説明

ガス輸送用可撓管の端末構造

【課題】 中圧A〜高圧の条件で使用しても、可撓管外部へのガスの透過を抑え、軽量で可撓性にも優れるガス輸送用可撓管の端末構造を提供する。
【解決手段】 ガス用配管端末構造1においては、ガス用配管3の端部の所定範囲における保護層21および補強層19が剥離される。また、管体15の端部には端末部材23が接合される。管体15と端末部材23の接合部を覆うように、接合部の外周には固定部材5が設けられる。固定部材5の後方側の端部は、遮蔽層17の外周に接するように、固定部材5の内周面側にOリング25が設けられる。固定部材5の他方側の端部にはフランジ部7が設けられる。フランジ部7は径方向に突出し、端末部材23のフランジ部24の後面側に接触する。フランジ部24の前面側にはパッキン11が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に中・高圧の天然ガス等のガスを輸送するためのガス輸送用可撓管の端末構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、天然ガス等のガスの輸送用の配管には、鋼管が用いられる。鋼管は耐圧強度を有すれば使用するガスの圧力によらずに適用が可能である。ところで、ガスの圧力は、ガス事業法によって、低圧(水柱ゲージ圧力0.1MPa未満)、中圧B(水柱ゲージ圧力0.1MPa〜0.3MPa未満)、中圧A(水柱ゲージ圧力0.3MPa〜1.0MPa未満)、高圧(水柱ゲージ圧力1MPa以上)と分類されている。
【0003】
また、JIS K6774によれば、低圧〜中圧Bの用途であれば、ポリエチレン素管(PE80)をガス配管として用いることができると規定されている。たとえば、特許文献1には、敷地内のガスメータの一次側に引き込まれるガス管として、ポリエチレン管や金属製のフレキシブル管が使用可能であることが記載されている。(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−194349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の通り、中圧Bよりも使用圧力が低い場合には、樹脂を透過するガス(例えばメタンガス)の量は問題となるレベルではないが、ガスの透過量は、ガス圧力に比例して増加し、管の肉厚に反比例することが知られている。したがって、低圧(0.1MPa)で使用していた樹脂管を、高圧(1.0MPa)で使用すると、ガスの透過量は10倍となる。しかし、肉厚を増したのでは、単位重量が大きくなり、コストや取り回しにも不利となる。
【0006】
一方で、樹脂配管を用いることができれば、重量のある鋼管を用いる必要がなく、敷設作業も容易である。しかし、樹脂配管を用いた場合には、配管同士の接続部となる配管の端末部において外層を剥離する必要もあり、ガスの透過を抑え構造が必要となる。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、中圧A〜高圧の条件で使用しても、可撓管外部へのガスの透過を抑え、軽量で可撓性にも優れるガス輸送用可撓管の端末構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明は、可撓性を有する樹脂製の管体と、前記管体の外周に設けられるガス遮蔽層と、前記ガス遮蔽層の外周に設けられる補強層と、前記補強層の外周に設けられる保護層と、を具備するガス用配管を用い、端部にフランジ部を有する端末部材が前記管体の端部と接合され、前記端末部材の外周部には、固定部材が設けられ、前記固定部材は、前記フランジ部の後面に押圧されて接続対象に対して接合部材で接合され、ガス配管に対する前記固定部材の形成範囲は、前記補強層と前記保護層が剥離され、前記固定部材の内面側と前記ガス遮蔽層との間にシール部材が設けられることを特徴とするガス輸送用可撓管の端末構造である。
【0009】
前記管体および前記端末部材はポリエチレン製であり、前記ガス遮蔽層の常温での天然ガス透過係数が、常温でのポリエチレンの天然ガス透過係数に対して1/2以下であることが望ましい。
【0010】
前記端末部材と前記管体の端部は、バット融着または電気融着されており、前記ガス遮蔽層は、接合部を覆うように形成され、前記管体の長手方向における前記接合部と前記フランジ部との間に前記シール部材が設けられてもよい。
【0011】
