説明

ガス計測器

【課題】 校正の頻度および測定の正確さが高く、データの欠測がないガス計測器を提供する
【解決手段】 NO計測器1は、ガス濃度を連続的に測定する測定手段2と、試料ガスを測定手段2に供給する試料ガス供給流路3と、ゼロガスを測定手段2に供給するゼロガス供給流路4と、スパンガスを測定手段2に供給するスパンガス供給流路5と、試料ガス供給流路3、ゼロガス供給流路4またはスパンガス供給流路5が測定手段2と連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換える流路切換手段6と、測定手段2で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る補正手段7と、測定手段2からガスを排出する排出手段8と、演算部9とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素酸化物(NO)や硫黄酸化物(SO)などの大気汚染物質の濃度を測定するガス計測器に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物(NO)や硫黄酸化物(SO)などの大気汚染物質による大気汚染は、常時監視することが望ましい。
【0003】
常時監視測定装置においては、外気温、気圧などの環境要因により、ゼロドリフトおよびスパンドリフトが生じるので、定期的にゼロ校正およびスパン校正を行う必要がある。
【0004】
非特許文献1は、常時監視測定機に関する保守点検要領を開示し、たとえば、窒素酸化物(NO)自動測定機や二酸化硫黄(SO)自動測定機においては、ゼロ校正は1〜2週間、スパン校正は2週間〜1月に一度の頻度で行うことが望ましいとしている。
【0005】
【非特許文献1】環境省監修環境大気常時監視マニュアル 第5版 平成19年3月、環境省水・大気環境局大気環境課
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の頻度でゼロ校正およびスパン校正を行っても、刻一刻変化する環境要素(気温、気圧など)に応じた計測を行うことはできない。よってさらに高い頻度でゼロ校正およびスパン校正をすることが望ましいが、1回のゼロ校正およびスパン校正に要する時間は、通常1時間程度であり、その間のデータが欠測してしまうので、頻度を高くすると大気汚染を常時監視することができない。
【0007】
本発明の目的は、校正の頻度および測定の正確さが高く、データの欠測がないガス計測器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガス濃度を連続的に測定する測定手段と、
試料ガスを前記測定手段に供給する試料ガス供給流路と、
ゼロガスを前記測定手段に供給するゼロガス供給流路と、
スパンガスを前記測定手段に供給するスパンガス供給流路と、
前記試料ガス供給流路、前記ゼロガス供給流路または前記スパンガス供給流路が前記測定手段と連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換える流路切換手段と、
前記測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る補正手段とを含むことを特徴とするガス計測器である。
【0009】
また本発明は、前記測定手段から、連続的にガスを排出し、ラインにガスを滞留させないようにする排出手段を1ライン以上含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記補正手段は、前記測定手段で測定した最新のゼロガス測定信号値および最新のスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、最新の試料ガス測定信号値を補正して最新の試料ガス測定値を得ることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値の移動平均を算出して、ゼロガス平均値およびスパンガス平均値を得るゼロスパン平均手段を含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記ゼロスパン平均手段は、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のうち外れ値を除外してから、移動平均を算出することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、環境大気中の窒素酸化物を測定することを特徴とする。
