説明

ガラスファイバー強化オレフィンポリマーから構成される成形組成物

本発明者は、オレフィンポリマー、特にプロピレンポリマーから構成されるガラスファイバー強化成形組成物に関する。本発明の成形組成物は、5〜50質量%の、相溶化剤によりオレフィンポリマーに結合したガラスファイバー、及び10-4〜1質量%、特に10-3〜10-1質量%の、核剤としてのフタロシアニン顔料を含むオレフィンポリマーを含んでいる。フタロシアニン顔料は低コストであり、またポリマー中のフタロシアニン顔料が極めて少量で十分な核形成をもたらすことから、極めて廉価な製造法を確実にしている。さらに、フタロシアニン顔料による核形成は、成形組成物の、耐衝撃性、さらにまた降伏応力及び破断時引張応力を改善している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5〜50質量%の、相溶化剤によりオレフィンポリマーに結合したガラスファイバー、及び10-4〜1質量%の、核剤としてのフタロシアニン顔料を含むオレフィンポリマー、特にプロピレンポリマーから構成される成形組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンポリマーのガラスファイバーによる強化は、以前から知られている。特許文献1(EP663418A1)には、例えば、ガラスファイバーで強化されたポリプロピレン形成組成物が記載されている。しかしながら、良好な機械特性を得るために、ガラスファイバーのポリエステルオレフィンマトリックスへの良好な結合を確実にする相溶化剤又はカップリング剤を使用することが必要である。相溶化剤は、屡々、第1に、カプラーとして、マトリックスポリマーと相溶性の良い反応性の変性ポリマーと、第2に、ガラスファイバーとこのカプラーとの両方に結合することができる反応性の極性基を有する化合物とを含むものである。
【0003】
同様に、未強化のプロピレンポリマーに、それから製造される成形体の剛性及び強度、さらには透明性を改良するために、核を形成することが一般に慣用的に行われている。これまで、安息香酸ナトリウム、微粒タルク、リン酸エステル塩、ソルビトール、キナクリドン顔料及びその他に加えて、フタロシアニン顔料も核剤として使用されている。核形成は、一般に、引張強度及び剛性の改良をもたらすが、衝撃強度は目立った改良はもたらされることはなく、また屡々、降伏伸び及び破断時引張応力の低下が見られる。
【0004】
非特許文献1(Polymer 34, 4747 (1993))及び非特許文献2(European Polymer Journal 32, 1425 (1996))には、核剤として安息香酸ナトリウムを用いて、ポリプロピレン−ガラスファイバー複合材料への核剤の影響が研究されている。核形成(有核)ガラスファイバー複合材料について、核非形成(無核)複合材料に比較して、弾性率が10%増加し、引張強度が10%増加していることが分かった。
【0005】
安息香酸ナトリウム、及び多くの他の核剤は、その核形成の改良をもたらす極性特性の故に、相溶化剤のカプラーと反応し、このためガラスファイバーとの結合を邪魔するとの不利、或いはコストが高すぎるため、経済上の魅力が無いとの不利がある。
【0006】
安息香酸ナトリウム等の核剤の特徴的な不利は、ポリエステルオレフィン成形組成物の耐熱水性及び耐蒸気性が中程度に過ぎず、特に数週間又は数ヶ月に及ぶ長期接触においてはそうである。
【0007】
【特許文献1】EP663418A1
【非特許文献1】Polymer 34, 4747 (1993)
【非特許文献2】European Polymer Journal 32, 1425 (1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ガラスファイバーのマトリックス結合が改良され、このため機械特性が向上しており、且つ廉価に得ることができ、そして耐熱水性、特に洗剤存在下での耐熱水性が改良された、ポリオレフィン成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、驚くべきことに、相溶化剤によりオレフィンポリマーに結合したガラスファイバーとフタロシアニン顔料との組合せにより、マトリックスポリマー、特にプロピレンポリマー中のガラスファイバーのマトリック結合が向上して、上記目的が達成されることが見いだされた。従って、本発明の成形組成物は、5〜50質量%のガラスファイバー、及び10-4〜1質量%、特に10-3〜10-1質量%の、核剤としてのフタロシアニン顔料を含むオレフィンポリマーを含んでいる。