説明

ガス置換包装体

【課題】 容器または袋内の内容物の劣化に大きく関与する酸素の存在を検知し、変色という手段を用いて一目で容器または袋内の酸素ガスを把握することができる酸素インジケーターを具備したガス置換包装体を提供する。
【解決手段】 酸化還元色素、揮発性還元剤、バインダー、溶媒からなるインク組成物で、インク組成物中のバインダー含有量が10重量%以上であるインク組成物からなる酸素インジケーターを具備したガス置換包装体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素インジケーターを具備したガス置換包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケットなどで食材を購入し、各家庭でその購入した食材を調理して食べるという従来の形態に加え、最近では共働きのため調理の時間がない、自分の趣味の時間を多く取りたい等の理由により、家事を簡便に行いたいという意向から、調理に関してはスーパーマーケット等のバックヤードやセントラルキッチンなどで調理された調理済み食品等を購入し、家庭で食す形態が増えてきている。
【0003】
一方、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの調理済食品においては、調理済食品の利便性を売りに個々の食品の味、量等、好みに合わせた商品開発が活発になされ、多種類の食品が市場に投入されている。また、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の惣菜販売者は、消費者の強いニーズである素材そのもののおいしさの提供および安心・安全・健康志向に応えるため、食品保存料等を削減した惣菜等の提供を模索している。しかし、食品保存料を削減すると食品の腐敗開始が早くなるため、食品の安全対策が必須となっている。食品の腐敗を防止する方法として、食品の腐敗には空気中の酸素の影響が重要であることから、包装体内を無酸素状態で包装する種々の方法が検討されている。
【0004】
食品の腐敗を防止する目的で、包装体内を無酸素状態に保つ包装方法として、包装体内を真空状態にする真空包装、脱酸素剤を用いて包装体内を無酸素状態にする無酸素包装、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装などが挙げられる。
【0005】
例えば、真空包装の場合、包装体内を真空状態にするため、酸素による食品の酸化等の腐敗を防止でき、さらに、包装体内が真空で保たれているかを判別する際は、包装体内に空気の流入があるかどうかを目視確認することで、比較的容易に判別できる。また、保管、陳列スペースの点において有利であり、比較的長期の保存が必要な場合に多用されている。しかしながら、包装体内を真空にするため、大気圧によって包装体を包装しているフィルム等が食品に密着した包装形態になり、ボリューム感を与えることができない他、食品の形態がいびつになってしまうため美粧性の観点で問題が残る。
【0006】
一方、包装体内に脱酸素剤を用いたり、酸素吸収層を有する包装材で包装する無酸素包装や包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装は、食品を大気圧によって押しつぶすこと無く、食品を作ったままの形状でディスプレイできるため、商品をおいしく見せられる等のいわゆるディスプレイ効果による商品差別化が図れる点で優れている。そのため、賞味期限が数日から1ヶ月以内の比較的短期間の商品については酸素吸収による無酸素包装やガス置換包装の検討が主として行われている。
しかしながら、脱酸素剤を用いた無酸素包装や、包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装では、目視して包装体内が適したガス雰囲気下で保存されているかどうかの判断をすることは難しく、包装体内のガス雰囲気が適性であるかどうかを判別する方法が模索されている。特に食品腐敗に大きな影響を与える酸素の有無を検知する酸素インジケーターの開発およびこのような酸素インジケーターを具備した包装容器・袋が望まれている。
【0007】
このような、酸素検知機能として、酸素インジケーター機能付きの脱酸素剤が開示されている。例えば、特許文献1にはメチレンブルー、糖類、アルカリ性物質、水分およびアスコルビン酸からなる酸素インジケーター付き脱酸素剤が開示されている。この脱酸素剤はアスコルビン酸による脱酸素であるが、本来の機能である脱酸素機能に加え、メチレンブルーを指示色素として用い、メチレンブルーが酸素がある場合は青色、酸素のない場合は無色を示す酸素インジケーター機能を付け加えているため、一目で酸素の有無を確認できる点で優れている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されている酸素インジケーターは、一般的なガス置換包装において、静菌作用を期待して置換ガスに10%以上の炭酸ガスを混合する場合は、炭酸が酸素検知に悪影響を及ぼし、結果として、酸素検知能力を失ってしまう問題が残されている。また、従来技術における酸素インジケーターは上記の炭酸含有のガス置換包装体には酸素検知能力を喪失するため使用できない他、殺菌作用を期待するためにアルコール類をガス置換包装体に使用する場合、炭酸ガスを使用した場合と同様にアルコール添加にて酸素検知能力を喪失する問題がある。さらに、従来の酸素インジケーターは、耐光性、耐熱性等の耐久性が乏しく、酸素インジケーターの保存を冷暗所で行う必要があり、たいていの場合、冷蔵庫等の温度管理が必要である。