説明

ガラスチョップドストランドマット用バインダー

【課題】 ガラスチョップドストランド積層体中のガラスチョップドストランド交点上への結合効率が従来のバインダーより高く、柔軟性に優れ、均一でかつ必要な機械強度を有するガラスチョップドストランドマットを与えるバインダーを提供する。
【解決手段】 レーザー回折散乱法による体積平均粒子径Dvが280〜350μmであり、体積基準の粒子径分布の変動係数Cvが10〜35%であるポリエステル樹脂粉末(A)を含有してなることを特徴とするガラスチョップドストランドマット用バインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスチョップドストランドマット用の粉末状バインダーに関する。より詳細には、ガラスチョップドストランド交点に効率的に付着させることができ、柔軟なガラスチョップドストランドマットを得ることができる粉末状バインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスチョップドストランドマットは、通常、以下の方法で得られる。
(1)数10〜数100本のガラス単繊維(繊維径約10μm)をサイジング剤で集束させガラスストランドを得る。
(2)該ガラスストランドを所定の長さに切断して束状のガラスチョップドストランドを得る。
(3)該ガラスチョップドストランドを搬送用ネット上に方向を無秩序に分散させて積層体とする。
(4)該積層体にバインダー粉末を散布し、オーブンチャンバーで加熱することにより、ガラスチョップドストランド間を融着したバインダーで結合させて、さらにプレスすることによりガラスチョップドストランドマットを得る。なお、ガラスチョップドストランドマットの目付け量(1m2当たりのマットに使用するガラスチョップドストランドの量、以下同じ。)は通常40〜950g/m2である。ここにおけるバインダーについては、従来から機械粉砕により粉末化された不飽和ポリエステル樹脂が多く使用されてきた(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−55931号公報
【特許文献1】特開2003−301035号公報
【0004】
しかしながら、従来のバインダーは粒子径分布が広いため、粒子のすべてがガラスチョップドストランドの積層体への付着に適しているわけではない。すなわち、粒子径のとくに小さいものは、該積層体上に散布しても、ガラスチョップドストランドの交点以外のストランド上にも付着することとなり、該交点以外のストランド上の付着バインダーがマットを硬くしてしまうという問題があった;また、一方、粒子径のとくに大きいものは、自重のため該積層体のガラスチョップドストランド交点に付着することなく積層体の隙間を落下する場合が多く、その結果、本来のマットの機械的強度等の性能面から要求される必要量を超えるバインダーを供給しなければならないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラスチョップドストランド積層体中のガラスチョップドストランド交点上への結合効率が従来のバインダーより高く、柔軟性に優れ、均一でかつ必要な機械強度を有するガラスチョップドストランドマットを与えるバインダーを提供することにある。ここおよび以下において、ストランドへのバインダーの結合とは、バインダーがストランド上に付着し、さらに加熱、プレス等により融着してストランドを部分的に被覆することを指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、レーザー回折散乱法による体積平均粒子径Dvが280〜350μmであり、体積基準の粒子径分布の変動係数Cvが10〜35%であるポリエステル樹脂粉末(A)を含有してなることを特徴とするガラスチョップドストランドマット用バインダーである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のガラスチョップドストランドマット用バインダーは、下記の効果を奏する。
(1)ガラスチョップドストランド積層体中のガラスチョップドストランド交点上への結合効率が高い。
(2)柔軟性に優れ、かつ均一で必要な機械強度を有するガラスチョップドストランドマットを与える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[ポリエステル樹脂粉末(A)]
本発明におけるポリエステル樹脂粉末(A)の体積平均粒子径Dvは280〜350μm、好ましくは290〜340μm、さらに好ましくは300〜330μmである。Dvが280μm未満では、ストランド交点以外のストランド上に付着するバインダーの割合が増えて得られるマットが硬くなり、また、Dvが350μmを超えると、バインダーは自重で積層体の隙間から落下しやすく積層体に付着しにくいことから、該マット作成時のバインダー必要量が増大する。
【0009】
(A)中の400μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合は、積層体の隙間から落下するバインダー量低減の観点から好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下である。
【0010】
(A)中の250μm以下の体積基準粒子径を有する粒子の割合は、ストランド交点以外のストランド上に付着するバインダー量低減の観点から好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下、とくに好ましくは10重量%以下である。
【0011】
(A)の体積基準の粒子径分布の変動係数Cvは10〜35%、好ましくは12〜28%、さらに好ましくは13〜25%である。Cvが10%未満では後述するバインダー生産時の生産性が悪く、35%を超えるとストランド交点へのバインダーの付着効率が低下し、マットが硬くなる。ここにおいて、Cvは後述の方法で求められるもので、値が小さいほど体積基準の粒子径分布が狭いことを示す。
【0012】
ここにおいて体積平均粒子径Dv、体積基準粒子径、および体積基準の粒子径分布の変動係数Cvはいずれもレーザー回折散乱法により求めることができ、測定装置としては、例えば、粒度分布測定器[商品名「マイクロトラック9320 HRA粒度分析計」、日機装(株)製]が挙げられる。
【0013】
本発明におけるポリエステル樹脂粉末(A)のポリエステル樹脂としては、ポリ(n=2〜6)カルボン酸(無水物および誘導体をも含む)(a1)と低分子ポリオール(a2)との重縮合物、カルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の自己重縮合物、およびラクトン(a4)の開環重縮合物等が挙げられる。
【0014】
ポリカルボン酸(a1)としては、脂肪族[炭素数(以下Cと略記)3〜30、例えばコハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸]、芳香族[C8〜30、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラブロムフタル酸、テトラクロルフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸]、および脂環含有ポリカルボン酸[C6〜50、例えば、1,3−シクロブタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−および1,4−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸およびダイマー酸];これらのポリカルボン酸のエステル形成性誘導体〔酸無水物(例えば無水マレイン酸、無水フタル酸)、低級アルキル(C1〜4)エステル[ジメチルエステル(例えばテレフタル酸ジメチル)、ジエチルエステル等]、酸ハライド(酸クロライド等)等〕;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらのうち、ポリエステル樹脂とFRP樹脂マトリックスとの相溶性の観点から好ましいのは、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、さらに好ましいのは、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸である。
【0015】