フタロシアニン顔料は低コストであり、またポリマー中のフタロシアニン顔料が極めて少量で十分な核形成をもたらすことから、極めて廉価な製造法を確実にしている。さらに、ポリオレフィン成形組成物は、優れた耐熱水性を示すものでもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のポリオレフィン成形組成物の必須要件は、まず組成物全体に対して含有量が5〜50質量%のガラスファイバーである。ガラスファイバーは、長さが3〜6mmのカットガラスファイバーでも、或いは長いガラスファイバーでも良いが、カットガラスファイバーが好ましい。さらに、ガラスファイバー含有量は、10〜40質量%、さらに20〜40質量%であることが好ましい。
【0011】
カットガラスファイバー(チョップト・ストランドとしても知られている)を用いることが好ましい。カットガラスファイバーを使用する場合、核形成により、顕著により好ましい価格の長いガラスファイバーを含む成形組成物を得ることが可能である。好ましく使用されるガラスファイバーの長さは、3〜6mm、さらに3〜4.5mmが好ましく、その直径は10〜20μm、さらに12〜14μmが好ましい。配合条件及び射出成形条件に依存するが、成形組成物(顆粒又は射出成形仕上げの粒子)におけるガラスファイバーの長さは50〜3000μm、さらに50〜1000μmが好ましい。
【0012】
ガラスファイバーをポリオレフィンマトリックスに結合させるために、極性−官能化相溶化剤が使用される。使用され得る1つの種類は、ガラスファイバーに親水性がほとんど無くなるように専ら作用し、このためポリマーとの相溶性を向上させる、低分子化合物である。好適な化合物としては、例えばアミノシラン、エポキシシラン、アミドシラン又はアクリロシラン等のシランを挙げることができる。しかしながら、相溶化剤は、官能化ポリマー及び反応性極性基を有する低分子量化合物を含んでいることが好ましい。官能化ポリマーは、マトリックスポリマーと相溶性が良好なグラフト又はブロック共重合体であることが好ましい。マトリックスポリマーとしてのプロピレン単独重合体に対して、例えば、官能化ポリマーとして、プロピレンのグラフト又はブロック共重合体を用いることが好ましい。
【0013】
本発明では、反応性基が、酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、1級及び2級アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリン及びエポキシド、さらにイオン性化合物である、ポリマーが好ましい。官能化ポリマーとして、無水マレイン酸でグラフト化されたプロピレンポリマーを用いることが特に好ましい。低分子量化合物は、ガラスファイバーを官能化ポリマーに連結し(couple)、これをポリオレフィンマトリックスに確実に結合させる機能を有する。これらは、通常、2官能化合物であり、この場合、1個の官能基が、ガラスファイバーとの結合相互作用を形成し、第2の官能基が、官能化ポリマーとの結合相互作用を形成することができる。使用される低分子量化合物としては、アミノシラン又はエポキシシラン、さらにアミノシランが好ましい。アミノシランは、そのシランヒドロキシル基でガラスファイバーと結合し、一方、そのアミノ基は、例えば、無水マレイン酸でグラフト化されたポリプロピレンと安定なアミド結合を形成する。
【0014】
相溶化剤は、予め製造して、或いはその場で製造して使用される。特に、低分子量成分を、ポリオレフィンマトリックスに導入する前に、ガラスファイバーに施すことが有利である。官能化ポリマーは、その場で、マトリックスポリマーを、例えば、無水マレイン酸と共に反応押出することにより、簡単に作製することができる。ガラスファイバーと予備混合形態の相溶化剤を含むマスターバッチを使用することも可能である。
【0015】
ガラスファイバー強化ポリプロピレン成形組成物をフタロシアニン顔料で核形成することも本発明の必須要件である。フタロシアニン顔料は、それ自体公知であり、基本のフタロシアニン構造に中心金属元素を導入して、フタロシアニン環を置換することにより、基本のフタロシアニン構造より誘導される。実際、顔料に使用される中心元素は、銅、ニッケル、及びコバルトであり、銅が好ましい中心元素である。基本のフタロシアニン構造は、任意に、特に、塩素原子又は臭素原子で置換されていても良い。有機基による置換も、有核特性を改良するために行われ得る。好適なフタロシアニン顔料の例としては、無置換の銅フタロシアニン(フタロシアニンブルー)、ポリクロロ化銅フタロシアニン(フタロシアニングリーン、C3228Cl14Cu)、コバルトフタロシアニン(C32168Co)、ニッケルフタロシアニン(C32168Ni)を挙げることができる。無置換の銅フタロシアニンが特に好ましい。
