説明

ガドリニウム錯体の製造方法

【課題】高感度、高解像度で造影するMRI様造影剤の新規製造方法を提供する。
【解決手段】糖ラクトン2分子とジエチレントリアミン1分子を脱水縮合反応する工程1、前記工程の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する工程2及び前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する工程3を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるガドリニウム錯体の製造方法。


(式中、G1は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI用造影剤として有用なガドリニウム錯体の新規製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MRIは生体内の断層画像を得る方法で、病理学的構造が詳細に画像化できるため、画像診断法として幅広く活用されている。MRIのメカニズムは高磁場中で人体に電波を当てることにより、人体中に含まれる水や脂肪の水素原子を核磁気共鳴させ組織の違いによる信号を読み取り、画像化するものである。実際医療の現場ではより鮮明な画像を得るためにガドリニウム錯体を含有するMRI造影剤を使用する。その中で、Gd(III)−DTPA(ジエチレントリアミンペンタ酢酸のガドリニウム(III)錯体、以下マグネビストと呼称する。)は、ガドリニウム化合物として初めてMRI(核磁気共鳴撮像)用造影剤として1988年に実用化されたものであり、全世界で4500万以上の症例に使用されてきた(例えば、非特許文献1参照)。マグネビストは水溶性で分子量が小さいため、血管から臓器や組織への移行が早く、血管、特に静脈を明確に造影することが困難であった。一方、近年、特定の臓器の微小な疾患(例えば肝臓、膵臓、肺等の転移性癌)の造影が強く求められている。しかしながら、マグネビストには臓器特異性がないため、要望を満たすことが困難である。
【0003】
一方、グルコースラクトンやガラクトースラクトンで末端を修飾したガドリニウム錯体(例えば、非特許文献2、3及び特許文献1参照)が提案されている。これらは、マグネビストと比較して、T1緩和能が高く、少量の投与量で十分な造影効果を得ることができるため、血流の少ない末梢血管の造影が十分に可能である。また、肝臓への集積効果が高いため肝臓の病変を高感度、高解像度で造影することが可能であり、肝臓の微細な転移性癌の早期発見に多いに貢献することが期待される。そこで、マグネビストに組織認識部位として糖ラクトンを4分子または2分子し導入した新規ガドリニウム錯体が近年開発された(例えば、非特許文献2参照)。このガドリニウム錯体は血管貯留性が高く、肝臓、腎臓、血管に高い組織選択性が示唆された。さらにマグネビストで全く造影できなかった肝細胞がんを鮮明に画像化できた。しかし、この新規ガドリニウム錯体は、その製造過程で、糖鎖由来の水酸基、及びジョイントに含まれるアミノ基をアシル基、及びBoc基で保護、脱保護する工程を必要とし、工程数が長く、操作が煩雑な上、かつ収率も低く、量産には課題が大きかった。
【特許文献1】特開2004−307356号公報
【非特許文献1】Chem.Rev.,1999,Vol.99,2293−2352
【非特許文献2】Tetrahedron Lett.,41(2000)8485−8488
【非特許文献3】Gaodeng Xuexiao Huaxue Xuebao,(1997),18(7),1071−1079
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、血流の少ない末梢血管の造影が十分に可能であり、また、肝臓への集積効果が高く肝臓の病変を高感度、高解像度で造影することが可能であり、肝臓の微細な転移性癌の早期発見に貢献することが期待されるガドリニウム錯体の量産化に適した、新規製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0006】
1.糖ラクトン2分子とジエチレントリアミン1分子を脱水縮合反応する工程(工程1)、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する工程(工程2)及び前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する工程(工程3)を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるガドリニウム錯体の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、G1は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
2.前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする前記1に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【0009】
3.前記糖ラクトンの糖がグルコース、ガラクトースまたはマンノースであることを特徴とする前記2に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【0010】
4.糖ラクトン1分子とエチレンジアミン1分子を脱水縮合反応する工程(工程1)、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する工程(工程2)及び前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する工程(工程3)を含むことを特徴とする下記一般式(2)で表されるガドリニウム錯体の製造方法。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、G2は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
5.前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする前記4に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【0013】
6.前記糖ラクトンの糖がグルコース、ガラクトースまたはマンノースであることを特徴とする前記5に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、血流の少ない末梢血管の造影が十分に可能であり、また、肝臓への集積効果が高く肝臓の病変を高感度、高解像度で造影することが可能であり、肝臓の微細な転移性癌の早期発見に多いに貢献することが期待されるガドリニウム錯体の量産化に適した、新規製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明らは鋭意検討の結果、上記の保護、脱保護の工程を含まない新規な製造方法を開発した。これにより、有用なMRI造影剤の量産化に大きく道が開けたと考えている。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
《一般式(1)で表されるガドリニウム錯体の製造方法》
本発明の一般式(1)で表されるガドリニウム錯体は、下記工程1〜3を含む工程を経て製造される。
【0018】