上記低分子ポリオール(a2)としては、水酸基1個当たりの数平均分子量[以下Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による]が300未満(好ましくは分子量31以上かつMn250以下)の2価〜10価またはそれ以上(好ましくは2〜3価)のポリオールが使用できる。(a2)としては、2価アルコール(a21)、3価〜10価またはそれ以上の多価アルコール(a22)、およびこれらのアルコールまたは多価(2価〜3価またはそれ以上)フェノールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記。C2〜10)低モル(1〜10モル)付加物(a23)、並びにこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0016】
AOとしては、エチレンオキサイド(以下EOと略記)、プロピレンオキサイド(以下POと略記)、1,2−、1,3−および2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン(以下THFと略記)、スチレンオキサイド、C5〜10またはそれ以上のα−オレフィンオキサイド、エピクロルヒドリン、およびこれらの2種以上の併用(ブロックおよび/またはランダム付加)が挙げられる。これらのAOのうち、後述するマット強度、およびガラス繊維強化プラスチック(FRP)への適用におけるスチレンモノマー等のガラス繊維への浸透性の観点から好ましいのは、EO、PO、およびこれらの併用である。
【0017】
2価アルコール(a21)としては、脂肪族アルコール[直鎖アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下それぞれEG、DEG、1,3−PG、1,4−BD、1,5−PD、1,6−HDと略記))等];分岐鎖を有するアルコール[1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール(以下それぞれ1,2−PG、NPGと略記)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,2−、1,3−および2,3−ブタンジオール等];および環を有するアルコール[脂環含有アルコール(1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン)等、芳香脂肪族(m−およびp−キシリレングリコール等)]が挙げられる
【0018】
3価〜10価またはそれ以上の多価アルコール(a22)の具体例としてはアルカンポリオール[C3〜10、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール(以下それぞれGR、TMP、PE、SOと略記)]、該アルカンポリオールの分子間もしくは分子内脱水物[ジPE、ポリGR(重合度2〜8)、ソルビタン等]、糖類およびその誘導体(配糖体)(ショ糖、メチルグルコシド等)が挙げられる。上記(a21)、(a22)のうちマット強度の観点から好ましいのは脂肪族アルコール、さらに好ましいのは、1,4−BD、1,6−HDおよびNPGである。
【0019】
前記AO付加物(a23)の具体例としては、上記(a21)、(a22)のAO低モル付加物、および環を有する多価(2価〜3価またはそれ以上)フェノールのAO低モル付価物が挙げられる。該多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、−F、−C、−B、−ADおよび−S、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール)、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、もしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾール中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。
【0020】
前記カルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の具体例としては、C2〜10、例えば乳酸、グリコール酸、β−ヒドロキシル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシ吉草酸;およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0021】
前記ラクトン(a4)にはC4〜15(好ましくはC6〜12)のもの、例えばε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。
【0022】
上記のポリエステル樹脂のうち迅速な重縮合反応の観点およびガラスチョップドストランドマット(以下において単にマットということがある。)への前記スチレン等の浸透性の観点から、好ましいのはポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)との重縮合物、さらに好ましいのはポリカルボン酸(a1)と(a23)との重縮合物、とくに好ましいのは脂肪族ポリカルボン酸と環を有する多価フェノールもしくは芳香脂肪族アルコールのAO低モル付加物との重縮合物である。
【0023】
上記の重縮合時の反応温度は、通常100〜300℃、好ましくは130〜220℃である。該重縮合反応は通常常圧または減圧(例えば133Pa以下)で行われる。また該反応はポリエステル樹脂の着色防止の観点から窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが望ましい。該重縮合反応時の(a1)と(a2)の反応当量比(カルボキシル基/水酸基の当量比)は、迅速な重縮合反応および得られるポリエステル樹脂の安定性の観点から好ましくは0.85〜1.4、さらに好ましくは0.9〜1.2である。該製造後のポリエステル樹脂の酸価(単位はmgKOH/g。以下同じ。)は、耐水性の観点から好ましくは20以下、さらに好ましくは0〜15である。
【0024】
該重縮合反応は、無触媒でも、エステル化触媒を使用してもいずれでもよい。エステル化触媒としては、プロトン酸(リン酸等)、金属(アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、2B、4A、4Bおよび5B族金属等)含有化合物[カルボン酸(C2〜4)塩、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酸化物、塩化物、水酸化物、アルコキシド等]が挙げられる。これらのうち反応性の観点から好ましいのはカルボン酸塩[2B、4A、4Bおよび5B族金属のカルボン酸(C2〜4)塩]、酸化物、およびアルコキシドである。生成物の低着色性の観点からさらに好ましいのは三酸化アンチモン、モノブチルスズオキシド、テトラブチルチタネート、テトラブトキシチタネート、テトラブチルジルコネート、酢酸ジルコニル、および酢酸亜鉛である。エステル化触媒の使用量は、所望の分子量が得られる量であれば特に制限されないが、ポリカルボン酸(a1)と低分子ポリオール(a2)の合計重量に基づいて、反応性および低着色性の観点から好ましくは0.005〜3%、さらに好ましくは0.01〜1%である。
【0025】
また、該反応を促進するため、有機溶剤を加えて還流させることもできる。反応終了後は有機溶剤を除去する。なお、有機溶剤としては、水酸基のように活性水素を有しないものであれば特に制限はなく、例えば炭化水素(トルエン、キシレン等)、ケトン(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸ブチル等)が挙げられる。
【0026】
また、前記カルボキシル基と水酸基を同一分子内に有する化合物(a3)の自己縮合反応、およびラクトン(a4)の開環重縮合反応は、上記(a1)と(a2)との重縮合反応における反応条件に準じて実施することができる。
【0027】
本発明におけるポリエステル樹脂粉末(A)を構成するポリエステル樹脂の重量平均分子量(以下Mwと略記。測定はGPC法による)とMnは、ガラスチョップドストランドマットの強度および機械粉砕性の観点から、Mwは好ましくは20,000〜65,000、さらに好ましくは35,000〜55,000、Mnは好ましくは4,000〜6,000、さらに好ましくは4、500〜5,500である。
【0028】