【0016】
無置換の銅フタロシアニン及びポリクロロ化銅フタロシアニンは固体であり、例えば、それぞれPV Echtblau及びPV Echtgruenとの名でClariant, Frankfurt, DE より知られている。
【0017】
核剤の割合は、組成物全体に対して、10-4〜1質量%である。10-3〜10-1質量%、特に5・10-3〜5・10-2質量%が好ましい。
【0018】
ガラスファイバー強化及びフタロシアニンによる核形成の組合せにより、剛性及び靱性に関して従来技術より改良された成形組成物がもたらされる。さらに、ガラスファイバーのポリマーマトリックスへの接着性が、同じ相溶化剤を使用しても、驚くほど顕著に改善されており、これにより成形組成物のワレ(crack)の広がりが改善される。さらに、フタロシアニン顔料による核形成により、驚くべきことに、熱水及び熱洗剤中での引張強度及び衝撃強度の長期安定性(例えば、95℃、1000時間の試験に対して)が、無核ガラスファイバー強化の比較試験片と較べて、顕著に改善されている。本発明の成形組成物の長期安定性における優位性は、例えば、82℃で138日間試験するUL標準(standards)2157及び749に従い、洗剤水溶液での長期間試験で確認することもできる。
【0019】
フタロシアニン顔料の特別な優位性は、通常の相溶化剤と本質的に相溶性が良好であること、即ち核剤と相溶化剤の作用の間に、相互干渉がないか、或いはほとんど無いということにある。
【0020】
本発明の成形組成物は、オレフィンポリマーをフタロシアニン顔料及びガラスファイバーとを溶融、混合することにより得ることができ、その混合は、180〜320℃、好ましくは200〜280℃、さらに好ましくは220〜260℃の温度で、混合装置において行われる。本発明において有用な混合装置としては、特に押出機又はニーダを挙げることができ、特に2軸押出機が好ましい。粉末状のポリマーの場合、混合装置において、ポリマーを核剤及び他の添加剤と室温で予備混合することが適当である。オレフィンポリマーを、核剤及びガラスファイバーと、一段階或いは複数段階で混合しても良い。オレフィンポリマーを、まず混合装置で、核剤及び他の添加剤と共に溶融し、これらを混合し、次いでガラスファイバーをその溶融物と混合することが好ましく、これにより混合装置の摩耗とファイバー破損を低減することができる。
【0021】
本発明の成形組成物の有用なマトリックス成分は、炭素原子数2〜12個のα−オレフィン(例、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテン)の単独重合体及び共重合体である。さらにこれらのモノマーに加えて、別のモノマー、特にジエン(例、エチリデンノルボルネン、シクロペンタジエン又はブタジエン)を含んだ、共重合体及び3元共重合体も好適である。
【0022】
好ましいマトリックス成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、及び/又は、エテンと、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン又は1−オクテンとの共重合体を挙げることができる。有用なポリマーの種類としては、例えば、高密度、中密度又は低密度の直鎖状ポリエチレン、LDPE、少量の(最大約40質量%まで)コモノマー(例、プロペン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、無水マレイン酸、スチレン、ビニルアルコール、アクリル酸、グリシジルメタクリレート等)を有するエチレン共重合体、アイソタクチック又はアタクチック・プロピレン単独重合体、プロピレンとエテン及び/又は1−ブテンとのランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体等を挙げることができる。
【0023】
ポリエチレンをマトリックス成分として使用した場合、エチレン共重合体のコモノマー含有量は、使用されるモノマーの合計量の1モル%以下にすべきである。好ましいコモノマーとしては、1−オレフィンを挙げることができ、特に好ましいコモノマーとしては1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン及び1−オクテンを挙げることができる。ポリエチレンはまた、2種以上のポリエチレン成分のブレンドであっても良い。
【0024】
