説明

ガス遮断装置

【課題】工事開始情報に対する需要家の応答信号に応じてガス圧低下処理モードを選択するガス遮断装置を提供するものである。
【解決手段】ガス流量を計測する流量計測手段17と、異常時にガス流路を遮断するガス遮断弁2cと、流量計測手段17の計測結果に基づく各種情報を記憶する情報記憶手段10bと、複数の相手先と情報の送受信を行う無線モジュール11と、相手先に応じて通信周波数帯を切り替える通信切替手段10cとを備え、基地局14から送信される工事情報を受信すると特定の端末装置12に工事可否信号を送信し、その応答信号に応じて所定の圧力低下処理モードを選択するように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス遮断装置に関し、特に、ガス工事に関連する各種情報を効果的に処理する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガス遮断装置としては、通過ガス量に対応した流量信号を出力する流量測定部と、装置から下流側のガス通路を遮断開放する遮断部と、流量信号を監視し特定調査期間の間に流量信号が存在しない無流量時間帯を検出して保持し以後無流量時間帯になると圧力検査要求信号を出力する流量無し学習部と、無流量時間帯でかつ流量信号を受信しないときに遮断部へガス通路を遮断指示し圧力の変動を検出する圧力検知部に遮断したガス通路が所定時間内に所定値以上の圧力低下をしていないかを検知指示する圧力検査部とを備えたガス遮断装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、供給側ガス配管と需要側ガス配管との間に設けられて、需要側ガス設備におけるガス漏れを検知するガス漏れ検知装置であって、ガスの流量を検出する検出手段と、需要家がガス設備を使用する可能性が低いことを判断するガス使用可能性判断手段と、ガスを遮断する自動開閉可能な遮断弁と、この遮断弁の需要側の圧力を検出するガス圧検出手段と、ガス使用可能性判断手段より、ガス使用可能性が低いとの信号を入力されたときに、遮断弁を閉とし、その後所定時間ガス圧検出手段の検出ガス圧を監視し、この間にガス圧がある程度以上低下したことが検出された場合にガス漏れ有と判断してガス漏れ信号を発し、ガス圧の低下が検出されなかった場合は遮断弁を開とする制御手段と、この制御手段よりのガス漏れ信号を入力されて需要家に警報を発する警報指令手段とを具備したガス漏れ検知装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、無線自動検針システム等において、メータで検針したデータを含む情報を収集すべく無線回線を介してメータに設けられた無線機子機と通信を行う無線機親機を有し、該無線機親機1台に対して無線機子機をN台接続することができるように無線機親機と無線機子機とが1対Nに構成され、無線機親機は特定小電力無線にて無線機子機との無線通信を行うと共に携帯電話回線、あるいはテレターミナル無線回線を介してセンター装置側と通信するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−121763号公報
【特許文献2】特開平8−5502号公報
【特許文献3】特開2001−111701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来の構成は、流量無時間帯を使用パターンの学習制御により求め、この流量無時間帯に所定のガス漏洩検査を実施するというものであって、ガス流路内の圧力低下状況を監視する圧力検知部を有しているものの、ガス工事に伴うガスの供給停止時の圧力低下とガス漏れ等による圧力低下を区別して監視するという発想の開示はなく、区別して監視することでガスメータが検知する圧力低下情報をセンターに報知するか否かの判断を的確に実行することができず、工事に伴う圧力低下時もセンターへの問い合わせが多発する恐れがある。
【0006】
また、上記特許文献2に開示された従来の構成は、流量信号を一日の時間帯と関連付けて記憶し、一日の時間帯においてガス設備使用可能性が最も少ない時間帯を選定し、該時間帯に入ったことをもってガス使用可能性が低いと判断するガス使用可能性判断手段から
検査開始信号が出力されたとき、所定のガス漏洩検査を実施するというものであって、本文献のものも特許文献1と同様、ガス配管内のガス漏れを検査するタイミングを求めるというものであって、ガス工事の情報を伝達しその応答情報でガス工事に伴うガスの供給停止時の圧力低下とガス漏れ等による圧力低下を区別して監視するというものではなく、区別して監視することで工事に伴う圧力低下を特定し、センターへの誤報を低減するという効果を得ることができない。
【0007】
