Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
ガス組成分析装置及びガス組成分析方法並びに燃料電池システム
説明

ガス組成分析装置及びガス組成分析方法並びに燃料電池システム

【課題】ガスの組成分析を行うにあたり、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ内部における水分の凝縮を抑制するとともに、マスフローコントローラの構造に起因する分析計の応答遅れを抑制することにより、組成分析の精度を向上させる。
【解決手段】ガス組成分析装置10は、分析対象となるガスをサンプリングするサンプリング手段(バルブ12等)と、このサンプリング手段でサンプリングしたサンプルガスの流量を調整するマスフローコントローラ13と、マスフローコントローラ13で流量を調整したサンプルガスの組成分析を行う組成分析手段14と、を備え、さらに、サンプリング手段でサンプリングされマスフローコントローラ13に導入されるサンプルガスに希釈ガスを供給してサンプルガスを希釈する希釈手段(希釈ガス用のマスフローコントローラ15等)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス組成分析装置及びこれを備えた燃料電池システム並びにガス組成分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料電池システムの運転条件の維持等を目的として、燃料電池に供給されるガスや燃料電池から排出されるガスの組成を分析する技術が提案されている。例えば、現在においては、燃料ガス生成用の燃料改質器に供給されるプロセスガス中の水蒸気流量を測定する技術が提案されている(特許文献1参照)。かかる技術においては、水蒸気に不活性ガスを供給して、温度変化に起因する水蒸気分圧の変動の影響を緩和することにより、プロセスガス中の水蒸気流量の測定精度を向上させている。
【0003】
また、近年においては、図5に示すようなオリフィスを用いたガス組成分析システムが提案されている。かかるガス組成分析システムは、燃料電池100から排出されるガスをサンプリングしてガス分析計101で分析するものであり、燃料電池100とガス分析計101との間には、燃料電池100からの排出ガスの流量を絞って調節するサンプル流量調整用オリフィス102と、排出ガスをサンプリングして円滑にガス分析計101に送出するサンプリングポンプ103と、が配置される。
【0004】
しかし、このような従来の技術においては、排出ガスの組成成分によってガス粘性が異なり、サンプル流量が変化することまでは考慮されていなかった。すなわち、燃料電池の運転条件やサンプリングポイントによっては、排出ガス中に高濃度の水蒸気(H2O)や水素(H2)が含まれるため、空気雰囲気を一定量(例えば50ml/min)でサンプリングしても、ガス組成が変化して水素(H2)が高濃度になると、オリフィスを通過する排出ガスの流量は約2倍になることがある。これは、オリフィスを通過する際に排出ガスの粘性の違いが作用し、ガス種によって、流れ易い場合と流れ難い場合との違いが生じるからである。また、燃料電池のガス分析においては、燃料電池の性能を変化させずに燃料電池からガス分析のために抽出できるサンプル量は所定量(例えば50ml/min)と限られており、組成成分の変化によってこの流量を超えると、目的とする正確なガス分析ができない虞がある。一方、サンプル流量を極端に少なく設定すると、排出ガスの組成が変化したときに分析計の測定値の変化に大きな時間遅れ(応答遅れ)が生じ、正確なガス分析ができない場合がある。
【0005】
そこで、近年においては、図6に示すようなマスフローコントローラを用いたガス組成分析システムが提案されている。かかるガス組成分析システムにおいては、燃料電池200からの排出ガスをサンプリングするサンプリング手段(バルブ201及びサンプリングポンプ202)と、サンプリングポンプ202の上流に配置され排出ガスの流量を調節するマスフローコントローラ203と、流量が調節された排出ガスの組成を分析するガス分析計204と、を備えるものである。かかるシステムを採用すると、燃料電池からの排出ガスの組成を、組成成分の粘性の相違による影響を受けずに、比較的高精度に分析することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−262926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記した従来のガス組成分析システムにおいては、サンプル流量を調整するマスフローコントローラに高濃度(例えば60vol%)の水蒸気がサンプルとして流入する可能性がある。このように流入した水蒸気がマスフローコントローラの内部で冷却されて凝縮すると、ガス分析計で正確な水蒸気濃度を測定できず、マスフローコントローラの故障原因となる場合もある。このため、共存する水蒸気濃度が所定の閾値(例えば60vol%)を超える場合にはマスフローコントローラを例えば90℃程度に加熱する必要があるが、一般的な高温用マスフローコントローラの保証最大温度は80℃程度であり、凝縮を防ぐには不十分であった。
