説明

ガス軽減部品を備えた大表面積のポリマーアクチュエータ

ポリマーアクチュエータコンポーネント及びポリマーアクチュエータアセンブリ、活性剤を用いる動力供給及び方法が開示されている。前記アクチュエータアセンブリはアノード電極及びカソード電極と、電解質及び前記アノード電極又は前記カソード電極と接触する体積変化型ポリマーアクチュエータとを含み、前記電極どうしが、電荷分離又はイオン分離によりpHの調節を促進する多孔質膜により互いに分離している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一部は契約番号0848528に基づく米国科学財団による米国政府の支援によるものである。米国政府は、本発明において一定の権利を有し得る。
【0002】
本発明は体積変化を生ずる材料に関する。具体的には、本発明は、pHの変化に応じて体積が変化するポリマー材料に関する。この材料は、例えば、治療流体投与用のポンプのアクチュエータとして使用可能なアクティベータとして有利に使用可能であり、この材料については、こうした実用性に関連して以下に記載するが、その他の用途も考えられる。
【背景技術】
【0003】
アクチュエータは、様々な用途に対して変位又は力を生じる装置である。これらの例を幾つか挙げると、モーター、エアシリンダ、油圧シリンダ、及び電磁ソレノイド等の、種々の形態が可能である。これらのアクチュエータは、多くの異なる用途に利用可能で、数十年にわたり使用されている。
【0004】
開発が進められている特定種のポリマーベースのアクチュエータは、弾性エポキシヒドロゲルポリマーベースのポリマーアクチュエータである。このようなアクティベータは、このポリマーと電解質のイオン種と接触又は近接する電極における陽電荷又は陰電荷を用いて、電極近くのイオンを不均衡にすることにより作動する。二級アミンや一級アミンのようなアミン基の密度又は数を増やすことによりヒドロゲルの膨潤圧を増大できる。また、この増加は膨潤時間や解膨潤時間にも影響する。
【0005】
この増加のための一方法が、ポリマー構造の一部にポリアミドアミン(PAMAM)ポリエーテルデンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー、アミノ機能化デンドリマー、又はこれらを組み合わせたものを導入することにより得られる。デンドリマーは高度に分岐し、ポリマー連結点の数が非常に優勢である。また、表面一級アミノ基やコアアミノ基を有するデンドリマーが市販されている。これによりヒドロゲルのエンジニアリングが可能になるため、材料配合比、或いは、ポリマー構造自身の組織、大きさ、及び分岐数を制御することにより、このゲルが発生する圧力のような特定の性能パラメーターを決定できる。ヒドロゲルの密度と気孔度の制御は、機能性アミンの量やポリエーテルアミンの分子量により行う。また、ヒドロゲルの密度と気孔度の制御は、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの量、及び/又はこの材料の重合に用いるH0又は溶剤の比により行う。
【0006】
このゲル用に好ましいエーテルは、ポリエチレングリコールドデシルエーテル(polyEGDE)であるが、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルのような他のエーテル類も使用できる。これらのエーテル類は、非常に透明で頑丈なヒドロゲルを形成し、このヒドロゲルは、高いpHの水溶液中では疎水的に反応し、低いpH又は酸性溶液では膨潤する。また、ヒドロゲルの密度及び気孔度の制御を、一定量の酸化剤を重合中のポリマーに添加することにより行える。これらの酸化剤は、溶液又は乾燥のいずれの状態であっても、更に化学的・電気的に、又はフォトンにより重合中に活性化し、所望の特性を得ることができる。
【0007】
イオン性ヒドロゲルの膨潤速度は、ヒドロゲル外側の溶液とヒドロゲル内側の溶液間のpH、イオン、陽イオン又はプロトンの違い、或いは、ヒドロゲルのポリマー組成により得られる。これらの性能特性の制御は、幾つかの方法により可能である。例えば、重合中のポリマーに酸を加えると、高いpHの膨潤性を有するヒドロゲルを創出できる。また、ヒドロゲルの膨潤速度を、重合中のポリマーに塩類又はアルカリ溶液類を加えることによっても制御できる。これは、エポキシポリマー又はこのポリマーを水和した溶液を化学的、電気的、電気化学的、光的、又は光化学的に励起することにより得られる。
【0008】
電場反応性高分子(EAP)の創出は、エポキシヒドロゲルを電解質中で水和し、電極をこのゲル内に挿入し、第2の電極をこのヒドロゲルから近距離の間隔を開けて配置し、電極間にわずかな電流を流すことにより可能である。例えば、エポキシヒドロゲルの膨潤を、電解質流体として生理食塩水を用いた白金電極の領域で増加できる。その極性が反転すると、ヒドロゲルの解膨潤又は収縮が生じる。また、疎水特性と親水特性の制御は、これらの方法で可能である。
【0009】
これらポリマーアクチュエータの課題は、流体の圧送に十分なアクチュエーションの力と歪み速度を発生させることである。
【0010】
このようなポリマーアクチュエータの別の課題は、動作中のガスの発生である。電極と水系電解質を利用するポリマーアクチュエータは特に、アクチュエーションの効率が高く有利であるが、加水分解により酸素と水素を生ずる可能性がある。
【0011】
ポリマーアクチュエータで発生するガスは、電荷移動や機械システムに影響する可能性があるので、好ましくない。絶縁ポケットの生成による気泡は、システム全体の電荷移動を妨げる。これにより電極及び/又はポリマーの表面積が大きく減少し、ポリマーの膨張速度が低下する。更に悪いことには、ガスポケットの大きさと正確な組成は変動し、予測できないので、ポリマーアクチュエータを用いるあらゆる装置の精度が低下する。
【0012】
また、ガスの膨張は、後にガスの圧縮又は吸収により緩和するアクチュエータに、見かけの膨張を生ずる。こうして、ガスの発生により、アクチュエータの再現性、予測性、及び精度が低下する。
【0013】
これらの一貫性の問題が重なると、アクチュエータポリマーと非反応性基板との接着性が噛み合わなくなる。ヒドロゲルは層剥離し易く、大抵は水性環境で不安定になるので、例えば、薄膜の特性評価と水媒体での使用が困難になる。接着には、溶液が必要になって化学薬品類と工程の数が増加し、ひいては複雑さが増すことや、環境に優しくない化学薬品類を用いることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2008/079440号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、加水分解又は他のガスの発生という欠点を伴わずに、高率のアクチュエーションを発生するアクチュエータが必要である。
【0016】
更に、疎水性表面に都合良く接着するヒドロゲルアクチュエータが必要である。
【0017】