一般式(1)において、G1は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。該糖は単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースを表すが、該糖としてはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることが好ましい。特に好ましくはグルコース、ガラクトース及びマンノースである。
【0019】
〔工程1〕
一般式(1)で表されるガドリニウム錯体の製造では、まず最初に、糖ラクトン2分子とジエチレントリアミン1分子を脱水縮合反応する。
【0020】
糖ラクトンとは、単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースから誘導されるものを表し、アロノラクトン、アルトロノラクトン、グルコノラクトン、マンノラクトン、ギュロノラクトン、イドノラクトン、ガラクトノラクトン、タロノラクトン、リボノラクトン、アラビノラクトン、キシロノラクトン、リキソノラクトン、エリトロノラクトン、トレオノラクトン、セロビオノラクトン、フコノラクトン、マルトノラクトン、イソマルトノラクトン、ラクトノラクトンまたはマルトリオロノラクトンであることが好ましい。
【0021】
(反応基質)
糖ラクトン1モルに対してジエチレントリアミンを0.45〜0.55モル用いることが好ましい。
【0022】
(溶媒)
溶媒としては、DMF、DMAc、DMSO等の極性かつ水溶性の溶媒を、反応基質の総量の5〜15倍量用いることが好ましい。特にDMFを反応基質の総量の5〜10倍量用いることが好ましい。
【0023】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜60℃が好ましく、特に好ましくは室温〜40℃である。反応時間は3〜12時間が好ましく、特に好ましくは4〜6時間である。
【0024】
〔工程2〕
次に工程2では、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する。
【0025】
(反応基質)
工程1の成績体1モルに対してDTPA−二無水物を0.5〜0.6モル用いることが好ましい。
【0026】
(塩基)
反応を促進するために、有機塩基を用いることが好ましく、特にピリジンが好ましい。使用量としてはDTPA−二無水物1モルに対して1〜3モル用いることが好ましい。
【0027】
(溶媒)
溶媒としては、DMF、DMAc、DMSO等の極性かつ水溶性の溶媒を反応基質の総量の5〜15倍量用いることが好ましい。特にDMSOを反応基質の総量の5〜10倍量用いることが好ましい。
【0028】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜80℃が好ましく、特に好ましくは室温〜60℃である。反応時間は6〜48時間が好ましく、特に好ましくは12〜24時間である。
【0029】
〔工程3〕
工程3では、前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する。
【0030】
(反応基質)
工程2の成績体1モルに対して塩化ガドリニウム六水和物1〜1.5モル用いることが好ましい。
【0031】
(塩基)
反応を促進するために、有機塩基を用いることが好ましく、特にピリジンが好ましい。使用量としては塩化ガドリニウム六水和物1モルに対して3〜3.5モル用いることが好ましい。
【0032】
(溶媒)
溶媒としては、水を用いることが好ましく、反応基質の総量の1.5〜2.5倍量用いることが好ましい。
【0033】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜80℃が好ましく、特に好ましくは室温〜60℃である。反応時間は6〜48時間が好ましく、特に好ましくは6〜12時間である。
【0034】
《一般式(2)で表されるガドリニウム錯体の製造方法》
本発明の一般式(2)で表されるガドリニウム錯体は、下記工程1〜3を含む工程を経て製造される。
【0035】
一般式(2)において、G2は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。該糖は単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースを表すが、該糖としてはアロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることが好ましい。特に好ましくはグルコース、ガラクトース及びマンノースである。
【0036】
〔工程1〕
一般式(2)で表されるガドリニウム錯体の製造では、まず最初に、糖ラクトン1分子とエチレンジアミン1分子を脱水縮合反応する。
【0037】
糖ラクトンとは単糖、二糖、三糖、多糖の全てのアルドペントース、アルドヘキソースから誘導されるものであり、アロノラクトン、アルトロノラクトン、グルコノラクトン、マンノラクトン、ギュロノラクトン、イドノラクトン、ガラクトノラクトン、タロノラクトン、リボノラクトン、アラビノラクトン、キシロノラクトン、リキソノラクトン、エリトロノラクトン、トレオノラクトン、セロビオノラクトン、フコノラクトン、マルトノラクトン、イソマルトノラクトン、ラクトノラクトンまたはマルトリオロノラクトンであることが好ましい。
【0038】
(反応基質)
糖ラクトン1モルに対してジエチレントリアミンを10〜20倍モル用いることが好ましい。
【0039】
(溶媒)
溶媒としては、DMF、DMAc、DMSO等の極性かつ水溶性の溶媒を反応基質の総量の5〜15倍量用いることが好ましい。特にDMFを反応基質の総量の5〜10倍量用いることが好ましい。
【0040】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜80℃が好ましく、特に好ましくは室温〜60℃である。反応時間は3〜12時間が好ましく、特に好ましくは4〜8時間である。
【0041】
〔工程2〕
次に工程2では、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する。
【0042】
(反応基質)
第1工程の成績体1モルに対してDTPA−二無水物を0.5〜0.6モル用いることが好ましい。
【0043】
(溶媒)
溶媒としては、DMF、DMAc、DMSO等の極性かつ水溶性の溶媒を反応基質の総量の5〜15倍量用いることが好ましい。特にDMSOを反応基質の総量の5〜10倍量用いることが好ましい。
【0044】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜80℃が好ましく、特に好ましくは室温〜60℃である。反応時間は6〜48時間が好ましく、特に好ましくは12〜24時間である。
【0045】
〔工程3〕
工程3では、前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する。
【0046】
(反応基質)
第2工程の成績体1モルに対して塩化ガドリニウム六水和物1〜1.5モル用いることが好ましい。
【0047】
(塩基)
反応を促進するために、有機塩基を用いることが好ましく、特にピリジンが好ましい。使用量としては塩化ガドリニウム六水和物1モルに対して3〜3.5モル用いることが好ましい。
【0048】
(溶媒)
溶媒としては、水を用いることが好ましく、反応基質の総量の1.5〜2.5倍量用いることが好ましい。
【0049】
(反応温度、時間)
反応温度は室温〜80℃が好ましく、特に好ましくは室温〜60℃である。反応時間は6〜48時間が好ましく、特に好ましくは6〜12時間である。
【0050】
《従来の製造方法と本発明の製造方法の比較例》
一般式(1)で表されるガドリニウム錯体について、グルコノラクトンを出発物質とする従来の製造方法(例えば、非特許文献2参照)を下記に示す。
【0051】
【化3】

