説明

ガス缶類の切断破砕装置

【課題】ライターや点火用ガスライターなどの小型ガス製品も確実に切断破砕できるガス缶類の切断破砕装置を提供する。
【解決手段】破砕機9は、一対の回転ローラ軸36及び37に、複数の円盤状回転刃36b、37bが所定間隔で取り付けられ、一方の回転ローラ軸36に設けられた複数の円盤状回転刃36bは、他方の回転ローラ軸37に設けられた複数の円盤状回転刃37bの隣り合う円盤状回転刃同士間に入り込むように構成され、これら一対の回転ローラ軸36、37に設けられた円盤状回転刃36b、37bの円盤状のサイドエッジ36d、37dが交互に対向し、円盤状回転刃の周囲には、円盤状回転刃の幅よりも小さい幅のかぎ状のフックが設けられており、このフックで前記ガス缶類を引っ掛けて前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジに供給し、前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジで切削破砕する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄されたエアゾール缶やスプレー缶、及びガスライター、点火用ガスライター等のガス缶類を切断破砕して、窒素等の不燃性ガス雰囲気下で安全に処理するガス缶類の切断破砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用として用いられるガスを封入した缶、ボンベ類は、卓上ガスコンロ用ガス缶、点火用ガスライター、薬用スプレー缶(殺虫剤入り等)、塗装用スプレー缶、ガス入り化粧用スプレー缶(ヘアースプレー缶)等多種多様のものがある。
これらのガス缶類を粉砕処理する際の最大の問題は、ガス缶類を破砕するときに発生する火花がガス缶内に残っているガスに引火して爆発することである。このような爆発は大事故につながる恐れがあり、これらのガス缶類の処理業者にとっては極めて重要な課題となっている。
【0003】
このため、この爆発を防止する手段として、破砕時にガス缶内の封入されていたガスを吸引し外部へ放出する方法や、ガスが放出しても爆発しないような酸素量に保持するために、破砕室(処理室)の空気を吸引して一旦低圧状態にし、その後窒素を添加して窒素を増加させる方法等がある。
【0004】
この破砕室におけるガス缶あるいはボンベを破砕する方法としては、ガス缶等に強力な圧力を加えて圧縮破壊する方法(プレス方式)や、ガス缶及びボンベを鋭利な刃物で切断破砕する方法(カッター切断方法)が考えられている。
【0005】
これらのガス缶類は、通常地方公共団体等が管理する廃棄物処理センターで処分されるが、この廃棄物処理センターでは、回収されたガス缶類を処理装置に入れ、処理装置内に配置されている回転ローラのスパイクピンでガス缶の壁面に穿孔して内部のガスと液状物を放出したり、シュレッダのような回転刃でガス缶を切断したりすることによって、内部のガスや液状物を放出し、残滓を圧縮処理するようにしている。
【0006】
また、独自にエアゾール缶やスプレー缶等のガス缶等を破砕処理する技術として、容器を密閉してから真空ポンプで減圧し、減圧した工程の中でガス缶等に孔を開けてガスを出してから缶を圧接処理することにより、ガス缶を処理する技術が本発明者らによって提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1に記載のガス缶の処理方法は、容器内を減圧して酸素濃度を低くしているので、ガス缶をつぶす際に火花が生じても、残留ガスに引火して爆発することが防止できるという利点があった。また、容器内を真空ポンプで減圧するだけなので、装置を小型化できるという利点もあった。
【0008】
また、圧接処理により缶をつぶす代わりに、回転刃で切断して処理する方法も提案さている(例えば、特許文献2参照)。この方法は、一対の回転ローラ軸に複数のスプロケット歯車を固定し、一対の回転ローラ軸に取り付けられた各スプロケット歯車がはさみの両刃のように作用してガス缶類を切断する方法である。すなわち、一方の回転ローラ軸に設けられたスプロケット歯車は他方の回転ローラ軸のスプロケット歯車の間に挿入されるように配置され、そのスプロケット歯車のサイドエッジで挿入された缶類を破砕するようにしている。
【0009】
【特許文献1】特開2005−81386号公報