従来のアクチュエータは、これら用途の要件を完全には満たしていない。更に、最先端のポリマーアクチュエータでも、電極のアノード側又はカソード側で明確な電解質のイオン又はpH境界層の分離及び生成がない。
【0018】
典型的なポリマーアクチュエータ用電極材料は、金属類、カーボン類、及び幾つかの導電性ポリマー類である。電極の種類は、アクチュエータの種類と所望の反応を作り出すのに必要な電解化学の特性に幾分依存する。金属の多くにおける欠点の一つが、各電極での酸化反応と酸化還元反応の両者に対して、通常的に不安定なことである。金や白金のような貴金属は、その安定性から使用可能であるが、非常に高価なので、産業用としては実用的に使用できない。カーボンやグラファイトのような他の材料は機能するが、機械的特性に難があるため実用性に乏しく、導電性ポリマー類は、他ポリマーとの化学的整合性に非常に乏しい。全ての電極に見られる別の欠点は、電極表面と電解質の界面でガスが電気化学的に発生することである。発生するガスの種類と量はいずれも、電極の極性とアクチュエータ又はアクチュエータアセンブリの電極と電解質に印加される電流量に依存する。閉鎖型又は密閉型アクチュエータシステムにおける圧縮圧力という大きな問題が、ガスによって生じ、実際にポリマーのアクチュエーション又は体積変化を上回る結果、アクチュエーションサイクルの結果が信頼性に欠くことになる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、従来技術の上記及びその他の問題を克服する。本発明は、一態様において、電解質中の多孔質膜により分離したアノードとカソード、1つ又は複数の電極の表面と接触した金属水素化物材料及びこのアノード又はカソードと接触したポリマーアクチュエータを有するポリマーアクチュエータアセンブリを提供する。この多孔質膜は、障壁材料又はセパレータ材料として機能し、イオン領域又はpH領域が混ざり合うのを無くすこと又は減少させることができ、アクチュエータ材料の反応、精度、時間、及び体積変化が大幅に増し、更には電極材料の選択幅とこの装置内のカソード電極及びアノード電極の配置が改良される。
【0020】
多孔質膜を有する溶液中の電極は、電荷又はイオンの分離によりポリマーアクチュエータ周囲のpHの調節を促進する。電解質は水系でも非水系でも良い。ポリマーアクチュエータは、電極間の電位差により誘発される電解質のpH変化又は化学変化に応じて膨張は収縮するように構成される。
【0021】
このアクチュエータアセンブリは更に、電極用の密閉入口点又は密閉出口点を有する、可塑性の密閉外側ハウジング筺体を備える。代替実施形態のアセンブリは、第二のポリマーアクチュエータを備え、各ポリマーアクチュエータが電極のうち一つに隣接し、電極間に電位差が生じると、両方のアクチュエータが同時に膨張又は収縮するように構成される。
【0022】
ポリマーアクチュエータとこのポリマーアクチュエータと接触した電極が、多孔質膜と同じ材料で出来た可塑性の容器又はバッグの中に、可塑性の容器から出た電極の一部を用いて密閉される。次いで、可塑性の容器の外側の電極の一部が多孔質膜材料により電解質から分離され、電極間に電位差が生じると、アクチュエーションが促進される。可塑性の容器又はバッグ、或いは可塑性の容器又はバッグの少なくとも一部は、好ましくはエラストマー材料から成る。電解質又は溶液に対して透過性を有する剛性の、例えば多孔性の構造物で、ポリマーアクチュエータ材料の少なくとも一部を囲繞し、アクチュエーションの方向付けを容易にする。
【0023】
アクチュエーション刺激を受けるポリマーアクチュエータの表面積の増大は、ポリマーアクチュエータ材料を粉砕して又は磨り潰して、小さな粒子又は微粒子にすることにより可能である。次いで、アクチュエーション材料の粒子を、電解質によりスラリーにする。この粒子は、可塑性且つ多孔性の筺体に入れられる。この筺体は、筺体外面に接触した電極、或いは、粒子とこの粒子を直接取り囲む電解質に直接接触した、筺体を貫通する電極を有する。この可塑性の筺体は、少なくともその一部が、アクチュエーション動作を方向付ける剛性で多孔性の容器に入れられ、電解質流体がこの剛性容器を通過する。
【0024】
アクチュエータアセンブリは更に、活性炭等のガス吸着材料を含み得る。或いは、電解質又は溶液中に発生したガスを可塑性の密閉ハウジングの外側の貯蔵領域に回収してもよい。この貯蔵領域は、電解質と流体的に連通しており、電解質を貯蔵領域に移さなくても、選択したガスを受け入れる。
【0025】
アクチュエータアセンブリのポリマーアクチュエータは、圧盤又はピストンとして機能する。また、アクチュエータアセンブリの電極は、更に複雑なシステムにおける一連のアクチュエータと直列に電気接続出来るように構成される。このアセンブリは、プログラマブルコントローラと電源を含み、電極間に電位差を生じ、このプログラマブルコントローラに電力を供給する。アクチュエータアセンブリを更に自動運転するために、1つ又は複数のセンサが、このコントローラにフィードバックを送る。このアクチュエータアセンブリ又は所望の構成の複数のアクチュエータアセンブリを用いて、流体を圧送できる。
【0026】
本発明は、他の態様において、ハウジング、第一電極、第二電極、及び電解質を含むポリマーアクチュエータアセンブリを提供する。これらの電極が膜で分離されており、第一電極と第二電極の間に電圧が印加された時、それぞれの電極を取り囲む電解質のpH差が保たれる。このアセンブリは、電解質中のpH変化に反応する、電極付近に配置された複数のポリマーアクチュエータを含み得る。
【0027】
ポリマーアクチュエータの表面積は、アクチュエーテション材料を粉砕して又は磨り潰して顆粒することにより、増大させることができる。多孔性の容器は、ポリマー製の袋であり、この袋の中でアクチュエーション材料の顆粒を電解質によりスラリーにする。
【0028】
本発明のまた別の様態において、ポリマーアクチュエータ部品は、刺激に反応して疎水性ポリマーと架橋した体積を増大させる、アクチュエーションポリマーを含む。アクチュエーションポリマーと疎水性ポリマーは、エーテルエポキシドとNH(アミン)反応剤を含み、NH成分は好ましくは両ポリマーに共通である。アクチュエーションポリマーのエポキシドは、ポリエチレンジグリシジルグリコールエーテル等の親水性ジエポキシドである。疎水性ポリマーのエポキシドは、ネオペンチルジグリシジルエーテル又はポリプロピレンジグリシジルグリコールエーテル等の疎水性ジエポキシドである。NH反応剤は、Huntsman Corporationが市販しているJEFF AMINE(登録商標)T−403等のポリエーテルアミンである。重合時間を短縮するために、疎水性ポリマーは更に、ポリエチレンイミン及び水を含んでもよい。
【0029】
デンドリマー無しのアクチュエータポリマーにおけるエポキシドとNH反応剤の比は、通常約1:2と約1:10の間で、好ましくは約1:2.85である。疎水性ポリマーにおけるエポキシドとNH反応剤の比は、通常は約1:1.5と約1:3の間で、好ましくは約1:2.0である。エポキシドとNH反応剤の比は、デンドリマーを組み込むと、各樹枝状分子上のNHサイトの数に応じて大きく異なり、NH単位は初代分子の4個から10代目分子の5,000個を越える幅がある。ポリマーを組み込んだデンドリマーのエポキシドとNH単位の比が、更に大きな値をとることもあり、1:4から1:数千のNH単位を容易にとり得る。