また、冷暗所に保管した場合でも、酸素インジケーターの商品寿命は最大2〜3ヶ月で、長期の酸素インジケーター機能の継続は困難であり、酸素インジケーターそのものの商品管理はもとより、それを付与した包装体の商品管理にも手間がかかるのである。さらにまた、特許文献1に開示されている酸素インジケーターはガス置換包装体内に脱酸素剤を含有することが必須であり、もし、ガス置換包装のみで脱酸素剤を使用しない場合は、ガス置換包装体内にある微量の酸素によっても酸素インジケーターが発色してしまうため、現実的に酸素のリークを検知する検知剤として使用することができない問題が残されている。一方、特許文献2に開示されている酸素インジケーターは、バインダーとしてメチルセルロース等を使用しているが、近年では多くの包装容器はプラスチックからなっており、プラスチックへの直接の塗布が困難であるという問題点が残されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭54−138489号公報
【特許文献2】米国特許第4526752号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、炭酸ガスやアルコール類を使用したガス環境においても、ガス置換包装体内の酸素変化を検知し、変色という手段を用いて一目で容器または袋内の酸素リーク変化を把握することができる酸素インジケーターを具備したガス置換包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)酸化還元色素、揮発性還元剤、バインダー、溶媒からなるインク組成物で、インク組成物中のバインダー含有量が10重量%以上であるインク組成物からなる酸素インジケーターを具備することを特徴とするガス置換包装体。
【0012】
(2)ガス置換包装体に用いられる置換ガスとして炭酸ガスを含むガスが用いられることを特徴とする(1)に記載のガス置換包装体。
(3)ガス置換包装体に用いられる置換ガスとしてアルコール類を含むガスが用いられることを特徴とする(1)に記載のガス置換包装体。
【0013】
(4)バインダーに少なくともシクロヘキサノン系ケトン樹脂またはアセトフェノン系ケトン樹脂を含むことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のガス置換包装体。
(5)酸化還元色素が、チアジン系色素、オキザリン系色素、ラクトン系色素、サルトン系色素、アゾ系色素、インジゴイド系色素、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン系色素からなる群から選ばれた少なくとも1つの色素であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のガス置換包装体。
【0014】
(6)酸化還元色素の酸化還元電位が+0.1V以上、+1.5V以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のガス置換包装体。
(7)酸化還元色素が、メチレンブルー、チオニン、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラックからなる群から選ばれた少なくとも1つの色素であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のガス置換包装体。
【0015】
(8)揮発性還元剤が、アンモニア、チオール類、アルデヒド類、低分子アミン類からなる群から選ばれた少なくとも1つの還元剤であることを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のガス置換包装体。
(9)溶媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、水からなる群から選ばれた少なくとも1つの溶媒であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のガス置換包装体。
【発明の効果】
【0016】
本発明のガス置換包装体は、保存性を良くするために炭酸ガスを用いたガス置換を行っても酸素の有無を検知することができる。また、アルコール等の静菌および殺菌ガスを用いたガス置換包装およびアルコールを含有する内容物においても使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本願発明について具体的に説明する。
本発明で用いるインク組成物は、酸化還元色素、揮発性還元剤、アルカリ物質、バインダー、溶媒からなり、バインダーがインク組成物の10重量%以上含有するものである。本発明のインク組成物は、バインダーをインク組成物の10重量%以上含有するため、安定した均一な塗工膜をプラスチック表面に形成することができる。該インク組成物をプラスチック、紙等の基材に塗布することにより、環境変化を検知することができる検知シートおよびフィルムを作製できるのである。該検知シートおよびフィルムは耐熱性および耐光性を有するため、ラミネート用原反として、さらに別のシートおよびフィルムと張り合わせをすることができたり、容器および袋に加工することができる。
【0018】