マトリックス成分として、プロピレンポリマーを使用することが特に好ましい。使用されるプロピレンポリマーは、特にプロピレン単独重合体でも、或いは、炭素原子数10個以下の他のオレフィンを、共重合形態で30質量%以下で含むプロピレン共重合体でも良い。このような他のオレフィンとしては、C2〜C10−1−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン又は1−オクテンを挙げることができ、エチレン、1−ブテン又はエチレン及び1−ペンテンの使用が好ましい。特にプロピレン単独重合体の使用が好ましい。
【0025】
本発明では、プロピレンの共重合体は、ブロック共重合体又は耐衝撃性共重合体であり、ランダム共重合体が好ましい。プロピレンの共重合体がランダム構造を有する場合、これらは、コモノマーとして、一般に15質量%以下、好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の、炭素原子数10個以下の他のオレフィン(特に、エチレン、1−ブテン、又はエチレンと1−ブテンとの混合物)を含んでいる。プロピレンの、ブロック共重合体又は耐衝撃性共重合体は、第1段階において、プロピレン単独重合体、又はコモノマーとして15質量%以下、好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の、炭素原子数10個以下の他のオレフィンを有するプロピレンのランダム共重合体を製造し、その後、第2段階において、この(共)重合体に、エチレン含有量が15〜99質量%のプロピレン−エチレン共重合体(プロピレン−エチレン共重合体は別のC4〜C10−オレフィンを含むことができる)を重合させることによって得られるポリマーである。一般に、十分なプロピレン−エチレン共重合体がこれに重合されるので、第2段階で形成される共重合体の最終生成物における含有量は3〜90質量%である。ポリプロピレンのランダム共重合体は、第1段階において、プロピレン単独重合体、又はコモノマーとして15質量%以下、好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下の、炭素原子数10個以下の他のオレフィンを有するプロピレンのランダム共重合体を製造し、その後、第2段階において、この(共)重合体に、プロピレン単独重合体、又はコモノマーとして15質量%以下、好ましくは6質量%以下(さらに好ましくは2質量%以下のコモノマー)の、炭素原子数10個以下の他のオレフィンを有するプロピレンのランダム共重合体を重合させることによって得られるポリマーである。2つの段階のポリマーは、モル質量及びコモノマー含有量において異なっている。ブレンドのエチレン含有量は、コモノマーの15質量%以下、好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0026】
キシレン不溶分が95%を超える、好ましくは97%を超えるアイソタクチックポリプロピレンを用いることが好ましい。ポリオレフィンは、一般に、0.2〜200g/10分、好ましくは0.5〜100g/10分、さらに好ましくは2〜30g/10分の、ISO 1133に従うMFR(230℃/2.16kg)を有する。さらに、単峰モル質量分布を有するポリプロピレン成形組成物が好ましい。
【0027】
本発明の成形組成物は、通常の添加剤及び助剤、例えば、加工効果の損傷に対する安定剤、熱酸化及び経年劣化(aging)に対する酸化防止剤、UV作用安定剤、中和剤、フィラー、有機及び無機顔料又は顔料配合物、例えばカーボンブラック分散ポリオレフィン、帯電防止剤、無極性ワックス又は特定の低分子量流動促進剤、及び滑剤を含むこともできる。UV安定剤、特にモノマー及びオリゴマーのHALS、帯電防止剤及び極性ワックス、さらにステアレートは、本発明の成形組成物にはほとんど適当ではなく、或いは、存在しても極低濃度である。なぜなら、これらは相溶化剤のカプラーと同様に反応し、カップリングの効率を低下させるためである。しかしながら、添加剤及び助剤の量は、材料の合計量に対して10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下であるべきである。視覚的理由で、適切且つ好適な着色顔料を本発明の成形組成物に添加して、別の色、好ましくはより暗色に着色することも妥当の場合もある。
【0028】
本発明の成形組成物に使用されるオレフィンポリマーは、全ての一般的な方法及び触媒で得ることができる。適当なモノマーを、チグラー・ナッタ触媒、酸化クロムを基礎とするフィリップス触媒又はメタロセン触媒により重合させることが好ましい。本発明では、メタロセンが、周期表第3〜12族の金属と有機リガンド(これはメタロセニウムイオン・形成化合物と共に有効な触媒組成物をもたらす)との錯体である。