さらに、上記特許文献3に開示された無線自動検針システムでは、自動検針を行うためにガスメータの他に無線機子機を設け、かつセンターとの通信及び無線子機との通信のために無線機親機を設ける必要があった。また、センターとの通信を電話回線により行うようにしているため、回線が混雑した場合等にあってはスムーズな情報伝達ができない場合があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決するもので、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載し、この無線モジュールの各種情報に基づいて工事中とそれ以外のガス圧低下を区別して監視することで、センターに対する工事に伴うガス圧低下情報の誤報を低減するガス遮断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来の課題を解決するために本発明のガス遮断装置は、ガスメータを経由した後の配管に接続される複数のガス器具の使用状況を監視するとともに、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載したガス遮断装置であって、ガスメータには、ガス流量を計測する流量計測手段と、ガス流路の遮断及び開放動作が可能なガス遮断弁と、流量計測手段の計測結果に基づく各種情報を記憶する情報記憶手段と、ガス流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段の圧力信号より異常の有無を判断する圧力判定部と、複数の相手先と情報の送受信を行う無線モジュールとを備え、無線モジュールは、制御回路と一体的に構成して前記ガスメータ内に収納し、少なくとも基地局との通信周波数帯と特定の端末装置との通信周波数帯を有し、基地局から送信される工事情報を受信すると特定の端末装置に工事可否信号を送信し、特定の端末装置からの応答信号を受信すると基地局にその情報を送信し、圧力判定部から圧力低下信号が出力されたとき、工事可否信号に対する応答信号に応じて圧力低下の発生情報を基地局に送信するか否かを判断し、工事可否信号に対する応答信号が工事承認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信せず、工事可否信号に対する応答信号がない、あるいは工事否認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信するようにしたものである。
【0010】
上記発明によれば、電話回線以外の無線通信手段を用いて基地局との通信が可能な無線モジュールと、基地局からの各種情報を特定小電力無線等の無線通信手段を用いてテレビや携帯電話等の特定の端末装置との通信が可能な無線モジュールとを、ガスメータ内の流量計測用制御回路基板に一体的に組み込んだ形態としているため、ガスメータを設置するだけで基地局と電話回線を用いることなく通信が可能となり、回線の混雑状況に影響を受けず基地局からの工事情報等をスムーズに伝達することができ、ガスメータからは特定の端末装置に対して基地局からの工事情報に基づく工事可否信号をスムーズに伝達することができ、従来のように別途郵便等を用いた工事開始の連絡をする必要がなく、かつ工事に伴うガス圧低下とそれ以外のガス圧低下を容易に区別して監視することができる。
【0011】
また、ガスメータから送信する工事可否信号はテレビや携帯電話等の特定の端末装置に送信することができるため、このテレビや携帯電話等を用いて可否確認を含む工事情報を表示することで、従来のようにセンターから郵送等で行っていた工事開始の連絡作業を省略することができ、この可否確認に応答してガスメータに工事承認信号または工事否認信号を返信することで、ガス事業者は需要家がガス工事の開始を承諾したことを確認するこ
とができ、合理的な情報伝達システムを構築することができ、かつ工事に伴うガス圧低下発生時のセンターへの通報をしないようにすることで、情報錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス遮断装置は、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載し、この無線モジュールの各種情報に基づいて工事中とそれ以外のガス圧低下を区別して監視するようにしているため、センターに対する工事に伴うガス圧低下情報の誤報を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明は、ガスメータを経由した後の配管に接続される複数のガス器具の使用状況を監視するとともに、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載したガス遮断装置であって、ガスメータには、ガス流量を計測する流量計測手段と、ガス流路の遮断及び開放動作が可能なガス遮