説明

ガス絶縁計器用変圧器

【課題】一次コイルに容易に取り付けることのできる電界緩和シールドを備えたガスVTを提供する。
【解決手段】埋め込み導体4cを備えた絶縁スペーサ4によって封止され絶縁ガスが充填された容器2に電圧変成要素1が収納され、前記埋め込み導体と前記電圧変成要素が接続導体5によって接続されたガス絶縁計器用変圧器において、前記電圧変成要素の一次コイル1cと前記接続導体が、前記接続導体側に開口部を設けた電界緩和シールド1dによって接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所等の母線または線路に接続されるガス絶縁計器用変圧器(以下、ガスVTと記載する)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスVTは、矩形状の鉄心と鉄心の一つの脚部に巻回された一次コイル及び二次コイルとからなる電圧変成要素を容器内に収容して、容器にSFガス等の絶縁媒体を封入した構造を有している。この種のガスVTは、通常ガス絶縁開閉装置(以下、GISと記載する)に組み込まれて、母線や線路の電圧を変成し、計器や継電器に電圧を供給するために用いられている。
【0003】
図3および図4を用いて従来例について説明する。なお、図では三相形のガスVTを示している。電圧変成要素1は矩形状に形成された鉄心1aを備えている。鉄心1aは鋼板の積層体からなっていて、二次巻形を介して二次コイル1bが巻回され、二次コイル1bの外側に一次巻形を介して一次コイル1cが巻回されている。一次コイル1cの外周には電位固定板1eが取り付けられており、さらにこの電位固定板1eに電界緩和シールド1dが取り付けられている。
【0004】
図示はされていないが、前記電圧変成要素1が三相分、容器2内に収納されている。この容器2の一端に変換フランジ3を介して絶縁スペーサ4が気密に取り付けられている。容器2内にはSFガス等の絶縁媒体が封入されている。絶縁スペーサ4には埋め込み導体4cが設けられている。そして、埋め込み導体4cに接続導体5が取り付けられ、接続導体5と電界緩和シールド1dが接触するように構成されている。
【0005】
特許文献1には、変圧器本体の一次コイルの外周を取り囲むように高圧シールド(電界緩和シールド)が設けられていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−130561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電圧変成要素を構成する一次コイル1cの外周に電位固定板1eが取り付けられ、さらにこの電位固定板1eに電界緩和シールド1dが取り付けられている。このため、部品点数が多くなり製品の価格が高くなるといった問題があった。さらに部品点数が多くなるため組立の作業工数が多くなるといった問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係るガスVTは、埋め込み導体を備えた絶縁スペーサによって封止され絶縁ガスが充填された容器に電圧変成要素が収納され、前記埋め込み導体と前記電圧変成要素が接続導体によって接続されたガス絶縁計器用変圧器において、前記電圧変成要素の一次コイルと前記接続導体が、前記接続導体側に開口部を設けた電界緩和シールドによって接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電界緩和シールドの開口部を接続導体側にすることにより、電位固定板を用いることなく電圧変成要素に電界緩和シールドを取り付けることができる。そうすることで、従来用いていた電位固定板を無くすことができ、部品点数の少ない価格の安いガスVTを提供することができる。さらに、部品点数が少なくなることによって、ガスVTの組立の作業工数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は本発明の一実施形態における三相形ガスVTの内部構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態における三相形ガスVTの部分拡大図である。
【図3】図3は従来の三相形ガスVTの内部構成を示す図である。
【図4】図4は従来の三相形ガスVTの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について図1および図2を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態の三相形ガスVTにおける内部構成を示す図である。図2は本発明の一実施形態における部分拡大図である。
【0012】
図1では簡略化するために、電圧変成要素1は一相分しか記載されていないが、容器2の内部には三相分の電圧変成要素1が収納されており、各相の電圧変成要素1は正三角形となるように配置されている。
