説明

ガス開閉弁

【課題】開閉弁のOリングは、特製なので高価かつ管理が複雑で、受圧面積も大きいため弁体を押す所要動力は大で、婦女子には厄介な操作であった。
【解決手段】 開閉弁は本体(1)、軸線(X)上に配置された弁ケーシング(2)、抑止部材(3)、弁体(4)、バネ(5)及びOリング(6)を備える。該本体の供給路(7)は下流側に収容室(8)と取付室(9)を備える。該弁ケーシングは該収容室にあり、ガスの流路(10)は該供給路と連通し、下流側に開口部(11)が形成される。該抑止部材は該取付室に気密に取付いて該弁ケーシングを抑止し、貫設された流出路(12)は該抑止部材の円錐台状部(13)の端面に開口する。該弁体は円錐台状部(15)、該弁ケーシングの該流路に緩合する大径部側の大円柱部(16)、該抑止部材の該流出路に緩合する小径部側の小円柱部(17)を備える。該Oリングは該開口部にあって該小円柱部が緩通し、バネとガス圧で変形し、復元力で両円錐台状部の外周面に圧接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
弁体を用いたガスの開閉弁は種々の形式のものがあり、本件出願人も種々開発して採用している。弁体(弁ピン)とOリングの離接によって流体の通路を開閉する基本的な構成は共通しており、例えば実用新案登録第2578120号公報に記載されたものがある。弁体は軸線上に円錐台状部を挟んで大径の円柱部分と小径の円柱部分が背向するように突き出たもので、両円柱部分がそれぞれ本体と抑止部材に設けられた一次(高圧)ガスの流路に移動自在に緩合している。この流路は抑止部材と本体の対向部分で拡径した収容室を備え、この収容室にOリングが収められている。弁体の小径の円柱部分はこのOリングを緩通しており、大径部分はバネで押され、Oリングは弁体の円錐台状部の外周面と抑止部材のこの収容室に臨む面に圧接して、ガス通路を遮断するようになっている。弁体をバネに逆らって押し込むと、Oリングのシール機能が失われ、一次ガスは流路を通って減圧機構に流れ、所定の圧力に減圧されて需要側へ流れ出る。
【特許文献1】実用新案登録第2578120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この形式の高圧ガスの開閉弁機構の場合、高圧ガスの封止は、弁体をバネで押圧し、弁体の円錐台部外周面でOリングを押し潰してこのOリングを円錐台部外周面と抑止部材の収容室に臨む面に密接することによってなされる。このOリングには高圧ガスの圧力も掛かり、シール機能を補完している。このバネの力及び一次ガスの圧力に逆らってガスを取り出す所要動力は大で、婦女子にはかなり厄介な操作であった。
【0004】
市販のOリングで内径が小さいものは安価に入手できるが、一次ガス流路の開口面に入り込んでこれを塞ぐおそれがあるので採用できない。本件出願人では、特殊な環状シール材を採用しており、このシール材に挿入された異径円柱部を備える弁体が軸線上を変位し、自身の異径ギャップによりシール材に接離することで高圧ガスを開閉するものであるが、構成要素に対する要求仕様が高く、比較的コストも大で、管理が複雑になってしまう。
【0005】
また、汎用の小型のOリングを採用できるような構成を考えれば、Oリングを拡径した場合の復元力を封止力として利用することができるが、そこまでは考えられていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガス開閉弁は、本体と、それぞれ同一の軸線上に配置された弁ケーシング、抑止部材、弁体、バネ及びOリングを備えている。該本体は該軸線上に一次(高圧)ガスの供給路が穿たれ、該供給路は一次ガスの下流側に拡大した内径の該弁ケーシングの収容室と、該収容室に続き該収容室より拡大した内径の該抑止部材の取付室を備えている。該弁ケーシングは該収容室に収容され、該軸線上に貫設された一次ガスの流路の上流側端部は該供給路と連通し、下流側端部に該流路より拡大した内径の開口部が形成される。該抑止部材は、該軸線上にガスの流出路が貫設され、該流出路の一次ガスの上流側は該抑止部材の内面から該軸線上に突出した円錐台状部の端面に開口し、該取付室に気密に取付けられて該弁ケーシングを抑止している。該弁体は該軸線上に該抑止部材の該円錐台状部と相対する円錐台状部と、自身の該円錐台状部の大径部側に続き該弁ケーシングの該流路に該開口部側から緩合する大円柱部と、小径部側から続き該抑止部材の該流出路に該円錐台状部の開口を通って緩合する小円柱部を備えている。該Oリングは、負荷の掛かっていない状態でその内周面が該抑止部材の該円錐台状部の外周面に当接し得る孔径の透孔を有し、該透孔を該弁体の小円柱部が緩通して、該開口部に装入される。そして、 該バネは該弁体を押圧して該Oリングを拡径し、該Oリングはその復元力と背面に受けるガス圧で、該抑止部材の該円錐台状部と該弁体の円錐台状部の外周面に圧接している。