また本発明は、環境大気中の二酸化硫黄を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガス濃度を連続的に測定する測定手段と、試料ガスを測定手段に供給する試料ガス供給流路と、ゼロガスを測定手段に供給するゼロガス供給流路と、スパンガスを前記測定手段に供給するスパンガス供給流路と、試料ガス供給流路、ゼロガス供給流路またはスパンガス供給流路が測定手段と連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換える流路切換手段と、測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る補正手段とを含む。
【0015】
30秒以下の時間間隔で各流路を切り換えて、ゼロガス、スパンガスおよび試料ガスをそれぞれ測定手段に供給し、それぞれの測定信号値を連続的に測定することができる。また測定と並行してゼロ校正およびスパン校正を行い、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得ることができる。このように測定、校正、補正を並行して連続的に行うことができるので、校正の頻度および測定の正確さが向上し、データの欠測もなくなる。
【0016】
また本発明によれば、測定手段から、連続的にガスを排出し、ラインにガスを滞留させないようにする排出手段を1ライン以上含むことが好ましい。連続的に常に新たなガスを測定手段内に充填させることが可能になるので、ラインにガスを滞留させないで、より短い時間間隔で各流路を切り換えることが可能になり、より効率的に測定することができる。
【0017】
また本発明によれば、補正手段は、測定手段で測定した最新のゼロガス測定信号値および最新のスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、最新の試料ガス測定信号値を補正して最新の試料ガス測定値を得ることが好ましい。短い周期で、常に最新のゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値からゼロ校正およびスパン校正を行うので、得られる試料ガス測定値の正確さが向上する。
【0018】
また本発明によれば、測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値の移動平均を算出して、ゼロガス平均値およびスパンガス平均値を得るゼロスパン平均手段を含むことが好ましい。
【0019】
このように測定、校正、補正を並行して連続的に行うことができるので、校正の頻度および測定の正確さが向上し、データの欠測もなくなる。
【0020】
また本発明によれば、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のうち外れ値を除外してから、移動平均を算出することが好ましい。複数のゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のうち、値が他のものから大きく外れたゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値を除外するので、得られる試料ガス測定値の正確さがさらに向上する。
【0021】
また本発明によれば、環境大気中の窒素酸化物(NO)を測定することが好ましい。NO(NOおよびNO)を正確に測定することができる。
【0022】
また本発明によれば、環境大気中の二酸化硫黄(SO)を測定することが好ましい。SOを正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明のNO計測器1を示す概略図である。NO計測器1は、ガス濃度を連続的に測定する測定手段2と、試料ガスを測定手段2に供給する試料ガス供給流路3と、ゼロガスを測定手段2に供給するゼロガス供給流路4と、スパンガスを測定手段2に供給するスパンガス供給流路5と、試料ガス供給流路3、ゼロガス供給流路4またはスパンガス供給流路5が測定手段2と連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換える流路切換手段6と、測定手段2で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る補正手段7と、測定手段2からガスを排出する排出手段8と、演算部9とを含む。
【0024】
30秒以下の時間間隔で各流路を切り換えて、ゼロガス、スパンガスおよび試料ガスをそれぞれ測定手段2に供給し、それぞれの測定信号値を連続的に測定することができる。また測定と並行してゼロ校正およびスパン校正を行い、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得ることができる。このように測定、校正、補正を並行して連続的に行うことができるので、校正の頻度および測定の正確さが向上し、データの欠測もなくなる。
【0025】
