説明

ガバペンチンの調製方法

【解決手段】 本発明は、ガバペンチンの調製方法に関し、より詳細には、α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの塩基性加水分解反応を含む、ガバペンチン調製の中間体として用いられる1,1−シクロヘキサン酢酸モノアミドの合成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガバペンチン調製のための方法に関し、より詳細には、ガバペンチン調製の中間体として用いられる1,1−シクロヘキサン酢酸モノアミドの合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガバペンチン(1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸)(非特許文献1)は、抗てんかん活性を有することが知られている薬剤であり、文献初出はワーナーランバート社による特許文献1である。
【0003】
ガバペンチンの調製方法は、数種が文献に報告されている(特許文献1(前述)、特許文献2及び特許文献3(いずれもグーデッケ(Goedecke)A.G.名義)等参照)。
【0004】
特許文献1は、ガバペンチン或いは次式:
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、R1は水素原子又は低級アルキルを表し、nは4、5又は6である)で表される類似化合物の各種調製方法を開示しており、これら方法は、第一級アミン類又はアミノ酸類の従来の調製方法(例えば、クルチウス転位やホフマン転位、ロッセン転位)を利用することを特徴とする。
【0007】
特に、前述のワーナーランバート社の特許(実施例4の変法A(カラム5))は、ガバペンチンの低級環状同族誘導体である1−(メチルアミノ)−1−シクロペンタン酢酸の合成を開示している。この合成においては、対応する酸無水物を20%NH3水溶液と反応させてシクロペンタン二酢酸モノアミドを調製し、得られたモノアミドをホフマン転位させ、酸性化及び抽出を行い、次いで塩基性イオン交換樹脂による溶出とアルコールからの再結晶化からなる最終精製段階に付す。
【0008】
これら文献に開示される1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの調製方法は、実質的に、対応する酸の合成と従来法により行う無水物を経由する後続の転換とを行うものである。
【0009】
この合成スキームは次のように要約することができる。
【0010】
【化2】

【0011】
ブロミンコンパウンズ社(Bromine Compounds)名義の特許文献4は、1,1−シクロヘキサン二酢酸無水物のアンモニア水によるアミノ化を含む、1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミド合成方法を開示している。
【0012】
特許文献5(ハンチョウ・ショウシン(Hangzhou Shouxin)Fine Chem)は、1,1−シクロヘキシルシュウ酸モノアミドの調製を開示しており、これは有機溶媒存在下で、対応する無水物をアンモニア水又はアンモニアガスと反応させて行う調製である。
【0013】
従って、シクロヘキサン二酢酸はモノアミドの調製に極めて重要な基質であり、従って、間接的に最終産物であるガバペンチンの調製に極めて重要な基質である。
【0014】
1,1−シクロヘキサン二酢酸は知られた技法により調製され、これら技法については前世紀初頭の文献記事を参照することができる。
【0015】
この合成スキームは次のように要約することができる。
【0016】
【化3】

【0017】
ソープ(Thorpe)(非特許文献2)は、アルコール性溶液で、シクロヘキサノン、エチルシアノアセテート及びアンモニアを出発物質として用いるα,α’−ジシアン−β,β−ペンタメチレングルタルイミド(以下、「ジニトリル」と称する)の合成を記載している。
【0018】
ソープ(Thorpe)(非特許文献3)は、中間体ジニトリルを濃硫酸に溶解させることにより加水分解して1,1−シクロヘキサン二酢酸とすることを記載している。
【0019】
これと同一の合成スキームが、非特許文献4、Centre de Lyophilisation Pharmaceutique名義の特許文献6、ワーナーランバートファーマスーティカル(Warner-Lambert Pharmaceutical)名義の特許文献7及び上述の特許文献5(ハンチョウ・ショウシン(Hangzhou Shouxin)Fine Chem)に記載されている。
【0020】
特許文献8は、水酸化アンモニウム存在下で、シクロヘキサノン等のケトンをエチルシアノアセテートと反応させることを含む中間体ジニトリル化合物の調製方法を開示している。
【0021】
最近の特許文献9は、1,5−ジカルボニトリル−2,4−ジオキソ−3−アザスピロ[5.5]−ウンデカン(イミド)を出発物質として用い、温度の異なる2工程で硫酸と反応させる1,1−シクロヘキサン二酢酸調製方法を開示している。
【0022】
