説明

ガス計測基板ユニット及びガス計測システム並びにガス計測基板ユニットの製造方法

【課題】ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜を集積化させ、小型で、かつ、低コストのガス計測基板ユニットを得る。
【解決手段】一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、それぞれの前記ガス吸着膜における電気的出力値を検出するための電気配線とを含むガス計測基板ユニットにおいて、相隣る前記ガス吸着膜の間に断熱部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス計測基板ユニット及びガス計測システム並びにガス計測基板ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境計測、医療分野、食品産業などにおいて、揮発性物質(匂い)の計測(ガス計測)に対するニーズが高まっている。
【0003】
環境計測では、工業地域、商業地域、住宅地域など、幅広い地域で多点同時計測することにより、汚染の発生源の特定や、汚染の拡散状況などがわかり、具体的な対策に繋がる。
【0004】
医療分野では、病気にかかると特定の物質が体内より揮発されることが分かり始めており、口臭や体臭を計測することで病気の早期発見が可能となる。予防医療という観点からは、体調やストレスの掛かり具合によっても口臭や体臭が変化することが知られており、日常的に計測することでの日々の生活を管理して体調を維持する試みも始まっている。
【0005】
食品産業では、産地により食品から揮発する物質が異なることや鮮度により揮発物質が変化することから、産地や鮮度の偽装などを見破り、安全性を高めることが可能となる。
【0006】
ただ、現状では、これらを実現するだけの揮発性物質の選択性や測定精度を実現するには、高価で大型の装置が必要となるため、その場で直ぐに計測といったことが困難である。そのため、安価で、かつ、携帯してその場分析を行うことが可能な計測装置の開発が求められている。
【0007】
これを実現する一方式として考えられているものが、人間が匂いを感じるときのやり方を真似た方式である。
【0008】
例えば、非特許文献1には、ガスに含まれる化学物質の種類により検出特性の異なる複数のセンサの出力を用いて出力マップを作成し、そのマップのパターンから匂いの種類を特定する方法が記載されている。
【0009】
これは、ある特定の環境下に置かれた特定の物質が放つ揮発性物質が、その揮発性物質特有のマップパターンを形成することを利用した技術である。ここで用いられるセンサとしては、半導体ガスセンサ、固体電解質ガスセンサ、水晶振動子ガスセンサなどがある。
【0010】
特許文献1には、匂い物質吸着膜への匂い物質の吸着による共振周波数の変化に基づき前記匂い物質を検出する匂いセンサにおいて、水晶振動子若しくは表面弾性波素子と、この水晶振動子若しくは表面弾性波素子の一方若しくは両方の側に形成され、ポリ塩化ビニル、可塑剤及び脂質から構成される前記匂い物質吸着膜とを備えたことを特徴とする匂いセンサが開示されている。
【0011】
計測の選択性、再現性、精度などを得るために数十個のセンサを用いることもあるが、一般的には10個以下のセンサにより構成される。計測装置のサイズとしては、卓上型までは小型化が進んでいる。
【0012】
また、センサ本体(センサヘッド)自体の小型化も進んでいる。
【0013】
特許文献2には、スリットにより隔離されn個の振動領域を有する1枚の水晶振動子と、上記n個の振動領域の一方の面に設けられ、共通接続されている第1の励振電極と、上記n個の振動領域の他方の面に設けられ、前記n個の振動領域が互いに異なる共振周波数となるようにその厚みが設定されている第2の励振電極と、少なくとも上記第2の励振電極に対しては、振動領域毎に異なる種類の匂い吸着物質が塗布されていることを特徴とする匂い物質センサが開示されている。
【0014】
特許文献3には、ガス応答特性の異なる2個以上のガスセンサを含み、前記ガスセンサは絶縁基板上に形成された2個以上の電極間に導電性高分子からなる感応膜が設けられ、その感応膜にガス中の測定対象成分が付着した際の前記電極間の電気的変化により測定対象成分を測定するものであるガス測定装置の製造方法において、前記ガスセンサの少なくとも1個は、その製造工程で導電性高分子膜を重合させる過程においてその重合条件を調節することにより他のガスセンサとは異なったガス応答特性をもたせることを特徴とするガス測定装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平7−159304号公報
【特許文献2】特許第3499277号公報
【特許文献3】特許第4042810号公報
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】季刊/化学総説「味とにおいの分子認識」No.40、1999年2月、社団法人日本化学会著、学会出版センター発行、215〜223頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜を集積化させ、小型で、かつ、低コストのガス計測基板ユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のガス計測基板ユニットは、一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、それぞれの前記ガス吸着膜における電気的出力値を検出するための電気配線とを含むガス計測基板ユニットであって、相隣る前記ガス吸着膜の間に断熱部を設けたことを特徴とする。