【特許文献2】特開2000−61344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した破砕装置で処理するガス缶類の中には、その形状が異なるだけでなく、容器の強度や硬さの異なるものなどさまざまなものがある。特許文献1に記載の破砕装置では、エアゾール缶やスプレー缶のような大きなものは処理できるが、ガスライターや点火用ガスライターのような細長いものに対して確実に孔を開けてガスを放出することが難しいという問題があった。また、これらのガスライター等の比較的小型のガス製品を圧接処理しても対抗する圧接板の間でつぶされない状態で、つまりガスが放出されない状態で処理後のごみとなって落下してしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、従来の圧接処理に代えて比較的小さい力で粉砕処理を行うことができる機構を導入することにより、通常のガスライターや点火用ガスライターのような細長いガス製品でも確実に粉砕処理することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のガス缶類の切断破砕装置は、ガス缶、ガスライター等のガス缶類を投入する容器と、このガス缶類を破砕する破砕機と、容器に入っている空気を排出する空気排気装置と、容器内に窒素ガスを注入するガス注入装置と、容器内で粉砕されたガス缶類から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置を備えたガス缶類の切断破砕装置である。そして、特に、ガス缶類を破砕する破砕機は、一対の回転ローラ軸に、複数の円盤状回転刃が所定間隔で取り付けられ、一方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃は、他方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃の隣り合う円盤状回転刃同士間に入り込むように構成され、これら一対の回転ローラ軸に設けられた円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジが交互に対向して前記ガス缶類を破砕するように構成されている。また、円盤状回転刃の周囲には、円盤状回転刃の幅よりも小さい幅のかぎ状のフックが設けられており、このフックで前記ガス缶類を引っ掛けて前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジに供給し、前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジで切削破砕することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の好ましい形態としては、一方の回転ローラ軸の円盤状回転刃に設けられた複数のフックは、その回転時に他方のローラ軸に接触しないように所定の間隙を設けて形成されている。また、円盤状回転刃の周囲に配置される複数のフックは、円盤状回転刃の軸方向に対して所定の角度を有するように形成されている。そして、この回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃に設けられた上記フックは、回転ローラ軸に対して前記所定の角度で直線状に配置されるように構成されていることを特徴としている。
【0014】
この一対の回転ローラ軸に回転ローラ軸方向に対して所定角度を持つように直線状の取り付けられているフックは、その角度が、一方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃と、他方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃とで回転ローラ軸に対して線対称となるように形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス缶類の切断破砕装置によれば、容器に投入されるガス缶、ボンベ類からガスライター、点火用ガスライターなどのガス缶類を確実に切断破砕して処理することができる。
【0016】
また、フックと回転ローラ軸との間に間隙を設けているので、スプレー缶などに入っているボールベアリングにフック等が当たってフック等が破損することがない。したがって、円盤状回転刃の使用期間、寿命を大幅に延ばすことができる。
【0017】