特許文献10は、無水酢酸/酢酸アンモニウムの混合物を1,1−シクロヘキサン二酢酸と反応させて3,3−ペンタメチレングルタルイミドを得ること、該イミドを水酸化ナトリウムで処理し溶解させること、得られた溶液を水酸化ナトリウム/次亜塩素酸ナトリウムの混合物に滴下すること、塩酸で酸性化すること、を含むガバペンチン塩酸塩合成方法を開示している。
【特許文献1】米国特許第4024175号明細書
【特許文献2】米国特許第5068413号明細書
【特許文献3】米国特許第5091567号明細書
【特許文献4】国際公開第2003/002517号パンフレット
【特許文献5】中国特許第1297885号
【特許文献6】フランス特許第1248764号
【特許文献7】英国特許第898692号明細書
【特許文献8】米国特許第6613904号明細書
【特許文献9】国際公開第2003/002504号パンフレット
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0063997号明細書
【非特許文献1】メルクインデックス第12版、733ページ、No.4343
【非特許文献2】J.Chem.Soc.1919、115、686〜704
【非特許文献3】J.Chem.Soc.1911、99、445〜446
【非特許文献4】A.I.フォーゲル(Vogel)J.Chem.Soc.1934、1768〜1765
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、これら文献における1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの調製においては、対応する酸を単離し、その酸を転換させることになる。
【0024】
よって、より少ない合成工程数で1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを調製することができ、従って方法の工業的適用という観点からより好ましい条件で1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを調製することができる代替法の研究が必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者らは驚くべきことに、先行技術に開示された方法の問題点を克服できる、ガバペンチン調製の中間体である1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの工業レベルでの合成方法を見出した。
【0026】
従って本発明は、α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの塩基を用いた加水分解反応(以下「塩基性加水分解反応」とも称す)を含む、1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの調製方法を提供することを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド(以下、「ジアミド」と称する)の調製は、上述の国際特許出願第WO03/002504に開示されているように65〜85℃の温度でジニトリル溶液を硫酸と反応させることにより行われる。
【0028】
該ジアミドは上述の特許出願において1,1−シクロヘキサン二酢酸の調製における中間体として記載されているが、ケミカルアブストラクツサービス(CAS)の登録番号が付与されていないという事実からもわかるように、これは単離も特性評価もされていない。
【0029】
従って本発明は、固体のα,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド化合物を提供することを更なる目的とする。
【0030】
好ましい実施形態においては、該ジアミドは、ジニトリルを硫酸で加水分解し、得られた溶液の中和と、生成物の析出とを行うことにより調製される。
【0031】
加水分解反応は通常、ジニトリルを硫酸水溶液に添加することにより行われる。
【0032】
ジニトリルの水/硫酸溶液への添加は分割して行うことが好ましい。
【0033】
反応の発熱を制御するためには、各分割量は、約60℃の温度で前の分割量が可溶化した後に添加することが好ましい。
【0034】
加水分解反応は25〜70℃の温度で行い、50〜60℃の温度で行うことが好ましい。
【0035】
中和に先行する段階において、温度を70℃未満、好ましくは約50℃に維持することにより、副生成物の生成を最小限にすることができる。
【0036】
ジニトリルの加水分解反応は、濃度75%〜85%の水溶液として通常利用される硫酸を用いた反応により行われ、濃度約85%の硫酸水溶液を用いることが好ましい。
【0037】
収率を最適とする(平均約90〜95%)と共に廃棄物を制限するためには、硫酸とジニトリルのモル比は、通常4.4〜9.3であり、6.1〜7.5であることが好ましい。
【0038】
中和反応は水/硫酸混合液を用いて行い、ジアミドの析出を促進する反応条件を最適とするためには、質量比は0.65〜1.8であることが好ましく、約1であることが更に好ましい。
【0039】