【0019】
本発明のガス計測システムは、上記のガス計測基板ユニットからの前記電気的出力値とデータベースに保存されている数値とを対比した結果に基づいて前記化学物質の種類及び/又は濃度を特定する計算部を有することを特徴とする。
【0020】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法は、一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、電気配線とを含むガス計測基板ユニットの製造方法であって、前記基板の表面に同一種類のガス吸着膜前駆体を、間隔をあけて形成する工程と、間隔をあけて形成された前記ガス吸着膜前駆体に対して、それぞれ、異なる加熱温度条件及び/又は異なる雰囲気条件で熱処理を行うことにより、複数の前記ガス吸着膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜を集積化させ、小型で、かつ、低コストのガス計測基板ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による実施例のガス計測基板ユニットの全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】本発明による実施例のガス計測基板ユニットの製造工程を示すフローチャートである。
【図3A】図1のガス計測基板ユニットの両持ち梁部を示す拡大斜視図である。
【図3B】熱処理を行う前における両持ち梁部の変形例を示す部分断面図である。
【図3C】熱処理を行う前における両持ち梁部の変形例を示す部分断面図である。
【図3D】熱処理を行う前における両持ち梁部の変形例を示す部分断面図である。
【図4】本発明による実施例のガス計測基板ユニットに内蔵された有機導電膜に流す電流値とその有機導電膜の抵抗値との関係を示すグラフである。
【図5】本発明による実施例のガス計測システムの全体構成を示す概略断面図である。
【図6】化学物質に対する複数のガス吸着膜の特性を表す概念的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、環境、医療、産業分野、民生分野などで計測対象のガスの種類を特定するために用いるガス計測技術に係り、特に計測対象のガスに含まれる化学物質をガス吸着膜で吸着することによりガス吸着膜の特性が変化することを利用したガス計測技術に関する。
【0024】
背景技術において述べたように、計測対象のガスの種類を特定するための計測装置は、ガスセンサの導入により卓上サイズまで小型・低コスト化が進んでいるが、更なる小型・低コスト化を進めるためには、次の技術開発が必要である。
【0025】
現状では、特性の異なる複数のガスセンサを組み合わせて実装することで、化学物質の選択性、再現性及び測定精度を得ているが、更に安価で小型な装置を実現するには、複数のガスセンサを集積化させる必要がある。
【0026】
この点、例えばフォトリソグラフィー技術やスクリーン印刷などの一般的な集積化技術を用いて、例えばガスに含まれる化学物質を吸着するガス吸着膜などのガスセンサを集積化することが考えられる。しかし、ガス計測機能を満たすためには、単に集積化技術を用いて複数のガス吸着膜を集積化するだけでは足りず、ガス吸着特性がそれぞれ異なる複数のガス吸着膜を集積化する必要がある。
【0027】
本発明のガス計測基板ユニットは、基板と、この基板上に互いに間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜とを備えて構成されており、複数のガス吸着膜が計測対象のガスを検知した時のそれぞれのガス吸着量に相関する出力値、例えばガス吸着膜を構造の一部とする構造体の固有振動数の変化に基づいてガスの種類を特定するために用いられるものである。複数のガス吸着膜はそれぞれ計測対象のガスに含まれる化学物質の吸着特性が異なり、かつ化学物質の吸着量に応じて特性が変化するガス吸着膜で形成されている。
【0028】
特に、複数のガス吸着膜はそれぞれ基板に成膜された後の熱処理時の加熱温度及び環境ガスの少なくとも一方の条件を異ならせることによりガス吸着特性を異ならせて形成されたものであることを特徴としている。すなわち、単に集積化技術を用いるだけでは複数のガス吸着膜のガス吸着特性を異ならせることができない。
【0029】
このため、本発明は、複数のガス吸着膜を基板上に互いに間隔をあけて形成した後、それぞれを異なる熱処理条件(加熱温度及び環境ガスの少なくとも一方の条件)で熱処理することによりガス吸着特性を異ならせるものである。その結果、ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜を集積化させて小型・低コスト化を図ることができる。
【0030】
熱処理時に複数のガス吸着膜を加熱するためには、例えばガス吸着膜を形成している部分に選択的に電流を流して発生するジュール熱を利用することができる。具体的には、複数のガス吸着膜ごとにそれぞれ電流値或いは通電時間などを異ならせた電流を流すことにより、各ガス吸着膜に異なるジュール熱を与えることができる。