【0007】
Oリングは汎用の小型のものを採用できる。通常のように、一次(高圧)ガスは高圧ガス容器から本体の供給路に流れ、弁ケーシングの流路に流れ、開口部に流れ込む。弁体はバネにより押圧され、その円錐台状部は該抑止部材の円錐台状部方向へ押しやられる。Oリングは孔径が小さいので、該抑止部材の円錐台状部と該弁体の該円錐台状部の外周面により孔径を押し拡げられて、復元力により両円錐台状部の外周面に圧接する。これにより弁ケーシングの流路と該抑止部材の該流出路の間は遮断され、ガスは流出しない。弁体をバネや流体の圧力に逆らって押し込めば、Oリングが該弁体の該円錐台状部の外周面から離別し、弁ケーシングの流路と該抑止部材の該流出路の間が連通するので、高圧ガスは弁ケーシングの該流路から該抑止部材の該流出路に流れ、適宜減圧されて需要側へ流れる。
【0008】
該抑止部材の該円錐台状部と該弁体の該円錐台状部の該軸線となす傾斜角度は等しくなっていてもよい。
こうすると、Oリングの縦断面は各円錐台状部の円錐面の交差面と合致するので、バランスのよいシールが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかるガス開閉弁によれば、Oリングは汎用の小型のものを採用でき、Oリングの透孔は孔径が小さいので、該抑止部材の円錐台状部と該弁体の該円錐台状部の外周面により孔径を押し拡げられて、復元力及び背面に受けるガス圧により両円錐台状部の外周面に圧接するので、弁ケーシングの流路と該抑止部材の該流出路の間は確実に遮断され、ガス漏れが防がれ、Oリングは小型なので、受圧面積が小さい開閉弁を容易に構成でき、弁作動時の所要動力(押し込み力)や、全体形状を小さくでき、減圧弁の主弁として使用する等、他の機構との組み合わせや応用が可能である。
【0010】
請求項2によれば、Oリングの縦断面は各円錐台状部の円錐面の交差面と合致するので、バランスのよいシールが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明にかかるガス開閉弁の具体例を示す切断側面図、図2は図1の一部の拡大図、図3は従来のOリングの使用態様を示す図2と同様の拡大図である。
【0012】
ガス開閉弁は、通常のように、本体1と、それぞれ同一の軸線X上に配置された弁ケーシング2、抑止部材3、弁体4、バネ5及びOリング6を備えている。本体1は軸線X上に一次(高圧)ガスの供給路7が穿たれ、この供給路7は一次ガスの下流側に拡大した内径の弁ケーシング2の収容室8と、この収容室8に続きこの収容室8より拡大した内径の抑止部材3の取付室9を備えている。弁ケーシング2は収容室8に収容され、軸線X上に貫設された一次ガスの流路10の上流側端部は供給路7と連通し、下流側端部にこの流路10より拡大した内径の開口部11が形成される。抑止部材3は、軸線X上にガスの流出路12が貫設され、この流出路12の一次ガスの上流側は抑止部材3の内面から軸線X上に突出した円錐台状部13の端面に開口し、取付室9にOリング14を介し気密に取付けられて弁ケーシング2を抑止している。
【0013】
弁体4は軸線X上に抑止部材3の円錐台状部13と相対する円錐台状部15と、この円錐台状部15の大径部側に続き弁ケーシング2の流路10に開口部11側から緩合する大円柱部16と、小径部側から続き抑止部材3の流出路12に円錐台状部13の開口を通って緩合する小円柱部17を備えている。Oリング6は、負荷の掛かっていない状態でその内周面が抑止部材3の円錐台状部13の外周面に当接する孔径dの透孔19を有しており、開口部11に装入され、その透孔19に弁体4の小円柱部17が挿通される。バネ5は、通常のように、弁ケーシング2の流路10の上流側端部に配置されたフィルター18に一端を定置され、他端で弁体4を押圧する。この押圧力により円錐台状部15の外周面でOリング6を拡径し、Oリング6はその復元力と、背面に受けるガスの圧力で、抑止部材3の円錐台状部13と弁体4の円錐台状部15の外周面に圧接し、ガスの流出を遮断している。
【0014】
