説明

ガス透過セル、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法

【課題】フィルム試料を破損させることなく、そのガス透過度を高感度測定する。
【解決手段】ガス透過セル10は、第1ガス室1と、フィルム試料11を挟んで第1ガス室1に対向する位置に設けられた第2ガス室2と、フィルム試料11の第1面が第1ガスに暴露された状態で、第1ガス室1とフィルム試料11との間を封止するシート状の第1ガスケット3と、フィルム試料11の第1面に対向する第2面が第2ガスに暴露された状態で、第2ガス室2とフィルム試料11との間を封止するシート状の第2ガスケット4と、第1ガスケット3及び第2ガスケット4を、それぞれフィルム試料11に垂直な方向に加圧する締め付け部5とを備えている。そして、第1ガスケット3がフィルム試料11に接する第1シール面と、第2ガスケット4がフィルム試料11に接する第2シール面とは、フィルム試料11を挟んで対称である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス透過セル、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品等の包装に用いられるようなフィルム材料の重要な特性の1つとして、フィルム材料に囲まれた空間の内側から外側への水蒸気、酸素等のガス透過度が挙げられる。近年、有機ELデバイスや、太陽電池等にもフィルム材料が適用されており、このような精密機械においては、ガス透過度がより低いフィルム材料が特に要求される。このように、適用される分野よって要求されるガス透過度が異なっている。したがって、用途に応じて要求されるガス透過度を満たすフィルム材料を提供するために、フィルム材料のガス透過性を正確に測定する必要がある。
【0003】
フィルム材料のガス透過度は、通常、密閉された空間の中で、目的のガスにフィルムの一方の面を暴露し、他方の面側において検出される目的のガスの量を測定することによって測定される。したがって、フィルム材料のガス透過度を高感度分析するためには、目的のガスの検出環境に検出対象外のガスが侵入したり、検出対象のガスが検出環境から外部に漏れ出したりするのを十分に防ぐ必要がある。
【0004】
特許文献1に記載のガス透過度測定装置は、凹部を有するガスケット上に接着剤等の封止材を介してフィルム試料を設け、さらにフィルム試料を、開口部を有する蓋部で被覆し、蓋部を垂直方向に加圧することによって、ガスケットとフィルム材料、又はフィルム材料と蓋部との密着性を高めている。特許文献1に記載のガス透過度測定装置においては、凹部に設けられた測定対象化合物から発生し、フィルム試料を透過して蓋に設けられた開口部において検出されるガスを測定する。
【0005】
特許文献2に記載のガス透過度測定装置は、フィルム試料をOリングによって封止してフィルム材料を透過した目的のガスの検出空間を形成し、さらにその外側の空間をOリングによって封止してシール空間を形成している。このように、検出空間を外部空間に隣接させないことによって、外部からのガスの侵入を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−17172号公報(2005年1月20日公開)
【特許文献2】特開2005−233943号公報(2005年9月2日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のガス透過度測定装置においては、フィルム試料の封止材として接着剤等を用いているので、フィルム試料を汚染又は破壊してしまい、再利用できずに、繰り返し分析に供することができない。また、接着剤成分により検出空間にコンタミネーションが発生するという問題もある。
【0008】
また、特許文献2に記載のガス透過度測定装置では、密閉された空間を二重にして外部から検出空間にガスが侵入するのを防いでいるが、検出空間の密閉性が十分ではないため、検出対象のガスが外部に漏れ出してしまう。また、Oリングをフィルム試料に押し付けて封止しているので、Oリングの加重によりフィルムが破損してしまう。
【0009】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルム試料を破損させることなく高気密に固定し、フィルム試料のガス透過度測定をより高感度に行うことが可能なガス透過セル、ガス透過度測定装置、及びガス透過度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るガス透過セルは、ガス透過性を測定するフィルム試料を固定するガス透過セルであって、第1ガスが充填される第1ガス室と、前記フィルム試料を挟んで前記第1ガス室に対向する位置に設けられ、第2ガスが充填される第2ガス室と、前記フィルム試料の第1面が前記第1ガスに暴露された状態で、前記第1ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第1シール部と、前記フィルム試料の前記第1面に対向する第2面が前記第2ガスに暴露された状態で、前記第2ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第2シール部と、前記第1シール部及び前記第2シール部を、それぞれ前記フィルム試料に垂直な方向に加圧する締め付け部とを備え、前記第1シール部が前記フィルム試料に接する第1シール面と、前記第2シール部が前記フィルム試料に接する第2シール面とは、前記フィルム試料を挟んで対称であることを特徴としている。