測定手段2は化学発光方式(JIS B7953参照)を用いており、オゾン(O)発生器11、反応槽12、光電測光部13、増幅器14を含む。測定手段2は、化学発光法によってガスが含有する一酸化窒素(NO)および二酸化窒素(NO)の測定信号値を連続測定する。ガス中のNOとOとの反応によって生じる化学発光強度がNO濃度([NO])と比例関係にあることを利用して、ガス中の[NO]を測定する。
【0026】
なおNOを測定する場合はガスを、後述するコンバータ17に通して、ガス中のNOをNOに変換(還元)し、コンバータ17を通過したガス中の[NO]を測定する。コンバータ17を通過したガス中の[NO]はガス中のNO濃度([NO])に等しい。[NO]からコンバータ17を通さない場合の[NO]を差し引いて、下記式(1)により[NO]を求める。
[NO]=[NO]−[NO] …(1)
【0027】
発生器11は、O源ガス(オゾンを発生するための酸素(O)またはOを含むガス)中のOをOに変換するもので、O励起エネルギー源として無声放電または紫外線ランプなどを用いる。O発生器11からオリフィス36を通過してOが反応槽12に供給されることが好ましい。反応槽12は、試料ガスとOを含むガスとが流入して、混合接触して化学発光が生じる部分で、内圧条件によって減圧形および常圧形があり、指示安定のため通常一定温度を保持している。光電測光部13は、化学発光を選択的に透過させる光学フィルタを介して反応槽12に接し、化学発光を受光して必要なレベルの電気信号に変換する部分で、通常光電子増倍管を用いる。増幅器14は、上記式(1)によって[NO]を得るために用いる。
【0028】
NOx計測器1で用いる主要な流路である、試料ガス供給流路3、ゼロガス供給流路4およびスパンガス供給流路5には、NOの吸着および分解の少ない材質、たとえば四ふっ化エチレン樹脂、ガラスなどを用いる。
【0029】
試料ガス供給流路3は、フィルタ16と、試料ガスがコンバータ17(試料ガス中のNOをNOに変換する部分)を通過するNOガス供給流路3aと、通過しないNOガス供給流路3bとを含む。フィルタ16よりも下流でかつコンバータ17よりも上流に位置する分岐点18において、NOガス供給流路3aとNOガス供給流路3bとに分岐している。フィルタ16は、試料ガス中の粉塵を除去するためのもので、NOの吸着の少ない材質、たとえば四ふっ化エチレン樹脂を用いる。
【0030】
なおNOを測定する場合はガスを、コンバータ17に通して、ガス中のNOをNOに変換(還元)し、コンバータ17を通過したガス中の[NO]を測定する。コンバータ17を通過したガス中の[NO]はガス中のNO濃度([NO])に等しい。[NO]からコンバータ17を通さない場合の[NO]を差し引いて、上記式(1)により[NO]を求める。
【0031】
ゼロガス供給流路4は、測定手段2にゼロガスを供給する。ゼロガスとは、NO計測器1の最小目盛値を校正するのに用いるガスである。
【0032】
スパンガス供給流路5は、測定手段2にスパンガスを供給する。スパンガスとは、NO計測器1の最大目盛値を校正するのに用いるガスである。
【0033】
流路切換手段6は、NOガス切換弁21と、NOガス切換弁22と、ゼロガス切換弁23と、スパンガス切換弁24と、オリフィス31〜35と、制御部(不図示)とを含む。NOガス切換弁21は、試料ガス供給流路3のNOガス供給流路3aと測定手段2との間に位置する。NOガス切換弁22は、NOガス供給流路3bと測定手段2との間に位置する。ゼロガス切換弁23は、ゼロガス供給流路4と測定手段2との間に位置する。スパンガス切換弁24は、スパンガス供給流路5と測定手段2との間に位置する。
【0034】
切換弁は、三方弁である。三方弁は3方向に流体の出入口を有し、本実施の形態では、流路を切り換える役割を果たす。切換弁のAラインからガスが導入され、通電していない時はBラインおよびAラインが通じており、オリフィスを通過してポンプにより排気されている。通電時はCラインおよびAラインが連通しており、ガスはオリフィスを通過して、測定手段2に導入され測定される。このように測定時は、測定手段2に導入されるが、それ以外のときは、常時ガスを滞留させること無く、排気されている。こうしてゼロガス、スパンガス、試料ガスの応答速度を上げることにより、短い時間で切換弁を切り替えている。
【0035】
制御部は、いずれか1つの流路が測定手段2に連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換え、30秒以下の時間間隔でゼロガス、スパンガスおよび試料ガス(NOガス、NOガス)を測定手段2の反応槽12に供給して測定信号の測定を行う。
電気的な応答を速くするために、アンプの時定数を0.1秒以下にするとともに、CPUの取り込み速度も0.1秒以下にしている。反応槽12および流路径を最小にすることとによって、流体の応答を早くして、時間応答性を実現している。たとえば反応槽12の容積は、10〜20mlであり、流路径は、1〜3mmであることが好ましい。
【0036】
切換弁の切換の応答時間は、60秒以下であることが好ましく、さらには10秒以下であることが好ましい。