また、本発明のガス缶類の切断破砕装置によれば、回転ローラ軸に対して所定の角度で直線状に配置されるように構成されているフックで順次このガス缶類を引っ掛けて円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジに供給し、円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジで切削破砕するようにしているので、比較的小さい力で粉砕処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を図面に基づいて説明する。図1は本例のガス缶等の処理装置の全体構成を示す構成図である。この図1に示すように、本例のガス缶、ライター等のガス缶類の切断破砕装置1は、ガス缶、ライター等のガス缶類を投入する容器2と、この容器2内を減圧する真空ポンプ3と、この真空ポンプ3の上流側及び下流側に設けられた第1のタンク4及び第2のタンク5と、この第2のタンク5の下流側に設けられた、排出されたガスを引火しない程度に希釈化するガス濃度希釈用のファン6又は排出されたガスを燃焼する燃焼装置7と、不燃焼ガスである窒素ガスを供給する窒素ガス供給源8とを主体として構成される。この場合、ファン6又は燃焼装置7のいずれかを設ければよいが、本例では、両方を設け、適宜切り替えて使用する如くする。
【0019】
この容器2内には、ガス缶類破砕機9が配置されており、この容器の上部にはガス缶類等を投入するための蓋2aが設けられている。また、ガス缶類破砕機9の下方には切削粉砕したガス缶、ライター等のガス缶類を取り出すハッチ10がある。容器2の底部には排出用(ドレーン用)の管路11が接続され、この管路11にはドレーン弁12が設けられている。この容器2の上方の側部には、容器2内の圧力を測定する圧力計13が接続されている。
【0020】
この真空ポンプ3の上流側に設けられた第1のタンク4には溶剤としてオイル4aが充填されており、この容器2から第1のタンク4のオイル4aに至る管路14には、弁15が接続され、第1のタンク4の空間から真空ポンプ3に至る管路16には、弁17が接続されている。
【0021】
また、この真空ポンプ3の下流側に設けられた第2のタンク5には溶剤として水5aが充填されており、この真空ポンプ3から第2のタンク5の水5aに至る管路18には、弁19が接続され、第2のタンク5の空間からファン6又は燃焼装置7に至る管路20には、弁21又は22が接続されている。
【0022】
この場合、真空ポンプ3が作動すると、容器2内の気体は、管路14を通り、オイル4a内を通過して管路16によって真空ポンプ3に吸引されることになる。このガス缶類に残留する各種の液状物は、容器2内で溶剤に混入するが、一部はミスト状で容器2内に浮遊している。この浮遊しているミストをオイル4a内を通過させることで、オイル4a内に溶融させたり、オイル4aの粘性で閉じ込めたり、液化させてオイル4aに溶かしたりして捕捉することができる。
【0023】
こうしてガス缶類を切削破砕した際に流出する容器2内の残留する各種の液状物は、オイル4aで殆ど捕捉され、真空ポンプ3に加わる負荷は、オイル4aで捕捉できないプロパンガスやブタンガス等だけになる。このことから、真空ポンプ3に加わる負荷を大幅に減少させることができる。また、ガス濃度希釈用のファン6で希釈化するガス又は燃焼装置7で燃焼するガスはプロパンガスやブタンガス等の燃焼しても有毒ガスが発生しないものとなる。
【0024】
真空ポンプ3から吐き出された気体は、水5aを通過させることで、この気体に含まれている臭気が除去され、ガス濃度希釈用のファン6又はガスを燃焼する燃焼装置7に供給される。
【0025】
また、窒素ガス供給部8よりの窒素ガスが管路23及び弁24を介して容器2内に供給される。
【0026】
以上の構成の他に、図示しないシーケンサを用いた制御装置があり、処理装置全体の制御を行う。そのため、弁12、15、17、19、21、22及び24の全ての弁は電気信号で開閉される電磁弁などが使用され、圧力計13の検知結果は電気信号として不図示の制御装置に伝達される。したがって、制御装置は、真空ポンプ3とファン6又は燃焼装置7との運転及び停止から各弁の開閉動作を、シーケンサに予めインストールされたプログラムに従って自動的に行うことができる。
【0027】
次に、図1のガス缶類破砕装置の動作を説明する。初期状態として、弁12、15、17、19、21、22及び24の全てを閉じておく。蓋2aを開いて容器2内に廃棄されたガス缶やライター類(以下、「ガス缶類」というが、この場合には、ライターや点火用ガスライターも含むものとする。)30を投入する。ガス缶類30は、破砕機9の上方に設けられた押圧板31により、ガス缶類30を押し付けらながら、下方に進み、回転ローラ軸に取り付けられている円盤状回転刃に圧接される。このようにして、押圧板31と粉砕機9との間の空間に所定量のガス缶類30が充満した状態になる。この状態で容器2の蓋2aが閉じられる。
同時に、破砕機9の下部に配置されるハッチ10も閉じる。これで容器2は外部から遮断された状態となる。
【0028】
次に、図1において、弁15、17、19及び21を開き、真空ポンプ3及びファン6を運転する。すると、容器2内の空気は矢印の方向に流れ、容器2内は真空ポンプ3及びファン6の吸引力によって減圧される。この場合、容器2内の空気は真空ポンプ3を通過し、ファン6から大気に強制的に排気される。また、この場合、ファン6の吸引力は真空ポンプ3の吐出量より格段に大きいので、容器2内のガス等を希釈化することができる。