【0052】
【化4】

【0053】
上記のように、従来法では工程数が7と多く、糖ラクトン由来の水酸基をアセチル基で保護する工程(第3工程)、脱保護する工程(最終工程)、及びアミノ基をBoc基で保護する工程(第2工程)、脱保護する工程(第4工程)を有する。また、特に第4工程、及び最終工程の収率が20%台と非常に低く、また、操作性も悪いため、量産には不適であった。一般式(2)で表される化合物も上記類似の合成経路で製造することが考えられ、同様の欠点を有していると容易に想定できる。
【0054】
次に本発明の製造方法の一例を示すが、本発明はこれに限定されない。
【0055】
【化5】

【0056】
上記のように、本発明の製造方法ではBoc基、アセチル基の保護、脱保護の工程を含まず、わずか3工程で最終目的物8を得ることができる。各工程収率も高く、操作性にも問題がないため量産に適している。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0058】
実施例
本発明のガドリニウム錯体の合成例を示す。合成例に用いる材料及び機器を以下に示す。
【0059】
(材料)
実施例に使用する全ての試薬類及び溶媒類は、和光純薬工業株式会社、シグマ アルドリッチ社、東京化成工業株式会社または関東化学株式会社の市販品を使用した。
【0060】
(機器)
元素分析:Perkin−Elmer−240
FT−IR:JASCO FT/IR−410赤外分光計
NMR:JEOL JNM−AL300核磁気共鳴分光計、重溶媒としては、重クロロホルム(chloroform−d)、重水(D2O)、重ジメチルスルホキシド(DMSO−d6)を使用し、内部標準としてはTMSを使用
MALDI−TOF−MS:GL Science社製 Voyager−DE porimerix マトリクスとしてα−CHCAを使用
示差熱・熱重量測定:島津製作所 DTG60A/60AH
薄層クロマトグラフィー:和光純薬工業のクロマトシートを用い、スポットの呈色にはヨウ素蒸気を利用
複合TEM:元素分析装置付き高圧透過型電子顕微鏡、日本電子製JEM200CX型、元素分析装置部(KEVEX 7025 J型エネルギー分散形)
緩和速度測定:1.5T 超伝導MR撮影装置Magnetom SP(Siemens社製、Erlangen)に送受信knee−coilを併用して計測を行った。撮像pulse sequenceはspin echo系列 TR1(ms)=3000、TR2(ms)=60、TE(ms)=15、matrix=256x192、FOV(cm)=16、NEX=2である。
【0061】
〔合成例1:Gd−DTPA−D1−Glc(OH)の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、ジグリコシルアミン11(第1工程中間体)を合成した。
【0062】
【化6】

