説明

ガソリン組成物

【構成】 分子内に7員環または8員環を有し、かつ環構造内に3個以上の不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を必須成分として含有することを特徴とするガソリン組成物。
【効果】 本発明のガソリン組成物は、芳香族成分を増加させることなく、ガソリンのオクタン価及び発熱量を高くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ガソリン組成物に関し、更に詳細には、自動車用、その他の内燃機関用燃料として特に有用であり、高いオクタン価及び発熱量等を有するガソリン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】内燃機関用、特に自動車用燃料としてのガソリンには、高いオクタン価、高い発熱量が望まれている。従来、四エチル鉛を配合することによりオクタン価の高いガソリンが製造されていたが、現在では鉛による公害問題のためにその配合は禁止されている。
【0003】一般的に石油精製工程上の調整によって、かなり高いオクタン価のガソリンが得られることが知られており、種々提案がなされているが、このような調整には限界があり、更には、該調整の基本原理が、主として芳香族成分を増加させるものであるため、前記鉛による公害問題と同様に、芳香族化合物の大気中放出による公害が懸念されている。更に近年、排ガス公害の軽減に有効とされるメタノール、メチルターシャリーブチルエーテル等のガソリンへの配合が提案されている。該提案は、ガソリンのオクタン価向上に有効であるが、ガソリンの発熱量が低下するという欠点がある。
【0004】また種々のガソリン素材のオクタン価については、1950年代に米国ASTMから報告(API Research Project 45)が出されているに過ぎない。該ASTMの報告は、極めて広汎、正確で、価値の高いものであるが、各化合物に関して1配合条件での測定値の報告のみであるので、配合によるオクタン価挙動の変化を知ることはできないのが実状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、オクタン価が高く、且つ発熱量が高いガソリン組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、分子内に7員環または8員環を有し、かつ環構造内に3個以上の不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を必須成分として含有することを特徴とするガソリン組成物が提供される。
【0007】以下、本発明の内容を更に詳細に説明する。
【0008】本発明のガソリン組成物は、必須成分として分子内に7員環または8員環を有し、かつ環構造内に3個以上の不飽和結合を有する化合物(以下シクロポリエン化合物と称す)を含有する。該シクロポリエン化合物としては、シクロヘプタトリエン、シクロオクタトリエン、シクロオクタテトラエンおよびこれらの1個以上の水素原子が炭素数1〜5の炭化水素基等で置換された炭化水素化合物等を挙げることができ、使用に際しては単独若しくは混合物として用いることができる。該炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等のアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;下記構造式化1で表わされる環を形成する基等を挙げることができる。
【0009】
【化1】