【0008】
また、サンプル流量を調整するマスフローコントローラは、一定の内容積を有しており、しかもその機械的構造が複雑である。このため、サンプルガスが小流量(例えば50ml/min程度)であると、マスフローコントローラ上流側のガス組成が変化した場合に、マスフローコントローラ内部に既に存在するガスと完全に置換するのに時間を要するため、分析計の測定値の変化に時間遅れ(応答遅れ)が生じ、正確なガス分析ができない場合があった。
【0009】
なお、前記したマスフローコントローラを用いた従来のガス組成分析システムを採用すると、ガス組成(特に水蒸気濃度)の変動が大きい場合には、マスフローコントローラによる調整後においても依然としてガス流量に幾分かの変動が生じ、この結果、ガス組成分析の精度が低下する場合があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ガスの組成分析を行うにあたり、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ内部における水分の凝縮を抑制するとともに、マスフローコントローラの構造に起因する分析計の応答遅れを抑制することにより、ガスの組成分析の精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係るガス組成分析装置は、分析対象となるガスをサンプリングするサンプリング手段と、このサンプリング手段でサンプリングしたサンプルガスの流量を調整するマスフローコントローラと、このマスフローコントローラで流量を調整したサンプルガスの組成分析を行う組成分析手段と、を備え、さらに、サンプリング手段でサンプリングされマスフローコントローラに導入されるサンプルガスに希釈ガスを供給してサンプルガスを希釈する希釈手段を備えるものである。
【0012】
また、本発明に係るガス組成分析方法は、分析対象となるガスをサンプリングするサンプリング工程と、このサンプリング工程でサンプリングしたサンプルガスの流量をマスフローコントローラで調整する流量調整工程と、この流量調整工程で流量を調整したサンプルガスの組成分析を行う組成分析工程と、を備え、さらに、サンプリング工程でサンプリングされマスフローコントローラに導入されるサンプルガスに希釈ガスを供給してサンプルガスを希釈する希釈工程を備えるものである。
【0013】
かかる構成及び方法を採用すると、サンプルガスを希釈した状態でマスフローコントローラに導入することができるので、サンプル中の水蒸気濃度を低下させ、露点温度を低下させることができる。従って、高温を用いることなく、マスフローコントローラ内部における水分凝縮を抑制することができる。また、サンプルガスを希釈するとサンプル流量が増大し、マスフローコントローラ内部でのガス置換も早くなるため、分析計の応答遅れを抑制することができる。この結果、サンプルガスの組成分析の精度を向上させることが可能となる。
【0014】
前記ガス組成分析装置において、分析対象となるガスに含まれる特定成分(例えば、水蒸気や水素)の濃度を測定する分析手段を採用することができる。さらに、希釈ガスの流量を調整する希釈ガス用のマスフローコントローラを有する希釈手段を採用することができる。
【0015】
また、本実施形態に係る燃料電池システムは、燃料電池と、燃料電池に供給されるガスを流通させる供給流路と、燃料電池から排出されるガスを流通させる排出流路と、を備える燃料電池システムであって、供給流路及び/又は排出流路を流通するガスの組成分析を行う前記ガス組成分析装置を備えるものである。
【0016】
かかる構成を採用すると、燃料電池に供給されるガスや燃料電池から排出されるガスの組成分析を高精度で行うことができるため、システムの運転状態を正確に把握することができる。この結果、的確な運転条件の設定が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガスの組成分析を行うにあたり、サンプルガスの流量を調整するマスフローコントローラ内部における水分の凝縮を抑制するとともに、マスフローコントローラの構造に起因する分析計の応答遅れを抑制することにより、ガスの組成分析の精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料電池システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガス組成分析装置を示す構成図である。