【0030】
本発明の複合型ヒドロゲル材料を用いて、疎水性ポリマーにより規定体積に密封したアクチュエータポリマー、又は疎水性ポリマーにより外部環境から保護したアクチュエータポリマーを作製できる。複合型ヒドロゲル材料は、センサ材料構造、ゲル電解質材料、イオン選択透過性膜、液体の濾過処理部品、創傷ケア膜、又は酸除去材料に加え、当業者に周知のその他多くの用途に使用できる。
【0031】
本発明は、別の態様において、親水性エーテル及び疎水性エーテルの両方とエポキシドとを含むエーテル反応剤を重合して作製する、ポリマーアクチュエータ材料を提供する。この材料のアクチュエーション速度又は可塑性は、主要なエーテル反応剤と重要性の低いエーテル反応剤の比に応じて調節可能である。この態様では、エポキシドとNH反応剤の比は、通常、好ましくは約1:2.5と約1:3の間、より好ましくは約1:2.85である。親水性エーテルと疎水性エーテルの比は、約100:1と約1:100の間、通常約99:1である。
【0032】
また別の態様において、本発明は、改良型のポリマーアクチュエータの電極を提供する。ポリマーアクチュエータの電極と電解質の界面におけるガスの発生を制御するためには、電極に塗布又は固着された、活性炭層(とは限らない)の内部に二重層の容量又は電荷を貯蓄可能な電極が望ましい。本発明のこの態様は、ポリマーアクチュエータを活性化する装置を提供する。このポリマーアクチュエータは、1つ又は複数のポリマーアクチュエータを含み、各アクチュエータが1つ又は複数の二重層キャパシタ用電極を含むものである。このポリマーアクチュエータは、電気的又は化学的に活性化される。この二重層キャパシタ電極は、水系であっても非水系であってもよい電解質中にある。これらの電極は、放電回路とコントローラに接続可能であり、このコントローラは、所定時間で、又はこのシステムに特定量の電荷が蓄積された時に、放電回路を開閉するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1A】本発明の一態様による、活性化前の例示的な複合型エポキシポリマーアクチュエータ部品を示す。
【図1B】本発明の一態様による、活性化後の例示的な複合型エポキシポリマーアクチュエータ部品を示す。
【図1C】本発明による、複合型エポキシポリマーアクチュエータ部品の例示的な配列を表す。
【図2A】本発明の例示的なアクチュエータアセンブリの概略図である。
【図2B】本発明の別の例示的なアクチュエータアセンブリであり、とりわけ複数のアクチュエーション領域を含むものの概略図を表す。
【図2C】本発明の別の例示的なアクチュエータアセンブリであり、とりわけアクチュータアセンブリの各電極を囲繞する水素化物材料を含むものの概略図である。
【図3A】本発明の例示的なアクチュエータアセンブリであり、とりわけガス吸着材料を含むものの概略図である。
【図3B】本発明の例示的なアクチュエータアセンブリであり、とりわけアクチュエータで発生するガスを封鎖する分離室を含むものの概略図である。
【図4】本発明の一態様による、二重層キャパシタ用電極を含むアクチュエータアセンブリの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
添付図面を参照することにより、本発明の多くの態様の理解を深めることができる。図面中の部品は、必ずしも縮尺通りではなく、本発明の原理を明示することを重視したものである。また、図面中、それぞれの図面を通じて、対応する部分を同様の符号で示している。
【0035】
以下の説明で「上」、「下」及び「側」等の、方向的な又は幾何学的な用語は、本図面中に描かれた図の方向に関してのみ、使用されている。これらの用語は、重力基準座標系に関する方向を示唆又は制限するものではなく、互いに対する方向を識別するために使用されている。本発明の部品は、多くの異なる方向に配置可能なので、方向を示す用語は、図解目的に使用しているのであって、決して制限を加えるものではない。なお、その他の実施形態も利用可能であり、本発明の範囲から逸脱することなく、構造的又は論理的な変更が可能である。
【0036】
電源から電極への送電又は結線方法等の各種実施形態の詳細は、こうした結線の各種方法が当業者に周知なので、図解を簡略にするために省略されている。「電解質」という用語は、水系電解質、非水系電解質、ポリマー電解質、及び固体電解質に関しその全てを含意し、当該技術分野において周知のものを含む。「電極」という用語は、金属類、カーボン類、グラフェン類、酸化物類、導電性ポリマー類、又はこれらを組み合わせたもの等、当該技術分野において周知の材料から成る電気化学系で一般的に使用されるアノードとカソードに関する。「セパレータ」という用語は、ターゲットイオンがイオンを含む周囲媒体よりも速くセパレータを通過又は横切ることができる、あらゆるナノ、ミクロ、又はマクロな多孔質材料に関する。「イオン」という用語は、イオン類、イオン種だけでなく、アニオン、カチオン、電子、プロトン、及びこれらの濃度値に関する。「ハウジング」という用語は、この装置の外側部に関し、この外側部は、ゴム類、シリコーン樹脂、ポリウレタン、金属化ポリマーフィルム、及びその他の当該技術分野において周知のプラスチック類又はポリマー類等の、可塑性材料、剛性材料、弾性材料、非弾性材料、又はこれらを組み合わせたものから加工できる。このハウジングは、内側部品の動きや膨張を許容するだけでなく、装置を電解質で満たし、電解質の漏れ又は蒸発のいずれをも阻止する容器及びバリヤとして機能し、電極を電源と電気的に接続させ、必要に応じて、このハウジングから電極の出し入れを可能にし、必要に応じて、あらゆる不要な発生ガスを放出できるようにも構成される。
【0037】
図面を参照すると、アクチュエータ100は、部分的にポリマーアクチュエータ材料から成る。一実施例では、これらのポリマーアクチュエータは、イオン又はpH反応型のエポキシポリマーヒドロゲル系ポリマーにより形成される。このようなポリマーの例が、2007年7月10日に出願され、2008年7月3日に公開された「SUPER ELASTIC EPOXY HYDROGEL(超弾性エポキシヒドロゲル)」と題する特許文献1に記載されている。その他のポリマーアクチュエータの例としては、以下のイオン官能基を有するポリマーを含む。