【0029】
この減圧の程度は、ガス缶類30から可燃性ガスが噴出しても爆発をしない酸素濃度に維持できる圧力で、大凡400〜500mmHg前後である。減圧の状態は圧力計13で逐一検知される。容器2内が所定の圧力まで減圧されたら、真空ポンプ3及びファン6を停止し、弁15、17、19及び21を閉じ、弁24を開いて窒素ガス供給源8から窒素ガスを容器2内に充填する。この容器2が略大気圧に達すると、容器2内の酸素濃度は、爆発限界となる13%未満となっている。
【0030】
酸素濃度が爆発限界未満になったら、弁24を閉じ、弁15、17、19及び21を開き、真空ポンプ3及びファン6を運転する。これによって容器2内の気圧が徐々に低下する。
【0031】
容器2内が所定の圧力まで減圧されたのを確認したら、電動機32(図2参照)の電源をオンにして、破砕機9の回転を開始する。
破砕機9は、ガス缶類30を微細になるまで切断し、容器2の下に落下させる。このときガス缶類30から残留していたガスが噴出したり、液状物が流れ出たりすることもある。液状物は容器2の下部に滴下して溜まる。ガス缶類30が切削破砕されるとき、火花が発生することがあるが、容器2内は低酸素状態及び不燃性ガス状態になっているので、爆発することはない。
【0032】
ガスの噴射によって容器2内の圧力が所定気圧より上昇したときは、破砕機9の運転を停止し、真空ポンプ3及びファン6により容器2内が所定の圧力まで減圧されるまで待ち、その後、再び真空ポンプ3及びファン6を停止し、弁15、17、19及び21を閉じ、弁24を開いて窒素ガス供給源8から窒素ガスを容器2内に充填する。この容器2が略大気圧に達したときに弁24を閉じ、弁15、17、19及び21を開き、真空ポンプ3及びファン6を運転する。これによって容器2内の気圧が徐々に低下する。
【0033】
容器2内が所定の圧力まで減圧されたのを確認したら、電動機32(図2参照)の電源をオンにして、破砕機9の運転を再び開始する。本例においては、上述を繰り返すようにする。
【0034】
投入されたガス缶類30がすべて破砕され、容器2内に未処理のガス缶類30が無くなったら、ガス缶類30の破砕による新規のガスの発生が止まるので、圧力計13の圧力が低下し始める。そこで、適当な圧力を設定しておき、設定圧まで下がったら、処理が終わったとして運転を停止する。そして、容器2内に大気を導入して大気圧にし、ハッチ10を開き、切断破砕されたガス缶類30を取り出す。必要に応じてドレーン弁12を開き、容器2内に溜まったガス缶類30の液状物を排出する。以上を繰り返すことで、廃棄されたガス缶類30を安全に処理することができる。
【0035】
次に、本発明の実施の形態の特徴部である、破砕機9の機構と詳細な動作について図2から図7を用いて説明する。
図2は、容器2の内部に設置した破砕機9とそれを駆動するための電動機32の配置関係を示した図である。破砕機9を駆動する電動機32は容器2の外部に設置される。ここで装置全体の小型化を図るため容器2内に電動機32を入れることも考えられる。しかし、容器2内には放出された可燃性ガスが含まれており、この容器2内に電動機32を設置することは、爆発の危険性が増大する。したがって、電動機32を容器2の外部に設ける必要がある。
【0036】
つまり、容器2内には破砕機9のみを収納し、容器2の外部に設置した電動機32の軸とカップリングで連結する構造とする。容器2には軸貫通穴が設けられるが、当然に密閉構造とされ、容器2内のガスが外部に漏れない構造になっている。電動機32の荷重を支えるブラケットは容器2の側壁に固定されており、このブラケットに電動機32が取り付けられている。
【0037】
電動機32は減速機33を介して、破砕機9の回転ローラ軸に連結されており、電動機32の回転が低速に変換されて破砕機9の回転ローラ軸が回転するようになっている。破砕機9の構造は後述することになるが、破砕機9に設けられるカッターは、回転ローラ軸に固定され、このカッターの回転によってガス缶類30が細かく切断破砕される。詳細は後述する。
【0038】
圧力容器2内に投入されるガス缶やボンベ、あるいはガスライターなどを満遍なく確実に破砕するためには、カッターの刃の構造や枚数が重要になる。例えば、スプレー缶には、直径5mm以下のボールベアリングが入っているので、カッターが回転してボールベアリングに当たるとカッターの刃が破損する虞が生じる。そのため、一対のカッター刃当たりの面間隔を5mm程度空けて、クリアランスをつけている。これにより、カッター刃の破損を防ぐことができるので、刃の使用時間・寿命を延ばすことができる。