【0031】
また、基板を、単結晶シリコンで、かつ複数のガス吸着膜が形成される部分が両持ち梁状になるように形成して、単結晶シリコンの両持ち梁部にそれぞれ電流値或いは通電時間などを異ならせた電流を流すことにより、各ガス吸着膜に異なるジュール熱を与えることもできる。
【0032】
また、複数のガス吸着膜のそれぞれに伝熱可能な複数の金属を設けて、この金属ごとにそれぞれ電流値或いは通電時間などを異ならせた電流を流すことにより、各ガス吸着膜に異なるジュール熱を与えることもできる。
【0033】
複数のガス吸着膜は、例えば、フォトリソグラフィー技術、スクリーン印刷法及びインクジェット法のうち、いずれかを用いて成膜することにより集積化を図ることができる。また、ガス吸着膜として、感光性樹脂を用いて成膜した後、熱処理することで炭素質材料とし、ガス吸着膜自体に電流を流してジュール熱を発生させて個別に熱処理することもできる。
【0034】
本発明のガス計測システムは、上述のガス計測基板ユニットと、ガス計測基板ユニットからの出力値(電気的出力値ともいう。)とあらかじめ各種ガスに対応して保存された出力値のデータベースとを対比した結果に基づいてガスの種類を特定する処理回路とを備えた構成となっている。
【0035】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法は、基板上に同一種類のガス吸着膜前駆体を互いに間隔をあけて形成する工程と、形成された各膜をそれぞれ加熱温度及び環境ガスの少なくとも一方の条件を異ならせて熱処理して計測対象のガスに含まれる化学物質の吸着特性を異ならせる工程とを含んでいる。
【0036】
例えば、フォトリソグラフィー技術、スクリーン印刷法、インクジェット法などを用いて同一種類のガス吸着膜前駆体を互いに間隔をあけて形成した後、各ガス吸着膜前駆体をそれぞれ異なる熱処理することにより吸着特性を異ならせることにより、ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜を集積化させて小型・低コスト化を図ることができる。
【0037】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、前記複数のガス吸着膜は、それぞれの前記ガス吸着膜に吸着する化学物質の吸着量に対応する前記電気的出力値を有することを特徴とする。
【0038】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、それぞれの前記ガス吸着膜は、炭化率が異なる炭素質材料を含む構成であることを特徴とする。
【0039】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、前記ガス吸着膜は、前記基板の両持ち梁部の上に形成されていることを特徴とする。
【0040】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、前記電気配線は、前記ガス吸着膜の端部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0041】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、前記ガス吸着膜は、絶縁膜及び/又は膜抵抗とともに前記両持ち梁部に積層された構成であることを特徴とする。ここで、積層の順序は特に限定していない。
【0042】
本発明のガス計測基板ユニットは、前記基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする。ここで、前記基板の全体がシリコンで形成されていると限定するものではない。すなわち、特に、前記基板の、前記ガス吸着膜を形成する面にシリコンで形成することが望ましい。
【0043】
本発明のガス計測基板ユニットにおいて、それぞれの前記ガス吸着膜に接している前記膜抵抗は、抵抗値が異なることを特徴とする。
【0044】
本発明のガス計測基板ユニットにおいては、前記膜抵抗が金属で形成されていることを特徴とする。
【0045】
本発明のガス計測基板ユニットにおいては、前記電気的出力値が、前記ガス吸着膜の抵抗値、誘電率若しくは電位又は前記両持ち梁部の固有振動数であることを特徴とする。
【0046】
本発明のガス計測基板ユニットにおいては、前記断熱部が、穴又は溝であることを特徴とする。
【0047】
本発明のガス計測システムは、上記のガス計測基板ユニットからの前記電気的出力値とデータベースに保存されている数値とを対比した結果に基づいて前記化学物質の種類及び/又は濃度を特定する計算部を有することを特徴とする。
【0048】
本発明のガス計測システムにおいて、前記計算部は、前記複数のガス吸着膜の前記電気的出力値を組み合わせて前記化学物質の種類及び/又は濃度を特定することを特徴とする。
【0049】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法は、一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、電気配線とを含むガス計測基板ユニットの製造方法であって、前記基板の表面に同一種類のガス吸着膜前駆体を、間隔をあけて形成するガス吸着膜前駆体形成工程と、間隔をあけて形成された前記ガス吸着膜前駆体に対して、それぞれ、異なる加熱温度条件及び/又は異なる雰囲気条件で熱処理を行うことにより、複数の前記ガス吸着膜を形成する吸着膜形成工程とを含むことを特徴とする。