前記固定部材は、第1の固定部材と、第2の固定部材とで構成され、前記第1の固定部材は、前記フランジ部の後面に押圧されて接続対象に対して接合部材で接合されるとともに、前記第2の固定部材とパッキンを介して接合され、前記第2の固定部材は、前記管体の長手方向において、前記端末部材側から前記端末部材と前記管体との接合部をまたいで、前記管体の外周において、前記第2の固定部材の内面と前記ガス遮蔽層との間に前記シール部材が設けられてもよい。
【0012】
前記固定部材は、周方向に複数に分割されており、前記ガス用配管の外周側から被せられ、前記固定部材の内面側を前記ガス用配管の外周面方向に押圧されるように固定されてもよい。
【0013】
本発明によれば、配管の端末部分まで天然ガス等のガスの透過を防止する遮蔽層が設けられるため、ガスの透過がガス遮蔽層で遮断され、ガスが遮蔽層よりも径方向外部に漏れることがない。また、ガス遮蔽層が剥離された範囲におけるガスの透過については、固定部材とガス遮蔽層との間に設けられるシール部材によって、周囲にガスが漏れだすことがない。
【0014】
また、固定部材は、他の固定部材(接合対象)と接合が可能であるため、配管同士を接合することができる。また、固定部材は、端末部材のフランジ部の後面と接触し、配管の端末同士を対向させた際に、固定部材同士で端末部材のフランジ部を挟み込むことができるため、端末部材と固定部材との間は確実にシールされる。さらに、フランジ部は径方向に突出するため、ガスの透過を考慮すると、実質上肉厚を厚くしたのと同様の効果により、フランジ部をガスが透過することが防止される。
【0015】
また、管体および端末部材として、安価で加工性にも優れるポリエチレン管を用い、ガス遮蔽層としてポリエチレンよりもガス透過係数が1/2以下のものを用いれば、肉厚を過剰に厚くすることなく、ガスを遮蔽することができる。
【0016】
ここで、ガス透過係数は材質によって定まるものであるが、本発明において、遮蔽層が複合材(複層材)である場合には、複合材を構成する各層の厚みとそれぞれのガス透過係数とから算出される、複合材全体としてのガスの透過量から導き出されるものとする。
【0017】
また、端末部材と管体の端部がバット融着または電気融着により接合される場合において、ガス遮蔽層が電気融着ソケットの外周に形成され、管体軸方向における接合部と端末部材のフランジ部との間におけるガス遮蔽層の外周側にシール部材を設けて、固定部材と遮蔽層との間をシールすることで、接合部からのガスの漏れを確実に遮蔽することができる。
【0018】
また、固定部材が二部材よりなり、フランジ部の後面に接触する第1の固定部材と、管体と端末部材との接合部をまたいで接合部後方まで延伸する第2の固定部材とから構成されることで、ガス遮蔽層と固定部材とのシール部を接合部よりも後方とすることもできる。この場合でも固定部材およびガス遮蔽層によって確実にガスを遮蔽することができる。
【0019】
また、固定部材を周方向で複数に分割することで、固定部材を管体の外周に設けることが容易であり、固定部材を管体の外周面に対して押圧することができるため、固定部材とガス遮蔽層との間のシールを確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、中圧A〜高圧の条件で使用しても、可撓管外部へのガスの透過を抑え、軽量で可撓性にも優れるガス輸送用可撓管の端末構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ガス用配管端末構造1を示す図であり、(a)は全体図、(b)は(a)の部分拡大断面図。
【図2】ガス用配管3を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図。
【図3】管体15に遮蔽帯27を巻きつける工程を示す図。
【図4】管体15に遮蔽帯27を巻きつける工程を示す図。
【図5】遮蔽層17の機能を示す概念図。
【図6】遮蔽帯27aを示す図。
【図7】遮蔽帯27bを示す図。
【図8】ガス用配管端末構造の他の実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、ガス用配管端末構造1を示す図であり、図1(a)は全体図、図1(b)は図1(a)のA部の部分拡大断面図である。また、図2(a)はガス用外管3の構造を示す図であり、図2(a)斜視図、図2(b)は断面図である。ガス用配管端末構造1は主に、ガス用配管3、固定部材5、接合部材8等から構成され、接続対象13と接続される。
