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ガセリシンAの生産方法、抗菌剤及び炎症の治療剤
説明

ガセリシンAの生産方法、抗菌剤及び炎症の治療剤

【課題】ヒト及び動物に対して安全な脱脂乳培地を用いてガセリシンAを効率よく生産する方法を提供する。
【解決手段】プロテオース・ペプトンを含む脱脂乳培地で、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)ガセリ菌LA39株を培養してガセリシンAを生産することを特徴とするガセリシンAの生産方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシドフィルスグループ乳酸菌のラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri、ガセリ菌)LA39株の生産するバクテリオシンであるガセリシンAの生産方法、及びこの生産方法により生産されたガセリシンAを含む抗菌剤及び炎症の治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト腸管・糞便より高頻度で分離される乳酸桿菌、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus、アシドフィルス菌)グループ乳酸菌には、抗菌性ペプチド(バクテリオシン)を生産する株が多く見出されており、宿主に対して整腸作用をもたらすプロバイオティクスとして注目されている。
【0003】
特に宿主に対して安全と考えられているアシドフィルスグループ乳酸菌の中でも、アシドフィルスグループ乳酸菌のラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri、ガセリ菌)LA39株の生産するバクテリオシンであるガセリシンAは、リステリア菌(Listeria monocytogenes)や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対して高い抗菌効果を示すことが知られている(非特許文献1参照)。この高い抗菌効果に着目し、食品分野及び医薬分野に利用することが期待されている。
【0004】
しかしながら、現在までのところ、ガセリシンAを食品分野及び医薬分野に利用することはできなかった。一般に、食品及び医薬品に用いる成分には、ヒト及び動物に対する高度の安全性が要求される。ガセリシンAの生産は、市販の合成培地(例えば、Difco社製、MRS培地)を用いて行われており、この合成培地には乳酸桿菌の細胞壁の構築に不可欠なオレイン酸を成分として含む界面活性剤が含まれているが、この界面活性剤は食品分野でも医学薬学分野でも安全性の点から使用できないものである。ガセリシンAの精製度をいくら高めたとしても、この界面活性剤や培地成分が食品及び医薬品等に含まれてしまうことになり、従来はガセリシンAを食品分野及び医薬分野において使用することができなかった。
【0005】
特に、ガセリシンAを体内に直接注入する医薬品とする場合は、免疫応答や宿主障害の問題からヒト及び動物に対して極めて高度の安全性が要求されるため、従来の合成培地で生産されたガセリシンAを体内に直接注入する医薬品に利用することは不可能であった。
【0006】
そこで、合成培地の代わりに、食品として安全な脱脂乳培地を用いてガセリシンAを生産することが検討されたが、ガセリ菌を含むヒト腸管由来の有用桿菌は、脱脂乳培地では極めて生育性に乏しく、脱脂乳培地を用いて効率よくガセリシンAを生産することは非常に困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Itoh, T., Y. Fujimoto, Y. Kawai, T. Toba and T. Saito, Inhibition of food-borne pathogenic bacteria by bacteriocins from Lactobacillus gasseri, Letters in Applied Microbiology, 21, 137-141, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ヒト及び動物に対して安全な脱脂乳培地を用いてガセリシンAを効率よく生産する方法を提供することを目的とする。また、本発明は、ヒト及び動物に対して安全な脱脂乳培地を用いて生産したガセリシンAを有効成分とする抗菌剤及び炎症の治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、プロテオース・ペプトン(以下、ppとする。)を含む脱脂乳培地で、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)LA39株(以下、ガセリ菌LA39株とする。)を培養してガセリシンAを生産することを特徴とするガセリシンAの生産方法を提供する。脱脂乳培地中では、ppが0.1%(w/v)以上含まれることが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記の方法により生産されたガセリシンAを有効成分とする抗菌剤を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上記の方法により生産されたガセリシンAを有効成分とする炎症の治療剤を提供する。