【0050】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法においては、一つの前記雰囲気条件で前記熱処理を行わない前記ガス吸着膜前駆体に対して、他の前記雰囲気条件で前記熱処理を行うことを特徴とする。
【0051】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法において、前記加熱温度条件は、前記ガス吸着膜前駆体、前記基板、又は前記基板の表面に形成された膜抵抗に電流を流して発生するジュール熱を用いて設定されることを特徴とする。
【0052】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法においては、前記ガス吸着膜前駆体が感光性樹脂であることを特徴とする。
【0053】
本発明のガス計測基板ユニットの製造方法は、前記ガス吸着膜前駆体形成工程において、フォトリソグラフィー技術、スクリーン印刷法、又はインクジェット法を用いることを特徴とする。
【0054】
以下、本発明のガス計測基板ユニット及びガス計測システム、並びにガス計測基板ユニットの製造方法について実施例を用いて説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。また、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、それぞれの実施例を必要に応じて適宜に組み合わせて用いることができる。
【実施例1】
【0055】
図1は、本発明による実施例のガス計測基板ユニットの全体を示す概略構成図である。
【0056】
本図に示すように、ガス計測基板ユニット10は、単結晶シリコン基板12と、単結晶シリコン基板12の上(表面(ひょうめん))に集積化された複数(本実施例では8種類)のガス吸着膜14(ガスセンサ)とを有する。
【0057】
単結晶シリコン基板12には、長方形のスリット16(穴)が長辺を並べて片側に8個ずつ、合計16個形成されており、2つの対になるスリット16によって8つの両持ち梁18が形成されている。各ガス吸着膜14は、両持ち梁18の上に絶縁膜20を介して形成されている。ここで、このスリット16は、相隣るガス吸着膜14の間に設けた断熱部として機能する。
【0058】
なお、本実施例においては、スリット16は、表から裏まで貫通した貫通孔(穴)であるが、これに限定されるものではなく、表面(おもてめん)に形成された溝であってもよい。また、上記の穴又は溝に、シリコンに比べて熱伝導率が低く、かつ電気抵抗が大きい(電気絶縁性の)セラミックスを充填した構成としてもよい。このセラミックスは、金属の酸化物、炭酸塩、硫酸塩又はリン酸塩であってもよい。
【0059】
ガス吸着膜14は、ガス吸着膜前駆体をパターニングして成膜した後に異なる熱処理条件で処理した膜であり、それぞれ計測対象のガスに含まれる1種類又は複数種類の化学物質の吸着特性が異なり、かつ、化学物質の吸着量に応じて質量、誘電率、電位などの電気特性が変化するものである。
【0060】
すなわち、1個のガス計測基板ユニット10に形成された同一種類のガス吸着膜前駆体を、異なる熱処理条件で処理することにより、それぞれのガス吸着膜14が異なる炭化率を有する炭素質材料となる。すなわち、ガス吸着膜は、炭化率が異なる炭素質材料を含む構成である。
【0061】
それぞれのガス吸着膜14が絶縁膜20を介して成膜してあるシリコン製の両持ち梁18の一方の端部には、絶縁膜20の一部が除去されてそれぞれ電気配線22が接続されており、他方の端部にも絶縁膜20に一部が除去されて共通のアース配線24が接続されている。これらの配線は、電気的出力値を検出するためのものである。
【0062】
本実施例のガス計測基板ユニット10は、計測対象のガスを検知した時のガス吸着膜14の誘電率、電位若しくは抵抗値の変化、又は、両持ち梁18(両持ち梁部)の固有振動数の変化に基づいてガスの種類及び/又は濃度を特定するために用いられるものである。すなわち、ガス計測基板ユニット10の各ガス吸着膜14から得られる電気的出力値は、ガス吸着膜14の誘電率、電位若しくは抵抗値又は両持ち梁部の固有振動数である。そして、ガスを吸着する前後における上記の電気的出力値の変化量に基づいてガス(化学物質)の種類及び/又は濃度を特定する。
【0063】
本実施例において、単結晶シリコン基板12の寸法は10mm×10mmであり、ガス吸着膜14の寸法は0.05mm×0.1mmである。
【0064】
単結晶シリコン基板12の表面の電気配線22を極力小さくし、ワイヤボンディング等により単結晶シリコン基板12の外部の配線を接続する場合、単結晶シリコン基板12の寸法は1mm×1mm程度で十分である。
【0065】
ところで、本実施例のようにガスの種類を特定するガス計測は、環境、医療、産業分野、民生分野など様々な分野での応用が期待されている。しかしながら、従来は、ガス種類の選択性や測定精度を実現するためには、高価で大型の装置が必要であった。
【0066】
このため、安価で、かつ、その場分析ができ、携帯可能なガス計測装置の開発が求められている。
【0067】