【0023】
ガス用配管端末構造1は、ガス輸送用可撓管の端部構造であり、他の接続対象13と接続される部位である。接続対象13としては、ガス用配管端末構造1と同様の構成を有し、接続部に対して対称な構造であってもよく、または、異なる構造を有する鋼管等であってもよい。
【0024】
図2に示すように、ガス輸送用可撓管であるガス用配管3は、主に、管体15、遮蔽層17、補強層19、保護層21等から構成される。ガス用配管3は、例えば、中圧〜高圧(1MPa以上)の天然ガス等の輸送に用いられる可撓管である。
【0025】
管体15は、ガス用配管3の最内層に位置する。管体15は、樹脂製であり例えばポリエチレン(高密度ポリエチレン)製である。管体15は可撓性に優れ、内部にガスが流される。
【0026】
管体15の外周には、遮蔽層17が設けられる。遮蔽層17は、管体15内部を流れるガスが管体15を透過した際に、それ以上外周側へのガスの透過を遮蔽するものである。遮蔽層17の内面は管体15の外面と密着し、隙間等が形成されないように構成される。
【0027】
遮蔽層17は、ポリエチレンの常温での天然ガス透過係数(4.87×10^(−11) (cm(STP)・cm)/(sec・cm・cmHG))の1/2以下の天然ガス透過係数を有する材質で構成されることが望ましい。ここで、STPは、0℃1気圧でのガスの体積を意味する。
【0028】
遮蔽層としては、例えばEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)、塩化ビニル、ポリメタリロニトリル、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、延伸ナイロン6(ONY)やPET(ポリエチレンテレフタレート)などが使用できる。また、湿度の変化に関係なく一定の透過係数を必要とする場合は、PETやPVDCなどの疎水性樹脂が望ましい。なお、従来の中圧Bの使用圧力の最大値である0.3MPa程度で使用される配管を、高圧である1MPa程度の圧力で使用する場合において、後述するように、管体15の外周に遮蔽層が巻きつけられて使用される場合には、遮蔽層のガス透過係数を管体のガス透過係数の1/3〜1/4程度以下とすることで、ガスの透過量を中圧での使用時と同等以下とすることができ、さらに望ましくは、管体を構成する樹脂のガス透過係数の1/5程度以下とする。
【0029】
遮蔽層17の外周には、補強層19が設けられる。なお、遮蔽層17の外周とは、特に記載がない限り、断面における遮蔽層17の外側であることを意味し、遮蔽層17と補強層19との間に他の層構造を有することをも含むものである。以下の説明においては、各層の位置関係において、単に「外周」と称するが、同様に、各層間に他の層構造を有するものを含むことは言うまでもない。
【0030】
補強層19は、管体15内を流れるガスの内圧に対する補強層である。したがって、使用される内圧に応じて、補強層19の耐圧強度が設定される。補強層19としては、例えば、補強テープにより形成される。補強テープは、たとえばポリアリレート繊維やアラミド繊維製のテープが巻きつけられる。また、スーパー繊維であるクラレ社製のベクトラン(登録商標)を使ったテープを使用することもできる。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるように巻きつけてもよく、または、多少のギャップを設けて巻きつけてもよい。また、ポリアリレート繊維製テープを正逆2重に巻きつけるなど、複数回巻きつけて補強層19を形成してもよい。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付け方法は、ポリアリレート繊維製テープの強度や必要とされる耐内圧に応じて適宜決定される。
【0031】
補強層19の外周には、保護層21が設けられる。保護層21は、敷設時や取扱い時に補強層19が傷つくことを防止し、補強層等に水が浸入することを防止するための層である。保護層21は、例えば低密度ポリエチレン製である。以上のように、ガス用配管3を構成する各層は、それぞれガス用配管3の曲げ変形等に追従し、可撓性を有する。
【0032】