【0063】
ジエチレントリアミン(0.590g、4.95mmol)をDMF(10.0ml)に溶かし、室温で撹拌しながらD−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(1.76g、9.9mmol)を少しずつ加えた。6時間室温で撹拌した後、冷保存し、析出した結晶をろ過し、乾燥して無色結晶のジグリコシルアミン11(2.21g、4.8mmol)を収率97%で得た。
【0064】
下記分析により、これは目的物ジグリコシルアミン11であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3382(OH、NH)、1650、1544(O=CNH)
MALDI−TOF−MS(+):460[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.70(m,4H;NHCH2×2);3.00−4.00(m、16H;CH2×2、CH×8(sugar hydrogens)、O=CNHCH2×2);4.34(bs、10H;OH×10);7.62(t、2H;O=CNH×2)
13C−NMR(DMSO−d6);
δ(ppm):39.6(NHCH2);49.4(O=CNHCH2);64.7(CH2(sugar carbons));71.5、72.9、73.6、75.0(CH(sugar carbons));173.9(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D1−Glc(OH)12(第2工程中間体)を合成した。
【0065】
【化7】

【0066】
DTPA−二無水物(0.933g、2.61mmol)とジグルコシルアミン11(2.00g、4.36mmol)とピリジン(0.640g、8.06mmol)をDMSO(15.0ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、水1mlを加え続けてメタノールを加えると無色結晶が析出した、その結晶をろ過し乾燥することにより、DTPA−sugar(DTPA−D1−Glc(OH)12)とDTPAとの混合物(2.74g)を収率95%で得た。
【0067】
下記分析により、この混合物には目的物DTPA−D1−Glc(OH)12が含まれることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3343(O=COH)、1748(O=COH、O=CCH3、1670、1539(O=CNH)、1670(O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1274、[DTPA−D1−Glc(OH)−H]-;392、[DTPA−H]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−3.80(m、(sugar hydrogens)(DTPA hydrogens));3.90−4.03(m、8H;CH2×2、(sugar hydrogens));7.80−8.55(t×4、4H;O=CNH×2)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0068】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−D1−Glc(OH))13を合成した。
【0069】
【化8】

【0070】
GD−DTPA−sugar(DTPA−D1−Glc(OH)12)とDTPAとの混合物;1.41g(D−1;1.329g、1.042mmol、DTPA;0.0808g、0.205mmolと仮定)と塩化ガドリニウム六水和物(0.509g、1.37mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、40℃で12時間撹拌した。反応終了後メタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をメタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩、Gd−DTPAを除去し、本発明のGd−DTPA−sugar(Gd−DTPA−D1−Glc(OH)13)を1.40g(0.967mmol、収率93%)得た。
【0071】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D1−Glc(OH)13であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3386(OH(sugar)、H2O)、1643(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1431、[M]-
複合TEM Gd:ピーク
〔合成例2:Gd−DTPA−D1−Gal(OH)の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、ジガラクトシルアミン21(第1工程中間体)を合成した。
【0072】
【化9】

【0073】
ジエチレントリアミン(0.340g、3.3mmol)をDMF(10.0ml)に溶かし、室温で撹拌しながらD−(−)−ガラクトノ−1,4−ラクトン(1.19g、6.6mmol)を少しずつ加えた。6時間室温で撹拌した後冷保存し、析出した結晶をろ過し、乾燥して無色結晶のジガラクトシルアミン21を1.32g(4.8mmol、収率85.3%)得た。
【0074】
下記分析により、これは目的物ジガラクトシルアミン21であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3378(OH、NH)、1650、1542(O=CNH)
MALDI−TOF−MS(+):460、[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.48−2.72(m,4H;NHCH2×2);3.00−4.00(m、16H;CH2×2,CH×8(sugar hydrogens),O=CNHCH2×2);4.34(bs、10H;OH×10);7.56(t、2H;O=CNH×2)
13C−NMR (DMSO−d6):
δ(ppm):38.2(NHCH2);48.1(O=CNHCH2);63.2(CH2(sugar carbons));69.1、69.8、70.9、71.1(CH(sugar carbons));173.7(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D1−Gal(OH)22(第2工程中間体)を合成した。
【0075】
【化10】