【0012】
上記の炎症は黄色ブドウ球菌を起因菌とする炎症であってもよく、乳房炎であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ヒト及び動物に対して安全な、ガセリシンAを低コストにて大量に得ることが可能である。また、本発明によると、ヒト及び動物に対して安全な、ガセリシンAを有効成分とする抗菌剤及び炎症の治療剤を提供することが可能である。さらに、本発明によると、ガセリシンAを用いて、黄色ブドウ球菌を起因菌とする炎症を治療することが可能である。さらに、本発明による炎症治療剤をウシ乳房に直接注入しても免疫応答や宿主障害の問題がなく乳房炎を治療することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガセリ菌LA39株の生菌数及びpHの経時変化を示す図である。
【図2】SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(I)とバクテリオシンの活性検出(II)結果を示す図である。
【図3】ガセリシンA(画分)のFAB-MSスペクトラムを示す図である。
【図4】ガセリシンA投与およびPBS投与分房におけるブドウ球菌の経時変化を示す図である。
【図5】ガセリシンA投与およびPBS投与分房におけるα1酸性糖タンパク濃度の経時的変化を示す図である。
【図6】ガセリシンA投与およびPBS投与分房における細胞数の経時的変化を示す図である。
【図7】ガセリシンA投与およびPBS投与分房におけるCD4/CD8比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ppを含む脱脂乳培地でガセリ菌LA39株を培養してガセリシンAを生産する。
【0016】
pp、すなわち、プロテオース・ペプトンとは、親水性が強く加熱による凝固性を失ったタンパク質を指し、通常、単一の成分ではなく複数のペプチドの混合物である。入手可能なppとして、例えば、Difco社製の製品番号No.211693及びOxoid社製の製品番号LP0085が挙げられるが、好ましくはDifco社製の製品番号No.211693である。
【0017】
脱脂乳培地は、ウシ乳汁であれば特に限定されるものではなく、市販の脱脂粉乳又は牛乳を用いることができる。脱脂乳培地を用いてガセリシンAを生産する場合には、精製されたガセリシンAに含まれる不純物はウシ乳汁由来の成分となる。そのため、抗菌剤及び炎症治療剤としてこのガセリシンAを用いた場合に、ヒト及び動物に対しても安全性が確保される。また、このガセリシンAをウシ乳房炎の治療剤として用いる場合、ウシ乳房に直接注入したとしても何ら異物が注入されるわけではないので、ウシ乳房に対する安全性は非常に高い。
【0018】
この脱脂乳培地には上記のppが含まれるが、好ましくは0.1%(w/v)、より好ましくは0.5%(w/v)含まれる。
【0019】
ガセリ菌LA39株は、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)グループ乳酸菌の中でB1サブグループに属するガセリ菌LA39株である。ガセリ菌LA39株が菌体外に生産するバクテリオシンであるガセリシンAは、抗菌効果、特にリステリア菌及び黄色ブドウ球菌に対する抗菌効果を示すことが知られている。ガセリシンAは分子量5,652ダルトン、アミノ酸残基総数58、ランチオニンなどの修飾アミノ酸を含まない、分子内でN-,及びC-末端が結合した環状バクテリオシンである。本菌株は、本発明者らによって乳児便より単離され、2001年に理化学研究所(東京、和光市)に預託されている。本菌株の登録番号はLb. gasseri JCM11657株であり、誰でも容易に入手可能である。
【0020】
ガセリ菌LA39株の生産方法は、脱脂乳培地にppを添加し、ガセリ菌LA39株を接種、培養すると、その培養上澄み中に生産される。培養時間は、好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間であり、ガセリ菌LA39株の分子数とガセリシンAの生産される分子数はパラレルの関係にあるため、pHや滴定酸度によりガセリ菌LA39株から生産される乳酸量の測定によりガセリ菌LA39株の生育性を推定し、それによりガセリシンAの生育性を知ることができる。培養温度は、好ましくは35〜40℃であり、より好ましくは、37℃付近である。
【0021】
培養物からガセリシンAを抽出するには、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等を必要に応じて組み合わせて抽出することができる。例えば、DEAE樹脂を用いたイオン交換法、pH調整法を用いてもよい。
