説明

ガス絶縁開閉機器

【課題】開閉速度が低速度でも小電流の開閉を可能とするガス絶縁開閉機器を提供する。
【解決手段】固定側電極部1aと、固定側電極部1aの軸方向に配置された可動側電極部1bとで構成されるガス絶縁開閉機器であって、固定側電極部1aは、一方端が箱体12に固定された支持絶縁物2と、支持絶縁物2の他方端に固定されるとともに、軸方向に第1の凹部3aを設けた固定側電極3と、第1の凹部3aの底面に固定されたアーク電極4と、アーク電極4の先端に固定された第1の耐弧電極5とで構成され、可動側電極部1bは、第1の凹部3aの内径よりも外径が小さく、アーク電極4の外径よりも内径が大きい第2の凹部13aを持った可動側電極13と、可動側電極13の先端に固定された第2の耐弧電極14と、可動側電極13に固定されるとともに、操作機構に連結される絶縁ロッド15とで構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、開閉速度が低速度でも小電流の開閉性能を有するガス絶縁開閉機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス絶縁スイッチギヤの用いられる断路器や接地開閉器のような開閉機器には、ループ電流などの小電流を遮断する責務が課せられている。小電流と言ってもアークによる電極の消耗を抑え、遮断を完了させるため、開閉速度が高速の1〜2m/sに設定されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
開閉速度を高速度にするためには、操作機構のばねなどの操作力を増大しなければならない。また、開閉時の衝撃力に耐え得るように、筐体や電極の機械的強度を増大しなければならない。このため、開閉機器の構造が複雑となり、部品点数が増加し、重量物となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−284321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、開閉速度が低速度でも小電流の開閉を可能とし、構造を簡素化したガス絶縁開閉機器を提供することにある。ここで、低速度とは、従来よりも1桁以上遅い速度の0.1m/s以下とする。開閉速度の桁が異なると、加速度的に操作力や機械的強度を低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態のガス絶縁開閉機器は、固定側電極部と、前記固定側電極部の軸方向に配置された可動側電極部とで構成されるガス絶縁開閉機器であって、前記固定側電極部は、一方端が箱体に固定された支持絶縁物と、前記支持絶縁物の他方端に固定されるとともに、軸方向に第1の凹部を設けた固定側電極と、前記第1の凹部の底面に固定されたアーク電極と、前記アーク電極の先端に固定された第1の耐弧電極とで構成され、前記可動側電極部は、前記第1の凹部の内径よりも外径が小さく、前記アーク電極の外径よりも内径が大きい第2の凹部を持った可動側電極と、前記可動側電極の先端に固定された第2の耐弧電極と、前記可動側電極に固定されるとともに、操作機構に連結される絶縁ロッドとで構成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉機器の構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉機器の動作を説明する図。
【図3】本発明の実施例2に係るガス絶縁開閉機器の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0009】
先ず、本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉機器を図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉機器の構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係るガス絶縁開閉機器の動作を説明する図である。なお、ガス絶縁開閉機器を接地開閉器を用いて説明する。
【0010】
図1に示すように、接地開閉器は、主回路に接続される固定側電極部1aと、固定側電極部1aの軸方向に対向して配置された接地極に接続される可動側電極部1bで構成されている。
【0011】
固定側電極部1aには、棒状の支持絶縁物2が設けられ、一方端が図示上方向に突出した凸部2aに形成されている。凸部2aには、半球状の固定側電極3が固定されており、半球面が可動側電極部1bと対向し、電界緩和が図られている。半球面の中心部の軸方向には、第1の凹部3aが設けられており、その底部に棒状のアーク電極4が固定されている。アーク電極4の先端には、例えば銅−タングステン合金からなる第1の耐弧電極5が固定され、固定側電極3よりも突出している。第1の凹部3aの内周面には、バンド形の第1の接触子6が設けられている。
【0012】
固定側電極3の反球面側には、棒状の通電電極7が固定されている。通電電極7には、フィンガー形の第2の接触子8が設けられており、収納機器に接続される主回路導体9との通電が行われるようになっている。通電電極7や第2の接触子8の周りには、電界緩和シールド10が設けられ、固定側電極3に固定されている。
【0013】
支持絶縁物2の他方端は、フランジ11に固定されている。フランジ11は、SF6ガスのような絶縁ガスを封入する箱体12の開口部に気密に固定されている。
【0014】
可動側電極部1bには、軸方向に移動自在の棒状の可動側電極13が設けられている。固定側電極部1aと対向する可動側電極13の先端部には、第2の凹部13aが設けられており、アーク電極4の外径よりも内径が大きく、第1の凹部3aの内径よりも外径が小さく、アーク電極4が第2の凹部13aに挿入できるとともに、第1の凹部3aに挿入できるようになっている。第2の凹部13aの先端には、第1の耐弧性電極5と同様の材料からなる環状の第2の耐弧電極14が設けられている。可動側電極13の他方端には、軸方向に絶縁ロッド15が固定されており、フランジ11と気密を保って移動自在に貫通し、図示しない操作機構に連結されている。
【0015】
可動側電極13の周りには、内径が可動側電極13の外径よりも僅かに大きい筒状の接地電極16が設けられている。接地電極16が固定側電極部1aと対向する一方端は電界緩和のために半球状に形成され、他方端はフランジ11に固定されるとともに、図示しない接地極に接続されている。内面には、バンド形の第3の接触子17が設けられており、可動側電極13が摺動接触する。