本発明でいう酸素インジケーターとは、酸化還元色素、揮発性還元剤、アルカリ物質、バインダー、溶媒からなるインク組成物をシートやフィルムに塗工することにより酸素インジケーター部を形成し、該酸素インジケーター部が酸素に暴露することによって、色差変化等で酸素の有無を示す機能を有するものを示す。塗工方法は公知の技術を使用できる。例えば、該インク組成物を小さな液滴にして噴霧するスプレー法、メイヤーバー等を用いたバーコート法、グラビア、フレキソ、スクリーン、インクジェット等の印刷などである。塗工形状は基材シートおよびフィルムの片面または両面にベタ印刷、文字印刷、パターン印刷、ドット印刷等を施しても良い。好ましくは後加工で裁断したいり、製袋したりするため、パターン印刷やドット印刷がよい。本発明で使用されるインク組成物は、不可逆的に酸素検知するため、ガス置換包装体を形成する直前にインク組成物を塗工して酸素インジケーターを作製し、ガス置換包装体に酸素インジケーターを具備することが好ましい。塗工方法として、好ましくはインクジェット等の非接触での印刷方法であり、版がないため、自由に所望の文字、形を印刷できる他、ガス置換包装体を作製する直前に酸素インジケーターを作製し、包装体に具備することができるのである。
【0019】
本発明のシートおよびフィルムに用いられる樹脂は、食品包装用途に用いられる樹脂であれば支障がない。例えば、ポリエチレン系樹脂(HDPE、LLDPE等)、ポリプロピレン系樹脂(PP)、ポリブテン−1系樹脂(PB)、ポリ−4−メチルペンテン−1系樹脂をはじめとするポリオレフィン系樹脂(PO)、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体樹脂(EMA等)、エチレン−ビニルアルコール系共重合体樹脂(EVOH等)をはじめとするポリオレフィン系樹脂変性物(PO変性物)、ポリエチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PET等)、ポリブチレンテレフタレート系(含変性)樹脂(PBT等)をはじめとする芳香族成分を一部含む、又はポリ乳酸系樹脂、ポリグリコール酸系樹脂をはじめとする脂肪族成分のポリエステル系樹脂(PEST)、ポリ塩化ビニリデン系樹脂(PVDC)、ポリ塩化ビニル系樹脂(PVC)をはじめとする塩素系樹脂、αオレフィン−一酸化炭素共重合樹脂(含同水添樹脂)、αオレフィン(エチレン、他)−スチレン共重合樹脂(含同水添樹脂)、エチレン−環状炭化水素系化合物共重合樹脂(含同水添樹脂)、ポリアミド系樹脂(Ny)、カプロラクトン系樹脂等から少なくとも一種を主体として選択される樹脂組成物を単層もしくはこれらの多層またはこの層と異なる樹脂を積層させたもの、もしくはこれらの樹脂からなる延伸もしくは未延伸のシートおよびフィルムが挙げられる。また、本発明でいうシートとは厚さが100μm以上の厚さのものを示し、本発明でいうフィルムとは厚さが100μm未満のものを示す。さらに、該インク組成物を塗工する観点やシートおよびフィルムのブロッキングの観点よりシートおよびフィルムの表面エネルギーが高いことが好ましいが、34〜44mN/mであることが好ましく、より好ましくは36〜42mN/mであり、場合によってはコロナ処理等の表面処理をしてもよい。
【0020】
また、本発明で用いられる酸素インジケーターは、ガス置換包装体内に具備し、包装体内の酸素の有無を検知するものであるため、包装体をなす容器やフィルムに酸素バリアー機能を有することが好ましい。酸素バリアー機能は、基材シートやフィルムに酸素バリアー樹脂を含有したり、アルミ箔等の金属箔を含有したり、シリカやアルミナ等を蒸着したりして得られ、公知の方法を使用できる。
【0021】
本発明でいう酸素バリアー樹脂は、ガスバリアー性として酸素ガス透過量が1.0〜3948.0ml/m/day/MPaを有するものが好ましく、より好ましくは10.0〜2500.0ml/m/day/MPaを有するものであり、さらに好ましくは20.0〜1300.0ml/m/day/MPaを有するものである。さらにより好ましくは20.0〜300.0ml/m/day/MPa、を有するものである。
本発明に用いられる酸素バリアー基材層の厚さは、用いられる樹脂の酸素ガス透過量によって異なり、前述の酸素ガス透過量が1.0〜1974.0ml/m/day/MPaである厚さを確保することが好ましい。例えば、酸素ガス透過量を1000.0ml/m/day/MPaにする場合、12μmのポリエチレンテレフタレートを用いることで達成することができ、所望の酸素透過性を樹脂の種類やその構成厚みで調整することで達成することができる。
【0022】
本発明に用いられる酸素インジケーターは、内容物が食品の場合、酸素インジケーター上にさらにバインダーと溶剤からなる組成物をインクジェット等により印刷して、食品との直接接触を防止しても良い。また、酸素検知速度や検知開始時間や検知時の発色速度挙動を制御するために、前記バインダーに酸素バリアー性バインダーを使用して酸素透過度を改良してよい。
【0023】
本発明に用いられるバインダーは、主として酸化還元色素をバインダー中に分散状態で包括し、被付着面に固定する役割をはたす。バインダーに用いられる物質は公知に使用されるバインダーであれば単独またはその混合物のいずれを使用しても良い。また、本発明におけるインク組成におけるバインダー含有量は、バインダーの溶解限度によって決まるが、10〜80重量%である。グラビア印刷の場合、インク組成物の粘度および印刷物の塗膜形成性の観点より、インク組成物全体に対して10〜60重量%含むことが好ましく、より好ましくは15〜55重量%である。被付着面はコロナ処理等の公知の表面処理を行って結着性を改善してもよい。また、プラスチック表面へのインクジェットの場合、被付着面であるプラスチックへの結着性の観点およびプリントヘッドからのインク組成物の吐出性能やノズル穴の詰まりの観点より、インク組成物全体に対して10〜60重量%含むことが好ましく、より好ましくは15〜55重量%である。被付着面はコロナ処理等の公知の表面処理を行って結着性を改善してもよい。インクジェット技術での印刷において好ましいインク組成物の粘度は30℃における粘度で3〜150mPa・sであり、鮮明な印刷をする観点より、より好ましくは10〜40mPa・sである。この溶液粘度を実現するために、バインダーの重量平均分子量(Mw)は小さいほうが好ましいが、バインダー成分の溶出を鑑み重量平均分子量が1000〜8000であることが好ましく、より好ましくは重量平均分子量が1500〜7000、さらに好ましくは重量平均分子量が2000〜6000である。