【0011】
本発明に係るガス透過セルにおいて、前記締め付け部は、50〜240cNmの圧力で前記第1シール部及び前記第2シール部を加圧することが好ましい。
【0012】
本発明に係るガス透過セルにおいて、前記第1シール部及び前記第2シール部は、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなることが好ましい。
【0013】
本発明に係るガス透過セルにおいて、前記第1シール面及び前記第2シール面における、前記フィルム試料の径方向の長さは、0.5〜20mmであることが好ましい。
【0014】
本発明に係るガス透過度測定装置は、上述したいずれかのガス透過セルと、前記第1ガス室から前記フィルム試料を透過して前記第2ガス室に達した第1ガスを検出する検出手段とを備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明に係るガス透過度測定方法は、上述したいずれかのガス透過セルを用いて、前記第1ガス室から前記フィルム試料を透過して前記第2ガス室に達した第1ガスを検出する検出工程を包含することを特徴としている。
【0016】
本発明に係るガス透過度測定方法において、前記第1ガスが水蒸気であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るガス透過セルは、ガス透過性を測定するフィルム試料を固定するガス透過セルであって、第1ガスが充填される第1ガス室と、前記フィルム試料を挟んで前記第1ガス室に対向する位置に設けられ、第2ガスが充填される第2ガス室と、前記フィルム試料の第1面が前記第1ガスに暴露された状態で、前記第1ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第1シール部と、前記フィルム試料の前記第1面に対向する第2面が前記第2ガスに暴露された状態で、前記第2ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第2シール部と、前記第1シール部及び前記第2シール部を、それぞれ前記フィルム試料に垂直な方向に加圧する締め付け部とを備え、前記第1シール部が前記フィルム試料に接する第1シール面と、前記第2シール部が前記フィルム試料に接する第2シール面とは、前記フィルム試料を挟んで対称であるので、フィルム試料を破損させることなく、高気密に固定することが可能であり、そのガス透過度を高感度測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス透過度測定装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態について、図1を参照して以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス透過度測定装置20を示す概略図である。ガス透過度測定装置20は、ガス透過セル10と検出器(検出手段)21とを備えている。
【0020】
〔ガス透過セル10〕
ガス透過セル10は、第1ガス室1、第2ガス室2、第1ガスケット(第1シール部)3、第2ガスケット(第2シール部)4、締め付け部5、第1供給口6、第2供給口7、第1排気口8、及び第2排気口9を備えている。ガス透過セル10は、ガス透過度を測定する対象となるフィルム試料11を、第1ガス室1と第2ガス室2との間に、各室に充填されたガスに暴露された状態で固定する。第1ガス室1と第2ガス室2とは、フィルム試料11を挟んで対向する位置に設けられている。
【0021】
本明細書において、フィルム試料11の第1ガス室1側の面、すなわち第1ガス室1に充填される第1ガスに暴露(接触)させる面を第1面とし、フィルム試料11の第2ガス室2側の面、すなわち第2ガス室2に充填される第2ガスに暴露(接触)させる面を第2面と称する。第1面と第2面とは対向する面である。
【0022】
第1ガス室1には、測定の対象となる第1ガスを供給する第1供給口6と、第1ガスを排出する第1排気口8とが設けられている。本実施形態においては、図1に示すように、第1ガス室1の側面に設けられた第1供給口6から矢印の方向に第1ガスが供給されて、第1ガス室1中に第1ガスが充填され、第1ガス室1の下面に設けられた第1排気口8から矢印の方向に第1ガスが排気される。フィルム試料11のガス透過度を測定するとき、測定の対象となる目的ガスが、第1ガスとして第1ガス室1に充填される。目的ガスとしては特に限定されず、種々のガスを測定対象として第1ガス室1に充填することが可能であり、例えば、水蒸気、酸素、窒素、ヘリウム、水素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素等の無機ガス、メタン、有機系ガス等のガスを好適に用いることが可能である。
【0023】
第2ガス室2には、キャリアガスである第2ガスを供給する第2供給口7と、第2ガスを排出する第2排気口9とが設けられている。本実施形態においては、図1に示すように、第2ガス室2の側面に設けられた第2供給口7から矢印の方向に第2ガスが供給されて、第2ガス室2中に第2ガスが充填され、第2ガス室2の上面に設けられた第2排気口9から矢印の方向に第2ガスが排気される。第2排気口9は、ガス透過度測定装置20の検出器21に接続されている。フィルム試料11のガス透過度を測定するとき、キャリアガスが第2ガスとして第2ガス室2に充填される。キャリアガスとしては目的ガスに対して不活性であれば特に限定されず、種々のガスをキャリアガスとして第2ガス室2に充填することが可能であり、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素等のガスを好適に用いることができる。