濾過しやすい生成物を得るためには、反応液を中和に使用する水に添加することが好ましく、この逆は好ましくない。
【0040】
またこの手順により、反応に伴う発熱をより良好に制御することができる。
【0041】
この方法によって高純度の生成物が得られる。
【0042】
従って本発明は、純度95%超の固体のα,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド化合物を提供することを更なる目的とする。
【0043】
本発明に係る、1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを得るための、ジアミドの塩基性加水分解反応は通常、水酸化ナトリウム溶液を用いた反応により行われる。
【0044】
好ましい実施形態においては、加水分解は、次のように特定できる異なる3段階から成る方法に従って行う。即ち、
a)α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドを加水分解してα,α’−二酸二ナトリウム塩を得る段階、
b)脱カルボキシル化してペンタメチレングルタルイミドを得る段階、
c)ペンタメチレングルタルイミドを加水分解し、生成物を析出させる段階、
である。
【0045】
手続きを実行する上で技術的な問題を引起こし得る炭酸アンモニウム等の塩の生成を抑制するためには、本法に従って手続きを進めることが好ましい。
【0046】
従って該方法は次の合成スキームに従って行われる(主な中間体のみ示す)。
【0047】
【化4】

【0048】
明白なことであるが、本発明者らにより特定されたこれら3工程のいずれにも、手続き上の限定はない。
【0049】
モノアミド調製方法の中間体は、生成物を得るために必要な工程数が結果的に少なくなれば、単離してもしなくてもよい。
【0050】
第一の工程は、ジアミドを加水分解して二酸二ナトリウム塩を得ることから成り、乾燥ジアミドを低温で水酸化ナトリウム溶液、好ましくは濃度約30%の水酸化ナトリウム溶液に添加し、約105〜110℃の温度で数時間加熱還流することにより行われる。
【0051】
ジアミドの添加は、大量のアンモニアガスが放出されることを考慮しつつ反応をより良好に制御するために−5〜5℃の温度で行うことが好ましい。
【0052】
加熱が完了すると、二酸二ナトリウム塩の生成が完了し、反応それ自体により放出されるアンモニアは殆ど除去される。
【0053】
水酸化ナトリウム/ジアミドのモル比は、反応速度に及ぼす影響を考慮すると、3.5〜4であることが好ましい。
【0054】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド二ナトリウム二塩化合物は新規化合物であり、これは本発明の更なる目的物である。
【0055】
第二の工程は、二酸二ナトリウム塩を脱カルボキシル化して1,1−シクロヘキサン二酢酸のイミドを得ることを含む。
【0056】
脱カルボキシル化工程を最適とすると共に二酸化炭素の発生を制御するために、該方法は、水と合成塩酸とから生成する溶液を、約50℃に温度維持した二酸二ナトリウム塩溶液の約15〜20質量%相当分に添加し、反応液を約95℃まで加熱することにより行うことが好ましい。イミドが結晶化し懸濁液を得た後、これを約95℃に温度維持しながら残りの二酸二ナトリウム塩溶液を該懸濁液に約1時間で添加する。添加終了後、反応が完了するまで懸濁液の温度を維持する。
【0057】
第三の工程は、イミドの加水分解と、酸性化による反応生成物(即ち、1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミド)の析出とを含む。
【0058】
加水分解反応は、水酸化ナトリウム、好ましくは濃度10〜30%の水酸化ナトリウムを添加し還流せしめることにより行う。
【0059】
水酸化ナトリウムとジアミドのモル比は、使用総モル数を考慮すると3.8〜4.7であることが好ましく、加水分解反応を最適とすると共に後続する生成物の析出を促進するためには、約4.3の値であることが更に好ましい。
【0060】
析出は通常、塩酸、好ましくは合成塩酸を添加することにより行う。
【0061】
この反応は、析出共溶媒(precipitation co-solvent)(例えば、イソプロパノールやエチルアセテート)存在下で行うことが好ましい。
【0062】
また、この反応はイソプロパノール存在下で行うことが更に好ましい。
【0063】
より高い収率と生産性を得るためには、イソプロパノール/ジアミドの質量比を0.5〜1として用いることが好ましく、約0.5として用いることが更に好ましい。
【0064】
反応液の酸性化は通常pHが2〜6となるまで行い、約4.0〜4.5の値がより好ましい。
【0065】
析出に最適なpHへの調整は2工程で行うことができる(例えば、酸の第一の添加によりpHを約6.5とし、次に第二の添加により所定pHに近づける)。
【0066】
析出後の温度は、プロセス収率を最適とするために60℃未満の温度に維持することが好ましい。
【0067】
好ましくは、温度は約50℃に維持する。
【0068】