【図3】図2に示したガス組成分析装置に設けられるマスフローコントローラの構成図である。
【図4】図2に示したガス組成分析装置を用いたガス組成分析方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】従来のガス組成分析装置を示す構成図である。
【図6】従来のガス組成分析装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図4を用いて、本発明の実施形態に係るガス組成分析装置を備えた燃料電池システムについて説明する。本実施形態においては、本発明を燃料電池車両の車載発電システムに適用した例について説明することとする。
【0020】
まず、図1を用いて、本実施形態に係る燃料電池システム1の構成の概要について説明する。燃料電池システム1は、図1に示すように、燃料電池2を中心として構成され、燃料電池2に燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源3、燃料電池2に酸化ガスを供給するための酸化ガス供給源4、システム全体を統合制御する図示されていない制御装置等を備えて構成されている。また、燃料電池システム1は、燃料電池2に供給されるガスや燃料電池2から排出されるガスの組成分析を行うガス組成分析装置10(図2)を備えている。ガス組成分析装置10の構成については、図2等を用いて後に詳述する。
【0021】
燃料電池2は、単電池(燃料電池セル)を所要数積層した燃料電池スタックを備えている。燃料電池2には、発電された電力を蓄える図示されていない蓄電池や、発電された電力及び/又は蓄電池に蓄えられた電力によって駆動する図示されていないモータ等が接続されている。
【0022】
燃料電池2の水素供給口には、本発明における供給流路として機能する水素供給流路31が接続されており、この水素供給流路31を介して燃料ガスが燃料ガス供給源3から供給される。本実施形態においては、燃料ガス供給源3として高圧水素タンクを採用している。なお、高圧水素タンクに代えて、いわゆる燃料改質器や水素吸蔵合金等を採用することもできる。水素供給流路31には、燃料ガス供給源3から水素ガスを供給し又は供給を停止する遮断弁、燃料電池2への水素ガスの供給圧力を減圧して調整する水素調圧弁、燃料電池2の水素供給口と水素供給流路31との間を開閉する遮断弁等が設けられている。なお、各種弁については図示を省略している。
【0023】
燃料電池2の水素排出口には、本発明における排出流路として機能する水素循環流路32が接続されており、燃料電池2で消費されなかった水素ガスは、水素オフガスとして水素循環流路32に排出されて水素供給流路31に戻される。水素循環流路32には、燃料電池2と水素循環流路32とを連通させ又は遮断する遮断弁、水素オフガスから水分を回収する気液分離器33、水素オフガスを加圧する水素ポンプ34等が設けられている。水素オフガスは、水素供給流路31で水素ガスと合流し、燃料電池2に供給されて再利用される。
【0024】
燃料電池2の空気供給口には、本発明における供給流路として機能する空気供給流路41が接続されており、この空気供給流路41を介して酸化ガスが酸化ガス供給源4から供給される。また、燃料電池2の空気排出口には、本発明における排出流路として機能する空気排出流路42が接続されており、この空気排出流路42を介して酸化オフガスが外部に放出される。
【0025】
ガス組成分析装置10は、燃料電池システム1を流通する各種ガスの組成分析を行うものである。本実施形態においては、図1に示すように、システム内に5箇所のサンプリングポイントP1〜P5を設定し、これらサンプリングポイントP1〜P5でサンプリングされた分析対象となるガス(水素ガス、水素オフガス、酸化ガス、酸化オフガス)の組成分析を行うこととしている。第1のサンプリングポイントP1は、水素ガスをサンプリングするために水素供給流路31に設定されており、第2及び第3のサンプリングポイントP2及びP3は、水素オフガスをサンプリングするために水素循環流路32の気液分離器33の上流側及び下流側に設定されている。また、第4のサンプリングポイントP4は、酸化ガスをサンプリングするために空気供給流路41に設定されており、第5のサンプリングポイントP5は、酸化オフガスをサンプリングするために空気排出流路42に設定されている。
