説明

ガス警報機

【課題】ガス警報機が、電池交換をすることなく5年以上使用できるようにする。
【解決手段】センサ素子101は、凹部206が形成された基板201と、基板201の凹部206に架設された絶縁層202と、絶縁層202の上に形成されたヒータ層203とから構成されている。ヒータ層203は、例えば、図3の平面図に示すように、つづら折り状態に形成されている。なお、絶縁層202の上には、ヒータ層203を覆って絶縁層204が形成されている。このセンサ素子101によれば、例えば、ヒータ層203の配線幅および配線厚を100nm程度としても、例えば層厚1000nm程度の絶縁層202により支持することで、凹部206の上に架設させることができ、ヒータ層203の周囲の熱容量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池により駆動するガス警報機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般家庭において用いられるガス警報機(ガス漏れ警報機)においては、小型化および設置の自由度などの観点から、電池による駆動が望ましい。このような電池式の家庭用ガス警報機には、例えば一酸化炭素を検出する半導体式のガスセンサが用いられている(特許文献1参照)。
【0003】
上記ガスセンサについて、図4を用いて簡単に説明する。このガスセンサは、シリコン基板401を支持基板とし、ダイアフラム状の支持膜402の外周または両端部をシリコン基板401で支持している。また、支持膜402の上に、Pt−Wの薄膜ヒータ403を備えている。支持膜402は、シリコン基板401を熱酸化することで形成した熱酸化膜402aと、CVD法により堆積することで形成した窒化シリコン膜402bと、CVD法により堆積することで形成した酸化シリコン膜402シートの積層膜である。
【0004】
また、支持膜402の上には、薄膜ヒータ403を覆って形成された絶縁層404を備え、絶縁層404の上に接合層405を介してガス感知膜用の電極406が形成され、電極406に接続して半導体薄膜によるガス感知膜407が形成されている。また、ガス感知膜407の周囲を囲って絶縁層408が形成されている。
【0005】
このガスセンサでは、ガス検知のためには、図5に示すように、先ずガスセンサをhigh状態(約450℃)で200ms間加熱し、センサ表面のクリーニングを実施してセンサを初期状態にする。次いで、センサをlow状態(100℃以下)に下げ、例えば400ms後にセンサ抵抗を測定し、一酸化炭素ガスが所定のガス濃度を越えて存在しているかどうかを判断する。highの時は薄膜ヒータ403に例えば30mWのパワーを投入し、lowの時には4.5mWを投入する。
【0006】
またこのとき、図5に示すように、highの時にヒータに30mWのパワーを投入しても、温度が450℃になるのに約50msの時間を要している。また、パワーを30mWから4.5mWに減らしてlow状態に移行させる時には、温度が安定するのに約100msの時間を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−206087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、家庭用ガス警報機は、5年間の有効期限があるため、電池交換をすることなく5年間連続して使用(駆動)できることが望ましい。しかしながら上述したガスセンサを用いたガス警報機では、ガスセンサにおける消費電力が大きく、電池交換をすることなく5年間使用することができないという問題があった。上述したガスセンサでは、例えば、ガス感知膜を加熱しているが、この加熱とともに、ガス検知膜や薄膜ヒータなどを支持する支持膜も加熱することになる。このセンサでは、450℃にまで加熱する必要があり、ガス検知膜を含め、450℃の加熱時に発生する応力による破壊を防ぐために、支持膜を薄くすることができない。このように、上述したガスセンサでは、大きな熱容量をもつなど、ガスセンサの駆動のための消費電力を削減することが容易ではない。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、ガス警報機が、電池交換をすることなく5年以上使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るガス警報機は、気体熱伝導式で可燃性ガスを検知するセンサ素子と、センサ素子を駆動するセンサ駆動回路と、センサ駆動回路によるセンサ素子の抵抗変化の検出により警報を出力する警報部と、センサ素子,センサ駆動回路,および警報部に電源を供給する電池とを備え、センサ素子は、凹部が形成された基板と、基板の凹部に架設された絶縁層と、絶縁層の上に形成されたヒータ層とから構成されている。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したことにより、本発明によれば、ガス警報機が、電池交換をすることなく5年間使用できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるガス警報機の構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるガス警報機を構成するセンサ素子の構成を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態におけるガス警報機を構成するセンサ素子の一部構成を示す平面図である。