イオン官能基は、即ち、カルボン酸、リン酸、スルホン酸、一級アミン、二級アミン、三級アミン、アンモニウム、アクリル酸、メタアクリル酸、ビニル酢酸、マレイン酸、メタクリルイルオキシエチルリン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルピリジン、ビニルアニリン、ビニルイミダゾ−ル、アミノエチルアクリレート、メチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、エチルアミノエチルアクリレート、エチルメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、メチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、エチルアミノエチルメタクリレート、エチルメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アミノプロピルアクリレート、メチルアミノプロピルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、エチルアミノプロピルアクリレート、エチルメチルアミノプロピルアクリレート、ジエチルアミノプロピルアクリレート、アミノプロピルメタクリレート、メチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、エチルアミノプロピルメタクリレート、エチルメチルアミノプロピルメタクリレートである。ジエチルアミノプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルプロピルアクリルアミド、及びα−クリルイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩等のポリマーの使用が可能なことが報告されているが、これらの例は参考用であり、本発明の範囲又は使用の制限を意図するものではない。
【0038】
本発明は、一態様において、疎水性材料から成る新規のアクチュエータポリマーを含み、この疎水性材料は、架橋メカニズムに複数のジエポキシド又はポリエポキシドを用いてスマートヒドロゲルポリマーで架橋し、分子レベルで材料どうしを接着したものである。また、単一のジエポキシド又はポリエポキシドを用いて、材料の異なる層を、JEFF AMINE(登録商標)等のポリアミン成分で、種々の官能基、又はポリマー鎖及びバックボーンと架橋することにより、複合材料を形成できる。
【0039】
先に出願された特許文献1(その全体を本明細書に援用する)には、ポリエーテルアミンをポリグリシジルエーテルと反応させて形成した、特有のエポキシヒドロゲルポリマーが記載されている。結果的に得られるポリマーは、種々の用途を有する超弾性ヒドロゲルである。このエポキシヒドロゲルは、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等の「エーテル反応剤」、ポリオキシアルキレンアミン類、及びHOを、それぞれの比率で混合して、材料を水溶液重合させる。特に好ましいのは、Huntsman Corporationが商品名JEFF AMINE(登録商標)として市販しているようなポリオキシアルキレンアミンと、種々のエーテルと反応してエポキシヒドロゲルを形成する「エポキシ」成分等のその他ポリエーテルアミンである。このポリオキシアルキレンアミンは、ポリエーテルバックボーンの末端に付いた一級アミン基を含む。したがって、これらは「ポリエーテルアミン」である。このポリエーテル型のバックボーンは、プロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド/エチレンオキシドの混合物のいずれかに基づくものでよい。或いは、他のバックボーンセグメントを有し、一級アミンをヒンダードアミンにすることにより又は二級アミンの官能性を備えることにより異なる反応性を備えるものでもよい。
【0040】
本発明の一実施形態では、ヒドロゲルポリマーアクチュエータの親水性変形物を、ジグリシジル(エーテル反応剤)成分を変えつつ、同じエポキシJEFF AMINE(登録商標)T−403成分を維持することにより、JEFF AMINE(登録商標)T−403とポリエチレンジグリシジルグリコールエーテルに基づいてゲルを架橋して疎水性変形物にする。
【0041】
特に図1Aに関しては、分子レベルで一緒に架橋した、半分が親水性アクチュエータ材料12と、もう半分が疎水性の非アクチュエータ材料14から成る、簡単な円筒体10を鋳造できる。先ずアクチュエータ材料12を金型に入れるか成形して、部分的に硬化させる。次いで、第二の材料を金型に加え両方の材料を完全に硬化させる。ジエポキシドとNHの比は可変であり、アクチュエータ材料に用いるポリエチレンジグリシジルグリコールエーテルを、ネオペンチルジグリシジルエーテル及びポリプロピレンジグリシジルグリコールエーテルの両者で置換できる。JEFF AMINE(登録商標)T−403とネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルの混合により、アクチュエータ用途に有利な疎水特性を有するポリマーが得られる。このようにして2種以上のエポキシポリマーを、その物性が非常に異なっていても一緒に接着できる。
【0042】
特定の実施形態では、疎水性ポリマー14をアクチュエータ材料12に接着させる。図1Cの疎水性ポリマー14は、コントローラのセンサ及び電源に電気接続されたアドレス電極6及び7を有する、親水性のアクチュエータ材料12に接着されている。先に出願された特許文献1に記載のような疎水特性とアクチュエータゲルへの結合能力とを有するポリマーを形成するにあたり、多数の様々な化学薬品をJEFF AMINE(登録商標)T−403に添加できる。例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを、JEFF AMINE(登録商標)T−403に、アクチュエータゲルの標準処方に用いるエポキシド/NH反応剤の比と同じエポキシド/NH反応剤の比である1:2.85で添加できる。エポキシド/NH反応剤の比を低くして、重合を速く進行させてもよい。ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとJEFF AMINE(登録商標)T−403の混合物は、エポキシド/NH反応剤の比が1:1.7、1.8、1.9及び2.0の全てにおいて、60℃で5時間加熱後、更に室温で72時間硬化することにより順調に重合することがわかった。これらの比で得たポリマーの疎水性として、水中に最長3週間貯蔵後の膨潤は略最大で約8〜10%であった。更にエポキシド/NH反応剤の比を増大させると、得られるポリマーの弾性もまた増加した。その結果、エポキシド/NH反応剤の比が1:2.0のネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとJEFF AMINE(登録商標)T−403の混合物は、硬化後だけでなく水和後も、アクチュエータポリマー12との優れた接着性を示した。
【0043】