【0076】
DTPA−二無水物(1.00g、2.80mmol)とジガラコシルアミン21(2.00g、4.03mmol)とピリジン(0.640g、8.06mmol)をDMSO(15.0ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、水1mlを加え続けてメタノールを加えると無色結晶が析出した。その結晶をろ過し乾燥することによりDTPA−sugar((DTPA−D1−Gal(OH)22)とDTPAとの混合物(2.68g)を収率93%で得た。
【0077】
下記分析により、この混合物には目的物DTPA−D1−Gal(OH)22を含まれることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3343(O=COH)、1748(O=COH、O=CCH3)、1670、1539(O=CNH)、1670(O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1274、[DTPA−D1−Gal(OH)−H]-;392、[DTPA−H]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−3.70(m、(sugar hydrogens)(DTPA hydrogens));3.70−3.811(m、8H;CH2×2、(sugar hydrogens));7.78−7.93(m、4H;O=CNH×2)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0078】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−D1−Gal(OH))23を合成した。
【0079】
【化11】

【0080】
GD−DTPA−sugar DTPA−D1−Gal(OH)22とDTPAとの混合物;1.41g(D−1;1.329g、1.042mmolとDTPA;0.0808g、0.205mmolと仮定)と塩化ガドリニウム六水和物(0.509g、1.37mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、40℃で12時間撹拌した。反応終了後メタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をメタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩、Gd−DTPAを除去し、本発明のGd−DTPA−sugar(Gd−DTPA−D1−Gal(OH)23)を1.15g(0.79mmol、収率76%)得た。
【0081】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D1−Gal(OH)23であることであることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3394(OH(sugar)、H2O)、1604(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1431、[M]-
複合TEM:Gdピーク
〔合成例3:Gd−DTPA−D1−Man(OH)の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、ジマンノシルアミン31(第1工程中間体)を合成した。
【0082】
【化12】

【0083】
ジエチレントリアミン(0.340g、3.30mmol)をDMF(10ml)に溶かし、室温で撹拌しながらD−(−)−マンノノ−1,4−ラクトン(1.19g、6.60mmol)を少しずつ加えた。6時間室温で撹拌した後冷保存し、析出した結晶をろ過し、乾燥して無色結晶のジマノシルアミン31(0.820g、1.79mmol)を収率49.2%で得た。
【0084】
下記分析により、これは目的物ジマンノシルアミン31であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3370(OH、NH)、1650、1550(O=CNH)
MALDI−TOF−MS(+):460、[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.70(m、4H;NHCH2×2);3.00−4.00(m、16H;CH2×2、CH×8(sugar hydrogens)、O=CNHCH2×2);4.34(bs、10H;OH×10);7.62(t、2H;O=CNH×2);
13C−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):38.3(NHCH2);47.9(O=CNHCH2);63.7(CH2(sugar carbons));70.3、70.6、70.9、72.1(CH(sugar carbons));173.8(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D1−Man(OH)32(第2工程中間体)を合成した。
【0085】
【化13】

【0086】
DTPA−二無水物(1.00g、2.80mmol)とジマンノシルアミン31(2.00g、4.03mmol)とピリジン(0.640g、8.06mmol)をDMSO(15.0ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、水1mlを加え続けてメタノールを加えると無色結晶が析出した。その結晶をろ過し乾燥することにより、DTPA−sugar(DTPA−D1−Man(OH)32)とDTPAとの混合物(2.59g)を収率90%で得た。
【0087】
下記分析により、この混合物には目的物DTPA−D1−Man(OH)32を含まれることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3343(O=COH)、1748(O=COH、O=CCH3)、1670、1539(O=CNH)、1670(O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1274、[DTPA−D1−Man(OH)−H]-;392、[DTPA−H]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−3.81(m、(sugar hydrogens)(DTPA hydrogens));3.89−3.92(m、8H;CH2×2、(sugar hydrogens));8.06−8.55(t×4、4H;O=CNH×2)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0088】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−D1−Man(OH)33を合成した。
【0089】
【化14】