【0022】
本発明の生産方法により得られるガセリシンAは、食品、飲料、化粧品、医薬品等の用途に使用することができる。これらの用途に使用する場合に、ガセリシンAを、培養物から抽出せずに培養物ごと用いても、培養物から抽出して単独で用いてもよく、対象とする物品の性質により必要に応じて抽出を行うことができる。培養物ごと用いたとしても、本生産方法には脱脂乳培地が用いられていることからヒト及び動物に対して安全性が高い。また、培養物から抽出して単独で用いたとしても、抽出後にガセリシンAに含まれる不純物は、脱脂乳培地由来の成分であるため、ヒト及び動物に対して安全性が非常に高い。
【0023】
ガセリシンAは優れた抗菌作用を有し、ガセリシンAを抗菌剤や抗炎症剤として用いてもよい。とくに、ガセリシンAは、黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用に優れているので、特に黄色ブドウ球菌を起因菌とする炎症の治療剤としてもよく、乳房炎の治療剤として用いてもよい。
【0024】
ガセリシンAを抗菌剤及び炎症の治療剤とする場合には、液体担体に溶解又は分散させ、又は粉末担体と混合させてもよい。添加物としては、例えば、界面活性剤、顔料、色素、乳化剤、分散剤、懸濁剤、湿潤剤又は安定剤が挙げられる。また、形態としては、例えば、乳剤、水性剤、ゲル剤、クレーム、軟膏、エアゾール、カプセル粉剤および錠剤が挙げられる。
【0025】
特に、ガセリシンAを乳房炎の治療剤として用いる場合には、試料等に混ぜて経口投与してもよく、溶剤にガセリシンA含めて水性剤の形態にして、乳頭をディッピングしてもよい。治療の効果を最大限に得るためには、注射製剤の形態にして乳頭から乳房内に投与してもよい。ガセリシンAを含む乳房炎治療剤は、乳牛の泌乳期及び乾乳期にも投与することができる。
【0026】
以下に試験例を示す。試験例において特に断りのない限り、試薬は和光純薬工業株式会社(大阪)製の特級試薬または一級試薬を用いた。
【0027】
ガセリ菌LA39株は、東北大学大学院農学研究科動物資源化学研究室にてヒト乳児糞便から分離したバクテリオシン生産株を用いた。
【0028】
(試験例1 脱脂乳培地に各種成分を加えた場合の、ガセリシンAの生産性の変化)
ガセリ菌LA39株を、MRS培地(Difco社、Detroit、MI、USA)を用いて1%(w/v)量で接種し、供試前に3回の継代培養(37℃、18-24時間)を行った。
【0029】
次に、表1に示した各種成分(添加量は乳酸菌用の人工合成培地にて汎用されている量を基準に設定した。)を添加した10%(w/v)脱脂乳培地(森永乳業社製、製品名スキムミルク)にて5回連続継代して培養(37℃で18時間)した後、ガセリシンAの生育性を知るためにpH/イオンメーター(Horiba社製、F-24型)によりpHの測定を行った。
【0030】
ガセリシンAの生産とガセリ菌LA39株の生育性とはパラレルの関係にある。そこで、乳酸菌であるガセリ菌LA39株の生育性をpH測定により知ることにより、ガセリシンAの生産性とした。pHが5.0以下の場合にガセリシンAの生産性を良好とし、表1中「+」として示す。それより高いpHが測定された場合には、表1中「−」として示す。
【表1】

【0031】

【0032】
表1に示される通り、pp添加脱脂乳培地ではガセリシンAの生産性は「+」、すなわち、良好であった。これに対して、その他の添加成分を脱脂乳培地に加えた場合のガセリシンAの生産性は「−」であり、また、添加成分がない場合と比べて特に生育性に大きな変化が
なかった。
【0033】
(試験例2 脱脂乳培地に添加するpp濃度変化に伴うpHの変化)
10%(w/v)脱脂乳培地(森永乳業社製、製品名 スキムミルク)にpp(Difco社製、Bacto proteose peptone No.3)をそれぞれ0.001、0.01、0.1、0.5及び1%(w/v)添加し、試験例1と同様にMRS培地で継代培養したガセリ菌LA39株を5回連続継代して培養した後、5日間のpHを測定した。pHの測定により、乳酸菌であるガセリ菌LA39株の生育性、すなわち、ガセリシンAの生産性を知ることができ、pHが5以下であればガセリシンAの生産性が良好である。
【表2】

【0034】
表2より、pp添加量が0.1%(w/v)では、1〜5回目の脱脂乳培地のpHが全て5以下で好ましい値になった。また、pp添加量が0.5%(w/v)では、pHが全て4以下で、より好ましい値となった。ppは一般に非常に高価であるが、わずかな添加量でガセリシンAの生育性が良好となった。
【0035】
(試験例3 ガセリ菌LA39株の生菌数及びpHの経時変化)
ガセリシンAの生産性とpH及び時間との関係を調べるため、pp添加量が0.5%(w/v)の10%脱脂乳培地(森永乳業社製、商品名 スキムミルク)を用いて、ガセリシンAの生産性とパラレルな関係にあるガセリ菌LA39株の生菌数と、pH値の測定を行った。
【0036】
