説明

ガス遮断器

【課題】 本発明の課題は、第1可動接触子と共に第2可動接触子を移動させる双可動方式であっても、遮断動作と投入動作を駆動する部材に作用する衝撃負荷を分散して衝撃力が一箇所に集中しないようにし、信頼性向上を図ったガス遮断器を提供することにある。
【解決手段】 上記課題を解決するために、本発明のガス遮断器は、駆動ロッド19の一部に、内側に突出する曲面形状の凸状部分を設け、該駆動ロッド19の曲面形状の凸状部分が揺動レバー13の一部と接触して該揺動レバー13を回動させて第2可動電極部2を第1可動電極部3と反対側に駆動させるように構成され、かつ、前記揺動レバー13の一端の断面が略扇状に形成されていると共に、投入動作及び遮断動作で前記駆動ロッド19と別個に接触する回転体(35、37)が、前記揺動レバー13の略扇状部分に回動自在に支持されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス遮断器に係り、特に、電力系統の変電所や開閉所などの高電圧仕様の電力用に好適なガス遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電系統の大容量化に伴い、変電所や開閉所に用いられる遮断器の遮断容量が増加し、かつ、高い信頼性が要求されている。遮断器の信頼性を高めるには、部品数を少なくし構造を簡単にすることが重要である。そのため、遮断器の部品数の減少が図られている。
【0003】
ところで、遮断容量の高い遮断器として、パッファ形ガス遮断器がよく使用されている。このパッファ形ガス遮断器は、遮断時に発生するアークにガスを吹き付けて、アークを消孤する構造であり、遮断部の構造が簡単で、かつ、封入された絶縁性のガス、例えばSF6ガスにより優れた絶縁、消孤性能を有するものである。
【0004】
一般的なパッファ形ガス遮断器は、SF6ガスが封入され固定電極と可動電極とを有する遮断部と、前記可動電極を固定電極に対して接触及び開離させるための駆動源を有する操作器とで概略構成されている。上記遮断部においては、前記可動電極と固定電極は対向して設けられており、可動電極と固定電極が接触している状態で通電されている。この通電状態時に電力系統に例えば落雷などで異常電流が流れると、遮断器に遮断指令が入力され、前記操作器の駆動力をもって、固定電極から可動電極を引離して電流を遮断することが行われる。
【0005】
以上のようなパッファ形ガス遮断器における消孤性能向上手段の一つとして、開極速度を早くする方法がある。しかし、上記の遮断器構成において開極速度を早くするためには、操作器の駆動力を大きくしなければならず、機器全体が大型化してしまう。
【0006】
これに対して、操作器の駆動力を変えることなく、固定電極を可動電極の移動方向と反対方向に移動させることにより、相対的な開極速度を早くする双駆動方式というものを採用したパッファ形ガス遮断器がある。
【0007】
この双駆動方式のパッファ形ガス遮断器については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のパッファ形ガス遮断器は、第1可動電極とこれに対向した第2可動電極とが連結ロッド及びフォーク状レバーで連結されており、遮断指令が入力されると、操作器の駆動力をもって、第1可動電極を移動させると同時に、上記連結ロッドとフォーク状レバーを介して第2可動電極を第1可動電極の移動方向と反対方向に間欠的に移動させる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6271494号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のパッファ形ガス遮断器では、連結ロッドに設けられた一つのピンが、フォーク状レバーと接離することで第2可動電極の間欠動作を実現している。このため、遮断、投入の両動作毎に衝撃荷重がピンに作用し、多数回の操作によるピンの磨耗進展などにより信頼性が低下する可能性があった。
【0010】
また、フォーク状レバーと第2可動電極との接続部においては、フォーク状レバーに設けられたピンが、第2可動電極端部の縦穴内を移動する構造となっており、遮断、投入の動作終了時に、電極移動方向と直交する方向の接触荷重が発生する。このため、第2可動電極を支持するガイドや軸受けにも軸直角方向成分の荷重が作用してしまい、これらの部品の磨耗が進展して信頼性が低下する可能性もあった。