【0090】
GD−DTPA−sugar(DTPA−D1−Man(OH)32)とDTPAとの混合物;1.41g(D−1;1.329g、1.042mmolとDTPA;0.0808g、0.205mmolと仮定)と塩化ガドリニウム六水和物(0.509g、1.37mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、40℃で12時間撹拌した。反応終了後メタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をメタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩、Gd−DTPAを除去し、本発明のGd−DTPA−sugar(Gd−DTPA−D1−Man(OH)33)を1.21g(0.836mmol、収率80%)得た。
【0091】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D1−Man(OH)33であることであることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3386(OH(sugar)、H2O)、1604(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):1431、[M]-
複合TEM:Gdピーク
一般式(1)で表されるその他のガドリニウム錯体は同様にして合成できる。
【0092】
〔合成例4:Gd−DTPA−D1−Man(OH)の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、モノグルコシルアミン41(第1工程中間体)を合成した。
【0093】
【化15】

【0094】
DMF(10.0ml)に溶かしたD−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(1.00g、5.61mmol)をエチレンジアミン(20.0g、0.333mol)に3時間かけて滴下した。6時間60℃で撹拌した後、溶媒であるDMFと大過剰のエチレンジアミンを留去することにより、オイル状のモノグルコシルアミン41(1.31g、5.49mmol)を収率98%で得た。
【0095】
下記分析により、これは目的物モノグルコシルアミン41であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3363(OH、NH)、1643、1550(O=CNH)、1103(NH2
MALDI−TOF−MS(+):239、[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.49−2.61(t、2H;NH2CH2);3.05−3.18(m、2H;O=CNHCH2);3.35−3.60(m,4H;CH×4(sugar hydrogens));3.90−4.00(d×d、2H;CH2(sugar hydrogens));7.63(t,1H;O=CNH×1)
13CNMR(DMSO−d6):
δ(ppm):41.4(CH2-NH2);44.3(O=CNHCH2);63.3(CH2-OH);70.1、71.4、72.1、73.6(CH×4(sugar carbons));172.6(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D3−Glc(OH)42(第2工程中間体)を合成した。
【0096】
【化16】

【0097】
DTPA−二無水物(1.00g、2.80mmol)とモノグルコシルアミン41(1.34g、5.61mmol)をDMSO(15ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、溶媒であるDMSOを減圧下で10mlほど留去し、残った溶液にエタノールを加えると無色結晶が析出した。この結晶をろ別しエタノールで3回洗浄することによって、DTPA−糖化合物(DTPA−D3−Glc(OH)42)を1.98g(2.38mmol、収率85%)得た。
【0098】
下記分析により、これは目的物DTPA−D3−Glc(OH)42であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3394(OH(sugar))、1650(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):832、[M−H]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.54(t、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));2.94−2.97(m、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));3.13−3.60(m,26H;CH×8(sugar hydrogens)、CH2×9(DTPA hydrogens、ethylenediamde hydrogens));3.90−4.00(d×d、4H;CH2×2、(sugar hydrogens));7.80−8.55(m,4H;O=CNH×4)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0099】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−糖化合物Gd−DTPA−D3−Glc(OH)を合成した。
【0100】
【化17】

【0101】
DTPA−糖化合物DTPA−D3−Gal(OH)42(1.01g、1.21mmol)と塩化ガドリニウム六水和物(0.500g、1.35mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、60℃で12時間撹拌した。反応終了後エタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をエタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩を除去し、本発明のGd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Gal(OH)43)を1.16g(1.15mmol、収率95%)得た。
【0102】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D3−Gal(OH)43であることであることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3386(OH(sugar)、H2O)、1643(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):989、[M]-
複合TEM:Gdピーク
〔合成例5:Gd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Glc(OH))の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、モノガラクトシルアミン51(第1工程中間体)を合成した。
【0103】
【化18】