該ポリエステル樹脂の軟化点[測定は環球法(JIS K2207、「石油アスファルト」の「6.4軟化点試験法」)に準拠]は、ガラスチョップドストランドマットの粘着性の発現防止と後加工の作業性の観点、およびガラスチョップドストランドマット製造時におけるバインダーの溶融、冷却固化温度の観点から好ましくは80〜150℃、さらに好ましくは90〜140℃である。
【0029】
該ポリエステル樹脂の示差熱分析によるガラス転位温度(以下Tgと略記。測定はJIS K7121、「プラスチックの転位温度測定法」に準拠)は、バインダー貯蔵時のブロッキング防止とガラスチョップドストランドマットの後加工の作業性の観点、およびガラスチョップドストランドマット製造時におけるバインダーの溶融、冷却固化温度の観点から好ましくは40〜60℃、さらに好ましくは45〜55℃である。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂粉末(A)は、通常次のようにして製造することができる。まず、冷却管、撹拌棒、温度計および窒素導入管を備えた反応容器中に、前記のアルコール成分、酸成分および触媒(ジブチルチンオキサイド等)を仕込み、窒素雰囲気下で加熱し通常150〜190℃で4〜6時間反応させ、その後、200℃まで昇温し、必要により1〜4kPaの減圧下でさらに通常6〜8時間反応させ、酸価が20以下となった後、180℃まで冷却して取り出すことでポリエステル樹脂を得ることができる。
【0031】
上記ポリエステル樹脂からさらにポリエステル樹脂粉末(A)を製造するには、上記ポリエステル樹脂を例えばサンプルミル[型番「SK-M10」、協立理工(株)製]を用いて回転数10,000〜15,000rpmで1〜5分間粉砕して粒子状とした後、目開きの異なる篩を組み合わせる等で篩い分けることにより、ポリエステル樹脂粉末(A)を得ることができる。
【0032】
[添加剤(B)]
ポリエステル樹脂粉末(A)を含有してなる本発明のガラスチョップドストランドマット用バインダーには、(A)以外に、必要に応じて、ブロッキング防止剤(B1)、滑剤(B2)および親水性付与剤(B3)からなる群から選ばれる1種または2種以上の添加剤(B)を含有させることができる。これらの添加剤(B)は、通常ポリエステル樹脂を粉砕し、篩い分けした後に添加される。
(B)の合計の使用量は、ポリエステル樹脂粉末(A)の重量に基づいて通常8%以下、添加効果およびマットの機械強度の観点から好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%である。
【0033】
ブロッキング防止剤(B1)としては、高級脂肪酸もしくはその塩、ケイ素もしくは金属の酸化物、ケイ素もしくは金属の炭化物、炭酸カルシウム、タルク、有機樹脂、およびこれらの混合物からなる微粒子等が挙げられる。高級脂肪酸としては、C8〜24(例えばラウリン酸、ステアリン酸);高級脂肪酸の塩としては、上記高級脂肪酸のアルカリ金属(Li、Na、K等)、アルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba等)、Zn、Cu、Ni、CoおよびAl等の塩;ケイ素もしくは金属の酸化物としては、二酸化ケイ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等;該炭化物としては、炭化ケイ素、および炭化アルミニウム等;有機樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、シリコン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリ四フッ化エチレン樹脂、セルロースパウダー等が挙げられる。これらのうち、(A)の粉体流動性の観点から好ましいのは高級脂肪酸金属塩、およびケイ素もしくは金属の酸化物である。
【0034】
(B1)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、バインダーのブロッキング防止およびストランド間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
【0035】
滑剤(B2)としては、ワックス、低分子量ポリエチレン、高級アルコール、高級脂肪酸(金属塩)、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等が挙げられる。ワックスとしては、カルナウバワックス等;低分子量ポリエチレンとしては、Mn1,000〜10,000のポリエチレン等;高級アルコールとしては、C10〜24、例えばステアリルアルコール等;高級脂肪酸エステルとしてはC10〜36の脂肪酸[例えばステアリン酸ブチルおよび高級脂肪酸(C10〜24)]と多価(2〜4)アルコールのAO(C2〜3)付加物とのエステル(EGのEO5モル付加物のモノステアレート等);高級脂肪酸アミドとしては、C10〜40、例えばステアリン酸アミドが挙げられる。これらのうち、ガラスストランド間の結合性の観点から好ましいのは高級脂肪酸と多価アルコールのAO付加物とのエステルおよび高級脂肪酸アミドである。
【0036】
(B2)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、(A)の粉体流動性およびガラスストランド間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%さらに好ましくは0.1〜1%である。
【0037】
親水性付与剤(B3)としてはポリビニルアルコール(Mn1,000〜10,000)、カルボキシルメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、ポリエチレングリコール(以下PEGと略記)(Mn200〜20,000)、PEG(Mn100〜2,000)含有オルガノポリシロキサン(Mn200〜50,000)、デンプン、ポリアクリル酸ナトリウム(Mn500〜20,000)、第4級アンモニウム塩基含有の(メタ)アクリロイル基含有ポリマー等が挙げられる。これらのうち、ガラスストランド間の結合性の観点から好ましいのはPEGおよびPEG鎖含有オルガノポリシロキサンである。
【0038】
(B3)の使用量は、(A)の重量に基づいて通常5%以下、後述のガラスチョップドストランド積層体上に噴霧される水との親和性およびガラスストランド間の結合性の観点から好ましくは0.01〜2%さらに好ましくは0.1〜1%である。
【0039】
[ガラスチョップドストランドマット]
本発明のガラスチョップドストランドマットは、ガラスチョップドストランド積層体とポリエステル樹脂粉末(A)を含有するガラスチョップドストランドマット用バインダーから構成されるものであり、該マットは、ガラスチョップドストランド散布、水散布およびバインダー散布からなる工程を経てバインダー付着積層体が形成され、その後該バインダー付着積層体が加熱プレス成形または冷却ロールプレス成形等されて製造される。具体的には例えば以下の工程で製造することができる。
(1)離型処理した金網上にガラスチョップドストランドを方向性無秩序に均一な厚みになるように散布してガラスチョップドストランド積層体を得る。
(2)所定量の水道水を該積層体の裏側面から裏側の表面全体が濡れるように霧吹きにて噴霧する。
(3)所定量のバインダーを積層体の表側面から均一に散布して、付着させる。
(4)積層体の表側面の表面全体が湿るように霧吹きにて所定量の水道水を噴霧し、所定量のバインダーを均一に散布して、付着させる。
上記(3)〜(4)の工程は1回でもよいし2回またはそれ以上繰り返してもよい。
(5)上記(4)で得られたバインダー付着積層体を100〜200℃で5〜10分間乾燥し、バインダーをガラスチョップドストランドに融着させる。
(6)室温〜200(好ましくは50〜150)℃に温度調整したプレス機により0.01〜5MPaの圧力でプレスして融着したバインダーで結合されたガラスチョップドストランドマットを得る。
【0040】
後述の評価方法で求められる、ガラスチョップドストランド積層体の重量に基づくバインダーの結合量は、マットの機械強度およびハンドリング性(柔軟性、後述するガラス繊維強化プラスチック成形品作成時の成形型へのフィット性等、以下同じ)の観点から好ましくは1〜10%、さらに好ましくは2〜8%である。
【0041】
上記(2)および(4)で使用する水道水の噴霧量は、それぞれガラスチョップドストランド積層体の重量に基づいて、バインダーの付着性および後工程での乾燥容易性の観点から好ましくは10〜200%、さらに好ましくは20〜150%である。
【0042】