生菌数は、10mmolリン酸緩衝液(pH6.8)を用いて段階希釈を行い、0.5%(w/v)ppを含有する10%(w/v)脱脂乳平板培地に塗抹した後、37℃で48時間の嫌気培養を行い、菌数は「colony forming unit(CFU)/ml」で示した。また、pH値の測定方法は試験例2と同様に行った。これらの結果を図1に示される。
【0037】
図1によると、培養8時間で約10CFU/ml、培養12時間で約109.5CFU/mlの、ガセリ菌LA39株の良好な生育、すなわち、ガセリシンAが良好に生産されたことが理解される。また、培養8時間で約pH5、培養12時間でpH4.2の値が得られ、この結果からもガセリシンAが良好に生産されたことが理解される。
【0038】
(試験例4 pp添加脱脂乳培地を用いた生産されたガセリシンAの精製)
0.5%(w/v)pp添加10%(w/v)脱脂乳培地に、ガセリ菌LA39株を1%(v/v)接種量で3回継代して培養(37℃で18時間)した後、調製用の最終培養を37℃で24時間行った。本培養液から遠心分離(5,000×g、20分、4℃)により得た培養上清を2 規定水酸化ナトリウム溶液を用いてpH7に調整した(画分P1)。次いで画分P1を水で平衡化させたC4樹脂(C4-ブチルトヨパール 650M、Tosoh、東京)を用いた逆相クロマトグラフィーに供した。溶出は、水、40%(v/v)および90%メタノールのステップワイズ方式により行った。バクテリオシン活性を含む画分(画分P2、C4素通り画分)を水で平衡化させたC8樹脂(リクロプレップ RP-8、メルク社、Darmstadt、Germany)による逆相クロマトグラフィーに供した。溶出は、水、30%、60%、90%アセトニトリル、20%、40%、60%および90%イソプロパノールのステップワイズ方式により行った。60%イソプロパノールで溶出したバクテリオシン活性を示した画分は、-20℃で保存した(画分P3、ガセリシンA精製画分)。
【0039】
(試験例5 SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動とゲル上におけるバクテリオシン活性の検出)
SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動は、ラピダス・ミニスラブ電気泳動装置 AE-6440型(W90×H80mm、アトー、東京)を用い、Laemmliの方法に準じて行った。ポリアクリルアミド濃度は、濃縮ゲルを4.5%(w/v)、分離ゲルを15%(w/v)とした。泳動後のゲルは、クマシーブリリアントブルーによる染色キット:Rapid CBB KANTO(関東化学、東京)を用いて染色および脱色した。
【0040】
泳動したゲル上におけるバクテリオシン活性の検出(ゲル活性検出法)は、Dabaらの方法に準じて以下のように行った。泳動直後のゲルを蒸留水で軽く洗浄した後、固定液(20%イソプロパノール、10%酢酸)で振盪しながら30分間固定した。次いで、ゲルを蒸留水で振盪しながら充分洗浄(30分×3回)した後、できるだけ余分な水分を除去し、滅菌済みのシャーレに設置した。本ゲルの上に400倍に希釈した指標菌を含むMRS軟寒天培地(20ml)を注ぎ固化させた後、37℃で18時間培養し、バクテリオシンの所在(指標菌が生育せず透明になった状態で観察される部位)を確認した。
【0041】
なお、指標菌であるラクトバチルス・デルブレッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスJCM1002T株(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002T、以下、単に1002株と省略する)は、理化学研究所微生物系統保存施設(JCM、和光市)より購入し、MRS培地(Difco社、Detroit、MI、USA)を用いて1%(w/v)量で接種し、供試前に3回の継代培養(37℃、18-24時間)を行った。
【0042】
また、寒天培地は1.5%(w/v)量、重層用軟寒天培地には0.75%(w/v)量の寒天(Agar Bacteriological、Agar No.1、Unipath Ltd., Hampshire, UK)をそれぞれ添加し調製した。
【0043】
滅菌は、オートクレーブ(SS-305型、トミー精工、東京)により、脱脂乳培地では115℃で、その他の培地では121℃で15分間行い、重層用軟寒天培地の溶解は100℃で1分間行った。
【0044】
これらの結果を表3及び図2に示す。なお、図2は、pp脱脂乳培地を用いたガセリシンAのSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(I)と、バクテリオシン活性検出(II)結果を示し、レーン1は分子量マーカー、レーン2は画分P1(培養上清)、レーン2は画分P2(C4逆相クロマトグラフィー)及びレーン3は画分P3(C8逆相クロマトグラフィー)である。
【表3】

【0045】
この結果によると、わずか2回段階の逆相クロマトグラフィーの実施により、ガセリシンAは300倍に精製できたことになる。
【0046】