得られた1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを知られた方法、例えばホフマン転位によってガバペンチンに転換させ、酸性化と、抽出と、強カチオン性イオン交換樹脂を用いたガバペンチン塩酸塩水溶液の精製と、再結晶化とを行う(同一出願人による国際公開第02/34709号パンフレットに記載)。
【0069】
従って本発明は更に、α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの塩基性加水分解により1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを調製することを含む、ガバペンチン調製方法を提供することを目的とする。
【0070】
本発明に係る方法によれば、ジニトリル中間体から直接1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを得ることができ、1,1−シクロヘキサン二酢酸を単離する必要がない。
【0071】
これにより、該酸のモノアミドへの無水物を経由する転換を伴う従来知られた調製工程が省かれる。
【0072】
本発明に係る方法によれば、より少ない合成工程で1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを得ることができ、結果として時間とコストを低減できる。
【0073】
本発明に係る方法に従って操作することにより、知られた方法を用いて得られる生成物と同様の特性を有し、後続のガバペンチン調製工程のための純粋で好適な生成物が得られる。
【0074】
本発明に係る方法の実際の実施形態は、水/硫酸溶液を調製することと、ジニトリルの各分割量を前の分割量が可溶化した後に添加するように分割して添加することと、反応の終了を確認することと、溶液の中和とこれに続くジアミドの単離とを含む。
【0075】
更に、ジイミドを低温で水酸化ナトリウム溶液に添加して得られた懸濁液を数時間加熱還流すると共にアンモニアの放出を制御することと、水と合成塩酸との溶液を、約50℃に温度維持した二酸溶液の約15〜20質量%量に添加して行う生成二酸の脱カルボキシル化と、反応液を約95℃まで加熱することと、残りの二酸溶液を添加し反応が完了するまで約95℃に温度維持することと、水酸化ナトリウムを添加することによるイミドの加水分解と、続いて還流することと、酸性化により生成物を析出させることとを含む。
【0076】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0077】
実施例1
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの合成
塩基リデューサー(basic reducer)を反応器Aに接続(collected)し、次いで脱塩水(16.0kgを投入し、続いて温度を60℃未満に維持しながら計量ポンプを用いて硫酸(96%w/w)135.8kg(74.0L)を添加した。供給ラインと計量ポンプを脱塩水1.6kgで洗浄した。この洗浄液を、反応器Aに投入済みの溶液に添加した。硫酸溶液を25〜30℃まで冷却して、次いで乾燥ジニトリル12.5kgをハッチから投入した。懸濁液を得、これを約60℃まで加熱した。溶液が得られるまでこの温度を約1時間維持し、乾燥ジニトリル12.5kgを再度添加した。得られた懸濁液の温度を約60℃とし、溶解するまで約2時間この温度で維持した。次いで、乾燥ジニトリル12.5kgを更に添加した。得られた懸濁液の温度を約60℃とし、この温度で維持した。約4時間後、反応の状況を確認した。その際の反応状況が目的の範囲内であった場合、混合液を約50℃まで冷却した。反応器Bに脱塩水102.0kgを投入した。この水を約40〜45℃まで加熱し、次いで温度が自然に50〜55℃に上がるのを待ち、反応器Aに含まれるジアミド溶液を、供給ラインを通して約2〜3時間かけて添加した。濃厚ではあるが攪拌しやすい溶液が得られた。反応器Aに脱塩水11.1kgを投入し、次いで50〜55℃に昇温して、硫酸(96%w/w)11.1kg(6.0L)を耐酸ポンプを用いて投入した。この溶液を約10分間50〜55℃で維持し、次いで反応器Bに生成した懸濁液に供給ラインを通して添加した。反応器Aに脱塩水14.0kgを投入して、約10分間50〜55℃に維持した後、これを反応器Bに存在する懸濁液に供給ラインを通して添加した。反応器Bの懸濁液を約30分間50〜55℃に維持し、次に約1.5時間かけて15〜20℃まで冷却した。少なくとも1時間15〜20℃に維持した後、遠心操作を数回行い、この際、壁面(panel)を脱塩水で複数回洗浄した。なお、遠心の際に洗浄に使用した脱塩水の総量は180.0kgであった。母液の50%は硫酸であるため、これをプラスチック製又は金属製ドラムに入れて、耐酸材料で被覆した。水分を含む生成物を約60.5kg得、50℃で真空乾燥させて乾燥生成物を約55.5kg得た。
【0078】
1HNMR(DMSO−d6):δ1.34−1.88(m,10H),4.00(s,2H),7.20(s,2H,NH2)及び7.85(s,2H,NH2,10.94(s,1H)