【0013】
図1において、1は電圧変成要素、2は電圧変成要素1を収容する容器である。電圧変成要素1は、矩形状に形成された鉄心1aを備えている。鉄心1aは、鋼板の積層体からなっていて、二次巻形を介して二次コイル1bが巻回され、二次コイル1bの外側に一次巻形を介して一次コイル1cが巻回されている。一次コイル1cを取り囲むように非接地側の一次端子を兼ねる電界緩和シールド1dが配置されている。
【0014】
容器2は金属からなっていて、円筒の胴部2aと、胴部2aの一端にフランジ部2bが取り付けられ、さらに胴部2aの他端には蓋板部2cが気密に取り付けられている。胴部2aは、電圧変成要素1を取り囲む部分であり、胴部2aの内面と電圧変成要素1との間に所定の間隙が形成されるように、胴部2aの内径が設定されている。
【0015】
変換フランジ3は、容器2のフランジ部2bにボルト(図示せず)によって取り付けられている。変換フランジ3と、容器2のフランジ部2bとの間にはOリング(図示せず)が配設されている。このOリングにより、変換フランジ3と容器2のフランジ部2bとの接続部の気密が図られている。
【0016】
絶縁スペーサ4は、絶縁樹脂からなる円錐状の本体4aと、本体4aの外周部に一体に形成されたフランジ部4bとからなっている。そして、本体4aを貫通した状態で埋込み導体4cが三箇所設けられている。
【0017】
絶縁スペーサ4は、フランジ部4bを変換フランジ3にボルト(図示せず)で締結されることにより、変換フランジ3を介して容器2に取り付けられている。絶縁スペーサ4のフランジ部4bと、変換フランジ3との間にはOリング(図示せず)が配設されている。このOリングにより、絶縁スペーサ4のフランジ部4bと変換フランジ3との接続部の気密が図られている。
【0018】
絶縁スペーサ4の埋め込み導体4cの一端はGISの高圧回路(図示せず)に接続され、埋め込み導体4cの他端には接続導体5がボルト(図示せず)によって取付けられている。そして、容器2の内部にはSFガス等の絶縁媒体が封入されている。
【0019】
次に図2を用いて、電界緩和シールド1dについて説明する。電界緩和シールド1dは、電圧変成要素1の一次コイル1cを取り囲むように配置されている。そして、この電界緩和シールド1dの開口部1fが接続導体5側に向けられるように構成されている。このように構成することで、従来のように電位固定板を用いることなく、電界緩和シールド1dを容易に電圧変成要素1に取り付けることができる。
【0020】
電圧変成要素1を内蔵した容器2に接続導体5が固定された絶縁スペーサ4が取り付けられることによって、電界緩和シールド1dの開口部1fが接続導体5に接触する。従って、電圧変成要素1が導体5、埋め込み導体4cを介して、GIS(図示せず)に接続されることになる。
【0021】
電界緩和シールド1dは一般的に、薄板を曲げることによって製作されるが、鋳造、ロストワックス等による成形品でも製作が可能である。そして、電圧変成要素1のコイルが組み立てられた後に電界緩和シールド1dが取り付けられるので、電界緩和シールド1dは分割されることが望ましい。その際、分割される数は状況に応じて適宜選択されるが、作業性の面から2〜4分割程度が好ましい。
【0022】
なお、実施例では三相形ガスVTについて説明したが、本発明を単相形のガスVTにも用いることができるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 電圧変成要素
1a 鉄心
1b 二次コイル
1c 一次コイル
1d 電界緩和シールド
1e 電位固定板
1f 開口部
2 容器
2a 胴部
2b フランジ部
2c 蓋板部
3 変換フランジ
4 絶縁スペーサ
4a 本体
4b フランジ部
4c 埋め込み導体
5 接続導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み導体を備えた絶縁スペーサによって封止され絶縁ガスが充填された容器に電圧変成要素が収納され、前記埋め込み導体と前記電圧変成要素が接続導体によって接続されたガス絶縁計器用変圧器において、前記電圧変成要素の一次コイルと前記接続導体が、前記接続導体側に開口部を設けた電界緩和シールドによって接続されていることを特徴とするガス絶縁計器用変圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−98362(P2013−98362A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240016(P2011−240016)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003942)日新電機株式会社 (328)
【Fターム(参考)】