【0026】
次に、図2及び図3を用いて、本実施形態に係るガス組成分析装置10の構成について説明する。
【0027】
ガス組成分析装置10は、図2に示すように、燃料電池システム1に設定されたサンプリングポイントPN(N:1〜5)に連通接続されたサンプリング流路11、サンプリング流路11に設けられたバルブ12、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13、サンプルガスの組成分析を行うガス分析計14、各流路からサンプリングポイントPNを介してガスを吸引してガス分析計14へと送り込む図示されていないサンプリングポンプ、サンプルガスを希釈するための希釈ガスを供給する図示されていない希釈ガス供給源、希釈ガス用のマスフローコントローラ15等を有している。
【0028】
バルブ12は、電磁式に排気ガスの流通を遮断・開放するシャットバルブ(遮断弁)としての構成を備えており、各流路からサンプリングポイントPNを介してサンプルガスをガス分析計14へと導くためのものである。バルブ12の開閉動作は、図示されていない制御装置によって制御され、ガスの組成分析を行わない場合は閉じられるようになっている。なお、サンプリング流路11、バルブ12及びサンプリングポンプにより、本発明におけるサンプリング手段が構成される。
【0029】
サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13は、サンプリングしたサンプルガスの流量を調整するものである。マスフローコントローラ13は、図3に示すように、質量流量を検出する流量検出センサ部20、サンプルガスが流入する金属細管21、金属細管21の上流と下流の温度により抵抗値が変化する2つの発熱感温抵抗線22、2つの発熱感温抵抗線22の抵抗値の差をセンサ電圧値の差として検出し出力するブリッジ回路23、ブリッジ回路23の出力電圧を増幅する増幅回路24、電気回路用の電源25、後述する比較制御回路28の比較結果を表示する表示器26、比較制御回路28に比較の基準となる基準電圧値を設定する設定器27、増幅回路24の出力電圧値と設定器27で設定された基準電圧値とを比較する比較制御回路28、比較制御回路28による比較結果に基づいて制御されるソレノイドバルブ29、ソレノイドバルブ29によって開閉されるバルブ30等を有している。
【0030】
流量検出センサ部20を構成する金属細管21は、マスフローコントローラ13内に形成されるサンプルガス流路のバイパス流路となっている。金属細管21の2箇所(上流部と下流部)には発熱感温抵抗線22が巻き付けられている。発熱感温抵抗線22を構成する素材は、例えば温度に感応する抵抗電線である。金属細管21の上流部に巻き付けられた発熱感温抵抗線22は、金属細管21の上流部の温度に対応した抵抗値を検出するためのものである。また、金属細管21の下流部に巻き付けられた発熱感温抵抗線22は、金属細管21の下流部の温度に対応した抵抗値を検出するためのものである。
【0031】
ここで、金属細管21にサンプルガスが流れると、サンプルガスによって金属細管21の上流部の温度が奪われる。このとき、金属細管21の下流部の温度もサンプルガスによって奪われるが、下流部の温度は上流部の温度よりも高くなる。この金属細管21における上流部と下流部との温度差は、金属細管21を流れるサンプルガスの質量流量に比例する。この温度差は、2つの発熱感温抵抗線22の抵抗値の差異を生じさせ、ブリッジ回路23を介してセンサ電圧の差(すなわちブリッジ回路23の出力電圧値)として検出される。
【0032】
ブリッジ回路23の出力電圧は増幅回路24で増幅され、センサ流量信号として比較制御回路28の比較電圧端子の一方に入力される。比較制御回路28の比較電圧端子の他方には、設定器27により設定された基準電圧(即ち設定流量信号)が入力されている。比較制御回路28の比較結果であるサンプルガスの流量は、表示器26で表示されるとともに、ソレノイドバルブ29に伝達されてソレノイドバルブ29のソレノイド部に流れる電流を制御する。これにより、バルブ30が開又は閉の方向に移動し、サンプルガスの流量が変化する。サンプルガスの流量が変化すると、前記したセンサ流量信号が変化する。
【0033】
このような一連のフィードバックシステムにより、設定流量信号とセンサ流量信号とが一致するまでバルブ30の開度が調整され、設定流量信号で設定した質量流量が自動的に維持されて流路に流される。
【0034】