【0029】
オレフィンポリマーを製造するために、C2〜C10−オレフィンの重合に使用される通常の反応器を使用することができる。適当な反応器としては、水平又は垂直型撹拌タンク、循環式反応器、ループ型反応器、段階(stage)反応器又は流動床反応器を挙げることができる。反応器の寸法は、本発明の成形組成物の製造にとって重要なことではない。それは、個々の反応区域又は複数の反応区域で達成されなければならない生産量に依存している。重合方法は、1以上の段階で行うことができる。重合は、気相、バルク又は懸濁、或いはこれらの組合せで行うことができる。
【0030】
本発明の成形組成物は、特に、材料の剛性及び靱性に対して高い要求のある自動車部品の製造に好適である。暗色着色されているか、或いは装飾層を備えた自動車部品、例えばフロントエンド又はダッシュボード支持体(これらにおいては、フタロシアニン顔料による青色着色は覆われている)に使用することが特に有利である。本発明の成形組成物から製造された成形体は、カットガラスファイバーを用いたときでさえ、その改良された剛性及び靱性の結果として、これまで長いファイバー強化プロピレンポリマーが用いられていた用途に適当である。
【0031】
本発明の成形組成物はまた、熱水及び洗剤に対して極めて良好な耐久性を示す。このため、熱水、洗浄及びリンス液、及び他の攻撃的材料に接触状態に曝される成形材料として特に有利に使用することができる。従って、本発明は、さらに、本発明の成形組成物を洗浄機の洗浄液容器(好ましくは目に触れないもの)として使用する方法、また本発明の成形組成物から製造された洗浄液容器、さらに水及び液体ポンプのケーシングに使用する方法も提供する。
【実施例】
【0032】
[実施例1]
a)ガラスファイバー強化ポリプロピレン成形組成物:
下記の質量割合は、特に断らない限り、それぞれ、ポリマー成形組成物の合計質量に対するものである。
【0033】
69.19質量%のプロピレン単独重合体(Moplen HP500H, Basell Polyolefin (Germany)社製;MFR(220℃、2.18kg)=1.2g/10分)を、2軸押出機(ZSK 53)において、30質量%の、長さ3mm及び直径13μmの短いガラスファイバー(ECS 03T-T480 チョップトストランド、NEG)と混合した。これは、10−セクション2軸押出機の素子3又は4において、短いガラスファイバーをポリマー成形組成物に計量導入することにより行われた。核剤として、0.01質量%のフタロシアニン・ブルー15:3(PV-Echtblau 2GL SP, Clariant)、相溶化剤として、1.2質量%のPolybond 3200(Crompton社製)、0.1質量%の無機酸のスカベンジャー、及び0.5質量%の、フェノール性酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート及びジ−tert−ブチルフェニルホスファイトからなる安定剤組合せを、同時にプロピレン単独重合体に添加した。
【0034】
b)熱水試験
DIN EN ISO 527−2及びDIN EN ISO 179/1に従い、実施例1で得たポリプロピレン成形組成物を、射出成形機で加工して、試験片を作製した。
【0035】
サンプルの破断時引張応力及び引張弾性率を、ISO 527−01及び−1に従い測定・決定した。さらに、シャルピー衝撃強度を、DIN EN ISO 179/1eUに従い測定した。
【0036】
試験片を、加熱浴中で95にて脱塩水に導入した。用途及び要求により、異なる成分も所定濃度で加えても良い。
【0037】
適当な時間後、各場合、少なくとも5個の試験片をとり、DIN EN ISO 527−2の破断時引張応力及び引張弾性率を、5〜10個の個々の測定の平均として測定・決定した。同様に、シャルピー衝撃強度を、DIN EN ISO 179/1eUに従い測定・決定した。
【0038】
試験結果を表1〜3及び図1〜3にまとめる。
【0039】
[実施例2]
フタロシアニン・ブルー15:3(PV-Echtblau 2GL SP, Clariant)の含有量を0.05質量%とした以外は同様にして実施例1を繰り返した。ポリプロピレンの量はポリマー成形組成物の組み合わされた合計質量が100質量%となるように調整した。
【0040】
[比較例3]