ガラスチョップドストランドマットの表側面および裏側面から撮影して得られる画像において、バインダーがガラスチョップドストランド(直径Kμm)に融着してこれを被覆する総面積(以下において融着被覆総面積と略記)(SA)のうち、該ストランドの交点の中心から半径Kμmの範囲内のストランドにバインダーが融着してこれを被覆する面積(以下において交点融着被覆面積と略記)(SC)の割合[以下において交点融着被覆面積率と略記](%)は、マットの柔軟性の観点から好ましくは60%以上、さらに好ましくは63%以上、とくに好ましくは65〜100%である。ここにおいて、交点融着被覆面積率(%)は、後述する評価方法で求められる、融着被覆総面積(SA)と、交点融着被覆面積(SC)に基づいて、下記の式から求められる。

交点融着被覆面積率(%)=100×SC/SA
【0043】
ガラスチョップドストランドマットの曲げ弾性率は、マットの機械強度および柔軟性の観点から好ましくは0.5〜3.0Pa、さらに好ましくは0.8〜2.8Paである。
【0044】
ガラスチョップドストランドマットの機械物性は該マットの全体にわたって均一であることが望ましく、例えば曲げ弾性率についてのばらつき(10枚の試験片の曲げ弾性率の最大値と最小値の差)は、好ましくは0.2Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下である。
【0045】
本発明のガラス繊維強化プラスチック成形品の成形法については特に制限されることはなく、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、プリフォーム法、マッチドダイ法およびSMC法等が挙げられる。これらのうち例えばハンドレイアップ法は通常以下の手順で行われる。
(1)成形型表面に離型剤を塗布する。
(2)ローラー等を用いて均一な厚みになるよう室温(15〜25℃)でマトリックス樹脂(不飽和ポリエステル樹脂等)を塗布する。
(3)約40℃に温度調整した温風炉内で該樹脂をゲル化させる。
(4)ガラスチョップドストランドマットを成形型表面にフィットさせ、マトリックス樹脂をスチレンモノマー等で希釈した溶液をローラー等によりガラスチョップドストランドマット上の積層し、ローラーにより空気抜きを行う。
(5)積層体を温風炉内で硬化させる。
(6)型から取り出し成形品を得る。
【0046】
ハンドレイアップ法を含む前記成形法で得られるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂(不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、変性アクリル樹脂、フラン樹脂等)、および熱可塑性樹脂(ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂等)が挙げられる。これらのうち、例えば上記ハンドレイアップ法の場合は、熱硬化性樹脂が用いられ、成形時の作業性の観点から好ましいのは、不飽和ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂である。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下において「部」および「%」はそれぞれ重量部および重量%を示す。
【0048】
製造例1<ポリエステル樹脂粉末(A−1)の製造>
(1)ポリエステル樹脂の製造
冷却管、撹拌棒、温度計および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのEO2.2モル付加物3,365部、フマル酸1,123部、ジブチルスズオキサイド6部を仕込み、窒素雰囲気下180℃で4時間反応させた。その後、3〜4kPaの減圧下で反応させ、210℃まで昇温し、酸価10になったところで180℃に冷却して取り出し、ポリエステル(P−1)を得た。
(2)ポリエステル樹脂粉末(A−1)の製造
(P−1)100部をサンプルミル[機器名「SK-M10」、協立理工(株)製、以下同じ。]を用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き300μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−1)を得た。(A−1)のMwは35,000、Mnは4,800、軟化点は114℃、Tgは50℃、Dvは280μm、Cvは23%、250μm以下の体積基準粒子径を有する粒子の割合は15%、400μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合は10%であった。
(3)バインダー(X−1)の製造
(A−1)10部にブロッキング防止剤[商品名「アエロジル200」、日本アエロジル(株)、以下同じ]0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−1)を得た。
【0049】
製造例2<ポリエステル樹脂粉末(A−2)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−2)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き355μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−2)を得た。(A−2)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−2)の製造
(A−2)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−2)を得た。
【0050】
製造例3<ポリエステル樹脂粉末(A−3)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−3)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数11,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−3)を得た。(A−3)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−3)の製造
(A−3)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−3)を得た。
【0051】
製造例4<ポリエステル樹脂粉末(A−4)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−4)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き355μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き300μmの篩で篩い分けて、300μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−4)を得た。(A−4)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−4)の製造
(A−4)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−4)を得た。
【0052】
製造例5<ポリエステル樹脂粉末(A−5)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−5)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−5)を得た。(A−5)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−5)の製造
(A−5)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−5)を得た。
【0053】
製造例6<ポリエステル樹脂粉末(A−6)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−6)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き300μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−6)を得た。(A−6)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−6)の製造