断弁と、前記流量計測手段の計測結果に基づく各種情報を記憶する情報記憶手段と、ガス流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の圧力信号より異常の有無を判断する圧力判定部と、複数の相手先と情報の送受信を行う無線モジュールとを備え、前記無線モジュールは、前記制御回路と一体的に構成して前記ガスメータ内に収納し、少なくとも基地局との通信周波数帯と特定の端末装置との通信周波数帯を有し、前記基地局から送信される工事情報を受信すると前記特定の端末装置に工事可否信号を送信し、前記特定の端末装置からの応答信号を受信すると基地局にその情報を送信し、前記圧力判定部から圧力低下信号が出力されたとき、前記工事可否信号に対する応答信号に応じて圧力低下の発生情報を基地局に送信するか否かを判断し、前記工事可否信号に対する応答信号が工事承認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信せず、前記工事可否信号に対する応答信号がない、あるいは工事否認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信するようにしたことを特徴とするものである。
【0014】
そして、電話回線以外の無線通信手段を用いて基地局との通信が可能な無線モジュールと、基地局からの各種情報を特定小電力無線等の無線通信手段を用いてテレビや携帯電話等の特定の端末装置との通信が可能な無線モジュールとを、ガスメータ内の流量計測用制御回路基板に一体的に組み込んだ形態としているため、ガスメータを設置するだけで基地局と電話回線を用いることなく通信が可能となり、回線の混雑状況に影響を受けず基地局からの工事情報等をスムーズに伝達することができ、ガスメータからは特定の端末装置に対して基地局からの工事情報に基づく工事可否信号をスムーズに伝達することができ、従来のように別途郵便等を用いた工事開始の連絡をする必要がなく、かつ工事に伴うガス圧低下とそれ以外のガス圧低下を容易に区別して監視することができる。
【0015】
また、ガスメータから送信する工事可否信号はテレビや携帯電話等の特定の端末装置に送信することができるため、このテレビや携帯電話等を用いて可否確認を含む工事情報を表示することで、従来のようにセンターから郵送等で行っていた工事開始の連絡作業を省略することができ、この可否確認に応答してガスメータに工事承認信号または工事否認信号を返信することで、ガス事業者は需要家がガス工事の開始を承諾したことを確認することができ、合理的な情報伝達システムを構築することができ、かつ工事に伴うガス圧低下発生時のセンターへの通報をしないようにすることで、情報錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【0016】
第2の発明は、基地局から送信される工事終了情報を受信すると特定の端末装置に工事完了信号を送信し、以降、圧力判定部から圧力低下信号が出力されると、圧力低下の発生情報を基地局に送信するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
そして、工事が終了したときも基地局から各ガスメータに対して工事終了情報を送信し、この工事終了情報の受信に伴い特定の端末装置に工事完了信号を送信することで、需要家への報告義務を果たすことができ、以降の圧力低下現象はガス配管等のガス漏れであると判断して基地局に送信するようにしているため、情報錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【0018】
第3の発明は、無線モジュールは、基地局と通信するための広域無線通信周波数帯を有する広域通信無線モジュールと所定のエリア内で特定の端末装置と通信するための特定小電力無線通信周波数帯を有するエリア通信無線モジュールで構成し、通信情報に応じて前記広域通信無線モジュールとエリア通信無線モジュールの切り替えを実行する通信切替手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
そして、基地局とは電話回線以外の通信手段である広域通信無線モジュールを用い、特定の端末装置とは所定のエリア内でのみ通信が可能なエリア通信無線モジュールを用い、通信情報に応じて区別して無線モジュールを使うように切り替えるため、ガスメータを設置するだけで基地局と特定の端末装置との通信を自在に実行することができ、合理的な情報伝達システムの構築が可能となる。
【0020】
第4の発明は、特定の端末装置は、テレビあるいは携帯電話とし、ガスメータに内蔵のエリア通信無線モジュールと同一の通信周波数帯を有する無線モジュールを内蔵あるいは一体的に取り付けたことを特徴とするものである。
【0021】