【0037】
JIS B7953において、化学発光式NO計について応答時間が規定されており、4分以内の応答時間が求められている。JIS B7953における試験方法においては、試料ガス導入口直後からガスを入れ替えた時の応答時間であるので、切換弁の切り換え時の応答時間とは異なるが、当然それよりもはるかに、応答時間を早くする必要があるからである。
【0038】
たとえば、1分間隔で切換弁を切り換えると4分以上の周期で試料ガスを測定することになり、これでは応答時間4分以下を満足できない。よって60秒以下であることが望ましく、さらには10秒以下ならば、1サイクルが40秒となり、1分以下の時間分解能で測定することが可能となる。
【0039】
排出手段8は、排出流路26とポンプ27を含む。排出流路26は、NOガス切換弁21、NOガス切換弁22、ゼロガス切換弁23およびスパンガス切換弁24とポンプ27とをつなぐ弁排出流路26a、ならびに反応槽12とポンプ27とをつなぐ槽排出流路26bを含んで構成される。排出流路26には、NOの吸着および分解の少ない材質、たとえば四ふっ化エチレン樹脂、ガラスなどを用いる。
【0040】
ポンプ27は、試料ガス、ゼロガスおよびスパンガスを連続的に通気するために使用するものである。ポンプ27が有するダストフィルタに粉塵が付着して通気抵抗が増しても、規定の流量が維持できるように、吸引力に余裕のあるものを用いる。
【0041】
測定手段2から連続的にガスを排出し、ラインにガスを滞留させないようにする排出手段8を1ライン以上含むことが好ましい。連続的に常に新たなガスを測定手段2内に充填させることが可能になるので、ラインにガスを滞留させないで、より短い時間間隔で各流路を切り換えることが可能になり、より効率的に測定することができる。
【0042】
補正手段7によって、後述する方法で、測定手段2で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る。
【0043】
演算部9によって、ゼロガス、スパンガス、NO、NOの測定および補正後に、後述する演算を行い、NO濃度、NO濃度およびNO濃度の平均値を得る。演算部9は、具体的には中央演算処理装置(CPU;Central Processing Unit)等で構成されており、ハードウェア各部を制御すると共に、格納された演算プログラムに従って、データ演算を行い、平均値を算出する。
【0044】
また、補正手段7によって補正を行うに先立って、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値の平均化をおこなってもよい。この平均化は、ゼロスパン平均手段(不図示)によって行われる。測定と並行してゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値の移動平均を算出して、得られたゼロガス平均値およびスパンガス平均値から校正を行い、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得ることによっても、測定、校正、補正を並行して連続的に行うことができるので、校正の頻度および測定の正確さが向上し、データの欠測もなくなる。
【0045】
以下、補正手段7、演算部9およびゼロスパン平均手段(不図示)によってNO濃度、NO濃度およびNO濃度の試料ガス測定値を得る複数の実施形態について説明する。
【0046】
[第1実施形態]
図2は、本発明のNO計測器1による第1実施形態を説明する図である。図示するグラフは、横軸が時間(単位:秒)、縦軸が測定信号値(単位:ppb)を表す。
【0047】
10秒毎に測定するゼロガス、スパンガス、NO、NOの測定信号値を、Zero(n),Span(n),NO(n)およびNOx(n)とし、NO、NOの試料ガス測定値を、[NO]nおよび[NOx]nとし、[NO]0〜[NO]nおよび[NOx]0〜[NOx]nの平均値を、[NO]および[NOx]とする。nは、0以上の整数であり、たとえばNO(n)は、(n+1)回目の測定におけるNOの試料ガス測定信号値を示す。また[NO]nは、(n+1)回目の補正後のNOの試料ガス測定値を示す。
【0048】
第1実施形態では、逐次濃度演算法を用いており、ゼロガス、スパンガス、NO、NOのいずれかを測定する毎に、最新の組み合わせを用いて[NO]および[NOx]を求める。
【0049】
〔補正〕
10秒毎にZero(0),Span(0),NO(0),NOx(0)を測定し、Zero(0)−Span(0)−NO(0)−NOx(0)のデータセットで補正を行い、[NO]0および[NOx]0を得る。次の10秒で追加測定するZero(1)を用いた、Span(0)−NO(0)−NOx(0)−Zero(1)のデータセットで新たな[NO]1および[NOx]1を得、NO(0)−NOx(0)−Zero(1)−Span(1)のデータセットで新たな[NO]2および[NOx]2を、Zero(1)−Span(1)−NO(1)−NOx(1)のデータセットで新たな[NO]3および[NOx]3を、繰り返し得る。