必要に応じて、疎水性を増大させたり、重合に必要な時間を短縮したりできる。ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(PPGDGE)を、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとJEFF AMINE(登録商標)T−403混合物に、エポキシド/NH反応剤の比を1:2.0又はそれ以上に保ちながら添加できる。10%、26%、及び50%のPPGDGEを有するポリマーを合成して水中に貯蔵し、その疎水性又は膨潤抵抗性を試験した。水中に2週間貯蔵後のゲルは全て、12%〜15%膨潤した。更に驚くべきことに、PPGDGEの添加により、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとJEFF AMINE(登録商標)T−403のベースポリマーに比べて、ポリマー弾性が減少する結果が見出された。
【0044】
ゲル化時間を短縮するためにポリエチレンイミン(分子量1300)をネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルとJEFF AMINE(登録商標)T−403のベースゲルに添加できる。ポリエチレンイミン10%及び15%を、水10%と共に添加すると、ゲルの重合が速くなる。60℃で5時間加熱後、このゲルは完全に重合し、ゲルの粘性を低下するための更なる室温硬化が不要になる。
【0045】
高速重合の利点は、疎水性の低下を伴うことである。これらのポリエチレンイミン含有ゲルは、2週間の水中貯蔵後、23%〜32%膨張することがわかった。したがって、疎水性を増大させて重合時間を短縮したポリマーは可能であるが、性能、特に結果的に得られるポリマーの疎水性が引き換えになる。
【0046】
ポリマー鎖長とエポキシド/NH反応剤比に対するアミンの比によっても、親水性アクチュエータゲルの重合時間を短縮できる。例えば、分子量2000と1300の低分子量ポリエチレンイミン(Epomin SP−012と類似の分岐ポリマー)の50重量%水溶液を用いて、組成変化を調べた。結果的に得られたゲルは、エポキシドとNHの比が1:7又はそれ以上になり、室温で約40分で重合できた。これらのゲルは比較的脆弱で硬く、パーセント水和率で正常範囲の約400%を示し、標準的なゲル処方の値と一致した。
【0047】
図1Bで図解した親水性アクチュエータポリマーと疎水性ポリマーを含む新規の複合アクチュエータ構造の初期アクチュエーションテストにおいて、各アクチュエータ部分が、陽電流1mAで好適に100%膨潤することがわかった。したがって、アドレス可能位置の蠕動型ポンプ機構又は図1Cに示したアクチュエータ配列を、試験したこの複合ポリマーから効果的に構築できる。同様に、試験したこのポリマーは、種々の用途に使用可能な、高性能の化学反応型ヒドロゲルであることがわかった。これらのポリマーを含む材料は、特定の使用と用途に有利な多くの層と形状に鋳造できる。
【0048】
本発明の別の態様では、2種以上のジエポキシドを組み合わせて単一のポリマーアクチュエータ組成物を形成し、このアクチュエータ材料の性能を、機能が優勢なジエポキシドと機能が劣勢なジエポキシドの比に応じて調節する。機能が優勢なジエポキシドと機能が劣勢なジエポキシドの比を変化させて、アクチュエーション速度又は材料の柔軟性を有利に変えることができる。特定の実施形態では、1%ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを上記の特許文献1に記載のJEFF AMINE(登録商標)T−403とPEGDE処方に添加することにより、遥かに高速なアクチュエータが得られる。このことは、その使用や、機能層の架橋によりできた複合アセンブリに用いる材料の制限を意図するものではない。
【0049】
複合ヒドロゲル材料は、センサ材料構造物、ゲル電解質材料、選択的イオン透過膜、液体濾過処理、創傷ケア膜、アクチュエータ、又は酸除去材料としても使用できる。このプロセスを用いて外層、又はアクチュエータ等の複合構造の複数層を密封することにより、ポリマー内部又はその周囲の電解質を効果的に密封し蒸発を防ぐことができる。更には、上記の複合ヒドロゲルを用いて、内部の材料をUVへの暴露から保護することで、外部環境から保護する。上記の実施形態は、本発明の複合ヒドロゲルを使用可能な数例に過ぎず、本発明の範囲の制限を意味するものではない。
【0050】
本発明の用途の1つは、ポリマーアクチュエータの膨張比の大きさと再現性を増大させるために有効表面積を増大させることを含む、ポリマーアクチュエータの改良に関する。このことは、ポリマーの実際の表面積の増大、有効表面積の増大、電極の改良、及びガス低減方法により達成される。本発明の改良は、従来技術の方法に比べ変動を削減しつつ、体積膨張率の増加が400%に達する。
【0051】
本発明によるアクチュエータアセンブリ100の一実施例を図2Aに概略的に示す。アクチュエータアセンブリ100は、ポリマーアクチュエータ材料113と、上部電極106及び下部電極108を含む付随の電極セットとを含む。下部電極は、金属水素化物材料110と接触している。電極セットとポリマーアクチュエータ113は、ハウジング114に収容される。ハウジング114は、側面に折り目、プリーツ、又はその他追加の材料を有して形成されることにより、アクチュエータアセンブリの膨張率に影響することなく、大きなアクチュエータ材料の膨張率を許容し、発生したあらゆる過剰なガスを貯蔵するためのポケット又は領域が備わる。また、電解質112は、ハウジング114に収容され、電極セット(106、108)とアクチュエータ113とに接触している。アクチュエータ113は、水和エポキシゲルを粉砕してそのゲルを可塑性の多孔性バッグ116に入れて作製した、重合ポリマーアクチュエータ粒子である。また、アクチュエータ113は、上記のジエポキシドを2種以上含むことで、アクチュエータ材料の性能を変えることができる。バッグ116は、厚さ0.006インチ、孔の大きさ150ミクロンのポリプロピレンメッシュ織物116で出来ており、ヒートシールされている。1つ又は複数のバッグを、体積とストロークの点で有利になる構成で使用する。多孔質の分離膜115は、電解質112との接触を保ちながら、電極108と反対電極106間のpH勾配を分離する。
【0052】
ポリマーアクチュエータ113は、電解質112の変化に応じて膨張又は収縮する。使用可能なポリマーアクチュエータ113には数種類あり、「酸反応型」ポリマーアクチュエータ及び「塩基反応型」ポリマーアクチュエータが含まれる。「酸反応型」ポリマーアクチュエータは、ポリマーアクチュエータ113を取り巻く電解質112のpHの減少に反応して膨張する。このことは、電極108に対して電極106に正バイアスを印加することにより達成される。正バイアスを印加することにより、電流が電極106から電極108に流れ、アクチュエータ113を取り巻く電解質112の陽イオン(H)が増加する。水溶液中に配置した電極間に電圧を印加すると、電極反応の結果、水素イオン及び/又は水酸化物イオンを消費するか、或いは電極表面に発生する電気二重層により濃度勾配が生じ、結果、電極近辺のpHが変化する。こうして、アクチュエータ113を取り巻く電解質の酸性度は増加し(より低いpH)、アクチュエータ113が膨張する。
【0053】