そして、ガスメータに内蔵の無線モジュールと同一の通信周波数帯を有する無線モジュールをテレビあるいは携帯電話に設けることで、所定のエリア内でガスメータから送信される各種情報をテレビあるいは携帯電話の表示部で表示することができ、従来の郵送等による情報伝達に代えて合理的な情報伝達システムを構築することができる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置と基地局及び需要家宅との通信形態の全体構成図、図2は同ガス遮断装置の外観及び構成部品を示す図、図3は同ガス遮断装置の内部構成図、図4は同ガス遮断装置の制御回路基板の構成ブロック図である。
【0024】
図において、各家庭のガス供給管1の入口部分にガスメータ2が設置され、このガスメータ2を経由した後のガス配管3から分岐して家庭で使用する種々のガス器具が設置された場所まで配管されガスが供給される。例えば、屋外にはガス給湯器4が設置され、このガス給湯器4で生成される湯が水配管を介して台所の給湯栓5、浴槽やシャワー装置が設置された風呂6、リビング等に設置された床暖房7に供給され、種々の使用形態を形成している。
【0025】
また、屋内にあっては、台所に設置されたガステーブル8、リビングや寝室等に設置されたガスファンヒータ9にガスが供給され、必要に応じて適宜使用される。
【0026】
そして、設置されたガス器具が使用されガスの消費が発生するとガスメータ2でその使用量が計測され、そのデータが所定期間毎に累積記憶されている。このガスメータ2に記憶されたデータはガス事業者15からの定期的なデータ要求指令に基づいて所定の情報処理を行った後、ガス料金やガス使用量あるいはガス事業者15が提供する割引サービス等
の情報として需要家13及びガス事業者15に送信される。
【0027】
この送信手段としては、図2に示すようにガスメータ2に内蔵された流量計測手段を構成する制御回路基板10に一体的に組み込まれた無線モジュール11を用いて行い、この無線モジュール11はコネクタ10dで着脱自在に制御回路基板10にオンボードされ、無線モジュール11を搭載せず通信機能を有しないガスメータと無線モジュール11を搭載した通信機能を有するガスメータを任意に選択できる構成とし、ガスメータ2の共通化を図り、通信機能の有無に関係なく使用できるようにしている。
【0028】
また、無線モジュール11を着脱自在な構成とすることで、通信機能を有する場合であっても通信規格を取得した無線モジュールを搭載すれば、ガスメータ本体で通信機としての規格を取得する必要がなく、ガスメータを変更する場合等において規制を受けることなく比較的自由に変更が可能となる。
【0029】
そして、図4に示すように無線モジュール11は、基地局14と通信するために電話回線とは異なる、例えば200MHzの通信周波数帯を有する広域通信無線モジュール11aと、需要家宅13内のテレビ12aやパソコンあるいは携帯電話12b等の特定の端末装置12と通信するために、例えば429MHzの特定小電力無線通信周波数帯を有するエリア通信無線モジュール11bで構成し、流量信号やセンサ信号に基づいてガス使用量の算出あるいは地震、ガス漏れ等の異常検知を行う制御回路10aからのデータ、さらには基地局14を介してガス事業者15から送信される工事情報を受信すると、その受信データに応じて、例えばガス料金、ガス使用量あるいは地震、ガス漏れ等の異常発生に伴うガス遮断弁の作動、さらには工事の開始が可能か否かの要否確認を含む工事可否信号等、需要家に報知すべき内容の場合はエリア通信無線モジュール11bを用いて需要家宅13内のテレビ12aあるいは携帯電話12b等の特定の端末装置12にデータを送信する。
【0030】
そして、図5に示すように表示端末装置12にもガスメータ2に内蔵してあるエリア通信無線モジュール11bと同一の通信周波数帯を有する無線モジュール11cを内蔵あるいは一体的に取り付けることで、ガスメータ2から送信されるデータを受信することができ、このデータをテレビ12aあるいは携帯電話12bの画面を通じて表示することで、ガスメータから直接需要家に対して情報の伝達を行うことができ、従来のように、ガスメータ2からガス事業者15にデータを送信し、ガス事業者15でデータ処理を行った情報、あるいはガス事業者15からの工事情報、例えば料金通知や工事を開始する通知等の葉書を郵送等で需要家に送付するという情報伝達方法を採用する必要がなくなるため、通知作業に要する工数を削減でき、かつ通知用葉書等の郵送費用の発生もなくなり、通知業務の合理化を実現することでガス料金の低減に寄与するものである。
【0031】