なお、ガス用配管3は、たとえば、外径180φ、肉厚13.3mmの高密度ポリエチレン製の管体15の外周に、1mm厚の遮蔽層17(PET)を設け、さらにポリアリレート繊維製の厚さ1mmの補強層19の外周に低密度ポリエチレン製の厚さ2.5mmの保護層21を設けたものが使用できる。
【0033】
図1(b)に示すように、ガス用配管端末構造1においては、ガス用配管3の端部の所定範囲における保護層21および補強層19が剥離される。したがって、ガス用配管3の保護層21および補強層19が剥離された範囲には、遮蔽層17の一部が露出する。また、管体15の端部には端末部材23が接合される。なお、管体15と端末部材23の接合は、バット融着、電気融着など公知の方法を適用することができる。なお、本実施形態ではバット融着により接合した例について説明する。
【0034】
端末部材23は、例えば管体15と同様の樹脂製である。端末部材23の端部には径方向に突出するフランジ部24が形成される。また、保護層21および補強層19が剥離された範囲を覆い、管体15と端末部材23の接合部にまたがるように、接合部の外周には固定部材5が設けられる。すなわち、補強部材19が剥離された範囲では、固定部材5が耐内圧を受け持つ。このため、固定部材5の内周面全体が、確実に管体15(端末部材23)の外周面に対して直接又は遮蔽層等を介して接触し隙間がない方が望ましい(図では簡単のため、固定部材5の内周面と遮蔽層外周面および管体15(端末部材23)の外周面との間に隙間をあけて図示した例を示す)。固定部材5はリング状の部材であり、例えば金属製である。なお、固定部材5は周方向に複数に分割されていることが望ましく、例えば2分割された部材を用いる場合には、半円状の一対の部材を接合部外周に被せて、互いの端部同士を締めこむように接合すれば良い。この様にすることで、固定部材5の内周面を管体15(端末部材23)の外周面方向に押圧するように固定することができる。
【0035】
固定部材5の一方(管体15の長手方向であって接続対象とは逆方向(以下、接合部の後方とする))の端部は、端末部材23側から、管体15と端末部材23の接合部をまたいで後方まで延設される。また、固定部材5の後方側の端部は、補強層19および保護層21が剥離された範囲において、遮蔽層17が露出する部位に位置し、遮蔽層17の外周に接するように、固定部材5の内周面側にシール部材であるOリング25が設けられる。すなわち、Oリング25は、管体15と端末部材23の接合部よりも後方に設けられ、固定部材5と遮蔽層7とで挟み込まれる。前述の通り、固定部材5は管体15の中心方向に締めこまれるため、Oリング25は固定部材5と遮蔽層17との間で押圧されて確実にシールすることができる。
【0036】
固定部材5の他方側(接続対象側であって、以下、接合部の前方とする)の端部にはフランジ部7が設けられる。フランジ部7は径方向に突出し、端末部材23のフランジ部24の後面側に接触する。フランジ部7は、フランジ部24よりもさらに径方向に突出しており、当該突出部には孔が設けられ、ボルト等の接合部材9が挿入される。接合部材9は、接続対象13と接合するための部材である。
【0037】
フランジ部24の前面側にはパッキン11が設けられる。パッキン11は接続対象13側の接合面との間をシールするものである。接続対象13と対向させ、パッキン11を挟み込んだ状態で接合部材9を締めこむことで、ガス用配管3は接続対象13と接合され、この際、互いの接触面においてパッキン11が押圧されることで、接続部を確実にシールすることができる。
【0038】
ガス用配管端末構造1においては、樹脂製である管体15および端末部材23を透過したガスは、管体15と端末部材23との接合部の後方においてはOリング25でシールされる。また、固定部材5は金属製であり、ガスはほとんど透過しない。また、固定部材5と端末部材23との接触面は、フランジ部7がフランジ部24の後面に押し付けられ、Oリング25を介して確実にシールされる。また、端末部材23の端面と接続対象13との接触面はパッキン11によってシールされる。したがって、接続部近傍において、内部を流れるガスが外部に透過することがない。
【0039】
なお、端末部材23のフランジ部24にはガスが透過する恐れがあるが、フランジ部24が径方向に突出しているため、ガスの径方向への透過に対しては、実質的に肉厚を厚くしたのと同じ効果を得ることができる。すなわち、フランジ部24の径方向の突出長さが、管体15および端末部材23の肉厚に対して十分に大きければ(例えば5倍以上)、ガスの透過量が肉厚に反比例することから、ガスの透過を遮蔽することができる。