近年、例えば、特性の異なる複数のガスセンサを組み合わせて実装し、ガスを検知した時の各ガスセンサの出力パターンマップを用いてガス種類の特定をすることにより、卓上サイズまで小型・低コスト化が進んでいる。これは、計測対象となる各種ガスに対する各ガスセンサの出力パターンマップをあらかじめ計測して保存しておき、実際の計測で得られた出力パターンマップと保存された複数の出力パターンマップとを対比してガスの種類を特定するものである。
【0068】
本実施例は、これよりも更に小型で、かつ、低コストのガス計測装置を得るためになされたものである。
【0069】
更なる小型・低コスト化のためには、フォトリソグラフィー技術やスクリーン印刷などの一般的な集積化技術を用いることが考えられる。しかし、ガス計測機能を満たすためには、単に集積化技術を用いて複数のガス吸着膜を集積化するだけでは足りず、ガス吸着特性がそれぞれ異なる複数のガス吸着膜を集積化する必要がある。
【0070】
すなわち、ガス吸着膜は、特定の化学物質だけを吸着するという選択性は乏しく、様々な化学物質を吸着して、吸着量に応じて質量、誘電率、電位等を変化させるものである。したがって、仮に同一種類のガス吸着膜を集積して成膜したとしても、ガスを検知した時の出力が全て同一となり、様々なガスの種類を特定することができない。
【0071】
そのような選択性の乏しいガス吸着膜を利用し、ガスの種類を選択的に検出して特定するためには、複数のガス吸着膜のガス吸着特性をそれぞれ異ならせる必要がある。
【0072】
本実施例のガス計測基板ユニット10は、ガス吸着特性がそれぞれ異なる複数のガス吸着膜を集積化させて小型化、低コスト化を実現したものである。
【0073】
これを実現するための本実施例におけるガス計測基板ユニットの製造方法について以下に説明する。
【0074】
図2は、本実施例のガス計測基板ユニットの製造工程を示すフローチャートである。
【0075】
本図においては、まず、単結晶シリコン基板12の上(表面)に絶縁膜20を成膜する(S1)。続いて、絶縁膜20の上の両持ち梁18に対応する部位に感光性樹脂を成膜する(S2)。ここで、感光性樹脂は、同一の工程でパターニングされる。
【0076】
なお、本実施例では、フォトリソグラフィー技術を用いて感光性樹脂を成膜することによりガス吸着膜14をパターニングする場合を例に挙げて説明しているが、スクリーン印刷やインクジェット法でガス吸着膜前駆体をパターニングしてもよい。要するに、複数のガス吸着膜前駆体を互いに間隔をあけて(電気的、熱的に分離させて)集積化して形成できれば、どのようなパターニング技術を用いてもよい。
【0077】
ところで、同じ工程でパターニングされた感光性樹脂は、それだけではガス吸着膜として異なるガス吸着特性を有していない。そこで、例えば約300℃以上の温度で感光性樹脂の熱処理を行う(S3)。これにより、感光性樹脂は熱分解−再結合反応が起こり、炭素質材料へと変化する。この処理により、感光性樹脂は、ラダー状の高分子へと変化し、感光性樹脂の導電性(導電率)を高めることができる。この処理は、パイロポリマーと呼ばれており、1960年代より電気特性などが研究されている。
【0078】
しかし、この段階でもまだ、感光性樹脂(ガス吸着膜14)はすべて同程度の吸着特性を有している。このため、1枚の単結晶シリコン基板12上にパターニングした複数の感光性樹脂のガス吸着特性をそれぞれ異ならせるための処理をする必要がある。
【0079】
先にも述べたとおり、感光性樹脂をはじめとする有機膜は、熱処理により熱分解‐再結合して有機導電膜へと変化する。この時の熱処理条件(加熱温度、環境ガス(雰囲気))により、感光性樹脂の末端基(ガス吸着基)の種類と数が異なってくる。
【0080】
本実施例は、この性質を利用して単結晶シリコン基板12上にパターニングした複数の感光性樹脂を、異なるガス吸着特性を有するガス吸着膜へと変化させるものである。
【0081】
すなわち、次の工程では、異なる熱処理条件で個々の感光性樹脂の熱処理を行う(S4)。ここでいう熱処理条件とは、加熱温度及び環境ガスの少なくとも一方の条件のことである。すなわち、熱処理条件とは、加熱温度条件及び/又は雰囲気条件をいう。
【0082】
以上の工程を経てガス計測基板ユニット10を製造することにより、ガスの吸着特性が異なるガス吸着膜(感光性樹脂)を集積化させてガス計測基板ユニット及びこれを用いるガス計測システムの小型・低コスト化を図ることができる。
【0083】
ところで、個々の感光性樹脂を異なる温度で熱処理するためには、感光性樹脂相互を熱的に分離する必要がある。また、各感光性樹脂を異なる温度で熱処理する具体的な態様は3種類ある。
【0084】
まず、図3Aを用いて熱処理を施し、完成したガス計測基板ユニットを説明する。その後、図3B、3C及び3Dを用いて上記の熱処理に関する態様を説明する。
【0085】
図3Aは、図1のガス計測基板ユニット10が有する8つのガス吸着膜14のうち、1つのガス吸着膜14の部位を示す拡大斜視図である。
【0086】
また、図3B、3C及び3Dは、S3の工程の熱処理を行う前における両持ち梁部に関する変形例を示す部分断面図である。
【0087】
図3Aにおいて、ガス吸着膜14は、単結晶シリコン基板12の一部である両持ち梁18の上に形成されている。ガス吸着膜14と両持ち梁18との間には、絶縁膜20が設けられている。また、両持ち梁18の両側には、スリット16が設けられ、断熱部を構成している。
【0088】