核剤として含有量0.1質量%の安息香酸ナトリウムを用いた以外は同様にして実施例1を繰り返した。ポリプロピレンの量はポリマー成形組成物の組み合わされた合計質量が100質量%となるように調整した。
【0041】
[比較例4]
核剤として含有量0.3質量%の安息香酸ナトリウムを用いた以外は同様にして実施例1を繰り返した。ポリプロピレンの量はポリマー成形組成物の組み合わされた合計質量が100質量%となるように調整した。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
フタロシアニンで核形成されたガラスファイバー強化ポリプロピレン(△及び◇)の場合の破断時引張応力及び引張弾性率の低下及びシャルピー衝撃強度の減少が、安息香酸ナトリウムで核形成されたもの(△及び○)における減少より驚くほど小さいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例の試験結果を示す。
【図2】実施例の試験結果を示す。
【図3】実施例の試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンポリマーから構成される成形組成物であって、
該オレフィンポリマーが、
a)5〜50質量%の、相溶化剤によりオレフィンポリマーに結合したガラスファイバー、及び
b)10-4〜1質量%、特に10-3〜10-1質量%の、核剤としてのフタロシアニン顔料、
を含むことを特徴とする成形組成物。
【請求項2】
オレフィンポリマーがプロピレンポリマーである請求項1に記載の成形組成物。
【請求項3】
ガラスファイバーがカットガラスファイバーである請求項1又は2に記載の成形組成物。
【請求項4】
ガラスファイバーを、10〜40質量%、特に20〜40質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項5】
相溶化剤が、極性基で官能化された、オレフィンポリマー、特にプロピレンポリマーを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項6】
官能化相溶化剤が、無水マレイン酸、及びアミノシラン又はエポキシシランでグラフト化されたオレフィンポリマーを含む請求項5に記載の成形組成物。
【請求項7】
プロピレンポリマーがプロピレン単独重合体である請求項2〜6のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項8】
オレフィンポリマーの、230℃及び2.16kgにおけるISO1133に従うメルト・マス−フロー・レートが、0.5と100g/10分との間、好ましくは2と30g/10分との間にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の成形組成物。
【請求項9】
混合装置において、プロピレンポリマーをまず溶融し、180〜320℃の温度で核剤と混合し、次いで得られた溶融物にガラスファイバーを混合することを特徴する請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形組成物を製造する方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形組成物を、自動車構造用成形体として、又は洗浄液容器、水ポンプ・ケーシング及び液体ポンプ・ケーシングとして使用する方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形組成物から得られる洗浄液容器、水ポンプ・ケーシング及び液体ポンプ・ケーシング。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の成形組成物から得られる自動車部品、特に自動車の覆い部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−509215(P2007−509215A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536028(P2006−536028)
【出願日】平成16年10月19日(2004.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011798
【国際公開番号】WO2005/040263
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500585878)バーゼル、ポリオレフィン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング (35)
【Fターム(参考)】