【0024】
本発明に用いられるバインダーとして、例えば、ケトン樹脂の他、セルロース誘導体(ニトロセルロース等のセルロースエステル類、ハイドロキシエチルセルロース等のセルロースエーテル類、オキシセルロース等の修飾セルロース類)、ポリビニルアルコール、ポリオール類、ポリビニルピロリドン、ポリアミド系、ポリアセタール系、その他天然樹脂系バインダーとその変性物が挙げられ、被印刷物や被塗工物の表面素材に合わせて、これらバインダーを単独またはその混合物を使用できる。好ましいバインダーとしてのポリマーは色素の還元補助機能の観点より、ケトン樹脂が良く、また、色素の色変化反応性の観点より、セルロース誘導体や天然樹脂等が良く、また、安全性の観点より、天然樹脂等が良く、これらの総合的組み合わせとして、ケトン樹脂と天然樹脂が良い。また、被印刷面がプラスチックの場合、印刷部が均一な表面を形成するにはバインダーの濃度が10重量%以上である方が好ましいが、ケトン樹脂を含むバインダーを用いることは、上記の低粘度とバインダー濃度を両立することができ、より好ましい。さらに、ケトン樹脂を含むバインダーを用いる場合、少量の不揮発性還元剤で酸化還元色素をロイコ状態(還元状態)に還元することが可能であり、インク溶液のpHを10以下に設定できるため、インク組成物の保存安定性および印刷物の耐光性に優れるのである。
【0025】
ケトン樹脂は、ケトン基を有する化合物とアルデヒドの縮合反応により得られる物質であり、メチルエチルケトン系、メチルイソブチルケトン系、メチルシクロヘキサノン系、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系等の樹脂があり、適宜、選択して用いることができる。好ましくは、シクロヘキサノン系、アセトフェノン系の樹脂であり、シクロヘキサノン系ケトン樹脂として、例えば、シクロヘキサンノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられ、アセトフェノン系ケトン樹脂として、アセトフェノンとホルムアルデヒドからなるケトン樹脂が挙げられる。また、これらの物質を単独または2種以上の混合物として使用しても良い。
ケトン樹脂の酸素検知用インク組成物に対する添加量としては、バインダー機能および酸化還元色素の還元機能の観点より10重量%以上が好ましく、より好ましくは15重量%以上である。
【0026】
バインダーとしてケトン樹脂のような酸素透過性の緩やかな樹脂を用いる場合、酸化還元色素の発色速度を制御する観点より既存の酸素透過性の良いバインダーを混合して使用しても良い。通常、ケトン樹脂は分子内および分子間の水素結合により、酸素透過性が緩やかである。本発明におけるインク組成を使用した酸素インジケーターでは、酸化還元色素の発色はバインダー中を拡散してくる酸素との反応によるものであり、ガス置換包装体内の環境の変化を即座に検知するため、バインダー内の酸素拡散性を改善する目的で酸素透過性の優れるバインダーもしくは樹脂を混合して使用するのは好ましい。混合するバインダーとしては、例えば、バインダー機能性およびバインダー内の酸素拡散性改善の観点より、前記に挙げたセルロース誘導体や天然樹脂系バインダーとその変性物が挙げられ、その他、樹脂としてポリ乳酸、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。特に溶媒との相溶性、インク粘度、食品安全の観点より、天然樹脂系のシェラック樹脂が好ましい。シェラック樹脂は樹脂酸およびアルコールのエステル化合物からなるバインダーであり、より好ましくはバインダーの樹脂酸がアレウリチン酸、ジャラール酸、ラクシジャラール酸を含むエステル化合物である。
【0027】
次に本発明で使用する酸化還元色素について説明する。
本発明でいう変色とは、酸化還元色素の光吸収波長変化反応であり、酸化還元色素自体の構造変化あるいは酸化還元色素が酸素インジケーター部に含有する他の化合物と反応に起因して光吸収波長が変化することをいう。また、本発明で使用する酸化還元色素を種々に選択することによって、所望の色、所望の酸素濃度を閾値として酸素の有無を検知することができ、さらに検知する酸素濃度の設定や変色速度等を所望の設定にすることができる。さらに、酸化還元色素による変色が可視光域(400nm〜600nm)であれば波長を測定する機械を用いることなく、一目で目視確認できるため好ましい。さらにまた、数種の酸化還元色素を混合しても化学的に安定であり、かつ、反応が独立である場合、例えば、反応に必要な酸素濃度、反応速度および反応時の色彩の全く違う酸化還元色素を数種混合して用いると、ある酸素濃度ではオレンジ色、さらに酸素濃度が高い場合は青色等酸素濃度によって色を段階的に変化することが可能であったり、酸素濃度の暴露時間が少ない場合は褐色、酸素濃度の暴露時間が長い場合は赤色等酸素暴露時間によって色を段階的に変化することが可能である。
【0028】
本発明でいう酸化還元色素とは、pH、温度、水素および電子の授受または酸素による直接酸化等による酸化還元等の環境変化により変色をするものを示す。酸化還元色素とは物質の酸化または還元によって光吸収波長が変化すればいずれの物質でも良い。このように変化した光吸収波長を検出することによって酸素の有無を判断することができる。利用できる光吸収波長の波長域は、変化した波長を測定あるいは検出できればどのような波長でも利用できる。
