の水面上に位置するように形成されている。
【0040】
この気体流入部46aは、電磁弁52a、52c及びこれら電磁弁52a、52cの間に設けられた流量調節計52bを介して空気供給源50と接続されており、電磁弁52a、52c及び流量調節計52bによって流量が調整された空気が空気供給源50から供給されるように構成されている。また、気体流出部46bは、電磁弁81a、82a、83a、フローコントロールバルブ81b、82b、83b及び流量計81c、82c、83cを介して複数のチャンバ81、82、83とそれぞれ接続されている。
【0041】
希釈ガス生成室46の底面には、下部液溜部44に溜められた液体試料を希釈ガス生成室46内から流出させる液体流出部44aが形成されている。この希釈ガス生成室46の液体流出部44aは、流路44bを介して熱交換器2の外管10の試料収容室14の液体試料流入部14cと接続されており、試料収容室14の液体試料が減少した際に、下部液溜部44に溜められている液体試料を試料収容室14に流出し、補充するように構成されている。
【0042】
希釈ガス生成室46の周面の上端及びその近傍には、周方向外側に突出する上部フランジ46cが周方向全域に亘って形成されている。
【0043】
冷却室41は、冷却室41及び希釈ガス生成室46の中心軸が同軸となるように、希釈ガス生成室46の上方に載置され、試料収容室14及び加熱室12の固定に用いられた固定部材70bと同様の構成及び形状からなる固定部材70dにより、希釈ガス生成室46に固定されている。すなわち、締結部材73dの締付けにより、上部固定具71dのフランジ75dと下部固定具72dのフランジ76dとが補助リング74d、冷却室41の下部フランジ41b、希釈ガス生成室46の上部フランジ46c及び補助リング74dを挟持し、これにより、冷却室41及び希釈ガス生成室46が軸方向に固定されるように構成されている。
【0044】
空気供給源50は、例えばクリーンエアを供給可能なコンプレッサなどから構成されており、それぞれ第1電磁弁51a、52a、流量調節計51b、52b及び第2電磁弁51c、52cを介して、熱交換器2の気泡形成機構30に気泡形成用の空気を供給し、冷却器40の希釈ガス生成室46に希釈用の空気を供給するように構成されている。
【0045】
補助タンク60は、補助タンク60の下部から冷却器40の希釈ガス生成室46に亘って設けられた配管60aによって、冷却器40の希釈ガス生成室46の液体流入部46dと接続されている。この補助タンク60は、冷却器40の希釈ガス生成室46の下部液溜部44に収容されている液体試料の液面を一定にし、下部液溜部44から熱交換器2の外管10の試料収容室14に補充されることにより減少した液体試料を補充するように構成されている。
【0046】
次に、本実施形態に係るガス発生装置1を用いた希釈ガスの生成方法について、説明する。ここでは、本実施形態に係るガス発生装置1が、動物や細胞の暴露実験などの生物化学的実験に使用される例について説明するが、これに限定されず、例えば、各種消毒用のガス発生装置や、ガス散布装置、加湿装置、エバポレータなどとして使用することもできる。
【0047】
まず、装置の容積や、実験に必要なガスの濃度などの所定の条件に基づいて各流量計における流量を算出しておき、目的ガスを発生させるための液体試料を熱交換器2の外管10の試料収容室14に収容させる。次に、空気供給源50から所定流量の空気を熱交換器2の気泡形成機構30に供給させ、気泡形成機構30の底板部材34及びノズル32、32を介して各上昇管20、20内に空気を噴射させ、上昇管20内に気泡を形成させる。
【0048】
この際、上昇管20内に形成される気泡は、その表面が上昇管20の内面と接するように形成されることにより、上昇管20の内面に液体試料の薄膜を形成しながら上昇管20内を上昇する。すなわち、熱交換器2の気泡形成機構30のノズル32から上昇管20内に噴射された空気が、液体試料と混合して上昇管20内に気泡を形成し、この形成された気泡が、その上部に液体試料を乗せた状態で上昇管20内を上昇する。このとき、気泡の上部の液体試料は、気泡と共に上昇管20内を上昇するが、その一部が上昇管20の内面に沿って薄膜を形成しながら上昇管20内を流下する。ここで、気泡が連続的に形成される場合には、流下した液体試料が、上昇管20内を次に上昇してきた気泡の上部に乗り、再度薄膜を形成するため、上昇管20の内面に連続的した薄膜が形成される。