【0050】
このように測定手段で測定した最新のZero(n)および最新のSpan(n)から校正を行い、校正結果に基づいて、最新のNO(n)およびNOx(n)を補正して最新の[NO]nおよび[NOx]nを得ることによって、短い周期で、常に最新の測定信号値からゼロ校正およびスパン校正を行うので、[NO]nおよび[NOx]nの正確さが向上する。
【0051】
〔演算〕
10秒毎に更新する[NO]nおよび[NOx]nの移動平均値を下記式(2)および(3)によって算出して、平均値である[NO]および[NOx]を得る。
[NO]=([NO]0+[NO]1+[NO]2+[NO]3+・・・+[NO]n)/(n+1) …(2)
[NOx]=([NOx]0+[NOx]1+[NOx]2+[NOx]3+・・・+[NOx]n)/(n+1)…(3)
【0052】
これによって連続計測および並行校正が可能になり、欠測なしに実サンプル時間を維持しつつ、ゼロドリフトおよびスパンドリフトを補償する安定性の優れた大気中窒素酸化物計測器となる。
【0053】
このように[NO]0〜[NO]nおよび[NOx]0〜[NOx]nの移動平均値を算出して平均値[NO]および[NOx]を得る演算手段を含むことによって、複数の試料ガス測定値を平均化するので、平均値の正確さが向上する。
【0054】
[第2実施形態]
第2実施形態では、個別移動平均法を用いており、ゼロガス、スパンガス、NO、NOの4つのセットを測定する毎に、最新のセットを用いて[NO]および[NOx]を求める。
【0055】
〔補正〕
10秒毎にZero(0),Span(0),NO(0),NOx(0)を測定し、Zero(0)−Span(0)−NO(0)−NOx(0)のデータセットで補正を行い、[NO]0および[NOx]0を得る。次にZero(1),Span(1),NO(1),NOx(1)を測定し、Zero(1)−Span(1)−NO(1)−NOx(1)のデータセットで補正を行い、[NO]および[NOx]を得る。次にZero(2),Span(2),NO(2),NOx(2)を測定し、Zero(2)−Span(2)−NO(2)−NOx(2)のデータセットで補正を行い、[NO]2および[NOx]2を得る。これを繰り返し行い、Zero(n),Span(n),NO(n),NOx(n)を測定し、Zero(n)−Span(n)−NO(n)−NOx(n)のデータセットで補正を行い、[NO]nおよび[NOx]nを得る。
【0056】
このように測定手段で測定した最新のZero(n)および最新のSpan(n)から校正を行い、校正結果に基づいて、最新のNO(n)およびNOx(n)を補正して最新の[NO]nおよび[NOx]nを得ることによって、短い周期で、常に最新の測定信号値からゼロ校正およびスパン校正を行うので、[NO]nおよび[NOx]nの正確さが向上する。
【0057】
〔演算〕
40秒毎に更新する[NO]nおよび[NOx]nの移動平均値を上記式(2)および(3)によって算出して、[NO]および[NOx]を得る。
【0058】
このように[NO]0〜[NO]nおよび[NOx]0〜[NOx]nの移動平均値を算出して平均値[NO]および[NOx]を得る演算手段を含むことによって、複数の試料ガス測定値を平均化するので、平均値の正確さが向上する。
【0059】
[第3実施形態]
第3実施形態では、ゼロスパン移動平均法を用いており、ゼロガス、スパンガス、NO、NOを測定して、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のそれぞれの平均値を用いて[NO]および[NOx]を求める。
【0060】
〔ゼロスパン平均〕
10秒毎にZero(0),Span(0),N O(0),NOx(0)を測定し、次にZero(1),Span(1),NO(1),NOx(1)を測定し、Zero(2),Span(2),NO(2),NOx(2)を測定する。これを繰り返し行い、Zero(n),Span(n),NO(n),NOx(n)を測定し、ゼロ、スパンのみの移動平均値を算出して、ゼロガス平均値Zeroave(0)およびスパンガス平均値Spanave(0)を得る。
【0061】
Zero(1)〜Zero(n)およびSpan(1)〜Span(n)の移動平均値を算出して、得られたZeroa ve(0)およびSpanave(0)から校正を行い、NO(n+1)およびNOx(n+1)を補正して試料ガス測定値を得ることができる。このように測定、校正、補正を並行して連続的に行うことができるので、校正の頻度および測定の正確さが向上し、データの欠測もなくなる。
【0062】