【0040】
次に、遮蔽層17の構築方法を説明する。図3は、管体15の外周部に遮蔽層17を設ける工程を示す図である。遮蔽層17は遮蔽帯27により形成される。遮蔽帯27は、フィルム状の部材であり、前述の通り、ポリエチレンの常温での天然ガス透過係数よりも透過係数の小さな材質で構成される。遮蔽帯27の幅は、管体15の外周長よりもわずかに大きい。
【0041】
図3(a)に示すように、遮蔽帯27は、遮蔽帯27の長手方向が、管体15の軸方向に略同一の方向になるように管体15へ送られ、この際、遮蔽帯27の両側は、管体15全体を包むようにU字状に曲げられる。さらに、遮蔽帯27によって管体15が包みこまれる(図3(b))。すなわち、遮蔽帯27の両側端部同士を管体15の外周部でラップさせ、遮蔽帯27で管体15を包みこむ。すなわち、ラップ部29が管体15の軸方向に沿って形成される。以上のようにして、遮蔽帯27が管体15に巻きつけられ、遮蔽層17が形成される。なお、図3に示すような、遮蔽帯27を管体15へ巻き付け方を、縦添え巻きと称する。
【0042】
ここで、遮蔽体27の巻き方は縦添え巻きに限らず、図4に示すように、管体15の軸方向に端部がラップするようにらせん巻きすることもできる。この場合は、らせん巻きする遮蔽体27の内周面に、接着強度の高い接着剤や粘着剤層を構成しておくことで、ガスの透過を防止することができるので、らせん巻きの遮蔽体27の構成も適用できる。なお、以下の説明では、縦添え巻きの例について説明する。
【0043】
次に、ガス用配管3の製造方法について説明する。あらかじめ押出により製造された樹脂製の管体15に対し、遮蔽帯供給機等から、遮蔽帯27が管体15の外周に供給され、図3に示すようにフォーミングされながら遮蔽帯27が管体15の外周に巻きつけられる。なお、ラップ部は融着、接着など適宜選択される。
【0044】
次に、遮蔽帯27が巻きつけられた管体15の外周に補強テープ巻き機等により補強テープが巻きつけられて補強層が形成される。さらに補強層が設けられた管体15は押出機に送られ、押出機によって、外周部に樹脂が押し出され、保護層21が形成される。以上により、ガス用配管3は製造される。
【0045】
次に、遮蔽層17の機能について説明する。図5は、ガス用配管3の断面の一部を示す図である。管体15内には、天然ガス等のガスが流れている。天然ガス(主にメタンガス)は、樹脂製の管体15を透過する(図中矢印B方向)。管体15の外周には遮蔽層17が形成される。遮蔽層17は、前述の通り、管体15を構成する樹脂の天然ガスの透過係数よりも小さな透過係数を有する。したがって、遮蔽層17は、管体15を透過した天然ガスを遮蔽する。したがって、配管の外部に天然ガスが透過して漏れだすことがない。
【0046】
以上説明したように、第1の実施形態にかかるガス用配管端末構造1によれば、遮蔽層17上にOリングが設けられ、端末部材23に固定部材5が押しつけられるとともに、端末部材23のフランジ部24の端面がパッキン11でシールされるため、内部を流れる天然ガスがガス用配管3の接続部において外部に漏れだすこと抑制することができる。なお、遮蔽層17は補強層19の内周側に配置されるため、内部の圧力により生じる管体周方向への張力を、外周側の補強層19が受け持つため、遮蔽層17には耐内圧を考慮した強度は不要である。また、遮蔽層17が補強層19の内周側に配置することで、補強層19との隙間に天然ガス等が溜まることがない。
【0047】
また、固定部材5によりOリング25が遮蔽層17に押し付けられるため、確実にシールができ、また、フランジ部7がフランジ部24に押し付けられ、さらにパッキン11が接続対象との間で押しつけられるため、それぞれ確実にガスをシールすることができ、ガス用配管端末構造からのガスの漏れを防止することができる。なお、遮蔽帯27が縦添え巻きされれば、遮蔽帯27同士の隙間が少なく、確実に天然ガスを遮蔽することができる。
【0048】
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態において、図1〜図5に示す構成と同一の機能を果たす構成要素には、図1〜図5と同一番号を付し、重複した説明を避ける。
【0049】