【0011】
また、フォーク状レバーのフォーク部分は、レバーの回転軸心を通る中心線に対してほぼ対称な形状となっているため、第2可動電極が、第1可動電極に接離する際の移動速度が遮断と投入で同一であり、投入動作で電極同士が衝突する際の衝撃が大きくなる可能性もある。
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、第1可動接触子と共に第2可動接触子を移動させる双可動方式であっても、遮断動作と投入動作を駆動する部材に作用する衝撃負荷を分散して衝撃力を一箇所に集中しないようにし、信頼性の向上を図ったガス遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のガス遮断器は、上記目的を達成するために、絶縁性ガスが封入された容器と、該容器内の絶縁ガスを、該容器内に配置されたパッファシリンダの先端に固定された絶縁ノズルを介して吹き付けることで電流を遮断する遮断部と、該遮断部のパッファシリンダ側に設けられた第1可動電極部と、該第1可動電極部から駆動ロッドと回転自在に支持された揺動レバーを介して連結され、前記第1可動電極部と開離可能な第2可動電極部とを備えたガス遮断器において、前記駆動ロッドの一部に、前記第2可動電極部の側に突出する曲面形状の凸状部分を設け、前記揺動レバーの一端の断面が略扇状に形成され、前記駆動ロッドを回動する回転体が前記揺動レバーの略扇状部分に支持されており、前記曲面形状の凸状部分が前記回転体と接触して前記揺動レバーを回動させて前記第2可動電極部を前記第1可動電極部と反対側に駆動させることを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、遮断時と投入時で、駆動ロッドと揺動レバーが別の個所で接触するので、両者の部材に作用する衝撃負荷が分散され、衝撃力が一箇所に集中しないので、信頼性が向上する。
【0015】
また、本発明は、上記の構成に加え、前記曲面形状の凸状部分は、投入動作で前記揺動レバーの回転体と接触する面、遮断動作で前記揺動レバーの回転体と接触する面の少なくとも二面で構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によっても、上記と同様な効果が得られると共に、曲面形状なので、揺動レバーの回動がスムースに行える効果もある。
【0017】
また、本発明は、上記の構成に加え、前記曲面形状の凸状部分は、前記駆動ロッドと別体に形成され、これら両者が締結手段で連結されていることを特徴とする。
【0018】
この構成により、駆動ロッドの凸状部分が摩耗した場合には交換することが可能となり、信頼性が向上すると共に、開閉極時間の調整が可能となる効果がある。
【0019】
更に、本発明は、上記の構成に加え、前記駆動ロッドに、遮断部の閉極終了時及び開極終了時における揺動レバーの位置決めをするためのストッパ面を設けたことを特徴とする。
【0020】
この構成により、地震や他の遮断器動作による外力が、該遮断器に作用した際に、揺動レバーは、反時計回りの回動が抑制されるため、遮断状態を保持し続けることができる効果がある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1可動接触子と共に第2可動接触子を移動させる双可動方式であっても、遮断動作と投入動作を駆動する部材に作用する衝撃負荷が分散され、衝撃力が一箇所に集中しないので、信頼性が向上するガス遮断器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のガス遮断器の一実施例を示し、投入状態における遮断部の拡大断面図である。