固体ポリマーゲルブロックの膨張速度は、電解質又は溶媒がポリマーアクチュエータに拡散する能力により限定されるので、アクチュエーション速度は、電解質にアクセスできるポリマーアクチュエータ材料の表面積の増大により増大する。電気的バイアスを逆転させると、陽イオンの流れが逆転し、アクチュエータ113を取り巻く電解質112の塩基性は増加し(即ち、酸性度が低くなる)、アクチュエータ113に対して反対又は逆の効果をもたらす。
【0054】
また「塩基反応型」ポリマーアクチュエータ113も使用できる。この場合、電極108に対して負のバイアスを電極106に加えると、ポリマーアクチュエータを取り巻く電解質112のpHが上昇し、この塩基反応型ポリマーアクチュエータ113が膨張する。その場合、金属水素化物110が、電解質、電気化学反応、及び動作中に発生するガスの種類によっては、電解質水溶液中の電極106と接触する可能性がある。ポリマーアクチュエータ113が膨張すると、アクチュエータアセンブリ100全体が膨張する。
【0055】
酸反応型アクチュエータと塩基反応型アクチュエータの両方を利用した、別設計のアクチュエータアセンブリ120を図2Bに概略的に示す。アクチュエータアセンブリ120は、酸性反応型ポリマーアクチュエータ鋳造ゲル123Aと、塩基反応型ポリマーアクチュエータ鋳造ゲル123Bと、金属水素化物121に接触してハウジングから出た上部電極128及び下部電極126とを含み、その全てがハウジング124に収容されている。電解質122Aが、上部電極128と酸性反応型アクチュエータ123Aを取り巻いており、下部電解質122Bが、下部電極126と塩基反応型アクチュエータ123Bを取り巻いている。多孔質の分離膜125が、上部電解質122Aと下部電解質122Bの間にイオンを流して、これらの電解質どうしを分離する。
【0056】
正バイアス電流を上部電極128と下部電極126の間に印加すると、上部電解質122AのpHが下降し、下部電解質122BのpHが上昇する。上部電解質122AのpHの下降(酸性度の増加)により、酸性反応型ポリマー素材123Aは膨張するが、下部電解質122BのpHの上昇(より高い塩基性)により、塩基反応型ポリマー材料123Bが膨張する。アクチュエータを二層にすることにより、アクチュエータアセンブリ全体で獲得できる総変位量を2倍にできる。酸反応型ポリマーアクチュエータの層と塩基反応型ポリマーアクチュエータの層を交互に有する、ポリマーアクチュエータの追加層を用いて、アクチュエータアセンブリ120の最大全膨張率を増大させることができる。
【0057】
アクチュエータアセンブリ130の別の実施形態が、図2Cに示されており、図2Aに示したアクチュエータアセンブリと同じ実施形態に加えて、金属水素化物材料131Aが接触している上部電極136と、下部電極138を含んでいる。
【0058】
別の実施形態であるアクチュエータアセンブリ130の別の実施形態が、図2Cに示されており、これは、鋳造ゲルとしてポリマーアクチュエータ素材を有する図2Aに示したアクチュエータアセンブリと同じ実施形態であり、複数のアクチュエータ材料の鋳造物又はバッグを同じ構成で使用できる。このことは、図示した構造全てについても同様である。また、金属水素化物材料131Aが接触している上部電極136と、下部電極138も図示されている。
【0059】
ポリマーアクチュエータアセンブリの別の実施形態を図3Aに示す。ここでは、例えば湿潤時に酸素を吸収できる活性炭等のガス吸収材料215の直近に、上部電極206がある。このガス吸収材料は、電解質212と接触しており、ガスが電解質212を通ると、電極206に発生したガスを吸収する。下部電極208は、金属水素化物材料210と接触している。電極のセットと鋳造ゲル213であるポリマーアクチュエータ材料は、ハウジング214に収容される。電極のセットとアクチュエータ材料213に接触している電解質212は、ハウジング214に収容される。電極208を周囲の電解質212を分離するのは、多孔質の分離膜215である。ポリマーアクチュエータ213は、図2Aに記載した同種のアクチュエーションメカニズムと反応を用いて、電解質212の変化に応じて膨張又は収縮する。
【0060】
また別の好ましいポリマーアクチュエータアセンブリの実施形態を図3Bに示す。ここでは、アクチュエータ材料230が、可塑性の多孔性バッグ223に保持されたポリマー粒子であり、このポリマー粒子を収容したバッグ223が、剛性の多孔性構造229に保持されている。これは、膨張する可塑性バッグ223を保持し、ポリマー材料230の動作中にこのバッグ223を一方向に方向付けする一助となる。このことは、ポリマー材料230の膨張に因って可塑性バッグ223がプレート228を押すときのストロークの効率又は距離の改善に影響する。上部電極206は、接触が最大になるように、ポリマー粒子230どうしの間の粒子用バッグ223に挿入される。
【0061】
アセンブリ224は、液状酸素吸収剤「Oxisorb」等の別のガス吸収剤227に向けて排気する。ガス吸収剤227は、電解質液を拘束しつつガスを通過させる疎水性のセパレータ材料226により、電解質から分離される。また、排気口に吸収剤227が無く、ガスがポリマー材料のアクチュエーションに影響しないように、ガスを分離した区画に収容するのみとしてもよい。セパレータ材料226は、電解質222と接触しており、電極206に発生したガスが電解質222を通ると集まるようになっている。下部電極208は、金属水素化物材料221と接触しており、ガスが金属水素化物材料221に吸着するようになっている。電極セット(206、208)とポリマーアクチュエータ223は、電解質222に接触した状態で、ハウジング224に収容される。多孔質膜225により、電極208と周囲の電解質222が分離される。
【0062】
全図面において、電源101と、アクチュエータアセンブリの動作、速度、及び力を制御するコントローラ103とを示す。また、図3Bの実施形態では、フィードバックとアクチュエータアセンブリの自動制御のための、センサ105との通信を示す。
【0063】
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)又は他のクロマトグラフィー法等、種々の解析科学及び方法に関して当該技術分野で周知のガス軽減材料及び技術が多くあるが、記載の実施形態は全て、アセンブリの一部としてガス軽減材料、部品、及び技術を用いた、可能なアクチュエータアセンブリ構成を示したものであって、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
本発明の別の態様では、二重層キャパシタンス又は電荷の保存が可能な電極を用いて、アクチュエータ内でのガスの発生を制御する。例えば、擬似キャパシタ型電極を用いて、ガスの発生を制御できる。
【0065】
本発明による電気回路は、電解質と電極表面の界面において、ガスを発生するのではなく、電荷層を形成する。電極が完全に帯電するまでこのプロセスは継続され、その時点で電荷が分散されてガスが発生する。
【0066】