また、ガスメータ2から特定の端末装置12に各種情報を送信した場合は、エリア通信無線モジュール11bから広域通信無線モジュール11aに報知完了信号を送り、広域通信無線モジュール11aはこの報知完了信号を基地局14に送信し、ガス事業者15に需要家への情報伝達が完了したことを通知する。なお、この場合、特定の端末装置12からの応答信号を受信して報知完了信号を送信することが好ましく、特にガス事業者15が行う工事開始の通知に関しては、基地局から送信される工事情報を受信するとテレビ12aや携帯電話12b等の特定の端末装置12に工事可否信号を送信し、テレビ12aや携帯電話12b等の画面上にガス工事の開始を報知し承諾確認を含む工事情報を表示し、需要家の承諾確認に応答してガスメータ2から工事承認信号を返信することで、ガス事業者15は需要家が工事の開始を承諾したことを確認することができ、より確実に需要家への情報伝達を行うことができ、合理的な情報伝達システムを構築することができる。
【0032】
また、工事可否信号に対して応答がない場合、あるいは工事否認信号が返信された場合
は、ガス工事が実施されてもガスが使用されている場合があり、このような場合、ガス工事に伴うガス供給の停止でガス栓が開かれたままガスの供給が再開される恐れがあり、器具側で自動的に停止する機能を有している場合は問題ないが、そのような機能を有していない場合等はガス漏れにつながる恐れがあり、ガス工事が実施された後の復旧時にガスの供給が再開される旨の報知、またはガス事業者が出向いての確認が必要となる。
【0033】
このガス工事に伴う一連の情報伝達処理をガスメータ2に内蔵した無線モジュール11を介在させて行うことで、ガス事業者15と需要家13の間の情報伝達を迅速かつ正確に行うことができ、ガス工事によるガスの供給停止に伴うガス圧低下情報を通常のガス漏れによるガス圧低下情報と区別することができるため、工事に伴うガス圧低下情報を異常としてセンターに連絡することをなくすことができ、情報の錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【0034】
ここで、情報伝達の一例を説明すると、まずガス事業者15からの検針指示が基地局14を介して広域通信周波数帯(200MHz)で送信された場合、ガスメータ2に内蔵してある広域通信無線モジュール11aが受信し、その検針指示情報が同一基板に搭載してある制御回路10aに送られる。制御回路10aには流量計測手段で計測された流量データが所定期間毎に累積され、その累積データ、あるいは料金データに変換した情報が情報記憶手段10bに記憶されており、ガス事業者15からの検針指示情報が入力されると制御回路10aは情報記憶手段10bの流量累積データ、あるいは料金データに変換した情報を通信切替手段10cを介してエリア通信無線モジュール11b及び広域通信無線モジュール11aに送り、広域通信無線モジュール11aは広域通信周波数帯(200MHz)で基地局14に送信し、基地局14から専用回線を用いてガス事業者15に検針情報が伝達される。また、エリア通信無線モジュール11bは特定小電力無線通信周波数帯(429MHz)でテレビ12a等の表示端末装置12に一体的に取り付けた無線モジュール11cに送信し、画面上に例えば、図6(a)に示すような料金情報や使用量を表示する。そして、表示端末装置12への送信が完了すると、上記した如く、報知完了信号をガス事業者15に送信し、需要家への情報伝達が完了したことを通知する。
【0035】
また、地震や衝撃等で遮断弁が作動した場合において原因究明がなされ、ガス事業者15からの復帰指示が基地局14を介して広域通信周波数帯(200MHz)で送信された場合、ガスメータ2に内蔵してある広域通信無線モジュール11aが受信し、その復帰指示情報が同一基板に搭載してある制御回路10aに送られる。制御回路10aは復帰指示情報が入力されると、情報記憶手段10bに記憶されている復帰作業に関する情報を通信切替手段10cを介してエリア通信無線モジュール11bに送り、エリア通信無線モジュール11bは特定小電力無線通信周波数帯(429MHz)でテレビ12a等の表示端末装置12に一体的に取り付けた無線モジュール11cに送信し、画面上に例えば、図6(b)に示すような復帰作業の手順を表示する。そして、表示端末装置12への送信が完了すると、上記した如く、報知完了信号をガス事業者15に送信し、需要家への情報伝達が完了したことを通知する。
【0036】
以上のように、制御回路10aには伝達する情報に応じて通信する相手先に対応して通信周波数帯の異なる無線モジュールを選択すべく通信切替手段10cを有しており、例えば、ガス事業者15からの検針指示の場合は、ガス事業者15と表示端末装置12に情報記憶手段10bの記憶情報を伝達する必要があり、この場合は、例えば200MHzの通信周波数帯を有する広域通信無線モジュール11aと、例えば429MHzの特定小電力無線通信周波数帯を有するエリア通信無線モジュール11bを選択し、ガス事業者15からの復帰指示の場合は、表示端末装置12に情報記憶手段10bの記憶情報を伝達するだけでよく、この場合は、例えば429MHzの特定小電力無線通信周波数帯を有するエリア通信無線モジュール11bを選択すればよい。