【図2】図1のガス遮断器の遮断状態における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図3】図1のガス遮断器の投入動作初期における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図4】図1のガス遮断器の投入動作中間における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図5】図1のガス遮断器の投入状態における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図6】図1のガス遮断器の遮断動作初期における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図7】図1のガス遮断器の遮断動作中間における第2可動電極と駆動ロッドとの操作部分を示す拡大図である。
【図8】図1のガス遮断器の矢印Aから見た第2可動電極の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のガス遮断器の一実施例として、電力用ガス遮断器の例について図1乃至図8を用いて説明する。尚、以下の説明では、同一機能部品については、同一符号を付して重複説明は省略する。
【0024】
図1に電力用ガス遮断器の遮断部を拡大して示す。該図に示す如く、本実施例の電力用ガス遮断器の遮断部は、第1可動電極部3と第2可動電極部2とから概略構成されている。第1可動電極部3は、パッファシリンダ15、第1アーク可動接触子14及び絶縁ノズル16などから形成されている。また、第2可動電極部2は、固定通電接触子11、筐体12、揺動レバー13及び第2アーク可動接触子10などから形成されている。
【0025】
尚、上記において、遮断部は図示を略したタンク内部に収納されており、タンク内には絶縁性のガス、例えばSF6ガスが規定の圧力で封入されている。また、パッファシリンダ15の図示を略した一端には絶縁操作ロッドが連結され、更に、その絶縁操作ロッドの一端には図示を略した操作機構が連結されている。
【0026】
図1は、遮断器の投入状態を示しており、固定通電接触子11の先端11aとパッファシリンダ15の先端15aが接触している。また、第2アーク可動接触子10の先端10aと第1アーク可動接触子14の先端14aが接触している。この接触子の先端同士が接触することで、図示を略した導体からの通電を保持しており、電力系統に異常電流が流れると遮断器に遮断指令が入力され、第1アーク可動接触子14が第2アーク可動接触子10から離れると共に、パッファシリンダ15が固定通電接触子11から離れることで電流が遮断される。その後、遮断器に投入指令が入力されると上記とは逆に接触子同士が接近し、衝突接触して図1の投入状態に戻る。
【0027】
次に、第2可動電極部2の構造について説明する。図1に示す如く、絶縁ノズル16の先端付近16aに、駆動ロッド19の一端が接続され、この駆動ロッド19は、筐体12の凹溝12a(図2参照)で動作軸方向に支持される構造となっている。
【0028】
図1の駆動ロッド19及び揺動レバー13、第2アーク可動接触子10を拡大して図5に示す。図5に示す如く、駆動ロッド19の一部には、後述する揺動レバー13と接触して、該揺動レバー13に回転運動を与えるために内側に突出している曲面形状の凸状部分が形成されている。この駆動ロッド19の曲面形状の凸状部分は、主に投入動作で揺動レバー13に設けられた投入用ローラ37と接触する面19a、主に遮断動作で揺動レバー13に設けられた遮断用ローラ35と接触する面19b、これら両者の間に形成される略平坦部19dからなる三面で形成され、図5は、駆動ロッド19の凸状部分の略平坦面19dが投入用ローラ37に当接している状態を示す。駆動ロッド19の凸状部分が、曲面形状であることから、遮断用ローラ35及び投入用ローラ37の回動が、スムースに行える利点がある。
【0029】
尚、本実施例では、駆動ロッド19の凸状部分が、投入動作で揺動レバー13に設けられた投入用ローラ37と接触する面19a、遮断動作で揺動レバー13に設けられた遮断用ローラ35と接触する面19b、これら両者の間に形成される略平坦部19dからなる三面で構成されているが、略平坦部19dがない二面で構成しても良い。また、駆動ロッド19の曲面形状の凸状部分を、駆動ロッド19とは別体に形成し、これら両者が締結手段(ボルト等)で連結して構成してもよい。
【0030】