【0029】
本発明でいう酸化還元色素として、チアジン系、オキザリン系、ラクトン系、サルトン系、アゾ系、インジゴイド系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、フェナントロリン誘導体およびこれらの混合物等が挙げられ、より好ましくは、チアジン系、オキザリン系、ラクトン系、サルトン系、インジゴイド系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系およびこれらの混合物である。具体的には、インジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、ガロシアニン、メチルレッド、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、メチルイエロー、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、アントラキノン、サフラニン、フェノサフラニン、β−カロチン、リコピン、レソルフィン、チオニン、クレシルブルー、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、カルミン、フェノールフタレン、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、1,10−フェナントロリン、1,7−フェナントロリン、5−フェニル、1,10−フェナントロリン、4,7−ジメチル−1,10−フェナントロリン、N−フェニルアントラリン酸、ナイルブルー、ナチュラルレッド、ジフェニルアミン−4−スルホン酸、2,2’−ジピリジン、2,6−ジクロロインドフェノール、3,3’−ジメチルナフチジン、N,N−ジメチル−1,4−フェニレン−ジアンモニウム、ジフェニルアミン、ジフェニルベンザジン等が挙げられる。好ましくは、インジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミン、ジフェニルベンジジン、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、ガロシアニン、メチルレッド、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、メチルイエロー、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、サフラニン、フェノサフラニン、レソルフィン、チオニン、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、2,6−ジクロロインドフェノールであり、より好ましくは、インジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、メチルバイオレッド、チモールブルー、アントシアニン、フェノールレッド、チモールフタレイン、アザリンイエロー、サフラニン、フェノサフラニン、レソルフィン、チオニン、トルイジンブルー、メチルオレンジ、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック、2,6−ジクロロインドフェノールであり、さらに好ましくは、インジゴテトラスルホン酸、ジフェニルアミンスルホン酸、フェロイン、ニトロフェロイン、メチルフェロイン、ジメチルフェロイン、メチレンブルー、チモールブルー、チモールフタレイン、サフラニン、フェノサフラニン、チオニン、トルイジンブルー、リトマス、ブロムチモールブルー、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、2,6−ジクロロインドフェノールである。さらにより好ましくは食用色素であり、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラック等が挙げられる。
【0030】
酸化還元色素のインク組成物に対する添加量は、通常、溶媒に対する溶解性の観点および色差判別の観点より、好ましくはインク組成物の0.1〜5重量%で、より好ましくは0.3〜4重量%、さらに好ましくは0.3〜3重量%である。
本発明に用いられる酸化還元色素がある特定の酸化還元電位を有する場合、酸化還元電位の異なる酸化還元色素を使用することにより、ガス置換包装体内の酸素含有量を所望の濃度で検知することができるのである。本発明でいう酸化還元電位とは後述のサイクリックボルタンメトリーにより測定された値を用いるが、酸化還元電位が+0.1V以上+0.7V未満の場合は、揮発性還元剤により酸化還元色素を還元状態にした場合、ごく少量の酸素によって即座に酸化状態になる変化するため、ごく少量の酸素の有無を検知することが可能である。また、酸化還元電位が+0.1V未満の場合は、酸素暴露による発色前の色を任意に着色できるため、酸素暴露による発色を視覚的に顕著にする効果を相することができるのである。さらに、酸化還元電位が+0.7V以上の場合は、脱酸素剤等の酸素補足材料がガス置換包装体内にないような場合にも酸素インジケーターとして使用できる他、酸化還元電位の値によっては、ガス置換包装体内の酸素含有量を所望の濃度で検知することができるのであり、酸化還元電位の値によって所望の酸素含有量で変色する酸素検知用インク組成物の色素を達成することができるのである。
酸化還元電位が+0.1V未満である場合は酸素に対しての鋭敏な反応速度が欲しいときに適している。+0.1以上+0.7V未満は、少ない酸素(酸素濃度が0.5%未満)があっても反応せず、それ以上の酸素濃度で色変化するような場合に適している。
+0.7V以上は酸素濃度が0.5%以上のときに適している。好ましい酸化還元電位は+0.1以上、+1.5V以下である。