【0039】
図2を参照して本例のガス缶類の切断破砕装置の構成と動作を詳細に説明する。
図2は、本例の切断破砕装置の側断面図を示したものであり、外部との密閉状態を維持したドーム状の容器2の内部に破砕機9が配置されている。容器2の上部には、容器2の開閉のための蓋2aが設けられており、この蓋2aからガス缶類30の切断処理をする被破砕物が投入される。この容器2は据付架台に据付固定されている。
【0040】
ガス缶類30の被破砕物は、その所定数量が一旦ホッパーシュートといわれるロート状の投入部34を介して集約的に投入され、収納部35に溜め込まれる。ホッパーシュート34の内部には、回転押圧片31が設けられている。この回転押圧片31はパドルプッシャーとも言われており、被破砕物を破砕機9に押し込む機能を有している。また、粉砕された被破砕物がホッパーシュート34から飛び出さないように粉砕された被破砕物を押え付ける働きも持っている。この回転押圧片31の回転軸は、切断破砕機9の回転軸とベルト12で連結され、破砕機9の回転と連動して回転されるようになっている。破砕機9の詳細については後述する。
【0041】
破砕機9で細かく粉砕されたガス缶類30は、破砕機9の下方に落下して、その下部に設けられた収納箱(ハッチ)10に収納される。収納箱10には、粉砕されたガス缶類30のほかスプレー缶などに含まれるガラス玉が収納される。全ての切断破砕処理が終わると、収納箱10の側面前方にある密閉ドアを開放し、収納箱10を取り出す。その際に、収納箱10の奥の部分を持ち上げるヒンジ機構を作動して収納箱10を図の点線の位置まで傾ける。これにより、収納箱10は外部に取り出しやすくなる。また、破砕機9は、電動機32に結合されている。電動機32の回転は減速器33で減速され、破砕機9の回転ローラ軸36、37(図3参照)に伝達するようになっている。
【0042】
図3は、図2のA−A´線断面図である。図2同一部分は同一符号を付している。図3から分かるように、破砕機9の回転ローラ軸は一対36、37が設けられている。この回転ローラ軸の一方の軸36に電動機32からの回転力が減速器33を介して伝達される。そしてこの一方の回転ローラ軸36の回転が歯車機構36a及び37aを介して他方の回転ローラ軸37に伝達するとともに、ベルト38を介して回転押圧片31の回転軸31aに伝達するようになっている。この場合、一方の回転ローラ軸36は、矢印で示すように反時計方向に回転し、他方の回転ローラ軸37は、矢印で示すように時計方向に回転する。
【0043】
次に図4、図5に基づいて、本例の破砕機9について詳細に説明する。図4は、破砕機9を説明するための図であり、図3の破砕機9とホッパーシュート34と収納部35の断面を示したものである。破砕機9は、直径の異なる二つの回転ローラ軸36、37を備えている。そしてそれぞれの回転ローラ軸36、37には、円盤状回転刃36b、37bが所定間隔をあけて複数設けられている。例えば、一対の円盤状回転刃36b及び37bが4対設けられる。そして、一方の回転ローラ軸36に設けられる4つの円盤状回転刃36bの間に他方の回転ローラ軸37に設けられる円盤状回転刃37bが挿入されると共にこの円盤状回転刃36b及び37bの両側にそれぞれ円盤状のサイドエッジ36d及び37dが設けられ、この円盤状回転刃36b及び37bの対向するそれぞれのサイドエッジ36d及び37d間ではさみの両刃のように被破砕物の切断が行われるようになっている。
【0044】
また、円盤状回転刃36b及び37bの周囲には、被破砕物に孔を開けたり、あるいは孔が開かなくとも被破砕物を引っ掛けて円盤状回転刃36b及び37bの対向するそれぞれのサイドエッジ36d及び37d間付近に導く作用をそうするかぎ状のフック36c及び37cを複数例えば10個設ける。
【0045】
図5は、図4の回転ローラ軸36、37と円盤状回転刃36b、37bとフック36c、37cとを拡大して示したものである。
図5では、一つの円盤状回転刃36b、37bに10個のかぎ状フック36c、37cが設けられている。そして、かぎ状フック36c(37b)が回転ローラ軸36(37)の回りを回転するときに、このかぎ状フック36c(37c)の先端が、もう一方の回転ローラ軸37(36)に接触しないように所定の間隙aを設けている。この間隙aは被破砕物の種類にもよるが、スプレー缶などに含まれるガラス球がその間隙aを通過する程度の間隙であることが望ましい。例えば、a=2mm〜5mm程度の間隙を設ける。
【0046】
図6は、図2のB−B´線断面図である。減速器33は電動機32(図2参照)の回転を減速して、回転ローラ軸36に伝達する。回転ローラ軸36には円盤状回転刃36bが複数個(ここでは4個)所定の間隔をもって設けられている。そして、円盤状回転刃36bの両側には、サイドエッチ36dが設けられ、円盤状回転刃36bの周囲に、その幅よりも小さい幅をもつフック36cが設けられている。