投入用ローラ37と接触する凸状部分の面19aは、図5に示すように、少なくとも二つの曲率を持つ曲線で構成され、遮断用ローラ35と接触する凸状部分の面19bは、駆動ロッド19の動作軸方向に垂直な中心線41に対してα1の角度を為して形成されている。更に、駆動ロッド19の先端部と凸状部分より絶縁ノズル16側には、揺動レバー13の回動を規定する略直角三角形状を成したストッパ面19c、19eが形成されており、遮断状態の開極終了時では、図2に示す如く、投入用ローラ37がストッパ面19cと、投入状態の閉極終了時では、図5に示す如く、遮断用ローラ35がストッパ面19eと接触して、揺動レバー13の回動を規定するようになっている。
【0031】
一方、揺動レバー13は、回転軸31に回動自在に支持され、また、図8に示すように、回転軸31は、筐体12に回動自在に支持されている。揺動レバー13は、回転軸31を中心として、駆動ロッド19及び第2アーク可動接触子10の配置方向に伸びており、駆動ロッド19側が略扇形状に、第2アーク可動接触子10側の端部が略円形状に構成されている。揺動レバー13の略扇形状端部には、ピン34及びピン36が回動自在に支持され、それらのピン周りに遮断用ローラ35及び投入用ローラ37が回動自在に取り付けられている。
【0032】
尚、ピン34及びピン36に、遮断用ローラ35及び投入用ローラ37と同様な機能があれば、ピン34及びピン36自体を回動しても良い。また、これらピン34、36、ローラを絶縁材で構成してもよい。
【0033】
また、第2可動アーク接触子10は、筐体12に形成された凹溝12bで動作軸方向に支持されており、この第2可動アーク接触子10の端部には、凹溝10cが形成されている。そして、揺動レバー13の略円形状端部13aが、第2可動アーク接触子10の凹溝10cに当接するように配置されている。第2可動アーク接触子10の凹溝10cを含む第2可動アーク接触子10の端部10aが、棒状部分10bに接続されている。
【0034】
更に、筐体12には、ストッパピン32及び33が設けられている。図1及び図5の遮断器の投入状態においては、揺動レバー13に支持された投入用ローラ37がストッパピン33にほぼ当接し、遮断器の投入状態(例えば、遮断器が地震や他の遮断器動作などの外力を受けた際)には、投入用ローラ37が駆動ロッド19の略平坦面19d及びストッパピン33に接していることから、揺動レバー13が反時計回りに回転不可能であり、これにより遮断器の投入状態が保持され続ける。また、図5に示した投入状態において、外力により駆動ロッド19が図の左方向に進んでしまった場合、駆動ロッド19の平坦面19dと投入用ローラ37との係号が外れて、揺動レバー13が瞬間的にフリーになるが、駆動ロッド19のストッパ面19eと遮断用ローラ34が接することにより、揺動レバー13の時計回りの回転が抑制され、第2アーク接触子10が第1アーク接触子14から離れるのを防ぐことができる。
【0035】
ところで、遮断器の投入状態においては、主要な電路は、前述したように固定通電接触子11からパッファシリンダ15であるが、第1アーク可動接触子14と第2アーク可動接触子10が接触しているため、第2アーク可動接触子10から揺動レバー13を介して駆動ロッド19、絶縁ノズル16への平行な電路が形成されようとする。第2アーク可動接触子10の先端10aは、電流遮断時のアーク熱に耐えうる材質で構成されるが、駆動ロッド19は通電能力を持たない。
【0036】
このため、第2アーク可動接触子10の凹溝10cを含む端部10a、又は揺動レバー13に支持された投入用ローラ37、若しくは駆動ロッド19の凸状部分の少なくとも1箇所を絶縁材で構成すると良い。例えば、駆動ロッド19の凸状部分を絶縁材とする場合には、棒状部分と凸状部分とをボルト締結などで固定すると良い。また、第2アーク可動接触子10の端部10aを絶縁材とする場合には、端部10aの端部及び棒状部分10bの端部にネジ部を設け、両者をねじ締結で固定しても良い。
【0037】
以上のように構成することにより、遮断器の投入状態において、第2アーク可動接触子10から揺動レバー13を介して駆動ロッド19への平行な電路が形成されなくなり、通電による駆動ロッド19の損傷を回避することができる。
【0038】
このように構成された本実施例のガス遮断器の遮断動作について、図5乃至図7及び図1と図2を用いて以下に説明する。