図3Aに示すガス計測基板ユニットは、図3Bの両持ち梁部に熱処理を施すことによって作製することができる。すなわち、第1の態様である。
【0089】
図3Bにおいては、両持ち梁18の上に絶縁膜20を形成し、その上に導電性樹脂101を形成したものである。本図の場合、S3及びS4の工程において導電性樹脂101に電流を流すことによりジュール熱を発生させ、導電性樹脂101自体を所望のガス吸着膜14に変化させる。
【0090】
図3Aに示すように、両持ち梁18の両端部には電気配線22及びアース配線24(配線)がパターニングしてある。この配線は、ガス吸着膜14の出力用のものであり、かつ、熱処理における電力供給用のものである。
【0091】
この配線を通じて、図3Bに示す導電性樹脂101(導電性を付与した感光性樹脂であってもよい。)に電流を流す。この時、配線に比べて抵抗値の大きな導電性樹脂101がジュール熱を発生させて高温になるため、このジュール熱で導電性樹脂101が加熱(熱処理)される。
【0092】
ここで、導電性樹脂101ごとに電流値或いは電流を流す時間を異ならせることにより異なるジュール熱を与えることができ、その結果、それぞれの導電性樹脂101のガス吸着特性がそれぞれ異なるものとなる。
【0093】
なお、この工程で1つの導電性樹脂101を加熱しているときに周囲の導電性樹脂101までもが同時に加熱されてしまうと、ガス吸着膜14の特性を制御できなくなる。そこで、導電性樹脂101のジュール熱が単結晶シリコン基板12を伝わって周囲を加熱してしまうことを防止するため、両持ち梁18の両側に接する単結晶シリコン基板12を部分的に薄く加工して熱伝導を妨げることが好ましい。これにより、1枚の単結晶シリコン基板12の上に成膜した各々の導電性樹脂101を異なる温度で熱処理することができる。
【0094】
続いて、熱処理における第2の態様について説明する。
【0095】
第2の態様は、単結晶シリコン基板12そのものを加熱媒体として用いる方法である。すなわち、第2の態様は、図3Cに示す変形例に対応している。
【0096】
図3Cにおいては、両持ち梁18の上に樹脂膜102(ガス吸着膜前駆体)を形成したものである。ここで、樹脂膜102は電気絶縁性の材料であってもよい。本図の場合、S3及びS4の工程においてシリコンで形成された両持ち梁18に電流を直接流すことによりジュール熱を発生させ、樹脂膜102を所望のガス吸着膜14に変化させる。
【0097】
樹脂膜102が導電性を有する感光性樹脂で形成されている場合、樹脂膜102と単結晶シリコン基板12とを電気的に絶縁するため、熱酸化膜などの絶縁膜で保護してもよい。この場合、単結晶シリコンの両持ち梁18の根元部分(両端部分)の絶縁膜のみを除去し、配線をパターニングする。
【0098】
これにより、単結晶シリコンの両持ち梁18の部分に選択的に電流を流すことができ、その部分を加熱することができる。
【0099】
この場合も、第1の態様と同様に、両持ち梁18ごとに電流値或いは電流を流す時間を異ならせることにより異なるジュール熱を発生させ、その結果、それぞれのガス吸着膜14に異なるガス吸着特性を付与することができる。
【0100】
続いて、熱処理における第3の態様について説明する。
【0101】
第3の態様は、両持ち梁18と樹脂膜との間に金属などで構成された膜抵抗を設け、この膜抵抗を加熱媒体として用いるものである。すなわち、第3の態様は、図3Dに示す変形例に対応している。
【0102】
図3Dにおいては、両持ち梁18の上に膜抵抗103を形成し、その上に樹脂膜102を形成したものである。ここで、樹脂膜102は電気絶縁性の材料であってもよい。本図の場合、S3及びS4の工程において膜抵抗103に電流を流すことによりジュール熱を発生させ、樹脂膜102を所望のガス吸着膜14に変化させる。なお、膜抵抗103は白金(Pt)等の金属であってもよい。
【0103】
それぞれの両持ち梁18において異なる厚さ等を有する膜抵抗103を形成することにより、それぞれの両持ち梁18で発生するジュール熱を変化させ、異なる加熱温度条件を設定することができる。この場合、雰囲気条件が同じであれば、1回の通電加熱により複数種類のガス吸着膜14を作製することができる。
【0104】
また、図示していないが、両持ち梁18と膜抵抗103との間に絶縁膜を設けてもよい。この場合、膜抵抗103のみに電流を流すことができるため、膜抵抗103の厚さ等の設計が容易になる。
【0105】
また、樹脂膜102(ガス吸着膜前駆体)の上に膜抵抗103を形成してもよい。この場合も、膜抵抗103にジュール熱を発生させることにより、樹脂膜102を所望のガス吸着膜14に変化させることができる。この場合、膜抵抗103は、化学物質等のガスを透過する微細孔を有する構造であることが望ましい。
【0106】
なお、上述のS3の工程において、感光性樹脂の導電性を確保するため、感光性樹脂を例えば約300℃以上の温度で熱処理したが、これは必須の工程ではない。すなわち、感光性樹脂の導電性を確保する必要があるのは、感光性樹脂自体が元々導電性を有しておらず、かつ上述の第1の態様により感光性樹脂を異なる加熱温度で熱処理する場合のみである。
【0107】
例えば、導電性を有する樹脂などをガス吸着膜として使用する場合、或いは導電性を有していない樹脂を使用するとしても第2、第3の態様でガス吸着膜を異なる加熱温度条件で加熱する場合は、ガス吸着膜の導電性は必須ではないため、S3の工程を省略することができる。