(A−6)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−6)を得た。
【0054】
製造例7<ポリエステル樹脂粉末(A−7)の製造>
(1)冷却管、撹拌棒、温度計および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのPO2.5モル付加物4,366部、1,6−HD2,124部、テレフタル酸1,660部、マレイン酸44部、ジブチルスズオキサイド6部を仕込み、窒素雰囲気下180℃で4時間反応させた。その後、3〜4kPaの減圧下で反応させ、210℃まで昇温し、酸価7になったところで180℃に冷却して取り出し、ポリエステル(P−2)を得た。
(2)ポリエステル樹脂粉末(A−7)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き300μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−7)を得た。(A−7)のMwは60,000、Mnは5,200、軟化点は120℃、Tgは43℃、Dvは285μm、Cvは25%、250μm以下の体積基準粒子径を有する粒子の割合は14%、400μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合は11%であった。
(3)バインダー(X−7)の製造
(A−7)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−7)を得た。
【0055】
製造例8<ポリエステル樹脂粉末(A−8)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−8)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数11,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−8)を得た。(A−8)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−8)の製造
(A−8)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−8)を得た。
【0056】
製造例9<ポリエステル樹脂粉末(A−9)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−9)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き355μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き300μmの篩で篩い分けて、300μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−9)を得た。(A−9)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−9)の製造
(A−9)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−9)を得た。
【0057】
製造例10<ポリエステル樹脂粉末(A−10)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−10)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで4分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き300μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−10)を得た。(A−10)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−10)の製造
(A−10)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−10)を得た。
【0058】
製造例11<ポリエステル樹脂粉末(A−11)の製造>
(1)冷却管、撹拌棒、温度計および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのPO2.3モル付加物3,795部、EG391部、フマル酸1,160部、ジブチルスズオキサイド6部を仕込み、窒素雰囲気下180℃で4時間反応させた。その後、3〜4kPaの減圧下で反応させ、210℃まで昇温し、酸価7になったところで180℃に冷却して取り出し、ポリエステル(P−3)を得た。
(2)ポリエステル樹脂粉末(A−11)の製造
(P−3)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き300μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−11)を得た。(A−11)のMwは60,000、Mnは4,800、軟化点は108℃、Tgは44℃、Dvは283μm、Cvは22%、250μm以下の体積基準粒子径を有する粒子の割合は12%、400μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合は9%であった。
(3)バインダー(X−11)の製造
(A−11)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−11)を得た。
【0059】
製造例12<ポリエステル樹脂粉末(A−12)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−12)の製造
(P−3)100部をサンプルミルを用いて回転数11,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き355μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き300μmの篩で篩い分けて、300μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−12)を得た。(A−12)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−11)に同じであり、その他の評価項目の値は表1に示す。
(2)バインダー(X−12)の製造
(A−12)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−12)を得た。
【0060】
比較製造例1<ポリエステル樹脂粉末(A−1’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−1’)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き212μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き106μmの篩で篩い分けて、106μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−1’)を得た。(A−1’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−1’)の製造
(A−1’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−1’)を得た。
【0061】
比較製造例2<ポリエステル樹脂粉末(A−2’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−2’)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで2分粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−2’)を得た。(A−2’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−2’)の製造
(A−2’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−2’)を得た。
【0062】