またZero(1)〜Zero(n)およびSpan(1)〜Span(n)のうち外れ値を除外してから、移動平均値Zeroave(0)およびSpanave(0)を算出することが好ましい。複数のゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のうち、値が他のものから大きく外れたゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値を除外するので、試料ガス測定値の正確さがさらに向上する。たとえば10%以上の外れ値を除外することが好ましい。
【0063】
また外れ値として、Zero(1)〜Zero(n)およびSpan(1)〜Span(n)のうち最大値と最小値とを除外してもよい。値のばらつきを低減して、試料ガス測定値の正確さがさらに向上する。
【0064】
〔補正〕
次にNO(n+1),NOx(n+1)を測定した時点で、Zeroave(0)およびSpanave(0)を用いて、Zeroave(0)−Spanave(0)−NO(n+1)−NOx(n+1)のデータセットで補正を行い、[NO]0および[NOx]0を得る。次にZero(n+1),Span(n+1)を測定し、新たなZeroave(1)およびSpanave(1)を算出して[NO]1および[NOx]1を得る。
【0065】
このように測定手段で測定した最新のZero(n)および最新のSpan(n)から校正を行い、校正結果に基づいて、最新のNO(n)およびNOx(n)を補正して最新の[ NO]nおよび[NOx]nを得ることによって、短い周期で、常に最新の測定信号値からゼロ校正およびスパン校正を行うので、[NO]nおよび[NOx]nの正確さが向上する。
【0066】
〔演算〕
このように更新する[NO]nおよび[NOx]nの移動平均値を上記式(2)および(3)によって算出して、[NO]および[NOx]を得る。
【0067】
この場合の更新時間は個々に設定可能である。つまり、設定に応じて、ゼロガスおよびスパンガスの移動平均値を算出するタイミングを変更することができる。
【0068】
このように[NO]0〜[NO]nおよび[NOx]0〜[NOx]nの移動平均値を算出して平均値[NO]および[NOx]を得る演算手段を含むことによって、複数の試料ガス測定値を平均化するので、平均値の正確さが向上する。
【0069】
第1〜第3実施形態におけるNO計測器1の動作について説明する。ゼロガスを測定するときは、ゼロガス切換弁23によってゼロガス供給流路4と反応槽12とが連通していて、NOガス切換弁21、NOガス切換弁22およびスパンガス切換弁24は、試料ガス供給流路3およびスパンガス供給流路5と反応槽12とを遮断する。
【0070】
このように切換弁によって、ゼロガス供給流路4、スパンガス供給流路5、NOガス供給流路3b、NOガス供給流路3aが順に反応槽12に連通し、ゼロガス、スパンガス、NO、NOを順に反応槽12に充填して、Oと反応させ、化学発光強度(NO測定信号値)を測定する。増幅器14によってNO測定信号値を得る。補正手段7によって測定信号値を補正して試料ガス測定値を得、試料ガス測定値を演算手段9によって演算して、平均値を得る。なお第3実施形態では、補正に先立って、ゼロスパン平均手段によって、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値が平均化される。
【0071】
[第4実施形態]
第4実施形態では、ゼロスパン回数可変法を用いており、ゼロガス、スパンガス、NO、NOを測定する際に、ゼロガスおよびスパンガスの測定回数を減らして、[NO]および[NOx]を求める。
【0072】
Zero(n),Span(n),NO(n),NOx(n)を毎回必ず測定するのではなく、NO(n),NOx(n)を繰り返し測定している間に、Zero(n),Span(n)を織り込んで測定する。
【0073】
たとえばNOおよびNOを7回測定毎にゼロガスおよびスパンガスを1回測定してもよい。Zero(0),Span(0),NO(0),NOx(0),NO(1),NOx(1),NO(2),NOx(2),NO(3),NOx(3),NO(4),NOx(4),NO(5),NOx(5),NO(6),NOx(6),Zero(1),Span(1),NO(7),NOx(7),NO(8),NOx(8),NO(9),NOx(9),NO(10),NOx(10),NO(11),NOx( 11),NO(12),NOx(12),NO(13),NOx(13),NO(2),NOx(2)のように移動平均時間繰り返してから、上記第1〜第3実施形態のいずれかと同様にして、[NO]および[NOx]を得る。
【0074】
第4実施形態におけるNO計測器1の動作について説明する。切換弁によって、ゼロガス供給流路4、スパンガス供給流路5、NOガス供給流路3b、NOガス供給流路3aが順に反応槽12に連通し、ゼロガス、スパンガス、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、ゼロガス、スパンガス、三点の順に反応槽12に充填して、Oと反応させ、化学発光強度(NO測定信号値)を測定する。