【0049】
その後、薄膜状の液体試料は、加熱室12の熱媒によって加熱され、上昇管20内において気化する。液体試料が気化することにより生成されたガスは、上昇管20内を上昇し、上昇管20の上端21から外管10の気液分離室16内に流入される。この際、気液分離室16の還元部16aによって液化された液体試料は、降下管24を試料収容室14に向けて流下し、その一部が降下管24内において熱交換されてガスとなり、再度気液分離室16内に流入され、液体状の液体試料のみが試料収容室14に戻される。
【0050】
気液分離室16に流入したガスは、気液分離室16の流出部16b及び冷却器40の流入部41aを介して冷却室41内に流入される。冷却室41内に流入したガスは、冷却室41の冷却部42により冷却され、その一部が飽和蒸気となって希釈ガス生成室46に留まり、他の部分が液化されて液体試料となって下部液溜部44に蓄積される。
【0051】
次に、空気供給源50から所定流量の空気を冷却器40の希釈ガス生成室46に供給させ、希釈ガス生成室46において任意の濃度の希釈ガスを生成する。希釈ガス生成室46において生成された希釈ガスは、希釈ガス生成室46の気体流出部46bから各チャンバ81、82、83にそれぞれ供給され、動物や細胞の暴露実験などの生物化学的実験に供される。
【0052】
近年、動物の吸入実験設備においては、高濃度の有機ハロゲン系ガスの実験が要求される状況にあり、大容量のガスを発生させることができるガス発生装置の開発が望まれている。
しかしながら、このようなガス発生装置においては、有機塩素系溶剤に対する耐食性を確保するためにホウ珪酸ガラスやPTFEなどにより構成部品を形成する必要があり、また、加圧条件下で使用される場合がある。それゆえ、図4に示す従来のガス発生装置では、蒸発缶110が、ホウ珪酸ガラスやPTFEにより形成されると共に、加圧条件下で使用可能な肉厚かつ小型の形状に制約されてしまうため、熱交換効率が悪く、また、大容量のガスを発生させることができないものである。
これに対し、本実施形態に係るガス発生装置1は、以下のような効果を奏することができる。
【0053】
本実施形態に係るガス発生装置1によれば、熱交換器2の上昇管20内を上昇する気泡が、その表面が上昇管20の内面と接するように形成されることにより、上昇管20内の気泡の上昇に伴って上昇管20の内面に液体試料の薄膜を形成することができる。これにより、液体試料に対する境膜伝熱抵抗が小さくなるため、熱交換効率の向上を可能とし、安定したガスの濃度管理を可能とすることができる。
【0054】
また、本実施形態に係るガス発生装置1によれば、高効率の熱交換を行なうことができるため、従来のガス発生装置と比較してコンパクトにすることができ、これにより、ガス発生装置の設置スペースを小さくすることができる。さらに、複数台のガス発生装置により大容量のガスを発生させる必要がある場合においては、本実施形態に係るガス発生装置1台で大容量かつ安定した濃度のガスを供給することができるため、従来よりもガス発生装置の台数を減らすことができる。またさらに、本実施形態に係るガス発生装置1によれば、熱交換面積を大きくできるため、蒸気圧の低い試料でも高濃度のガスを発生させることができる。
【0055】
さらに、本実施形態に係るガス発生装置1によれば、熱交換器2の外管10内に降下管24が設けられることにより、外管10の気液分離室16によって液化した液体試料を試料収容室14に還流させるための外部配管を不要とすることができ、また、降下管24内においても高効率な熱交換を行なうことができるため、熱ロスの少ないガス発生装置とすることができる。
【0056】
またさらに、本実施形態に係るガス発生装置1は、熱交換器2が外管10と上昇管20及び降下管24とを備える多管式熱交換器であるため、従来のガス発生装置に使用される蒸発缶よりも高圧条件下において安全に操作することができる。また、本実施形態に係るガス発生装置1は、高圧条件下で操作可能であることにより、より濃度の高いガスを発生させることができる。さらに、本実施形態に係るガス発生装置1は、従来のガス発生装置と異なり、熱交換器2の上昇管20の径を小さくすることができるため、加圧条件下においても上昇管20の肉厚を薄くすることができ、これにより、更に伝熱効率を向上させることができる。またさらに、本実施形態に係るガス発生装置1は、低圧条件下においても高いガス発生能力を実現することができ、安全に操作することができる。