ガス分析計14は、マスフローコントローラ13で流量を調整したサンプルガスの組成を分析するものであり、本発明における組成分析手段として機能する。ガス分析計14は、サンプルガスの目的に応じて種々変更可能であり、例えば、サンプルガスに含まれる特定成分(水蒸気(H2O)や水素(H2)等)の濃度を測定するものを採用することができる。
【0035】
希釈ガス供給源は、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13に導入されるサンプルガスに、希釈ガス(サンプルガスの組成分析に影響を与えない不活性ガス)を供給する。希釈ガス用のマスフローコントローラ15は、希釈ガス供給源から供給される希釈ガスの流量を調整するものであり、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13と実質的に同一の構成を有している。これら希釈ガス供給源及びマスフローコントローラ15により、一定量の希釈ガスがサンプルガスに供給され、サンプルガスが希釈される。すなわち、希釈ガス供給源及びマスフローコントローラ15により、本発明における希釈手段が構成される。
【0036】
このような希釈手段を採用することにより、サンプル中の水分濃度(及び露点温度)を低下させることができるので、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13の性能仕様範囲内温度での加熱でサンプル中の水分の凝縮を抑制することが可能となり、サンプルガスの組成分析の精度を向上させることができる。また、このような希釈手段を採用することにより、少量のサンプルでも、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13を通過するガス流量が増加し、マスフローコントローラ13内部でのガス置換速度が高まるため、ガス分析計14の応答遅れを抑制することができ、この点からもサンプルガスの組成分析精度を向上させることができる。
【0037】
また、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13がサンプルガスの組成変動の影響を受けても、希釈後における水蒸気(H2O)濃度からコンバージョンファクタ(ガス濃度100vol%において窒素ガス(N2)の流量を基準にして設定した各ガス成分の流量)を算出し、このコンバージョンファクタを用いて、各測定成分ガスの誤差を補正した希釈前濃度を算出することが可能となる。
【0038】
以下、マスフローコントローラ13に導入されるサンプルガスを希釈することによる作用効果について、コンバージョンファクタを用いて具体的に説明することとする。
【0039】
サンプルガスの組成変動に起因するガス流量変動の指標となるコンバージョンファクタCXは、サンプルガスが例えば3種類のガス(A、B、C)が混合されてなる混合ガスである場合、次式で算出される。但し、次式において、MA、MB、MCは、各々、ガスA、ガスB、ガスCの混合比を意味し(MA+MB+MC=1)、CA、CB、CCは、各々、ガスA、ガスB、ガスCのコンバージョンファクタを意味する。
【0040】
【数1】

【0041】
ここで、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13の基準流量を250ml/min(200ml/minの希釈用窒素ガス(N2)でサンプルガスを5倍に希釈したもの)と設定し、サンプルガスの組成が「水素ガス(H2)100vol%」から「水蒸気(H2O)80vol%、水素ガス(H2)20vol%」へと変化した場合を考える。
【0042】
ガスAを窒素ガス(N2)、ガスBを水蒸気(H2O)、ガスCを水素ガス(H2)とすると、組成変化前の希釈後サンプルガスのコンバージョンファクタCXは「1.004」と算出される(MA=0.8、MB=0、MC=0.2、CA=1、CC=1.02)。これにより、流量調整後の希釈後サンプルガスの流量は「251ml/min」と算出され、希釈用の窒素ガス(N2)を差し引いた流量は「51ml/min」と算出される。また、組成変化後の希釈後サンプルガスのコンバージョンファクタCXは「0.975」と算出される(MA=0.8、MB=0.16、MC=0.04、CA=1、CB=0.86、CC=1.02)。これにより、流量調整後の希釈後サンプルガスの流量は「243.8ml/min」と算出され、希釈用の窒素ガス(N2)を差し引いた流量は「43.8ml/min」と算出される。
【0043】