【0104】
DMF(10.0ml)に溶かしたD−(−)−ガラクトノ−1,4−ラクトン(1.00g、5.61mmol)をエチレンジアミン(20.0g、0.333mol)に3時間かけて滴下した。6時間60℃で撹拌した後、溶媒であるDMFと大過剰のエチレンジアミンを留去することにより無色の結晶が析出した。それをアセトンで洗浄することによりモノガラコシルアミン51(1.28g、5.40mmol)を収率96%で得た。
【0105】
下記分析により、これは目的物モノガラコシルアミン51であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3363(OH、NH)、1643、1550(O=CNH)、1103(NH2
MALDI−TOF−MS(+):239、[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.49−2.60(t、2H;NH2CH2);3.08−3.20(m、2H;O=CNHCH2);3.38−3.45(m,3H;CH×3(sugar hydrogens));3.67−3.77(d×d、2H;CH2、(sugar hydrogens);4.14(t、1H;CHO=CNH×1);7.56(t、1H;O=CNH×1)
13CNMR(DMSO−d6):
δ(ppm):41.2(CH2-NH2);41.5(O=CNHCH2);63.1(CH2-OH);69.1、69.8、70.8、71.0(CH×4(sugar carbons));173.6(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D3−Gal(OH)52(第2工程中間体)を合成した。
【0106】
【化19】

【0107】
DTPA−二無水物(0.578g、1.47mmol)とモノガラコシルアミン51(0.700g、2.94mmol)をDMSO(15ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、溶媒であるDMSOを減圧下で10mlほど留去し、残った溶液にエタノールを加えると無色結晶が析出した。その結晶をろ別しエタノールで3回洗浄することによって、DTPA−糖化合物(DTPA−D3−Gal(OH)52)を1.98g(2.38mmol、収率85%)得た。
【0108】
下記分析により、これは目的物DTPA−糖化合物DTPA−D3−Gal(OH)52であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3394(OH sugar))、1650(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):832、[M]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.54(t、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));2.97(m、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));3.19−3.61(m、26H;CH×8(sugar hydrogens))、CH2×9(DTPA hydrogens、ethylenediamde hydrogens);3.71−3.83(d×d、4H;CH2×2、(sugar hydrogens));7.97−8.55(m、4H;O=CNH×4)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0109】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Glc(OH))を合成した。
【0110】
【化20】

【0111】
DTPA−糖化合物DTPA−D3−Glc(OH)52(1.01g、1.21mmol)と塩化ガドリニウム六水和物(0.500g、1.35mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、60℃で12時間撹拌した。反応終了後エタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をエタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩を除去し、本発明のGd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Glc(OH)53)を1.20g(1.19mmol、収率98%)得た。
【0112】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D3−Glc(OH)53であることであることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3386(OH(sugar)、H2O)、1643(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):989、[M]-
複合TEM;Gdピーク
〔合成例6:Gd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Man(OH))の合成〕
(第1工程)
下記スキームにより、モノマンノシルアミン61(第1工程中間体)を合成した。
【0113】
【化21】

【0114】
DMF(10.0ml)に溶かしたD−(−)−マンノノ−1,4−ラクトン(1.00g、5.61mmol)をエチレンジアミン(20.0g、0.333mol)に3時間かけて滴下した。6時間60℃で撹拌した後、溶媒であるDMFと大過剰のエチレンジアミンを留去することによって、オイル状のモノマンノシルアミン61(1.34g、5.61mmol)を収率96%で得た。
【0115】
下記分析により、これは目的物モノマンノシルアミン61であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3363(OH、NH)、1643、1550(O=CNH)、1103(NH2
MALDI−TOF−MS(+):239、[M+H]+
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.61(t、2H;NH2CH2);3.03−3.13(m、2H;O=CNHCH2);3.35−3.60(m,4H;CH×4(sugar hydrogens));3.76−3.91(d×d、2H;CH2、(sugar hydrogens));8.00(t、1H;O=CNH×1)
13CNMR(DMSO−d6):
δ(ppm):41.4(CH2-NH2);44.3(O=CNHCH2);63.3(CH2-OH);70.1、71.4、72.1、73.6(CH×4(sugar carbons));172.6(O=CNH)
(第2工程)
下記スキームにより、DTPA−D3−Man(OH)62(第2工程中間体)を合成した。
【0116】
【化22】