図6は、第2の実施の形態に用いられる遮蔽帯27aを示す図である。遮蔽帯27aは、金属フィルム33を樹脂フィルム31a、31bでラミネートしたものである。金属フィルム33は、フィルム上に薄く加工が容易であるものであれば良い。たとえば、アルミニウム、ステンレス、外面に耐食性の良い材質でクラッドしたクラッド鋼等が使用できる。なお、金属フィルムは例えば0.05mm程度の厚さであり、遮蔽帯27a全体としては、例えば0.2〜0.3mm程度であればよい。ここで、ラミネートフィルムの樹脂フィルム側には、後述のように、粘着剤や接着剤をコーティングしておくと良い。
【0050】
なお、遮蔽帯27aにおいては、金属フィルム33が天然ガスの透過を遮蔽するため、樹脂フィルム31a、31bは、天然ガスの透過係数が管体15と同等であってもよい。また、遮蔽帯27aも遮蔽帯27と同様に、管体15の外周に楯添え巻きされることが望ましい。
【0051】
遮蔽帯27aを用いれば、金属フィルム33を用いることで、より確実に天然ガスの透過を遮蔽することができる。また、遮蔽層によって可撓性が損なわれることがない。また、樹脂フィルム31a、31bによってラミネートすることで、補強テープを巻きつける際等において、金属フィルム33の折れ曲がりや破れ、しわなどの発生を防止できる。なお、金属フィルム33と樹脂フィルム31a、31bは接着や圧着など公知の技術が使用できる。
【0052】
次に、第3の実施の形態について説明する。図7は、第3の実施の形態に用いられる遮蔽帯27bを示す図である。遮蔽帯27bは、樹脂フィルム35の少なくとも一方の面にコーティング37が施されたものである。コーティング37は、無機材であり、金属等の蒸着やメッキ等であってもよく、またはDLC(Diamond Like Carbon)等であってもよい。
【0053】
なお、遮蔽帯27bにおいても、コーティング37が天然ガスの透過を遮蔽するため、樹脂フィルム35は、天然ガスの透過係数が管体15と同等であってもよい。また、遮蔽帯27bも遮蔽帯27と同様に、管体15の外周に楯添え巻きされることが望ましい。
【0054】
遮蔽帯27bを用いれば、コーティング37によって、より確実に天然ガスの透過を遮蔽することができる。また、コーティング37の厚さは極めて薄いため、遮蔽層17の厚みをより薄くすることができる。また、遮蔽層によって可撓性が損なわれることがない。
【0055】
次に、さらに他の実施の形態について説明する。図8(a)は、ガス用配管端末構造1aを示す図である。図8(a)に示すように、ガス用配管端末構造1aは、ガス用配管端末構造1と略同様であるが、固定部材5aの形状が異なり、これによりOリング25の位置がガス用配管端末構造1と異なる。
【0056】
固定部材5aは、固定部材5と比較して、管体15の軸方向に対応する方向の長さが短い。すなわち、固定部材5aの端部は、管体15と端末部材23との接合部をまたがない。したがって、Oリング25は、管体15と端末部材23の接合部よりも前方側に配置され、当該接合部をまたいで配置される遮蔽層17の外周に押し付けられる。
【0057】
ガス用配管端末構造1aにおいても、Oリング25は遮蔽層17の外周に押し付けられるため、端末近傍からガスが透過することを抑制することができ、ガス用配管端末構造1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、図8(b)に示すガス用配管端末構造1bとすることもできる。ガス用配管端末構造1bのように、管体15と端末部材23とが電気融着により接合される場合でも、同様の構成を適用することができる。すなわち、管体15と端末部材23との接合部の外周には、電気融着ソケット39が設けられる。この場合、電気融着ソケット39の外周を覆うように補強層19および保護層21が設けられ、電気融着ソケット39の前方側において、補強層19および保護層21が剥離され、遮蔽層17が露出する。遮蔽層17の外周には、固定部材5a内面に設けられるOリング25が配置される。
【0059】
ガス用配管端末構造1bにおいても、Oリング25は遮蔽層17の外周に押し付けられるため、端末近傍からガスが透過することを抑制することができ、ガス用配管端末構造1と同様の効果を得ることができる。
【0060】
また、図8(c)に示すガス用配管端末構造1cとすることもできる。ガス用配管端末構造1cは、固定部材が固定部材5b、5cに二分割される。第1の固定部材である固定部材5bは、リング状部材であり、前面がフランジ部24と接触し、後面がパッキン11aを介して第2の固定部材である固定部材5cと接触する。固定部材5cは、固定部材5と略同様の構成であり、フランジ部7を有し、接合部材9が挿通される。すなわち、フランジ部7と固定部材5bとによりパッキン11aが挟まれる。固定部材5bには、固定部材5cと同様に孔が形成され、接合部材9は、フランジ部7および接合部材5dを貫通して接続対象側と接合される。