比較製造例3<ポリエステル樹脂粉末(A−3’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−3’)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き150μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き106μmの篩で篩い分けて、106μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−3’)を得た。(A−3’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−3’)の製造
(A−3’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−3’)を得た。
【0063】
比較製造例4<ポリエステル樹脂粉末(A−4’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−4’)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数11,500rpmで1分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き355μmの篩で篩い分けて、355μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−4’)を得た。(A−4’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−4’)の製造
(A−4’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−4)を得た。
【0064】
比較製造例5<ポリエステル樹脂粉末(A−5’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−5’)の製造
(P−1)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで2分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き300μmの篩で篩い分けて、300μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−5’)を得た。(A−5’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−1)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−5’)の製造
(A−5’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−5’)を得た。
【0065】
比較製造例6<ポリエステル樹脂粉末(A−6’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−6’)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き212μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き106μmの篩で篩い分けて、106μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−6’)を得た。(A−6’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−6’)の製造
(A−6’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−6’)を得た。
【0066】
比較製造例7<ポリエステル樹脂粉末(A−7’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−7’)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで2分間粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−7’)を得た。(A−7’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−7’)の製造
(A−7’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−7’)を得た。
【0067】
比較製造例8<ポリエステル樹脂粉末(A−8’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−8’)の製造
(P−2)100部をサンプルミルを用いて回転数12,000rpmで2分粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−8’)を得た。(A−8’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−7)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−8’)の製造
(A−8’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−8’)を得た。
【0068】
比較製造例9<ポリエステル樹脂粉末(A−9’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−9’)の製造
(P−3)100部をサンプルミルを用いて回転数11,500rpmで2分粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き425μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き250μmの篩で篩い分けて、250μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−9’)を得た。(A−9’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−11)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−9’)の製造
(A−9’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−9’)を得た。
【0069】
比較製造例10<ポリエステル樹脂粉末(A−10’)の製造>
(1)ポリエステル樹脂粉末(A−10’)の製造
(P−3)100部をサンプルミルを用いて回転数12,500rpmで3分粉砕した。得られた樹脂粉末を目開き250μmの篩で篩い分け、これを通過した樹脂粉末をさらに目開き212μmの篩で篩い分けて、212μmの篩上に残ったポリエステル樹脂粉末(A−10’)を得た。(A−10’)のMw、Mn、軟化点およびTgは(A−11)に同じであり、その他の評価項目の値は表2に示す。
(2)バインダー(X−10’)の製造
(A−10’)10部にブロッキング防止剤0.03部を加えた後、混合し、バインダー(X−10’)を得た。
【0070】
実施例1<ガラスチョップドストランドマット(GM−1)の作成>
ガラスストランド(平均ストランド番手T=30Tex、ガラス繊維の密度d=2.5g/cm3、ガラスストランド直径K=123.6μm)を東技研(株)製ガラスチョッパーを用いて約5cmの長さに切断し、ガラスチョップドストランドを得た。
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に該ガラスチョップドストランド1.35gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の200%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の20%相当量である0.27gのバインダー(X−1)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の200%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の10%相当量である0.14gのバインダー(X−1)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量45g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−1)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0071】