Oリング6は汎用の小型のものを採用できる。通常のように、一次(高圧)ガスはガス容器から本体1の供給路7に流れ、弁ケーシング2の流路10に流れ、開口部11に流れ込む。弁体4はバネ5により押圧され、その円錐台状部15は抑止部材3の円錐台状部13方向へ押しやられる。Oリング6の透孔19は孔径dが小さいので、弁体4の円錐台状部15の外周面により孔径d’に押し拡げられ、その復元力及び背面に受けるガス圧により両円錐台状部13と15の外周面に圧接する。これにより弁ケーシング2の流路10と抑止部材3の流出路12の間は遮断され、ガスは流出しない。弁体4をバネ5や流体圧力に逆らって押し込めば、Oリング6が弁体4の円錐台状部15の外周面から離別し、弁ケーシング2の流路10と抑止部材3の流出路12の間が連通するので、高圧ガスは弁ケーシング2の流路10から抑止部材3の流出路12に流れ、適宜減圧されて需要側へ流れる。
この場合、Oリング6は汎用の小型のものでよく、安価な上、機構そのものも小型にでき、受圧面積が小さいので操作力が小さくて済み、婦女子でも容易に扱える。また、他の機構と組み合わせることも容易で、例えば、この開閉弁を減圧弁の主弁として使用することができる。
【0015】
抑止部材3の円錐台状部13と弁体4の円錐台状部15の傾斜角度θは等しくなっている。
この場合、Oリング6の縦断面は各円錐台状部13と15の円錐面の交差面Pと合致するので、バランスのよいシールが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるガス開閉弁の具体例を示す縦断側面図である。
【図2】図1の一部の拡大図である。
【図3】Oリングと円錐台状部の関係の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 本体
X 軸線
2 弁ケーシング
3 抑止部材
4 弁体
5 バネ
6 Oリング
7 供給路
8 収容室
9 取付室
10 流路
11 開口部
12 流出路
13 円錐台状部
14 Oリング
15 円錐台状部
16 大円柱部
17 小円柱部
18 フィルター
19 透孔
d 孔径
d’ 孔径
θ 傾斜角度
P 交差面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体(1)と、それぞれ同一の軸線(X)上に配置された弁ケーシング(2)、抑止部材(3)、弁体(4)、ばね(5)及びOリング(6)を備え、
該本体(1)は該軸線(X)上に一次(高圧)ガスの供給路(7)が穿たれ、該供給路(7)は一次ガスの下流側に拡大した内径の該弁ケーシング(2)の収容室(8)と、該収容室(8)に続き該収容室(8)より拡大した内径の該抑止部材(3)の取付室(9)を備え、
該弁ケーシング(2)は該収容室(8)に収容され、該軸線(X)上に貫設された一次ガスの流路(10)の上流側端部は該供給路(7)と連通し、下流側端部に該流路(10)より拡大した内径の開口部(11)が形成され、
該抑止部材(3)は、該軸線(X)上にガスの流出路(12)が貫設され、該流出路(12)の一次ガスの上流側は該抑止部材(3)の内面から該軸線(X)上に突出した円錐台状部(13)の端面に開口し、該取付室(9)に気密に取付けられて該弁ケーシング(2)を抑止しており、
該弁体(4)は該軸線(X)上に該抑止部材(3)の該円錐台状部(13)と相対する円錐台状部(15)と、自身の該円錐台状部(15)の大径部側に続き該弁ケーシング(2)の該流路(10)に該開口部(11)側から緩合する大円柱部(16)と、小径部側から続き該抑止部材(3)の該流出路(12)に該円錐台状部(13)の開口を通って緩合する小円柱部(17)を備え、
該Oリング(6)は、負荷の掛かっていない状態でその内周面が該抑止部材(3)の該円錐台状部(13)の外周面に当接し得る孔径(d)の透孔(19)を有し、該透孔(19)を該弁体(4)の小円柱部(17)が緩通して、該開口部(11)に装入され、
該バネ(5)は該弁体(4)を押圧して該Oリング(6)を拡径し、該Oリング(6)はその復元力と背面に受けるガス圧で、該抑止部材(3)の該円錐台状部(13)と該弁体(4)の円錐台状部(15)の外周面に圧接している
ことを特徴とするガス開閉弁。
【請求項2】
該抑止部材(3)の該円錐台状部(13)と該弁体(4)の該円錐台状部(15)の該軸線(X)となす傾斜角度(θ)は等しくなっている請求項1に記載のガス開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−298127(P2008−298127A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143190(P2007−143190)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(390009818)日本炭酸瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】