【0024】
第1ガス室1とフィルム試料11との間は、ガス透過セル10内へのガスの出入りを妨げるために、第1ガスケット3により封止されている。同様に、第2ガス室2とフィルム試料11との間は、第2ガスケット4により封止されている。第1ガスケット3は、フィルム試料11の第1面が第1ガスに暴露された状態で、フィルム試料11と第1ガス室1との間を封止し、第2ガスケット4は、フィルム試料11の第2面が第2ガスに暴露された状態で、フィルム試料11と第2ガス室2との間を封止する。
【0025】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、シート状である。したがって、第1ガスケット3がフィルム試料11に接する第1シール面、及び第2ガスケット4がフィルム試料11に接する第2シール面は、一般的な封止材であるOリングとフィルム試料11との接触面よりも面積が大きい。すなわち、第1シール面及び第2シール面の幅、つまり第1シール面及び第2シール面におけるフィルム試料11の径方向の長さは、Oリングとフィルム試料11との接触面の幅よりも大きい。これにより、フィルム試料11の封止時にフィルム試料11にかかる負荷を低減すると共に、接触面にかかる曲げ応力を低減し、圧縮応力による封止を実現する。その結果、接触面の破損を効果的に防止することができる。
【0026】
第1シール面及び第2シール面における、フィルム試料11の径方向の長さは、0.5〜20mmであることが好ましく、フィルム試料11に係る負荷を低減し、締め付け部5の圧縮により密着性が効果的に向上するので、0.5〜3mmであることが最も好ましい。なお、後述するように、第1ガスケット3及び第2ガスケット4がドーナツ形状である場合、第1シール面及び第2シール面の内径はフィルム試料11の測定面(第1面及び第2面)の直径と一致し、第1シール面及び第2シール面の外径は、内径よりも0.5〜20mm大きいことが好ましい。
【0027】
また、第1ガスケット3とフィルム試料11とが接する接触面(第1シール面)と、第2ガスケット4とフィルム試料11とが接する接触面(第2シール面)とは、フィルム試料11を挟んで対称である。すなわち、第1シール面と第2シール面とは完全に重なり合っており、フィルム試料11にかかる負荷が第1面と第2面とで均等になる。このように、フィルム試料11の接触面の両面にかかる負荷の偏りを低減することができるので、フィルム試料11の破損を防止することができる。
【0028】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、第1ガス室1又は第2ガス室2の開口径と同一又はわずかに大径の穴が形成されたドーナツ状の円盤形状であることが好ましい。これにより、第1ガス室1とフィルム試料11との間、及び第2ガス室2とフィルム試料11との間の全体を効果的に封止することができる。ここで、第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、フィルム試料11との接触面積が少なくともOリングよりも大きければその形状は限定されず、全体が面一なシートでなくてもよく、フィルム試料11との接触面が面一であれば他の部分の形状は、限定されない。
【0029】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、気密性を高めるために薄いシート状であることが好ましい。第1ガスケット3及び第2ガスケット4の厚みは、0.2〜5mmであることが好ましく、締め付け部5の圧縮により密着性が効果的に向上するので、0.2〜1mmであることが最も好ましい。
【0030】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなることが好ましい。第1ガスケット3及び第2ガスケット4の形成材料として、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーを用いることによって、第1ガスケット3及び第2ガスケット4自身のガス透過性が低く、自身から発生するガスによるコンタミネーションの発生が低減する。
【0031】
フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなる第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、一般的な封止材であるOリングよりも材質が硬いため、フィルム試料11に圧縮して封止する際に曲げ応力が生じにくく、圧縮応力にフィルム試料11との密着性を効果的に高めることができる。本発明によれば、金属封止材と同等程度の密着性が得られるうえに、フィルム試料11に与えるダメージは金属封止材よりも低減することができる。
【0032】
また、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーは一般に耐熱性が約150℃以上と高いので、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなる第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、高温でもそのガス透過度が低く保たれる。したがって、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなる第1ガスケット3及び第2ガスケット4によれば、高温測定時であっても、気密性が保たれ、高精度なガス透過度測定が可能である。