【0075】
[第5実施形態]
第5実施形態では、ゼロスパン独立測定法を用いており、ゼロガス、スパンガス、NO、NOを測定する際に、ゼロガスおよびスパンガスの測定回数を減らして、しかもゼロガス、スパンガスの測定をそれぞれ異なるタイミングで行いながら、[NO]および[NOx]を求める。
【0076】
Zero(n),Span(n),NO(n),NOx(n )を毎回必ず測定するのではなく、Zero(n),Span(n)を独立して測定することで、NO(n),NOx(n)を繰り返し測定している間に、Zero(n),Span(n)を独立して織り込んで測定する。
【0077】
たとえばNO、NOを5回測定した後にゼロガス1回測定し、さらにNO、NOを5回測定した後にスパンガス1回測定してもよい。Zero(0),Span(0),NO(0),NOx(0),NO(1),NOx(1),NO(2),NOx(2),NO(3),NOx(3),NO(4),NOx(4),Z ero(1),NO(5),NOx(5),NO(6),NOx(6),NO(7),NOx(7),NO(8),NOx(8),NO(9),NOx(9),Span(1),NO(10),NOx(10 ),NO(11),NOx(11),NO(12),NOx(12),NO(13),NOx(13),NO(14),NOx(14),Zero(2),NO(15),NOx(15),NO(16),NOx(16),NO(17),NOx(17),NO(18),NOx(18),NO(19),NOx(19),Span(2)のように移動平均時間繰り返してから、上記第1〜第3実施形態のいずれかと同様にして、[NO]および[NOx]を得る。
【0078】
第5実施形態におけるNO計測器1の動作について説明する。切換弁によって、ゼロガス供給流路4、スパンガス供給流路5、NOガス供給流路3b、NOガス供給流路3aが順に反応槽12に連通し、ゼロガス、スパンガス、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、ゼロガス、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、NO、スパンガス、…の順に反応槽12に充填して、Oと反応させ、化学発光強度(NO測定信号値)を測定する。
【0079】
[第6実施形態]
第6実施形態では、ある一定時間のみ、第1〜第5実施形態のような測定を行う。
連続測定中に、上記第1〜第5実施形態による測定を数時間に1時間行い、残りの時間は試料ガスの測定のみを行うこともできる。たとえば6時間に1時間だけ、上記第1〜第5実施形態による測定を行い、残りの5時間については試料ガスの測定のみを行う。このような方法によっても、校正の頻度を確保することができる。
【0080】
第1〜第6実施形態いずれにおいても、得られた試料ガス測定値である[NO]および[NOx]から、上記式(1)に基づいて、[NO2]を計算する。
【0081】
図3は、本発明の二酸化硫黄(SO)計測器40を示す概略図である。上述したNO計測器1と異なる構成のみを以下に説明する。
【0082】
測定手段2は紫外線蛍光方式(JIS B7952参照)を用いており、蛍光室41、光源部42、測光部43、増幅器44を含む。試料ガスに比較的波長の短い紫外線(通常220nmの波長の紫外線を励起光として使用)を照射すると、これを吸収して励起したSO分子が、基底状態に戻るときに蛍光を発する。この蛍光の強度はSO濃度に比例しているため蛍光強度を測定することによって、試料ガス中のSO濃度を求めることができる。
【0083】
蛍光室41は、試料ガスが流入して、光源部42から集光レンズ、波長選択用光学フィルタを介して入射した紫外線によって試料ガス中のSOが励起して、蛍光を効率的に発する構成になっている。光源部42は、放電などによって紫外線を放射する。測光部43は、励起光を通さず、SOの蛍光を選択的に透過させる光学フィルタを介して蛍光室41に接し、蛍光を受光して必要なレベルの電気信号に変換する。増幅器44は、[SO]を得るために用いる。
【0084】
SOガス供給流路3cは、上述のNO計測器1のようにコンバータ17を有しておらず、分岐もしていない。
【0085】
同様に、SO計測器40についても、上記の第1〜第6実施形態と同様に、連続校正および連続計測が可能である。第1〜第6実施形態において、NO(n)をSO2(n)とし、NOx(n)を省くことによって、実施可能である。
(実施例)
NO計測器1を、第1実施形態の方法で24時間作動させた。図4は、作動時の室内温度の変動を示すグラフである。横軸は時刻(単位:時)を、縦軸は温度(単位:℃)を示す。温度調整は特にしておらず、室内温度は、約30℃から約38℃の間で推移していた。