【0016】
次に、動作を図2を参照して説明する。
【0017】
図2(a)は、接続状態であり、可動側電極13が固定側電極3側に移動して接触し、主回路が接地される。通電経路は、主回路導体9→固定側電極3→第1の接触子6→可動側電極13→第3の接触子17→接地電極16となる。
【0018】
図2(b)は、可動側電極13の投入の移動途中であり、絶縁破壊距離に達すると、アーク18が第1の耐弧電極5と第2の耐弧電極14間で発生する。アーク電流は、後述する断路器の責務に相当する小電流領域となる。可動側電極13を更に移動させると、図2(a)の状態となる。
【0019】
ここで、第1の耐弧電極5を固定側電極3よりも例えば5mm程度突出させているので、電界が高く、耐弧電極5、14間でのアーク18の点弧を容易としている。また、電源側が棒状で、接地側が環状の電極配置であるので、環状に沿ってアーク18が移動し、固定側電極3や接地電極16への点弧を防ぐことができる。耐弧電極5、14では、アーク18による消耗が抑えられる。
【0020】
これにより、アーク18を数秒の長時間発生させても、耐弧電極5、14はそれに耐え得るものであり、可動側電極13の開閉速度を0.1m/s以下の低速度とすることができる。この程度の速度は、簡易なモータ操作で得ることができる。また、第1の接触子6と第3の接触子17が、直接、アーク18に曝されないので、接触抵抗に影響を与えることはない。
【0021】
上記実施例1のガス絶縁開閉装置によれば、固定側電極3の中心部に第1の耐弧電極5を設け、可動側電極13にも第2の耐弧電極14を設けて、アーク18をこの間で発生させるようにしているので、可動側電極13の開閉速度を低速度とすることができ、操作機構や筐体などの構造を簡素化することができる。
【0022】
上記実施例1では、ガス絶縁開閉機器を接地開閉器を用いて説明したが、可動側電極13側をフランジ11から絶縁して主回路とした断路器においても適用することができる。即ち、固定側電極3を一方の主回路に接続し、可動側電極13を他方の主回路に接続するものである。断路器においては、例えば300V−200Aのループ電流、48.5kV−1Aの進み小電流、1kV−200Aの電磁誘導電流、3kV−0.4Aの静電誘導電流などの小電流を遮断する責務があるが、いずれの小電流も0.1m/s以下の低速度で開閉することができる。静電誘導電流試験では、0.01m/sで遮断することができた。なお、断路器とする場合、接地電極16先端の曲率は固定側と同様の形状とし、電界緩和を図るものとする。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係るガス絶縁開閉機器を図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係るガス絶縁開閉機器の構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、支持絶縁物の表面に耐アーク性材料を設けたことである。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図3に示すように、支持絶縁物2が固定側電極3や可動側電極13と対向する面には、フッ素樹脂、アミノ樹脂などのような耐アーク性絶縁物19を設けている。
【0025】
上記実施例2のガス絶縁開閉装置によれば、実施例1による効果のほかに、アークが拡散し、支持絶縁物2の表面に近接することがあっても、耐アーク性絶縁物19により絶縁特性の低下を防ぐことができる。
【0026】
以上述べたような実施形態によれば、低速度で小電流を開閉することができ、操作機構や筐体などの構造を簡素化することができる。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1a 固定側電極部
1b 可動側電極部
2 支持絶縁物
2a 凸部
3 固定側電極
3a 第1の凹部
4 アーク電極
5 第1の耐弧電極
6 第1の接触子
7 通電電極
8 第2の接触子
9 主回路導体
10 電界緩和シールド
11 フランジ
12 箱体
13 可動側電極
13a 第2の凹部
14 第2の耐弧電極
15 絶縁ロッド
16 接地電極
17 第3の接触子
18 アーク
19 耐アーク性絶縁物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側電極部と、
前記固定側電極部の軸方向に配置された可動側電極部とで構成されるガス絶縁開閉機器であって、
前記固定側電極部は、一方端が箱体に固定された支持絶縁物と、
前記支持絶縁物の他方端に固定されるとともに、軸方向に第1の凹部を設けた固定側電極と、
前記第1の凹部の底面に固定されたアーク電極と、
前記アーク電極の先端に固定された第1の耐弧電極とで構成され、
前記可動側電極部は、前記第1の凹部の内径よりも外径が小さく、前記アーク電極の外径よりも内径が大きい第2の凹部を持った可動側電極と、
前記可動側電極の先端に固定された第2の耐弧電極と、
前記可動側電極に固定されるとともに、操作機構に連結される絶縁ロッドとで構成されることを特徴とするガス絶縁開閉機器。
【請求項2】
前記可動側電極の周りに接地電極を設け、接地開閉器としたことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉機器。
【請求項3】
前記可動側電極を絶縁して主回路と接続し、断路器としたことを特徴とする請求項1に記載のガス絶縁開閉機器。
【請求項4】
前記支持絶縁物が前記固定側電極、前記可動側電極と対向する面に、耐アーク性絶縁物を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉機器。
【請求項5】
前記第1の耐弧電極、前記第2の耐弧電極を銅−タングステン合金で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉機器。
【請求項6】
前記可動側電極の開閉速度を0.01〜0.1m/sの低速度としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のガス絶縁開閉機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−115015(P2013−115015A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263105(P2011−263105)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】