【0108】
また、第2及び第3の態様においては、一定電流で熱処理することで容易に温度制御が可能である。
【0109】
これに対して、第1の態様においては、電流を流してジュール熱が発生すると感光性樹脂の電気抵抗が小さくなるため、温度が低下する。第1の態様には、図3Bに示す変形例のように、導電性樹脂101自体に電流を流してジュール熱を発生させ、ガス吸着膜14を形成するものも含まれる。
【0110】
以上のように、第1〜第3の態様により形成されるガス吸着膜14は、両持ち梁18(両持ち梁部)の上(表面)に直接接触させてもよいし、両持ち梁18(両持ち梁部)の上(表面)に絶縁膜及び/又は膜抵抗を介して積層してもよい。また、両持ち梁18(両持ち梁部)の上(表面)に形成されるガス吸着膜14は、そのガス吸着膜14の上(表面)に絶縁膜及び/又は膜抵抗を積層した構成であってもよい。なお、「両持ち梁18(両持ち梁部)の上(表面)に」とは、両持ち梁18(両持ち梁部)の表面に直接接触している構成だけでなく、他の膜を介して積層されている構成も含むものとする。
【0111】
上記のように、ガス吸着膜と絶縁膜及び/又は膜抵抗とを積層した構成は、総じて、ガス吸着膜は、絶縁膜及び/又は膜抵抗とともに前記両持ち梁部に積層された構成である、と定義する。
【0112】
図4は、第1の態様に関して、有機導電膜に流す電流値とその有機導電膜の抵抗値との関係の一例を示す図である。
【0113】
本図に示すような電流値と電気抵抗との関係を求めた後、電流値を決めて処理する必要がある。なお、電気抵抗が変化する理由は、熱処理温度が高くなるに従って、炭化率が上がることによる。
【0114】
また、熱処理するために電力を供給するための配線は、感光性樹脂の特性を変化させるために500℃〜900℃程度の高温に曝されるため、高融点材料であるPtなどを用いるのがよい。
【0115】
以上、個々の感光性樹脂を異なる熱処理条件で熱処理するために、加熱温度を異ならせる態様について説明したが、加熱温度ではなく、熱処理時の環境ガスの種類を異ならせることにより、ガス吸着特性を異ならせてもよい。
【0116】
つまり、各感光性樹脂の同じ温度で加熱するとしても、感光性樹脂のそれぞれを加熱する際の環境ガスを異ならせれば、ガス吸着特性は異なるものとなる。
【0117】
例えば、有機膜をアルゴンなどの不活性ガス雰囲気で熱処理することにより、低抵抗の導電膜とすることができる。また、酸素、フッ素、窒素などのガス雰囲気中で熱処理することにより、有機膜表面の末端基を修飾し、ガスの吸着特性を変化させることができる。
【0118】
次に、ガス計測基板ユニット10を用いて構成されるガス計測システムについて説明する。
【0119】
図5は、本実施例のガス計測システムの全体を示す概略構成図である。
【0120】
本図に示すように、ガス計測システム30は、台座32上に設けられた例えばLSIなどの処理回路34と、処理回路34上に設けられたガス計測基板ユニット10などを備えて構成されている。ここで、処理回路34は計算部と呼んでもよい。
【0121】
また、処理回路34及びガス計測基板ユニット10を覆うようにしてキャップ36が台座32にはめ込まれており、キャップ36の頂部に形成された開口部分にはメッシュ38が設けられている。また、キャップ36及びメッシュ38によって、計測対象のガスが通流するガス流路40が形成され、ガス計測基板ユニット10に周囲のガスが接触するようになっている。
【0122】
また、複数の棒状の電極42が台座32の上下方向に貫通して設けられており、各電極42のガス流路40側の端部とガス計測基板ユニット10とが電気配線44(ワイヤー)により接続されている。
【0123】
処理回路34は、ガス計測基板ユニット10から出力される各ガス吸着膜14のガス吸着量に相関する出力値と、あらかじめ各種ガスに対応して保存されている各ガス吸着膜のガス吸着量に相関する出力値のデータベースとを対比した結果に基づいて、計測対象のガスの種類及び/又は濃度を特定するものである。
【0124】
すなわち、上述のように、ガス計測基板ユニット10の各ガス吸着膜14は、ガスに含まれる化学物質が吸着した時の吸着量に応じて、質量、誘電率、電位などが変化するものであり、かつ、ガスの吸着特性が異ならせてある。
【0125】
図6は、各ガス吸着膜14の化学物質に対する質量、誘電率、電位などの変化特性を表す概念図である。
【0126】
本図において、化学物質A、B、Cは、8種類のガス吸着膜14に吸着した場合、質量、誘電率、電位などの変化特性が異なる。
【0127】
計測対象となるガスの種類の特定は、この特性を利用して行われる。実際のガス計測をする前準備として、用途ごとにどのような成分のガスの検出が必要かを決め、そのガス検出マップのデータベースを作成することが必要となる。
【0128】
つまり、特定したい化学物質からなるガスについて、そのガスが各ガス吸着膜14に吸着した状態におけるそれぞれの質量、誘電率、電位などの変化を計測し、それを基にある特定の化学物質に対するガス検出マップとしてデータベースを作成しておく。
【0129】
そして、実際のガス計測における対象ガスの特定は、ガス検出マップのデータベースとガス計測基板ユニット10から出力される各ガス吸着膜14の質量、誘電率、電位などの出力値とを比較することにより行われる。例えば、ガス検出マップのデータベースの中にガス計測基板ユニット10からの出力パターンと類似するものがあれば、そのパターンに対応するガスの種類を表示等して特定することができる。