【0039】
図5は遮断器の投入状態、図6は遮断動作初期の状態、図7は遮断動作途中の状態、図2が遮断動作終了状態である。
【0040】
先ず、図5において、ガス遮断器が、遮断指令を受けて図示を略した操作機構が動作すると、図1に示したパッファシリンダ15が駆動され、固定通電接触子11から離れる。このとき、絶縁ノズル16に連結された駆動ロッド19も駆動され、図5では、遮断動作で駆動ロッド19が同図の右方向に移動し始める。これにより、駆動ロッド19の略平坦面19dが投入用ローラ37から離れる。
【0041】
更に、駆動ロッド19が右方向に移動すると、図6に示すように、駆動ロッド19の凸状部分が遮断用ローラ35に接する。この際の接触力により、揺動レバー13は時計回りに回転し始める。すると、揺動レバー13の端部13aが、第2アーク可動接触子10の凹溝10cを押圧して第2アーク可動接触子10を図6の左方向に移動させる。これにより、図1に示した第2アーク可動接触子10の他端10aが、第1アーク可動接触子14の端部14aから離れる。
【0042】
このように、第1アーク可動接触子14の移動方向と反対方向に第2アーク可動接触子10が駆動され、電極間の開離速度を、第1アーク可動接触子14のみ駆動していた遮断器より速くすることができ、電流遮断性能が向上する。また、駆動ロッド19が移動すると、図7に示すように、遮断用ローラ35が駆動ロッド19の略平坦面19d及びストッパピン32と当接する。更に、駆動ロッド19が図7の右方向に移動すると、駆動ロッド19の凸状部分と遮断用ローラ35とは完全に離れる。最終的な遮断状態が図2であり、駆動ロッド19のストッパ面19cが、投入用ローラ37とほぼ当接すると共に、遮断用ローラ35がストッパピン32に当接している。
【0043】
この状態において、地震や他の遮断器動作による外力が該遮断器に作用した際に、揺動レバー13は、時計回りにはストッパピン32に、反時計回りには駆動ロッド19のストッパ面19cに回動が抑制されるため、遮断状態を保持し続けることができる。
【0044】
遮断動作中においては、揺動レバー13の端部13aと第2アーク可動接触子10の凹溝10cとの接触荷重方向は、第2アーク可動接触子10の動作軸方向と概ね一致するため、第2アーク可動接触子10に作用する曲げ負荷が小さく、筐体12の凹溝12bや図示を略した第2アーク可動接触子10のスライド軸受けの信頼性の向上が図れる。
【0045】
次に、ガス遮断器の投入動作について、図2乃至図5を用いて以下に説明する。
【0046】
図2は遮断器の遮断状態、図3は投入動作初期の状態、図4は投入動作途中の状態、図5が投入動作終了状態である。
【0047】
図2において、ガス遮断器が投入指令を受けて図示を略した操作機構が動作すると、駆動ロッド19が同図の左方向に移動し始める。これにより、駆動ロッド19のストッパ面19cが投入用ローラ37から離れて図3に示す途中の状態となる。このとき、駆動ロッド19の凸状部分が投入用ローラ37に接近している。
【0048】
更に、駆動ロッド19が左方向に移動すると、図4に示すように、駆動ロッド19の凸状部分が投入用ローラ37に接して、揺動レバー13を反時計回りに回転させる。すると、揺動レバー13の端部13aが、第2アーク可動接触子10の凹溝10cを押圧して、第2アーク可動接触子10を図4の右方向に移動させる。
【0049】
これにより、図1に示した第2アーク可動接触子10の他端10aが、第1アーク可動接触子14の端部14aに接近する。更に、駆動ロッド19が左方向に移動すると、図5に示す投入動作終了状態となり、駆動ロッド19の凸状部分の略平坦面19dが投入用ローラ37と接する。
【0050】
駆動ロッド19の凸状部分の投入用ローラ37と接する面19aは、図5に示したように、少なくとも二つの曲率R1、R2を持つ曲線で構成されている。この曲率は、R2>R1であるのが好ましい。
【0051】
このように構成することにより、投入動作後半で第2アーク可動接触子10が、第1アーク可動接触子14に接触して入る際に、投入用ローラ37と凸状部分の投入用ローラ37と接する面19aのR2部分が接触することにより、接触子の動作速度を抑制することができるので、接触子投入時の衝撃が低減され、接触子の信頼性の向上を図ることができる。但し、遮断動作の際には、既に投入状態にある接触子を引き出すだけなので、遮断用ローラ35と接触する面19bの曲率を無限大とした略直線状として構成すると良い。