【0057】
本発明に係るガス発生装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内において種々の改変を行なうことができる。例えば、本実施形態に係るガス発生装置1において、熱交換器2は、降下管24を備えるとしたが、これに限定されず、降下管24を備えない構成としても良い。この場合において、熱交換器2´は、例えば図3に示すように、外管10´の外部に配置された液溜槽90を備え、熱交換器2´の外管10´の気液分離室16´によって液化した液体試料が、流路90aを介して液溜槽90に還流されると共に、液溜槽90内の液体試料が、流路90bを介して外管10´の試料収容室14´内に補充されるように構成されても良い。また、図3に示すガス発生装置1´において、補助タンク60´は、補助タンク60´の下部から液溜槽90の液体試料の液面と接する位置に亘って設けられた配管60´aによって液溜槽90と接続され、液溜槽90に液体試料を補充するように構成されても良い。
【0058】
また、本実施形態に係るガス発生装置1において、熱交換器2の外管10は、気液分離室16を備えるとしたが、これに限定されず、気液分離室を備えない構成としても良い。この場合、熱交換器の上昇管は、上端が外管の加熱室より上方に位置し、下端が外管の試料収容室の液体試料に浸されるように外管内に設けられれば良い。
【0059】
さらに、本実施形態に係るガス発生装置1において、熱交換器2の上昇管20は、外管10内に複数配置されるとしたが、これに限定されず、少なくとも1つ設けられていれば良い。
【0060】
またさらに、本実施形態に係るガス発生装置1において、熱交換器2の加熱室12、試料収容室14、気液分離室16及び底板部材34は、それぞれ固定部材70a、70b、70cによって軸方向に固定されているとしたが、これに限定されず、これら熱交換器2の加熱室12、試料収容室14、気液分離室16及び底板部材34は、一体的に形成されても良い。
【0061】
またさらに、本実施形態に係るガス発生装置1において、熱交換器2の加熱室12は、循環路18と接続されるとしたが、これに限定されず、例えば、熱媒の温度が所定の温度となるように制御する恒温槽と接続しても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 ガス発生装置、2 熱交換器、10 外管、12 加熱室、14 試料収容室、16 気液分離室、20 上昇管、24 降下管、30 気泡形成機構、40 冷却器、50 空気供給源、60 補充タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を収容可能な試料収容室、及び前記試料収容室の上方に設けられると共に、仕切り板によって前記試料収容室と仕切られ、液体試料を加熱して気化させることが可能な熱媒を収容可能な加熱室を備える外管と、
上端が前記外管の加熱室より上方に位置し、下端が前記外管の試料収容室の液体試料に浸されるように前記外管内に設けられ、前記外管の加熱室に対応する位置において気化された気体試料が上昇可能な少なくとも1つの上昇管と、
前記上昇管内に向けて空気を噴射することにより該上昇管内に液体試料によって膜が形成された気泡を形成可能な気泡形成機構とを備え、
前記気泡は、前記気泡の表面が前記上昇管の内面と接するように形成されるものであることを特徴とするガス発生装置。
【請求項2】
前記外管は、前記加熱室の上方に設けられると共に、仕切り板によって前記加熱室と仕切られた気液分離室を更に備え、
前記上昇管は、上端が前記外管の気液分離室内に位置するように設けられ、
前記外管の気液分離室は、前記上昇管内を上昇して該気液分離室に到達した試料のうち、気体試料と液体試料とを分離可能なように構成されていることを特徴とする請求項1記載のガス発生装置。
【請求項3】
上端が前記外管の気液分離室内に位置し、下端が前記外管の試料収容室内に位置するように、前記外管内に設けられ、前記外管の気液分離室において分離された液体試料を前記外管の試料収容室に流下させるように構成された少なくとも1つの降下管を更に備えることを特徴とする請求項2記載のガス発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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