また、従来のMRS培地による精製では、培地作成および培養(36時間)も含めて7日を要するが、本研究におけるpp脱脂乳培地では、2日で高純度のガセリシンAの調製を行うことが可能となった。以上の結果から、pp脱脂乳培地よりガセリシンAは短時間で簡便に調製出来ることから、本培地の有用性は極めて高いと考えられた。
【0047】
(試験例6 タンパク質含量の測定)
試料中のタンパク質含量は、Smithらの方法を応用したビシコニン酸定量キット:Micro BCA Protein Assay Reagent Kit(ピアス社、Rockford、IL、USA)を用いて測定した。標準タンパク質としては、インシュリンまたはウシ血清アルブミン(生化学用)を用いた。
【0048】
この結果も表3に示してある。
【0049】
全タンパク質量は0.08%の約17mgに減少したが、非活性は1800倍に高まり高純度に精製されていることを示している。
【0050】
(試験例7 分子量測定)
pp添加の脱脂乳培地より精製したガセリシンA精製画分(画分P3)は、高速原子衝撃質量分析装置:FAB(Fast Atom Bombardment) MASS JMS-700型(JEOL社、東京)を用いて分子量を測定した。この結果は図3に示される。
【0051】
この結果によると、画分P3のFAB-MASSによる分子量測定では、ガセリシンAに特有の5,653(m/z)(分子イオンピークM+H)のピークが検出され、従来のMRS培地で得られるガセリシンAと同一分子量であることが確認された。
【0052】
(試験例8 ガセリシンAのウシ分房への投与)
pp添加脱脂乳培地に得られたガセリシンA投与におけるウシ生体の免疫応答を調べるために、健康なホルスタインの分房を用い、乾乳導入後から乳汁を経時的に採取して、乳汁の細菌検査および炎症マーカーとなるα1酸性糖タンパク濃度、および、細胞数(SCC、CD11b、CD4、およびCD8)について測定した。供試分房は抗生物質(セファゾン)を3日間投与して乳槽内の細菌を除去した後、抗生物質投与後3日目に、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で活性300AU/分房に調製したガセリシンA溶液(pp添加脱脂乳培地培養上清)2.5ml、またはPBS(対照)を乳槽内に注入した後、乳汁中の細菌数の測定および炎症マーカーによる影響について経時的に測定した。
【0053】
この結果を図4〜7に示す。
【0054】
これら結果より、正常ウシ乳房内へのガセリシンAの投与試験の結果、黄色ブドウ球菌数の低減に大きな効果があり(図4)、対照と比較して、炎症マーカーα1AG濃度も増えず(図5)、体細胞数も増えず(図6)、炎症性リンパ球の比率も増えなかった(図7)。総合的に見て生体への悪影響がなかった。すなわち、安全性の高いガセリシンAを用いたウシ乳房炎治療をすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によるガセリシンAの生産方法によると、脱脂乳培地を用いて抗菌活性を有するガセリシンAを効率よくかつ低コストで生産できるため、これを用いた食品、飲料、医薬品の分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1%(w/v)以上のプロテオース・ペプトンを含む脱脂乳培地で、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus,gasseri)LA39株を培養することにより生産されたガセリシンAを有効成分とする抗菌剤。
【請求項2】
0.1%(w/v)以上のプロテオース・ペプトンを含む脱脂乳培地で、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus,gasseri)LA39株を培養することにより生産されたガセリシンAを有効成分とする炎症の治療剤。
【請求項3】
前記炎症は、黄色ブドウ球菌を起因菌とする炎症であることを特徴とする請求項2に記載の治療剤。
【請求項4】
前記黄色ブドウ球菌を起因菌とする炎症は、乳房炎であることを特徴とする請求項3に記載の治療剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−207033(P2012−207033A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154848(P2012−154848)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2003−320291(P2003−320291)の分割
【原出願日】平成15年9月11日(2003.9.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成15年3月20日 社団法人日本畜産学会発行の「日本畜産学会 第101回大会 講演要旨」に発表
【出願人】(507397489)
【出願人】(507397490)
【出願人】(507397504)株式会社多機能性蛋白研究所 (3)
【Fターム(参考)】