【0010】前記シクロポリエン化合物の沸点は、JIS K 2202に規定されるガソリンの沸点範囲内にあることが望ましい。従って該シクロポリエン化合物の炭素数は、合計12以下であるのが好ましく、具体的には例えば、1,3,5−シクロヘプタトリエン、1,3,5−シクロオクタトリエン、1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1−メチル−2,4,6−シクロヘプタトリエン等を特に好ましく用いることができる。
【0011】本発明のガソリン組成物において、必須成分である前記シクロポリエン化合物の含有量は任意であり、特に限定されるものではないが、好ましくは組成物全量基準で2〜18容量%、さらに好ましくは5〜15容量%である。前記含有量が2容量%未満の場合には効果が充分でなく、18容量%を超えると該効果が飽和し、ガソリン中のガム分が増加するので好ましくない。なお、通常ガソリン基材として使用している炭化水素留分は、本発明のシクロポリエン化合物を実質的に含有していない。
【0012】本発明のガソリン組成物では、シクロポリエン化合物以外に、通常のガソリンに用いられる調合材を、適宜調合することができる。該調合材としては、例えばナフサ留分、接触分解法・水素化分解法等で得られる分解ガソリン、接触改質法等で得られる改質ガソリン、オレフィンの重合により得られる重合ガソリン、イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することにより得られるアルキレート、アイソメレート、脱n−パラフィン油又はこれらの特定範囲の留分或いは芳香族炭化水素等を挙げることができる。この際得られるガソリン組成物は、JIS K 2202の自動車ガソリンの規格を満足することが好ましい。
【0013】本発明のガソリン組成物は、前記必須成分を含有しておれば良く、そのオクタン価は任意であるが、好ましくはリサーチ法オクタン価が90以上、特に好ましくは95以上である。該リサーチ法オクタン価とは、JIS K 2280のオクタン価およびセタン価試験方法により測定されるオクタン価を意味する。
【0014】本発明のガソリン組成物には、必要に応じて例えば、フェノール系、アミン系等の酸化防止剤;シッフ型化合物、チオアミド型化合物等の金属不活性化剤;有機リン系化合物等の表面着火防止剤;コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミン等の清浄分散剤;多価アルコール及びそのエーテル等の氷結防止剤;有機酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステル等の助燃剤;アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の帯電防止剤;アゾ染料等の着色剤等の公知の燃料油添加剤を添加することができ、使用に際しては単独もしくは混合物として用いることができる。該燃料油添加剤の添加量は任意であるが、その合計量がガソリン組成物全量に対して0.1重量以下となるように添加するのが好ましい。また更に、必要に応じて例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メチル−t−ブチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、メチル−t−アミルエーテル、エチル−t−アミルエーテル等のオクタン価向上剤を添加することもできる。該オクタン価向上剤の添加量は任意であるが、好ましくはガソリン組成物全量に対して20容量%以下であるのが好ましい。
【0015】
【発明の効果】本発明のガソリン組成物は、芳香族成分を増加させることなく、特定のシクロポリエン化合物を含有するので、ガソリンのオクタン価及び発熱量を高くすることができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
【比較例1及び2】イソオクタンとノルマルヘプタンとを混合し、オクタン価60(比較例1)、オクタン価90(比較例2)の標準基材を製造した。得られたそれぞれの基材のリサーチ法オクタン価、オクタン価計算値(BLENDING OCTANENUMBER:API Research Project p.45参照、オクタン価と配合比率から計算した配合剤のオクタン価計算値)、15℃における密度(kg/L)及び眞発熱量(kcal/L)(JIS K 2203による)を測定した。結果を表1に示す。
【0018】
【比較例3】通常のガソリン製造工程で生産されるガソリン用基材を配合して、芳香族成分18%、オレフィン成分10%、蒸留性状:10%留出温度47.5℃、50%留出温度79℃、97%留出温度155℃であるリサーチ法オクタン価94.5のガソリン基材を調製した。得られたガソリン基材について、比較例1及び2と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0019】
【実施例1−1〜2−2】比較例1〜3で調製した各基材に、表1に示す配合剤を表1に示す配合割合で混合し、ガソリン組成物を製造した。得られたガソリン組成物について、比較例1及び2と同様に各測定を行った。結果を表1に示す。
【0020】
【比較例4−1〜5−3】ベンゼン(比較例4)又は1,5−シクロオクタジエン(比較例5)を、比較例1〜3で調製した各基材に配合し、比較例1及び2と同様に各測定を行った。結果を表1に示するなお、表1中の略号は以下の通りである。
【0021】RON:リサーチ法オクタン価B−RON:オクタン価計算値CHT:1,3,5−シクロヘプタトリエンCOT:1,3,5,7−シクロオクタテトラエンBZ:ベンゼンCOD:1,5−シクロオクタジエン表1の結果より、ガソリン基材のオクタン価及び発熱量は、本発明に係る特定の化合物を配合することによって著しく向上することが判った。なお、比較例4及び5から明らかなように、本発明の化合物と類似であるが異なった構造の化合物ではオクタン価向上効果は全く期待できなかった。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】 分子内に7員環または8員環を有し、かつ環構造内に3個以上の不飽和結合を有する化合物の少なくとも1種を必須成分として含有することを特徴とするガソリン組成物。

【公開番号】特開平5−230475
【公開日】平成5年(1993)9月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−33365
【出願日】平成4年(1992)2月20日
【出願人】(000004444)日本石油株式会社 (1,898)