【0047】
一方、回転ローラ軸36と対をなす回転ローラ軸37にも、複数の円盤状回転刃37bが形成されており、そして、円盤状回転刃37bの両側には、サイドエッチ37dが設けられ、円盤状回転刃37bの周囲に、その幅よりも小さい幅をもつフック37cが設けられている。図6の例では、回転ローラ軸37に取り付けられる円盤状回転刃37bは、4個となっている。この4個の円盤状回転刃37bとその周囲のフック37cが、他の回転ローラ軸36bに設けられる円盤状回転刃36bとその周囲のフック36cの間に挿入するように回転支持される。
【0048】
さらに、一方の回転ローラ軸36(37)側の円盤状回転刃36b(37b)に設けられたフック36c(37c)は、その回転時に他方の回転ローラ軸37(36)に接触しないように、所定の間隙をもって形成される。この間隙は本例の破砕機9にとって極めて有用なものである。すなわち、本例では、フック36cと回転ローラ軸37との間隙(フック37cと回転ローラ軸36の間隙も同じ)をたとえば2〜5mm程度取るようにしている。
【0049】
さらに、図6に示されるように、円盤状回転刃36b(37b)に設けられるフック36c(37c)は、回転ローラ軸36(37)に対して斜交するように形成されている。そして、同一の回転ローラ軸36(37)に形成される複数の円盤状回転刃36b(37b)のフック36c(37c)が略回転ローラ軸36(37)に斜交した状態で、直線状に並ぶように構成されている。
【0050】
フック36c(37c)の構成をこのようにすることにより、ホッパーシュート34から収納部35に集約収納されたガス缶類30は、満遍なく円盤状回転刃36b(37b)に設けられるフック36c(37c)に順次引っ掛けられて切断破砕される。そして、最終的には円盤状回転刃36b及び37bの対向するそれぞれのサイドエッジ36d及び37d間で切断作用により細かく破砕される。この場合、複数の円盤状回転刃36b(37b)のフック36c(37c)が略回転ローラ軸36(37)に斜交した状態で、直線状に並ぶように構成されているので、切断破砕がこの斜交した状態に応じて順次行われこの切断破砕が行われるときの力を分散することができ、比較的小さい力で粉砕処理を行うことができる。
【0051】
図7は、回転ローラ軸36に設けられた円盤状回転刃36bと、回転ローラ軸37の円盤状回転刃37bとが噛み合って回転する状態を示した斜視図である。円盤状回転刃36b上にはフック36cが配置され、円盤状回転刃37b上にはフック37cが配置されている。図7には、具体的にガスライターや点火用ガスライターのガス缶類30がフック36c、37cにより円盤状回転刃36b及び37bの対向するそれぞれの円盤状のサイドエッジ36d及び37d間付近に運ばれて、切断する様子を示してる。この図7から明らかなように、ガス缶やボンベ類だけでなく、ガスライターや点火用ガスライターなどの比較的小さくて細いガス缶類30も確実に破砕処理がなされる。したがって、粉砕されない状態で下方にある収納箱(図2参照)に落ちることはない。
【0052】
以上、本発明のガス缶類の切断破砕装置の実施の形態例を説明した。この破砕機9における円盤状回転刃36b、37bの回転数(回転速度)と円盤状回転刃36b、37bの数及び円盤状回転刃36b、37bに設けられるフック36c、37cの数は、時間当たりの必要処理能力に応じて設定される。すなわち、回転方向のフック36c、37cの数と軸方向に複数取り付けられる円盤状回転刃36b、37bの枚数には最適値が存在する。
【0053】
本例(図5の例)では、大小一対の円盤状回転刃36b、37bに設けられたフック36c、37cは10個であるが、これを5個にすることもできる。その場合、取り除いたフック36c、37cの代わりに、フック36c、37cの間にピンを埋め込んでおくことが考えられる。このピンは、ガス缶類30を切断する能力は持たないが、フック36c、37cと相手方の回転ローラ軸37、36との間隙から、ガス缶類30の被破砕物が破砕されないまま落下することを防止する機能を有する。
【0054】
また、本例のガス缶類の切断破砕装置は、一対の円盤状切断刃36b、37bのサイドエッジ36d、37dのあたり面における剪断力によって、被破砕物の切断を行うものであり、被破砕物を剪断力によって切断するには剪断面積が必要となる。また、円盤状回転刃36b、37bの円盤状のサイドエッジ36d、37dに当たる初期衝撃力はかなり大きくなるので、その衝撃力を和らげるために、円盤状回転刃36b、37bの両側のサイドエッジ36d、37dの円盤の径を小さくするようにしている。これにより、被破砕物の切断破砕時の動力が低減される。