実施例2、比較例1〜2
実施例1において、バインダー(X−1)に代えてバインダー(X−2)、(X−1’〜2’)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−2)、(GM−1’〜2’)を得た。後述の評価項目による該マットの評価結果は表1および2に示す。
【0072】
実施例3<マット(GM−3)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に前記ガラスチョップドストランド13.5gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の20%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の2%相当量である0.27gのバインダー(X−3)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の20%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の1%相当量である0.14gのバインダー(X−3)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量450g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−3)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0073】
実施例4〜5、比較例3〜4
実施例3において、バインダー(X−3)に代えてバインダー(X−4〜5)、(X―3’〜4’)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−4〜5)、(GM−3’〜4’)を得た。後述の評価項目による該マットの評価結果は表1および2に示す。
【0074】
実施例6<マット(GM−6)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に前記ガラスチョップドストランド27gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の10%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の1%相当量である0.27gのバインダー(X−6)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の10%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の0.5%相当量である0.14gのバインダー(X−6)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量900g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−6)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0075】
比較例5
実施例6において、バインダー(X−6)に代えてバインダー(X―5’)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−5’)を得た。該マットの評価結果は表2に示す。
【0076】
実施例7<マット(GM−7)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に前記ガラスチョップドストランド3.3gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の82%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の7%相当量である0.23gのバインダー(X−7)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の82%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の3%相当量である0.10gのバインダー(X−7)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量110g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−7)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0077】
実施例8、比較例6〜7
実施例7において、バインダー(X−7)に代えてバインダー(X−8)、(X―6’〜7’)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−8)、(GM−6’〜7’)を得た。該マットの評価結果は表1および2に示す。
【0078】
実施例9<マット(GM−9)の作成>
実施例3において、バインダー(X−3)に代えてバインダー(X−9)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−9)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0079】
実施例10<マット(GM−10)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に該ガラスチョップドストランド6.9gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の39%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の3.4%相当量である0.23gのバインダー(X−10)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の39%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の1.5%相当量である0.10gのバインダー(X−10)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量230g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−10)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0080】
比較例8
実施例10において、バインダー(X−10)に代えてバインダー(X−8’)を用いたこと以外は同様にして、マット(GM−8’)を得た。該マットの評価結果は表2に示す。
【0081】
実施例11<マット(GM−11)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に該ガラスチョップドストランド9.0gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の30%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の2.6%相当量である0.23gのバインダー(X−11)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の30%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の1.1%相当量である0.10gのバインダー(X−11)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量300g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−11)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0082】
実施例12<マット(GM−12)の作成>
縦15cm×横20cmの離型処理したステンレス金網上に該ガラスチョップドストランド18gを方向性無秩序に均一厚みになるように散布して積層体を得た。次に散布したガラスチョップドストランドの重量の15%相当量である2.7gの水道水を該積層体の裏側面から裏面全体が均一に濡れるように霧吹きで噴霧した。
次に、散布したガラスチョップドストランドの重量の1.3%相当量である0.23gのバインダー(X−12)を均一に該積層体上に散布して、バインダー付着積層体を得た。