【図4】図4は、ガスセンサの構成例を示す断面図である。
【図5】図5は、ガスセンサの動作時の温度変化を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるガス警報機の構成を示す構成図である。また、図2は、本発明の実施の形態におけるガス警報機を構成するセンサ素子の構成を示す断面図である。
【0014】
このガス警報機は、気体熱伝導式で可燃性ガスを検知するセンサ素子101と、センサ素子101を駆動するセンサ駆動回路102と、警報部103とを備える。センサ駆動回路102は、例えば、1分間に1回の割合でセンサ素子101を動作させ、可燃性ガスの検知を行わせる。よく知られているように、センサ駆動回路102により駆動されているセンサ素子101の抵抗変化により、可燃性ガスの検知が行える。警報部103は、センサ駆動回路102によるセンサ素子101の抵抗変化の検出により警報を出力する。また、このガス警報機は、センサ素子101,センサ駆動回路102,および警報部103に電源を供給する電池104を備える。
【0015】
次に、センサ素子101についてより詳細に説明する。センサ素子101は、図2に示すように、凹部206が形成された基板201と、基板201の凹部206に架設された絶縁層202と、絶縁層202の上に形成されたヒータ層203とから構成されている。ヒータ層203は、例えば、Ptからなる配線から構成され、図3の平面図に示すように、つづら折り状態に形成されている。このようにすることで、一定の面積の中で所定の配線長が確保できる。なお、絶縁層202の上には、ヒータ層203を覆って絶縁層204が形成されている。
【0016】
基板201は、例えば、主表面を(100)面とした単結晶シリコンから構成し、この主表面に形成した例えば窒化シリコンからなる絶縁層202の開口部205より、基板201をアルカリ溶液でエッチングすれば、凹部206が形成できる。アルカリ溶液をエッチング液として用いれば、窒化シリコンからなる絶縁層202はエッチングされず、シリコンが選択的にエッチングされる。
【0017】
また、アルカリ溶液に対しては、シリコンの(111)面があまりエッチングされないので、(111)面を側面として凹部206が形成される。また、主に深さ方向にエッチングが進行し、基板201の平面方向へのエッチングはあまり進まないので、開口部205の形成箇所を適宜に設定することで、凹部206の平面視の領域の広がりが制御できる。
【0018】
上述したセンサ素子101によれば、例えば、ヒータ層203の配線幅および配線厚を100nm程度としても、例えば層厚1000nm程度の絶縁層202により支持することで、凹部206の上に架設させることができる。この状態では、極薄い絶縁層202および絶縁層204が、ヒータ層203に接触している状態となり、ヒータ層203の周囲の熱容量を低減することができる。
【0019】
また、気体熱伝導式のセンサ素子101は、ガス検出動作時のヒータ層203による加熱温度は、200〜300℃程度である。従って、センサ素子101の消費電力は、16mW程度にすることができ、さらに、計測時間を16ms程度と非常に短くすることができる。
【0020】
ここで、センサ素子101の動作を1分回に1回とすれば、5年間の総電力は、187mWh程度となる。従って、2つの単3形の乾電池を直列に接続して用いれば(3V)、センサ素子101の5年間の消費電流量は、63mAh程度にすることが可能となる。なお、センサ駆動回路102および警報部103などのセンサ素子101以外の回路分の5年間の消費電流量は、857mAhと見積もれるので、本実施の形態におけるガス警報機の5年間の消費電流量は920mAhとなる。
【0021】
一方、例えば、入手が容易でありよく用いられている単3形のマンガン乾電池は、初期容量が1000mAh程度である。これに対し、上述した本実施の形態におけるガス警報機の5年間の消費電流量は、920mAhであり、1000mAh以下となる。このように、本実施の形態のガス警報機によれば、電池交換をすることなく5年間使用できるようになる。
【0022】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。
【符号の説明】
【0023】
101…センサ素子、102…ガス漏れ検知部、103…センサ駆動回路、104…警報部、105…電池、201…基板、202…絶縁層、203…ヒータ層、204…絶縁層、205…開口部、206…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体熱伝導式で可燃性ガスを検知するセンサ素子と、
前記センサ素子を駆動するセンサ駆動回路と、
前記センサ駆動回路による前記センサ素子の抵抗変化の検出により警報を出力する警報部と、
前記センサ素子,前記センサ駆動回路,および前記警報部に電源を供給する電池と
を備え、
前記センサ素子は、
凹部が形成された基板と、前記基板の前記凹部に架設された絶縁層と、前記絶縁層の上に形成されたヒータ層とから構成されていることを特徴とするガス警報機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105294(P2013−105294A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248363(P2011−248363)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】