【0031】
本発明でいう揮発性還元剤は、インク組成物をシートやフィルムに塗布する工程やラミネート加工工程や製袋工程等の初期段階での酸化還元色素を還元状態(ロイコ状態)にする役割を果たす。また、酸化還元色素はロイコ状態での保存が安定であり、ロイコ状態への移行を速やかに達成することができる。揮発性還元剤は消費後、残りの揮発性還元剤は酸素インジケーターから飛散することで、酸素インジケーターの系外に排除される。さらにまた、酸素インジケーターインク組成物中の揮発性還元剤の含有量を増減する事で、還元状態の酸化還元色素が酸素と触れ合ってから発色する段階までの遅れ時間を調整することができる。揮発性還元剤は20℃における蒸気圧が1hPa以上が好ましく、より好ましくは5hPa以上である。本発明で用いる揮発性還元剤としては、例えば、アンモニア、チオール類、アルデヒド類、低分子アミン類が挙げられ、好ましくはアンモニアである。また、これらの物質を単独または2種以上の混合物として使用しても良い。
【0032】
揮発性還元剤の添加量は、インク組成物における還元能力の観点より、好ましくはインク組成物の0.1〜20重量%で、より好ましくは0.3〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜13重量%である。また、揮発性還元剤がアンモニアの場合、バインダーにケトン樹脂を用いる組み合わせが、参加還元色素をロイコ状態にする無色化反応の反応性の観点より、好ましい。さらに、揮発性還元剤としてのアンモニアとバインダーとしてのケトン樹脂の含有割合を適宜、調整することにより、インク組成物のpHを調整することができ、塗膜形成時にバインダーの相転移機能を駆使することで塗工面を透明もしくは不透明に制御することもできる。さらにまた、揮発性還元剤としてのアンモニアとバインダーとしてのケトン樹脂を使用し、その含有割合を適宜、調整することにより、従来のインク組成物がpH10.5以上で色素の還元をしているのに対し、従来技術の値よりも中性側(pH10程度以下)で色素還元することができ、そのため、耐光性機能を格段に向上することができる。
【0033】
本発明でいう溶媒は、酸素インジケーターインク組成物を均一なものにする役割を果たす。溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、水等が挙げられ、これらの溶媒の単独組成物または混合組成物を溶媒として用いることができる。好ましくは塗工時の乾燥系の観点より、揮発性の溶媒が好ましい。
より好ましくは安全の観点よりアルコール類であり、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。特に揮発性還元剤がアンモニアの場合、アンモニア水で使用されることおよび色素の溶解性の観点より水を使用した溶媒が好ましく、また、バインダーの溶解性、印刷時の乾燥性の観点より、水およびアルコールの混合物がより好ましい。さらにインク組成物の溶媒は色素、還元剤の溶解性の観点より、アルコール系もしくは、アルコールと水の混合物がよい。
【0034】
本発明で用いられるインク組成物には通常用いられるpH緩衝剤、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールおよびエリトリトール等の保湿剤、脱酸素剤、等を含有しても良い。
本発明のガス置換包装体は、食品包装関係(生鮮3品と呼ばれる鮮魚、生肉、生野菜)の他、例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等で販売される惣菜(煮物、焼き物、蒸し物、炒め物、弁当)以外にも密封空間内の酸素濃度の有無を確認する必要のあるところであればいずれの用途に使用しても良く、例えば、精密機械部品包装やネジ等の金属部品包装や電子基板等の電機部品包装の他、医薬品、化粧品等への使用が挙げられる。
【0035】
本発明では、酸化還元色素、揮発性還元剤、バインダー、溶媒からなるインク組成物が包装体内のガスにさらされるように包装体に含有され、インク組成物からなる酸素インジケーターにて酸素の有無を色素の変色で認識できる包装体である。包装体内のガスを検知することができれば、インク組成物を少なくと一部に塗布したシートおよびフィルムおよびそのラミネート用シートおよびラミネート用フィルムを用いたり、直接包装体を構成する部材の包装体内面に塗布してもよい。
【0036】
本発明の包装体は食品の腐敗を防止する目的で、ガス置換包装体内を無気状態に保存したり、不活性ガス等をガス置換包装体内に置換する方法(ガス置換方法)に用いられるのである。本発明でいうガス置換について説明する。本発明でいうガス置換とは密封容器内の空気を所望のガスに置換することを意味し、内容物の保存性向上や商品の色等に関する外観性等の効果が挙げられ、例えば、食品等を不活性ガス中に保持することことによって、(ア)油脂成分の酸化防止、(イ)ビタミン等の有効成分の保存、(ウ)かびや菌類や酵母の繁殖による腐敗防止、(エ)色素の変色・退色防止、(オ)香気の飛散防止等に効果が得られる。また、更に炭酸ガス等の制菌作用を有するガスにて置換することで内容物の保存性をさらに向上することもできる場合がある。
【0037】