【0130】
なお、ガス計測基板ユニット10からの出力値及びガス検出マップのデータベースは、質量、誘電率、電位などに限定されることなく、各ガス吸着膜14の質量、誘電率、電位などに相関するものであればよい。
【符号の説明】
【0131】
10:ガス計測基板ユニット、12:単結晶シリコン基板、14:ガス吸着膜、16:スリット、18:両持ち梁、20:絶縁膜、22:電気配線、24:アース配線、30:ガス計測システム、34:処理回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、それぞれの前記ガス吸着膜における電気的出力値を検出するための電気配線とを含むガス計測基板ユニットであって、相隣る前記ガス吸着膜の間に断熱部を設けたことを特徴とするガス計測基板ユニット。
【請求項2】
前記複数のガス吸着膜は、それぞれの前記ガス吸着膜に吸着する化学物質の吸着量に対応する前記電気的出力値を有することを特徴とする請求項1記載のガス計測基板ユニット。
【請求項3】
それぞれの前記ガス吸着膜は、炭化率が異なる炭素質材料を含む構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項4】
前記ガス吸着膜は、前記基板の両持ち梁部の上に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項5】
前記電気配線は、前記ガス吸着膜の端部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項6】
前記ガス吸着膜は、絶縁膜及び/又は膜抵抗とともに前記両持ち梁部に積層された構成であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項7】
前記基板は、シリコンで形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項8】
それぞれの前記ガス吸着膜に接している前記膜抵抗は、抵抗値が異なることを特徴とする請求項6又は7に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項9】
前記膜抵抗が金属で形成されていることを特徴とする請求項6〜8のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項10】
前記電気的出力値が、前記ガス吸着膜の抵抗値、誘電率若しくは電位又は前記両持ち梁部の固有振動数であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項11】
前記断熱部が、穴又は溝であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニット。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニットからの前記電気的出力値とデータベースに保存されている数値とを対比した結果に基づいて前記化学物質の種類及び/又は濃度を特定する計算部を有することを特徴とするガス計測システム。
【請求項13】
前記計算部は、前記複数のガス吸着膜の前記電気的出力値を組み合わせて前記化学物質の種類及び/又は濃度を特定することを特徴とする請求項12記載のガス計測システム。
【請求項14】
一枚の基板の表面に間隔をあけて形成された複数のガス吸着膜と、電気配線とを含むガス計測基板ユニットの製造方法であって、前記基板の表面に同一種類のガス吸着膜前駆体を、間隔をあけて形成するガス吸着膜前駆体形成工程と、間隔をあけて形成された前記ガス吸着膜前駆体に対して、それぞれ、異なる加熱温度条件及び/又は異なる雰囲気条件で熱処理を行うことにより、複数の前記ガス吸着膜を形成するガス吸着膜形成工程とを含むことを特徴とするガス計測基板ユニットの製造方法。
【請求項15】
一つの前記雰囲気条件で前記熱処理を行わない前記ガス吸着膜前駆体に対して、他の前記雰囲気条件で前記熱処理を行うことを特徴とする請求項14記載のガス計測基板ユニットの製造方法。
【請求項16】
前記加熱温度条件は、前記ガス吸着膜前駆体、前記基板、又は前記基板の表面に形成された膜抵抗に電流を流して発生するジュール熱を用いて設定されることを特徴とする請求項14又は15に記載のガス計測基板ユニットの製造方法。
【請求項17】
前記ガス吸着膜前駆体が感光性樹脂であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニットの製造方法。
【請求項18】
前記ガス吸着膜前駆体形成工程において、フォトリソグラフィー技術、スクリーン印刷法、又はインクジェット法を用いることを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載のガス計測基板ユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−33592(P2011−33592A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182948(P2009−182948)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】