さらに、水道水2.7g(散布したガラスチョップドストランドの重量の15%相当量)を噴霧し、散布したガラスチョップドストランドの重量の0.6%相当量である0.10gのバインダー(X−12)を該積層体上に散布した。
その後、200℃の恒温乾燥機で6.5分間乾燥させ、85℃に加熱したプレス機にて0.5MPaの圧力でプレスしてマットの目付け量600g/m2のガラスチョップドストランドマット(GM−12)を得た。該マットの評価結果は表1に示す。
【0083】
<評価項目>
(1)軟化点(℃)
JIS K2207「石油アスファルト」の「6.4軟化点試験方法(環球法)」に準拠して、自動軟化点試験器[機器名「ASP−5」、田中科学機器製作(株)製]により測定した。
【0084】
(2)ガラス転移温度(Tg)(℃)
JIS K7121「プラスチックの転移温度測定法」に準拠して、[機器名「RDC−220」、セイコー電子工業(株)製]により測定した。
【0085】
(3)ポリエステル樹脂粉末の体積平均粒子径(Dv)、ポリエステル樹脂粉末の全粒子中の400μm以上、および250μm以下の体積基準粒子径を有する各粒子の割合(%)
粒度分析計[機器名「マイクロトラック9320HRA粒度分析計」、日機装(株)製]を用いたレーザー回折散乱法により測定した。
【0086】
(4)体積基準の粒子径分布の変動係数(Cv)(%)
変動係数(Cv)は、下記の式より算出される値であり、標準偏差、および体積平均粒
子径(Dv)は粒度分析計[機器名「マイクロトラック9320HRA粒度分析計」、日機装(株)製]を用いたレーザー回折散乱法により測定した。

Cv=[標準偏差/Dv]×100
【0087】
(5)バインダー結合量(%)
以下の手順で求めた。
(i)マットの一部から試験片(縦50mm×横100mm)を切り出し、これを細断して磁性るつぼに入れ、105℃で30分間乾燥させた後、デシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m1)を測定した。試験片入り磁性るつぼを625℃の電気炉内に入れ、扉を開いたまま5分間燃焼させた後、扉を閉めさらに10分間燃焼させた。その後、試験片入り磁性るつぼを取り出してデシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m2)を測定した。
(ii)試験片を入れていない空の上記磁性るつぼを、105℃で30分間乾燥させた後、デシケータ内で室温まで放冷し、0.1mg単位まで重量(m0)を測定した。
(iii)下記式から該試験片のバインダー結合量(%)を算出した。

バインダー結合量(%)=
100×[(m1)−(m2)]/[(m2)−(m0)]

(iv)マットの、上記(i)とは異なる3箇所の部分から切り出した同様の試験片について(i)〜(iii)を同様に行って、各試験片のバインダー結合量(%)を算出した。該得られた4個の値の平均値を算出して、これをマットのバインダー結合量(%)とした。
【0088】
(6)交点融着被覆面積率(%)[ストランド交点上へのバインダー結合効率]
以下の手順で求めた。
(i)マットのガラスストランドに融着したバインダーの染色
ローダミン1g、1%酢酸水溶液2mL、水道水98mLからなる水溶液(染色液)にマット試験片(縦50mm×横100mm)を浸し、47℃で2時間静置した。その後、試験片を取り出し、水道水で染色液を十分すすぎ流して除去した。
(ii)マットの表面の一部(縦1.74mm×横1.3mmの範囲)を、マイクロスコープ[機器名「デジタルHFマイクロスコープVH−8000」、(株)キーエンス製]を用いて倍率175倍のレンズ[製品名「VH−Z25」、被写界深度0.3mm、(株)キーエンス製]で写真撮影した。
得られた画像を画像処理ソフト[製品名「WinROOF」、version5.5、三谷商事(株)製]で解析することにより、前記融着被覆総面積(SA)と、交点融着被覆面積(Sc)を求め、下記の式から交点融着被覆面積率(%)を求めた。該面積率の評価は、マット1枚当たり場所を変えて表側および裏側の表面各10箇所について行い、平均値を算出してこれを該マットの交点融着被覆面積率(%)とした。なお、上記の被写界深度とは、カメラで被写体にピントを合わせたときに、被写体前後の範囲の中でピントが合っている幅をいう。

交点融着被覆面積率(%)=100×Sc/SA
【0089】
(7)マットの曲げ弾性率(柔軟性評価)(Pa)
マットから縦20mm×横100mmの試験片を10枚ずつ切り出し、ASTM D256に準拠して測定した。10枚の試験片の平均値を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:0.5〜3.0
△:0.1以上0.5未満および3.0超4.0以下
×:0.1未満および4.0超
【0090】
(8)マットの曲げ弾性率のばらつき(機械物性の均一性評価)(Pa)
上記(7)の評価における試験片10枚の曲げ弾性率の最大値と最小値の差を求め下記の基準で曲げ弾性率の均一性を評価した。
<評価基準>
○:0.2以下
△:0.2超1.0未満
×:1.0以上
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
表1、2の結果から、本発明のガラスチョップドストランドマットは、比較のものに比べ、ガラスチョップドストランド交点上へのバインダー結合効率[交点融着被覆面積率(%)]が高く、柔軟性に優れ、かつ均一で必要な機械強度を有することがわかる。従って、該マットはガラス繊維強化プラスチック成形品作成時、成形型へのフィット性等の作業性向上等において大きく寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のバインダーでガラスチョップドストランド積層体を結合させてなるガラスチョップドストランドマットは、均一な機械強度を有し、しかも柔軟性に優れ成形型へのフィット性等、作業性の向上に大きく寄与し得ることから、ガラス繊維強化プラスチック成形品用の強化材等として用いられ、該成形品は、自動車用部材(成形天井材等)、小型船舶(カヌー、ボート、ヨット、モーターボート等)の船体、住宅用部材(バスタブ、浄化槽等)幅広い分野に適用することができ、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー回折散乱法による体積平均粒子径Dvが280〜350μmであり、体積基準の粒子径分布の変動係数Cvが10〜35%であるポリエステル樹脂粉末(A)を含有してなることを特徴とするガラスチョップドストランドマット用バインダー。
【請求項2】
(A)中の、400μm以上の体積基準粒子径を有する粒子の割合が20重量%以下である請求項1記載のバインダー。
【請求項3】
(A)中の、250μm以下の体積基準粒子径を有する粒子の割合が20重量%以下である請求項1または2記載のバインダー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載のバインダーでガラスチョップドストランド積層体を結合させてなるガラスチョップドストランドマット。
【請求項5】
目付け量40〜950g/m2のガラスチョップドストランドマットの表面を撮影して得られる画像において、バインダーがガラスチョップドストランド(直径Kμm)に融着してこれを被覆する総面積(SA)のうち、該ストランドの交点の中心から半径Kμmの範囲内のストランドにバインダーが融着してこれを被覆する面積(SC)の割合が60%以上である請求項4記載のマット。
【請求項6】
請求項4または5記載のマットを強化材として成形してなるガラス繊維強化プラスチック成形品。
【請求項7】
ガラス繊維強化プラスチック成形品が、自動車成形天井材、小型船舶船体、バスタブまたは浄化槽用である請求項6記載の成形品。
【請求項8】
ガラスチョップドストランド散布、水散布およびバインダー散布からなる工程を経て形成されるバインダー付着積層体をプレス成形または加熱プレス成形してガラスチョップドストランドマットを製造する方法において、請求項1〜3のいずれか記載のバインダーを用いることを特徴とするガラスチョップドストランドマットの製造方法。

【公開番号】特開2011−132499(P2011−132499A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242067(P2010−242067)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】