一般的にガス置換装置のガス置換方法はチャンバー式、ガスフラッシュ式等が挙げられる。チャンバー式のガス置換方法とはチャンバー内部全体を一旦、真空状態に脱気し、そのままの状態で置換ガスを送り込みガス置換を行う方法であり、一般的にチャンバー式のガス置換は置換ガスを置換率が高く、確実にガス置換をすることができる特徴を有する。一方、ガスフラッシュ式のガス置換方法とは内容物を入れた容器内に置換ガスを直接フラッシュして、容器内の空気を置換ガスによって追い出すことによってガス置換を行う方法であり、その代表例としてガスパックシュリンクピロー包装がある。一般的にガスフラッシュ式はチャンバー式よりも置換率が低いといわれているがガスフラッシュ時間を調節することで所望のガス置換率が得られる。ガスフラッシュ式はチャンバー式に比べ設備的に安価であり、業者の設備投資コストを抑えることが可能である。
【0038】
本発明でいうガス置換装置のガス置換方法は上記に挙げられたガス置換方法やその他のいずれの方法によって容器内の内容物(種類や形状)、包装スピード、設置スペース、ガス置換率等に応じて適宜選択すれば良い。また、ガス置換包装体内に脱酸素剤を用いて無酸素包装したり、ガス置換包装体内を所望のガスにて密封するガス置換包装する方法もあり、適宜選択すれば良い。
【0039】
本発明のインク組成物およびその塗布した物は従来技術にない耐アルコール性を有するため、食品の腐敗を防止するために殺菌作用を有するアルコール類を使用することも出来る。成分比率は、殺菌作用の効果から0.5%以上が好ましく、飽和蒸気状態まで含有していても良い。ここでいうアルコール類とは炭化水素の水素原子を水酸基で置換した形の化合物を示し、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等を示す。本発明のアルコール類は、食品安全の観点より、好ましくはエタノール、プロパノール、イソプロパノールであり、より好ましくはエタノール、プロパノール、さらに好ましくはエタノールである。
本発明のインク組成物はアルコールを含有するショーミックスA5(商品名:昭和炭酸製)での使用も可能である。ショーミックスA5はアルコールを5%含有する炭酸ガスで、通常、窒素ガスと混合してガス置換包装に使用されるものである。
【実施例】
【0040】
(1)酸化還元電位測定
北斗電工株式会社製サイクリックボルタンメトリーHX−105(商品名)を用いて、各色素1重量%水溶液での酸化還元電位を測定した。測定は20℃環境下で銀/塩化銀電極を用いた。挿引速度は50mV/sで−0.5Vから1.5Vまで挿引した。酸化還元電位はピーク値を用い、数ヶ所に酸化還元電位があるものは低電流側の値を用いた。
【0041】
(2)ガス置換包装体の調製
(2−1)本体:ポリプロピレン(PP)フィラー入りシート(500μm)に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)/ナイロン(NY)/酢酸ビニル共重合体ケン化物 ケン化度38%(EVOH)/NYの共押しフィルム(50μm)をドライラミネートしたシートを成形したものを用いた(容器大きさ:75mm×75mm×35mm)。
(2−2)トップシールフィルム:ポリエチレン(PE)フィルム(50μm)にLLDPE/NY/EVOH/NYの共押しフィルム(50μm)をドライラミネートしたものを用い、PEフィルム面を内面とし、コロナ処理を行った(コロナ処理:38mN/m)。
(2−3)包装方法:各インク組成物をSPECTRA社製インクジェット印刷機APOLLO−II(商品名)によりトップシールフィルムの内面(コロナ処理面)に印刷し、そのまま、置換ガスとして窒素ガス又は窒素ガスと炭酸ガスとの混合ガスを用いてDYNA社製真空ガス置換包装機DYNAPACK462(商品名)にて容器内を真空・ガス置換を行い、ヒートシールにて密封ガス置換包装体を作成した。
【0042】
(3)密封用包装容器内空間の酸素、炭酸ガス組成比率測定
PBI Dansensor社製コンビチェック(商品名)酸素、炭酸ガス測定器を用いて20℃における密封用包装容器内空間の酸素及び炭酸ガス組成比率(重量%)を測定した。また、窒素濃度は100重量%より酸素濃度及び炭酸ガス濃度より算出した。
(4)発色時間測定
20℃に調整した部屋で30分毎にサンプルを写真撮影し、各写真の色を目視で比較してサンプルの色変化がなくなったところを発色時間とした。
【0043】
(5)耐光性測定
20℃に調整した部屋で殺菌灯(ナショナル社製GL−20)を用いて30cmより離れたところよりサンプルに連続照射し、1日1回写真撮影し、各写真の色を目視にて比較してサンプルの色があせてきたところを測定した。
(6)耐熱性評価
密封ガス置換包装体を60℃に調整した乾燥オーブン内に2週間放置し、その後、空気中に開放し、色素の発色状態を目視確認した。
【0044】
(7)インク組成物の調製方法
表1〜3に示す色素及びバインダーを水及びアルコール混合溶媒に溶解し、溶解後、密封して還元剤を添加し、撹拌した。還元剤添加前は色素は発色状態であるが、還元剤添加後、1日以内に還元し、無色のインク溶液となった。
(8)使用樹脂及び試薬
各表中に記載のインク組成物を構成する成分は具体的には以下の通りである。
ケトン樹脂:Lawter社製ケトン樹脂(シクロヘキサノンとホルムアルデヒド縮合物)クランバール1717(商品名)
シェラック樹脂:岐阜シェラック社製天然樹脂(シェラック樹脂は樹脂酸及びアルコールのエステル化合物)白シェラックGBN−D(商品名)
メチルセルロース樹脂:akzo Nobel社製メチルセルロース樹脂
還元糖:関東化学社製試薬D(+)−グルコース
その他化学物質は関東化学社製の化学物質を使用した。
【0045】
(実施例1〜11)