【0117】
DTPA−二無水物(1g、2.80mmol)とモノマンノシルアミン61(1.34g、5.61mmol)をDMSO(15ml)に加え、60℃で1日撹拌した。反応終了後、溶媒であるDMSOを減圧下で10mlほど留去し、残った溶液にエタノールを加えると無色結晶が析出した。その結晶をろ別しエタノールで3回洗浄することによって、DTPA−糖化合物DTPA−D3−Man(OH)62を1.98g(2.38mmol、収率85%)得た。
【0118】
下記分析により、これは目的物DTPA−D3−Man(OH)62であることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3394(OH(sugar))、1650(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):832、[M]-
1H−NMR(DMSO−d6):
δ(ppm):2.50−2.54(t、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));2.88−2.96(m、4H;(O=CCH22NCH2CH2N×2(DTPA hydrogens));3.14−3.59(m,26H;CH×8(sugar hydrogens)、CH2×9(DTPA hydrogens、ethylenediamde hydrogens));3.62−3.96(d×d、4H;CH2×2、(sugar hydrogens));8.06−8.33(m、4H;O=CNH×4)
※アミドプロトンのピークはブロード化したため、正確なプロトン比を示さなかった。
【0119】
(第3工程)
下記スキームにより、Gd−DTPA−糖化合物Gd−DTPA−D3−Gal(OH)を合成した。
【0120】
【化23】

【0121】
DTPA−糖化合物DTPA−D3−Man(OH)62(1.01g、1.21mmol)と塩化ガドリニウム六水和物(0.500g、1.35mmol)とピリジン(0.320g、4.05mmol)を水(4.00ml)に加え、60℃で12時間撹拌した。反応終了後エタノールを加えることによって、無色結晶が析出した。さらにこの結晶をエタノールでリフラックス3回洗浄することによって、未反応の塩化ガドリニウム六水和物と反応副生成物であるピリジン塩酸塩を除去し、本発明のGd−DTPA−糖化合物(Gd−DTPA−D3−Man(OH)63)を1.20g(1.19mmol、収率98%)得た。
【0122】
下記分析により、これは目的物Gd−DTPA−D3−Man(OH)63であることであることを確認した。
IR(KBr):ν(cm-1)=3386(OH(sugar)、H2O)、1643(O=CNH、O=CN)
MALDI−TOF−MS(−):989、[M]-
複合TEM:Gdピーク
一般式(2)で表されるその他のガドリニウム錯体は同様にして合成できる。
【0123】
〔T1緩和能の評価〕
MRIは、水の水素原子のプロトン緩和率を測定し、画像化している。そこで、造影剤の緩和速度を測定することにより、造影剤の性能を調べることができる。
【0124】
5種類の濃度(1mM、0.5mM、0.25mM、0.125mM、0.0625mM)のGd−DTPA−sugar(OH)(本発明の化合物)水溶液(生理的食塩水に溶解)のサンプルの緩和速度を計測した。また、同様の濃度のGd−DTPA(比較化合物)水溶液(マグネビスト、日本シェーリング社製)を使用し、比較をした。その結果を図1及び2に示す。
【0125】
図1及び2より、本発明のGd−DTPA−sugar(OH)は、0.0625mMから1mMの濃度勾配において濃度依存性の直線的なT1短縮を有し、その短縮効果は比較化合物のGd−DTPAの約1.2〜2倍のT1 relaxation−rateを示すことが分かった。T1短縮効果が大きいことは、造影剤として信号増強効果が強いことを示しており、造影能力が高いことを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】T1緩和能を示すグラフである。
【図2】T1緩和能を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖ラクトン2分子とジエチレントリアミン1分子を脱水縮合反応する工程(工程1)、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する工程(工程2)及び前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する工程(工程3)を含むことを特徴とする下記一般式(1)で表されるガドリニウム錯体の製造方法。
【化1】

(式中、G1は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
【請求項2】
前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする請求項1に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【請求項3】
前記糖ラクトンの糖がグルコース、ガラクトースまたはマンノースであることを特徴とする請求項2に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【請求項4】
糖ラクトン1分子とエチレンジアミン1分子を脱水縮合反応する工程(工程1)、前記工程1の成績体2分子とDTPA−二無水物1分子を付加反応する工程(工程2)及び前記工程2の成績体1分子と塩化ガドリニウム1分子で錯体形成反応する工程(工程3)を含むことを特徴とする下記一般式(2)で表されるガドリニウム錯体の製造方法。
【化2】

(式中、G2は糖ラクトンとアミノ基が反応した残基を表す。)
【請求項5】
前記糖ラクトンの糖が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、ギュロース、イドース、ガラクトース、タロース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、エリトロース、トレオース、セロビオース、フコース、マルトース、イソマルトース、ラクトースまたはマルトリオロースであることを特徴とする請求項4に記載のガドリニウム錯体の製造方法。
【請求項6】
前記糖ラクトンの糖がグルコース、ガラクトースまたはマンノースであることを特徴とする請求項5に記載のガドリニウム錯体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−196907(P2009−196907A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38116(P2008−38116)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【Fターム(参考)】