図5は、作動時の測定信号値および試料ガス測定値の変動を示すグラフである。横軸は時刻(単位:時)、縦軸は測定信号値または試料ガス測定値(単位:ppb)を示す。測定信号値は、ゼロガス測定信号値、スパンガス測定信号値および試料ガス測定信号値をそれぞれ示す。図5に示すように、試料ガス測定信号値は、温度の変動に伴って、ドリフトした。そこで、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値により校正を行い、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得た。試料ガス測定信号値および試料ガス測定値の平均値(ppb)、標準偏差(ppb)、最大値(ppb)、最小値(ppb)、相対標準偏差(%)を表1に示す。試料ガス測定値は、試料ガス測定信号値に比べると、標準偏差および相対標準偏差が小さくなっているので、温度変動に伴うドリフトが軽減されていることがわかった。
【0086】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のNO計測器1を示す概略図である。
【図2】本発明のNO計測器1による第1実施形態を説明する図である。
【図3】本発明のSO計測器40を示す概略図である。
【図4】作動時の室内温度の変動を示すグラフである。
【図5】作動時の測定信号値および試料ガス測定値の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0088】
1 NO計測器
2 測定手段
3 試料ガス供給流路
3a NOガス供給流路
3b NOガス供給流路
3c SOガス供給流路
4 ゼロガス供給流路
5 スパンガス供給流路
6 流路切換手段
7 補正手段
8 排出手段
9 演算部
11 O発生器
12 反応槽
13 光電測光部
14,44 増幅器
16 フィルタ
17 コンバータ
18 分岐点
21 NOガス切換弁
22 NOガス切換弁
23 ゼロガス切換弁
24 スパンガス切換弁
25 SOガス切換弁
26 排出流路
26a 弁排出流路
26b 槽排出流路
27 ポンプ
31〜36 オリフィス
40 SO計測器
41 蛍光室
42 光源部
43 測光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス濃度を連続的に測定する測定手段と、
試料ガスを前記測定手段に供給する試料ガス供給流路と、
ゼロガスを前記測定手段に供給するゼロガス供給流路と、
スパンガスを前記測定手段に供給するスパンガス供給流路と、
前記試料ガス供給流路、前記ゼロガス供給流路または前記スパンガス供給流路が前記測定手段と連通するように、30秒以下の時間間隔で各流路を切り換える流路切換手段と、
前記測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、試料ガス測定信号値を補正して試料ガス測定値を得る補正手段とを含むことを特徴とするガス計測器。
【請求項2】
前記測定手段から、連続的にガスを排出し、ラインにガスを滞留させないようにする排出手段を1ライン以上含むことを特徴とする請求項1に記載のガス計測器。
【請求項3】
前記補正手段は、前記測定手段で測定した最新のゼロガス測定信号値および最新のスパンガス測定信号値から校正を行い、校正結果に基づいて、最新の試料ガス測定信号値を補正して最新の試料ガス測定値を得ることを特徴とする請求項1または2に記載のガス計測器。
【請求項4】
前記測定手段で測定したゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値の移動平均を算出して、ゼロガス平均値およびスパンガス平均値を得るゼロスパン平均手段を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のガス計測器。
【請求項5】
前記ゼロスパン平均手段は、ゼロガス測定信号値およびスパンガス測定信号値のうち外れ値を除外してから、移動平均を算出することを特徴とする請求項4に記載のガス計測器。
【請求項6】
環境大気中の窒素酸化物を測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のガス計測器。
【請求項7】
環境大気中の二酸化硫黄を測定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のガス計測器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−42184(P2009−42184A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210352(P2007−210352)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】