【0037】
なお、広域通信無線モジュール11aとエリア通信無線モジュール11bはそれぞれ別々に設けてもよく、共通の無線モジュールとし通信周波数帯を広域通信周波数帯と特定小電力無線通信周波数帯で切替えるようにしてもよいもので、前者の場合、通信切替手段10cは広域通信無線モジュール11aとエリア通信無線モジュール11bを選択する必要があり、同時通信が可能というメリットがある反面、設置スペース大やコスト高というデメリットを有している。後者の場合、通信切替手段10cは通信相手先に応じて通信周波数帯を切替える必要があり、設置スペース小やコスト安というメリットがある反面、同時通信ができず交互通信になるというデメリットを有している。
【0038】
次に、制御回路10aに内蔵されたガス流量を計測する流量計測手段について簡単に説明すると、ガスメータ2には図2、図3に示すように、ガス入口2aとガス出口2bを有し、その間のガス流路内に異常時にガスを遮断する遮断弁2cとガス流量を計測する一対の超音波センサ17が設けられ、その下流側にガス圧を検出する圧力センサ2dが配置されている。また、超音波センサ17からの信号でガス流量を算出する制御回路10aを搭載した制御回路基板10がガスメータ2の表示部2eに液晶表示器10eを臨ますように配置され、さらに、制御回路10aを駆動させるための電池2fが収納されている。また、遮断弁2cが作動した後の復帰動作を手動で行う手段として復帰ボタン2gが配置されている。
【0039】
そして、ガス流量を計測する流量計測部17と制御回路10aは、例えば図7に示すように、ガス流路に一対の超音波センサを配置し流路を流れる流量に応じて変化する伝播時間を計測することで流量を測定するものがある。以下、その構成を説明すると、超音波を送信または受信する第1送受信器17Aと受信または送信する第2送受信器17Bが流れ方向に配置され、制御回路10aを構成する切換手段を有する計測制御部18によって送受信の切り換えが可能になっており、ガス等の流体の流れ状態を検出している。この第1送受信器17Aと第2送受信器17Bの信号を処理して流量を計測するもので、具体的には、まず計測制御部18により第1送受信器17Aを駆動し、第2送受信器17Bに向け、すなわち上流から下流に超音波を送信する。そして第2送受信器17Bで受信した信号を計測制御部18に設けた増幅手段により増幅し、この増幅された信号は基準信号と比較され、基準信号以上の信号が検出された後、計測制御部18に設けた繰り返し手段により上記の送受信を所定の回数を繰り返し、それぞれの時間値を計測制御部18に設けたタイマカウンタのような計時手段で計測する。
【0040】
次に、切換手段を有する計測制御部18で第1送受信器17Aと第2送受信器17Bの送受信を切換えて、第2送受信器17Bから第1送受信器17A、すなわち下流から上流に向かって超音波信号を送信し、この送信を前述のように繰り返し、それぞれの時間値を計測する。そして、第1送受信器17Aと第2送受信器17Bとの超音波の伝搬時間差から流路16の大きさや流体の流れ状態を考慮して信号処理手段19で流量値を求める。求められた流量データは情報記憶手段10bで累積され、所定期間毎の累積データとして記憶される。
【0041】
また、流量計測部17が配置された流路16内には異常時等にガスの流れを遮断する遮断弁2cが設けられ、信号処理手段19で求められる流量値が異常に多い場合や通常考えられる使用時間を超えて流量値が検出されるような場合に異常と判断して遮断弁2cを作動させてガス流路16を遮断する。また、振動センサや圧力センサ2dから地震や衝撃、あるいは異常なガス圧の信号が入力されると、情報記憶手段10bを介して遮断弁2cを作動させてガス流路16を遮断すると共に、センターに通報する。
【0042】
次に、ガス事業者15がガス配管等の取替工事や各種検査を実施する場合について説明
する。
【0043】
ガス事業者15は配管の取替工事や各種検査を実施する場合、基地局14を介して電話回線以外の通信回線、例えば広域通信周波数帯(200MHz)で直接ガスメータ2に工事開始情報を送信する。この工事開始情報をガスメータ2に内蔵の広域通信無線モジュール11aが受信すると、制御回路10aは通信切替手段10cによりエリア通信無線モジュール11bを用いてテレビ12aや携帯電話12b等の特定の端末装置12に工事可否信号を送信し、テレビ12aや携帯電話12b等の画面上に工事に伴うガス供給の停止が可能か否かの要否確認を含む工事関連情報を表示する、例えば図7(a)に示すように、「ガス配管の取替工事を実施します」「○○日の実施が可能か否か応答してください」というメッセージと共に、「可」または「否」の選択表示を行い、リモコンの特定キーを操作することでどちらかが選択でき、その選択信号を特定の端末装置12に一体的に取り付けた無線モジュール11cよりガスメータ2のエリア通信無線モジュール11bに応答信号として送信する。