ここで、燃料電池排出ガスにおける組成ガス(窒素ガス(N2)、酸素ガス(O2)、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)、二酸化炭素ガス(CO2)等)においては、その予想される最大濃度でのコンバージョンファクタはほぼ「1」である。これに対し、水蒸気(H2O)の予想される最大濃度(100vol%)でのコンバージョンファクタは「0.86」であり、組成変動に起因する測定誤差の主たる原因は水蒸気(H2O)であると推察される。このため、計測した希釈後の水蒸気(H2O)濃度から、この濃度でのコンバージョンファクタを算出することにより、マスフローコントローラ13を通過する真のガス流量を算出し、そのガス流量と希釈用窒素ガス(N2)の比(希釈比)を求め、各測定対象成分から正確な希釈前濃度を算出することができる。
【0044】
前記した例においては、ガスAを窒素ガス(N2)、ガスBを水蒸気(H2O)、ガスCを水素ガス(H2)とすると、組成変化後の希釈後サンプルガスのコンバージョンファクタCXは「0.975」と算出され(MA=0.8、MB=0.16、MC=0.04、CA=1、CB=0.86、CC=1.02)、流量調整後の希釈後サンプルガスの流量は「243.8ml/min」と算出され、希釈用の窒素ガス(N2)を差し引いた流量は「43.8ml/min」と算出されるとした。希釈前の水蒸気(H2O)濃度は80vol%と設定したため、希釈後の水蒸気(H2O)濃度は14.4(=80×(43.8/243.8))vol%と算出される。
【0045】
例えば、ガス分析計14で計測された希釈後の水蒸気(H2O)濃度が14.4vol%であるとすると、そのときのコンバージョンファクタは「0.98」と算出され(MA=0.856、MB=0.144、CA=1、CB=0.86)、流量調整後の希釈後サンプルガスの流量は「245ml/min」と算出され、希釈用の窒素ガス(N2)を差し引いた流量は「45ml/min」と算出される。希釈前濃度は、希釈後濃度と、希釈比の逆数と、の積で算出され、例えば水蒸気(H2O)濃度であれば、78.4(=14.4×(245/45))vol%となり、理論上設定した値(80vol%)に近い値が得られる。このような演算をガス分析計14で連続して行うことにより、サンプルガスの組成変動に起因した測定精度の低下を抑制し、ガス組成分析の精度を向上させることが可能となる。
【0046】
次に、図4等を用いて、本実施形態に係るガス組成分析装置10を用いたガス組成分析方法について説明する。
【0047】
まず、燃料電池システム1の制御装置は、ガス組成分析装置10のバルブ12を開くとともにサンプリングポンプを作動させることにより、システム内の各流路からサンプリングポイントPNを介して分析対象となるガス(サンプルガス)を吸引して、サンプリング流路11に流入させる(サンプリング工程:S1)。
【0048】
次いで、制御装置は、希釈ガス供給源からサンプリング流路11へと希釈ガスを供給して、サンプリング工程S1でサンプリングしたサンプルガスを希釈する(希釈工程:S2)。かかる希釈工程S2において、希釈ガスの流量は、希釈ガス用のマスフローコントローラ15により、一定量に調整される。
【0049】
サンプリング工程S1でサンプリングされ希釈工程S2で希釈されたサンプルガスは、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13に導入されて流量調整され(流量調整工程:S3)、その後、ガス分析計14により組成分析されることとなる(組成分析工程:S4)。
【0050】
以上の実施形態に係るガス組成分析装置10においては、サンプルガスを希釈した状態でマスフローコントローラ13に導入することができるので、サンプル中の水分濃度を低下させ、露点温度を低下させることができる。従って、高温を用いることなく、マスフローコントローラ13内部における水分凝縮を抑制することができる。例えば、水蒸気(H2O)濃度が60vol%の場合、水蒸気を凝縮させないためにはマスフローコントローラ13の温度を約90℃に設定する必要があるが、5倍希釈して水蒸気(H2O)濃度を12vol%まで低下させると、約50℃で水蒸気の凝縮を防止することができ、一般的な高温用マスフローコントローラで充分対応できる。また、5倍希釈するとサンプル流量は5倍となり、マスフローコントローラ13内部でのガス置換も理論上では5倍早くなるため、ガス分析計14の応答遅れを抑制することができる。この結果、サンプルガスの組成分析の精度を向上させることが可能となる。
【0051】
また、以上の実施形態に係る燃料電池システム1においては、燃料電池2に供給されるガスや燃料電池2から排出されるガスの組成分析を高精度で行うことができるため、システム1の運転状態を正確に把握することができる。この結果、的確な運転条件の設定が可能となる。