【0055】
尚、上述例では、かぎ状フック36c(37b)が回転ローラ軸36(37)の回りを回転するときに、このかぎ状フック36c(37c)の先端が、もう一方の回転ローラ軸37(36)に接触しないように所定の間隙aを設けたが、このかぎ状フック36c(37c)の先端とこれに対向する回転ローラ軸37(36)とに段差を設け、この段差の一部が重なるようにしても良い。このときは、ビニール等で形成されたライターであつても切断(孔を空ける)することができる。
【0056】
以上本発明の実施形態例について説明したが、本発明はここで説明した実施の形態例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形例及び応用例を含むものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のガス缶類の切断破砕装置の例の全体構成を示す構成図である。
【図2】図1のガス缶類の切断破砕装置の一側断面図である。
【図3】図2のA−A′線断面図である。
【図4】本発明のガス缶類の切断破砕装置の要部の例を拡大して示した断面図である。
【図5】本発明のガス缶類の切断破砕装置の円盤状回転刃とフックの構成例を示す拡大断面図である。
【図6】図2のB−B′断面図である。
【図7】図6の要部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
2…容器、3…真空ポンプ、4…第1のタンク、4a…オイル、5…第2のタンク、5a…水、6…ファン、7…燃焼装置、8…窒素ガス、9…破砕機、10…ハッチ、30…ガス缶類、31…押圧板、32…電動機、33…減速機、36、37…回転ローラ軸、36a、37a…歯車、36b、37b…円盤状回転刃、36c、37c…フック、36d、37d…円盤状サイドエッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス缶、ガスライター等のガス缶類を投入する容器と、該ガス缶類を破砕する破砕機と、前記容器に入っている空気を排出する空気排気装置と、前記容器内に不燃性ガスを注入するガス注入装置と、前記容器内で粉砕された前記ガス缶類から発生する残留ガスを外部に排出する排出装置を備えたガス缶類の切断破砕装置において、
前記破砕機は、
一対の回転ローラ軸に、複数の円盤状回転刃が所定間隔で取り付けられ、
一方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃は、他方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃の隣り合う円盤状回転刃同士間に入り込むように構成され、
前記一対の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジが交互に対向して前記ガス缶類を破砕するように構成されており、
前記円盤状回転刃の周囲には、前記円盤状回転刃の幅よりも小さい幅の複数のかぎ状のフックが設けられており、
前記フックで前記ガス缶類を引っ掛けて前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジに供給し、前記円盤状回転刃の円盤状のサイドエッジで切削破砕することを特徴とするガス缶類の切断破砕装置。
【請求項2】
前記一方の回転ローラ軸の円盤状回転刃に設けられた複数のフックは、その回転時に前記他方の回転ローラ軸に接触しないように所定の間隙を設けたことを特徴とする請求項1に記載のガス缶類の切断破砕装置。
【請求項3】
前記円盤状回転刃の周囲に配置される前記複数のフックは、前記円盤状回転刃の軸方向に対して所定の角度を有するように形成されており、かつ、前記回転ローラ軸に取り付けられた複数の円盤状回転刃に設けられた前記フックは、前記回転ローラ軸に対して前記所定の角度で直線状に配置されるように構成されており、
前記一対の回転ローラ軸の回転ローラ軸方向に対して所定角度を持つように直線状に設けられているフックは、その角度が、一方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃と、他方の回転ローラ軸に設けられた複数の円盤状回転刃とで回転ローラ軸に対して線対称となるように取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のガス缶類の切断破砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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