【0044】
エリア通信無線モジュール11bが特定の端末装置12から「可」の応答信号を受信すると、制御回路10aは通信切替手段10cにより広域通信無線モジュール11aを用いて基地局14に工事承認信号として応答信号を送信する。この応答信号よりガス事業者15は需要家が工事の開始を了解してくれたと判断する。そして、工事承認信号は応答信号判別手段21で判別され、承認信号記憶手段22に需要家と対応付けて記憶される。
【0045】
また、エリア通信無線モジュール11bが特定の端末装置12から「否」の応答信号を受信するか、応答信号を受信しない場合は、制御回路10aは通信切替手段10cにより広域通信無線モジュール11aを用いて基地局14に工事否認信号として応答信号を送信する。この応答信号よりガス事業者15は指定した日のガス工事について了解を得られなかったとして、応答信号判別手段21で判別され、否認信号記憶手段22に需要家と対応付けて記憶される。このように、了解を得られた需要家と了解を得られなかった需要家を区別して管理するようにしている。
【0046】
そして、工事が開始されガスの供給が停止されると、各家庭にガスを供給するガス配管内のガス圧は低下し、この現象をガスメータ2に内蔵の圧力センサ2dで検出され、通常であれば異常なガス圧低下と判断して遮断弁2cを遮断すると共に、基地局14に通報することになるが、本実施の形態では、工事承認信号を応答したガスメータが圧力センサ2dでガス圧低下を検出しても遮断弁2cの停止及びセンターへの通報を行わないようにしている。つまり、工事が開始された後のガス圧低下は工事に伴うガス供給の停止によるものであることが判っているため、センターへの通報を極力抑え、混雑を回避するようにしている。ただし、工事否認信号あるいは応答なしの場合は、工事の対象地域以外からの応答信号である場合もあり、この場合は通常のガス圧低下時の処理と同様に遮断弁2cの停止及びセンターへの通報を行うようにしている。
【0047】
また、工事が終了した場合は基地局から工事終了情報送信し、この情報を受信すると特定の端末装置12に工事完了信号を送信すると共に、今まで設定されているガス圧低下信号の通報中断モードを解除して、以降、圧力センサ2dから圧力低下信号が出力されると、圧力低下の発生情報を基地局14に送信するようにしている。この工事終了情報に関してもテレビ12a等で、例えば図7(b)に示すように表示することで、工事の終了を需要家に判り易く伝えることができる。
【0048】
以上のように本発明のガス遮断装置は、電話回線以外の無線通信手段を用いて基地局14との通信が可能な無線モジュール11aと、基地局14からの各種情報を特定小電力無線等の無線通信手段を用いてテレビ12aや携帯電話12b等の特定の端末装置12との
通信が可能な無線モジュール11bとを、ガスメータ2内の流量計測用制御回路基板10に一体的に組み込んだ形態としているため、ガスメータ2を設置するだけで基地局14と電話回線を用いることなく通信が可能となり、回線の混雑状況に影響を受けず基地局14からの工事情報等をスムーズに伝達することができ、ガスメータ2からは特定の端末装置12に対して基地局14からの工事情報に基づく工事可否信号をスムーズに伝達することができ、従来のように別途郵便等を用いた工事開始の連絡をする必要がなく、かつ工事に伴うガス圧低下とそれ以外のガス圧低下を容易に区別して監視することができる。
【0049】
また、ガスメータ2から送信する工事可否信号はテレビ12aや携帯電話12b等の特定の端末装置12に送信することができるため、このテレビ12aや携帯電話12b等を用いて可否確認を含む工事情報を表示することで、従来のようにセンターから郵送等で行っていた工事開始の連絡作業を省略することができ、この可否確認に応答してガスメータ2に工事承認信号または工事否認信号を返信することで、ガス事業者15は需要家がガス工事の開始を承諾したことを確認することができ、合理的な情報伝達システムを構築することができ、かつ工事に伴うガス圧低下発生時のセンターへの通報をしないようにすることで、情報錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【0050】