図4に示した例から分かるように、アクチュエータアセンブリは、メタライズドポリエチレンフィルム(これに限定されない)等の、可塑性の非透過性ハウジング材料302に収容される。このハウジングは、電解質308、ポリマーアクチュエータ材料301、ポリマー用の半多孔性容器303、ポリマーに接触しているか又はポリマー付近の電極304、電極間に位置した半多孔質のセパレータ膜又はシート305、カーボンPTFEキャパシタ層コーティング306、及び放電回路309とコントローラ及び電源に電気的に接続された反対側の電極307を収容する。
【0067】
本発明の本様態の一例では、電極が充電サイクルの所定時間に放電する。本例では、ガスの発生時点が、エネルギーがキャパシタに蓄積される割合ではなく、所定時間の関数である。放電が生じると、充電プロセスが再開するので、充放電サイクルを用いることによって、電極でのガス生成が解消する。
【0068】
この種の電極を製造するには、DuPont社等が製造するテフロン(登録商標)(PTFE)水性乳剤を、例えば活性炭等の大表面積カーボン又は他の大表面積材料と、例えば金属酸化物等の酸化物類と、金属水素化物等の他の材料と混合する。これらの材料を単独で又は一緒に混合して、電極でのガス生成を軽減する、所望の性能曲線を形成できる。大表面積材料をこの乳剤と混合して電極上にプレス又はコーティングし、適切なプロセス温度まで焼成して混合物を互いに結合させて電極に接着する。このプロセスは、電池及びキャパシタの製造分野において周知である。電極基板は、例えば技術的に周知なように穿孔、拡張、又は固体金属類(限定はしないが、低コストのアルミニウムホイル又はステンレススチールホイル等)でメッキできる。
【0069】
なお、上述の本発明の実施形態、特に「好ましい」実施形態は、実施可能な例に過ぎず、本発明の原理の明確な理解のために示したに過ぎない。本発明の概念及び原理から実質的に逸脱することなく、上述の実施形態に対して多くの変形及び修正が可能である。ここでは、そのような修正及び変形は全て、本発明の範囲に含まれ、添付の特許請求の範囲により保護されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード電極及びカソード電極と、電解質及び前記アノード電極又は前記カソード電極と接触する体積変化型ポリマーアクチュエータとを含むアクチュエータアセンブリであって、
前記電極どうしが、電荷分離又はイオン分離によりpHの調節を促進する多孔質膜により互いに分離する、アクチュエータアセンブリ。
【請求項2】
前記1つ又は複数の電極の表面と接触して該表面を覆う金属水素化物材料を更に含む、請求項1に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項3】
更に前記電解質、前記アノード電極、前記カソード電極、及び前記体積変化型ポリマーアクチュエータを収容し、前記電極用の密封入口点又は出口点を備える、可塑性の密閉外部ハウジングを含み、
前記体積変化型ポリマーアクチュエータが、電位差により誘発される前記電解質のpH変化又は化学変化に反応して膨張又は収縮するように構成される、請求項2に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項4】
更に第二の体積変化型ポリマーアクチュエータを含み、該体積変化型ポリマーアクチュエータの各々が、前記電極の一つに隣接して前記多孔質膜により互いに分離され、且つ、該体積変化型ポリマーアクチュエータが、電位差ができると同時に膨張又は収縮するように構成される、請求項3に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項5】
前記体積変化型ポリマーアクチュエータと前記ポリマーアクチュエータに接触する電極が、前記多孔質膜と同一材料でできた可塑性の容器又はバッグ中に密封され、且つ、前記可塑性の容器から出た前記電極の一部が、前記電解質から連続的に遮断される、請求項3に記載アクチュエータアセンブリ。
【請求項6】
前記可塑性の容器又はバッグ、或いは前記可塑性の容器又はバッグの一部が、弾性材料から成る、請求項5に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項7】
更に、アクチュエーションの方向付けを促進するための、前記体積変化型ポリマーアクチュエータ材料を少なくとも部分的に囲繞する、前記電解質を透過する剛性構造を含む、請求項3に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項8】
少なくとも前記剛性構造の一部が多孔性である、請求項7に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項9】
前記体積変化型ポリマーアクチュエータが、アクチュエーション材料の粒子から成り、前記アクチュエーション材料の粒子と前記電解質がスラリーを形成し、且つ、前記アクチュエータアセンブリが更に、内側部と外側部を有する可塑性の多孔質筺体を含み、且つ、前記アクチュエーション材料の粒子を前記筺体内側部に収容する、請求項3に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項10】
前記電極の一つが前記筺体外側部の表面と接触している、請求項9に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項11】
前記電極の一つが前記筺体内側部のポリマーアクチュエータ粒子と接触している、請求項9に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項12】
前記筺体が、前記電解質が前記筺体内のアクチュエーション材料に流体的にアクセス可能な多孔性の剛性容器中に収容される、請求項9に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項13】
更にガス吸着剤を含む、請求項3に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項14】
前記可塑性の密封外側ハウジング内の電解質に流体接続している、前記可塑性の密閉外側ハウジングの外側に貯蔵領域を更に含む、請求項3に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項15】
アクチュエータアセンブリが少なくとも一つの別のアクチュエータアセンブリと直列に電気接続可能なように、アクチュエータアセンブリの電極が構成される、請求項1に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項16】
前記電解質が水溶液を含む、請求項1に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項17】
前記電解質が非水溶液を含む、請求項1に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項18】