【0033】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4を形成するフッ素樹脂又はフッ素系エラストマーとしては、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー、ポリビニリデンフルオライド、エチレン-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、エチレンと4フッ化エチレンとの共重合、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系高分子材料からなる群より選択されるフッ素樹脂又はフッ素系エラストマーを好適に使用可能である。本明細書において、フッ素樹脂とは、フッ素を含むオレフィンを重合して得られる合成樹脂を意図しており、フッ素系エラストマーとは、フッ素原子を含む合成エラストマーを意図している。
【0034】
第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、締め付け部5によりフィルム試料11と共に挟み込まれ、それぞれフィルム試料11に垂直な方向に圧縮される。締め付け部5によって、第1ガスケット3及び第2ガスケット4は、フィルム試料11に対して垂直な方向に圧縮されるため、第1シール面及び第2シール面に適切に圧縮応力をかけることができる。締め付け部5は、第1ガスケット3及び第2ガスケット4を、50〜240cNmの圧力で加圧することが好ましく、60〜200cNmであることがより好ましく、フィルム試料11を破損させることなく、かつ気密性が効果的に向上するので、160cNmであることが最も好ましい。なお、締め付け部5による第1ガスケット3及び第2ガスケット4に負荷される最適な圧力は、第1ガスケット3及び第2ガスケット4の材料及びフィルム試料11の表面状態に応じて、上記圧力範囲から適切に選択されるものである。
【0035】
締め付け部5は、第1ガスケット3及び第2ガスケット4を均一に加圧することができればよく、第1ガスケット3及び第2ガスケット4の周方向に複数、かつ等間隔に設けられていることが好ましい。締め付け部5は、フィルム試料11を破損させることなく、第1ガスケット3及び第2ガスケット4を加圧できればその加圧方法は限定されず、例えば、ホルダー、クランプ、クリップ、ねじ等を好適に使用可能である。締め付け部5がねじ止めにより加圧するものであれば、第1ガスケット3及び第2ガスケット4を均一に加圧できるため、より好ましい。
【0036】
ガス透過セル10は、例えば、厚さ50μm以下の非常に脆弱な薄膜ガラスフィルム、有機ELデバイス用のハイバリア膜のような表面薄膜コーティングフィルム、太陽電池のバックシート用フィルムのような高温化で用いられるフィルム、食品又は薬品包装用フィルム、半導体材料用フィルム等の、高精度のガス透過度測定が要求されるフィルム試料11を、破損させることなく、かつ高気密に固定することができる。したがって、ガス透過セル10は、有機ELデバイス用フィルム、太陽電池のバックシート用フィルム等のガス透過度測定に好適に用いられる。ガス透過セル10を用いれば、例えば水蒸気透過度の測定において、後述する実施例に示すように従来に比して高感度のガス透過度測定を実現することができる。
【0037】
〔ガス透過度測定装置20〕
ガス透過度測定装置20は、ガス透過セル10と、第1ガス室1からフィルム試料11を透過して第2ガス室2に達した第1ガスを検出する検出器21とを備えている。ガス透過度測定装置20は、ガス透過セル10においてフィルム試料11を透過した目的ガスを検出器21により検出し、フィルム試料11の目的ガスに対する透過度を測定する。
【0038】
検出器21は、第1ガス室1からフィルム試料11を透過して第2ガス室2に達した第1ガス(目的ガス)を検出する。検出器21としては、キャリアガスによって運ばれる目的ガスを検出できるものであればよく、検出対象に応じて公知の検出手段を適宜選択すればよい。例えば、目的ガスとして水蒸気を検出する場合には、公知の水分計を検出器21として用いることができる。
【0039】
ガス透過度測定装置20において、フィルム試料11の水蒸気透過度を測定する場合、キャリアガスとして窒素を用い、検出器21として水分計を用いることができる。この場合、第1ガス室1に水分を含有する窒素を充填し、第2ガス室2に水分を含有しない窒素を充填する。そして、検出器21が、窒素と同伴して流入した水分濃度を測定することによって、フィルム試料11の水蒸気透過度を測定することができる。
【0040】
ガス透過度測定装置20によれば、ガス透過セル10においてフィルム試料11を破損させることなく、かつ高気密に固定することが可能であるので、高精度なガス透過度測定が可能である。ガス透過度測定装置20によれば、例えば水蒸気透過度の測定において、後述する実施例に示すように従来に比して高感度のガス透過度測定を実現することができる。
【0041】
〔ガス透過度測定方法〕
本発明に係るガス透過度測定方法は、ガス透過セル10を用いて、第1ガス室1からフィルム試料11を透過して第2ガス室2に達した第1ガスを検出する検出工程を包含している。すなわち、上述したガス透過セル10は、本発明に係るガス透過度測定方法に用いられるガス透過セル10の一実施形態であり、本発明に係るガス透過度測定方法の一実施形態は、上述の実施形態及び図1の説明に準ずる。また、本発明に係るガス透過度測定方法の検出工程においては、ガス透過度測定装置20を用いて、第1ガス室1からフィルム試料11を透過して第2ガス室2に達した第1ガスを検出してもよい。