さらに、工事が終了したときも基地局14から各ガスメータに対して工事終了情報を送信し、この工事終了情報の受信に伴い特定の端末装置12に工事完了信号を送信することで、需要家への報告義務を果たすことができ、以降の圧力低下現象はガス配管等のガス漏れであると判断して基地局14に送信するようにしているため、情報錯綜によるガス事業者の混乱を回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明に係るガス遮断装置は、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載し、基地局を介してガス事業者から送信される工事情報を受信すると特定の端末装置に工事可否信号を送信し、特定の端末装置の画面上に要否確認を含む工事関連を表示すると共に要否確認信号を受信し、要否確認信号に応じてガス圧低下信号の処理モードを変更するようにしているため、工事に伴うトラブルを区別して管理することができるもので、工事の発生を伴う各種メータにも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガス遮断装置の通信形態を示す全体構成図
【図2】同ガス遮断装置の外観及び構成部品を示す図
【図3】同ガス遮断装置の内部構成図
【図4】同ガス遮断装置の制御回路基板の構成ブロック図
【図5】同ガス遮断装置と特定端末装置の通信形態を示す図
【図6】(a)同特定端末装置における料金情報表示形態を示す図(b)同特定端末装置における復帰情報表示形態を示す図
【図7】(a)同特定端末装置における工事情報表示形態を示す図(b)同特定端末装置における別の工事情報表示形態を示す図
【図8】同ガス遮断装置の制御ブロック図
【符号の説明】
【0053】
2 ガスメータ
2c ガス遮断弁
2d 圧力センサ(圧力検出手段)
10 制御回路基板
10a 制御回路
10b 情報記憶手段
10c 通信切替手段
11 無線モジュール
11a 広域通信無線モジュール
11b エリア通信無線モジュール
12 特定の端末装置
12a テレビ
12b 携帯電話
14 基地局
17 流量計測手段
21 応答信号判別手段
22 承認信号記憶手段
23 否認信号記憶手段
24 圧力判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスメータを経由した後の配管に接続される複数のガス器具の使用状況を監視するとともに、複数の相手先と電話回線以外の通信回線を用いて直接送受信が可能な無線モジュールを搭載したガス遮断装置であって、
ガスメータには、ガス流量を計測する流量計測手段と、ガス流路の遮断及び開放動作が可能なガス遮断弁と、前記流量計測手段の計測結果に基づく各種情報を記憶する情報記憶手段と、ガス流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、前記圧力検出手段の圧力信号より異常の有無を判断する圧力判定部と、複数の相手先と情報の送受信を行う無線モジュールとを備え、
前記無線モジュールは、前記制御回路と一体的に構成して前記ガスメータ内に収納し、少なくとも基地局との通信周波数帯と特定の端末装置との通信周波数帯を有し、
前記基地局から送信される工事情報を受信すると前記特定の端末装置に工事可否信号を送信し、前記特定の端末装置からの応答信号を受信すると基地局にその情報を送信し、
前記圧力判定部から圧力低下信号が出力されたとき、前記工事可否信号に対する応答信号に応じて圧力低下の発生情報を基地局に送信するか否かを判断し、
前記工事可否信号に対する応答信号が工事承認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信せず、前記工事可否信号に対する応答信号がない、あるいは工事否認信号の場合、圧力低下の発生情報を基地局に送信するようにしたガス遮断装置。
【請求項2】
基地局から送信される工事終了情報を受信すると特定の端末装置に工事完了信号を送信し、以降、圧力判定部から圧力低下信号が出力されると、圧力低下の発生情報を基地局に送信するようにした請求項1記載のガス遮断装置。
【請求項3】
無線モジュールは、基地局と通信するための広域無線通信周波数帯を有する広域通信無線モジュールと所定のエリア内で特定の端末装置と通信するための特定小電力無線通信周波数帯を有するエリア通信無線モジュールで構成し、通信情報に応じて前記広域通信無線モジュールとエリア通信無線モジュールの切り替えを実行する通信切替手段を備えた請求項1または2記載のガス遮断装置。
【請求項4】
特定の端末装置は、テレビあるいは携帯電話とし、ガスメータに内蔵のエリア通信無線モジュールと同一の通信周波数帯を有する無線モジュールを内蔵あるいは一体的に取り付けた請求項1〜3のいずれか1項記載のガス遮断装置。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−123152(P2008−123152A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304741(P2006−304741)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】