【0052】
投入動作が終了すれば、ガス遮断器は通電状態に戻り、次の遮断指令が入力されると前記の如く遮断動作を行う。
【0053】
尚、本実施例では、駆動ロッド19の曲面形状の凸状部分の遮断動作で揺動レバー13と接触する面と投入動作で揺動レバー13と接触する面とが、前記駆動ロッド19の移動方向に垂直な仮想線に対して非対称であっても良い。
【0054】
また、駆動ロッド19及び第2可動電極部2の動作のガイド及び揺動レバー13を回動自在に支持する筺体を有し、この筺体に、揺動レバー13を片持ち状に支持することも可能である。
【0055】
こうすることで、両持ち状に支持する場合に比べ、部品点数を削減することが可能となり、かつ、内部の点検が容易になる。
【0056】
更に、遮断動作及び投入動作の際に、駆動ロッド19が揺動レバー13を回動させる前後で、前記揺動レバー13と接触しない空走区間を有しても構わない。空走区間を設けない場合に比べ、操作器の初動時における駆動負荷を低減することが可能となる。
【0057】
以上、本実施例によれば、双可動方式のパッファ形ガス遮断器において、駆動ロッド19により揺動レバー13を駆動する際に、遮断動作と投入動作で両者の別個の箇所を接触させることにより、従来方式より遮断器の信頼性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0058】
2…第2可動電極部、3…第1可動電極部、10…第2可動アーク接触子、10a…第2可動アーク接触子の端部、10b…第2可動アーク接触子の棒状部分、10c…第2可動アーク接触子の凹溝、11…固定通電接触子、12…筺体、13…揺動レバー、13a…揺動レバーの略円形状端部、14…第1可動アーク接触子、15…パッファシリンダ、16…絶縁ノズル、19…駆動ロッド、31…回転軸、32、33…ストッパピン、34、36…ピン、35…遮断用ローラ、37…投入用ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスが封入された容器と、該容器内の絶縁ガスを、該容器内に配置されたパッファシリンダの先端に固定された絶縁ノズルを介して吹き付けることで電流を遮断する遮断部と、該遮断部のパッファシリンダ側に設けられた第1可動電極部と、該第1可動電極部から駆動ロッドと回転自在に支持された揺動レバーを介して連結され、前記第1可動電極部と開離可能な第2可動電極部とを備えたガス遮断器において、
前記駆動ロッドの一部に、前記第2可動電極部の側に突出する曲面形状の凸状部分を設け、前記揺動レバーの一端の断面が略扇状に形成され、前記駆動ロッドを回動する回転体が前記揺動レバーの略扇状部分に支持されており、前記曲面形状の凸状部分が前記回転体と接触して前記揺動レバーを回動させて前記第2可動電極部を前記第1可動電極部と反対側に駆動させることを特徴とするガス遮断器。
【請求項2】
請求項1に記載のガス遮断器において、
前記曲面形状の凸状部分は、投入動作で前記揺動レバーの回転体と接触する面、遮断動作で前記揺動レバーの回転体と接触する面の少なくとも二面で構成されていることを特徴とするガス遮断器。
【請求項3】
請求項1に記載のガス遮断器おいて、
前記曲面形状の凸状部分は、前記駆動ロッドと別体に形成され、これら両者が締結手段で連結されていることを特徴とするガス遮断器。
【請求項4】
請求項1に記載のガス遮断器において、
前記駆動ロッドに、遮断部の閉極時及び開極時における前記揺動レバーの位置決めをするためのストッパ面を設けたことを特徴とするガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164542(P2012−164542A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24592(P2011−24592)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)
【Fターム(参考)】