前記ポリマーアクチュエータが圧盤又はピストンを駆動させる、請求項1に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項19】
前記圧盤又はピストンが流体を圧送する、請求項18に記載のアクチュエータアセンブリ。
【請求項20】
電源とプログラマブルコントローラを更に含む、請求項1に記載アクチュエータアセンブリ。
【請求項21】
前記コントローラにフィードバックを送る1つ又は複数のセンサを更に含む、請求項20に記載アクチュエータアセンブリ。
【請求項22】
ハウジングと、
電解質の第一の部分と接触する第一電極と、
前記電解質の第二の部分と接触する第二電極と、
前記第一電極と前記第二電極の間に電圧を加えたとき、前記電解質の第一の部分と前記電解質の第二の部分とを分離して、前記電解質の第一の部分と前記第二の部分の間のpH差を維持する膜と、
前記電解質の第一の部分に配置され、前記電解質の第一の部分でのpH変化に反応して体積が変化するように構成された、複数のポリマーアクチュエータと、
を含む、ポリマーアクチュエータアセンブリ。
【請求項23】
前記ポリマーアクチュエータのうち少なくとも一つが、多孔性容器に収容されたポリマーアクチュエーション材料の顆粒を含む、請求項22に記載のポリマーアクチュエータ。
【請求項24】
前記多孔性容器がポリマーバッグである、請求項23に記載のポリマーアクチュエータ。
【請求項25】
前記ポリマーアクチュエーション材料の顆粒が、前記電解質を有するスラリーを含む、請求項23に記載のポリマーアクチュエータ。
【請求項26】
刺激に反応して体積を増加させ、架橋により疎水性ポリマーになるアクチュエーションポリマーを含む、ポリマーアクチュエータ部品。
【請求項27】
前記アクチュエーションポリマーと前記疎水性ポリマーが、NH(アミン)反応剤とエポキシドを含む、請求項26に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項28】
前記アクチュエーションポリマーのNH反応剤と前記疎水性ポリマーのNH反応剤が同一のNH反応剤を含む、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項29】
前記アクチュエーションポリマーのエポキシドが、ポリエチレンジグリシジルグリコールエーテルを含む、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項30】
前記疎水性ポリマーのエポキシドが、ネオペンチルジグリシジルエーテル又はポリプロピレンジグリシジルグリコールエーテルのいずれかを含む、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項31】
前記疎水性ポリマーのNH反応剤がポリエーテルアミンを含む、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項32】
前記アクチュエータポリマーのNH反応剤がポリエーテルアミンを含む、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項33】
前記NH反応剤がポリエーテルアミンを含む、請求項28に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項34】
前記ポリエーテルアミンがポリオキシアルキレンアミンを含む、請求項33に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項35】
前記疎水性ポリマーのエポキシドとNH反応剤の比が、約1:1.5と約1:4の間である、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項36】
前記疎水性ポリマーのエポキシドとNH反応剤の比が約1:2.0である、請求項27に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項37】
前記疎水性ポリマーがポリエチレンアミンと水を含む、請求項26に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項38】
NH反応剤とエポキシドを含み、該エポキシドが親水性エーテルと疎水性エーテルを含む、ポリマーアクチュエータ材料。
【請求項39】
前記エポキシドと前記NH反応剤の比が約1:2.85である、請求項38に記載のポリマーアクチュエータ材料。
【請求項40】
前記親水性エーテルと前記疎水性エーテルの比が約99:1である、請求項38に記載のポリマーアクチュエータ材料。
【請求項41】
前記疎水性ポリマーが、前記親水性ポリマーを外部環境から保護するように構成される、請求項35に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項42】
前記疎水性ポリマーが、前記アクチュエータポリマーを規定体積中に密閉する、請求項35に記載のポリマーアクチュエータ部品。
【請求項43】
1つ又は複数のポリマーアクチュエータを含み、該アクチュエータの各々が1つ又は複数の二重層キャパシタ電極を有する、ポリマーアクチュエータを活性化させる装置。
【請求項44】
前記ポリマーアクチュエータを電気的に活性化させる、請求項43に記載の装置。
【請求項45】
前記ポリマーアクチュエータを化学的に活性化させる、請求項43に記載の装置。
【請求項46】
前記1つ又は複数の二重層キャパシタ電極が、非水系電解質中にある、請求項43に記載の装置。
【請求項47】
前記1つ又は複数の二重層キャパシタ電極が、水系電解質中にある、請求項43に記載の装置。
【請求項48】
前記二重層キャパシタ電極が放電回路に接続され、該放電回路がコントローラに電気的に接続されている、請求項43に記載の装置。
【請求項49】
前記放電回路が、電荷の貯蓄及び電荷の再利用を行う蓄電装置を含む、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記コントローラが、所定時間で又は前記システムに特定量の電荷が蓄積されると、前記放電回路を開閉するように構成される、請求項43に記載の装置。
【請求項51】
前記ポリマーアクチュエータが直列に接続され、ポンプを形成する、請求項43に記載の装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−519344(P2013−519344A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551386(P2012−551386)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/US2011/023375
【国際公開番号】WO2011/094747
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(509010850)メディパックス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】