13CNMR(DMSO−d6):δ20.55(t,2C),25.29(t,1C),31.06(t,2C),38.22(s,1C),54.16(d,2C),168.83(s,2C),170.50(s,2C)
MS(E.I.mode):m/z250(M−NH3),222((M−NH3)−C=O),122((M−NH3)−NH2COCHCONHCO)
I.R.(KBr):3409,3188(NH伸縮,2937−2865(CH及びCH2のC−H伸縮),1735,1696,1638(C=O伸縮),1417,1391,1361(CH及びCH2のC−Hベンディング)cm-1
【0079】
実施例2
α,α’−ジカルボキシ−β,β−ペンタメチレングルタルイミド二ナトリウム二塩の合成
反応器Cに電解ソーダ170.8kg(128.4L)を遮断真空下で投入した。供給ラインを脱塩水1.5kgで洗浄し、反応器Cに充填した。反応器に窒素を通し、次いで酸リデューサー(acid reducer)と接続した。電解ソーダ溶液を約0℃まで冷却し、次いで乾燥ジアミド90.0kgをハッチから投入した。懸濁液を約1時間で55℃まで加熱し、固体が完全に溶解するまで(約10分)温度を維持した。次いで溶液の温度を約4時間かけて約105℃に調整した。約0.5時間溶液の温度を維持し、続いて約50℃まで冷却した。
【0080】
実施例3
ペンタメチレングルタルイミドの合成
前の実施例で溶液を50℃にて反応器Dに移し、溶液の質量を測定した後、二酸ナトリウム塩溶液約37.9kg(約28.5L)(反応液の約15質量%相当)を反応器Cに投入し、残りの溶液は反応器D中で50℃に維持した。反応器Cに脱塩水70kgを投入して自然に温度が下がるのを待ち、次いで合成塩酸2.8kg(2.4L)を耐酸ポンプで投入した。供給ラインと耐酸ポンプを脱塩水11.5kgで洗浄し、洗浄液を反応器Cの溶液に添加した。反応器Aの内温を約95℃に調整し、二酸ナトリウム塩からイミド懸濁液への転換が行われるまでその温度を維持した。温度を約95℃に維持しながら、二酸ナトリウム塩溶液約215kg(約161.5L)(即ち、反応器Dに入っている溶液全部)を反応器Cに約1時間かけて投入した。反応器Dと供給ラインを脱塩水12.0kgで洗浄した。洗浄液を反応器Cの反応物に添加した。温度を約2時間維持して、その後懸濁液を約80℃まで冷却した。
【0081】
実施例4
1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの合成
電解ソーダ25.7kg(19.3L)を計量ポンプで反応器Cに投入した。温度を約95℃に調整して、固体が完全に溶解するまでこの温度に維持し、次いで混合液を還流した(101〜105℃)。還流状態を約6時間維持して、次いで反応の状況を確認した。反応が完了した時点で、溶液を約20℃まで冷却し白色固体の凝集物を析出させ、次にこの温度でイソプロパノール45.0kg(57.3)を投入し、続いて約1時間、温度を25℃未満に維持しながら、pH6.5±0.2(pHメーターで測定)に達するまで合成塩酸約125kg(107.7L)を投入した。所望のpHに到達後、懸濁液を35〜40℃まで加熱し、固体が溶解するまでこの温度で維持した。溶解完了後、溶液を反応器Eに移して、次いで脱塩水20kgを前に利用の反応器に投入した。洗浄を5〜10分間攪拌状態で行い、次いで洗浄液を反応器Eに移した。反応器Eの内温を約35〜40℃に調節して、次に温度を維持しながら合成塩酸40kg(34.5L)をpH4.0〜4.5(試験紙で測定)に達するまで約1時間かけて添加した。少なくとも10〜15分間、懸濁液のpHが安定であることを確認して、次いで反応器Eの内温を約50℃に調整し約30分間維持した。懸濁液を約1時間半かけて約15〜20℃まで冷却し、約1時間後に遠心操作を数回行った。壁面をイソプロパノールと水との混合液で2回洗浄した。合計でイソプロパノールを23.6kg(30k)、脱塩水を30kg使用した。壁面(panel)をアルコール性混合液で1回洗浄した後、水で6回洗浄した。なお、脱塩水の合計使用量は270kgであった。水分を含む生成物を78.0kg得、約50℃で真空乾燥後、所望の乾燥生成物を約59.0kg得た。
【0082】
実施例5
1−(アミノメチル)−シクロヘキサン酢酸の合成
得られた1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを知られた方法、例えばホフマン転位によってガバペンチンに転換させ、酸性化と、抽出と、強カチオン性イオン交換樹脂を用いたガバペンチン塩酸塩水溶液の精製と、再結晶化とを行う(同一出願人による国際公開第02/34709号パンフレットに記載)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの塩基性加水分解反応を含む、1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドの調製方法。
【請求項2】
塩基性加水分解反応は、水酸化ナトリウム溶液を用いた反応により行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、次の工程:
a)α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドを加水分解してα,α’−二酸二ナトリウム塩を得る工程と、
b)脱カルボキシル化してペンタメチレングルタルイミドを得る工程と、
c)ペンタメチレングルタルイミドを加水分解し、生成物を析出させる工程とを含む方法。
【請求項4】
工程a)は、α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドを水酸化ナトリウム溶液に添加し還流せしめることにより行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水酸化ナトリウム溶液は濃度が約30%である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの添加を−5〜5℃の温度で行う、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
水酸化ナトリウム/α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドのモル比が3.5〜4である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
工程b)は、工程a)で得られた溶液の一部に塩酸溶液を添加することと、加熱することと、懸濁液を生成させることと、工程a)で得られた溶液の残部を添加することとにより行う、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
反応液の加熱は約95℃の温度に達するまで行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程c)は、水酸化ナトリウム溶液を添加することと、還流することと、塩酸の添加により生成物を析出させることとにより行う、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
水酸化ナトリウム溶液は濃度が10〜30%である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
水酸化ナトリウム/α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドのモル比が3.8〜4.7である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
水酸化ナトリウム/α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドのモル比が約4.3である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
生成物の析出は析出共溶媒の存在下で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
析出共溶媒はイソプロパノールである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
α,α’−ジシアン−β,β−ペンタメチレングルタルイミドを硫酸溶液を用いて加水分解することによりα,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドを調製することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
加水分解反応を25〜70℃の温度で行う、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
固体のα,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド。
【請求項19】
純度95%超の固体のα,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド。
【請求項20】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミド二ナトリウム二塩。
【請求項21】
α,α’−ジアミノカルボニル−β,β−ペンタメチレングルタルイミドの塩基性加水分解により1,1−シクロヘキサン二酢酸モノアミドを調製することを含む、ガバペンチンの調製方法。

【公表番号】特表2008−503545(P2008−503545A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517294(P2007−517294)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052906
【国際公開番号】WO2006/000562
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(593201822)ザンボン グループ エス.ピー.エー. (9)
【氏名又は名称原語表記】ZAMBON GROUP S.p.A.
【Fターム(参考)】