【0061】
ガス用配管端末構造1cにおいても、Oリング25は遮蔽層17の外周に押し付けられるため、端末近傍からガスが透過することを抑制することができ、ガス用配管端末構造1と同様の効果を得ることができる。また、固定部材5b、5c間はパッキン11aでシールされるため、ガスが漏れることがない。
【0062】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0063】
たとえば、ガス用配管の構造は、前述した例に限られず、管体外周に遮蔽層が形成され、その外周に補強層及び保護層が形成されれば、各層の構成は適宜設定される。
【符号の説明】
【0064】
1、1a、1b、1c………ガス用配管端末構造
3………ガス用配管
5、5a、5b、5c………固定部材
7………フランジ部
9………接合部材
11、11a………パッキン
13………接続対象
15………管体
17………遮蔽層
19………補強層
21………保護層
23………端末部材
24………フランジ部
25………Oリング
27、27a、27b………遮蔽帯
29………ラップ部
31a、31b………樹脂フィルム
33………金属フィルム
35………樹脂フィルム
37………コーティング
39………電気融着ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂製の管体と、
前記管体の外周に設けられるガス遮蔽層と、
前記ガス遮蔽層の外周に設けられる補強層と、
前記補強層の外周に設けられる保護層と、
を具備するガス用配管を用い、
端部にフランジ部を有する端末部材が前記管体の端部と接合され、
前記端末部材の外周部には、固定部材が設けられ、前記固定部材は、前記フランジ部の後面に押圧されて接続対象に対して接合部材で接合され、
ガス配管に対する前記固定部材の形成範囲は、前記補強層と前記保護層が剥離され、前記固定部材の内面側と前記ガス遮蔽層との間にシール部材が設けられることを特徴とするガス輸送用可撓管の端末構造。
【請求項2】
前記管体および前記端末部材はポリエチレン製であり、前記ガス遮蔽層の常温での天然ガス透過係数が、常温でのポリエチレンの天然ガス透過係数に対して1/2以下であることを特徴とする請求項1記載のガス輸送用可撓管の端末構造。
【請求項3】
前記端末部材と前記管体の端部は、バット融着または電気融着されており、前記ガス遮蔽層は、接合部を覆うように形成され、前記管体の長手方向における前記接合部と前記フランジ部との間に前記シール部材が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス輸送用可撓管の端末構造。
【請求項4】
前記固定部材は、第1の固定部材と、第2の固定部材とで構成され、前記第1の固定部材は、前記フランジ部の後面に押圧されて接続対象に対して接合部材で接合されるとともに、前記第2の固定部材とパッキンを介して接合され、前記第2の固定部材は、前記管体の長手方向において、前記端末部材側から前記端末部材と前記管体との接合部をまたいで、前記管体の外周において、前記第2の固定部材の内面と前記ガス遮蔽層との間に前記シール部材が設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス輸送用可撓管の端末構造。
【請求項5】
前記固定部材は、周方向に複数に分割されており、前記ガス用配管の外周側から被せられ、前記固定部材の内面側が前記ガス用配管の外周面方向に押圧されるように固定されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のガス輸送用可撓管の端末構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−82938(P2012−82938A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231504(P2010−231504)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】