【0052】
なお、以上の実施形態においては、サンプリング流路11とバルブ12とサンプリングポンプとによってサンプリング手段を構成した例を示したが、サンプリング手段の構成はこれに限られるものではない。例えば、バルブ12に代えてオリフィスを採用することもできる。また、サンプリングポンプとしては、強制的にサンプルガスを吸引することができるものであれば、その構成に限定はない。また、以上の実施形態においては、組成分析手段としてガス分析計を用いた例を示したが、組成分析手段の構成はこれに限られるものではない。
【0053】
また、以上の実施形態においては、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13に導入されるサンプルガスを希釈した例を示したが、図2に破線で示すように、サンプル流量増加用のマスフローコントローラ16を採用し、サンプル流量調整用のマスフローコントローラ13を通過したサンプルガスにさらに不活性ガスを供給して、サンプルガスの流量を増加させることもできる。
【0054】
また、以上の実施形態においては、燃料電池車両に搭載される燃料電池システムに本発明を適用した例について説明したが、燃料電池車両以外の各種構造体(ロボット、船舶、航空機等)に搭載される燃料電池システムについても本発明を適用することができる。また、本発明に係るガス組成分析装置及びガス組成分析方法を、燃料電池システム以外のシステム(例えば半導体製造装置等)に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1…燃料電池システム、2…燃料電池、10…ガス組成分析装置、11…サンプリング流路(サンプリング手段)、12…バルブ(サンプリング手段)、13…サンプル流量調整用のマスフローコントローラ、14…ガス分析計(組成分析手段)、15…希釈ガス用のマスフローコントローラ(希釈手段)、31…水素供給流路(供給流路)、32…水素循環流路(排出流路)、41…空気供給流路(供給流路)、42…空気排出流路(排出流路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの組成分析を行うガス組成分析装置であって、
分析対象となるガスをサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段でサンプリングしたサンプルガスの流量を調整するマスフローコントローラと、
前記マスフローコントローラで流量を調整したサンプルガスの組成分析を行う組成分析手段と、を備え、さらに、
前記サンプリング手段でサンプリングされ前記マスフローコントローラに導入されるサンプルガスに希釈ガスを供給してサンプルガスを希釈する希釈手段を備える、
ガス組成分析装置。
【請求項2】
前記組成分析手段は、分析対象となるガスに含まれる特定成分の濃度を測定するものである、
請求項1に記載のガス組成分析装置。
【請求項3】
前記希釈手段は、希釈ガスの流量を調整する希釈ガス用のマスフローコントローラを有するものである、
請求項1又は2に記載のガス組成分析装置。
【請求項4】
燃料電池と、前記燃料電池に供給されるガスを流通させる供給流路と、前記燃料電池から排出されるガスを流通させる排出流路と、を備える燃料電池システムであって、
前記供給流路及び/又は前記排出流路を流通するガスの組成分析を行う請求項1から3の何れか一項に記載のガス組成分析装置を備える、
燃料電池システム。
【請求項5】
ガスの組成分析を行うガス組成分析方法であって、
分析対象となるガスをサンプリングするサンプリング工程と、
前記サンプリング工程でサンプリングしたサンプルガスの流量をマスフローコントローラで調整する流量調整工程と、
前記流量調整工程で流量を調整したサンプルガスの組成分析を行う組成分析工程と、を備え、さらに、
前記サンプリング工程でサンプリングされ前記マスフローコントローラに導入されるサンプルガスに希釈ガスを供給してサンプルガスを希釈する希釈工程を備える、
ガス組成分析方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−243180(P2010−243180A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88847(P2009−88847)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594207610)株式会社ベスト測器 (13)
【Fターム(参考)】