【0042】
また、本発明に係るガス透過度測定方法において、第1ガスが水蒸気であることが好ましい。本発明によれば、例えば水蒸気透過度の測定において、後述する実施例に示すように従来に比して高感度のガス透過度測定を実現することができる。
【実施例1】
【0043】
ガス透過セル10を用いて、各フィルム試料11の水蒸気透過度を測定することによって、ガス透過セル10のシール性を評価した。
【0044】
(1−1:アルミシートの水蒸気透過度の測定)
アルミシート(厚さ300μm)をガス透過セル10に設置し、表1に示す各材質のパッキンを用いてアルミシートをシールした。第1ガスケット3及び第2ガスケット4として、PCTFEパッキン(厚さ500μm)を用いて、そのシール性を検討した。比較例として、パッキンを用いずアルミシートを測定した。
【0045】
アルミシートの透過面積、すなわち第1ガス室1及び第2ガス室2に暴露されている面積を19.6cm及び63.6cmとして、測定時の温度を40℃に設定し、湿度を45RH%及び90RH%のそれぞれの場合において測定を行った。また、締め付け部5による加圧を表1に示す各トルクに設定し、最適な締め付けトルクを検討した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示すように、PCTFEパッキンは、アルミシートと同等レベルの水蒸気透過度
を示し、より低いトルクでもシール性が良好であった。特に締め付けトルク160cNmの場合に高いシール性が得られることが示された。アルミシートの透過面積63.6cm2、温度40℃、湿度90RH%、締め付けトルク160cNmの条件下で、PCTFEのパッキンを用いた場合に、水蒸気透過度1.82×10−6g/m/dayという、従来に比して極めて高感度な測定を達成した。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、フィルム材料を利用する、食品、医薬、有機ELデバイス、太陽電池等の各分野において広範囲に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 第1ガス室
2 第2ガス室
3 第1ガスケット
4 第2ガスケット
5 締め付け部
6 第1供給口
7 第2供給口
8 第1排気口
9 第2排気口
10 ガス透過セル
11 フィルム試料
20 ガス透過度測定装置
21 検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス透過性を測定するフィルム試料を固定するガス透過セルであって、
第1ガスが充填される第1ガス室と、
前記フィルム試料を挟んで前記第1ガス室に対向する位置に設けられ、第2ガスが充填される第2ガス室と、
前記フィルム試料の第1面が前記第1ガスに暴露された状態で、前記第1ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第1シール部と、
前記フィルム試料の前記第1面に対向する第2面が前記第2ガスに暴露された状態で、前記第2ガス室と前記フィルム試料との間を封止するシート状の第2シール部と、
前記第1シール部及び前記第2シール部を、それぞれ前記フィルム試料に垂直な方向に加圧する締め付け部と
を備え、
前記第1シール部が前記フィルム試料に接する第1シール面と、前記第2シール部が前記フィルム試料に接する第2シール面とは、前記フィルム試料を挟んで対称であることを特徴とするガス透過セル。
【請求項2】
前記第1シール部及び前記第2シール部は、フッ素樹脂又はフッ素系エラストマーからなることを特徴とする請求項1に記載のガス透過セル。
【請求項3】
前記締め付け部は、50〜240cNmの圧力で前記第1シール部及び前記第2シール部を加圧することを特徴とする請求項1又は2に記載のガス透過セル。
【請求項4】
前記第1シール面及び前記第2シール面における、前記フィルム試料の径方向の長さは、0.5〜20mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス透過セル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス透過セルと、
前記第1ガス室から前記フィルム試料を透過して前記第2ガス室に達した第1ガスを検出する検出手段と
を備えていることを特徴とするガス透過度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス透過セルを用いて、前記第1ガス室から前記フィルム試料を透過して前記第2ガス室に達した第1ガスを検出する検出工程を包含することを特徴とするガス透過度測定方法。
【請求項7】
前記第1ガスが水蒸気であることを特徴とする請求項6に記載のガス透過度測定方法。


【図1】
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【公開番号】特開2013−3029(P2013−3029A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135917(P2011−135917)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(390000686)株式会社住化分析センター (72)