インクジェット印刷機は2つのプリンターヘッドをセットし、一方のプリンターヘッドをインク組成物用、もう一方をオーバーコート用にした。印刷装置はSPECTRA社製インクジェット印刷機を使用し、インク組成物を印刷した後、1分間放置し、インク組成物を印刷した部分にオーバーコートを施した。インク組成物およびオーバーコートは表1〜3に記載された成分で、上記の方法にて調製した組成物をSPECTRA社製インクジェット印刷機のインクリザーブタンクに入れ使用し、印刷機のプリンターヘッドを30℃に昇温してトップシールフィルムのガス置換包装体内面のPE面(コロナ処理面)に印刷した。その印刷したフィルムをトップシールフィルムとして用い、真空ガス置換包装機DYNAPACK462にて容器内を真空・ガス置換を行い、ヒートシールにて密封ガス置換包装体を作成した。インクおよびオーバーコート組成物及びサンプル作成条件は表1及び表2に記載する。実施例1〜11はいずれも印刷状態、耐光性が良好であった。実施例2は粘度が高めであり、そのため、インクジェット印刷評価において、実用的には問題ないレベルではあるが少々斑があった。オーバーコートの有無は実施例1および実施例5で示したように空気解放後の発色時間には差が見られなかった。また、実施例4のオーバーコート組成として酸素透過性を改善するためにシェラック樹脂を混合した。そのため、空気解放後の発色速度が速く、約8時間で発色し、他の実施例より速い傾向を示した。さらに、実施例6ではインク組成物のバインダーにもシェラック樹脂を混合したため、さらに早い発色特性を示した。
【0046】
(比較例1)
前記特許文献2に開示されているインジケーターを作製した。表4に示している通り、比較例1はロイコ色素を還元(無色化)するには還元性アルカリ剤を用いてインク溶液のpHを10〜11にする必要があった。また、通常、用いられるメチルセルロースを5重量%使用して作成したインク組成物ではインク溶液の粘度が300mPa・sとなった。この粘度領域ではドリッピング技術であるピエゾ式インクジェット印刷は不可能(ノズルよりインク溶液が吐出しないため)であった。また、メチルセルロースを5重量%使用して作成したインク組成物でハンドコーティングをした場合、コロナ処理を施したポリエチレンプラスチックフィルムでは、均一な塗膜が得られなかった。
【0047】
(比較例2)
代表的である従来技術の酸素インジケーターを作製した。表4に示している通り、比較例2はロイコ色素を還元(無色化)するには還元糖およびアルカリ物質を用いてインク溶液のpHを10〜11にする必要があった。また、作成したインク組成物ではドリッピング技術であるピエゾ式インクジェット印刷は不可能(ノズルよりインク溶液が漏れる傾向)であった。また、作成したインク組成物でハンドコーティングをした場合、コロナ処理を施したポリエチレンプラスチックフィルムでは、均一な塗膜が得られなかった。
比較例1および比較例2ともに、殺菌灯を用いた耐光性の評価では数日のレベルであった。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の酸素インジケーターを具備したガス置換包装体は、包装体内を炭酸ガスやアルコールを含む雰囲気にガス置換した包装体に使用でき、特に食品包装分野に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化還元色素、揮発性還元剤、バインダー、溶媒からなるインク組成物で、インク組成物中のバインダー含有量が10重量%以上であるインク組成物からなる酸素インジケーターを具備することを特徴とするガス置換包装体。
【請求項2】
ガス置換包装体に用いられる置換ガスとして炭酸ガスを含むガスが用いられることを特徴とする請求項1に記載のガス置換包装体。
【請求項3】
ガス置換包装体に用いられる置換ガスとしてアルコール類を含むガスが用いられることを特徴とする請求項1に記載のガス置換包装体。
【請求項4】
バインダーに少なくともシクロヘキサノン系ケトン樹脂またはアセトフェノン系ケトン樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガス置換包装体。
【請求項5】
酸化還元色素が、チアジン系色素、オキザリン系色素、ラクトン系色素、サルトン系色素、アゾ系色素、インジゴイド系色素、アントラキノン系色素、トリフェニルメタン系色素からなる群から選ばれた少なくとも1つの色素であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガス置換包装体。
【請求項6】
酸化還元色素の酸化還元電位が+0.1V以上、+1.5V以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のガス置換包装体。
【請求項7】
酸化還元色素が、メチレンブルー、チオニン、ブリリアントブルー、ファーストグリーン、インジゴカルミン、アミノブラックからなる群から選ばれた少なくとも1つの色素であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のガス置換包装体。
【請求項8】
揮発性還元剤が、アンモニア、チオール類、アルデヒド類、低分子アミン類からなる群から選ばれた少なくとも1つの還元剤であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のガス置換包装体。
【請求項9】
溶媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、水からなる群から選ばれた少なくとも1つの溶媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のガス置換包装体。

【公開番号】特開2008−70250(P2008−70250A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249599(P2006−249599)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】